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食品の受注管理システムの選び方:件数だけで決めず、経路と手作業の棚卸しで判断する

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 受注管理システムを入れるべき件数の線引きを裏づける調査は見当たらず、経路・転記先・確認・変更・担当者への依存を数えて判断する
  • 経路が少なく転記先が1か所なら、注文書の様式や受注の手順をそろえる改善で足りる可能性がある
  • 料金は月額だけでなく、初期費用・明細上限・契約単位・利用者数とセットで読み、特定製品の価格を相場にしない
  • 賞味期限やロットは、受注の時点で引当てに使えるかを実際の注文で確かめる
  • 切り替えの合格基準を並行稼働の前に合意し、期間は自社の締めを通す回数で決める

Focused businessman reviewing documents in a modern office setting.
▽ 写真の出典元

食品の受注管理で転記と確認が回らなくなる場面と、件数だけでは決められない理由

FAXや電話、メールで届く注文を受注表へ打ち直し、確認の電話をかけ、変更が来ればまた直す。
件数が増えるほど、こうした手作業が締め時間に追いつかなくなります。
ただ、何件を超えたら受注管理システムを入れるべきかを裏づける調査は、現時点で見当たりません。
判断は件数だけで行わず、受注経路の数、1件あたりの転記先、確認と変更への対応、担当者への依存、在庫・出荷・請求との連携、食品特有の条件を自社で数えて当てはめます。
この棚卸しをしておけば、運用の改善で足りるかシステム化が要るかを自社で線引きできます。
提供元への質問や、切り替えの合格基準も用意できます。

食品の受注経路は今もFAX・メール・電話が多い

食品の受注経路については、2023年3月に食品の小売・卸売の受注業務担当者106名を対象に行われたインターネット調査があります。
受注方法(複数回答)は、FAXが67%、受発注システムが58.5%、Eメールが55.7%、電話が50%でした1。

受発注システムを挙げた人が半数を超えている一方で、FAXはそれを上回っています。
4つの割合を足すと200%を超えるので、一人の担当者が平均して2つ以上の経路から注文を受けている計算です。
注文を出すのは取引先です。
受け手がシステムを入れても、取引先の都合でFAXや電話が残ることは十分に考えられます。
そのため受注管理システムを選ぶときは、すべての注文をシステムに乗せられるかだけでなく、残る経路の注文をどう取り込むかも問われます。

この調査の対象は食品の小売・卸売の受注担当者です。
製造業や外食向けの納入は含まれていません。
会社の規模や1日の注文件数ごとの集計も公表されていないため、「何件からシステム化すべきか」をこの調査から読み取ることはできません。

手入力・確認・変更・属人化という4つの詰まり

同じ調査では、FAX・メール・電話で受注している90名に、受注業務の課題を聞いています(複数回答)。
「注文書の手入力に手間がかかる」が60%、注文確認の連絡に手間がかかるが41.1%、注文の変更対応に時間がかかるが40%、オペレーションの属人化が発生しているが38.9%、注文書の管理(保管義務)が煩雑であるが30%でした1。

これらは別々の悩みに見えますが、1件の注文の中でつながっています。
たとえば朝、得意先からFAXで注文が届いたとします。
担当者は手書きの品名と数量を受注表へ打ち込みます。
規格の書き方がいつもと違えば、得意先に電話して確かめます。
昼に数量変更のメールが来ると、受注表に加えて、すでに作った出荷指示や請求の元データも直さなければなりません。
この得意先の書き方の癖や、どの変更なら受けてよいかを知っているのが特定の担当者だけなら、その人が休んだ日に処理が止まります。

ここから分かるのは、負担を決めているのが件数だけではないということです。
同じ1日50件でも、注文がすべて受発注システムから受注表に入り、転記先が1か所の会社があります。
一方で、FAX・電話・メールが混ざり、1件ごとに受注表・出荷指示・請求の3か所へ打ち直す会社もあります。
両者では、入力の回数も確認の手間もまったく違います。
変更の多い得意先を抱えているか、締め時間の直前に注文が集中するかでも、詰まり方は変わります。
システム化を判断するには、件数に加えて、経路の数と1件あたりの手作業の中身を数える必要があります。

