◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 前日発注の負担は、在庫確認・数量の判断・注文の送付・受領の確認に分け、1週間の記録で時間と誤りの出る工程を特定してから直す。
- 数量の判断が重いなら、発注表に発注点・基準在庫・単位を書き、傷みやすく変動の大きい食材は予約や仕込みの予定から見積もる。
- 送付で漏れるなら、取引先ごとの受付方法と締め時刻の一覧を作り、締め時刻の早い順に在庫確認から送付までを進める。
- 電子受発注は取引先の対応が前提で、実証で示された削減率は飲食店の食材発注を測った数字ではない。
- 効果は、変更の前後を同じ長さ・同じ曜日構成でそろえ、一度に一つずつ変えて比べる。
目次

前日の発注が漏れ・過不足・遅れになるのは、どの工程が詰まっているのか
営業の合間や閉店後に冷蔵庫を見て数量を決め、取引先ごとに電話やFAX、メッセージで注文を送る。
前日の夕方から夜にこの作業が重なると、送り忘れや数え違いが起きやすくなります。
前日発注のままでも、食材の発注作業を在庫確認・数量の判断・注文の送付・受領の確認に分けて、時間とミスが出ている工程を記録で特定すれば、直す順番が決まります。
数量の判断が原因なら発注点と基準在庫の表を、送付や締め時刻が原因なら取引先ごとの一覧を先に作ります。
電子受発注を使えるかどうかは、取引先の対応しだいです。
発注作業を4つの工程に分ける
前日の発注がつらいと感じるとき、その負担には性質の違う作業が混ざっています。
まず、前日発注の流れを次の4つの工程に分けます。
- 在庫確認:冷蔵庫・冷凍庫・乾物の棚に残っている量を数える
- 数量の判断:翌日以降の予約や仕込みの予定を見て、何をどれだけ頼むかを決める
- 注文の送付:取引先ごとに電話・FAX・メール・チャット・Web発注などで注文を出す
- 受領の確認:取引先が注文を受け取ったか、品目や数量に誤りがないかを確かめる
工程ごとに、起きるミスの形が違います。
在庫確認で棚の奥を見落とすと、まだ残っているものを重ねて頼み、過剰になります。
数量の判断を前日の感覚に頼ると、予約の多い日に足りず、少ない日に余るという過不足が出ます。
注文の送付では、取引先を1社飛ばす漏れや、締め時刻に間に合わない遅れが起きます。
受領の確認を省くと、FAXが届いていなかった、電話で数量を聞き違えられていたといった食い違いに、翌朝の納品まで気づけません。
翌日の納品と検品の結果は、その日の在庫になり、次の在庫確認の出発点になります。
そのため、納品時に数量違いを見逃すと、次の発注の判断まで狂います。
前日発注は一度で終わる作業ではなく、毎日回る輪として見ると、どこに手を入れるかを考えやすくなります。
1週間の記録で時間とミスの出る場所を数える
どの工程が重いかは、店によって違います。
取引先が2社の店と10社の店では送付の手間がまるで違い、メニューの数が多い店ほど数量の判断にも時間がかかります。
そこで、感覚で決めつける前に、自店の1週間分を記録します。
平日と週末で予約や仕込みの量が変わる店でも、1週間あれば曜日による違いをひととおり含められます。
記録する項目は、次の程度で足ります。
- 日付と発注した人
- 工程ごとの開始と終了の時刻(5分単位で十分)
- 取引先ごとの送付時刻と、締め時刻に間に合ったか
- 翌日の納品で分かった誤り(数量違い、品目違い、届かなかった品)
- 余って使い切れなかったもの、足りずに困ったもの
ミスの中には、発注した時点ではなく、翌日の納品や営業中に見つかるものがあります。
数量違いに気づいたら、気づいた日の欄ではなく、原因になった前日の発注の欄へ書き戻します。
こうしておくと、1週間後には「どの工程の、どの取引先で、何が起きたか」が同じ表の上に並びます。
ストップウォッチで厳密に計る必要はありません。
発注表の余白に書き込む程度でも、傾向は見えてきます。
