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FAX-OCRの導入期間と枚数の目安:公開値の幅と、一部の取引先から試す進め方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • FAX-OCRの導入期間の公開値は「最短1時間で初期運用」から「導入決定後2か月で本稼働」の事例まで幅があり、測っている区間が違う
  • 期間と手間を左右するのは、取引先ごとの書式の数、設定の担い手、受注システムへの受け渡しの範囲
  • 「月何枚から効果が出る」という公開の基準はなく、枚数は書式の数・確認作業の残り方・料金体系と合わせて見る
  • 認識率98%はPFU基準帳票での提供元の検証値で、自社のFAXでは目視確認が残る前提で計画する
  • 一部の取引先で試し、読取結果・確認時間・修正の減り方を見て対象を広げる

Business professionals engaged in a conversation in a contemporary office setting.
▽ 写真の出典元

FAX-OCRは使い始めまでに何がどれだけかかるのか:公開値の幅と読み方

毎朝届くFAX注文を受注システムへ打ち込み、別の人が読み合わせて確認する。
その手間を減らそうとFAX-OCRを検討しても、上司に「いつから使えて、月何枚くらいから効果が出るのか」と聞かれると答えに詰まります。
公開されている導入期間は、最短1時間で初期運用というサービスから、導入決定後2か月で本稼働した事例まで幅があり、差は取引先ごとの帳票の設定量とシステム連携の範囲から生まれます。
枚数に「月何枚から」という公開の基準は見当たらないため、書式の数、確認作業の残り方、料金体系と合わせて見積もり、一部の取引先で試してから広げると、社内に説明しやすくなります。

「最短1時間」型の公開値

株式会社SpreadのSP-FAX AI OCRは、初期設定に約5分、1件の読み取り体験に約15分、外部への出力を有効にするまでを含めて、最短1時間で初期運用に入れると案内しています5。
同じページの比較表では、導入期間を「即日」としています5。

ここでいう初期運用は、サービスを使える状態にし、届いたFAXを読み取らせ、その結果を外部へ出せるところまでを指しています。
取引先ごとに異なる注文書に合わせた調整や、受注システムの項目に合わせた取り込みの作り込みまでが、この1時間に含まれるとは書かれていません。
「1時間で全取引先の注文が自動で入るようになる」と受け止めると、社内の期待と実際の立ち上がりがずれてしまいます。

導入決定から本稼働まで2か月の事例

もう一方の端にあるのが、PFUが紹介している建材商社F社の事例です。
F社はFAXやメールで届く1日100件以上の帳票を扱っており、導入決定から1か月後に暫定稼働、2か月後に本稼働を始めました2。

この2か月は、ツールが使える状態になるまでではなく、業務として本番で回り始めるまでの期間です。
ただし事例ページには、取引先の数や暫定稼働の範囲、読み取り後にどう確認していたかは書かれておらず、導入した製品名も読み取れません。
匿名の1社の実績なので、自社でも2か月で本稼働できる根拠にはなりません。
「1日100件以上の帳票を扱う会社で、決定から本稼働まで2か月だった例がある」という程度に受け止めるのが妥当です。

幅が出る理由

最短1時間と2か月という差は、どちらかが誇張しているというより、測っている区間が違うことから生まれています。
前者は「サービスを使える状態にするまで」、後者は「導入を決めてから業務を本番で回すまで」の長さです。
後者の区間には、取引先ごとの書式に合わせた設定や、読み取ったデータを受注システムへ渡す準備、読み取り結果を誰がどう確認するかという手順づくりが入ってくると考えられます。

上司に期間を説明するときも、一つの数字で答えるより、区間を分けて示すほうが誤解が少なくなります。
たとえば次のような分け方です。

  • 試し始めるまで:サービス型なら即日から始められるという公開値がある
  • 一部の取引先で運用するまで:対象にする取引先の書式の数と、確認手順の準備で長さが変わる
  • 本稼働まで:1社の事例では導入決定から2か月

