◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 電子取引データの保存は2024年1月から義務となっており、EDIの画面で見られることと、要件を満たして保存していることは分けて判断する
- 真実性はタイムスタンプ・履歴が残るシステム・事務処理規程のいずれかで確保し、事務処理規程はどのEDIの形態でも自社だけで整備できる
- 検索要件は基準期間の売上高5,000万円以下でダウンロードの求めに応じられれば不要になり、猶予措置は税務署長が相当の理由を認める場合に限られる
- 取引先提供のWeb型やASP型では、保管場所・訂正削除の履歴・検索と出力・解約後の取り出しを取引先や事業者に確認する
- 保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年(欠損金が生じた年度などは10年)で、契約を終える前に出力と自社での検索・表示を確かめる
目次

EDIの画面や取引先側にデータがあるだけで「保存している」と言えるか
取引先から届く注文や請求は、EDIの画面を開けばいつでも見られます。
それでも「これで法令どおり保存していると言えるのか」と社内で聞かれると、答えに詰まることがあります。
電子取引データの保存は2024年1月から義務になっています1。
判断の軸は、データがどこかに残っているかではありません。
改ざんを防ぐ措置、画面表示と印刷、検索という要件を自社が満たし、求められたときに出せる状態かどうかです。
満たせない部分は、事務処理規程の整備、検索要件の例外、猶予措置の順に検討できます。
2024年1月から何が変わったか
電子取引データの保存は、令和6年(2024年)1月に義務化がスタートしました1。
電子で授受した取引データを電子のまま残し、決められた要件に沿って管理することが求められています。
いま考えるべきなのは「いつから対応するか」ではありません。
すでに始まっている義務を、自社のいまの保存方法で満たせているかどうかです。
要件を満たせない場合に使える猶予措置もあります。
ただし、これは所轄税務署長が相当の理由があると認める場合の扱いです。
特段の理由がないまま要件に従っていない場合は対象になりません1。
「準備が間に合わないので、当面は画面で見られれば十分」と決めてしまうことはできません。
保存方法は、要件を満たす方向で組み立てるのが前提です。
猶予措置の条件は、検索要件の例外とあわせて後の節で整理します。
「データがある」と「要件を満たして保存している」の違い
たとえば、取引先が用意したWeb画面で毎月の請求データを受け取り、内容を確かめて支払処理をしている経理担当者を考えてみます。
過去の請求も画面から遡って見られるので、データは残っているように見えます。
では、税務調査で「昨年の4月から9月までの、ある取引先との一定額以上の取引を出してほしい」と求められたら、その画面でどこまで応えられるでしょうか。
法令上の保存で問われるのは、データが存在することそのものではありません。
改ざんされていないと説明できる措置があるか、すぐに画面へ表示し印刷できるか、取引年月日・取引金額・取引先で探し出せるか2。
加えて、必要な年数のあいだ残り続けるか、取引先との契約が終わった後も自社で出せるか、という点も実務上は欠かせません。
画面で見られる状態は、このうち表示の一部を満たしているにすぎない場合があります。
では、取引先のサービス上にデータがあれば、それで自社が保存していることになるのでしょうか。
これは利用している形態や契約の内容で事情が変わるため、一律に「足りる」とも「足りない」とも言えません。
国税庁は、電子取引を行った場合のデータの保存について、電子帳簿保存法の一問一答を参照するよう案内しています3。
公式の資料で扱いを確かめながら、上に挙げた点を自社がどこまで説明できるかを一つずつ確認していくのが確実です。
表の右側の状態を自社の作業として一つずつ埋めていくことが、保存方法を決めるということです。
その前に、EDIでやりとりしているデータのうち、どれが対象になるのかを整理しておきます。
| 確かめること | 画面で見られるだけの状態 | 要件を満たして保存している状態 |
|---|---|---|