原因が判断・送付・取引先の違いのどれかで打つ手が変わる
1週間分の記録がそろったら、時間がかかっている工程と、誤りが出ている工程を見比べます。
見るべきは、原因が数量の判断、注文の送付、取引先ごとの違いのどこに寄っているかです。
- 在庫確認と数量の判断に時間がかかり、誤りが過剰や欠品として出ている:品目ごとの基準が決まっていないことが原因の候補です。
次の節の発注表と発注点から手を付けます。 - 送付に時間がかかり、漏れや締め時刻の超過が出ている:送る順番と手段の整理が先です。
取引先ごとの一覧を作る節が当てはまります。 - 誤りが特定の取引先に集中している:その取引先だけ受付方法や締め時刻、単位の扱いが違う可能性があります。
一覧で違いを見えるようにし、電子化の可否もその取引先から確かめます。 - 受領確認の段階で食い違いが見つかる:送付手段そのものが聞き違いや未着を生んでいる場合があります。
送り方のひな形を作るか、記録の残る手段への切り替えを検討します。
複数に当てはまるときは、件数の多いもの、または欠品のように営業への影響が大きいものから選びます。
一度に全部を変えると、どれが効いたのか分からなくなるからです。
原因の見当がつけば、次に読む節も、取引先に相談する内容も絞り込めます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 在庫確認
- 棚の奥の見落としが過剰につながる
- 数量の判断
- 前日の感覚に頼ると過不足が出る
- 注文の送付
- 送り忘れや締め時刻に間に合わない遅れ
- 受領の確認
- 未着や聞き違いに翌朝まで気づかない
- 納品・検品
- 結果が次の在庫確認の出発点になる
費用をかけずに見直せる、発注表・基準在庫・発注点・発注時刻の決め方
発注表に基準在庫と発注点を入れる
数量の判断に毎回時間がかかるなら、品目ごとの「どこまで減ったら頼むか」「どこまで戻すか」が担当者の頭の中にしかない状態かもしれません。
これを発注表に書き出せば、判断の多くは表を見て引き算をする作業に変わります。
その目安になるのが発注点です。
発注点とは、在庫がこの量を下回ったら発注する、という基準の量です。
飲食店向けサービスを運営する民間企業の解説では、発注点を「1日の平均使用量×発注から納品までにかかる期間+安全在庫」で求める方法を紹介しています2。
安全在庫は、使用量がいつもより多かった日や納品が遅れた日に備える上乗せ分です。
仮の数字で考えてみます。
ある食材を1日に平均4kg使い、前日に頼めば翌日に届く(発注から納品まで1日)とします。
安全在庫を2kgと置けば、発注点は4kg×1日+2kg=6kgです。
閉店後の在庫確認で6kgを下回っていたら発注する、と決めておけば、毎晩「頼むべきか」を迷わずに済みます。
いくら頼むかについては、基準在庫(ここまで戻したいという量)を決めておき、基準在庫から今の在庫を引いた分を発注数にする方法を提案します。
基準在庫は、発注点に次の発注までに使う見込みの量を足した値から始めると考えやすいでしょう。
ここに挙げた数字は説明のための仮の値です。
実際の値は自店の使用量の記録から決めます。
安全在庫の量についても、同じ解説は「安全係数×使用量の標準偏差×√(発注から納品までにかかる期間+発注間隔)」という式を示しています2。
標準偏差は、日々の使用量のばらつきを表す数値です。
この式からは、ばらつきが大きい食材ほど安全在庫が大きくなり、毎日ほぼ同じ量を使う食材なら小さくて済むことが読み取れます。
記録が少ないうちは式どおりに計算できなくてもかまいません。
まず控えめな値を置き、欠品や余りの記録を見ながら直していく使い方もできます。
なお、これは民間事業者による一般的な解説の一つで、公的な基準として定められた式ではありません。
発注表には、店で使う単位と発注する単位の両方を書いておくと、判断の誤りを減らせます。
店ではg単位で使う食材を取引先にはケースで頼む場合、入数が書いていないと、換算をその場の暗算に頼ることになるからです。
