◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 食材発注は「何をいくつ」「いつまでに」「誰へどう伝えるか」の3つに分け、数量の決め方から順に見直す。
- 発注数は(次の納品までの見込み使用量+安全在庫)−現在庫で考え、曜日・予約・天候の足し引きを記録に残す。
- 締めが早い仕入先ほど見込む期間が延びるため、締め時間・リードタイム・納品頻度を仕入先ごとに一覧にする。
- 伝え方は仕入先の対応状況・記録の残り方・締め時間・費用・品目数や店舗数で選び、どの方式でも控え・納品書・請求書をそろえて照合する。
- 数品目・仕入先1〜2社で2〜4週間試し、欠品回数・廃棄・発注時間・食材原価率で続ける・広げる・やめるを決める。
目次

足りない日と余る日が両方ある食材発注を、3つの問いに分けて見直す
昨日はキャベツが足りずに献立を変え、今日は葉物が余って処分する。
発注のたびに冷蔵庫を見て勘で数を決め、仕入先によって電話、FAX、LINEと送り方も違うため、頼んだつもりの品が届かないこともあります。
こうした食材発注の揺れは、発注を「何をいくつ」「いつまでに」「誰へどう伝えるか」の3つに分けると、直す場所が見えてきます。
先に発注数の決め方と仕入先の締め時間を整え、そのうえで注文の伝え方と記録・照合の形を選びます。
最後に品目と仕入先を絞って試し、欠品・廃棄・発注時間の記録で続けるかを決めます。
外食の食品ロスの規模と、発注が関わる範囲
農林水産省の推計では、2024年度に食品関連事業者から出た事業系食品ロスは237万トンで、そのうち外食産業は70万トンでした2。
食品ロスは飲食店にとって身近な問題で、余った食材を捨てるたびに原価が消えていきます。
ただし、この70万トンは外食産業全体の推計で、個々の店の発注が原因で出た廃棄の量ではありません。
環境省の事業者向け情報では、外食の食品ロスの要因として食べ残しや仕込みロスが挙げられ、取組として調理ロスの削減や提供サイズの調整などが示されています3。
発注量がそのうちどれだけを占めるかは、公的な資料では示されていません。
それでも発注と無関係とは言い切れないのが、店の実務の難しいところです。
たとえば、余るほど届いた野菜を傷む前に使おうとして多めに仕込み、営業で出し切れずに仕込みロスになる、という流れは起こりえます。
反対に、足りなくなるのを恐れて毎回多めに頼むと、使い切れない分が冷蔵庫に残ります。
どの品目でどちらが起きているかは店ごとに違うため、原因を発注だと決めつける前に、自店の欠品と廃棄がどこで出ているかを見るところから始めます。
「何をいくつ」「いつまでに」「誰へどう伝えるか」
勘と記憶で発注していると、数量の判断、タイミングの判断、仕入先への連絡がひとかたまりになっています。
冷蔵庫を見ながら頭の中で数を決め、そのまま電話をかけるので、うまくいかなかったときにどこで外れたのかが分かりません。
そこで、発注を次の3つの問いに分けます。
- 何をいくつ:在庫と使用量から、品目ごとの発注数を決める
- いつまでに:仕入先の締め時間、納品までの日数、納品頻度に合わせる
- 誰へどう伝えるか:電話・FAX・メッセージなどの伝え方と、控えや照合の形を決める
3つを分けると、同じ「足りなかった」でも原因が違うことに気づきます。
数の見込みが少なかったのか、締めに間に合わず翌々日の納品になったのか、伝えた数が仕入先に正しく届かなかったのかで、直す場所は変わります。
見直す順番は、数量の決め方、締めと納品の条件、伝え方と記録の順を提案します。
伝え方を先に変えても、送る数そのものが勘のままなら、欠品と廃棄の揺れは残るからです。
まず欠品・廃棄が出る品目を書き出す
最初の作業は、1〜2週間ほど、欠品と廃棄が起きた日をそのまま書き留めることです。
書く項目は、日付と曜日、品目、欠品か廃棄か、そのときの事情の4つで足ります。
事情の欄には「団体予約が入った」「雨で客足が落ちた」「仕込みを多く作りすぎた」「頼んだ数と違う数が届いた」など、思い当たることを短く残します。