| 改ざんの防止 | 誰が訂正・削除できるかを自社で説明できない | 規程やシステムの措置で説明できる |
| 表示と印刷 | 見られる人や期間が限られることがある | 求められたときに速やかに表示・印刷できる |
| 検索 | 画面にある検索項目に左右される | 取引年月日・取引金額・取引先で絞り込める |
| 保存期間 | 何年分残るかを把握していない | 必要な年数のあいだ残ることを確認している |
| 契約終了後 | 取り出せるか分からない | 終了前に自社へ移す手順が決まっている |
EDIで授受するどのデータが保存の対象になるか
書面で保存する書類に相当するデータ
税務上の保存は、電子帳簿保存法の「電子取引」の枠で考えます。
電子取引とは、注文書や請求書に書かれるような取引の情報を、紙ではなく電子データでやりとりすることです。
EDIで注文や請求をやりとりしているなら、まずこの枠に当てはめて整理するのが出発点です。
国税庁の一問一答は電子取引に関する問答を【電子取引関係】としてまとめて公開しています4。
自社のやりとりの扱いに迷うときは、ここで確かめられます。
どのデータが対象かを考えるときは、「もし紙でやりとりしていたら、保存していた書類か」と置き換えると整理しやすくなります。
紙の注文書を受け取っていれば保管していたはずですし、紙の請求書を送っていれば控えを残していたはずです。
EDIで同じ内容をやりとりしているなら、そのデータも同じ位置づけで考えます。
たとえば受注側の会社なら、取引先から届く注文データ、自社が返す受注確認や出荷の通知、月末に送る請求データなどが候補になります。
一方、EDIの画面には、商品マスタの更新や在庫の照会など、紙の時代には書類として残していなかった情報も流れています。
こうした情報まで含めるかは、書面に置き換えたときに取引に関する書類に当たるかで考えます。
判断に迷うものは一問一答で確かめるのが確実です。
送信側と受信側で確認すること
EDIでは、自社が送る側にも受け取る側にもなります。
注文を出す購買担当と、請求を受け取る経理担当が、同じEDIの別の画面を使っていることもあるでしょう。
どちらの立場でも、確認する項目は同じです。
立場によって変わるのは、データがどこに置かれ、自社がそれをどう扱える状態にあるかです。
送る側では、送信の元になった情報が自社の販売管理や購買のシステムに残っている場合があります。
ただ、システム上の記録を後から修正できる状態だと、送った時点の内容と一致していることを説明しにくくなります。
送った内容そのものがどこに、どの状態で残っているかを押さえておくと、この後の要件の確認が進めやすくなります。
受け取る側では、データが取引先の用意した画面や外部のサービス上にしか置かれていないことがあります。
この場合、自社の手元にファイルとして残しているのか、画面で閲覧しているだけなのかで、次に確かめることが変わります。
閲覧しているだけなら、保存期間のあいだ見られ続けるのか、自社に取り出せるのかを取引先に確認する必要が出てきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 保存の対象になりうるデータ
- 取引先から届く注文データ
- 自社が返す受注確認や出荷の通知
- 月末に送る請求データ
- 判断に迷う情報
- 商品マスタの更新
- 在庫の照会
- 判断のしかた
- 書面に置き換えたとき取引に関する書類に当たるか
- 迷うときは一問一答で確かめる
保存に求められる要件を、実際の作業に置き換える
真実性:改ざんを防ぐ措置
真実性とは、保存しているデータが改ざんされていないと説明できる状態のことです。
国税庁の説明では、次のいずれかの措置を採るとされています2。
<ul><li>データにタイムスタンプを付与する</li><li>訂正や削除の履歴が残るシステム、または訂正や削除ができないシステムで授受・保存する</li><li>不当な訂正や削除を防ぐための事務処理規程を定め、そのとおりに運用する</li></ul>
タイムスタンプは、ある時刻にそのデータが存在し、その後変更されていないことを示す仕組みです。
システムによる措置は、使っているEDIや保存先がその機能を持っているかで決まります。
受け取る側の会社は、取引先のシステムの設定を変えられません。
