◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 通販の返品運用は「受付判定」「検品の等級判定」「再販可否の判定」という3つの判定点を文書化すれば、担当者の裁量に頼らず回せます。
- 返品の受付基準は、相手がBtoCの消費者か事業者かによって適用される法令が異なります。
- 検品で通常販売に戻せないと判断した返品も、古物営業法の要件を踏まえれば再販や値引き販売に回せる場合があります。
目次
通販の返品・検品・再販の運用とは(結論と全体像)
通販の返品・検品・再販の運用とは、返品を受け付けるかどうかを取引区分と法令にもとづいて判定する業務設計です。返送された商品を検品して等級に振り分けたうえで、再販・値引き販売・廃棄のいずれかに一意に決めます。2025年度の消費生活相談では、通信販売が販売購入形態別で最多の38.0%を占めています*1。
返品運用を仕組み化する手順5点(順位根拠:着手の実施順序)
- 返品理由コードを先に定義し、受付前に取引区分(BtoC/事業者間)を判定できるようにします。
- BtoC通販の返品期間8日(特定商取引法15条の3第1項)と返品特約の有無を、受付フローの最初の分岐点にします。
- 検品等級A〜Dの判定基準とチェック項目を文書化し、担当者の裁量に依存させないようにします。
- 再販可否の判断を古物営業法2条2項1号の定義に沿って整理し、許可の要否を所轄の警察署に確認します。
- 返品率・再販率・処理リードタイムをシステム項目として保持し、理由コード別の打ち手に接続します。
受付・検品・再販の3つの判定点が運用を決める
返品運用が属人化するのは、担当者の熟練度の問題ではありません。受付・検品・再販という3つの判定点について、判断の根拠と基準が文書になっていないことが原因です。
この3点を先に決めれば、日々の判断はシステムと運用ルールに載せられます。属人的な裁量に頼る場面を減らすことが、返品運用を安定させる出発点になります。
通信販売の相談が最多の38.0%、前年度比で増加している
国民生活センターの公表によると、2025年度の消費生活相談は100.6万件で、2024年度の91.3万件から約9万件増えました*1。この相談を販売購入形態別に見ると、「通信販売」が全体の38.0%を占め、最も多い区分です*1。
ここでの38.0%は相談全体に占める通信販売の割合であり、返品トラブルに限った数値ではありません。前年度比では、通信販売に関する相談が約4.6万件増えています*1。
前提の分岐:BtoC通販と事業者間取引で返品ルールの土台が違う
通販の返品ルールは、相手が誰かによって根拠となる法令が変わります。消費者に対するBtoC通販には特定商取引法の返品規定が適用されますが、事業者間の取引は同法の適用除外です*2。
この違いを整理しないまま「返品対応」を一括りに運用すると、受付基準も検品基準も曖昧になります。次章では、この二層の構造を条文にもとづいて整理します。
返品の受付基準は「誰との取引か」で二層に分ける
BtoC通販は引渡しから8日以内、送料は原則購入者負担
特定商取引法15条の3第1項は、商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでの間、申込みの撤回または契約の解除ができると定めています*2。起算の基準は商品の引渡しを受けた日であり、「8日以内」と要約する場合も起算のタイミングを崩さないことが重要です。
同条2項により、引取りや返還にかかる費用は購入者の負担が原則です*2。返送料を自社が負担する運用にする場合は、その旨を明示しておく必要があります。
返品特約は広告と最終確認画面の両方に表示する
15条の3第1項にはただし書があり、販売業者が申込みの撤回等についての特約を広告に表示していた場合は、その特約が優先します*2。ただし書はさらに、電子消費者契約に該当する場合などについて、広告への表示に加えて主務省令で定める方法による表示も求めています*2。消費者庁のガイドラインでも、法12条の6にもとづく表示事項として撤回・解除に関する事項を挙げ、特約があればその内容を最終確認画面で示す必要があるとしています*5。
したがって「引渡しから8日間は無条件に返品できる」とは言い切れません。自社が返品特約を定めているか、それをどこに表示しているかを先に確認することが出発点になります。
事業者間取引に法定返品権はなく取引基本契約で定める
特定商取引法26条1項1号は、購入者が営業のために、または営業として締結する契約を同法の適用除外としています*2。卸売取引や事業者向け通販がこれに該当する場合、法定の返品権は生じません。
