◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 繁忙期の遅れは、受信・読み取り・確認・後工程の件数を工程別に数え、詰まる場所を特定してから手を打つ。
- 公表されている認識率は検証条件つきの値で、自社のFAXの確認量を見積もる根拠にはならない。
- 確信度で確認を絞る場合も、基準は自社帳票で測った誤り率で決め、重要項目の確認と抜き取り確認を残す。
- 判読できない注文書、欠損、重複、訂正の再送は通常の確認から外し、担当と判断の手順を繁忙期前に決めておく。
- 運用で足りない分は、OCR側の設定、取引先への書き方の相談、FAX以外の経路の相談の順に検討する。
目次

繁忙期のFAX-OCRが詰まる場所を切り分ける
繁忙期に入るとFAXの受信が急に増えます。
OCRで読み取った注文の確認と修正が追いつかず、入力が翌日に回ったり、数量の誤りが後から見つかったりします。
まず人を増やしたくなりますが、効く手は遅れの原因がどこにあるかで変わります。
原因の候補は、読み取り、確認・修正、基幹システムへの登録などの後工程、FAXの画質や様式です。
原因が確認工程にあるなら、確信度で確認の手厚さを分ける方法があります。
ただしその基準は製品の公表値ではなく、自社の帳票で測った誤り率で決めます。
例外の通り道と繁忙期前の準備を先に決め、それでも足りない分だけOCRの設定や取引先への依頼を検討します。
公表されている精度の数字の条件
OCRを入れたのに確認が追いつかないとき、まず疑いたくなるのは読み取りの精度です。
製品の資料に載っている認識率と自社の現場の手応えが合わず、戸惑うこともあるでしょう。
PFUのコラムによると、同社の基準帳票を使った検証で、従来OCRの認識率は80%でした。
これに対し、AI-OCR(同社のDynaEye 11)は98%だったと紹介されています1。
これは同社が用意した帳票での検証値です。
取引先ごとに様式も画質も違う自社のFAX注文書に、そのまま当てはまる数字ではありません。
別の資料もあります。
NTTデータは6自治体の実帳票73種で実証を行いました。
帳票定義に慣れていない作業者を想定した条件で、正読率は約93%でした2。
こちらは自治体の手書き帳票が対象で、企業のFAX注文書ではありません。
帳票も条件も違うため、二つの数字を並べてどちらの方式が優れているかを比べることはできません。
二つの資料から言えるのは、精度が帳票の種類や書き方、定義の作り込みといった条件で変わるということです。
他社の検証値から自社の確認量を見積もることはできません。
読み取り精度の議論に入る前に、自社の繁忙期にどこで処理が止まっているかを数えるほうが、手を付ける先を絞れます。
滞留を工程別に数える
FAX-OCRの運用は、受信、読み取り、確認・修正、後工程という流れで進みます。
後工程とは、販売管理や基幹システムへの登録、出荷指示などです。
繁忙期に遅れていると感じるとき、実際に注文が溜まっている場所は一つとは限りません。
たとえば、OCRは受信後すぐに読み終えているのに、確認待ちの注文が夕方まで残っているなら、詰まりは確認工程にあります。
確認は済んでいるのに登録が翌朝に回るなら、後工程の人手や締め時刻の問題です。
切り分けには、工程ごとに次の数を記録する方法が使えます。
これは記事としての提案で、特定の製品や資料が示す手順ではありません。
・受信した枚数と、OCRに取り込まれた枚数(取り込み漏れや読み取り待ちの有無)
・確認待ちのまま残っている件数と、時刻ごとの推移
・確認で修正した件数と、修正した項目(品番、数量、納期など)
・後工程で差し戻された件数と、その理由
昨年の繁忙期の記録が残っていれば、通常期と並べてみます。
件数が増えたとき、どの工程の滞留が先に膨らんだかが見えます。
記録がなければ、次の繁忙期の前に通常期の数を取っておくと、比べる土台になります。
修正した項目の記録は、この後の確認方式を決める場面でも使います。
誤りが出やすい項目が分かれば、確認を手厚くする場所と、絞れる場所を分けられるからです。
FAXの画質・受信方式の確認
修正件数が多く、その原因が文字のかすれや傾き、つぶれにあることもあります。
その場合、問題は確認担当の人数ではなく、OCRに渡している画像の側にあります。
