◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- FAX-OCRの導入期間に標準はなく、公開事例と支援会社の目安は、原文の条件と一緒に扱う手掛かりにとどまる。
- 最初は入力の手間が多く様式を絞れる帳票を一つ選び、暫定稼働と安定稼働を分けて計画する。
- 試行には複合機の受信データとして届いた実際のFAXを使い、項目ごとの正誤と確認・修正の時間を測る。
- 人の確認は確信度の低い項目と誤りが許されない項目に絞り、連携は既存の取込形式から始める。
- 例外になりそうなFAXの収集と、導入後に帳票定義を追加する担当を先に決めておくと、延びる要因を減らせる。
目次

FAX-OCRは決定から実運用までどう進み、期間はどれくらいか
届いたFAXを見ながら受注内容を手で打ち込む作業を減らしたいのに、FAX-OCRの導入を決めてから使えるようになるまでの期間が読めず、稟議の計画が書けない。
この場面で頼れる、どの会社にも当てはまる標準の導入期間は公開されていません。
手掛かりは二つあります。
導入決定から暫定稼働、本稼働と段階を分けて短期間で稼働させた事例2と、帳票を一つに絞って数か月で安定稼働を見込む支援会社の目安4です。
期間を左右するのは、様式の固定度、読取量、連携、確認の運用です。
まず一つの帳票に絞り、自社に実際に届いたFAXで試行して、精度と確認の手間を測ります。
その結果をもとに、暫定稼働と安定稼働の二段で計画を立てられます。
手掛かりになる期間の目安は、事例と支援会社の見立て
FAX-OCRの導入期間について、どの会社にも当てはまる標準の月数は、公開資料からは確かめられません。
手掛かりになるのは、性格の違う二つの資料です。
一つは、OCRソフトウェアを提供するPFU(リコーグループ)が公開している、建材商社F社の導入事例です。
この会社には工事現場からの注文がFAXで届きます。
そのため、導入前にFAX帳票を正確に読み取れるかを試し、そのうえで導入しています2。
導入決定のあとはまず暫定稼働に入り、続いて本稼働を始めました。
どちらの段階にも、月単位の短い期間で到達しています2。
これは、FAXとメールで日々多くの帳票が届く会社の、一つの事例です。
もう一つは、AI-OCRの導入を支援する一創のコラムです。
対象を一つの帳票に絞った場合でも、構築から安定稼働までは数か月を見込むとしています。
そのうち最初の期間は、例外パターンの洗い出しに使うという目安です4。
例外パターンの洗い出しとは、普段の様式どおりに届かないFAXをどう扱うかを詰める作業と読めます。
どちらも条件付きの目安で、標準期間ではありません。
事例は一社の結果なので、帳票の量や社内の体制が違えば同じ期間にはなりません。
支援会社の目安は、一つの帳票に絞った場合の見立てです。
統計に基づく実測値ではありません。
二つを足し合わせたり平均したりして自社の期間を作るのも避けたいところです。
前提がまったく違う資料だからです。
稟議資料に期間を書くときは、出典の原文にある月数をそのまま引き、業種、帳票の量、対象を絞った条件を添えておきます。
そうしておけば、後で前提の違いを指摘されたときにも説明できます。
導入の段階:対象選定・試行・帳票定義・暫定稼働・本稼働
公開資料の流れを、導入を進める側の作業として並べ直すと、次の順になります。
この並べ方は資料をもとにした編集部の整理です。
どの製品にも同じ名前の工程があるわけではありません。
<ol><li>対象帳票の選定:最初に読み取らせる帳票を一つ決める</li><li>試行:自社に届いた実際のFAXで、読み取り精度と確認の手間を測る</li><li>帳票定義:読み取る位置や項目を製品に設定する</li><li>暫定稼働:人の確認を厚めに残したまま、日々の業務で使い始める</li><li>本稼働・拡大:確認の範囲を見直し、対象の帳票を広げる</li></ol>
このうち、短縮の工夫を資料で確かめられるのは帳票定義の進め方です。
F社の事例では、帳票定義の作成を利用者のトレーニングと並行して進め、時間を短くしました2。
定義が完成してから操作を教えるのではなく、定義を作りながら、使う人が画面に慣れていく形です。
導入を進める側が帳票定義に取りかかる時点で、FAXを確認する現場担当の予定も押さえておくと、この並行作業を組みやすくなります。
