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FAX-OCR導入の基礎知識|手順と法令要件の要点

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • FAX-OCRが置き換えるのは入力と転記までで、疑わしい値を人へ戻す確認の工程が成果を分けます。
  • 紙を画像で残す場合、解像度200dpi以上・256階調以上という読み取りの基準と、最長2か月とおおむね7営業日以内という入力期間の定めが関わります。
  • 検索は取引年月日・取引金額・取引先の3項目でできる状態にし、帳簿書類は原則7年、欠損金の繰越がある事業年度は10年保存します。
  • 進め方は対象帳票の切り出し、検証の設計、運用体制の整備の3段階で、受注件数の上位の得意先の様式から着手すると効果が出やすくなります。

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▽ 写真の出典元

FAX-OCR導入とは何か

FAX-OCR導入とは、受け取った注文書の画像を文字データへ変換し、受注入力を機械と人で分担する取り組みです。押さえどころは3点あります。第一に、置き換わるのは入力と転記であり、受注の判断まで自動になるわけではありません。第二に、読み取った結果は確認の工程を通してから基幹システムへ渡します。第三に、読み取りの当たり外れは帳票の様式と記入の状態で動きますので、確認の置き方が成果を分けます。

従来の文字認識は、決められた位置にある文字を1字ずつ読み、指定した枠の中身を取り出す方式が中心でした。近年の帳票向けの解析は、文字の並びと項目名の関係から値を推定します。クラウド事業者が公開する技術文書でも、汎用の文字抽出と、請求書など様式に特化した抽出が別の機能として整理されています12。枠の位置に縛られない分、得意先ごとに様式が違うFAX注文書と相性のよい方式と言えます。

独自の様式への対応は、あらかじめ用意されたモデルと、自社で学習させるモデルの2系統に分かれます。ある事業者の技術文書は、同じ様式の帳票を最低5点そろえれば独自モデルの学習を始められると案内しています*1。少ない点数で着手できる反面、様式の揺れが大きい帳票では追加の学習が要ります。着手の前に、得意先ごとの様式が何種類あるかを数えておくと、準備の量が見通せます。

読み取りの対象になるのは、注文書・発注書・依頼票のように項目の並びが定まった帳票です。取り出す値は、取引先の識別情報、品番、数量、納期、単価の5項目が中核になります。出力はCSVやXMLといった構造化データで、基幹システムの受注登録に渡せる形へ整えます。欄外の手書き指示や但し書きは値として取り出しにくく、画像そのものを残して人が読む前提を用意しておきます。

受発注のデジタル化には、電話とFAXの受注を残す形から、データを直接やり取りする形まで幅があります。FAX-OCRは、取引先に運用の変更を求めず自社側だけで着手できる点が持ち味です。企業間のデータ連携を促す公的な解説でも、受発注の手作業が業務コストの重い部分として挙げられています*3。取引先の準備が整うまでの橋渡しと位置づけると、投資の説明がしやすくなります。

読み取りの正しさを100%前提にした運用は組めません。値引きの但し書き、納期の口頭変更、返信を求める欄など、文脈の判断が要る情報は人が扱います。ですから設計の中心は、読み取れた値をどう検算し、疑わしい値をどこで止めるかという点へ移ります。確認の工程を軽く見積もると、入力が減った分だけ確認の待ちが伸びてしまいます。

位置づけを一言でまとめると、FAX-OCRは受注データの入口を紙から電子へ移す仕組みです。取引の慣行そのものを変えるわけではありませんから、削減できるのは入力と転記の工数に限られます。それでも、受注の締め時刻に集中する入力の山をならす効果は小さくありません。次の節では、いまの受注現場で何が起きているのかを整理します。

着手順に並べたFAX-OCR導入前の確認5項目(順位根拠:後の工程が前の工程の結果に依存する実施の順序)

