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EDIの運用保守に必要な仕事と要員の考え方|社内・委託・併用の選び方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • EDIの運用保守は、毎日の監視とエラー対応、取引先の追加・仕様変更への対応、システムと通信回線の保守・更新に分けると、抜けている役割が見える
  • 要員は人数から決めず、取引先の数、データの量と届く時刻、接続方式、対応時間帯、停止時の影響から役割を割り出し、担当と代わりを埋めていく
  • 障害や変更依頼の場面では、一次対応・取引先調整・判断を分けておくと、原因調査と取引先への連絡を並行して進められる
  • 旧来の回線型の手順を使う取引先がある場合に限り、報道で2027年ごろとされる補完策の終了を踏まえて、移行の調整を運用の仕事に加える
  • 委託しても、取引先調整の窓口と判断の権限、取引先一覧と手順書は自社に残す

A businessman sitting at a desk, appearing stressed while working at a computer in a bright office.
▽ 写真の出典元

担当者が一人のEDI運用で、止まったときに困ること

取引先からの注文データが、朝になっても届いていない。
そのときEDIの仕組みを分かっている人が一人しかおらず、その人が休みなら、受注は手探りの確認に頼るしかありません。
担当者の退職や異動が決まっている場合も同じです。
EDIの運用保守は、毎日の監視とエラー対応、取引先の追加・仕様変更への対応、システムと通信回線の保守・更新の3つに分けると、抜けている役割が見えてきます。
要員は人数からではなく、取引先の数や止まったときの影響などの条件から見積もります。
社内で持つか、委託するか、併用するかは、引き継ぎやすさ、夜間・障害時の対応、取引先調整の担い手、停止時の影響で選びます。

毎日の監視とエラー対応

EDIは、受発注などの取引データを、企業間で決めた形式のまま電子的にやり取りする仕組みです。
受注側の会社なら、取引先から届いた注文データを受け取り、自社の販売管理や出荷の仕組みへ取り込むまでが毎日の流れです。
この流れが一度途切れると、注文があったことに社内の誰も気づかないまま、出荷の締めを迎えることがあります。

毎日の仕事として最初にあるのは、データが届いているかを見ることです。
次に、届いたデータが自社のシステムへ正しく取り込まれたかを確かめます。
取り込みでエラーが出ていれば、原因を探して直し、必要なら取り込み直します。
たとえば取引先が新しい商品を発注してきたのに、自社側にその商品コードが登録されていなければ、その注文の行だけが取り込めずに残ることがあります。

担当者が一人の体制で困るのは、この確認と修正が、その人の頭の中にある手順で回っている点です。
どの画面を見れば受信状況が分かるのか、エラーの記録がどこに残るのか、直した後にどこから再実行するのかが書き残されていなければ、担当者が休んだ日には誰も手を出せません。
受注への影響を大きくするのは、止まった原因そのものより、止まったことに気づくのが遅れること、そして気づいても直し方が分からないことです。

取引先の追加・仕様変更への対応

随時発生するのは、取引先とのやり取りに伴う変更です。
新しい取引先とEDIでつなぐ、既存の取引先が送ってくるデータの項目や形式が変わる、発注の締め時刻や送信のタイミングが変わる。
こうした依頼は、こちらの都合と関係なく届きます。

変更のたびに必要になる仕事は3つあります。
取引先の担当者と仕様を突き合わせること、自社側の設定や変換の内容を合わせること、本番の前に試しのデータで送受信を確かめることです。
日々の監視と違い、取引先との会話が中心になります。
担当者が一人だと、監視をしながら試験の日程を調整し、問い合わせにも答えることになり、どちらかが後回しになりがちです。

取引先ごとの個別対応がどれだけ発生するかは、使っている方式によって変わります。
中小企業庁のミラサポplusは、中小企業共通EDIの標準について、受注側は標準に対応したプロバイダーと業務アプリを使えば導入でき、発注側も対応プロバイダーと契約すれば自社の既存システムを使い続けられると説明しています1。
受注データの変換は、プロバイダーが共通の辞書に沿って行う仕組みです1。
この標準に沿ってつながっていれば、取引先ごとに自社で変換の設定を作り込む場面は少なくなると考えられます。
ただし、これは共通EDIの標準を使う場合の話です。
取引先ごとに専用の形式でつないでいる部分が残っていれば、その分の対応は、自社か委託先の仕事として残ります。