次の図では、選定と試行を「準備」、帳票定義とトレーニングを「構築」としてまとめています。
暫定稼働を先に置く考え方
ここでは、OCRの読み取り結果を業務で使い始めながら、人の確認を本番より多めに残しておく段階を暫定稼働と呼びます。
F社の事例も、本稼働の前に暫定稼働を置いています2。
この段階を先に置く利点は、試行では集めきれなかったFAXが、日々の流れの中で見つかることです。
試行用に集めたFAXは、どうしても手元にある分に偏ります。
暫定稼働の間に届く注文書には、取引先が様式を少し変えたものや、手書きの追記が入ったものが混ざるかもしれません。
支援会社が、最初の期間を例外パターンの洗い出しに充てる目安を示しているのも、同じ事情を指していると読めます4。
計画では、暫定稼働の開始と安定稼働の開始を別々の目標として置くことを勧めます。
稟議で稼働日を一つだけ約束すると、例外の対応に追われる時期が遅れのように見えてしまうからです。
二段に分けておけば、暫定稼働の時点で手入力のどこが減り、どの確認が残っているかを報告できます。
残りの期間を何に使うかも説明しやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 建材商社の事例
- 一社の結果であり標準ではない
- 暫定稼働と本稼働の両方に月単位の短い期間で到達
- 支援会社の目安
- 一つの帳票に絞った場合の見立て
- 構築から安定稼働まで数か月
- 最初の期間は例外パターンの洗い出し
- 稟議での書き方
- 出典の原文の月数をそのまま引く
- 業種・帳票の量・絞った条件を添える
- 二つを足したり平均したりしない
導入期間を変える条件:様式の固定度・読取量・連携・FAXの受け方
定型か非定型か
期間の差を生む一つ目の条件は、帳票の様式がどれだけ決まっているかです。
支援会社は判断の軸として、定型の帳票が中心か、非定型や手書きが多いかを挙げています5。
定型の帳票とは、項目の位置や書式があらかじめ決まっているものです。
非定型の帳票とは、送り手によって項目の並びや書き方が違うものを指します。
FAX注文書では、取引先ごとに様式は決まっていても、取引先が変われば様式も変わる、という形がありえます。
注文書のように取引先と様式の組み合わせが固定されていれば、テンプレートは取引先ごとに一回作ればよいとされています4。
つまり帳票定義の作業量は、届く枚数よりも、様式の異なる取引先の数で決まります。
たとえば、主要な取引先が自社指定の様式で注文を送ってくる場合と、取引先がそれぞれ自分の様式で送ってくる場合とでは、同じ注文書でも準備の量が違います。
前者なら一つのテンプレートで多くのFAXを読めますが、後者では取引先の数だけテンプレートが要ります。
手書きの欄が多い場合や、毎回レイアウトが変わる場合は、テンプレートを作っても読み取りが安定するまで調整が続く可能性を見込んでおきます。
月間枚数と繁閑
二つ目の条件は読取量です。
支援会社は、月間の枚数と繁閑の差を軸に挙げています5。
枚数そのものはOCRが処理しますが、期間に効いてくるのは人が確認する量です。
読み取り結果の一部は人の確認に回ります。
そのため枚数が多い会社ほど、確認を誰がどの時間帯に担うかを決めないと運用が回りません。
繁閑の差が大きい場合は、さらに注意が要ります。
閑散期の試行で問題がなかった設定でも、繁忙期に確認待ちのFAXが溜まれば、手入力のほうが早いという声が現場から出かねません。
暫定稼働の期間に繁忙期を一度通すか、少なくとも繁忙期に届いたFAXを試行に混ぜておくと、本稼働後の想定外を減らせます。
基幹連携の有無
三つ目の条件は、読み取った結果を基幹システムへどう渡すかです。
支援会社は、基幹システムへ自動で連携するかどうかを判断の軸に挙げています5。
読み取り結果をファイルに書き出して担当者が取り込む形と、受注データとして自動で登録する形とでは、導入前に決めることの量が変わります。
自動で登録するなら、連携先の仕組みに合わせて決めることが増えます。
OCRの項目と基幹システムの項目の対応づけ、取引先コードや商品コードの照合、誤ったデータが入ったときの取り消し方などです。
必要な作業は連携先によって違うため、どれだけ期間が延びるかを一律には言えません。
