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企業間電子商取引の保存制度:現行の条番号と改正年表で正しく読む

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 企業間電子商取引は、税法上は電子帳簿保存法の「電子取引」に当たります。
  • 保存義務の根拠条文は令和3年度税制改正で条番号が繰り上がり、旧「法10条」等の表記は改正前のものです。
  • EDI取引のデータは、受け取ったそのままでなく合理的に編集した形での保存も認められています。
電子商取引のイメージ
▽ 写真の出典元

自社の運用を診断する確認順(詳細はH2-5「制度はこう変わってきた」で解説)

  1. 旧条番号(法10条・規則8条等)を社内規程が引用していないか
  2. 宥恕措置を前提にした運用が残っていないか
  3. 検索要件が不要となる売上高基準を5,000万円以下で判定しているか

企業間電子商取引の保存制度とは — 電子帳簿保存法の「電子取引」(法2条5号)が答え

企業間電子商取引の保存制度とは、企業どうしが電磁的方式でやり取りする取引情報の保存を義務づける仕組みです。電子帳簿保存法では「電子取引」(同法2条5号)として定義され、同法7条が保存義務を定めています*1*2

図
電磁的方式での授受から保存義務の発生までを5段階で判定する

税法に「企業間電子商取引」という言葉はない — 該当するのは電子取引(法2条5号)

税法上、「企業間電子商取引」という文言そのものは使われていません。電子帳簿保存法が定義するのは「電子取引」です。取引に関して受領・交付する注文書・契約書・送り状・領収書・見積書その他これらに準ずる書類に、通常記載される事項の授受を電磁的方式で行う取引を指します*1

保存義務の根拠条文は電子帳簿保存法7条

所得税(源泉徴収に係る所得税を除く)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引した場合、その取引情報に係る電磁的記録を保存しなければなりません*2。ここでいう保存義務者とは、国税に関する法律の規定で帳簿書類の保存を求められている事業者のことです。

呼称は省庁ごとに異なる — 官公庁は「企業間電子商取引」、税法は「電子取引」

経済産業省の市場調査は、企業どうしの取引をBtoB-EC(企業間電子商取引)と呼びます*8。一方、電子帳簿保存法を所管する国税庁は、同じ取引を「電子取引」と呼びます*1。呼び方が省庁で異なる点が、検索した読者が条文にたどり着けない一因になっています。

条番号が食い違う理由 — 「旧法10条」と書かれた資料の見分け方

電子帳簿保存法は令和3年度税制改正で大きく見直され、条番号が繰り上がりました。ネット上や社内資料に残る「法10条」「規則8条」という表記は、この改正前のものです。

令和3年度税制改正で条が繰り上がった

現行の条番号と、改正前の条番号は次のとおり対応します*1*2*3*6

改正前の条番号 現行の条番号 内容
法第10条 法第7条 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務
法第2条第6号 法第2条第5号 「電子取引」の定義
規則第8条 規則第4条 保存の方法(改ざん防止措置・見読可能性・検索機能等)

国税庁サイトには改正前の一問一答が今も残っている

国税庁の公式サイトには、改正前の一問一答が現在も掲載されたままになっています。ここには「法10」「法2六」「規則第8条第1項第1号」といった旧い条番号での説明が残っています*6。検索結果から直接この頁に着地すると、現行制度と誤認するおそれがあります。

現行版はどれか — 一問一答は令和8年7月版、法令はe-Gov法令検索で確認する

現行の取り扱いは、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」の令和8年7月版で確認できます*4。国税庁の特設サイトも、電子帳簿保存法へのリンクに「第7条をご確認ください」「第4条等をご確認ください」と明記しています*5。この記載が、現行の条番号が法7条・規則4条であることを裏づけています。条文そのものは、e-Gov法令検索で施行日を指定して確認できます。