PFUのコラムは精度を上げる要点として、次の三つを挙げています1。
FAX対応のAI-OCRを使うこと、紙に印刷されたFAXをスキャンし直さず複合機の受信データをそのまま使うこと、傾きや拡大縮小を補正することです。
繁忙期だけ受信紙を印刷し、まとめてスキャンし直す運用をしていないでしょうか。
その運用ではスキャン待ちという工程が一つ増え、受信データをそのまま使うという要点からも外れます。
受信データを直接OCRに回せるかは、複合機やFAXサーバーの設定と、利用中のOCR製品の取り込み方式によって決まります。
そのため、自社の機器と製品の仕様で確かめる必要があります。
修正件数を取引先ごとに分けて数えることも役立ちます。
特定の取引先の様式や送り方で読み取りが崩れているのか、全体に崩れているのかが分かるからです。
崩れが特定の取引先に偏っているなら、確認の人数を増やしても解決しません。
帳票定義の見直しや取引先への依頼で扱うほうが筋が通ります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受信(受信した枚数)
- 読み取り(取り込まれた枚数・読み取り待ち)
- 確認・修正(確認待ちの件数・修正した項目)
- 後工程(差し戻された件数と理由)
確認・修正は全件確認か絞り込みか:確信度で振り分ける考え方
全件確認が向く条件
切り分けの結果、OCRは読み終えているのに確認待ちが溜まっていることがあります。
この場合、負担の中心は確認・修正の工程です。
PFUのコラムも、認識結果の校正・修正に多くの時間がかかり、確認やデータ修正の負担が一部の担当者に偏ることがあると課題に挙げています1。
繁忙期に件数が増えれば、その偏りはそのまま遅れになります。
とはいえ、全件確認をやめればよいとは限りません。
全件確認が向くのは、次のような時期や業務です。
自社の帳票で誤りがどこに出るかまだ分かっていない時期、取引先や様式が入れ替わったばかりの時期、そして誤りがそのまま出荷や請求に流れてしまう業務です。
NTTデータの実証では、参加自治体から意見が出ています。
ミスが許されない業務では2名体制で入力している例があり、その一部にAI-OCRの活用を検討できるというものです2。
誤りの重さに応じて確認の手厚さを変えるという考え方は、OCRを入れた後も変わりません。
確信度で振り分ける考え方
確信度とは、OCRが読み取った文字や項目ごとに、どれだけ確からしいと判断したかを示す値です。
この値を使って確認の手厚さを分ける製品例があります。
2019年に富士ゼロックスが発表した「Smart Data Entry」は、OCR結果ごとに確信度を算出して高・中・低に分けると報じられています。
それぞれに入力不要、1人入力、2人入力という助言を出す仕組みです4。
確認が必要な項目だけを人が扱えば作業量を減らせる、という考え方です。
注意したい点が二つあります。
一つは、これが2019年時点の特定製品の発表内容だということです。
現行の仕様とは限らず、すべてのOCR製品に同じ機能があるわけでもありません。
利用中の製品で確信度を出力できるか、項目ごとに見られるかは、その製品の仕様で確かめることになります。
もう一つは、同じ報道で、確信度による運用は一定期間運用してから使えるようになるとされている点です4。
繁忙期の直前に導入して、すぐ絞り込みに切り替えることは難しいと考えておくほうが安全です。
どの確信度から確認を省くかという基準値は、製品の公表値や他社の例からは決められません。
精度そのものが帳票と条件で変わるからです。
記事としての提案は、自社のFAXで測ってから線を引く方法です。
通常期に一定数の注文書を全件目視し、確信度の帯ごとに実際の誤り率を出します。
確信度が高い帯でも誤りが出ているなら、その帯は確認を省かず、1人確認に残します。
重要項目は全件確認にする
確信度で絞る場合でも、項目によっては確信度に関係なく人が見る、と決めることができます。
金額、数量、品番、納期のように、誤ると出荷や請求の誤りにつながる項目がその対象です。
どの項目を残すかは、工程別に記録した修正項目と、誤ったときの影響の大きさから自社で決めます。
重要項目だけを見る確認では、目で追う範囲が注文書の一部に限られます。
備考欄のように誤っても後工程で気付ける項目まで毎回読み合わせる手間は省けます。