連携の具体的な進め方は、運用の節で扱います。
複合機の受信データを使う理由
ここまでの三つは、AI-OCR全般に共通する条件です。
FAXにはもう一つ、FAXをどうやってOCRに渡すかという固有の条件があります。
PFUの解説によると、FAXは受信した時点ですでに低い解像度で圧縮されています。
それを紙に印刷してからスキャンすると、画質はさらに落ちます1。
そこで同社は、紙を経由せず複合機の受信データをそのまま使うことを勧めています。
あわせて、傾きや拡大縮小を補正する機能があるかを導入時に確かめるよう挙げています1。
この解説は同社のAI-OCR製品を例にしたものです。
それでも、印刷とスキャンを挟むと画質が落ちるという点は、製品を選ぶ前に自社の受信経路を見直す理由になります。
支援会社も、複合機で受けたFAXやスキャンした画像を共有フォルダに集める入口の設計を示しています4。
いまFAXを紙に出力して担当者の机に配っているなら、導入期間の中に次の作業が入ってきます。
複合機の受信データをフォルダへ保存できるかを確かめ、保存先を誰が管理するかを決める作業です。
複合機の設定を変えられる人が社内にいるかどうかも、このとき確かめておきます。
| FAXの受け方 | OCRに渡る画像 | 導入時に確かめること |
|---|---|---|
| 紙に印刷してからスキャンする | 受信時の圧縮に加えてスキャンで画質がさらに落ちる | 紙を経由しない経路に切り替えられるか |
| 複合機の受信データを使う | 受信した時点の画質のまま渡せる | 受信データを共有フォルダへ保存できるかと傾き・拡大縮小の補正機能の有無 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 様式の固定度
- 様式の異なる取引先の数だけテンプレートが要る
- 手書きが多いと読取の調整が続く
- 読取量
- 人が確認する量が増える
- 確認を誰がどの時間帯に担うか決める
- 連携
- 項目の対応づけと取引先・商品コードの照合
- 誤登録したときの取り消し方
- FAXの受け方
- 受信データを共有フォルダへ保存できるか確かめる
- 複合機の設定を変えられる人を確かめる
自社の条件別に、短く始める進め方と時間をかける進め方を選ぶ
一つの帳票から始める場合
前の節の条件を、自社のFAXに当てはめてみます。
次の表は、支援会社が挙げる帳票の種類・読取量・連携の三つの軸5に、FAX固有の受け方を加え、進め方の選び分けとして整理したものです。
表の分け方は、公開資料の目安から導いた編集部の整理です。
どちらの列に当てはまれば何か月で終わる、という保証ではありません。
短く始めやすいのは、次のような会社です。
取引先と様式が固定された注文書が中心で、最初の対象を一つの帳票に絞れ、読み取り結果はCSVなどのファイルで取り込めれば足りる。
支援会社も、入力の手間が多く様式を絞れる帳票を一つ選び、その帳票で運用が回ることを確かめてから広げる進め方を定石としています5。
F社の事例のように帳票定義とトレーニングを並行させ、暫定稼働を先に置けば、手入力が減る時期を早められます2。
最初の対象は、枚数の多さより、入力の手間を基準に選びます。
たとえば、件数はそれほど多くなくても、品目の行が多く一枚を打ち込むのに時間がかかる注文書は、OCRで減らせる作業が大きい候補です。
反対に、件数は多くても項目が少ない伝票は、読み取りの効果より確認の手間のほうが目立つことがあります。
時間をかけて整える場合
次のような会社は、安定稼働までの見込みを長めに取る進め方が合います。
非定型の帳票や手書きの欄が多い、最初から基幹システムへ自動で登録したい、繁閑の差が大きい。
どれか一つが当てはまるだけでも、試行や暫定稼働で確かめることが増えるからです。
この場合も、全部を同時に始める必要はありません。
主要な取引先は固定の様式で送ってくるが、小口の注文は手書きのFAXで届く、という会社を考えてみます。
固定様式の注文書だけを先にOCRへ載せ、手書きの分はしばらく手入力のまま残す分け方ができます。
自動登録を望む場合も、まずファイル取込で暫定稼働し、読み取り結果の傾向が分かってから自動化へ進めます。
そうすれば、誤ったデータが基幹システムへ流れる心配を抑えながら進められます。