返品の可否や条件は、取引基本契約や個別契約の定めによって決めることになります。契約に定めがなければ、返品を受け付けるかどうかは自社の裁量に委ねられます。
自社が発注側に立つとき、受領拒否と返品は禁止行為となる
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)が、2026年1月1日に施行されました。この法律は、委託事業者が製造委託等をした場合に、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに給付の受領を拒むことを禁止しています(5条1項1号)*3。同じく中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、給付を受領した後にその給付に係る物を引き取らせること、つまり返品も禁止行為です(同項4号)*3。ただし役務提供委託と特定運送委託の場合は、この1号と4号は適用されません*3。
これは自社が発注する側に回る場面の規制であり、通販の顧客対応とは向きが逆です。自社の調達・発注業務で受領拒否や返品を運用ルールにしている場合は、取適法の対象になっていないかを確認する必要があります。
| 区分 | 根拠法令 | 返品の既定 | 費用負担 | 表示・明示が必要な場所 |
|---|---|---|---|---|
| BtoC通販 | 特定商取引法15条の3 | 引渡しの日から起算して8日以内は撤回・解除ができます。 特約を広告に表示していれば特約が優先します。 |
返送費用は原則として購入者の負担です(同条2項)。 | 広告と最終確認画面の両方です(15条の3第1項ただし書、法12条の6ガイドライン)。 |
| 事業者間の販売 | 特定商取引法26条1項1号 | 法定返品権はありません。 取引基本契約の定めによります。 |
契約条項によります。 | 取引基本契約書です。 |
| 自社が委託事業者側の場合 | 取適法5条1項1号・4号 | 中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに受領を拒むこと、受領後に引き取らせること(返品)は禁止行為です。 役務提供委託・特定運送委託には適用されません。 |
該当なし(禁止行為そのものが規制対象のため)。 | 該当なし。 |
返品受付の運用フローを設計する(申請から入荷まで)
返品理由コードを先に設計する
返品受付の運用を安定させるには、受付時点で理由コードを選ばせる設計が起点になります。コード例は、顧客都合・商品情報との相違・配送破損・誤出荷・初期不良の5区分です。
理由コードが後工程の検品基準や再発防止策と接続していないと、返品率を集計しても打ち手につながりません。
返品受付番号で申請と返送品を突合する
返品の申請を受けた時点で返品受付番号を発行し、同梱物・返送先・返送期限を指定します。番号がないまま返送品を受け取ると、どの申請に対応する荷物かを倉庫側で特定できません。
受付番号を出荷指示書や在庫システムの返品ステータスに紐づけておくと、入荷時の照合を機械的に進められます。
返金・交換・代替品の既定を在庫状況で分岐させない
返金・交換・代替品のどれを既定にするかは、検品前に決めておく必要があります。在庫の有無によってその場で対応を変えると、顧客への回答が担当者ごとに揺れます。
既定の対応をあらかじめ決め、在庫状況は既定を満たせない場合の例外処理として扱う設計にすると、判断が安定します。
返品理由コードの設計や受付番号の突合を手作業で回している場合、そこにかかっている工数を無料相談で確認すると、システム化すべき範囲が見えてきます。
検品の判定基準を等級で決める
等級はA未開封からD破損・欠品までの4段階
検品の合否を「使えるか使えないか」の二値で判断すると、担当者ごとに基準がぶれます。本記事では等級をA=未開封、B=開封・未使用、C=使用痕あり、D=破損・欠品の4段階に分けます。
等級ごとに次工程をあらかじめ固定しておけば、判定と処理をセットで進められます。
検品チェック項目は外装・付属品・個体番号・表示ラベル
チェック項目は、外装の状態、付属品の有無、シリアルや個体番号の一致、表示ラベルや期限表示の4つが基本です。これらは等級を問わず毎回確認する項目にします。
個体番号の照合を省くと、別の顧客の商品と取り違えるリスクが残ります。
写真記録と等級Cの二重確認で判定を属人化させない