書き出してみると、品目と曜日に偏りが見えることがあります。
たとえば週末の前に葉物が足りなくなり、週明けに同じ葉物が余るなら、問題は量の多少より、曜日による使用量の違いを発注数に反映できていないことかもしれません。
「頼んだ数と違う数が届いた」が繰り返されるなら、数量の決め方より伝え方と記録の問題です。
記録した一つひとつを、さきほどの3つの問いのどれに当たるかで分けておくと、次に何を直すかの順番が決まります。
すべての品目を一度に整える必要はなく、欠品か廃棄が何度も出た数品目が、この後の見直しの対象になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 何をいくつ(在庫・使用量・安全在庫から発注数を決める)
- いつまでに(締め時間・リードタイム・納品頻度に合わせる)
- 誰へどう伝えるか(伝え方と控え・照合の形を選ぶ)
食材の発注数の決め方:在庫・使用量・変動要因・発注点を紙1枚に置く
発注数の基本の式
欠品と廃棄が出る品目が見えたら、その品目の発注数を決める考え方をそろえます。
ここで提案するのは、次の式です。
- 発注数=(次の納品までの見込み使用量+安全在庫)−現在庫
見込み使用量は、次に食材が届くまでに使うと見込む量です。
安全在庫は、予想より多く注文が入ったときのための余裕分で、「多めに頼む」という感覚を品目ごとの数字に置き換えたものです。
現在庫は、発注するときに実際に数えた量です。
仮例で考えます。
キャベツを1日平均6玉使い、次の納品まで2日あり、安全在庫を3玉、いま冷蔵庫に5玉あるとします。
見込み使用量は12玉なので、(12+3)−5で発注数は10玉になります。
勘で「とりあえず1ケース」と頼んでいたときと比べて、なぜその数なのかを後から説明できるのが、この式の役割です。
発注点という言葉もよく使われます。
発注点は、在庫がこの数を下回ったら発注するという目安で、この式でいえば「次の納品までの見込み使用量+安全在庫」がそれに当たります。
日持ちする調味料や乾物のように、毎回数えるより「残りが発注点を切ったら頼む」と決めたほうが楽な品目もあります。
この式は編集上の提案で、公的な資料で効果が確かめられた手法ではありません。
欠品や廃棄がどれだけ減るかは店と品目によって違うため、まず主要な数品目で使い、記録で確かめる前提で扱います。
過去の使用量に予約・曜日・天候を足す
式の中でいちばん迷うのが、見込み使用量です。
出発点は過去の使用量で、前回数えた在庫に届いた量を足し、今回数えた在庫を引けば、その間に使った量が出ます。
この中には廃棄した分も含まれるので、前の節で書き出した廃棄の記録と合わせて見ると、実際に料理に使った量に近づきます。
使用量は曜日ごとに分けて見ます。
平日と週末で客数が違う店では、1週間の平均で数を決めると、週末は足りず平日は余るという、まさに最初に書き出したような揺れが起きやすくなります。
同じ曜日の数週分を並べ、その平均を基本の数にするだけでも、勘より根拠のある見込みになります。
そこに、その日の事情を足し引きします。
予約の人数、天候、近くで開かれる行事、季節のメニュー替えなどです。
どれをどれだけ足したかは、発注表の余白に「予約20名分+」「雨予報で−」のように残しておきます。
見込みが外れたとき、基本の数が合っていなかったのか、足し引きが合っていなかったのかを分けて振り返れるからです。
ここで大事なのは、見込みを当てることより、外れ方を記録に残すことです。
数週間分の記録がたまると、雨の日にどの品目がどれだけ減るかといった、店ごとの傾向を数字で話せるようになります。
傷みやすい品と日持ちする品で分ける
品目によって、同じ式でも安全在庫の置き方が変わります。
傷みやすさと単価の2つで分けると、どの品目にどれだけ余裕を持たせるかを決めやすくなります。
傷みやすく単価の高い品、たとえば鮮魚や一部の精肉は、余れば廃棄の損失が大きいので、安全在庫は小さくし、締め時間ぎりぎりまで数を確定させないほうが向いています。
傷みやすくても単価の低い品は、欠品で献立が崩れる影響のほうが大きい場合があり、少し余裕を持たせる判断もありえます。