表の列は、品目、取引先、使う単位と発注単位(入数)、発注点、基準在庫、その日の在庫、発注数くらいから始めれば十分です。
傷みやすい食材と日持ちする食材で方式を分ける
発注点の表が、どの食材にも同じように効くわけではありません。
前述の解説でも、発注点方式は一般に、需要の変動が少ないものや単価が安いものに向くとされています2。
また、生鮮食材では安全在庫が食品ロスにつながるおそれがあるため、定期的な見直しを勧めています2。
そこで、食材を「傷みやすいか」と「日々の使用量のぶれが大きいか」の2点で見分け、決め方を変えることを提案します。
調味料や乾物、冷凍品のように日持ちし、使う量も安定しているものは、発注点の表に任せる候補です。
在庫が発注点を下回ったら基準在庫まで戻す、という決まりにすれば、ほぼ迷わず数量が決まります。
多めに持っても傷む心配が小さいため、安全在庫を厚めにとっても損が出にくい品目です。
一方、葉物や鮮魚のように傷みやすく、予約や天候で使う量が日によって変わるものは、発注のたびに翌日以降の予約や仕込みの予定を見て数量を見積もるほうが合う場合があります。
決まった周期で発注し、そのつど次の納品までに要る量を見積もるやり方で、定期発注と呼ばれることもあります。
この場合も表は役に立ちます。
基準在庫の代わりに「予約1組あたり」「仕込み1回あたり」の使用量を書いておけば、見積もりの根拠が担当者の勘から表へ移ります。
安全在庫は小さめに置き、廃棄が出た週には下げ、欠品が出た週には上げるというように、記録を見て調整します。
どちらに分けるか迷う食材は、1週間の記録を見て決めます。
使用量が毎日ほぼ同じなら発注点の側へ、日によって倍近く違うなら見積もりの側へ、という程度の分け方から始め、運用しながら入れ替えていけば十分です。
発注時刻と担当を決めて、確認の抜けをなくす
表を作っても、在庫確認をする時刻と人が日によって違えば、数え漏れや送り忘れは残ります。
前日発注では、「誰かが送ったと思っていた」という思い込みからも漏れが生まれます。
そこで、発注時刻と担当を先に決めておきます。
発注時刻は、締め時刻がいちばん早い取引先に間に合うように逆算し、在庫確認と数量の判断にかかる時間も見込んで決めます。
担当は1人に決め、その人が休む日の代わりも名前で決めておきます。
あわせて、発注表に取引先ごとの「送付済み」「受領確認済み」の欄を設け、送ったらその場で印を付けます。
こうすれば、送ったかどうかを記憶で確かめる必要がなくなり、閉店前に表を見れば印のない取引先がすぐに分かります。
担当が交代した日も、表を引き継げば前の人がどこまで終えたかが分かります。
もっとも、印を付けること自体を忘れれば同じ漏れは起きます。
印の欄は表のいちばん目立つ位置に置き、最後に空欄が残っていないかを見る手順まで決めておきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注点を決める要素
- 1日の平均使用量
- 発注から納品までにかかる期間
- 安全在庫
- 安全在庫を左右する要素
- 安全係数
- 使用量の標準偏差(日々のばらつき)
- 発注から納品までの期間と発注間隔
- 生鮮食材での注意
- 安全在庫が大きいと食品ロスにつながるおそれ
- 定期的に見直す
取引先ごとの締め時刻と受付方法の違いを、発注者側で一覧にして扱う
取引先別の締め時刻・受付方法・最低数量の一覧
数量の決め方が整っても、注文を送る段階でつまずくことがあります。
取引先が複数あると、電話でしか受けない取引先、FAXで受ける取引先、メッセージやWeb発注で受ける取引先が混ざり、締め時刻もそれぞれ違う場合があるからです。
こうした条件は取引先が決めるもので、発注する側からは変えられません。
それでも、条件を発注者側で一覧にしておけば、毎晩それぞれを思い出す手間と、思い違いによる漏れを減らせます。