ただし重要項目の確認は残るので、全件確認と比べて負担が減る幅は帳票の項目構成によって変わります。
確信度を出力できない製品を使っている場合も、この項目単位の絞り込みなら取り入れられます。
絞り込みを始めたあとの抜き取り確認
絞り込みに切り替えると、確認を省いた分の誤りは、後工程か取引先からの問い合わせで初めて見つかります。
そこで提案したいのが、確認を省いた帯からも一定の割合で注文書を抜き取り、全項目を目視する仕組みです。
これを残しておくと、誤りが増えていないかを確かめられます。
抜き取りで見つかった誤りは、確信度の帯ごと、項目ごとに集計します。
誤りが出た帯は1人確認に戻す、という循環にしておきます。
取引先が様式を変えたときや、新しい取引先が増えたときは、その取引先の分だけ全件確認に戻して測り直すと、基準のずれを早く拾えます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 確信度 高
- 入力不要の助言
- 確信度 中
- 1人入力の助言
- 確信度 低
- 2人入力の助言
▼ 図の内容を文字で読む
- 確認を省く帯を決める
- 省いた帯から抜き取って全項目を目視する
- 帯ごと・項目ごとに誤りを集計する
- 誤りが出た帯を1人確認に戻す
読めない・欠損・重複・再送:繁忙期に増える例外の決め方
読めない帳票の戻し方
確認の方式を決めても、その枠に収まらない注文書は出てきます。
NTTデータの実証では、誤読が出やすいのは次のような場合だとされています2。
目視でも判読が難しい雑字・くせ字・悪筆、罫線や枠線と文字が重なる場合、文字が枠からはみ出る場合です。
この実証は自治体の手書き帳票が対象です。
ただ、手書きの数量や追記が入るFAX注文書でも、同じ形の崩れは起こりえます。
こうした注文書を通常の確認に混ぜると、一人が一枚に長く止まり、後ろの注文まで待たされます。
そこで、判読に手間取る注文書は通常の確認から外し、別の担当が受け持つ「例外の列」に回すと決めておきます。
回す基準は、確認担当が迷わず判断できる条件にします。
たとえば、重要項目の確信度が低い、項目が読み取れていない、文字が枠にかかっている、といった条件です。
例外の列では、原本の画像を見て判読するか、取引先に問い合わせるかを決めます。
問い合わせ待ちになった注文については、誰がいつ問い合わせるのか、回答が来たら誰が入力するのかまで決めておきます。
そうしないと、繁忙期には列の中で止まったままになります。
欠損・重複・再送の判定
繁忙期に扱いが割れやすいのが、ページの欠けた注文書、同じ注文の二重受信、訂正の再送です。
判定のルールがないと、確認担当がそれぞれの判断で処理してしまいます。
そうなると、二重登録や訂正前の内容での出荷が起きても、どこで判断を誤ったのか後からたどれません。
判定の決め方の例を挙げます(提案)。
・欠損:送付状のページ数や通番と受信枚数が合わない場合、または明細の途中で切れている場合は、入力を保留して取引先に再送を依頼する
・重複:取引先と注文番号(ない場合は発注日と品番・数量の組み合わせ)が既存の注文と一致したら、登録前に止めて例外の列で照合する
・訂正の再送:「訂正」「差し替え」などの記載がある場合、または同じ注文番号で内容が違う場合は、元の注文を取り消すのか追加なのかを確かめてから登録する
重複を機械的に見つけられるかは、OCRや基幹システムの側で注文番号などを突き合わせられるかに左右されます。
突き合わせができない場合は、手作業になります。
例外の列の担当が、同じ取引先の当日分を一覧で見て確かめる形です。
この手作業が繁忙期にどれだけ発生するかも、例外の件数として数えておくと、システム側で突き合わせを用意すべきかの判断材料になります。
取引先への確認連絡を減らす
例外の多くは、最終的に取引先への確認連絡につながります。
食品の小売・卸売の受注担当者を対象にした2023年の調査があります。
FAX・メール・電話で受注する担当者(n=90)のうち、41.1%が「注文確認の連絡に手間がかかる」と答えています3。
食品業に限った調査で、繁忙期を区切って尋ねたものでもありません。
それでも、確認連絡が受注担当の負担として意識されていることはうかがえます。