日持ちする品は、余っても翌週に回せるため、発注点を決めて切らさない管理が合います。
仕込み品は別に考えます。
下ごしらえした状態で何日もつかによって、仕込む量が原材料の発注数を左右するからです。
仕込み量と発注数を別々に決めていると、片方だけ増やしてもう片方が合わない、ということが起きます。
すべての品目を4つに分けて表を作る必要はありません。
前の節で欠品や廃棄が出た品目がどこに当たるかを見て、その品目の安全在庫を決めるところから始めれば十分です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 次の納品までの見込み使用量(過去の使用量+予約・曜日・天候)
- +安全在庫(予想より多く出たときの余裕分)
- −現在庫(発注時点で数えた量)
- =発注数
▼ 図の内容を文字で読む
- 傷みやすく単価が高い
- 安全在庫は小さく
- 締め直前まで数を確定させない
- 傷みやすく単価が低い
- 欠品の影響と廃棄の損失を比べて余裕を決める
- 日持ちし単価が高い
- 発注点を決めて切らさない
- 在庫を持ちすぎない
- 日持ちし単価が低い
- 発注点を決めてまとめて頼む
欠品と廃棄を両方減らすには、締め時間・リードタイム・納品頻度を先に確かめる
仕入先ごとの条件を一覧にする
発注数の考え方がそろっても、同じ数がいつ届くかで、足りるか余るかは変わります。
式の中の「次の納品まで」という期間が、仕入先の条件で決まるからです。
そこで、仕入先ごとに次の項目を1枚にまとめます。
- 締め時間:何時までに注文すれば、どの納品日に間に合うか
- リードタイム:締めから納品までの日数
- 納品頻度:週に何回、何曜日に届くか
- 最小ロット:1回に頼める最小の数量や単位
- 欠品時の連絡:品切れのとき、いつ、どの方法で知らせてもらえるか
これらは仕入先ごとに違い、同じ仕入先でも品目によって違うことがあります。
一覧の数字は、記憶や前任者のメモではなく、仕入先の担当者に聞いて埋めます。
「たしか前日の夕方まで」と思っていた締めが実は昼だった、という食い違いが、毎週の欠品の原因になっていることもあるからです。
締めが早いときの数の決め方
締めが早いほど、予約や天候がはっきりする前に数を決めることになります。
仮例として、締めが前日の15時で、翌々日の朝に届く仕入先を考えます。
この場合、発注する時点では2日後の予約も天気もまだ分からず、しかも届いた品で次の納品日まで回す必要があります。
見込む期間が長く、見込みの外れ幅も大きくなるので、前の節の式でいえば、見込み使用量と安全在庫の両方が膨らみやすくなります。
締めの早い仕入先から傷みやすい品を頼んでいると、欠品を避けるために多めに頼み、そのぶん余るという揺れが起きやすい組み合わせです。
対策として考えられるのは、品目と仕入先の組み合わせを見直すことです。
日持ちする品は締めの早い仕入先にまとめ、傷みやすい品は締めが遅い、または納品頻度の高い仕入先に寄せると、確定に近い情報で数を決められます。
仕入先が追加注文や数量の修正を受け付けているなら、基本の数を締めまでに出し、予約が確定した段階で差分だけ伝えるという2段階の頼み方もあります。
どちらも、仕入先がそうした扱いを受けてくれるかが前提です。
納品頻度・締めの相談事項
一覧を作ると、仕入先に相談したいことが具体的になります。
たとえば「週2回の納品を3回にできるか」「締めを夕方まで遅らせられる品目はあるか」「最小ロットを半分にできる品目はあるか」といった問いです。
漠然と「もう少し融通をきかせてほしい」と頼むより、どの品目でどの条件が欠品や廃棄につながっているかを示したほうが、仕入先も検討しやすくなります。
ただし、締めや納品頻度の変更は仕入先との合意で決まることで、こちらの都合だけでは変えられません。
納品回数を増やせば運賃や最小ロットの条件が変わることもあるため、欠品と廃棄が減る見込みと、増える費用の両方を並べて判断します。