一覧には、取引先ごとに次の項目を並べます。
- 取引先名と担当者、連絡先
- 受付方法(電話・FAX・メール・チャット・Web発注など)
- 締め時刻と、定休日の前日や連休前の扱い
- 最低発注数量や発注の単位、送料がかかる条件
- 主に頼んでいる品目
- 注文を受けたときに返事があるか(受領確認の方法)
一覧を作ると、取引先の条件のうち変えられない部分と、自店で変えられる部分が分かれて見えてきます。
締め時刻や受付方法は取引先の決まりですが、どの順に発注するか、誰が送るか、どんな書き方で送るかは自店で決められます。
手を入れるのは後者です。
締め時刻の早い順に発注する
一覧ができたら、取引先を締め時刻の早い順に並べ替えます。
ここで効いてくるのが、在庫確認の順番も同じ並びにすることです。
冷蔵庫の端から順に数え終えてから注文に移ると、締めの早い取引先の品目を数えるのが最後になり、そこで時間切れになることがあります。
発注表の行を取引先ごと・締め時刻順に並べておけば、締めの早い取引先の品目から数え、数量を決め、送るところまでを1社ずつ終わらせられます。
送り方にはひな形を用意します。
FAXやメール、メッセージで送る取引先には、店名、納品日、品目、数量、単位を同じ順に並べた書式を作り、毎回その欄を埋めるだけにします。
電話で頼む取引先にも、伝える順番を同じ書式で手元に置いておきます。
最後に相手に数量を読み上げてもらえば、聞き違いをその場で見つけやすくなります。
ひな形があれば、担当が交代しても書き方がぶれません。
締め時刻を過ぎてしまった場合の動き方も、一覧に書いておくと慌てずに済みます。
締め後でも電話なら受けてもらえるのか、翌々日の納品になるのかは取引先ごとに違うため、分かっている範囲を書き込んでおきます。
取引先に確認する項目
一覧の空欄には、取引先に聞かなければ埋まらない項目もあります。
普段のやり取りで分かったつもりになっている条件ほど、改めて確かめると思い違いが見つかることがあります。
確認するのは、次のような点です。
- 締め時刻:平日と、定休日の前日・連休前で違うか
- 受付の返事:FAXやメッセージで送った注文に、受け付けたという返事をもらえるか
- 変更と取り消し:締め時刻の後でも数量を変えられるか、いつまでなら取り消せるか
- 欠品のとき:頼んだ品が用意できない場合、いつ、どの方法で知らせてもらえるか
- 単位と最低数量:ケース単位か、ばらでも頼めるか
- 電子での受付:Web発注や受発注データでのやり取りに対応しているか、対応の予定があるか
なかでも受付の返事と欠品の連絡は、受領確認の工程で起きる食い違いに直結します。
返事がもらえない手段なら、自店で送信記録を残すなど、確認の手当てが必要になります。
最後の電子での受付は、電子化を考えるときの判断材料になります。
| 項目 | 決めるのは | 発注者側でできること |
|---|---|---|
| 締め時刻 | 取引先 | 早い順に並べて発注の順番を決める |
| 受付方法 | 取引先 | 手段ごとに送付のひな形を用意する |
| 最低発注数量・単位 | 取引先 | 発注表に入数と最低数量を書いておく |
| 発注の順番 | 自店 | 締めの早い取引先から在庫確認と送付を進める |
| 担当と送り方 | 自店 | 担当と代わりの人を決め、ひな形で送る |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先が決める条件
- 締め時刻
- 受付方法
- 最低発注数量と発注の単位
- 自店で決める事柄
- 発注の順番(締めの早い順)
- 担当と代わりの人
- 送り方(ひな形)
- 取引先に確認する項目
- 受付の返事
- 欠品のときの連絡
- 電子での受付
発注システムや取引先のWeb受発注を使うと何が楽になり、何が必要になるか
電子化で減る作業と減らない作業
取引先ごとの一覧ができていれば、電子化で何が変わるかを具体的に見通せます。