受注方法 回答割合(%)
FAX 67
受発注システム 58.5
Eメール 55.7
電話 50
課題 回答割合(%)
注文書の手入力に手間がかかる 60
注文確認の連絡に手間がかかる 41.1
注文の変更対応に時間がかかる 40
オペレーションの属人化が発生している 38.9
注文書の管理(保管義務)が煩雑である 30
受注経路が増えると転記・確認・変更・担当者への依存がつながって負担になる流れ(模式図)
受注経路が複数あると同じ注文を複数箇所へ転記することになり、確認連絡と変更対応が増え、処理が特定の担当者に寄るという因果を示す図1受注経路が複数ある2同じ注文を複数箇所へ転記する3確認と変更対応が増える4処理が特定の担当者に寄る

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 受注経路が複数ある
    • FAX・電話・メールで届く注文
  2. 同じ注文を複数箇所へ転記する
    • 受注表
    • 出荷指示
    • 請求の元データ
  3. 確認と変更対応が増える
    • 判読できない注文への確認連絡
    • 変更をすべての転記先へ反映する手間
  4. 処理が特定の担当者に寄る
    • 得意先の書き方の癖を知る人しか判断できない

受注の数え方:自社の経路・手作業・取引先条件を棚卸しする

経路別の件数と転記先を数える

何を数えるかは、調査で挙がった課題を自社の記録に置き換えると決めやすくなります。
手入力の手間は、転記先の数に置き換えられます。
確認連絡の手間は確認が必要になった注文の数に、変更対応は変更の回数に、属人化は誰が処理したかに置き換えられます。
具体的には、1件の注文を1行として、次のような記録表を付けていく方法を提案します。

  • 受けた経路:FAX、電話、メール、受発注システム、その他
  • 受けた時刻:締め時間の前か後か
  • 得意先名と明細の行数:1件に何品目あったか
  • 転記先:受注表、在庫表、出荷指示、請求用データなど、打ち込んだ場所をすべて
  • 確認連絡の有無:判読できない、規格や単位が分からないなどの理由で得意先へ問い合わせたか
  • 変更の有無と回数:数量・品目・納品日の変更が何回あり、どこを直したか
  • 処理にかかったおおよその時間:受けてから出荷指示や請求の元データまで入れ終えるまで
  • 処理した人:受けた人と入力した人が違うなら両方

この表を付けると、経路別の1日の件数と、件数に転記先の数を掛けた入力回数が出せます。
たとえば1日40件の注文を受け、1件ごとに3か所へ打ち込んでいるなら、入力は1日120回です。
件数で見れば40件でも、転記の手間と打ち間違いの機会は120回分あると考えた方が実態に近くなります。
明細の行数も一緒に記録しておくと、後で製品の料金を読むとき、明細の上限と自社の量を比べる材料になります。

処理した人の欄は、属人化を確かめるために使います。
特定の得意先の注文や変更がいつも同じ人のところで処理されているなら、その人だけが知っている判断が仕組みになっていないということです。
システムに移すべきなのは、その判断のうちルールとして書き出せる部分です。

締め時間・得意先別条件・連携先を書き出す

件数の記録とは別に、注文の処理を左右する条件も書き出しておきます。
食品の受注では、同じ商品でも得意先によって価格、単位、納品の決まりが違う場合があります。
そうした違いを人が覚えて当てはめている部分は、手作業や確認が生まれやすいところです。

  • 締め時間:翌日納品の受付を何時で締めるか、締めた後の注文や変更をどう扱っているか
  • 得意先別の価格:得意先ごとの単価、特売や期間限定の価格があるか
  • 規格・単位:ケース・ボール・バラ、kgと個数など、得意先によって注文の単位が違うか
  • 納品ルール:納品時間、納品書の書式、賞味期限の残りについての取り決め
  • 連携先:受注の後に、在庫の引当て、出荷指示、請求、会計のどこへデータを渡しているか