条件が変わらなかった場合も、一覧があれば、締めの早い仕入先の品目だけ安全在庫を厚めにするなど、数の決め方の側で調整できます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注の締め(この時点で数を決める)
- リードタイム(締めから納品までの日数)
- 納品日(届いた品で次の納品まで回す)
- 次の納品日(ここまでの使用量を見込む)
注文の伝え方(電話・FAX・メッセージ・Web受注・発注システム)は仕入先の対応状況と手間で選ぶ
電話・FAXの手入力が生むミス
数と締めが決まったら、それをどう仕入先に届けるかです。
中小企業庁のミラサポplusでは、電話やFAXによる受発注は経理システムへの手入力での転記が必要になり、ミスや書類紛失のリスクがあると説明されています1。
この記事は企業間の取引全般を対象にした解説で、飲食店の食材発注だけを調べたものではありませんが、転記が増えるほど間違いが入りこむという仕組みは、店の発注にもそのまま当てはまります。
電話で注文する場面をたどると、転記の回数が見えてきます。
店側は冷蔵庫を見てメモに数を書き、そのメモを読み上げます。
仕入先の担当者はそれを聞いて受注票に書き、あとで伝票や納品書に写します。
メモから声へ、声から受注票へ、受注票から伝票へと、同じ注文が3回形を変え、そのたびに「玉ねぎ10」が10個なのか10キロなのか、といった取り違えが起こりえます。
同じ記事では、日本政策金融公庫総合研究所の調査として、中小の商業・サービス業で「電子文書での商取引や受発注情報管理」を導入していた割合が18.5%だったことも紹介されています1。
これは2018年の中小商業・サービス業全体の数字で、いまの飲食店や食材の仕入先の状況を示すものではありません。
読み取れるのは、当時は電子的な受発注が一部にとどまっていたということで、仕入先が電話やFAXでしか受けていなくても、それ自体は特別なことではないという程度です。
新しい伝え方を選ぶときは、自店の都合より先に、相手の仕入先が受けられるかを考える必要があります。
5つの方式を同じ軸で比べる
伝え方は、電話、FAX、メッセージ(LINEやメールなど)、仕入先が用意するWeb受注、発注側が使う発注システムの5つで考えます。
どれが優れているかではなく、仕入先の対応状況、注文の記録の残り方、締め時間への合い方、費用、品目数や店舗数の5つの軸で、自店と仕入先の組み合わせに合うかを見ます。
下の表は、それぞれの方式を選ぶ前に確かめたい観点をまとめたもので、個別の製品やサービスの仕様を示すものではありません。
表の中で判断が分かれやすいのは、記録の残り方と締め時間への合い方です。
電話は手軽な一方で、店側が控えを書かない限り、何を頼んだかの記録が手元に残りません。
FAXやメッセージは送った内容がそのまま控えになりますが、メッセージは日々のやりとりに埋もれやすく、書き方を決めないと品目名や単位がそろいません。
Web受注や発注システムは記録が画面に残る反面、仕入先が対応しているか、費用がかかるかを個別に確かめる必要があります。
品目数や店舗数が少ない店では、電話やFAXでも控えの形をそろえれば十分に回ることがあります。
仕入先が多く、毎日何十品目も頼む店では、注文をどこにまとめて持つかが課題になり、記録が自分側に残る方式の利点が大きくなります。
仕入先が対応していない場合の選び方
実際には、仕入先ごとに受けられる方式が違い、すべてを同じ方式にそろえられないことがほとんどです。
その場合は、前の節で作った仕入先の一覧に「伝え方」の欄を足し、仕入先ごとにどの方式で頼むかを決めておきます。
担当者によって電話だったりLINEだったりする状態をなくすだけでも、どこに注文の記録があるかを探す手間が減ります。
変えるならどの仕入先から始めるかは、最初に書き出した記録で決めます。
「頼んだ数と違う数が届いた」が多い仕入先や、品目数が多く電話で読み上げる時間が長い仕入先は、伝え方を見直す効果が見えやすい相手です。
相手が電話やFAXしか受けていない場合でも、店側でできることは残っています。