等級判定の根拠として、開封状態や傷の有無が分かる写真を残します。特に等級C(使用痕あり)は、再販に回すか値引き販売にするかの分岐点になるため、担当者1名の判断で確定させず二重確認のラインを設けます。
記録が残っていれば、後から判定基準を見直すときの材料にもなります。
| 等級 | 判定条件 | 記録項目 | 次工程 |
|---|---|---|---|
| A(未開封) | 外装・化粧箱が未開封で、付属品の欠品がない状態です。 | 未開封であることが分かる写真と、シリアル・個体番号です。 | 通常在庫へ再入荷します。 |
| B(開封・未使用) | 開封済みだが使用痕がなく、付属品と表示ラベルが揃っている状態です。 | 外装状態の写真と、付属品チェックリストです。 | 訳あり枠、または状態次第で通常在庫です。 |
| C(使用痕あり) | 使用による傷・汚れがあるが、機能に影響しない状態です。 | 二重確認者の記録と、状態が分かる複数枚の写真です。 | 訳あり枠での値引き販売です。 |
| D(破損・欠品) | 破損・付属品欠品、または表示・期限が保てない状態です。 | 破損箇所の写真と、欠品リストです。 | 廃棄、またはメーカーへの返送です。 |
再販の可否をどう判断するか(許可の要否と表示の論点)
自社が売った相手からの買い戻しと転売に古物商許可は不要
古物営業法2条2項1号は、古物営業を「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」と定義しています*4。つまり、自己が売却した物品をその相手方から買い受けることのみを行う場合は、古物営業に当たりません。愛知県警察のQ&Aも、顧客に売った商品をその顧客から買い戻す場合や、買い戻した商品を転売する場合は許可を取得する必要がないと回答しています*4。
返品として戻ってきた商品を売り直す場面は、この除外規定に当てはまります。
第三者を介した買い受けは同じ扱いにならない
この除外規定が適用されるのは、自己が売却した相手から直接買い受ける場合に限られます。第三者を経由して買い受ける場合や、返品以外のルートで中古品を仕入れて販売する場合は、古物営業法上の扱いが変わる可能性があります。
個別の取引形態によって判断が分かれるため、許可の要否は所轄の警察署に確認することが必要です*4。
「新品」表示は未開封・表示保持が条件になる
返品された商品を「新品」として売り直せるかどうかは、未開封であることと、表示や期限表示が保たれていることが条件になります。開封済みの商品を新品と表示すると、事実と異なる表示になりかねません。
等級B以下は、新品ではなく開封済み・訳ありなどの表示に切り替える判断が必要です。
再販ルートは通常在庫・訳あり枠・卸の3方向に分岐する
等級Aは通常在庫に戻し、通常の販売チャネルで扱います。等級Bや軽微な等級Cは、訳あり枠として値引き表示のうえで販売する選択肢があります。
卸売の取引先がある場合は、まとめて卸に回すルートも検討できます。ルートを事前に決めておくと、検品後の滞留を防げます。
再販できない返品をどう処理するか
値引き販売・二次流通・廃棄の順で判断する
再販できないと判定した返品は、値引き販売、二次流通(アウトレット等)、廃棄の順で検討します。値段を下げても販売できる見込みがあるかを先に確認し、見込みがない場合に廃棄を選ぶ流れにします。
この順序を固定しておくと、廃棄量を抑える判断が仕組みとして働きます。
食品は3分の1ルールという商慣習が制約になる
食品を扱う場合、賞味期間の3分の1以内に小売店舗へ納品するという商慣習があり、「3分の1ルール」と呼ばれています*6。これは法令上の規制ではなく商慣習であり、農林水産省は賞味期限の年月表示や大括り化などによる見直しを進めています*6。
この商慣習は小売店舗への納品期限に関するものであり、返品された商品の再販一般を規律するものではありません。ただし卸として小売へ納品し直すルートを選ぶ場合は、返品品に残っている賞味期間が納品期限を満たすかどうかが実務上の制約になります。期限管理は検品の早い段階で組み込む必要があります。
廃棄量を返品発生源へのフィードバックに使う
廃棄に回った返品の理由コードと等級を記録しておくと、どの商品・どの工程が廃棄の発生源になっているかが見えます。廃棄量そのものをKPIとして扱い、商品ページの情報精度や梱包の改善につなげる運用が有効です。
返品運用をKPIで管理し、発生源を減らす
返品率・再販率・処理リードタイム・理由構成比を測る