これらの条件は、件数が少なくてもシステム選びを難しくします。
得意先別の単価を何十通りも持っていれば、その単価を自動で当てられるかどうかで、受注入力の手間も請求の誤りも変わります。
連携先が受注表と請求だけか、在庫や出荷まで含むかによって、候補になるシステムの範囲も変わります。
書き出した条件は、後で提供元に送る質問の土台にもなります。

受注の棚卸しで集めるものと、そこから出せる数(模式図)
件数の記録と処理を左右する条件を集め、経路別の件数・入力回数・明細の行数を出すという棚卸しの分解を示す図件数の記録と処理を左右する条件を集め、経路別の件数・入力回数・明細の行数を出すという棚卸しの分解を示す図件数の記録受けた経路と時刻転記先確認連絡の有無変更の有無と回数処理した人処理を左右する条件締め時間得意先別の価格規格・単位納品ルール連携先記録から出せる数経路別の1日の件数件数に転記先の数を掛けた入力回数明細の行数

▼ 図の内容を文字で読む
  • 件数の記録
    • 受けた経路と時刻
    • 転記先
    • 確認連絡の有無
    • 変更の有無と回数
    • 処理した人
  • 処理を左右する条件
    • 締め時間
    • 得意先別の価格
    • 規格・単位
    • 納品ルール
    • 連携先
  • 記録から出せる数
    • 経路別の1日の件数
    • 件数に転記先の数を掛けた入力回数
    • 明細の行数

現行運用の改善で足りる場合と、受注管理システム化が要る場合の分け方

改善で足りる状態

記録がそろったら、まず運用の改善で詰まりが解けるかを考えます。
ここで示す分け方は、記録した中身から判断するための一つの考え方です。
業界で決まった基準ではありません。

改善で足りる可能性が高いのは、受注経路が1〜2本に限られ、転記先が受注表1か所に収まり、確認や変更が一部の得意先に偏っている状態です。
この場合の詰まりの原因は、件数の多さより、注文の書き方や受け方のばらつきにあると考えられます。

  • 得意先に注文書の様式を渡し、品名・規格・単位の書き方をそろえてもらう:判読できずにかける確認の電話が減ります
  • 受注表の項目と入力の順番を決め、誰が入れても同じ形になるようにする:担当者による入力の違いが減ります
  • 変更を受け付ける時刻を決めて得意先へ伝え、変更を受けたら記録する欄を設ける:出荷後に変更が見つかる取りこぼしが減ります
  • 得意先ごとの注意点を一覧にして共有する:特定の担当者しか処理できない注文が減ります

これらの改善で、転記の回数そのものは減りません。
減るのは、転記の前後で起きる確認と手戻りです。
改善を試しても入力回数が人手で回せないほど多いままなら、次の段階を考えます。

システム化を検討する状態

システム化を検討した方がよいのは、受注経路が複数に分かれ、同じ注文を複数の場所へ打ち込み、変更がそのすべてに反映されているかを人が確かめている状態です。
担当者が替わると処理が回らない、担当者が休むと注文の処理が遅れる、といった状態もシステム化を考える理由になります。

受注管理システムで変わるのは、注文を一度入力すれば、その情報を出荷指示や請求へ引き継げる範囲が広がることです。
転記先が3か所なら、引き継げた分だけ打ち直しが減り、変更も1か所で直せば済むようになります。
得意先別の単価や単位をマスタ(取引先や商品の基本情報の台帳)に登録できれば、入力のたびに人の記憶に頼る場面も減ります。

一方で、システムを入れても残る手作業があります。
取引先がFAXや電話で注文してくる限り、その注文を読み取ってシステムへ入れる作業は続きます。
判読しにくい注文への確認連絡も、取引先の書き方が変わらなければ減りません。
システム化と運用の改善はどちらか一方を選ぶものではなく、注文書の様式をそろえる取り組みはシステムを入れた後も効いてきます。

1〜2週間の記録で確かめる

どちらに当たるか迷うなら、システムを比べ始める前に、前の節の記録表を1〜2週間付けてみることを勧めます。
1日分では、曜日による注文の偏りや、週末前に増える変更が見えないためです。
月末に請求の締めが集中するなら、記録期間に月末を含めると締め作業の負担も見えます。