システムと通信回線の保守・更新

定期的な仕事は、EDIを動かしている仕組みそのものの保守です。
EDIのソフトやサービスの更新への対応、サーバーやパソコンの入れ替え、接続に使うIDやパスワードの管理、通信回線の契約や機器の見直しがこれに当たります。
頻度は高くありませんが、一度に作業量が膨らみ、取引先との接続にも影響しやすい仕事です。

更新や入れ替えについて、前回いつ、誰が、どの手順で行ったかが残っていなければ、次の担当者はゼロから調べ直すことになります。
年に一度の作業ほど記憶に頼りやすく、担当者が替わった直後にシステムが止まる原因にもなります。

ここまでの3つの区分は、運用保守の仕事を見渡すための整理です。
実際にどの作業がどの区分にどれだけあるかは、取引先との取り決めと使っている方式で変わります。
取引先が用意した画面にログインして注文を見るWeb-EDIなら、自社でサーバーを持って保守する仕事はほとんどありません。
その代わり、取引先ごとに画面の操作やIDの管理が増えます。
自社のシステムと取引先を回線やインターネットでつなぐ方式なら、仕組みの保守は自社か委託先が引き受けます。

区分 起きるタイミング 主な仕事 一人体制で止まりやすい所
毎日の監視とエラー対応 毎日 受信の確認・取り込みの確認・エラーの修正 休みの日に気づく人と直す人がいない
取引先の追加・仕様変更への対応 取引先からの依頼のたび 仕様のすり合わせ・設定変更・試験の送受信 監視と並行するため日程調整や問い合わせへの回答が滞る
システムと通信回線の保守・更新 定期・不定期 ソフトの更新・機器の入れ替え・ID管理・回線の見直し 前回の手順が残っておらず調べ直しになる

EDI運用保守の要員は人数ではなく条件で見積もる

見積もりに使う入力項目

EDIの運用保守に何人いれば足りるかについて、公的に示された目安があるわけではありません。
同じ取引先の数でも、注文が届く時刻、止まったときの困り方、使っている方式によって、人の動き方が変わるからです。
そこで、人数から考え始めるのではなく、自社の条件を並べ、そこから必要な時間帯と役割を割り出すことを勧めます。
このほうが抜けを見つけやすくなります。

見積もりに使う入力項目として、次の5つを提案します。

  • 取引先の数
  • データの量と、届く時刻の偏り
  • 接続方式の種類(Web-EDI、インターネット経由、旧来の回線型)
  • 対応が必要な時間帯(早朝・夜間・休日を含むか)
  • 止まったときの影響(どれだけ止まると出荷や請求に響くか)

取引先の数は、変更依頼がどれくらいの頻度で来るかに関わります。
データの量と届く時刻は、毎日の監視をいつ、どれだけ行うかを決めます。
たとえば取引先の多くが早朝に注文を送ってくるなら、始業前に受信を確認する人が必要です。
接続方式は、仕組みの保守を自社でどこまで持つかを分けます。
対応が必要な時間帯と停止時の影響は、代わりの人を何人用意するかに直結します。
注文が止まっても翌営業日の対応で間に合う取引と、当日中に出荷しないと取引先の店頭や生産に響く取引とでは、待てる時間がまったく違います。

これらは実測に基づく基準ではなく、自社の状況を言葉にするための項目です。
取引先一覧に、接続方式、データが届く時刻、止まったら何時間で困るかを書き足すだけでも、どこに人を厚く置くべきかが見えてきます。

役割が欠けていないかの確認

条件を並べたら、次は仕事を役割に分け、それぞれに担い手がいるかを確かめます。
提案する役割は、次の5つです。

  • 監視:データの受信と取り込みを毎日確認する
  • エラー修正:取り込めなかった注文の原因を探し、直して再実行する
  • 取引先との連絡:障害時に連絡し、変更依頼では仕様の確認と試験の調整を行う
  • 判断:手作業に切り替えるか、変更を受けるかなどを決める
  • 記録:手順書と、取引先ごとの取り決めを最新に保つ