稟議では、最初に扱う範囲と後回しにする範囲を分けて書くと、期間の見積もりと期待する効果の説明が噛み合います。
すべてのFAXを一度に対象にした計画では、どこか一つの帳票で手間取っただけで、全体の稼働日が動いてしまいます。
| 軸 | 一つの帳票から暫定稼働へ進めやすい | 安定稼働までの見込みを長く取る |
|---|---|---|
| 帳票の種類 | 取引先ごとに様式が固定された注文書が中心 | 非定型の帳票や手書きの欄が多い |
| 読取量 | 確認の担当で無理なくこなせて繁閑の差が小さい | 繁閑の差が大きく繁忙期に確認が集中する |
| 連携 | CSVなどのファイル取込で足りる | 基幹システムへ最初から自動で登録したい |
| FAXの受け方 | 複合機の受信データを保存できる | 紙に出力して配る運用で経路の変更から必要 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 先にOCRへ載せる
- 固定様式の注文書
- まずファイル取込で暫定稼働
- 当面は手入力のまま
- 手書きで届く小口の注文
- 傾向が分かってから進める
- 基幹システムへの自動登録
本番前の試行:自社のFAXで何を用意し、何を測るか
試行に使うFAXの集め方
製品の説明にある読み取り精度は、提供元が用意した帳票で測った値です。
支援会社は、契約前に実際の帳票でPoC(本番前の小規模な検証)を行い、カタログの精度ではなく自社データでの精度を判断材料にするよう勧めています5。
PFUも、実際の注文書で無料トライアルを試すことを勧めています1。
試行に使うのは、最近実際に届いたFAXです。
集めるときは、紙の束から選ぶより、複合機の受信データとして残っているものを使います。
本番と同じ経路・同じ画質で試さなければ、試行の結果が本番の精度を表さないからです。
F社も、注文がFAXで届くことから、導入前にFAX帳票を正確に読み取れるかを試しています2。
何枚用意すればよいかの公開された基準はありません。
考え方としては、対象の帳票を送ってくる取引先ごとに複数枚を集めます。
きれいに届いたものだけでなく、文字がかすれたもの、手書きの追記や訂正があるもの、繁忙期に届いたものも意識して混ぜます。
読み取りにくいFAXを外して試すと、試行の結果は良く見えても、本番の確認作業が想定より増えてしまいます。
測る項目:項目別の正誤と確認時間
試行で記録するのは、帳票全体の正解率より、項目ごとの正誤です。
注文日、取引先名、商品コード、数量、金額、納期といった項目ごとに、正しく読めたか、どこで誤りや読み取れない箇所が出たかを残します。
取引先名は安定して読めるのに、数量の手書き欄だけ誤る、といった偏りが分かれば、人が確認する範囲をその項目に絞れます。
もう一つ記録したいのが、確認と修正にかかった時間です。
支援会社は試行で測るものとして、精度とあわせて確認率、つまり人の確認に回る割合を挙げています5。
確認に回る件数が多く、一件の修正にも時間がかかるなら、手入力は減っても確認の作業が新しく増えます。
今の手入力にかかっている時間と並べて比べると、実際にどれだけ作業が減るかが見えます。
合否の線をどこに引くかは、自社で決めることです。
公開資料に、一般的な基準値は示されていません。
試行の前に、確認に回る件数がどの程度なら暫定稼働へ進むか、どの項目が誤ったら対象から外すかを決めておきます。
そうすれば、結果を見てから基準を動かすことを避けられます。
無償評価版・事前検証サービスの例
試行の手段は製品によって違います。
例として、PFUのAI-OCR製品DynaEye(Entry AI-OCR/SDK AI-OCR)には、インストールした日から一定期間、機能制限なしで使える無償評価版があります3。
また、使い始める前に帳票での読み取りを確かめられる無償事前検証サービスもあります。
検証できる帳票数と項目数には上限があります3。
これらは同社製品の条件で、他社の製品には当てはまりません。
ただ、評価版に期間があることや、検証できる帳票数に上限があることは、試行の設計に関わります。
上限がある場合は、最初の対象に選んだ帳票と、読み取りが難しそうな帳票を優先して載せます。
評価版の期間が終わるまでに記録を取り終えられるよう、試行用のFAXは先に集めておきます。