記録から確かめたいのは、次の三つです。

  • 経路別の件数と、転記先を掛けた1日の入力回数
  • 確認や変更が起きた注文の数と、それが特定の得意先に偏っているか
  • 担当者ごとの処理の偏りと、その人がいない日に何が止まるか

この結果を、改善とシステム化のどちらで解くかの判断材料にします。
確認や変更が特定の得意先に偏っているなら、まずはその得意先との取り決めを見直す方が早いこともあります。
入力回数が全体に多く、変更の反映漏れが出荷や請求まで進んでいたなら、システムで引き継ぎを増やす意味があります。
この記録は、導入した後に効果を比べるための基準にもなります。

改善で足りる状態とシステム化を検討する状態の分け方(一つの考え方であり、業界の基準ではない)
経路や転記先、変更の反映、担当者への依存の違いで改善とシステム化を分け、どちらでも残る手作業があることを示す図経路や転記先、変更の反映、担当者への依存の違いで改善とシステム化を分け、どちらでも残る手作業があることを示す図改善で足りる状態受注経路が1〜2本転記先が受注表1か所確認や変更が一部の得意先に偏っているシステム化を検討する状態受注経路が複数に分かれる同じ注文を複数の場所へ打ち込む変更の反映を人が確かめている担当者が替わると処理が回らないどちらでも残る手作業FAXや電話の注文を読み取って入れる作業判読しにくい注文への確認連絡注文書の様式をそろえる取り組み

▼ 図の内容を文字で読む
  • 改善で足りる状態
    • 受注経路が1〜2本
    • 転記先が受注表1か所
    • 確認や変更が一部の得意先に偏っている
  • システム化を検討する状態
    • 受注経路が複数に分かれる
    • 同じ注文を複数の場所へ打ち込む
    • 変更の反映を人が確かめている
    • 担当者が替わると処理が回らない
  • どちらでも残る手作業
    • FAXや電話の注文を読み取って入れる作業
    • 判読しにくい注文への確認連絡
    • 注文書の様式をそろえる取り組み

受注管理システムのタイプ別候補と、小規模向けクラウドの料金・上限の読み方

料金は月額・初期費用・明細上限・契約条件で読む

システム化に進む場合、候補はおおまかに4つに分けられます。
Excelなど今の道具を使い続けて運用を整える方法、受注管理に特化したクラウド、食品向けの機能を持つ業務パッケージ、在庫や会計まで含む基幹システムです。
どのタイプが合うかは、前に書き出した連携先の範囲で絞れます。
受注表と請求の間の転記が中心なら、受注から請求までを扱える範囲が候補になります。
在庫の引当てや出荷指示まで人が打ち直しているなら、その範囲まで含む構成が候補です。

料金の読み方を、提供元が公開している料金表で見てみます。
株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)の小規模企業向けの料金ページには、商奉行iクラウド(単体)の料金が載っています2。
Eシステムは月額7,340円から、初期費用0円、明細上限50,000です2。
Jシステムは月額10,000円から、初期費用50,000円、明細上限100,000です2。
商奉行と蔵奉行の全機能を含むセットの商蔵奉行iクラウドは、Eシステムが月額13,000円から、Jシステムが月額18,000円からとされています2。

この料金表で見落としやすいのは、月額の横に書かれた条件です。
契約は法人単位の年間契約で、価格は利用者1名・専門家1名のライセンス構成のものです2。
2ライセンス以上の構成も用意されており、明細数は拡張パックで追加できるとされています2。

月額だけを比べると、EとJの差は小さく見えます。
しかしJシステムには初期費用がかかり、明細上限はEの2倍です。
自社の注文の明細がどれくらいの量になるかで、どちらが合うか、拡張が必要になるかが変わります。
ここで役立つのが、記録表に付けた明細の行数です。
ただ、明細を何単位で1と数えるのか、上限が契約期間の累計か保存できる件数かは、料金表だけでは読み取れません。
提供元の定義を確かめてから、自社の量と比べる必要があります。