このうち二つ目の区間の長さは、公開値からは言えません。
ここを左右するのが、帳票ごとの設定量と、受注システムとの連携の範囲です。

期間を左右するのは帳票ごとの設定量と連携の範囲

取引先ごとのレイアウト登録量

FAX注文書の読み取りでは、どこに書かれた文字を「品番」「数量」「納期」として扱うかをOCRに教える必要があります。
この読み取り位置と項目の対応をまとめたものを、ここではレイアウトと呼びます。
取引先が自社の書式で注文書を送ってくる場合、品名欄の位置も数量の書き方も取引先ごとに違うため、レイアウトは取引先の数に近い数だけ必要になりえます。

その規模感を示すのがMizkan Logitecの事例です。
大阪と名古屋の受注センターで全国からの注文を処理する同社は、2026年に発注書向けのAI-OCRを導入し、登録・運用したFAXレイアウトは当初目標の約600件を大きく上回る1,400件以上になりました3。

目標の2倍を超えたという結果は、始める前に数えた書式の数が、運用してみて必要になる登録数と一致するとは限らないことを示しています。
たとえば同じ取引先でも、営業所ごとに注文書の様式が違ったり、途中で様式を改めたりすれば、別のレイアウトとして扱う必要が出てきます。
なお、この記事には導入にかかった期間が書かれていないため、1,400件の登録に何か月かかったかは分かりません。
レイアウト数から期間を計算する式も、公開値からは作れません。

プリセットと設定代行

登録の手間を減らす方法として、製品側の用意の仕方は大きく二つ見られます。
一つは最初から雛形を持っている形で、SP-FAX AI OCRは注文書・請求書・見積依頼などのプリセットと、9業種のビジネスルールを備えています5。
もう一つは設定を専門の技術者に任せる形で、PFUはDynaEye 11 Entry AI-OCRのスタートアップサービスとして、OCR定義の作成、運用環境のセットアップ、出力データの変換設定を技術者が代行するとしています4。

どちらの形でも、帳票ごとの設定という作業そのものが消えるわけではありません。
雛形で読める範囲を広げるのか、設定作業を外部の技術者に任せるのか、担い手と進め方が製品ごとに違うということです。
そのため「定義が要る製品は遅く、要らない製品は早い」と単純には言えません。
自社の取引先の書式が雛形でどこまで読めるのか、読めない書式の設定を誰が行い、その費用が料金に含まれるのかによって、期間も初年度の費用も変わります。

基幹・受注システムとの連携

読み取りが済んでも、そのデータが受注システムに入らなければ転記の手間は残ります。
いまの業務で、担当者がFAXを見ながら受注画面に品番と数量を打ち込んでいるなら、OCRで減るのは「紙を見て文字を打つ」部分です。
読み取った結果を受注システムへどう渡すかで、その先の手作業が残るかどうかが決まります。

SP-FAX AI OCRは、kintone、弥生(CSV取込)、Salesforce、Access、Webhookなどとの連携を用意しており、クラウドのコネクターは追加料金なしとしています5。
Mizkan Logitecも、AI-OCRを既存の受発注プラットフォームと連携させています3。
一方、PFUのスタートアップサービスに出力データの変換設定が含まれていることは、読み取ったデータを受け取り側の形式に合わせる作業が、導入時の一つの工程になることを表しています4。

自社の受注システムに用意されたつなぎ方があれば準備は短く済み、独自に作り込んだ基幹システムへ取り込むなら、項目の対応づけや取り込み結果の確認に時間がかかります。
期間の見積もりでは、読み取りの設定と並んで、この受け渡しの範囲を最初に洗い出しておくと、後から工程が増えにくくなります。

導入期間と手間を左右する要素のつながり
取引先ごとの書式の数、設定の担い手、受注システムへの渡し方の三つが、本稼働までの期間と手間に影響することを示す図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 取引先ごとの書式の数
    • 書式ごとに読み取り位置と項目の登録・調整が増える
    • 当初目標約600件に対し1,400件以上を登録した事例がある
  2. 設定を誰が担うか
    • 注文書などのプリセットから始める
    • OCR定義の作成や出力データの変換設定を技術者が代行する
  3. 受注システムへの渡し方
    • 用意された連携やCSV取込で渡す
    • 既存の受発注の仕組みに合わせて出力を変換する
  4. 使い始めから本稼働までの期間と手間
    • 初期運用までの区間と本稼働までの区間で長さが変わる