連絡の手間を減らすには、例外を週ごとに取引先別・種類別に数えておくのが役立ちます(提案)。
同じ取引先から同じ種類の例外が繰り返し出ているなら、その都度電話するより、様式や送り方そのものを相談するほうがよいでしょう。
そのほうが、次の繁忙期の連絡件数を減らせる見込みがあります。
その相談の進め方は、最後の節で扱います。
| 例外の種類 | 見分け方の例 | 回し先と判断 |
|---|---|---|
| 判読できない | 重要項目の確信度が低い・枠にかかる・読み取れていない | 例外の列で原本画像を判読するか取引先に問い合わせる |
| 欠損 | 通番やページ数と受信枚数が合わない | 入力を保留して再送を依頼する |
| 重複 | 取引先と注文番号が既存の注文と一致する | 登録前に止めて照合する |
| 訂正の再送 | 「訂正」「差し替え」の記載・同じ番号で内容が違う | 元の注文の取消か追加かを確かめて登録する |
▼ 図の内容を文字で読む
- 判読できない
- 見分け方:重要項目の確信度が低い、枠にかかる、読み取れていない
- 回し先:例外の列で原本画像を判読するか、取引先に問い合わせる
- 欠損
- 見分け方:ページ数や通番と受信枚数が合わない
- 回し先:入力を保留して再送を依頼する
- 重複
- 見分け方:取引先と注文番号が既存の注文と一致する
- 回し先:登録前に止めて例外の列で照合する
- 訂正の再送
- 見分け方:「訂正」「差し替え」の記載、同じ注文番号で内容が違う
- 回し先:取消か追加かを確かめてから登録する
繁忙期の前に済ませる準備と、期間中に見る指標
帳票定義と閾値の事前検証
ここまでの切り分け、確認の絞り込み、例外の列は、どれも繁忙期に入ってから決めるのでは間に合いません。
先に挙げた食品業の調査では、FAX・メール・電話で受注する担当者(n=90)のうち、60%が「注文書の手入力に手間がかかる」、38.9%が「オペレーションの属人化が発生している」と答えています3。
これは繁忙期に限らない、通常の負担感の調査です。
ただ、手入力の手間と特定の人に頼る運用が日常的にあるなら、件数が増える時期にはその人へ確認が集中すると考えられます。
準備の一つ目は帳票定義です。
帳票定義とは、注文書のどの位置にどの項目があるかをOCRに教える設定のことです。
NTTデータの実証では、正読率を上げる方法として、帳票定義の作業への習熟や、習熟した事業者への委託が挙げられています2。
繁忙期に入る前に、取引先別の修正件数を見て、修正の多い様式から定義を見直しておけば、期間中に同じ箇所を何度も直す手間を前もって減らせます。
二つ目は、確信度の基準値の検証です。
確信度を使える製品であれば、通常期のうちに全件目視と突き合わせ、どの帯までを省けるかを決めておきます。
確信度を使わない運用なら、重要項目だけを確認する範囲を決めて通常期に試し、後工程で誤りがいくつ見つかるかを数えておきます。
確認担当の複数化
三つ目は、確認と例外処理を受け持てる人を複数にすることです。
品番の書き方、単位の扱い、追記の位置といった取引先ごとの癖を知っている人が一人に限られていると、繁忙期にはその人の手元で注文が止まるおそれがあります。
取引先別の注意点を一覧にし、通常期のうちに他の担当にも確認を受け持ってもらいます。
そうしておくと、繁忙期に応援を入れたとき、応援の担当が一覧を見ながら確認を始められます。
例外の列だけは判断に慣れた人に任せ、通常の確認は応援も含めて分担する、という役割の分け方もできます。
滞留・誤り・例外件数の見方
期間中は、日ごとに次の三つを見ます(提案)。
・滞留件数:時刻ごとの確認待ちの件数。
締め時刻までに確認を終えられるかの見通しに使う
・誤り件数:抜き取り確認や後工程で見つかった誤りの件数と項目。
絞り込みの基準を戻すかの判断に使う
・例外件数:取引先別・種類別の件数。
例外の列に人を足すか、取引先に連絡するかの判断に使う
三つの数の組み合わせで、打つ手が変わります。
滞留が増えているのに誤りが少ないなら、通常の確認に人を足すか、確認を省ける帯を見直す余地があります。
誤りが増えているなら、絞り込みを戻して手厚く確認する時期です。
例外が特定の取引先に集まっているなら、人を増やしても解消しにくいので、その取引先への連絡を先にします。
繁忙期が終わったら、これらの記録を昨年の記録と並べます。