利用者の数も同じように読みます。
注文を受ける人と出荷や請求を担当する人が別々に操作するなら、1名構成の価格では足りません。
現場で日々操作する人数を数えないまま月額だけで稟議を出すと、契約の段階で金額が変わります。

特定製品の料金を相場にしない

ここで紹介した金額は、OBCの特定の製品とプランの価格です。
受注管理システム全体の相場ではありません。
この製品が賞味期限やロットなど食品特有の条件にどこまで対応しているかも、料金表からは分かりません。
受注から出荷・請求までのどの業務をどこまで扱えるかも、各製品の公式資料で確かめることになります。

明細の上限を、担当者が処理できる量の目安と読み替えないことも大切です。
上限はシステムに登録できる量の話で、その量を何人で、何時までに入力できるかは別の問題です。
転記や確認が回らないという悩みは、上限ではなく、記録表で数えた入力回数と確認の件数で考えます。

候補を比べるときは、どの製品についても次の項目をそろえて書き出すと、月額の安さだけで決めずに済みます。

  • 月額料金と、その金額が前提とする利用者数
  • 初期費用の有無と金額
  • 明細や取引先数などの上限と、超えた場合の追加費用
  • 契約の単位と期間(月単位か年間か)
  • 在庫・出荷・請求のうち、料金に含まれる機能の範囲
  • FAXやメールの注文を取り込む方法と、そのための追加費用

受注特化のクラウドや基幹システムについては、規模別の相場を示せる確かな資料がありません。
見積もりを同じ項目で並べると、製品ごとの違いが比べやすくなります。

ある小規模企業向けクラウドの料金表の例(特定製品の価格であり相場ではない)
EシステムとJシステムで月額・初期費用・明細上限が異なることと、料金表だけでは読み取れない点を示す図EシステムとJシステムで月額・初期費用・明細上限が異なることと、料金表だけでは読み取れない点を示す図Eシステム月額7,340円から初期費用0円明細上限50,000Jシステム月額10,000円から初期費用50,000円明細上限100,000料金表だけでは読み取れない点明細を何単位で1と数えるか上限が累計か保存できる件数か操作する人数に合う構成か

▼ 図の内容を文字で読む
  • Eシステム
    • 月額7,340円から
    • 初期費用0円
    • 明細上限50,000
  • Jシステム
    • 月額10,000円から
    • 初期費用50,000円
    • 明細上限100,000
  • 料金表だけでは読み取れない点
    • 明細を何単位で1と数えるか
    • 上限が累計か保存できる件数か
    • 操作する人数に合う構成か

食品特有の条件で受注管理システムの候補を絞る:ロット・賞味期限、締め時間、得意先別条件

仕様確認の質問表

料金の条件で候補を数社に絞ったら、食品特有の条件で確かめます。
迷いやすいのは、提供元の資料に「賞味期限」「ロット」といった言葉があっても、それが受注のどの場面で使える機能なのかが分からないことです。
賞味期限の項目を登録できることと、受注の時点で期限の条件に合う在庫を引き当てられることは別の話です。

たとえば、ある得意先と賞味期限の残りについて取り決めがあるとします。
受注の段階で期限を見て在庫を引き当てられるなら、受注担当者はその場で出荷できるかどうかを答えられます。
期限を在庫や出荷の段階でしか扱えないなら、受注担当者は倉庫に問い合わせる必要があり、確認連絡は減りません。
どちらが合うかは、今どの段階で期限を確かめているかで決まります。

前の節で書き出した条件に合わせて、次の質問を提供元へ聞くことを提案します。

  • 賞味期限やロットは、受注・在庫・出荷のどの段階で持ち、受注の時点で引当てに使えますか
  • 締め時間を過ぎた注文や変更を、翌日扱いにするなど、システム上で区別できますか
  • 得意先ごとの単価や特売価格を登録し、受注入力の時に自動で当てられますか
  • ケースとバラ、kgと個数など、得意先によって違う単位で受け、社内の単位に換算できますか
  • 得意先が指定する書式の納品書や請求書を出力できますか
  • FAXやメールで届く注文は、手入力以外の方法で取り込めますか。
    その場合の費用と、読み取った後に人が確認する作業は何が残りますか
  • これらは標準の機能ですか、それとも設定の追加や個別の開発が必要ですか