それが、次に説明する注文の控えと照合の形をそろえることです。
| 方式 | 仕入先の対応状況 | 注文の記録の残り方 | 締め時間への合い方 | 費用の確認点 | 品目数・店舗数が増えたとき |
|---|---|---|---|---|---|
| 電話 | 受付時間と担当者を確認 | 発注側で控えを書かないと残らない | 受付時間内に担当者へつながるか | 既存の通話の範囲か | 読み上げる品目が増えるほど聞き違いの確認が増える |
| FAX | 受信番号と注文用紙の様式の有無を確認 | 送った用紙が控えになる | 締め後や夜間に届いた分の扱いを確認 | 既存の機器の範囲か | 用紙の様式をそろえれば書式は保ちやすい |
| メッセージ | 業務の注文として受けてよいかと担当者を確認 | 送信履歴は残るがほかの会話に埋もれやすい | 受け取り確認の返し方を決めておく | 既存の範囲か | 書き方を決めないと人や店ごとにばらつく |
| Web受注 | 仕入先が注文画面を用意しているか | 注文履歴を店側で見返せるか・出力できるかを確認 | 画面上の締め時刻を確認 | 利用料の有無を仕入先に確認 | 仕入先ごとに入る画面が分かれるか |
| 発注システム | 仕入先がその形式で受け取れるか | 複数の仕入先の履歴を店側でまとめて持てるか確認 | 送信後に仕入先がいつ処理するかを確認 | 初期費用や利用料を提供元に確認 | 複数の仕入先や店舗の注文をまとめられるか確認 |
漏れ・聞き違い・請求との食い違いを防ぐ記録と検品・照合の型
注文の控えを残す
どの伝え方を選んでも、店側に同じ形の控えが残っていれば、後で確かめる基準ができます。
控えに書くのは、発注した日付、仕入先、品目名、数量と単位、納品日の5つです。
品目名は、仕入先の納品書や請求書に出てくる名前に合わせておくと、あとの突き合わせが楽になります。
店では「玉ねぎ」と呼んでいても、納品書では「玉ねぎL 10kg箱」と書かれるなら、控えにも規格と単位まで書きます。
電話で頼む場合は、控えを先に書き、それを読み上げ、仕入先の担当者に数量を復唱してもらいます。
FAXやメッセージなら、控えと同じ内容をそのまま送れば、送った文面が仕入先と共有する記録になります。
こうしておくと、メモと声と受注票の間で起きていた転記の食い違いを、少なくとも店側の控えと照らして見つけられるようになります。
仕入先側の転記がなくなるわけではないので、確認する場面は次の納品時に移ります。
納品時の突き合わせ
納品されたら、控えと納品書と届いた現物を並べて見ます。
確かめるのは、品目と規格が合っているか、数量と単位が合っているか、品質に問題がないかです。
差があれば、その場で納品書か控えに「キャベツ2玉不足」「規格違い」のように書き、受け取った人の名前を残します。
忙しい仕込み前の時間に全品目を細かく見るのは難しいので、最初は欠品や取り違えが起きやすい品目と、単価の高い品目に絞ってもかまいません。
大事なのは、差異をその場で記録することです。
後から「たしか少なかった」と思い出しても、月末の請求の段階では根拠になりません。
請求書との月次照合と欠品時の取り決め
月末に請求書が届いたら、その月の納品書と突き合わせます。
納品時に書き込んだ差異が請求に反映されているか、単価が以前と変わっていないかを見ます。
控え、納品書、請求書が同じ品目名・数量・単価で並んでいれば、照合は「並べて違う行を探す」作業になり、記憶をたどる必要がなくなります。
照合でつまずきやすいのが、欠品や代替品のときの扱いです。
頼んだ品が品切れで、仕入先が似た規格の品を代わりに持ってきた場合、その単価で請求されるのか、事前に連絡があるのか、断ってよいのかが決まっていないと、納品の場でも月末の照合でも迷います。
欠品が分かったときの連絡の時刻と方法、代替品を受けるかどうか、受けた場合の単価の扱いは、仕入先と前もって決めておきます。
ここまでの手順は編集上の提案で、決まった公的な手順があるわけではありません。
納品書や請求書の様式、検品の取り決めは、取引先との契約や慣行によって違います。