取引先の仕組みに頼る場合は、その機能があるかを確かめないと判断できないということです。
これに対して事務処理規程は、自社で文書を作り、社内で運用すれば講じられる措置です。
誰がデータを訂正・削除できるのか、訂正が必要になったときに誰の承認を得て、どこに記録を残すのかを定め、実際にその手順で扱います。
EDIの形態にかかわらず自社だけで準備できるため、保存方法を決めるときの土台になります。
タイムスタンプを付与する期限など、各措置の細かな条件は国税庁の資料で確かめてください。
可視性:画面表示と印刷
可視性は、保存しているデータを画面に表示し、印刷できる状態にしておくことです2。
作業に置き換えると、税務調査などでデータを求められたとき、担当者がその場で開いて見せ、紙にも出せるかどうかになります。
EDIの画面で見られる場合でも、確かめておきたいことがあります。
閲覧できるアカウントが特定の担当者だけに限られていると、その人が不在のときに表示できません。
また、取引先の画面で過去分を何年前まで表示できるかを確かめておくと、後で見る保存期間と比べて不足がないか判断できます。
検索性:日付・金額・取引先
検索性は、取引年月日・取引金額・取引先で検索でき、日付や金額は範囲を指定して、さらに2つ以上の項目を組み合わせて探せることです2。
前の節の例でいえば、「昨年4月から9月までの、ある取引先との、一定額以上の取引」を絞り込めるかどうかです。
EDIの画面に検索欄があっても、伝票番号や日付でしか探せず、金額や取引先では絞り込めない、ということもありえます。
画面の検索欄を、この三つの項目と、範囲指定・組み合わせの条件に照らしてみると、足りない部分がはっきりします。
自社で検索の仕組みを用意するのが難しい場合は、次に見る例外の条件に当てはまるかを確かめます。
▼ 図の内容を文字で読む
- タイムスタンプ
- ある時刻にデータが存在し、その後変更されていないことを示す
- 付与する期限など細かな条件は国税庁の資料で確認する
- システムによる措置
- 訂正や削除の履歴が残る、または訂正や削除ができない
- 使っているEDIや保存先がその機能を持つかを確かめる
- 事務処理規程
- 誰が訂正・削除でき、誰の承認で、どこに記録を残すかを定める
- EDIの形態にかかわらず自社だけで準備できる
検索要件が不要になる条件と、猶予措置の使い方
売上高5,000万円以下とダウンロードの求め
基準期間の売上高が5,000万円以下の会社は、税務職員からの電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じられる状態にしておけば、検索要件を満たす必要がなくなります1。
基準期間とは2課税年度前のことです1。
今年度の扱いを考えるなら、2つ前の年度の売上高で判定します。
売上が伸びている会社は、年度ごとに判定し直す必要があります。
ここで見落とせないのは、検索の仕組みが要らなくなる代わりに、求められたらデータを渡せる状態が条件になっている点です。
EDIのデータが取引先の画面で閲覧できるだけで、ファイルとして取り出せない場合、この条件を満たせるかは慎重に考える必要があります。
求めにどこまで応じればよいかの細かな扱いは、国税庁の通達や一問一答で確認しておくと安心です。
また、この例外で不要になるのは検索要件だけです。
改ざんを防ぐ措置や、画面表示と印刷ができる状態は引き続き求められます。
規模が小さいからといって、保存の要件全体が軽くなるわけではありません。
相当の理由による猶予と、使えない場合
もう一つが猶予措置です。
所轄税務署長が、要件に沿った保存ができなかったことに相当の理由があると認める場合は、事前の申請なしに、データを保存するだけでよいとされています1。
資金繰りや人手不足などの特段の理由がないのに、あえて要件に従っていない場合は対象になりません1。
事前申請が要らないからといって、使えることがあらかじめ確認されているわけではありません。
相当の理由があるかは税務署長が個別に判断するため、自社だけで「猶予が使える」と決めて保存方法を組み立てるのは危うい面があります。
猶予に頼る場合でもデータ自体は保存しておく必要があります。