出典:LNEWS「Mizkan Logitec/AI-OCR導入、持続可能な物流体制構築へDXを加速」(2026年、Mizkan Logitecの1社事例)、株式会社Spread「SP-FAX AI OCR サービスページ」(2026年)、株式会社PFU「DynaEye 11 Entry AI-OCR 発売ニュースリリース」(2025年)

月に何枚から効果が出るのか:枚数は単独の基準にならない

月1万2000枚の事例の前提

上司から次に聞かれやすいのが「うちの枚数で入れる意味があるのか」です。
ただ、公開されている資料には、ベンダーが「月何枚以上なら効果が出る」と示した基準は見当たりません。
枚数だけで線を引ける根拠がない以上、社内説明でも閾値をつくらず、枚数を他の条件と組み合わせて示すことになります。

参考になる規模の事例はあります。
Mizkan Logitecでは、導入前に月約1万2000枚のFAX発注書を受けていました3。
これは受発注全体の約15%で、残りの約85%はすでにEDI(企業間で受発注データを電子的にやり取りする仕組み)に移っていました3。
導入前はFAX発注書を手作業で入力し、ダブルチェックも必要でしたが、導入後は商品名の候補を自動で認識し、自社の商品コードとひも付けることで入力作業が大幅に減ったと報じられています3。
削減の割合は記事に書かれていません。

この事例は、全国の注文を集約する受注センターの話です。
F社も1日100件以上の帳票を扱う規模ですが、こちらは件数で示されていて、枚数には置き換えられません2。
どちらも小口の事業者でどれだけ効果が出るかを示すものではなく、「この枚数を超えれば効果がある」という読み方はできません。

枚数以外に見る3つの条件

枚数と並べて見たいのは、次の三つです。

  • 取引先ごとのレイアウト数:同じ枚数でも、書式の種類が多いほど登録と調整の手間が増える
  • 読み取り後の確認作業の残り方:目視の確認や商品コードとの照合がどれだけ残るか
  • 料金体系:枚数に比例して費用が増えるか、年額で固定か

たとえば月500枚のFAXが、ほぼ同じ書式で送ってくる3社から届いている場合と、80社からばらばらの書式で届いている場合を比べてみます。
前者はレイアウトが少なく、試しに読ませた結果がそのまま全体の見通しになります。
後者は1社あたりの枚数が少なく、書式ごとに設定と確認をしても、その手間に見合うだけの枚数がない取引先が出てきます。
枚数が同じでも、どこから手を付けるか、どこまでをOCRに任せるかの判断が変わります。

確認作業の残り方も、効果の大きさを左右します。
Mizkan Logitecで入力が減った理由として報じられているのは、文字を読むことよりも、商品名の候補を認識して自社の商品コードに結び付ける部分でした3。
受注入力で時間がかかっているのが、FAXの品名を見て自社の商品コードを探す作業なら、その照合をどこまで自動にできるかが、枚数以上に効いてきます。

社内説明の材料としては、いまの月の枚数に加えて、取引先数と書式の種類、1枚の入力と確認にかかっている時間を並べておくと、どの程度の手間が減りうるかを話し合いやすくなります。

20代後半の日本人女性がFAXの送信をしている場面

料金体系で見る枚数の影響:従量型と枚数無制限型の費用の傾き

従量制の見方

従量制では、読み取ったページ数に比例して費用が増えます。
SP-FAX AI OCRは初期費用と月額費用が0円で、OCR処理は1ページあたり10pt(税込10円相当)です5。
月100ページなら1,000円、月1,000ページなら1万円という計算になります。

この形の利点は、試す段階で固定費がかからないことです。
一部の取引先だけで試しても、費用はそのページ数分に限られます。
注意したいのは、数えるのが注文件数ではなくページ数である点で、1件の注文が2ページにわたる取引先が多ければ、件数の倍近い費用になります。
また、この料金は読み取り処理の費用で、読み取り後に担当者が確認・修正する時間の人件費は含まれません。