自店の控えの形をつくるときは、仕入先の納品書の書式に合わせるところから始めるのが現実的です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文の控えを残す(日付・仕入先・品目名・数量と単位・納品日)
- 復唱または送信で仕入先と確認する
- 納品時に控えと納品書を突き合わせ、差異を記録する
- 月末に請求書と納品書を照合する
小さく試して、欠品・廃棄・発注時間で続けるか広げるかを決める
品目と仕入先を絞る
数量の決め方、仕入先の条件、伝え方、控えと照合を一度にすべての品目で始めると、営業の合間では続きません。
最初は、書き出した記録で欠品か廃棄が何度も出た数品目と、その品目を頼んでいる仕入先1〜2社に絞ります。
期間は2〜4週間を目安にし、曜日による違いが少なくとも2巡は見られるようにします。
試す前に、同じ品目について数週間分の記録を基準として残しておきます。
最初の節で書き出した欠品と廃棄の記録がそのまま使えます。
基準がないと、試した後に「なんとなく良くなった気がする」以上のことが言えず、続けるかどうかを決める材料になりません。
測る4つの指標
試す間に記録する指標は、次の4つです。
- 欠品回数:対象品目が足りず、献立を変えたり提供を止めたりした回数
- 廃棄した品目と量:重さを量れなければ個数や「半ケース」などの単位でかまわない
- 発注にかかった時間:在庫を数え、数を決め、仕入先に伝えるまでの合計
- 食材原価率:売上に対する食材費の割合で、月単位で前後を比べる
指標の定義は、試す前に決めておきます。
たとえば「欠品」に、仕入先の品切れで届かなかった分を含めるかどうかで、数字の意味が変わるからです。
含める場合は、店側の見込み違いと仕入先の都合を分けて書いておくと、どちらを直すべきかが分かります。
発注にかかった時間は、見落とされやすい指標です。
受発注の電子化については、中小企業庁の記事で、中小企業共通EDIと呼ばれる企業間の受発注データ連携の実証事業で、12のプロジェクトの平均として中小企業の受発注業務時間が51.4%減ったと紹介されています1。
これは2020年に公開された記事が伝える企業間のデータ連携の実証結果で、飲食店の食材発注や、発注数の決め方、廃棄の削減にそのまま当てはまる数字ではありません。
自店で期待できる値として使うのではなく、伝え方を変えれば時間も変わりうるので、時間も測っておく価値がある、という程度に受け止めます。
続ける・広げる・やめるの判断
試行期間が終わったら、基準の数週間と4つの指標を並べます。
欠品と廃棄のどちらかが減り、発注時間が増えていなければ、その品目では続ける理由があります。
欠品は減ったが廃棄が増えたなら、安全在庫が大きすぎた可能性があり、数を調整してもう一度試します。
発注時間だけが大きく増えたなら、控えの項目が多すぎるなど、手間の側を見直します。
広げるかどうかは、店の規模で考え方が変わります。
品目数が少なく仕入先も数社なら、同じ紙1枚の形を残りの品目に広げれば足りることが多いでしょう。
仕入先や品目が多い店、複数店舗で発注している店では、控えや記録を紙で回し続けるのが負担になり、記録をまとめて持てる伝え方を検討する段階に入ります。
その場合も、どの仕入先がどの方式に対応しているかを前の一覧で確かめてから選びます。
やめるという判断も残しておきます。
試した品目で指標が変わらず、手間だけが増えたなら、その品目では元のやり方でよいということが分かったことになります。
次に欠品や廃棄が多い品目へ移り、同じ流れで試します。
▼ 図の内容を文字で読む
- 試す前の数週間を基準として記録する
- 数品目・仕入先1〜2社で2〜4週間試す
- 欠品回数・廃棄・発注時間・食材原価率を比べる
- 続ける・広げる・やめるを決め、次の品目で試す
仕入先ごとに締め時間も伝え方も違う状態では、どの品目と仕入先から手を付けるかを一人で決めるのは難しいものです。