返品運用をKPIで管理するなら、返品率、再販率、返品処理のリードタイム、理由コード別の構成比の4つを基本指標にします。これらは受付・検品・再販の3判定点それぞれに対応する指標であり、どこで滞留しているかを切り分けられます。
理由コード別に商品ページ・ピッキング・梱包を見直す
「商品情報との相違」が多い場合は商品ページの説明や画像を見直し、「誤出荷」が多い場合はピッキングの精度を点検します。「配送破損」が多い場合は、梱包資材や梱包手順の見直しが打ち手になります。
理由コードごとに担当部門を割り当てておくと、改善の責任が明確になります。
システムに返品ステータス・等級・引当除外フラグを持たせる
在庫システムには、返品ステータス、検品等級、引当除外フラグ、再販ロットの4項目を持たせます。引当除外フラグがないと、検品前の返品在庫が通常在庫として引き当てられ、出荷後に等級不良が発覚する事態が起こり得ます。
再販ロットを分けておけば、訳あり枠の在庫と通常在庫を混在させずに管理できます。
まとめ:受付・検品・再販の3つの判断軸で返品運用を仕組み化する
本稿では、通販の返品・検品・再販の運用を、受付・検品・再販という3つの判定点に分けて整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、返品の受付基準は、取引の相手がBtoCの消費者か事業者かで法的な位置づけが異なります*2。自社が発注側に立つ場面では、取適法の禁止行為にも注意が必要です*3。第二に、検品は等級A〜Dで基準化し、写真記録と二重確認で属人化を防ぎます。第三に、再販の可否は古物営業法の定義から判断でき、判断に迷う場合は所轄の警察署に確認したうえで、通常在庫・訳あり枠・卸・廃棄のいずれかに一意に振り分けます*4。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
通販の返品は無条件で受け付けなければならないのですか。
いいえ、取引の相手によって扱いが変わります。消費者向けのBtoC通販は特定商取引法15条の3により引渡しから8日以内は撤回・解除に応じる必要があります。事業者間の取引は同法の適用除外で、法定の返品義務はありません*2。返品特約を広告に表示している場合は、その特約が優先します*2。
事業者間の取引でも8日以内なら返品できますか。
できるとは限りません。特定商取引法26条1項1号により、営業のために、または営業として締結する契約は同法の返品規定の適用除外です*2。事業者間取引の返品可否は、取引基本契約や個別契約の定めによって決まります。
返品された商品を売り直すのに古物商の許可は必要ですか。
自社が売った相手から買い戻し、それを転売するだけであれば、古物営業法2条2項1号の除外規定により許可は不要です*4。ただし第三者を介した買い受けなど別の形態が絡む場合は扱いが変わり得るため、判断に迷う場合は所轄の警察署に確認することをおすすめします。
返品の送料はどちらが負担するのが原則ですか。
BtoC通販では、特定商取引法15条の3第2項により、引取りや返還にかかる費用は購入者の負担が原則です*2。事業者間取引では法定の既定がないため、取引基本契約で費用負担者を定めておく必要があります。
検品の基準は何段階に分けるとよいですか。
本記事ではA=未開封、B=開封・未使用、C=使用痕あり、D=破損・欠品の4段階を提案しています。等級ごとに次工程(通常在庫・訳あり枠・卸・廃棄)を固定しておくと、判定と処理を属人化させずに運用できます。
- *1 出典:独立行政法人国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(2026年8月5日公表)
- *2 出典:デジタル庁 e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」(現行法令・2026年8月25日確認)
- *3 出典:デジタル庁 e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」(2026年1月1日施行)
- *4 出典:デジタル庁 e-Gov法令検索「古物営業法」(現行法令)/愛知県警察「古物営業法に関するQ&A」
- *5 出典:消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」(令和6年11月19日掲載版)
- *6 出典:農林水産省「食品ロス削減に向けた商慣習見直し」(2026年8月25日取得)
画像の出典元
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