一人が複数の役割を兼ねること自体は、小さな体制なら自然な形です。
問題は、ある役割の担い手が一人しかおらず、その人がいないときの代わりが決まっていない状態です。
監視とエラー修正を一人が担い、判断も同じ人に任されていると、その人が不在の日にデータが止まっても、誰も動けません。

人数は、この役割を埋めた結果として出てくるものです。
たとえば、注文が日中に集中し、止まっても翌日の対応で間に合う取引が中心なら、監視とエラー修正の代わりを一人決めておけば回る可能性があります。
反対に、早朝の注文が当日の出荷に直結し、休日も注文が届くなら、監視の時間帯を交代で埋める人数か、外部の手を借りる必要が出てきます。
役割ごとに担い手と代わりの名前を書き入れ、空欄が残ったところを不足とみなすほうが、何人と先に決めるより自社の実情に合った見積もりになります。

毎日の監視とエラー対応の流れ
データの受信を見て、取り込みを確かめ、エラーなら原因を探して直し、必要なら取り込み直す4段階の流れ1データが届いているかを見る2自社のシステムへ正しく取り込まれたかを確かめる3エラーなら原因を探して直す4必要なら取り込み直す

▼ 図の内容を文字で読む
  1. データが届いているかを見る
  2. 自社のシステムへ正しく取り込まれたかを確かめる
  3. エラーなら原因を探して直す
  4. 必要なら取り込み直す

障害や取引先の変更依頼が来たときの役割分担

一次対応・取引先調整・判断の分け方

役割を決めても、実際に止まったときに誰が最初に動くのかが曖昧なら、役割は使われません。
障害と取引先からの変更依頼という2つの場面に当てはめて、一次対応・取引先調整・判断の3つに分けておくことを提案します。

たとえば、毎朝届くはずの取引先の注文データが、始業時に確認しても届いていなかったとします。
一次対応の担当は、自社側の受信の仕組みが動いているか、取り込みでエラーが出ていないかを確かめ、原因が自社側にあるのか、取引先側や通信の途中にあるのかを切り分けます。
取引先調整の担当は、取引先の担当者に送信状況を問い合わせ、再送を頼むか、当日だけメールなど別の手段で注文内容を受け取るかを相談します。
判断の担当は、待てる時刻までに復旧しないとき、別の手段で受けた注文を手入力して出荷を進めるかを決めます。

この3つを分けておくと、一次対応の担当が原因を調べている間に、取引先への連絡と社内の判断を並行して進められます。
一人で全部を抱えると、原因を調べ終わるまで取引先への連絡が遅れます。
その間、取引先も状況が分からないまま時間が過ぎていきます。

取引先からの変更依頼でも、分け方は同じです。
取引先調整の担当が依頼の内容と期限を受け取り、一次対応の担当が自社側で必要な設定や試験の作業量を見積もり、判断の担当が期限までに対応できるか、どこまで受けるかを決めます。
依頼をそのまま技術の担当へ渡してしまうと、期限や優先度を誰も判断しないまま作業が始まり、日々の監視が手薄になることがあります。

この表のそれぞれの欄には、担当者の名前と、その人が不在のときの代わりの名前を書き入れておきます。
夜間や休日に誰へ連絡が行くのかも、一次対応の欄で決まります。

外部の相談先

社内の役割を埋めきれないとき、相談できる先があるかどうかも体制の一部です。
中小企業共通EDIについては、ITC協会が導入後の運用の支援や企業間の調整、製品の紹介などの相談を受け付けていると、ミラサポplusで紹介されています1。
取引先との間で仕様をどう合わせるかなど、社内だけでは決めにくい調整の場面で相談できる相手です。

ただし、この記載は中小企業共通EDIに関するものです。
取引先ごとに個別の形式でつないでいるEDIや、ほかの方式の運用保守にも当てはまるとは限りません。
日々の障害対応で最初に頼る先は、使っているEDIのソフトやサービスの提供元のサポートです。
そのサポートがどの時間帯に、どこまで対応するかは契約によって違います。
一次対応の欄に外部の名前を書くなら、その時間帯に実際に連絡がつくかを契約で確かめておく必要があります。