どの準備が効いたか、どこで詰まりが残ったかを確かめておけば、次の繁忙期の準備をその記録から始められます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 繁忙期の前:帳票定義の見直し、確信度の基準値の検証、確認担当の複数化
- 期間中:滞留件数・誤り件数・例外件数を日ごとに見る
- 終了後:昨年の記録と並べ、効いた準備と残った詰まりを確かめる
運用で足りないとき:設定・帳票様式の見直しと、FAX以外の経路への誘導
OCR側で見直せる範囲
確認の組み替えと例外の通り道で吸収できるのは、確認工程と例外処理の負担までです。
読み取りの段階で誤りが多いままなら、確認担当を増やしても修正の量は減りません。
OCR側で見直せるのは、受信データの取り込み方、傾きや拡大縮小の補正1、取引先別の帳票定義です。
どの設定が用意されているかは製品によって違うため、利用中の製品の仕様や提供元の窓口で確かめることになります。
取引先への様式依頼
同じ取引先で読み取りの崩れや例外が繰り返し出るなら、取引先に様式や書き方の調整を頼む選択肢があります。
ただ、「読めない」と伝えるだけでは、相手も何を変えればよいか分かりません。
例外の記録から、どの項目がどう崩れているかを具体的に示します。
数量が枠からはみ出している、品番の欄に追記が重なっている、といった形です。
そうすれば、相手は直す場所を特定できます。
依頼の中身は、相手の手間が小さいものから考えるのが現実的です。
枠内に書いてもらう、訂正のときは「訂正」と明記して注文番号を添えてもらう、といった書き方の調整は、様式を作り直すより相手の負担が小さく済みます。
こちらで記入しやすい様式を用意して使ってもらう方法もあります。
ただし相手の社内の発注手順に関わるため、すぐに切り替わるとは限りません。
FAX以外の経路への誘導の判断
取引先に電子受発注やWeb注文へ移ってもらえれば、FAXそのものが減り、読み取りと確認の工程が小さくなります。
ただし、これは自社だけでは決められません。
2019年の日経クロステックの記事は、経済産業省の委託で帝国データバンクが行った調査を引き、中小企業の受発注でファクスが広く使われている現状を伝えています5。
先の食品業の調査でも、受注方法としてFAXを利用している受注担当者は67%(n=106)でした3。
また、FAX・電話受注を廃止すると「取引に支障が出る」と想定する人は58.8%(n=80)でした3。
どちらの割合も食品業の受注担当者の回答で、他の業種にそのまま当てはまるとは限りません。
それでも、受注する側がFAXをやめにくいと感じている状況は読み取れます。
進め方としては、全取引先に一斉に切り替えを求めるより、例外や修正が多く、かつ注文件数の多い取引先から相談する方法が考えられます。
相手が電子の経路に移れるかは、相手の社内の仕組みや発注担当の事情によります。
移れない取引先が残ることを前提にFAX-OCRの運用は続け、移ってもらえた分だけ確認の量が減る、という見込みで進めるのがよいでしょう。
そのほうが、繁忙期の体制を組み立てやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社で見直す
- 確認と例外の組み替え
- OCR側の設定(取り込み方・補正・帳票定義)
- 取引先に相談する
- 崩れた項目を具体的に示して書き方や様式を調整してもらう
- 移れる取引先から電子受発注やWeb注文を相談する
- 食品業の調査にみる参考値
- FAXを受注方法として利用している割合は67%(n=106)
- FAX・電話受注を廃止すると取引に支障が出ると想定する割合は58.8%(n=80)
工程別の件数や修正項目を集めても、それをどの基準値や例外ルールに落とし込むかは、自社の帳票の癖と誤りの重さを踏まえないと決めにくいためです。
手元の受信件数と修正記録をもとに、詰まりが確認工程にあるのか、帳票定義や受信方式にあるのかを整理し、次の繁忙期までに何から決めるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 遅れの場所 | 受信・読み取り・確認・後工程の件数を工程別に数えて決める |
| 精度の数字 | 公表値は検証条件つきで、自社の確認量の見積もりには使わない |