制度の対象になるデータ — 注文書・契約書・見積書等の電磁的授受が電子取引に当たる

電子帳簿のイメージ
▽ 写真の出典元

電子帳簿保存法が保存を求める「取引情報」は、書面でやり取りしていた場合に保存が必要な書類に相当する電磁的記録を指します*7

取引情報の定義 — 注文書・契約書・送り状・領収書・見積書等

取引情報とは、取引に関して受領・交付する注文書・契約書・送り状・領収書・見積書その他これらに準ずる書類に、通常記載される事項です*1。書面でやり取りしていた場合に保存が必要な書類に相当する電磁的記録を受領・交付すれば、その電磁的記録が保存の対象になります。

EDI取引・ECサイト・メール添付・クラウドサービスが該当する

EDI(Electronic Data Interchange、企業間で受発注データ等を専用回線やネットワークを通じて電子的に交換する仕組み)取引は、電子取引に該当します。インターネット取引、電子メールでの請求書添付も同様です*4。クラウドサービスを利用して取引先から請求書等を受領した場合も、電子取引に該当します*4。EDIとBtoB ECの用語整理はEDIとBtoB ECの違い・使い分けの記事で扱っています。

呼称 電子取引への該当 根拠
企業間電子商取引(BtoB-EC) 該当する 経済産業省の統計上の呼称。税法上は「電子取引」に読み替わる*1*8
EDI取引 該当する 一問一答 問5*4
Web受発注・ECサイト経由の取引 該当する 一問一答 問5*4
クラウドサービス経由の請求書受領 該当する 一問一答 問7*4

書面でも同じものを受領した場合の扱い

電子データと書面の内容が同一で、書面を正本として取り扱う旨を社内で決めている場合は、書面の保存のみで足ります*4。ただし電子データに書面を補完する取引情報が含まれ、内容が同一でない場合は、書面と電子データの両方を保存する必要があります。契約書データの授受の設計と請求書の電子交付の同意は、それぞれBtoB EC電子契約連携設計BtoB EC請求書電子交付同意の各記事が詳しいです。保存対象データの網羅的な棚卸しはBtoB EC電子帳簿保存法対応の記事で扱っています。

保存の方法は施行規則4条にある — 改ざん防止4措置の骨格

保存の方法は電子帳簿保存法施行規則4条が定めています。ここでは骨格だけを示し、要件の満たし方や運用の設計は別記事に譲ります。

改ざん防止措置は4つのいずれか

施行規則4条1項は、改ざん防止措置として次の4つのいずれかを求めます*3。タイムスタンプを付してから授受する方法と、授受後速やかにタイムスタンプを付す方法の2つです。加えて、訂正削除の履歴が残る(または訂正削除ができない)システムを使う方法、正当な理由のない訂正削除を防ぐ事務処理規程を定めて運用する方法があります。どの措置を選べるかは、自社の受発注システムの仕様に左右されます。

見読可能性と検索機能

保存にあたっては、電磁的記録をディスプレイやプリンタで速やかに出力できる状態(見読可能性)が必要です*3。加えて、取引年月日・取引金額・取引先を検索条件に設定できる検索機能も求められます。検索要件は、判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者などでは不要になります。ただしこの場合も、税務調査の際に税務職員からのダウンロードの求めに応じられるようにしておく必要があります*3*4

保存する場所と期間は「書面だったらどうだったか」で決まる

施行規則4条1項柱書は、保存場所と保存期間について、書面で受領・送付したとした場合に保存すべきこととなる場所・期間に従うと定めています*3。したがって保存年限は、電子取引だからといって別枠になるわけではありません。要件をどう満たすか、責任分界をどう引くかという実装面はBtoB EC電子帳簿保存法対応で解説しています。

制度はこう変わってきた — 令和3年度から令和7年度までの改正年表

見積書のイメージ
▽ 写真の出典元

電子帳簿保存法の電子取引データ保存は、令和3年度から令和7年度まで、複数回の改正を経ています。自社の社内規程がどの時点のものかは、年表で確認できます。

図
電子取引データ保存の要件は令和3年度から令和7年度まで段階的に見直されている

令和3年度改正 — 出力書面等による保存措置の廃止

令和3年度税制改正により、令和4年1月1日以後に行う電子取引については、電磁的記録を出力した書面等で保存する措置が廃止されました*4

令和4年度改正 — 宥恕措置はすでに終了している

令和4年1月1日から令和5年12月31日までに行う電子取引に限り、旧要件のままの保存が事実上認められる宥恕措置が設けられました*4。この措置は令和5年12月31日で終了しており、現在は使えません。