場面 一次対応 取引先調整 判断
注文データが届かない 受信と取り込みの状況を確かめ原因を切り分ける 取引先へ送信状況を問い合わせ再送や別手段を相談する 待てる時刻を過ぎたら手入力で出荷を進めるかを決める
取り込みでエラーが出た エラーの原因を調べて直し再実行する 取引先側のデータに原因があれば修正と再送を頼む 当日中に直らない注文の扱いを決める
取引先から仕様変更の依頼が来た 自社側の設定と試験の作業量を見積もる 内容と期限を受け取り試験の日程を合わせる 期限までに受けられるかと優先度を決める
見積もりの入力項目と、それぞれが決めること(模式図)
取引先の数、データの量と届く時刻、接続方式、対応時間帯と停止時の影響が、何の判断に関わるかを分けた図取引先の数、データの量と届く時刻、接続方式、対応時間帯と停止時の影響が、何の判断に関わるかを分けた図取引先の数変更依頼がどれくらいの頻度で来るかデータの量と届く時刻毎日の監視をいつ、どれだけ行うか接続方式仕組みの保守を自社でどこまで持つか対応が必要な時間帯と止まったときの影響代わりの人を何人用意するか

▼ 図の内容を文字で読む
  • 取引先の数
    • 変更依頼がどれくらいの頻度で来るか
  • データの量と届く時刻
    • 毎日の監視をいつ、どれだけ行うか
  • 接続方式
    • 仕組みの保守を自社でどこまで持つか
  • 対応が必要な時間帯と止まったときの影響
    • 代わりの人を何人用意するか

通信回線の変更が自社のEDI運用に関わるか

自社の方式の確認

通信回線の変更が運用保守の仕事に加わるかどうかは、自社がどの方式で取引先とつながっているかで決まります。
同じ会社の中でも、取引先によって方式が違うことがあります。
ある取引先とは相手が用意したWeb-EDIの画面で注文を受け、別の取引先とは昔からの電話回線を使う手順でデータを送受信している、という組み合わせもありえます。

手がかりになるのは、取引先ごとの接続の取り決めです。
ブラウザで取引先の画面にログインして注文を見ているなら、Web-EDIです。
自社のシステムがインターネットを通じて取引先やEDIサービスとつながっているなら、インターネット経由の方式です。
電話回線につないだ通信用の機器やソフトで、決まった時刻に送受信しているなら、旧来の回線型の手順を使っている可能性があります。
一人体制の会社では、この区別自体が担当者の頭の中にしかないことがあります。
取引先一覧に方式の欄を設けて書き出しておくと、後の点検の土台になります。

Web-EDIやインターネット経由の方式だけで取引しているなら、次に述べる回線の移行は、点検の対象から外れる可能性が高いと考えられます。
その場合も、取引先側から方式の変更を案内されることはあるので、取引先からの通知を受け取る窓口は決めておきます。

回線型の手順を使う場合の移行調整

旧来の回線型の手順を使っている場合は、通信回線の終了が運用保守の予定に直接関わります。
報道によれば、INSネットのディジタル通信モードは2024年に終了しました。
移行が間に合わない利用者向けに補完策が用意されましたが、その補完策も2027年ごろをめどに終了する予定とされています2。
これは報道による情報です。
自社の回線や契約にいつまで猶予があるかは、通信事業者の公式な案内と自社の契約内容で確かめる必要があります。

移行は自社だけでは完結しません。
まず、回線型の手順でつながっている取引先が、いつ新しい方式に切り替える予定か、自社にどの方式への移行を求めているかを確かめます。
取引先が複数あれば、移行の時期や方式がそれぞれ違うこともあり、そのたびに仕様のすり合わせと試験の送受信が必要です。
移行の期間中は、取引先の追加・仕様変更への対応と、システムと通信回線の保守・更新が同時に増えることになります。