今の発注の流れと仕入先の条件を一緒に整理し、最初に試す品目と仕入先の候補を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 見直す順番 | 発注数の決め方、締めと納品の条件、伝え方と記録・照合の順 |
| 発注数 | (次の納品までの見込み使用量+安全在庫)−現在庫 |
| 仕入先の条件 | 締め時間・リードタイム・納品頻度・最小ロット・欠品時の連絡を一覧にする |
| 伝え方の選び方 | 仕入先の対応状況・記録の残り方・締め時間・費用・品目数や店舗数で比べる |
| 照合 | 控え・納品書・請求書を同じ品目名・数量・単価でそろえる |
| 試し方 | 数品目・仕入先1〜2社・2〜4週間で、欠品回数・廃棄・発注時間・食材原価率を比べる |
試した結果を広げる段階では、仕入先ごとの対応状況と店の品目数を合わせて、記録をどこにまとめるかを考える必要があります。 試行の記録をもとに、続ける・広げる範囲と、仕入先ごとの伝え方の組み合わせを確かめられます。
よくある質問
発注点とは何で、どう決めればよいですか。
発注点は、在庫がこの数を下回ったら発注するという目安です。
本文の式でいえば、次の納品までの見込み使用量に安全在庫を足した数に当たります。
決めるときは、曜日ごとの過去の使用量から見込みを出し、締めが早い、納品の間隔が長いなど見込みが外れやすい品目ほど安全在庫を厚めにします。
日持ちする品目は発注点で管理し、傷みやすい品目は締めのたびに数えて式で決める、という使い分けも考えられます。
仕入先がFAXや電話しか受け付けない場合は、何から改善できますか。
店側の注文の控えの形をそろえることから始められます。
日付、仕入先、品目名、数量と単位、納品日を控えに書き、電話なら読み上げて仕入先に復唱してもらい、FAXなら控えと同じ内容を送ります。
品目名や単位を仕入先の納品書に合わせておけば、納品時と月末の照合で食い違いを見つけやすくなります。
あわせて、締め時間や納品頻度など、伝え方以外の条件を一覧にして相談する余地があります。
欠品が怖くて多めに発注してしまうとき、どう考えればよいですか。
「多め」を品目ごとの安全在庫という数字にして、どれだけ余裕を持たせているかを見えるようにします。
傷みやすく単価の高い品目は安全在庫を小さく、日持ちする品目は発注点で切らさないように、と品目で置き方を変えます。
欠品の原因が、締めが早くて見込みが立たないことにある場合は、数を増やすより、締めが遅い仕入先に寄せる、追加注文の扱いを相談するといった方法で、確定に近い情報で数を決められる場合があります。
複数店舗で発注するとき、数量の決め方はそろえた方がよいですか。
式の考え方と、控えや記録の項目はそろえたほうが、店舗間で比べたり、引き継いだりしやすくなります。
一方で、曜日ごとの使用量や安全在庫の数は、客数や献立、仕入先の締めが店舗ごとに違うため、店ごとに決めます。
そろえるのは形、数字は店ごとと考えると整理しやすくなります。
発注の効果を測るとき、廃棄量はどう記録すればよいですか。
日付、品目、量、理由の4つを、廃棄したときにその場で書きます。
重さを量れなければ、個数や「半ケース」など店で通じる単位でかまいませんが、試す期間中は単位を変えないようにします。
理由は「期限切れ」「仕込み過多」「品質不良」のように数種類に絞っておくと、発注の見直しで減らせる分と、仕込みや提供の側で考える分を分けて見られます。
最初は試す品目だけを記録すれば十分です。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 2 出典:農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表」(2026年)
- 3 出典:環境省「食品ロス 事業者向け情報」(2026年閲覧)
画像の出典元
- A chef grates parmesan over beautifully arranged plates in a high-end restaurant kitchen./Photo by Luis Becerra Fotógrafo on Pexels