  1. 受注件数の多い得意先から順に並べ、対象とする帳票様式の種類数を数えます。上位の様式ほど、定義を1つ作った効果が繰り返し効きます。
  2. 紙で受け取る注文と、電子のまま受信する注文を分けて数えます。保存上の扱いが分かれるため、確認すべき要件の条文が変わります*6
  3. 取り出す値を品番・数量・納期・単価・取引先コードの5項目に絞り、確認の対象を固定します。自由記述は画像で残す扱いにします。
  4. 解像度200dpi以上・256階調以上という読み取りの基準に、複合機の設定が合っているかを拠点ごとに確かめます*6
  5. 基幹システムの受注データの受け口と、得意先コードや品番の変換の対応表を誰が保守するかを決めます。

FAX受注業務が抱える課題と現在地

FAX受注の課題は、入力の手間そのものよりも、受注1件が人手を4回通る点にあります。受信して仕分け、内容を読んで入力し、入力後に照合し、出荷や生産へ指示を渡す流れです。工程が増えるほど誤りの入り口が増え、担当者ごとの読み替えの知識に頼る場面も残ります。紙が起点である限り、受注の進み具合は担当者の机の上にしか存在しません。人員だけを厚くしても、締め時刻の山は動かないままです。

転記は、同じ値を別の画面へ写す作業ですから、写し間違いが混ざります。品番の似た商品、単位の違い、桁の多い数量は、目視の照合で見落としが起こりやすい値です。誤りが出荷まで届くと、返品と再出荷で2回分の物流費が発生し、取引先の在庫計画にも影響します。入力の速さを支えているのが特定の担当者の記憶である場合、その人の不在が受注の停滞に直結します。

属人化は、手順書に書けていない判断の集まりです。得意先ごとの略号、毎回の但し書きの読み替え、単価の取り決めなど、紙の余白に宿る知識があります。この知識を残さないままFAX-OCRを入れると、読み取れた値の正しさを誰も判定できません。導入の前に、判断の中身を書き出す作業が要ります。

紙で届く注文は、その紙のある場所でしか処理できません。複合機の前に人が集まる運用では、拠点をまたいだ応援も、自宅からの対応も組めません。国の通信利用動向の調査は企業と世帯の2つを対象に毎年公表され、企業の情報通信の使われ方を追える資料になっています*4。働く場所を選ばない仕組みが広がるほど、受注だけが紙に残る状態は目立ちます。

受発注のデジタル化の進み方は、企業の規模と取引先の顔ぶれで違います。国の推進機関がまとめたDXの動向調査は、取組の状況を企業規模別に整理しています*5。小規模な取引先を多く抱える業種では、相手側の準備が整わず、紙の受注が残り続けます。自社だけで完結する打ち手から始める判断には、こうした事情があります。

紙の受注は費用が見えにくい点も課題です。用紙とトナー、複合機の保守、保管の場所、探す時間という4つの費用は、受注1件あたりの単価として管理されません。企業間のデータ連携を扱う公的な解説は、受発注の業務コストの削減を主題に据えています*3。見えていない費用を数えるところから、投資の判断が始まります。

現在地をまとめると、紙の受注は回るけれども伸びない状態です。取扱量が増えても人手を足せば処理できますが、1件あたりの手間は下がりません。次の節では、FAX-OCRを入れたときに工程がどう組み替わるかを追います。

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FAX-OCR導入で変わる受注処理の流れ

FAX-OCRを入れた受注処理は、受信と仕分け、項目の読み取り、確認と補正、基幹登録、保存と検索の5工程に分かれます。紙のときと工程の数は大きく変わりませんが、人が担う位置が動きます。入力は機械へ寄せ、人は疑わしい値の判定と例外の処理へ集中します。工程ごとに誰が何を見るかを決めておくと、受注量が増えても流れが詰まりません。

受信と仕分けは、届いた画像を得意先と帳票の種類へ振り分ける工程です。複合機で受けた画像をそのまま蓄積し、送信元の番号や記載の項目から種類を判定します。ここで種類を取り違えると、後の読み取りが別の様式の定義で動いてしまいます。振り分けに迷う画像を人の確認へ回す出口を、初めから用意しておきます。