そのうえで、要件を満たせていない理由と、いつまでに何を整えるかを社内で記録しておくと、説明を求められたときに経緯を示せます。
検討の順序を整理すると、まず要件そのものを満たせるかを確かめます。
検索だけが難しければ売上高の例外に当てはまるかを見ます。
それでも満たせない部分が残る場合に、猶予の対象になりうるかを考えます。
上から順に確認していけば、自社で追加の対応が必要な部分が見えてきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 要件を満たせるか確認:真実性・可視性・検索性を自社の仕組みや規程で満たせるか
- 検索要件の例外に当てはまるか:基準期間の売上高5,000万円以下で、ダウンロードの求めに応じられるか
- 猶予措置の対象になりうるか:税務署長が相当の理由を認める場合。データの保存は必要
EDIの形態で、データが自社に残るかと要件の満たし方はどう変わるか
比較表:保管場所・真実性・検索と出力・解約後
ここまでの要件を、自社のEDIの形態に当てはめてみます。
EDIには、自社のシステムで取引先とデータを送受信する形、取引先が用意したWeb画面に自社がログインして使う形、外部の事業者が提供するサービス(ASP)を介して送受信する形などがあります。
形態によって、データがどこに置かれ、どの要件を誰の仕組みで満たすのかが変わります。
表は形態ごとの確認先を整理したもので、どの形態なら要件を満たせるかという適否を示すものではありません。
判断が分かれやすいのは、取引先提供のWeb型です。
この形では、データは取引先の管理下にあり、自社はその画面を借りて見ている立場になります。
真実性をシステムの機能で満たせるか、検索項目が要件に合うか、契約終了後も見られるか。
どれも取引先の仕組み次第で、自社から問い合わせない限り分かりません。
ASP型は、自社が事業者と直接契約している場合と、取引先が契約したサービスに自社が招かれて使う場合とで、確認の相手が変わります。
自社が契約者なら、契約書や利用規約で保存期間や終了時の扱いを確かめられます。
取引先の契約で使っている場合は、取引先を通じて確認することになります。
自社システム型はデータが手元にある分、確認先は自社です。
それでも、システムの入れ替えや保存先の移行のときに、過去分を検索・表示できる状態で引き継げるかという課題は残ります。
どの形態でも自社だけで用意できるのは、事務処理規程による真実性の確保です2。
取引先の仕組みに頼る部分を減らし、自社で説明できる部分を先に固めておくと、取引先への確認事項も絞り込めます。
取引先へ確認する項目
取引先やサービス事業者に問い合わせるときは、要件と保存期間に結びつく形で聞くと、回答から判断しやすくなります。
たとえば次のような項目です。
<ul><li>データは何年分、どこに保存され、閲覧できる期間に制限があるか</li><li>取引データの訂正や削除は誰がどんな場合にでき、その履歴は残るか</li><li>取引年月日・取引金額・取引先で検索でき、範囲指定や組み合わせに対応しているか</li><li>データをファイルとして自社に出力できるか、一度にどの範囲まで出せるか</li><li>契約や利用を終えるとき、データはいつまで、どの方法で取り出せるか</li><li>閲覧や出力ができる自社のアカウントを複数持てるか</li></ul>
回答は担当者の口頭説明だけで済ませず、契約書や利用規約、操作説明書など、後から示せる形で残しておくと、社内の規程や保存方法の根拠として使えます。
回答の結果、要件を満たせない項目があれば、その項目だけを自社で補う方法を考えます。
たとえば検索や出力が難しい場合は、定期的にデータを出力して自社の保存先で管理する方法が候補になります。
そのときは、自社の保存先で要件を満たせるかをあらためて確かめます。
| 確認する軸 | 自社システム型 | 取引先提供のWeb型 | ASP型 |
|---|---|---|---|
| データの保管場所 | 自社のシステム内(自社で確認) | 取引先のシステム上(取引先に確認) | 事業者のシステム上(事業者に確認) |
| 真実性の措置 | システムの機能か事務処理規程(自社で確認) | 機能は取引先に確認・規程は自社で整備 | 機能は事業者に確認・規程は自社で整備 |