年額・枚数無制限型の見方

もう一つの形が、年額で枚数に制限がないライセンスです。
PFUが2025年に販売を始めたDynaEye 11 Entry AI-OCRは、初年度2,016,000円、2年目以降は年336,000円(いずれも税抜)で、読み取り枚数に制限はありません4。
同じシリーズには、年6,000ページまでのEntry Lite AI-OCRも用意されています4。

年額型では、枚数が増えても費用は変わらないため、1枚あたりの費用は枚数が多いほど下がります。
反対に、枚数が少ないうちは固定費の重さが目立ちます。
なお、発表された価格に、設定代行にあたるスタートアップサービスの費用が含まれるかは、価格表示からは読み取れません。
見積もりを取る段階でライセンスと設定作業を分けておくと、初年度の費用を説明しやすくなります。

比較するときの注意

費用の増え方の違いを、数字で一度確かめておきます。
以下は編集部の計算で、損益分岐を示すものではありません。
初年度の2,016,000円を1ページ10円で割ると約20万ページで、月にならすと約1万7千ページです。
2年目以降の336,000円を同じく割ると年約3.4万ページ、月約2,800ページになります。

つまり、従量型で月約1万7千ページを読み取ると初年度の年額型の金額に並び、2年目以降は月約2,800ページで並ぶ、という費用の傾きの違いが見えます。
ただしこの比較はかなり大まかです。
一方は税込、もう一方は税抜の表示で、製品の提供の仕方も、設定作業の担い手も、読み取り後の確認の仕組みも違います。
別の製品どうしを価格だけで並べた計算なので、「月何枚を超えたら年額型が得」という結論には使えません。

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自社の判断で使えるのは、費用の傾きの考え方のほうです。
試す段階や、枚数がまだ読めない段階では従量型の固定費のなさが効き、全量を長く読み取る見通しが立ってからは、年額型との比較が意味を持ってきます。
実際に比べるときは、候補の製品ごとに、自社の月の枚数と1注文あたりのページ数で年間の費用を出し、設定作業と確認作業の手間を並べて見積もることになります。

観点 従量型(SP-FAX AI OCRの例) 年額・枚数無制限型(DynaEye 11 Entry AI-OCRの例)
固定でかかる費用 初期・月額0円 初年度201万6000円・2年目以降年33万6000円(税抜)
枚数が増えたとき 1ページ10円相当(税込)ずつ増える 枚数制限なしで年額は変わらない
年額をページ単価10円で割った目安(編集部の計算) 該当なし 初年度は年約20万ページ・2年目以降は年約3.4万ページ
価格表示から読み取れないこと 読み取り後の確認・修正にかかる人件費 設定代行(スタートアップサービス)の費用を含むか

読取精度の公開値は何を前提にした数字か

98%と80%の前提

読取精度について、PFUはFAX注文書を例に、従来のOCRの認識率が80%だったのに対し、AI-OCRでは98%だったと紹介しています1。
この数字には「PFU基準帳票を用いた認識精度結果」という注記があり、PFU自身が用意した帳票での検証値です1。

記事には、98%が文字ごとの割合なのか、項目ごとの割合なのかは書かれていません。
手書き部分を含むかどうかも分かりません。
この違いは、読み取り後の確認作業の見積もりを大きく変えます。
仮に文字単位の98%なら、200文字ほどの注文書で4文字前後の誤りが出る計算で、1枚ごとの確認が欠かせません。
項目単位の98%なら、50項目の注文書で1項目前後になります。
どちらにしても「98%だから確認は要らない」とは読めず、目視の確認が残る前提で計画を立てるのが安全です。

手書き・形式違いのFAXでの限界

自社に届くFAXが、検証用の帳票と同じ条件とは限りません。
FAXは送り手の機械で読み込まれるときに傾いたり、拡大・縮小されたりして届くことがあります。
PFUの無償事前検証サービスの条件には、罫線や特徴的な印刷のない帳票、5°以上の大きな傾き、±10%以上の拡大縮小があると正しく認識できないことが挙げられています6。
これはこの検証サービスの条件で、FAX注文書全般の限界を示したものではありませんが、どんな画像で読み取りが崩れやすいかの手掛かりになります。