項目の読み取りは、抽出する値を絞るほど安定します。品番、数量、納期、単価、取引先コードの5項目に限れば、確認の対象も同じ数に収まります。クラウド事業者の技術文書は、様式に特化した抽出と汎用の文字抽出を別の機能として提供しています12。備考欄のような自由記述は、値として扱わず画像で残す判断も選べます。

確認と補正は、FAX-OCRの成否を分ける工程です。読み取りの結果には項目ごとの確信度が付きますので、しきい値を下回った値だけを人の画面へ出します。全件を目視で照合する運用に戻すと、入力の削減分が確認の工数へ移るだけです。品番と数量は在庫マスタとの突き合わせ、納期は暦との照合というように、機械側の検算も併せて組みます。

基幹登録では、確定した値を受注データとして引き渡します。得意先ごとに異なる帳票レイアウトへの対応には、様式ごとの定義を持つ方式と、項目名から推定する方式の2通りがあります。同じ様式の帳票を最低5点そろえれば学習を始められる案内もあり、上位の得意先から順に定義を作る進め方が現実的です*1。定義の数が増えるほど保守の手間も積み上がりますので、様式を寄せる交渉も並行して進めます。

保存と検索は、法令の要件と直結する工程です。取引年月日、取引金額、取引先の3項目で探せる状態にしておくと、後の照会に耐えます*6。画像と抽出した値を一組で残し、どの画像から作った受注データかを追えるようにします。保存の細目は次の節で扱います。

工程を組み替えた結果、締め時刻の前に集中していた入力は、確認の待ち行列へ姿を変えます。処理の量は、確信度のしきい値をどこに置くかで調整できます。しきい値を上げれば人の確認が増え、下げれば見落としの危険が増しますので、稼働開始後の調整を前提に設計します。

受信と仕分けで得意先と帳票の種類を判別し、項目の読み取りで必要な値を抽出し、確認と補正で確信度の低い値を担当者が直し、基幹登録で受注データとして引き渡し、保存と検索で取引年月日や取引先から探せる形で残す流れを表しています。
FAX注文書の受信から受注データの登録と保存までの工程の並び

導入時に確認する法令と保存の要件

FAX-OCRの導入では、紙で受け取った注文書と、電子で受け取ったデータで保存の扱いが分かれます。紙を読み取って画像で残す場合はスキャナ保存の要件が関わり、読み取りの品質、入力の期間、検索の条件が定められています*6。要件は改訂が重ねられていますので、公開されている一問一答の最新版で細目を確かめてください。運用の設計を先に固めてしまうと、後から作り直しになります。

スキャナ保存では、読み取りの品質に数値の基準があります。解像度は200dpi以上、色は赤・緑・青それぞれ256階調以上とされ、A4サイズの書類では約387万画素以上に相当します*6。複合機の初期設定がこの基準を下回る場合もありますので、設定値を確かめたうえで取り込みます。受信の設定は拠点ごとに違うことがあり、まとめて点検しておくと後戻りを避けられます。

取り込みまでの期間にも定めがあります。書類を受け取ってからおおむね7営業日以内に入力する方式と、業務のサイクルに合わせて最長2か月とおおむね7営業日以内に入力する方式が示されています*6。後者を選ぶ場合は、社内の規程で事務処理の期間を定めておく必要があります。受注の繁忙で取り込みが滞ると、要件から外れる危険が生じます。

検索の要件は、取引年月日、取引金額、取引先の3項目が軸です*6。帳簿書類の保存は原則7年で、欠損金の繰越がある事業年度は10年へ延びます。検索用の項目を後から付け足す作業は手間ですから、読み取りの段階で値を取っておきます。抽出できなかった場合に人が補う画面も併せて用意します。

紙で出力したFAXと、複合機などで電子のまま受信したデータでは、保存上の扱いが分かれます。電子でやり取りした取引情報は電子取引の保存として整理され、2024年からは電子のまま残すことが求められています。判定期間の売上高が5,000万円以下でダウンロードの求めに応じられる場合など、検索の要件が緩和される定めもあります*6。自社の受信の方法がどちらに当たるかを、根拠の資料の該当箇所で確認してください。