ここでいう電子化とは、自店で発注を管理するシステムを使うことや、取引先が用意したWeb受発注の画面から注文することを指します。
仕組みのうえで減りやすいのは、注文の送付と受領の確認にかかわる作業です。
電話をかけて読み上げる、FAX用紙に手書きして送る、といった作業が画面への入力に置き換わり、注文の内容が文字やデータとして残ります。
手書きの数字の読み違いや電話の聞き違いが起きる余地が小さくなり、送ったかどうかも記録で確かめられます。
一方で、在庫確認と数量の判断は、電子化しただけでは減りません。
冷蔵庫の中を数えるのも、明日の予約を見て数量を決めるのも、入力の前にある作業だからです。
発注点や基準在庫が決まっていない状態でシステムに移っても、迷う時間はそのまま残り、迷った末の数字が画面に入力されるだけです。
1週間の記録で数量の判断が重いと分かった店では、前の節の発注表を先に整えるほうが、負担に直接効きます。
取引先の対応が前提になる
電子化には、相手があるというもう一つの前提があります。
企業間で、注文書や納品の情報を紙や電話ではなく、決まった形式のデータでやり取りする仕組みをEDIといいます。
中小企業庁の情報サイト「ミラサポplus」は、EDIは1社だけでは効果が出ず、取引先の状況を踏まえて導入の要否を判断する必要があると説明しています1。
これを飲食店の食材発注に置き換えると、自店が電子化を進めても、取引先が電話とFAXでしか受け付けていなければ、その取引先への注文は今までどおりです。
たとえば5社と取引していて、Web発注に対応しているのが1社だけなら、残る4社には従来の方法で送り続けることになります。
その状態では発注の手段が1つ増えるだけで、かえって確認する画面や書類が増えることもあります。
判断の材料になるのは、前の節で作った一覧です。
電子での受付に対応している取引先が何社あり、その取引先への注文が自店の発注全体のどれくらいを占めるかを、1週間の記録から数えます。
注文の大半を占める取引先が対応しているなら、その1社から始める価値は大きくなります。
対応している取引先がわずかなら、まず送付のひな形と締め時刻順の運用で負担を下げ、取引先の対応が広がるのを待つという判断もあり得ます。
実証で示された削減率の読み方
電子化でどのくらい楽になるかを考えるときの手がかりとして、公的な数字があります。
ミラサポplusの記事によると、中小企業共通EDIの実証では、中小企業の受発注業務時間が平均で51.4%削減されました1。
同じ記事は、大企業より中小企業のほうが削減率が高かったことも伝えています1。
ただし、この数字を自店の見込みとしてそのまま使うことはできません。
実証は12のプロジェクトで行われ、対象は自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業種でした1。
発注側と受注側の双方が、中小企業共通EDIの標準に対応したプロバイダーと契約することが前提になっています1。
記事の内容も2018年時点の情報で、飲食店が食材を前日に発注する場面を測った数字ではありません。
この数字から言えるのは、取引の双方がデータでのやり取りに移ったとき、受発注の業務時間が大きく減った例がある、ということです。
前日発注の漏れや過不足が減るかどうかまでは示していません。
前に見たとおり、漏れや過不足は在庫確認や数量の判断の段階でも生まれるからです。
自店で効果を見込むときは、この数字ではなく、1週間の記録で送付と受領の確認にかかっていた時間を基準にします。
そのうち電子化できる取引先の分がどれだけあるかを見積もるほうが確かです。
| 項目 | 平均削減率(%) |
|---|---|
| 中小企業の受発注業務時間 | 51.4 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 減りやすい作業
- 注文の送付(電話・FAXから画面入力へ)