PFUはコラムの中で、FAXの読取精度を上げるポイントとして、FAXに対応したAI-OCRを使うこと、複合機に保存された受信画像をそのままOCRにかけること、傾きや拡大縮小を補正できるOCRを選ぶことの三つを挙げています1。
受信したFAXをいったん紙に印刷し、それをスキャナーで読み込み直している運用なら、画像の質が下がりうる工程が一つ増えていることになります。
受信画像をそのまま取り出せるかどうかは、製品を選ぶ前に、自社の複合機やFAXの受け方で確かめられる点です。

手書きについては、FAX注文書での読取率を示す公開値は見当たりません。
印刷された注文書に、取引先の担当者が数量を手で直したり、納期を書き足したりして送ってくる場合、その追記部分は確認の対象として残しておく前提で考えるのが現実的です。

修正を積み重ねる仕組み

精度は導入時点で決まりきった値ではなく、修正の積み重ねで確認の手間が変わる仕組みを持つ製品もあります。
SP-FAX AI OCRでは、レビュー画面で読み取りの誤りを直し、誤読のパターンを辞書に登録すると、以後は自動で補正されます5。
同じ修正が2回以上あると辞書への登録を提案する機能や、商品マスタとの連携も用意されています5。

40代後半の日本人男性が複合機での出力をしている場面

この仕組みが前提にしているのは、最初から誤りがゼロになることではなく、取引先ごとに繰り返される誤りを一つずつつぶしていく運用です。
Mizkan Logitecで入力が減ったのも、商品名の候補を自社の商品コードに結び付ける部分でした3。
どちらも、読み取った後の照合や補正をどう減らすかに効果の源がある点で共通しています。
導入前に知りたいのは、公開された精度の数字よりも、自社の注文書で何をどれだけ直すことになり、その修正が回を重ねて減っていくかどうかです。

項目 認識率(%)
従来OCR 80
AI-OCR 98

一部の取引先から試して広げる進め方と、試す前に確認する項目

試用・検証の公開条件

期間も効果も、自社の取引先の書式と確認作業の実際を見ないと決まりません。
そこで、まず一部の取引先で試し、その結果で対象を広げる進め方が現実的になります。
小さく試すための公開条件は、提供元ごとにかなり違います。

SP-FAX AI OCRには、メールアドレスの確認後14日間、最大50ページまで無料で使える体験があります5。
50ページあれば、たとえば枚数の多い取引先5社から10枚ずつ読み取らせ、取引先ごとの読み取りの癖を比べる程度のことはできます。

PFUのDynaEye 11には無償の事前検証サービスがあり、サンプルの帳票を預けると約2週間(10営業日)を目安に評価結果が返ってきます6。
ただし対象は2種類の帳票までで、レイアウトが一定で項目の位置が決まっている定型帳票に限られます6。
秘密情報や個人情報を含む帳票は受け付けていません6。
取引先ごとに書式が違うFAX注文書をまとめて評価してもらう用途には条件が合わず、自社指定の注文書を多くの取引先が使っている場合に、その書式を確かめる使い方が向いています。

実際の注文書には、取引先の担当者名や単価などの取引条件が載っています。
試用や検証に出す前に、その帳票を社外のサービスで扱ってよいか、どの項目を伏せるかを社内で決めておくと、試す段階で手が止まりにくくなります。

拡大を判断する3つの指標

試す取引先は、枚数が多く書式が安定しているところから選ぶと、少ない設定で多くの注文をカバーでき、結果も読み取りやすくなります。
そのうえで、対象を広げるかどうかは次の三つで判断する方法を提案します。
実測で効果が確かめられた決まった手順ではありませんが、上司への説明に使える材料がそろいます。

  1. 試した取引先ごとの読取結果:どの項目を何回直したか
  2. 1枚あたりの確認・修正の時間:同じ取引先の注文を手入力していたときと比べてどうか
  3. 修正の減り方:辞書登録やマスタとの照合を反映した後、同じ誤りが繰り返されていないか