この負荷は一時的ですが、ふだんの監視やエラー対応と並行して進めなければなりません。
一人体制の会社が移行を抱えると、試験の日程調整に追われて、毎日の確認が手薄になるおそれがあります。
移行の期間だけ外部の支援を入れるか、社内で取引先調整の担当を別に立てるかを早めに決めておけば、ふだんの運用を守りやすくなります。

注文データが届かないときの役割分担の例(模式図)
毎朝の注文データが届かない場面で、一次対応・取引先調整・判断の担当がそれぞれ行うことを分けた図毎朝の注文データが届かない場面で、一次対応・取引先調整・判断の担当がそれぞれ行うことを分けた図一次対応受信の仕組みと取り込みエラーを確かめる原因が自社側か、取引先側や通信の途中かを切り分ける取引先調整取引先に送信状況を問い合わせる再送を頼むか、メールなど別の手段で受け取るかを相談する判断待てる時刻までに復旧しないとき、手入力で出荷を進めるかを決める

▼ 図の内容を文字で読む
  • 一次対応
    • 受信の仕組みと取り込みエラーを確かめる
    • 原因が自社側か、取引先側や通信の途中かを切り分ける
  • 取引先調整
    • 取引先に送信状況を問い合わせる
    • 再送を頼むか、メールなど別の手段で受け取るかを相談する
  • 判断
    • 待てる時刻までに復旧しないとき、手入力で出荷を進めるかを決める

EDI運用保守を社内・委託・併用のどれにするかの選び方

比較の4つの軸

社内で運用保守を持つか、外部に委託するか、両方を組み合わせるかは、ここまでに分けた仕事と役割を誰に割り当てるかの問題です。
選ぶときの軸として、次の4つを提案します。

  • 引き継ぎやすさ
  • 夜間・障害時の対応
  • 取引先調整の担い手
  • 停止時の影響

引き継ぎやすさは、担当者が替わっても運用が続くかどうかです。
社内で持てば知識は社内に残りますが、一人に集まっていれば、その人の退職や異動と同時に失われます。
委託すれば、委託先の中で担当が替わっても対応が続く形にできます。
その一方で、社内に仕組みを理解する人がいなくなり、委託先を替えるときの引き継ぎが難しくなります。

夜間・障害時の対応は、データが届く時間帯に、止まったら誰が動けるかの問題です。
社内だけで早朝や休日を埋めるには、交代できる人数が必要です。
委託先が時間外の監視や一次対応を引き受ける契約なら、その時間帯を外部で埋められます。
ただし、どこまで対応するかは契約の内容次第です。

取引先調整の担い手は、取引先とのやり取りを誰が行うかです。
仕様の変更を受けるかどうか、期限をどうするかは取引関係そのものに関わります。
そのため、技術の作業を外に出しても、取引先と話して決める役割は社内に残すのが自然です。
委託先が技術的な仕様の確認を代わりに行う場合でも、受けるかどうかの判断は自社がする形にしておかないと、取引先から見て窓口が分かりにくくなります。

停止時の影響は、ほかの3つの軸をどれだけ重く見るかを決めます。
止まっても翌日の対応で間に合う取引が中心なら、夜間の体制を厚くする必要は小さくなります。
止まるとその日の出荷に響く取引が多いなら、時間外の対応と代わりの人を優先して考えることになります。

状況別の選び方

これらの軸を、よくある状況に当てはめてみます。
以下は判断の筋道を示すための例で、どの会社にも当てはまる正解ではありません。

取引先がそれほど多くなく、注文が日中に届き、止まっても翌日の対応で間に合う場合は、社内で持つ形を取りやすい状況です。
このとき不足しやすいのは人数より引き継ぎやすさです。
手順書を整え、監視とエラー修正の代わりを一人決めておくことが先になります。

早朝や休日にも注文が届き、止まると当日の出荷に響く場合は、時間外の監視と一次対応を委託し、取引先調整と判断を社内に残す併用が候補になります。
社内だけで交代の人数をそろえるより、時間帯で役割を分けるほうが現実的な場合があります。