令和5年度改正 — 検索要件が不要となる売上高基準の引き上げ

令和6年1月1日以後に行う電子取引からは、検索要件が不要となる売上高基準が、1,000万円以下から5,000万円以下へ引き上げられました*4。あわせて、災害等または所轄税務署長が認める相当の理由がある場合の猶予措置も設けられています。該当するかどうかの判断はBtoB EC電子帳簿保存法対応で扱っています。

令和7年度改正 — デジタルシームレス保存の新設

令和7年度税制改正では、請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度として、デジタルシームレス保存が新設されました*7。デジタルシームレス保存は、電子取引データ保存の要件を満たしていることが前提です*7

この制度で受けられる優遇措置は、重加算税の10%加重の適用除外です。国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使ったうえで、改ざん防止の確保・記帳の適正性確保・電子帳簿との相互関連性確保という要件を満たして送受信・保存し、確認できるようにしている場合、その電子取引データに関連する仮装・隠蔽行為について、重加算税の10%加重の適用対象から除外されます*7。ここでいう基準に適合するシステムとは、デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(Invoice JP PINT または JP Self-Billing)か、預貯金口座における決済データのいずれかを、上記の要件に従って保存できる機能を持つシステムを指します*7。適用は、令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税についてです*7

なお、青色申告特別控除75万円(65万円からの引き上げ)は個人事業者向けの措置です。「優良な電子帳簿」または「デジタルシームレス保存」のいずれかの要件を満たしたうえで、電子申告することが条件となります*7。適用は令和9年分以後の所得税についてであり、法人税にこの控除はありません。いずれの優遇措置も、あらかじめ届出書を提出しておく必要があります*7

自社規程の診断のしかた

社内規程が「法10条」「規則8条」を引用している場合、その規程は令和3年度改正前のものです。宥恕措置を前提にした運用が残っている場合も、その措置はすでに終了しています。個別の適用可否は所轄税務署や税理士に確認することをおすすめします。

自社の運用を診断する確認順3点/順位根拠:着手順序

  1. 社内規程やマニュアルが「法10条」「規則8条」など旧条番号を引用していないか確認します。該当すれば令和3年度改正前の規程です*6
  2. 宥恕措置を前提にした運用が残っていないか確認します。同措置は令和5年12月31日までの電子取引が対象で、すでに終了しています*4
  3. 検索要件が不要となる売上高基準を、現行の5,000万円以下で判定しているか確認します。あわせて、ダウンロードの求めに応じられる体制があるかも確認します*3*4

EDIのデータは「受け取ったそのまま」でなくてよい — 合理的な編集での保存

EDI取引で授受したデータは、受け取ったデータそのものでなくても保存要件を満たせます。この点を思い込みで捉えていると、不要な改修コストをかけてしまいます。

合理的な方法で編集したデータでの保存が認められる

EDI取引で保存すべきデータは、実際に授受したデータそのものに限定されていません。取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法で編集したデータでの保存も可能です*4

XML形式のデータをエクセル形式の一覧表に変換して保存する例

例えばEDI取引でXML形式のデータをやり取りしている場合を考えます。そのデータを一覧表としてエクセル形式に変換して保存しても、変換の過程で取引内容が変更されていなければ、合理的な編集として認められます*4。業界EDI標準・データ形式の詳細は卸売業界EDI標準移行手順の記事で扱っています。

コード変換は変換テーブルを併せて保存すれば可

内容を変更せずコードの表記だけを変更する処理も、合理的な編集として認められます。ただし、コード変換が自動的に行われることと、その変換テーブルをあわせて保存することが条件です*4。授受したデータを手動で転記して別形式のデータを作成する場合は、取引内容が変わるおそれがあるため、合理的な編集には当たりません*4