| 検索と出力の手段 | 自社システムの検索と出力(自社で確認) | 画面の検索項目と出力の可否(取引先に確認) | サービスの検索項目と出力の可否(事業者に確認) |
| 解約後の取り出し | 自社内に残る(保存先の移行時に確認) | 終了時の扱い(契約・規約を取引先に確認) | 終了時の扱い(契約・規約を事業者に確認) |
▼ 図の内容を文字で読む
- 保存期間と閲覧
- 何年分、どこに保存され、閲覧できる期間に制限があるか
- 閲覧や出力ができる自社のアカウントを複数持てるか
- 真実性と検索
- 訂正や削除は誰がどんな場合にでき、履歴は残るか
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索でき、範囲指定や組み合わせに対応しているか
- 出力と契約終了
- データをファイルとして自社に出力できるか
- 契約や利用を終えるとき、いつまで、どの方法で取り出せるか
保存期間は何年か、契約を終える前に自社へ残す確認
原則7年、欠損金が生じた場合は10年
保存の年数は、国税庁が法人の帳簿書類と取引関係書類について示している期間が基準になります。
その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間が原則です3。
青色申告で欠損金(青色繰越欠損金)が生じた事業年度などは、10年間になります3。
いずれも2025年時点の法令等に基づく国税庁の説明です3。
数え始めは、取引をした日でも決算日でもなく、確定申告書の提出期限の翌日です。
ある事業年度の最初の月に受け取った注文データは、その事業年度が終わり、申告書の提出期限を過ぎた翌日から、さらに7年残しておくことになります。
取引の日から数えると、実際に手元に置いておく期間は7年より長くなります。
10年になるかどうかは、その事業年度に欠損金が生じたかで決まるため、データを受け取った時点では分からないこともあります。
保存期間を事業年度ごとに管理し、欠損金が生じた年度は経理から知らせを受けて期限を延ばす、といった運用を決めておくと、期限前のデータを誤って消すことを避けやすくなります。
解約前にデータを取り出せるかの確認
保存期間が長いため、その間に取引先との契約が終わったり、使っているEDIを切り替えたりすることは十分に考えられます。
取引先のサービス上にデータがある場合、契約が終わった後もそのデータを見られるか、取り出せるかは契約によって異なります。
保存期間が終わるより先に契約が終わる可能性があるなら、その前に自社へデータを移しておく準備が必要です。
移したデータを、移した後も要件を満たした状態で保てるかは、一律には言えません。
そこで、契約を終える前に、少なくとも次の流れで確かめておくことをおすすめします。
まず契約書や利用規約で、終了時の扱いと取り出せる期限を確かめます。
次に実際に出力して、必要な年度と項目がそろっているかを見ます。
そのうえで、自社の保存先で取引年月日・金額・取引先から探せるか、画面に表示し印刷できるかを確かめます。
最後に、移行した日付や範囲、担当者を事務処理規程に沿って記録します。
出力を試すのは契約終了の直前ではなく、余裕のある時期にしておくと、足りない項目が見つかっても取引先と調整する時間が残ります。
保存方法を決めるとは、データの置き場所を一つ選ぶことではありません。
要件、保存期間、契約の終わりの3つを並べて、どの時点でも自社がデータを出せる状態を保つ道筋を決めることです。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引・データの授受:事業年度中にEDIで注文や請求をやりとりする
- 事業年度の終了:決算日はまだ数え始めではない
- 確定申告書の提出期限:この翌日から数え始める
- 原則7年間:青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年間
EDIの形態や取引先の仕組みによって、どの要件を自社で補うべきかは会社ごとに異なり、取引先の回答と要件を照らし合わせる作業は社内だけでは整理しにくいことがあります。