担当者の退職や異動が決まり、社内に引き継ぐ相手がいない場合は、委託を考える前に、今の担当者がいるうちに何を引き継ぐかを書き出すことが先です。
委託先に渡す資料も社内の後任に渡す資料も、中身は同じだからです。
そのうえで、社内に後任を立てるか、日々の作業を外に出すかを決めます。

回線型の手順からの移行のように、期間の限られた大きな作業を抱えている場合は、ふだんの運用は社内のまま、移行の作業だけ外部の支援を入れる分け方もあります。
移行が済めば元の体制に戻せるので、ふだんの体制をどうするかの判断とは切り離して考えられます。

接続方式の見分け方と、回線移行の点検対象(模式図)
Web-EDI、インターネット経由、旧来の回線型の3方式について、見分ける手がかりと回線移行の点検に関わるかを分けた図Web-EDI、インターネット経由、旧来の回線型の3方式について、見分ける手がかりと回線移行の点検に関わるかを分けた図Web-EDIブラウザで取引先の画面にログインして注文を見ている回線の移行は点検の対象から外れる可能性が高いインターネット経由自社のシステムがインターネットで取引先やEDIサービスとつながっている回線の移行は点検の対象から外れる可能性が高い旧来の回線型電話回線につないだ機器やソフトで、決まった時刻に送受信している通信回線の終了が運用保守の予定に直接関わる

▼ 図の内容を文字で読む
  • Web-EDI
    • ブラウザで取引先の画面にログインして注文を見ている
    • 回線の移行は点検の対象から外れる可能性が高い
  • インターネット経由
    • 自社のシステムがインターネットで取引先やEDIサービスとつながっている
    • 回線の移行は点検の対象から外れる可能性が高い
  • 旧来の回線型
    • 電話回線につないだ機器やソフトで、決まった時刻に送受信している
    • 通信回線の終了が運用保守の予定に直接関わる

委託するときに自社に残すことと、最初の点検

任せることと残すこと

委託を選ぶ場合も、すべてを外に出せるわけではありません。
取引先との調整の窓口と、変更を受けるか、障害時に手作業へ切り替えるかといった判断の権限は、自社に残すことを提案します。
これらは取引の条件や出荷の優先度と結び付いていて、委託先には決められないからです。

任せる候補になるのは、毎日の監視、エラーの切り分けと修正、ソフトの更新や機器の入れ替えといった技術の作業です。
取引先からの変更依頼も、自社が受けると決めた後の設定や試験の作業なら委託先に任せられます。
一方、取引先ごとの方式や取り決めの一覧は、委託先が管理していても、自社が中身を把握し、いつでも取り出せる状態にしておきます。
委託先を替えるときや契約を見直すときに、この一覧が社内になければ、何を任せていたのかさえ分からなくなります。

契約・引き継ぎの確認項目

委託の契約や引き継ぎで決めておきたい項目は、次の4つです。

  • 対応時間帯:監視と一次対応を、どの曜日・時間帯に行うか
  • 連絡経路:障害に気づいたとき、委託先から自社の誰へどの手段で連絡が来るか、自社から委託先へはどう連絡するか
  • 対応範囲:取引先の追加や仕様変更の作業を含むか、含むならどこまでか
  • 手順書の引き渡し:委託先が作った手順書や設定の記録を、自社が受け取れるか

サポートの時間帯や対応範囲は、提供元や契約によって違います。
夜間の監視は含まれていても、修正作業は翌営業日になる、という形もありえます。
役割表の一次対応の欄に委託先の名前を書くなら、その時間帯に実際に誰が何をするのかを契約の文言で確かめておくと、止まったときの食い違いが減ります。

手順書の引き渡しが効いてくるのは、委託の開始時より終了時です。
委託先を替える、あるいは社内に戻すときに、設定や手順の記録が手元になければ、担当者が一人で抱えていたときと同じ問題が、今度は委託先との間で起きます。

社内の担当者から委託先へ引き継ぐ場合は、今の担当者がいるうちに、取引先一覧、接続方式、データが届く時刻、よく起きるエラーと直し方、取引先の連絡先をまとめておきます。
これは委託するかどうかに関係なく、後任に渡す資料と同じものです。