システムの選定では、法的な要件への適合を確かめる手がかりとして認証の制度があります。国内の文書情報管理の業界団体は、スキャナ保存や電子取引などの区分ごとにソフトウェアの法的要件認証を公開しています*7。認証は要件の充足を確かめる助けであり、自社の運用が要件を満たすかは別に点検が要ります。認証の取得した年と対象の区分まで見ておくと、選定の精度が上がります。

法令の要件を外すと、保存のやり直しという後戻りが発生します。数年分の受注帳票を取り込み直す作業は、繁忙期の受注処理と並行できません。税務の調査で提示を求められた際に、検索の要件を満たさない保存では応答に時間を要します。要件の確認は、製品の比較より前に済ませておく工程です。

FAX-OCR導入の進め方

進め方は、対象帳票の切り出し、検証の設計、運用体制の整備という3段階で組みます。最初から全得意先を対象にすると、様式の数だけ定義と確認の手間が積み上がります。まず取引先の絞り込みと帳票様式の棚卸しで範囲を決め、次に評価基準の設定と確認工程の試行で見込みを測ります。最後に基幹システム連携と手順書の整備まで進めれば、日常の運用に載ります。

取引先の絞り込みは、受注の件数が多い順に並べる作業から始めます。上位の得意先ほど同じ様式が繰り返し届きますので、定義を1つ作った効果が大きくなります。帳票様式の棚卸しでは、様式の種類数、手書きの有無、項目の位置の揺れという3点を一覧にします。この一覧が、後の見積もりと工程の見通しの土台になります。

検証の設計では、合格の線を先に決めます。評価基準の設定では、項目ごとの一致率、人の修正が入った件数、1件あたりの確認時間という3つの指標を測ります。全体の平均だけを見ると、品番は読めて数量が読めないといった偏りが隠れます。過去に届いた帳票を用い、繁忙期と閑散期の両方から抽出して測ると、実際の運用に近い値が得られます。

確認工程の試行は、機械の性能ではなく人の動きを測る工程です。しきい値を変えながら、人の画面に出る件数と見落としの発生を見比べます。ここで確認の担当と時間帯を決めておくと、稼働後の待ちが読めます。試行の記録は、そのまま手順書の下書きになります。

基幹システム連携は、受注データの受け口の仕様に合わせて設計します。連携の方式には、ファイルの受け渡し、APIの呼び出し、中間データベースの経由という3つの選択肢があります。得意先コードや品番の表記が基幹側と揃わない場合、変換の対応表が要ります。この対応表を誰が保守するかも、この段階で決めておきます。

運用体制の整備では、例外の扱いを文書へ落とします。読み取れなかった帳票、様式の変更、返信を求める注文など、人が判断する場面を手順書の整備で明文化します。担当が不在でも同じ判断ができる状態にしておけば、属人化の再発を抑えられます。必要な知見は帳票と受注業務の知識、基幹システムの仕様、法令の要件という3領域にまたがります。

内製で進める場合、この3領域を自社で束ねる人員が要ります。外部へ委ねる場合は、様式の棚卸しと判断基準の言語化を自社が担い、実装と検証の設計を任せる分担が組めます。どちらを選ぶにせよ、対象の範囲を小さく切って測るという手順は変わりません。

対象帳票の切り出しでは取引先の絞り込みと帳票様式の棚卸しから始め、検証の設計では評価基準の設定と確認工程の試行を進め、運用体制の整備では基幹システム連携と手順書の整備に取り組む流れを表しています。
対象範囲の決定から運用の定着までの段階と作業の対応

導入でつまずきやすい点と回避策

つまずきは、精度への期待、費用の見立て、現場の手順という3つに集まります。読み取りの正しさを前提に人員を先に減らすと、確認の待ちが伸びて締めに間に合いません。費用は初期の構築と稼働後の従量という2系統で見る必要があり、片方だけの比較では判断を誤ります。手順を変えずに道具だけを入れ替えると、紙と画面の二重の作業が残ります。