他の製品を比べるときも、自社のFAXのサンプルを示して、試行の方法と、導入決定から稼働までに必要な作業を提供元に確かめます。
そうすると、期間の見積もりが自社の条件に近づきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 集めるFAX
- 最近届いたFAXを複合機の受信データで
- 取引先ごとに複数枚
- 混ぜる読みにくいFAX
- 文字がかすれたもの
- 手書きの追記や訂正があるもの
- 繁忙期に届いたもの
- 記録して比べる内容
- 項目ごとの正誤
- 確認に回る割合と修正の時間
- 今の手入力の時間
確認・修正と基幹システム連携を運用に組み込む
人が確認する項目の決め方
試行で項目ごとの誤りの傾向と確認の時間が見えたら、本番の確認作業を設計します。
前提は、読み取りがすべて正しくなることはない、という点です5。
支援会社は、読み取り結果をすべて人が見直すのではなく、確信度の低い項目だけを人に回す確認(ベリファイ)を工程に組み込むよう勧めています5。
確信度とは、OCRが自分の読み取り結果をどれだけ確からしいと判断しているかの目安です。
同じ支援会社の別のコラムでも、確認・補正は自動化しない工程として位置づけられ、確信度の低い項目だけを人に回す流れが示されています4。
確信度での振り分けとは別に、間違いが許されない項目を決めておくことも考えられます。
金額や数量、納期を読み違えたまま受注として登録すると、出荷や請求にそのまま響きます。
こうした項目は確信度が高くても必ず目を通すと決めておけば、確認の手間は増えますが、誤りが後工程へ流れる経路を一つ塞げます。
振り分けの基準値は製品や帳票によって違い、一般的な値は示されていません。
試行の記録から決めます。
現場担当の役割
確認と修正を毎日担うのが、導入を進める人とは限りません。
これまでFAXを見ながら入力してきた担当者が、読み取り結果を確認・修正する側に回ることが考えられます。
現場担当の仕事は、FAXを読んで打ち込む作業から、画面上の読み取り結果とFAXの画像を見比べ、印の付いた項目を直す作業に変わります。
導入を進める側が決めておきたいのは、運用の取り決めです。
誰がどの時間帯に確認するか、どの項目を必ず見るか、読み取れないFAXが来たら手入力に戻すのか、取引先へ問い合わせるのか、などです。
F社の事例で帳票定義と並行して進めたトレーニング2も、こうした新しい画面操作に慣れてもらう時間と考えれば、計画に組み込みやすくなります。
連携は取込形式から確認する
読み取り結果を基幹システムへ渡す方法として、PFUの解説は二つを紹介しています。
RPA(定型的なパソコン操作を自動で行うソフトウェア)と組み合わせる方法と、認識結果を業務システムの形式に変換できるAI-OCRを使う方法です1。
どちらを選ぶにしても、最初に確かめたいのは、今の基幹システムが受注データをどんな形で受け取れるかです。
CSVなどのファイルを取り込む機能がすでにあれば、OCRの出力をその形式に合わせることで、受注画面への手入力の多くをファイル取込に置き換えられます。
このとき減るのは、FAXを見ながら受注画面に打ち込む作業です。
残るのは、読み取り結果の確認と、取り込んだデータが正しく登録されたかの確認です。
自動投入は、ファイル取込で回るようになってから検討するのが無理のない順番です。
暫定稼働の間に、どの取引先のどの項目で修正が多いかが分かれば、自動化してよい範囲と、人の確認を残すべき範囲を判断する材料になります。
連携にかかる期間は連携先の仕組みによって違います。
固定の日数を見込むより、連携先の担当者や提供元に取込形式と必要な作業を確かめてから、計画に入れます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 確信度の低い項目
- 人に回して確認・修正する
- 誤りが許されない項目
- 金額・数量・納期
- 確信度が高くても必ず目を通す
- 運用の取り決め
- 誰がどの時間帯に確認するか
- 読み取れないFAXは手入力か取引先への問い合わせか
導入が延びる原因と、先に潰しておく手順
例外パターンの洗い出し
導入が延びる場面として公開資料から読み取れるのは、例外への対応と、導入後の帳票追加の二つです。