一つ目は、取引先ごとの向き不向きを見るための記録です。
品番は正しく読めても、手書きで直された数量だけは毎回直しているなら、その取引先は数量欄の確認を残したまま運用に移すのか、しばらく手入力を続けるのかを決められます。
二つ目は効果の大きさそのもので、確認に手入力と同じだけ時間がかかるなら、その取引先を急いで移す理由は薄くなります。
三つ目は、試用期間の結果を本運用の見通しにつなげるための指標で、修正が回を追うごとに減っていれば、初回の結果より良い状態を見込めます。

この三つで本運用に移せた取引先は試用の対象から外し、次の取引先を加えて同じ確認を繰り返すと、書式の多い取引先ほど後ろに回る順番になります。
最後まで手間が見合わない取引先が残った場合は、その分を手入力のまま残すという判断もありえます。
Mizkan LogitecはFAXとEDIを併用しながら、今後はFAX発注の廃止と完全なEDI化を目指すとしています3。
OCRですべてを読み取ることだけがゴールではない、という見方を持っておくと判断の幅が広がります。

導入前の確認リスト

試す前に、自社の状況として次の点を手元で整理しておくと、ベンダーへの相談でも社内説明でも話が早くなります。

  • 月のFAX枚数と、1注文あたりのページ数
  • 取引先の数と、書式の種類の数(同じ書式を使う取引先のまとまり)
  • 手書きの訂正や書き足しが、どの欄にどの程度あるか
  • 受信したFAXを画像のまま取り出せるか、紙に印刷してから扱っていないか
  • 読み取った結果を渡す受注システムと、その取り込み方法(CSV取込か、直接の連携か)
  • 商品コードや取引先との照合を、いまどこで誰が行っているか
  • 試用や検証に出せる帳票と、伏せる項目
  • 料金に設定作業や設定代行の費用が含まれるか、税込か税抜か

期間は「試し始めるまで」「一部の取引先で運用するまで」「本稼働まで」の区間に分け、費用は料金体系ごとに自社の枚数で年額を出し、効果は試用で測った確認時間と修正の減り方で示す。
この組み立てなら、公開値の幅をそのまま見せながら、自社に当てはめた説明ができます。

一部の取引先から試して対象を広げる繰り返し
一部の取引先で試し、読取結果の記録、確認時間の比較、辞書やマスタへの反映を経て本運用へ移し、次の取引先で同じ確認に戻る流れを示す図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 書式が安定した一部の取引先で試す
  2. 取引先ごとの読取結果と直した項目を記録する
  3. 1枚あたりの確認・修正の時間を手入力時と比べる
  4. 繰り返す誤りを辞書登録やマスタとの照合に反映する
  5. 修正が減った取引先を本運用へ移し、次の取引先を加える

公開されている期間や料金は製品ごとに前提が違い、自社の取引先の書式や受注システムにどう当てはまるかは、資料を読むだけでは判断しにくいためです。

自社のFAXの枚数、取引先ごとの書式、受注システムへの渡し方を整理し、どの取引先から試すと社内に説明しやすいかを確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
導入期間 「試し始めるまで」「一部の取引先で運用するまで」「本稼働まで」の区間に分けて示す
枚数 単独の閾値にせず、書式の数・確認作業の残り方・料金体系と合わせて見る
料金体系 従量型は枚数に比例、年額型は固定。税込・税抜と設定費用の有無をそろえて比べる
読取精度 公開値は提供元の基準帳票での値。自社の注文書で直す項目と回数を測る
試す範囲 枚数が多く書式が安定した取引先から始め、確認時間と修正の減り方で広げる
60代前半の日本人男性がキャビネットからの取り出しをしている場面

試用の結果をどう読み、どこまで対象を広げるかは、確認作業の実態と取引先との関係を合わせて決める必要があるためです。 試した取引先の読取結果と確認時間をもとに、本運用へ移す範囲と、手入力やEDIへの切り替えで残す範囲の考え方を確かめられます。

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よくある質問

取引先が数十社あるFAXをすべて読めるようにするには、何から始めればよいですか。

全社分を一度に設定しようとせず、月の枚数が多く、書式が安定している取引先から始めるのが進めやすい方法です。
Mizkan Logitecでは、登録したFAXレイアウトが当初目標の約600件を大きく上回る1,400件以上になっており3、始める前の見込みより書式が増えることもあります。
まず取引先ごとの月の枚数と書式の種類を一覧にし、枚数の多い順に数社で試して、読取結果と確認時間を見てから対象を広げると、設定の手間と効果の釣り合いを確かめながら進められます。