いま使っているEDIでデータがどこに置かれ、どう取り出せるかを整理し、取引先へ確認すべき項目を絞り込めます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 保存していると言える状態 | 改ざん防止・表示と印刷・検索の要件を満たし、求めに応じて出せる |
| 保存の対象 | 紙でやりとりしていたら保存していた書類に相当するデータ |
| 真実性 | タイムスタンプ、履歴が残るシステム、事務処理規程のいずれか |
| 検索要件の例外 | 基準期間の売上高5,000万円以下で、ダウンロードの求めに応じられる |
| 猶予措置 | 税務署長が相当の理由を認める場合。事前申請は不要でもデータの保存は必要 |
| 保存期間 | 申告書の提出期限の翌日から原則7年、欠損金が生じた年度などは10年 |
| 契約終了前 | 終了時の扱いを確かめ、出力して自社で検索・表示できるかを試す |
▼ 図の内容を文字で読む
- 契約・規約を確認:終了時の扱いと取り出せる期限
- 出力を試す:必要な年度と項目がそろうか
- 自社の保存先で確認:取引年月日・金額・取引先から探せるか、表示と印刷ができるか
- 記録を残す:移行日・範囲・担当者を事務処理規程に沿って記録
契約の終了やEDIの切り替えを控えている場合、保存期間内のデータをどの順で自社へ移すかを先に決めておく必要があります。 出力するデータの範囲と、移行後の保存先で検索・表示を確かめるために何が必要かを整理できます。
よくある質問
EDIデータは紙に出力して保存してもよいですか。
要件は、電子データを保存したうえで、画面に表示し印刷できる状態にしておくことを求めています2。
印刷は保存したデータを確かめる手段として位置づけられており、紙を残せばデータを消してよい、という扱いは要件からは読み取れません。
猶予措置が使える場合でも、求められているのはデータの保存です1。
紙の控えは社内の確認には役立ちますが、データの保存とは分けて考えてください。
取引先のEDIサービスを解約するとき、データはどう取り出せばよいですか。
取り出し方法や期限は契約ごとに異なるため、まず契約書や利用規約で終了時の扱いを確認します。
そのうえで実際にデータを出力し、必要な年度と項目がそろっているか、自社の保存先で取引年月日・金額・取引先から探せるかを試しておくと安心です。
移行後も要件を保てるかは一律に言えないため、出力の結果と移行の記録を残し、判断に迷う点は国税庁の一問一答で確かめてください4。
事務処理規程には何を書けばよいですか。
事務処理規程は不当な訂正や削除を防ぐための社内ルールで、整備したうえで実際に運用することが求められます2。
たとえば、対象とするデータの範囲、訂正や削除をしてよい場合と申請・承認をする人、訂正・削除したときの記録の残し方、保存先と保存期間、規程の管理責任者などを定めておくと、運用で迷いにくくなります。
記載すべき内容の詳細は、国税庁の資料で確かめてから定めてください。
売上高5,000万円以下の場合、検索機能はまったく不要ですか。
検索要件は不要になりますが、税務職員からのダウンロードの求めに応じられる状態にしておくことが条件です1。
改ざんを防ぐ措置と、画面表示・印刷ができる状態は引き続き必要です。
売上高は基準期間(2課税年度前)で判定するため1、年度ごとに当てはまるかを見直します。
求めにどこまで応じる必要があるかは、国税庁の通達や一問一答で確認しておくと安心です。
保存期間の7年は、いつから数えますか。
その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から数えます3。
取引の日や決算日ではありません。
青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年間になります3。
- 1 出典:財務省「広報誌「ファイナンス」令和6年8月号 特集 電子帳簿等保存制度の内容と中小企業の対応策」(2024年)
- 2 出典:国税庁「電子帳簿保存法 Ⅱ適用要件【基本的事項】」
- 3 出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間及び保存方法」(2025年時点の法令等)
- 4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答」