一つ目は例外パターンです。
支援会社は、対象を一つの帳票に絞った場合でも、最初の期間を例外パターンの洗い出しに使うとしています4。
例外への対応は、計画の中に最初から時間を取っておくべき作業です。
試行で見つからなかった例外が暫定稼働の後に次々と出てくると、それが本稼働の遅れとして表に出ます。
先に潰すには、試行の前に、例外になりそうなFAXを意識して集めておくことです。
たとえば、取引先が様式を改訂した直後の注文書、複数ページにわたる注文書、送付状が先頭に付いたFAX、手書きで数量を訂正したFAXなどです。
どれが自社で起きるかは、FAXを受けている現場担当がいちばんよく知っています。
導入を進める側が一人で集めるより、現場担当に「普段と違って入力に手間取ったFAX」を取り置いてもらうほうが、本番で出てくる例外に近いサンプルが集まります。
見つかった例外は、テンプレートを追加・調整して読めるようにするか、OCRの対象から外して手入力に回すかを、一件ずつ決めます。
すべてを読めるようにしようとすると、安定稼働がいつまでも来ません。
件数の少ない例外は手入力のまま残すと割り切ることも、期間を延ばさないための判断です。
新規帳票追加の担当を決める
二つ目は、導入した後の帳票の追加です。
新しい取引先との取引が始まったり、既存の取引先が様式を変えたりすれば、テンプレートの追加や調整が必要になります。
F社の事例では、導入後の新しい帳票定義の追加やチューニング、利用者からの問い合わせ対応を、IT部門で行いたいという要望がありました2。
この担当が決まっていないと、新しい様式のFAXが届くたびに、提供元に頼むか社内で対応するかを決めるところから始まります。
その間は手入力に戻ることになります。
本稼働で一度は減った手入力が、少しずつ戻ってくる状態です。
契約前の段階で、次の点を確かめておきます。
帳票定義の追加を社内で行えるか、そのために誰が操作を覚えるか、提供元に依頼する場合はどんな手続きになるか。
そうしておけば、拡大の段階でも期間が読めるようになります。
| 延びる場面 | 起きること | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 例外パターンが暫定稼働の後に見つかる | 調整が続き本稼働が遅れる | 現場担当に手間取ったFAXを取り置いてもらい試行に混ぜる |
| 例外の扱いが決まらない | すべて読ませようとして安定しない | 追加・調整するか手入力に回すかを一件ずつ決める |
| 新しい様式のFAXが届く | 担当を決める間は手入力に戻る | 帳票定義の追加を社内と提供元のどちらで行うか |
▼ 図の内容を文字で読む
- 例外になりそうなFAXを集める
- 様式を改訂した直後の注文書
- 複数ページや送付状付きのFAX
- 現場担当が取り置いた手間取ったFAX
- 例外の扱いを決める
- テンプレートを追加・調整して読ませる
- 対象から外して手入力に回す
- 導入後の追加の担当を決める
- 帳票定義の追加を社内で行えるか
- 提供元に頼む場合の手続き
期間の見通しは、自社のFAXの様式・量・連携先を並べてみないと決まらず、公開資料の目安だけでは稟議の計画に落とし込みにくいためです。
届いているFAXの種類と取込先を一緒に整理し、最初に扱う帳票と、試行で集めるFAX・測る項目を確かめられます。無料相談で要件を整理する
稟議の前に決めておくこと
導入の段取りの中で手を付ける時期が早いものから並べた
- 最初に扱う帳票を一つ決める(入力の手間が多く、様式を絞れるもの)
- FAXをOCRへ渡す経路(複合機の受信データを保存して使えるか)
- 試行に使う実際のFAXと、測る項目(項目ごとの正誤、確認・修正の時間)
- 人が確認する項目と、確認を担う現場担当
- 基幹システムへの渡し方(既存の取込形式から始めるか)
- 導入後に帳票定義を追加・調整する担当
非定型の帳票が多い場合や、基幹システムへの自動登録を最初から求める場合は、安定稼働までの見込みを長く取る計画に切り替える
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 期間の目安 | 標準期間はない。事例と支援会社の目安は条件付きの手掛かりとして、原文の条件ごと引く |