読み取りの正しさは、帳票の様式、記入の状態、送信時の画質で動きます。手書きの数量や、罫線のかすれた古い様式では、値を取り違える場面が出ます。ですから合格の線は、全項目が読めることではなく、疑わしい項目を漏れなく人へ回せることに置きます。確信度の低い値を止める仕掛けがあれば、読み取りの成績そのものより運用が安定します。

確認の置き方には、全件を見る方式、しきい値で絞る方式、金額の大きい注文だけを見る方式の3通りがあります。件数が増えるほど、全件の目視は現実的でなくなります。金額や数量の異常な値を機械で弾き、人は例外だけを見る形へ寄せていきます。判定の基準は、運用の記録をもとに定期的に見直します。

費用の見立ては、減る工数と増える工数の両方を並べて比べます。入力の時間は減りますが、確認と例外の処理、定義の保守という新しい作業が生まれます。紙の運用で見えていなかった保管と検索の手間も、比較の対象に入れてください。自社の受注件数と1件あたりの処理時間を先に測っておくと、見積もりの根拠になります。

小さく始める判断は、失敗の費用を抑える手立てです。受注件数の上位の得意先の様式に絞れば、定義の作成と検証を短い期間で回せます。効果が確かめられた範囲から広げると、投資の説明も通しやすくなります。範囲を広げる際は、様式の種類数が増える分の保守を見込みます。

道具を入れても手順が古いままだと、紙の控えを印刷する作業が残ります。受注の確認は画面で済ませる、紙は保存の要件に沿って扱う、という決めを先に共有します。担当者の判断で紙へ戻せる余地を残すと、二重の運用が固定してしまいます。稼働の直後は問い合わせが集中しますので、答える担当を決めておきます。

つまずきの費用は、遅れとして表に出ます。締めに間に合わなかった受注は翌日の出荷へ回り、納期の再調整と再出荷の連絡という2つの手間が生じます。保存の要件を外していた場合は、対象の期間の帳票を取り込み直す後戻りが発生します。どちらも、確認の設計と要件の点検で避けられる種類のつまずきです。

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FAX-OCRの先に描く受発注データ連携

FAX-OCRは終点ではなく、受発注データ連携へ向かう途中の一歩です。入力の自動化で自社の負荷を下げ、帳票様式の統一で項目を揃え、受発注データ連携で直接のやり取りへ移し、発注画面の提供まで進める道筋が描けます。取引先の準備は一様ではありませんので、相手ごとに到達点を変える設計が現実的です。4つの段をすべての取引先で踏む必要はありません。

受発注データ連携の方式は、取引先の情報システムと直接つなぐ形と、画面から注文を受ける形の2つに分かれます。前者は定型の大量の取引に向き、後者は担当者が都度入力する取引に向きます。小規模な企業向けの共通仕様に基づく認証の制度は2020年に始まったと報じられています8。企業間のデータ連携を扱う公的な解説も、受発注のコスト削減を主題に置いています3。

移行の順序は、自社の負荷が下がる打ち手から始めます。取引先に変更を求める打ち手を先に出すと、交渉が長引いて全体が止まります。入力の自動化で自社が先に効果を出し、その結果をもとに帳票様式の統一を依頼する流れが通しやすい形です。様式が揃えば、保守する定義の数も減ります。

取引先に負担をかけない配慮も要ります。相手の受注担当が使う道具を変える依頼は、相手側の手順書と教育の費用を生みます。移行の期間はFAXと新しい方式の並行の受付を認め、締め切りを設けずに移す進め方が受け入れられやすい形です。並行の期間が延びると自社の手間が二重になりますので、進み具合を数える指標を決めておきます。

段階的なデジタル化のロードマップは、3層で描けます。第一層は自社内の入力と保存、第二層は取引先との項目の統一、第三層はデータの直接の連携です。層ごとに、対象の得意先数、電子で受け取れた注文の割合、確認に要した時間という3つの指標を置きます。層を飛ばして第三層から着手すると、揃っていない項目の調整で滞ります。