回答を受け取ったら、「対応できます」という言葉だけで判断しないことが大切です。
標準の機能で済むか、設定や開発に費用がかかるかで、導入の費用も期間も変わります。
できれば、記録表から変更が入った注文や単位が違う注文を数件選び、その注文を画面で処理してもらうとよいでしょう。
受注担当者が日々どの画面で何を入力することになるかが、具体的に見えます。

法令は受注段階の要件か確認する

食品の記録というと、HACCPに沿った衛生管理の記録や米トレーサビリティ法などを思い浮かべるかもしれません。
ただ、これらの制度が受注管理の段階でどんな記録を求めているかは、システムの選び方とは分けて確かめる必要があります。
制度で必要な記録を製造や出荷の段階で付けているなら、受注管理システムにその役割を求める必要がない場合もあります。

受注の段階にかかる記録があるかどうかは、自社の衛生管理計画や所管の保健所などの説明で確かめてから、システムの要件に含めるかを決めます。
制度の名前だけで要件を増やすと、必要以上に大きな構成を選ぶことにつながります。

50代後半の日本人女性がパレットの積み荷確認をしている場面

受注管理システム導入前の社内合意と並行稼働の進め方

切り替えの合格基準を先に決める

製品を決めた後に残るのは、いつ旧来のやり方をやめて新しいシステムへ切り替えるかという問題です。
検討責任者は早く切り替えて二重の手間をなくしたいと考えます。
日々注文を処理する担当者は、新しい画面で締め時間に間に合うかを心配します。
この食い違いは、切り替えてよい状態を事前に決めていないことから生まれます。

販売管理システムのデータ移行を扱った、ある事業者の解説記事は、切り替えの合格基準を並行稼働の前に関係者と合意することを勧めています3。
基準の例として、日次の受注・出荷処理にかかる時間が旧システムの120%以内であること、売掛金残高の一致率が100%であること、月次締めを2回跨ぐことが挙げられています3。
これは一事業者の目安で、数値の根拠は記事の中に示されていません。

数値をそのまま借りる必要はありませんが、基準の立て方は受注管理にも当てはめられます。
処理時間の基準を決めるには、比べる元の数字が要ります。
導入前に付けた記録表の、経路別の件数と処理にかかった時間がその元になります。
さらに、受注の件数と金額が新旧で一致すること、変更が出荷指示と請求に漏れなく反映されていることを基準に加えます。
そうすれば、現場の担当者が心配している点を数字で確かめられます。

基準を誰が確かめ、満たさなかったときにどうするかも、合わせて決めておきます。
基準に届かなければ切り替えを延ばすと最初に決めておけば、現場の担当者は無理な切り替えを恐れずに、新しい画面に慣れることに集中できます。

並行稼働の期間は自社の締めに合わせる

並行稼働とは、一定の期間、旧来のやり方と新しいシステムの両方で同じ注文を処理し、結果を突き合わせることです。
先の解説記事は並行稼働の期間を6〜8週間設けることが多いとしていますが、その根拠は示されていません3。

期間は週の数で決めるより、自社の締めを何回通すかで決める方が、確かめたいことに合います。
月末締めの請求なら、締めを2回通すにはおよそ2か月かかります。
得意先によって締め日が違うなら、主な締め日がすべて期間に入るようにします。
受注から請求までが新旧で一致するかは、締めを通さないと確かめられないためです。

並行稼働の間、現場の担当者は同じ注文を二度入力することになり、手間は一時的に増えます。
注文が集中する時期を避けて始める、照合の担当者を決めておく、といった段取りも合格基準と一緒に社内で合意しておくと、期間中の負担の偏りを抑えられます。