体制点検チェックリスト

今の体制のどこに穴があるかは、次の項目で点検できます。

  • 取引先ごとの接続方式と、データが届く時刻が一覧になっている
  • 受信と取り込みの確認手順が、担当者以外にも分かる形で残っている
  • よく起きるエラーと直し方が書き残されている
  • 監視・エラー修正・取引先との連絡・判断・記録の各役割に、担当者と代わりの人が決まっている
  • 夜間・休日にデータが止まったとき、誰に連絡が行くかが決まっている
  • 取引先からの変更依頼を受け付ける窓口と、受けるかを決める人が決まっている
  • 旧来の回線型の手順を使う取引先があるかを把握している
  • 外部のサポートを使う場合、その対応時間帯と範囲を契約で確かめている

すべてを一度にそろえる必要はありません。
最初の一手としては、取引先一覧に、接続方式、データが届く時刻、止まったら何時間で困るかの3つを書き足すことを勧めます。
この一覧は、要員の見積もり、回線の点検、委託するときの引き継ぎのどれにも使えます。
そのうえで役割表を作り、空欄になった役割から、社内で埋めるか外部に頼むかを決めていきます。

仕事 委託先に任せる候補 自社に残すこと
毎日の監視 受信と取り込みの確認 異常の報告を受ける窓口
エラー対応 原因の切り分けと修正・再実行 当日の注文の扱いの判断
取引先の変更依頼 受けると決めた後の設定と試験 依頼の受け付けと受けるかの判断
保守・更新 ソフトの更新と機器の入れ替え作業 実施時期の決定と取引先への案内
記録 手順書の作成と更新 取引先一覧と取り決めの保管
状況別の体制の選び方の例(模式図)
取引先が少なく日中中心、早朝や休日も注文が届く、担当者の退職や異動が決まっている、回線移行を抱えている場合の候補を分けた図取引先が少なく日中中心、早朝や休日も注文が届く、担当者の退職や異動が決まっている、回線移行を抱えている場合の候補を分けた図注文が日中に届き、止まっても翌日の対応で間に合う社内で持つ形を取りやすい手順書を整え、監視とエラー修正の代わりを一人決める早朝や休日にも注文が届き、止まると当日の出荷に響く併用が候補になる時間外の監視と一次対応を委託し、取引先調整と判断を社内に残す担当者の退職や異動が決まっている委託を考える前に、今の担当者がいるうちに引き継ぐ内容を書き出す回線型からの移行など、期間の限られた大きな作業があるふだんの運用は社内のまま、移行の作業だけ外部の支援を入れる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 注文が日中に届き、止まっても翌日の対応で間に合う
    • 社内で持つ形を取りやすい
    • 手順書を整え、監視とエラー修正の代わりを一人決める
  • 早朝や休日にも注文が届き、止まると当日の出荷に響く
    • 併用が候補になる
    • 時間外の監視と一次対応を委託し、取引先調整と判断を社内に残す
  • 担当者の退職や異動が決まっている
    • 委託を考える前に、今の担当者がいるうちに引き継ぐ内容を書き出す
  • 回線型からの移行など、期間の限られた大きな作業がある
    • ふだんの運用は社内のまま、移行の作業だけ外部の支援を入れる

取引先ごとの方式や停止時の影響を書き出しても、どの役割を社内に残し、どこを外部に任せるかは、社内だけで決めきれないことがあります。

相談では、取引先一覧と今の担当の分け方をもとに、空いている役割と、社内で持つか外部に頼むかの候補を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
仕事の区分 毎日の監視とエラー対応、取引先の追加・仕様変更への対応、システムと通信回線の保守・更新
要員の見積もり 人数からではなく、取引先の数・データの量と届く時刻・接続方式・対応時間帯・停止時の影響から役割を出す
役割分担 一次対応・取引先調整・判断を分け、担当と代わりを決める
回線の点検 旧来の回線型の手順を使う取引先がある場合に、移行の調整を加える
社内・委託・併用 引き継ぎやすさ、夜間・障害時の対応、取引先調整の担い手、停止時の影響で選ぶ
自社に残すこと 取引先調整の窓口と判断の権限、取引先一覧と手順書
委託の契約・引き継ぎで決めておく4項目
対応時間帯、連絡経路、対応範囲、手順書の引き渡しの4項目について、決めておく内容を分けた図対応時間帯、連絡経路、対応範囲、手順書の引き渡しの4項目について、決めておく内容を分けた図対応時間帯監視と一次対応を、どの曜日・時間帯に行うか連絡経路障害時に委託先から自社の誰へどの手段で連絡が来るか自社から委託先へはどう連絡するか対応範囲取引先の追加や仕様変更の作業を含むか、含むならどこまでか手順書の引き渡し委託先が作った手順書や設定の記録を、自社が受け取れるか