| 最初の対象 | 入力の手間が多く、様式を絞れる帳票を一つ |
| 計画の置き方 | 暫定稼働と安定稼働を別の目標にする |
| FAXの渡し方 | 印刷とスキャンを挟まず、複合機の受信データを使えるか |
| 試行で測ること | 項目ごとの正誤、確認に回る割合、確認・修正の時間 |
| 人の確認 | 確信度の低い項目と、誤りが許されない項目 |
| 連携 | 既存の取込形式から始め、自動投入は後で検討する |
| 導入後 | 帳票定義の追加とチューニングの担当を契約前に決める |
暫定稼働の後に残る確認作業や帳票追加の担当は、社内の体制と製品の条件の両方に関わり、導入を進める人だけでは決めにくいからです。 確認に回す項目の決め方、取込形式から始める連携の順番、導入後の帳票追加を誰が担うかを、自社の条件に沿って確かめられます。
よくある質問
FAXの画質が悪い取引先がある場合、導入前に何を確認するか
まず、その取引先のFAXを紙に印刷してからスキャンしていないかを見直します。
FAXは受信時点で低い解像度に圧縮されており、印刷とスキャンを挟むと画質はさらに落ちます。
そのため提供元は、複合機の受信データを使い、傾きや拡大縮小の補正機能があるかを確かめるよう勧めています1。
そのうえで、画質の悪いFAXを試行のサンプルに必ず含め、どの項目が読めないかを記録します。
読み取りが安定しない取引先は、当面は手入力に残し、対象から外すこともできます。
複合機で受けたFAXをOCRに渡すには、どの経路を確かめればよいか
複合機が受信したFAXを画像ファイルとして共有フォルダなどへ保存できるか、その保存先をOCRが読みにいけるかを確かめます。
支援会社も、複合機で受けたFAXを共有フォルダに集める入口の設計を示しています4。
いま紙に出力して配っている場合は、紙の出力を止めるのか併用するのか、保存先を誰が管理するのかも決めておくと、暫定稼働の初日に迷いません。
試行で何枚・何社分のFAXを用意すればよいか
公開された基準はありません。
最初に扱う帳票を送ってくる取引先ごとに複数枚を用意し、かすれたもの、手書きの訂正があるもの、繁忙期に届いたものを混ぜるのが目安になります。
製品によっては事前検証で扱える帳票数や項目数に上限があります3。
その場合は、最初の対象と読み取りが難しそうな帳票を優先します。
読み取り結果の人手確認は、誰がどの項目を見ればよいか
これまでFAXを見て入力してきた現場担当が、読み取り結果とFAXの画像を見比べる形が考えられます。
見る項目は、確信度の低い項目に絞るのが支援会社の勧める形です5。
加えて、金額や数量のように誤ると出荷や請求に響く項目は、確信度にかかわらず確認すると決めておく方法もあります。
振り分けの基準値は製品や帳票で違うため、試行の記録から決めます。
導入後に取引先の様式が増えた場合、帳票の追加は誰が担当するか
決まった答えはなく、社内で行うか提供元に依頼するかを契約前に決めておく事柄です。
F社の事例では、新しい帳票定義の追加やチューニング、利用者からの問い合わせ対応をIT部門で行いたいという要望がありました2。
社内で担うなら、誰が定義の操作を覚えるかを導入の時点で決め、トレーニングに含めておきます。
基幹システムへの自動連携を最初から入れるべきか
最初から入れなくても始められます。
自動で連携するかどうかは、導入の進め方を左右する軸の一つとされています5。
自動登録にすると、項目の対応づけや、誤ったデータが入ったときの扱いまで決めることが増えます。
既存の取込形式でファイルを取り込む形から始め、暫定稼働で修正の多い項目が分かってから自動化を検討すれば、誤ったデータが基幹システムへ流れる心配を抑えられます。
- 1 出典:株式会社ピーエフユー「FAX注文書はOCRできる?精度を向上させる3つのポイント」(2025年)
- 2 出典:株式会社ピーエフユー「導入事例(建材商社F社、OCRソフトウェア導入)」(2026年確認)
- 3 出典:株式会社ピーエフユー「DynaEye 11 無償評価版・無償事前検証サービス」(2026年確認)
- 4 出典:株式会社一創「AI-OCRの帳票処理の流れに関するコラム」(2026年確認)
- 5 出典:株式会社一創「AI-OCRの導入の進め方(帳票選定・PoC・ベリファイ)」(2026年確認)