記録表で数えた経路や転記先を、改善で解くかシステムで解くかに当てはめる段階では、自社の業務を外から見た方が判断しやすいことがあります。

棚卸しの結果をもとに、どの転記と確認が減らせそうか、提供元へ何を質問すべきかを整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
判断の出発点 件数だけでなく、経路・転記先・確認・変更・担当者への依存を1〜2週間記録して数える
改善で足りる状態 経路が少なく転記先が1か所で、確認や変更が一部の得意先に偏っている
システム化を検討する状態 同じ注文を複数箇所へ転記し、変更の反映を人が確かめ、担当者が替わると回らない
料金の読み方 月額・初期費用・明細上限・契約単位・利用者数をそろえて比べ、特定製品の価格を相場にしない
食品特有の条件 賞味期限・ロットを受注の時点で引当てに使えるか、締め時間・得意先別条件を実際の注文で確かめる
切り替え 合格基準を並行稼働の前に合意し、期間は自社の締めを通す回数で決める
30代前半の日本人女性が備品棚の棚卸をしている場面

候補を絞った後は、検討責任者と現場の担当者の両方が納得できる切り替えの基準づくりが必要になります。 自社の締め日や得意先別の条件に合わせて、合格基準と並行稼働中の照合の手順をどう組むかを確かめられます。

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よくある質問

FAXやメールの注文が多いと、受注管理システムの導入を急ぐべきですか

FAXやメールの注文が多いこと自体は、急ぐ理由にはなりません。
システムを入れても、取引先がFAXで注文してくる限り、読み取って入力する作業は残ります。
判断が分かれるのは、受けた注文を何か所へ打ち直しているか、変更がそのすべてに反映されているかです。
まず1〜2週間、経路と転記先を記録し、運用の改善で減らせる確認や手戻りがあるかを見てから決める方法があります。

注文件数が少なくてもシステム化する意味はありますか

件数が少なくても、得意先ごとに単価や単位が違う、受注から在庫・出荷・請求まで同じ内容を何度も打ち直している、という場合はシステム化で減らせる転記があります。
反対に、転記先が1か所で誰でも同じように処理できているなら、様式や手順をそろえる改善で足りる可能性があります。
件数より、1件あたりの手作業の量と担当者への依存で考えます。

食品の賞味期限・ロット管理は受注管理システムの機能として必要ですか

必要かどうかは、今どの段階で賞味期限を確かめているかで決まります。
受注の時点で、得意先の期限条件に合う在庫があるかを答える必要があるなら、受注の段階で期限を扱えるかが候補を分けます。
期限の確認を出荷の段階で行っていて問題がないなら、受注管理システムに求める必要はない場合もあります。
資料に項目名があるだけでは受注の時点で引当てに使えるかは分からないため、実際の注文で処理を見せてもらうと確かめやすくなります。

得意先ごとに価格や納品ルールが違う場合、何を確認して選べばよいですか

得意先ごとの単価や特売価格、注文の単位、納品書の書式をマスタに登録し、受注入力の時に自動で当てられるかを確かめます。
得意先の数と、価格や単位の違いを事前に書き出しておくと、標準の機能で足りるか、設定の追加や開発が必要かを提供元に具体的に聞けます。
単価の当て方を人の記憶に頼っている部分ほど、システムに置き換える意味が大きくなります。

導入前の並行稼働はどれくらいの期間を見込めばよいですか

販売管理システムの移行を扱った一事業者の解説では、6〜8週間を設けることが多いとされていますが、根拠は示されていません3。
期間は、自社の締めを何回通すかで決めることを勧めます。
月末締めを2回通すならおよそ2か月、得意先ごとに締め日が違うなら主な締め日がすべて入る期間が目安です。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:株式会社ハンモック(IDEATECH「リサピー」企画)「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023)
  2. 2 出典:株式会社オービックビジネスコンサルタント「商奉行iクラウド・商蔵奉行iクラウド 小規模企業向け 料金ページ」(2026)
  3. 3 出典:株式会社ripla「販売管理システムのデータ移行を成功させる5ステップ」(2026)

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  1. Focused businessman reviewing documents in a modern office setting./Photo by RDNE Stock project on Pexels

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