手書きの追記があるFAXは、OCR後の目視確認がどのくらい残りますか。

手書きの追記がFAX注文書でどの程度読めるかを示す公開値は見当たらず、目視確認がどれだけ残るかは一概に言えません。
PFUが公表している98%の認識率もPFU基準帳票での結果で、手書きの扱いは書かれていません1。
数量の訂正や納期の書き足しなど、手書きの入りやすい欄は確認対象として残す前提で考え、試用の段階でその欄を何回直したかを取引先ごとに記録しておくと、本運用での確認の量を見積もれます。

個人情報や取引条件を含むFAXを、試用や事前検証に出せますか。

提供元ごとに扱いが違います。
PFUのDynaEye 11の無償事前検証は、秘密情報や個人情報を含む帳票を受け付けていません6。
試用サービスに実際の注文書を読み込ませる場合も、利用規約やデータの扱いを確かめたうえで、社外に出してよい範囲を社内で決めておく必要があります。
担当者名や単価など伏せる項目を先に決めておくと、検証の段階で止まりにくくなります。

従量制と年額定額制は、月何枚くらいを目安に選び分けますか。

月何枚で切り替えるという公開の目安はありません。
参考までに、SP-FAX AI OCRの1ページ10円相当(税込)5と、DynaEye 11 Entry AI-OCRの初年度2,016,000円(税抜)4を比べると、編集部の計算では年約20万ページ(月約1万7千ページ)で金額が並びます。
2年目以降の年336,000円なら月約2,800ページです。
ただし税込と税抜の違いがあり、設定作業や確認作業の手間も製品ごとに違うため、損益分岐としては使えません。
候補の製品ごとに、自社の月の枚数と1注文あたりのページ数で年間費用を出して比べるのが確実です。

FAX-OCRと受注システムの連携は、CSV取込とAPI連携で何が違いますか。

CSV取込は、OCRの結果をファイルとして書き出し、受注システム側で取り込む方法で、取り込みの操作やファイルの受け渡しが手作業として残ることがあります。
APIなどでシステム同士を直接つなぐ連携では、読み取り結果が自動で渡るため、その操作が減ります。
SP-FAX AI OCRでは、弥生との連携がCSV取込と明記され、kintone、Salesforce、Access、Webhookなどとの連携も用意されています5。
どちらが使えるかは自社の受注システムが何を受け付けるかで決まるため、受注システム側の取り込み方法から確かめるのが近道です。

FAXから取引先にEDIへの切り替えを依頼する場合、OCRとどう併用しますか。

Mizkan Logitecは、受発注の約85%がすでにEDIで、残る約15%のFAX発注書にAI-OCRを導入し、今後はFAX発注の廃止と完全なEDI化を目指すとしています3。
EDIへの切り替えは取引先の側にも準備が要るため、移れる取引先から依頼し、移るまでのFAXはOCRで受けるという併用の形が取れます。
試用で読み取りの手間が見合わなかった取引先を、EDI切り替えの依頼先として優先する考え方もあります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:株式会社PFU(リコーグループ)「FAX注文書はOCRできる?精度を向上させる3つのポイント(デジタラクル コラム)」(2025年)
  2. 2 出典:株式会社PFU(リコーグループ)「導入事例 建材商社F社(PFU ワークスタイル)」(公開年不明)
  3. 3 出典:LNEWS「Mizkan Logitec/AI-OCR導入、持続可能な物流体制構築へDXを加速」(2026年)
  4. 4 出典:株式会社PFU(リコーグループ)「DynaEye 11 Entry AI-OCR 発売ニュースリリース」(2025年)
  5. 5 出典:株式会社Spread「SP-FAX AI OCR サービスページ」(2026年)
  6. 6 出典:株式会社PFU(リコーグループ)「DynaEye 11 無償事前検証サービス」(2025年)

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◆この記事について

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年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

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