▼ 図の内容を文字で読む
  • 対応時間帯
    • 監視と一次対応を、どの曜日・時間帯に行うか
  • 連絡経路
    • 障害時に委託先から自社の誰へどの手段で連絡が来るか
    • 自社から委託先へはどう連絡するか
  • 対応範囲
    • 取引先の追加や仕様変更の作業を含むか、含むならどこまでか
  • 手順書の引き渡し
    • 委託先が作った手順書や設定の記録を、自社が受け取れるか

担当者の退職や回線の移行が控えていると、引き継ぎと日々の運用を同時に進める必要があり、点検の順番に迷いやすくなります。 相談では、チェックリストで見つかった空欄について、何から埋めるか、委託するなら契約で何を確かめるかを整理できます。

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よくある質問

EDI運用の担当者が退職するとき、最低限引き継ぐものは何ですか。

取引先ごとの一覧(接続方式、データが届く時刻、取引先の連絡先)、受信と取り込みの確認手順、よく起きるエラーと直し方、保守や更新の履歴と契約先です。
接続に使うIDやパスワードは、社内の管理ルールに沿って保管場所と管理者を引き継ぎます。
担当者がいるうちに、後任か委託先が実際に一度確認作業を行い、手順書だけで回るかを確かめておくと、抜けに気づきやすくなります。

Web-EDIだけを使う会社でも、運用保守の担当者は必要ですか。

必要です。
サーバーを自社で保守する仕事はほとんどありませんが、取引先ごとの画面に毎日ログインして注文を確認し、自社のシステムへ取り込んだり転記したりする仕事は残ります。
取引先ごとにIDや画面の操作が違うため、その一覧と手順を残し、担当者が不在のときの代わりを決めておく必要があります。

夜間や休日に障害が起きたとき、誰に連絡が行く体制にすべきですか。

まず、データが夜間や休日に届くか、止まったら翌営業日で間に合うかを確かめます。
間に合わない取引があるなら、一次対応の担当とその代わりを決め、そこから判断の担当へ連絡がつながる順番を決めておきます。
委託先が一次対応を担う場合は、その時間帯に実際に対応するか、修正まで行うのか連絡だけなのかを契約で確かめます。

運用を委託しても、自社に残すべき仕事は何ですか。

取引先との調整の窓口と、変更を受けるか、障害時に手作業へ切り替えるかといった判断の権限です。
取引先ごとの方式や取り決めの一覧、手順書も、委託先が更新していても自社がいつでも取り出せる状態にしておきます。
委託先を替えるときに必要になるためです。

旧来の回線型EDIを使っている場合、取引先とどう移行を調整すればよいですか。

回線型の手順でつながっている取引先ごとに、新しい方式へ切り替える予定時期と、自社に求める方式を確かめるところから始めます。
報道では、INSネットの補完策は2027年ごろをめどに終了する予定とされています2。
自社の回線の期限は、通信事業者の公式な案内と契約で確かめてください。
取引先ごとに試験の送受信が必要になるため、移行の期間だけ取引先調整の担当を別に立てるか、外部の支援を入れるかも併せて決めておくと、ふだんの監視が手薄になるのを防ぎやすくなります。
中小企業共通EDIへの移行であれば、ITC協会が企業間の調整の相談を受け付けています1。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
  2. 2 出典:インプレス(INTERNET Watch)「INSネット補完策に関する報道」(2024年)

画像の出典元

  1. A businessman sitting at a desk, appearing stressed while working at a computer in a bright office./Photo by Thirdman on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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