ここまでの工程には、帳票と受注業務の知識、基幹システムの仕様の理解、法令の要件の確認という3領域が関わります。社内で束ねる場合は、業務部門、情報システム部門、経理という3者の合意が要ります。外部の支援を使う場合も、判断の基準を決めるのは自社です。支援の範囲を、要件の整理、検証の設計、連携の実装のどこまでとするかを先に定めます。

受発注データ連携まで見通しておくと、いま選ぶ仕組みの見方が変わります。抽出した値を外部へ渡せる形で保持しているか、項目の追加に耐えるかという観点が加わります。目の前の入力の削減だけで選ぶと、次の段階で作り直しになります。

入力の自動化で自社の負荷を先に下げ、帳票様式の統一で得意先ごとの様式を寄せ、受発注データ連携で項目を決めて直接やり取りし、発注画面の提供で得意先が自ら注文を入力する形まで進む順序を表しています。
入力の自動化から受発注データ連携へ向かう移行の順序

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よくある質問

手書きの注文書でも読み取れますか

読み取りの対象にはなりますが、活字に比べて値の取り違えが起きやすくなります。手書きの多い得意先は、確信度の低い項目を人の画面へ回す設定にし、品番と数量は在庫マスタとの突き合わせで検算します。印字の注文書への切り替えを並行して依頼すると、確認に回る件数が下がります。

導入にはどのくらいの期間がかかりますか

期間は対象の様式の数と基幹システム連携の方式で変わりますので、一律の目安は置けません。判断の材料になるのは、様式の種類数、手書きの有無、連携先の受け口の仕様という3点です。受注件数の上位の得意先へ絞って検証から始めると、範囲が定まり見通しを立てやすくなります。

費用はどのように見ればよいですか

初期の構築と、稼働後の従量や保守という2系統で見ます。減る入力の時間だけでなく、確認と例外の処理、様式の定義の保守という新しい作業も並べて比べてください。紙の保管と検索に費やしていた手間を比較に含めると、判断がぶれにくくなります。

電子で受信したFAXもスキャナ保存の要件に沿えばよいですか

紙で受け取った書類と、電子のまま受信した取引データでは保存の扱いが分かれます。電子でやり取りした取引情報は電子取引の保存として整理され、判定期間の売上高が5,000万円以下でダウンロードの求めに応じられる場合など、検索の要件が緩和される定めもあります*6。自社の受信の方法がどちらに当たるかを、一問一答の最新版で確認してください。

読み取りの精度はどの程度を見込めばよいですか

精度は帳票の様式、記入の状態、送信時の画質で動きますので、事前に一律の値は置けません。過去の帳票を用い、項目ごとの一致率、人の修正が入った件数、1件あたりの確認時間という3つを測り、自社の基準を作ります。全体の平均だけでは、特定の項目の弱さが隠れてしまいます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:Microsoft「Azure Document Intelligence 概要(公式ドキュメント)」(2026) 経路
  2. *2 出典:Google「Document AI ドキュメント(概要)」(2026) 経路
  3. *3 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020) 経路
  4. *4 出典:総務省「令和6年通信利用動向調査の結果(報道資料)」(2025) 経路
  5. *5 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025-成長のためのDXに求められる取組」(2025) 経路
  6. *6 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(2025) 経路
  7. *7 出典:公益社団法人日本文書情報マネジメント協会「JIIMA認証制度(電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証ほか)」(2026) 経路
  8. *8 出典:日経BP(日経クロステック)「ITコーディネータ協会、FAX受発注に代わる「中小企業共通EDI」の認証制度を開始」(2020) 経路

画像の出典元

  1. Close-up of a red check mark on a crisp white paper with bla/Photo by Tara Winstead on Pexels
  2. Professionals engage in a dynamic meeting discussing charts/Photo by Antoni Shkraba on Pexels
  3. Flat lay of clipboards arranged in a pattern showcasing blan/Photo by DS stories on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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