区分 該当する例
認められる編集 XML形式のデータをエクセル形式の一覧表に変換して保存する場合。
自動的なコード変換を、変換テーブルとあわせて保存する場合。
認められない編集 授受したデータを手動で転記して別形式のデータを作成する場合。

自社のEDI環境が現行の要件をどの措置で満たしているかを確認するには、無料相談で要件を整理するのが近道です。条番号の遡及確認や改ざん防止措置の選定、EDIデータの変換ロジックの妥当性検討には、法務・経理・情報システムの各知識を横断した確認が欠かせません。

関連する他の制度との境目 — 消費税・保存年限・実装は別記事が担当

見積のイメージ
▽ 写真の出典元

企業間電子商取引に関わる制度は電子帳簿保存法だけではありません。ここでは地図として全体像を示し、各論は別記事に委ねます。

消費税法との違い — 電子インボイスは書面出力での保存も引き続き可能

消費税法上、電子インボイス等は書面に出力して保存することも引き続き認められています*4。仕入税額控除の要件や適格請求書の記載事項はBtoB ECインボイス制度対応の記事で解説しています。

保存年限は各税法が定める

保存年限は法人税法上、原則7年間、欠損金が生じた事業年度は10年間です*4。年限に応じた削除・アーカイブの設計はBtoB EC受注データ保管期間設計の記事で扱っています。

対応の実装と責任分界

改ざん防止措置の選び方、社内の責任分界、対応状況のチェックはBtoB EC電子帳簿保存法対応の記事にまとめています。

まとめ:条番号・改正年表・EDI保存の3つの確認軸

本稿では、企業間電子商取引の保存制度を、条番号・改正年表・EDIデータの扱いという3つの軸で整理しました。第一に、現行の条番号は法2条5号・法7条・規則4条であり、旧「法10条」等の表記は令和3年度改正前のものです。第二に、制度は令和3年度から令和7年度まで段階的に改正されており、宥恕措置はすでに終了しています。第三に、EDI取引のデータは受け取ったそのままでなく、合理的な方法で編集した形での保存も認められます。自社の規程や運用がどの時点の要件に基づいているかを、この3つの軸で確認してみてください。


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よくある質問

「企業間電子商取引」は法律用語ですか。

法律用語ではありません。電子帳簿保存法上は「電子取引」(同法2条5号)に当たります*1

手元の資料に「法第10条」とありますが、現行の条文ですか。

現行の条文ではありません。「法第10条」は令和3年度税制改正前の表記で、現行は法第7条です*4*6

EDIで受け取ったデータをエクセル形式に変換して保存してもよいですか。

取引内容が変更されないよう合理的な方法で編集していれば、変換後のデータでの保存が認められます*4

宥恕措置はまだ使えますか。

使えません。宥恕措置は令和4年1月1日から令和5年12月31日までに行った電子取引が対象で、すでに終了しています*4

電子インボイスは紙に出力して保存してよいですか。

消費税法上は書面出力での保存も引き続き認められています。ただし、所得税・法人税に係る保存義務者としての電子データ保存義務は別途残ります*4

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(電子帳簿保存法)第2条第5号ほか(令和7年4月1日施行版)(法令本文
  2. *2 出典:同法第7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)(令和7年4月1日施行版)(法令本文
  3. *3 出典:e-Gov法令検索「電子帳簿保存法施行規則」第4条(保存の方法・改ざん防止措置・検索機能等)(令和7年4月1日施行版)(法令本文
  4. *4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)(PDF
  5. *5 出典:国税庁「電子取引関係」電子帳簿等保存制度特設サイト(特設サイト
  6. *6 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~」(令和3年度改正前版)(国税庁サイト
  7. *7 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」(令和8年6月)(PDF
  8. *8 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2025年8月26日公表)(ニュースリリース

画像の出典元

  1. 電子商取引のイメージ/Photo by Kari Shea on Unsplash
  2. 電子帳簿のイメージ/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash
  3. 見積書のイメージ/Photo by Annie Spratt on Unsplash
  4. 見積のイメージ/Photo by 2H Media on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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