| 確認の絞り込み | 確信度の基準は自社帳票で測った誤り率から決め、抜き取りを残す |
| 重要項目 | 誤ったときの影響が大きい項目は確信度に関係なく確認する |
| 例外 | 判読不能・欠損・重複・再送は別の列で担当と判断を決める |
| 期間中の指標 | 滞留・誤り・例外の件数を日ごとに見る |
| 取引先への依頼 | 崩れた項目を具体的に示し、負担の小さい調整から相談する |
取引先への様式依頼やFAX以外の経路への誘導は、取引先ごとの事情と自社の受注の流れの両方にかかわるため、社内だけでは相談の順番を決めにくいためです。 どの取引先から相談するか、FAXと他の経路を併用する間の受注の流れをどう組むかを確かめられます。
よくある質問
FAXをスキャンし直さず、複合機の受信データをそのままOCRに回してよいのですか。
PFUのコラムは、紙のFAXをスキャンせず複合機の受信データをそのまま使うことを、精度を上げる要点の一つに挙げています。
あわせて、傾きや拡大縮小の補正も挙げています。
受信データを直接OCRへ渡せるかは、複合機やFAXサーバーの設定と、利用中のOCR製品の取り込み方式によって決まります。
機器と製品の仕様で確かめてください。
確信度を使う確認の絞り込みは、どのOCR製品でもできますか。
できるとは限りません。
確信度を高・中・低に分けて確認人数を助言する仕組みは、2019年に発表された特定製品の例で、現行の仕様とも限りません。
利用中の製品で確信度を項目ごとに出力できるかは、その製品の仕様で確かめます。
確信度が使えない場合でも、金額や数量など重要項目だけを確認する方法なら、項目単位で負担を絞れます。
絞り込み確認に切り替えた後、誤りが増えていないかはどう確かめますか。
確認を省いた帯からも一定の割合で抜き取り、全項目を目視する方法があります。
見つかった誤りを確信度の帯ごと・項目ごとに集計し、誤りが出た帯は1人確認に戻します。
後工程での差し戻しや取引先からの問い合わせの件数も、あわせて記録しておくと判断しやすくなります。
金額や数量など重要項目だけを、確信度に関係なく全件確認にしてよいですか。
自社で決めてかまいません。
誤ると出荷や請求の誤りにつながる項目は、確信度が高くても確認対象に残すという線の引き方ができます。
どの項目を残すかは、修正した項目の記録と、誤ったときの影響の大きさから決めます。
同じ注文が再送で二重に届いたとき、どう検知して扱えばよいですか。
取引先と注文番号(ない場合は発注日と品番・数量の組み合わせ)が既存の注文と一致したら、登録前に止める、という判定ルールを決めておく方法があります。
止めた注文は例外の列で照合し、元の注文の取消なのか追加なのかを確かめてから登録します。
システムで突き合わせができない場合は、同じ取引先の当日分を一覧で確かめる手作業になります。
取引先にFAXの様式変更や電子化を頼むとき、まず何から伝えればよいですか。
どの項目がどう崩れているかを、例外の記録をもとに具体的に伝えます。
枠内に書いてもらう、訂正時に注文番号を添えてもらうなど、相手の手間が小さい書き方の調整から相談すると進めやすくなります。
電子の経路への移行は相手の社内事情に左右されるため、例外や修正が多く件数も多い取引先から個別に相談します。
- 1 出典:株式会社ピーエフユー「FAX注文書はOCRできる?精度を向上させる3つのポイント」(2025年)
- 2 出典:株式会社NTTデータ「町田市、郡山市、市川市、つくば市、横浜市、福岡市におけるAI-OCR実用性の検証結果について」(2019年)
- 3 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
- 4 出典:クラウド Watch「富士ゼロックス、手書き帳票処理業務の自動化支援サービス「Smart Data Entry」」(2019年)
- 5 出典:日経クロステック「中小企業の8割が「ファクスで受発注」の現実、DX時代に日本の競争力が失われる」(2019年)
画像の出典元
- Close-up of hands organizing documents on a desk with a laptop./Photo by SHVETS production on Pexels