- 受領の確認(記録が残る)
- 減らない作業
- 在庫確認
- 数量の判断
- 前提
- 取引先が電子での受付に対応していること
- 対応する取引先が注文全体のどれくらいを占めるか
規模・取引先数・現在の方法別に、最初に試す一手と効果の確かめ方
取引先が少ない場合
ここまでの話を、自店の条件に当てはめてみます。
取引先が数社で、電話やFAXでの注文が中心の店では、送付にかかる時間はもともと大きくないことがあります。
この場合に最初に試す一手は、発注表に発注点と基準在庫を書き込み、締め時刻の一覧を表に添えることです。
費用はほとんどかからず、在庫確認と数量の判断という、電子化しても残る工程に直接効きます。
取引先が少ない店では、担当者が1人で発注を回していることもあります。
その人が休んだ日に漏れが出るなら、表と一覧があること自体が引き継ぎの仕組みになります。
主な取引先がWeb発注に対応している場合は、その1社だけ試しに切り替え、送付の時間と聞き違いが減るかを記録で確かめる、という小さな始め方もできます。
取引先が多く手段が混在している場合
取引先が多く、電話、FAX、メッセージ、Web発注が混ざっている店では、送付の工程が重くなりやすく、漏れも取引先単位で起きます。
この場合は、取引先ごとの一覧を作り、締め時刻順に発注する運用を先に整えます。
そのうえで一覧の「電子での受付」の欄を埋め、電子化の対象になりうる取引先と、そこへの注文の量を数えます。
電子化を検討する段階に進んだら、導入する前に、取引先ごとに対応の有無と始められる時期を確かめます。
自店で発注を管理するシステムを入れるのか、取引先が提供するWeb受発注を使うのかで、確かめる中身も変わります。
前者なら取引先がそのデータを受け取れるか、後者なら取引先ごとに画面が分かれて手間が増えないかが論点です。
費用の面では、国がIT導入を支える補助制度を設けていることがありますが、名称や対象、受付期間は年度によって変わります。
ミラサポplusの記事も支援策に触れていますが、2018年時点の情報で1、当時の条件は今の判断には使えません。
検討するときは、所管の機関が出している最新の公募要領で、自店と導入するものが対象になるかを確かめます。
効果を確かめる指標と期間
見直しの効果は、最初に取った1週間の記録と同じ形で、変えた後の記録を取って比べます。
見る指標は次の4つです。
- 発注にかかった時間(工程ごと)
- 漏れの件数(送り忘れ、締め時刻の超過)
- 数量や品目の誤りの件数
- 廃棄の回数・量と、欠品の回数
比べる期間は、変更の前と後で同じ長さにし、曜日の並びもそろえます。
週末に予約が集中する店で、平日だけの週と週末を含む週を比べると、見直しと関係なく数字が動いてしまうからです。
1週間ずつで傾向が見えにくいときは、前後とも数週間に延ばします。
連休や大口の予約が入った週には別に印を付けておくと、比べやすくなります。

もう一つ大切なのは、一度に一つずつ変えることです。
発注表の見直しと取引先の電子化を同時に始めると、時間が減ったのがどちらの効果なのか分かりません。
先に費用の小さい見直しを入れて記録を取り、残った負担がどの工程にあるかを確かめてから次の手を選べば、電子化に進むかどうかも自店の数字で判断できます。
工程ごとの記録を取っても、原因が数量の判断と送付のどちらにあるのかは、取引先ごとの条件まで含めると一人では整理しにくいことがあります。
記録や取引先の一覧をもとに、どの工程から手を付けるか、電子化を検討する段階にあるかを一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に見る場所 | 1週間の記録で、時間と誤りが出ている工程 |
| 数量の判断が重い | 発注表に発注点・基準在庫・単位を書く |
| 日持ちし変動の小さい食材 | 発注点を下回ったら基準在庫まで戻す |
| 傷みやすく変動の大きい食材 | 予約や仕込みから毎回見積もり、安全在庫は小さめ |
| 送付で漏れる | 取引先一覧を作り、締め時刻の早い順に発注する |
| 電子化の判断 | 対応している取引先の数と、その取引先への注文の割合 |
| 効果の確認 | 前後同じ長さ・同じ曜日構成で、時間・漏れ・誤り・廃棄と欠品を比べる |

電子化の効果は取引先の対応状況で変わるため、自店の発注のうちどれだけを置き換えられるかを見極める必要があります。 取引先の受付方法と注文の割合から、費用の小さい見直しで足りるか、電子化に進む余地があるかを確かめられます。
よくある質問
発注点はどう決めればよいですか。変動が大きい食材はどうしますか。
民間事業者の解説では、「1日の平均使用量×発注から納品までにかかる期間+安全在庫」で求める方法が紹介されています2。
1週間ほどの使用量の記録から平均を出し、安全在庫は控えめな値から始めて、欠品や余りを見ながら直します。
同じ解説では、発注点方式は需要の変動が少ないものや単価が安いものに向くとされています2。
傷みやすく変動の大きい食材は、発注のたびに予約や仕込みの予定から数量を見積もり、安全在庫は小さめに置いて記録で調整する方法が合う場合があります。
取引先が電話やFAXしか受け付けない場合、自店でできる効率化は何ですか。
受付方法は変えられなくても、発注の順番と送り方は自店で変えられます。
取引先ごとの締め時刻と受付方法を一覧にし、締め時刻の早い順に在庫確認から送付までを1社ずつ終わらせます。
FAXには店名・納品日・品目・数量・単位を並べたひな形を使い、電話では最後に数量を読み上げてもらうと、聞き違いに気づきやすくなります。
受付の返事がない手段なら、送信記録を残しておくと受領確認の手当てになります。
発注の担当者が休んだときの漏れを防ぐには、何を共有しておけばよいですか。
品目ごとの発注点・基準在庫・単位を書いた発注表、取引先ごとの締め時刻と受付方法の一覧、送付のひな形の3つです。
あわせて、発注表に取引先ごとの「送付済み」「受領確認済み」の欄を設けておけば、代わりの人も何が終わっていないかを表で確かめられます。
代わりの人は、名前で事前に決めておきます。
発注システムを入れる前に、取引先へ何を確認すべきですか。
電子での受付に対応しているか、いつから始められるかが最初の確認事項です。
企業間の受発注データのやり取りは1社だけでは効果が出ず、取引先の状況を踏まえて導入の要否を判断する必要があるとされています1。
そのほか、電子での注文でも締め時刻が変わらないか、締め後の変更や取り消しの方法、欠品の知らせ方を確かめておくと、導入後に手順が分かれて混乱するのを避けやすくなります。
発注の改善効果は、どの指標をどれくらいの期間で見ればよいですか。
工程ごとの発注時間、漏れの件数、数量や品目の誤りの件数、廃棄と欠品の回数を見ます。
期間に決まった基準はありませんが、変更の前後を同じ長さにし、曜日の並びをそろえることが大切です。
1週間ずつで差が読み取りにくければ、前後とも数週間に延ばします。
一度に複数を変えると何が効いたか分からないため、変更は一つずつにします。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 2 出典:株式会社シンクロ・フード(飲食店ドットコム)「飲食店向け発注・在庫管理の解説記事」
画像の出典元
- Close-up of professionals collaborating, taking notes on a clipboard./Photo by George Morina on Pexels
- A businesswoman writing in a notebook at a wooden desk with pens and a laptop./Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels