◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 最低条件の水準に公的な相場はなく、注文1件ごとの処理費用と配送費を注文金額の帯ごとの採算として並べて決める。
- 品目数の多さが重いなら最低注文金額、単価の低さが原因なら最低ロット、配送費が主因なら送料の条件が合いやすい。
- 自社便は曜日配送や納品日の集約、運送会社への委託は運賃に連動する条件が、費用の出方と合う。
- 取適法や物流特殊指定は発注側・荷主側の行為を規律する制度で、自社の取引形態によって関わり方が変わる。
- 条件は費用の根拠と複数の案を示し、試行期間と見直しの時期を決めて書面に残す。
目次

多頻度小口で利益が残らないとき、まず自社のどの費用を見るか
小口の注文が増えたのに利益が残らない。
新しい取引先から少量で頻繁な納品を求められ、受けるか迷っている。
そんなとき最初に見るのは他社の相場ではなく、自社で注文を1件出すたびにかかる作業と配送の費用です。
これを注文の件数別・金額別に並べると、赤字になる注文帯が見えます。
そこから、最低ロット・最低注文金額・最低運賃のどれで補うか、納品日の集約で足りるかを選べます。
条件は一方的に通知するより、費用の根拠と複数の案を示し、試行期間を置いて合意するほうが長く続きます。
1件ごとに発生する作業と配送費
小口の注文で利益が削られるのは、注文の金額や数量が小さくても、受けてから届けるまでの作業がほとんど省けないからです。
受注内容の確認と入力、出荷指示、ピッキング、梱包、送り状の発行、出荷前の検品、配送、請求と入金の照合まで、注文が1件増えるたびに同じ流れが一巡します。
商品の原価は数量に応じて小さくなりますが、この一巡分の手間は注文が小さくなっても縮みません。
そこで最初に、費用を「注文1件ごとに発生するもの」と「数量に比例して発生するもの」に分けます。
前者は受注処理、出荷作業の段取り、梱包資材、送り状、1回分の配送、請求処理などです。
後者は商品原価や、数量が増えるほど時間のかかるピッキング・検品の一部です。
小口が増えて苦しくなるのは、前者が注文金額に対して大きな割合を占めるようになるためです。
配送費の見え方は、自社便で回しているか、運送会社へ委託しているかで変わります。
委託なら1個口ごとの運賃が請求書に載るので、1件あたりの配送費は比較的追いやすいでしょう。
自社便には運賃という形の請求がなく、小口の負担はドライバーの時間と車両の費用の中に紛れてしまいます。
届け先が1か所増えるごとに停車・荷降ろし・受領確認の時間が加わるので、1件あたりの費用は「立ち寄り1回分の時間」として見積もります。
件数別・注文金額別に粗利を出す
費用を二つに分けたら、一定期間の出荷実績を使い、注文金額の帯ごとに1件あたりの採算を並べます。
ここでの採算は、売上から商品原価を引き、さらに1件ごとの処理費用と配送費を差し引いた額です。
会計上の粗利とは定義が違うので、社内では「注文1件の採算」のように別の呼び名にしておくと混同しません。
計算の骨組みは次のとおりです。
1件あたりの処理費用は、対象期間に受注から出荷までにかかった人件費・資材費などの合計を、同じ期間の出荷件数で割って出します。
注文1件の採算は、注文金額に粗利率を掛けた額から、1件あたりの処理費用とその注文の配送費を引いたものです。
これを注文金額の帯ごとに平均すると、どの金額を下回ると赤字になりやすいかが見えてきます。
人件費の割り振りは厳密に測れないことがよくあります。
作業日報がなければ、数日分だけ受注から出荷までの作業時間を記録して平均を取る方法でも構いません。
大事なのは、期間や割り振り方を変えずに計算を続けることです。
同じ物差しで測り続ければ、後で条件を変えたときに前後を比べられます。
赤字の注文帯が見えたら、次はその注文がどこから来ているかを見ます。
特定の取引先に集中しているなら、その相手と個別に話し合う余地があります。
多数の取引先に薄く散らばっているなら、全体に共通の条件を設けたほうが運用は簡単です。
同じ取引先でも、品目数が多いのか、1品目の数量が少ないのか、届け先が分散しているのかで、効く手段が変わります。
この違いが、次に比べる最低ロット・最低注文金額・最低運賃の選び分けにつながります。
小口化は一様ではないという国の調査結果
取引先に条件を相談するとき、「業界全体で小口化が進んでいるので」と説明したくなるかもしれません。
ただ、国の調査はそれほど単純な姿を示していません。
国土交通省が2015年に実施した第10回全国貨物純流動調査(物流センサス)の速報によると、4産業合計の流動ロット(1回に運ばれる貨物の大きさ)は、それまでの小ロット化の傾向から増加に転じました4。
一方、トラック輸送に限ると小ロット化が続いているとされています4。
この調査は貨物の流れ全体を捉えたもので、個々の会社の採算を示すものではありません。
調査時点も2015年なので、現在の取引にそのまま当てはめることはできません。
トラックで小口の荷が増える傾向は背景として理解できますが、取引先にとって説得力があるのは、自社の注文帯ごとの採算です。
一般論ではなく自社の注文で何が起きているかを示せることが、話し合いの土台になります。
| 費用 | 発生の仕方 | 小口の注文が増えたとき |
|---|---|---|
| 受注内容の確認・入力 | 注文1件ごと | 件数に比例して増える |
| 出荷指示・梱包・送り状 | 注文1件ごと | 件数に比例して増える |
| 配送(運送会社へ委託) | 1個口ごと | 運賃として請求に表れる |
| 配送(自社便) | 立ち寄り1回ごと | ドライバーの時間と車両費に紛れる |
| 請求・入金の照合 | 注文または請求1件ごと | 件数に比例して増える |
| 商品原価 | 数量に比例 | 注文が小さければ小さくなる |
最低ロット・最低注文金額・最低運賃は、それぞれ何を減らし、取引先にどう響くか
手段別の比較表(減る費用・取引先の負担・運用のしやすさ)
三つの条件は、どれも「小さすぎる注文」の負担を減らす手段ですが、減らす相手が違います。
最低ロットは、1回の注文で受け付ける商品ごとの最小数量です。
最低注文金額は、1回の注文の合計金額に下限を設けるものです。
最低運賃は、ここでは、注文が一定の金額や数量に届かないときに送料や配送料を別に受け取る条件、あるいは送料を自社で負担する下限を指します。
表で判断が分かれるのは、「取引先がどこで負担を吸収するか」です。
最低ロットと最低注文金額は、注文件数を減らす代わりに、取引先に多めの在庫か長めの発注間隔を求めます。
保管場所に余裕のある取引先なら受け入れやすいでしょう。
店頭の棚が限られていたり、鮮度の管理が必要な商品だったりすると、重い条件になります。
最低ロットと最低注文金額の違いは、取引先に調整の自由があるかどうかです。
最低ロットは品目ごとに縛るため、多品目を少しずつ発注する取引先には、全品目で数量を増やしてもらうことになります。
最低注文金額なら、売れ筋を多めにするか、品目を足すかを取引先が選べます。
その反面、合計金額さえ満たせば1品目1個ずつの注文も通るので、ピッキングの行数は減りません。
工数の重さが品目数にあるのか、注文の回数にあるのかで、効く手段が変わります。
最低運賃は、注文件数を減らす手段ではありません。
小口の注文はそのまま受け、配送費の不足分を取引先に負担してもらう形です。
取引先は発注の仕方を変えずに済むので、受け入れの壁は低いことがあります。
ただ、送料を払ってでも小口で頼みたい取引先が多ければ、出荷作業の負担は残ります。
配送費が赤字の主因で、作業の手間はまだ回っている場合に向く手段です。
損益が釣り合う水準を算式で置く
条件の水準に、どの会社にも当てはまる相場はありません。
公的な統計や指針で最低注文金額の目安が示されているわけでもないので、水準は前の節で出した1件あたりの費用から逆算します。
最低注文金額なら、1件あたりの処理費用と配送費の合計を粗利率で割ると、その費用を賄える注文金額が出ます。
最低ロットなら、同じ費用の合計を商品1個あたりの粗利で割ると、その商品で費用を賄える数量になります。
最低運賃なら、注文の粗利で賄えない配送費の差額が、受け取るべき送料の目安です。
算式で出た値は、赤字にならない下限にすぎません。
実際の条件は、この下限に取引先の発注の仕方や他の仕入先の条件を加味して決めます。
下限ちょうどに置くと、資材や運賃が上がったときにすぐ割り込むので、見直しの時期を最初から決めておくと扱いやすくなります。
| 手段 | 主に減る費用 | 取引先の負担 | 運用のしやすさ | 向く場面 |
|---|---|---|---|---|
| 最低ロット | 1品目あたりの出荷・梱包・配送の回数 | 1品目を多めに仕入れるため在庫と保管場所を抱える | 商品ごとに数量を決めて受注時に照合する | 単価が低く1件の費用が重い商品 |
| 最低注文金額 | 注文件数と1件ごとの処理費用 | 品目の組み合わせで調整できるが発注間隔が延びる | 注文合計で判定するため条件が一つで済む | 品目数が多く工数がかさむ取引 |
| 最低運賃・送料条件 | 配送費のうち自社が負担している部分 | 小口のまま発注できるが送料を支払う | 請求に送料の行を加える | 配送費が赤字の主因の場合 |
| 納品日の集約・曜日配送 | 配送と立ち寄りの回数 | 届く日に合わせて発注を計画する | 届け先ごとの曜日や締め時刻を管理する | 条件を設けにくい相手や自社便の場合 |
取引先の力関係・商品単価・自社便か委託かで、どの手段を選ぶか
取引先の代わりと商品単価で、条件の強さを決める
比較表のどの手段を選ぶかは、自社の状況で絞り込めます。
一つ目の軸は、その取引先の代わりが利くかどうかです。
売上の大きな部分を一社が占め、取引が離れると埋め合わせが難しい場合、取引先の発注の仕方を大きく変える条件から入るのは危険です。
送料の一部負担や納品日の集約など、受け入れやすい案から始め、採算の変化を見ながら段階を踏むほうが現実的です。
反対に、多数の取引先から小口の注文が散らばって届く場合は、全取引先に共通の最低注文金額を設けたほうが、個別交渉の手間がかかりません。
二つ目の軸は、商品単価が1件の費用を吸収できるかどうかです。
単価の高い商品は1個の注文でも1件あたりの費用を粗利で賄えることがあり、最低ロットを設ける理由は薄くなります。
単価の低い消耗品のような商品は、少量では粗利が処理費用に届かないため、数量か金額の条件を検討する対象になります。
同じ取引先でも商品によって答えが違うので、最低ロットを一律にせず、算式で赤字が出る商品に絞って設ける選び方もあります。
三つ目の軸は、配送を自社便で行っているか、運送会社に委託しているかです。
費用の出方そのものが違うので、分けて考えます。
自社便の場合
自社便では、注文が小口でも大口でも、車両とドライバーの1日の費用はほとんど変わりません。
負担として表れるのは、届け先が増えて1日に回りきれなくなることと、特定の曜日に注文が偏って車両が足りない日と余る日ができることです。
このため、送料を受け取る最低運賃は費用の出方と結び付きにくく、取引先にも根拠を説明しにくくなります。
効きやすいのは、届け先ごとに配送曜日を決める曜日配送や、同じ届け先への複数の注文を一度に届ける納品日の集約です。
同じ地域の届け先を同じ曜日にまとめれば、1回の走行で回れる件数が増え、車両の稼働も曜日ごとに平らになります。
それでも採算が合わない注文帯が残れば、最低注文金額を組み合わせる、という順番が考えられます。
運送会社へ委託している場合
運送会社へ委託している場合は、1個口ごとの運賃が直接の費用になります。
小口の注文が1件増えれば、ほぼその分だけ運賃が増えます。
そのため、運賃に連動した条件、つまり一定の金額に届かない注文から送料を受け取る形が、費用の出方とよく合います。
取引先にも「この金額を下回ると、運賃が注文の粗利を上回る」と説明しやすくなります。
注意したいのは、注文をまとめても運賃が同じ割合で下がるとは限らないことです。
運賃が個口数で決まるのか、重量やサイズで決まるのか、届け先の地域で変わるのかは、運送会社との契約で違います。
まとめ出荷で個口が一つに収まれば運賃は下がりますが、サイズ区分が上がれば期待したほど下がらないこともあります。
自社の運賃表と照らし、どの手段で運賃が実際に減るのかを計算に入れておく必要があります。
また、自社は運送会社にとって荷主の立場になります。
取引先に送料を求める一方で、運送会社との運賃協議や出荷日の変更の扱いにも気を配る必要があり、この点は次の節で扱う制度と関わります。
試行期間と見直しの置き方
どの手段を選んでも、効果を事前に確かめることはできません。
条件を設けた結果、注文がまとまって採算が改善することもあれば、取引先が注文の一部を他の仕入先へ移して売上が減ることもあります。
そこで、本格運用の前に試行期間を置き、条件を変える前と後で同じ項目を比べる進め方を勧めます。
比べる項目は、出荷件数、1件あたりの注文金額、注文1件の採算、取引先ごとの注文頻度、そして取引が減った取引先の有無です。
期間の長さに決まった目安はないので、繁忙期や閑散期を一度は含められるよう、各社で定めます。
季節の波が大きい商品は、前年の同じ時期と比べないと、条件の効果と季節の影響を取り違えるおそれがあります。
最低条件を設けるとき、法令やルールで気をつける点は何か
取適法の禁止行為と適用の考え方
最低条件を設けるときに気になるのが、法令に触れないかという点です。
先に押さえておきたいのは、ここで紹介する制度が、主に発注する側や荷主の側の行為を規律しているということです。
自社がどちらの立場で取引しているかで、関わり方が変わります。
2026年1月に施行された取適法は、委託事業者(発注する側)が中小受託事業者(委託を受ける側)に対して行ってはならない行為を11項目定めています1。
受領拒否、支払遅延、代金減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、報復措置、有償支給原材料の早期決済、不当な経済上の利益提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し、協議に応じない一方的な代金決定です1。
このうち買いたたきは、同種または類似の給付に通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることを指します1。
この法律が適用されるのは、製造委託などの取引で、当事者が資本金や従業員数の区分に当てはまる場合です1。
区分の基準は細かく定められているので、自社と取引先が当てはまるかは公正取引委員会の原典で確かめる必要があります。
当てはまる場合、取引先から製造などを委託され、その納品を小口で求められている自社は、受託する側に立ちます。
このとき取引先は、自社から価格の協議を求められたのに応じず、必要な説明もしないまま一方的に代金を決めることを禁じられています1。
小口納品で増えた費用を示して価格や条件の見直しを申し入れることは、この協議の求めにあたり得ます。
物流特殊指定と荷主の努力義務
配送を運送会社へ委託している場合、自社は荷主として、運送会社との取引でルールを守る側になります。
公正取引委員会は荷主と物流事業者の取引を調べており、令和7年度には779名の荷主に注意喚起の文書を送り、105名に立入調査を行いました3。
問題となった行為として、荷待ちで生じた追加費用を払わないこと、出荷日を変えたときに費用を補償しないこと、協議をせずに運賃を据え置くことなどが挙げられています3。
荷主と物流事業者の取引を対象とする物流特殊指定は改正され、令和9年(2027年)4月に施行される予定です3。
小口の負担を減らそうとすると、こうした場面に関わりやすくなります。
たとえば、取引先の注文をまとめるために出荷日を直前で動かせば、運送会社の配車や待機に影響が出ます。
取引先から送料を受け取るようにしても、その原資を運送会社への運賃を抑えて確保しようとすれば、協議なしの運賃据え置きと同じ構図になりかねません。
取引先との条件と運送会社との条件は、それぞれ別に整える必要があります。
国土交通省によると、物流効率化法により荷主には物流効率化のための措置に取り組む努力義務が課され、2025年4月に施行されました2。
国はその判断基準を策定しています2。
2026年4月からは、一定規模以上の荷主が特定事業者として中長期計画を作成する義務を負います2。
この努力義務は荷主一般が対象で、小口注文の採算改善を目的とした制度ではありません。
ただ、納品の集約や積載効率の向上に取り組むことは、この方向とも重なります。
自社の取引形態による確認の分け方
自社がどの制度と関わるかは、取引の形で分かれます。
注意したいのは、自社が売り手として取引先に最低注文金額や送料の条件を示すことそのものを、ここで紹介した制度が直接定めているわけではない点です。
取適法は委託事業者の行為を、物流特殊指定は荷主の物流事業者に対する行為を対象にしています。
そのため、条件の提示に問題がないとも、問題があるとも、これらの制度だけから一律には言えません。
取引の形が複雑な場合や、取引先との力関係に大きな差がある場合は、条件を決める前に取引の実態を伝えて専門家に相談するのが確実です。
| 取引の場面 | 自社の立場 | 関わり得る制度 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 取引先から製造などを委託され小口で納品する | 受託する側 | 取適法(資本金・従業員数の区分に当てはまる場合) | 区分への該当と協議の記録 |
| 自社の商品を取引先に販売して届ける | 売り手 | ここで紹介する制度は売り手の条件提示を直接の対象にしていない | 取引の実態に応じて専門家に確認 |
| 配送を運送会社へ委託する | 荷主 | 物流特殊指定と物流効率化法の努力義務 | 運賃協議・荷待ち・出荷日変更の扱い |
| 一定規模以上の荷主にあたる | 特定事業者 | 物流効率化法の中長期計画の作成義務 | 該当する規模の基準 |
取引先に条件を伝えて合意を得る進め方
複数案を示して選んでもらう
条件を伝える場面でつまずきやすいのは、自社の結論だけを通知してしまうことです。
取引先から見ると、ある日から発注の仕方を変えるよう言われても、なぜ必要なのか、他の方法はないのかが分からず、受け入れる理由が見つかりません。
前の節で見たとおり、取適法では委託事業者が協議に応じず一方的に代金を決めることが禁じられています1。
この規定は発注する側の義務で、自社が取引先へ条件を示す場面の義務ではありません。
それでも、根拠を示して協議するという進め方は、自社が条件を伝えるときにも参考になります。
進め方は、次の四つの手順にまとめられます。
①注文1件ごとにかかる作業と配送の費用を、注文金額の帯ごとに示す。
②取引先が選べる複数の案を出す。
③試行期間と見直しの時期を決める。
④合意した内容を書面で残す。
最初の手順で示すのは、社内原価の細部ではなく、費用の構造です。
注文ごとに受注確認・梱包・配送が一巡すること、ある金額より小さい注文ではその費用が粗利を上回ることが伝われば十分です。
人件単価まで開示する必要はありませんが、数字の裏付けがある説明と印象だけの説明とでは、取引先の受け止め方が大きく違います。
二つ目の手順で複数の案を出すのは、取引先ごとに負担を吸収できる場所が違うからです。
保管場所に余裕がある取引先は最低注文金額を選ぶかもしれません。
在庫を持てない取引先は、送料を払って小口を続けるほうを選ぶかもしれません。
週の決まった日に発注をまとめられる取引先なら、曜日配送で条件そのものを設けずに済む可能性もあります。
どの案でも採算を確保できるよう各案の水準を算式で整えておけば、どれを選ばれても困りません。
試行と書面化
三つ目の手順では、試行期間の長さ、見直しの時期、そのときに互いに確かめる項目を決めます。
試行期間は、取引先にとって「いったん試して、合わなければ見直せる」という安心材料になります。
自社にとっても、注文件数や採算がどう動いたかを測り、条件の水準を調整する機会になります。
四つ目の手順の書面には、条件の内容、開始時期、例外の扱い、見直しの時期を残します。
例外とは、欠品を補うための急ぎの追加注文など、条件を満たさなくても受ける場面のことです。
例外を決めておかないと現場で判断が割れ、結局すべての小口注文を受けることになりがちです。
既存の取引先に新しく条件を加える場合は、開始までに予告の期間を置き、取引先が発注の仕組みを変える時間を確保します。
条件を設けず、納品の集約や発注頻度の調整で減らす方法
曜日配送と締め時刻
最低条件を受け入れてもらえない場合や、条件を設けると関係が損なわれそうな場合は、注文の受け方と届け方を変えて小口の負担を減らす方法があります。
曜日配送は、届け先ごとに配送する曜日を決める方法です。
取引先はその曜日に届くよう発注するので、数日分の注文が1回の配送にまとまります。
締め時刻は、当日に出荷する注文の受付を何時までとするかの区切りです。
締め時刻がないと、注文が入るたびにピッキングと梱包を始めることになり、作業が細切れになります。
締め時刻で区切れば、それまでの注文をまとめてピッキングでき、同じ届け先の注文を一つの荷にまとめる機会も増えます。
取引先にとっての負担は、締め時刻や配送曜日に合わせて発注を計画する必要が出ることです。
納品日の集約と積合せ
納品日の集約は、同じ届け先に向けた複数の注文を、決めた日に一度で届けるやり方です。
曜日配送と似ていますが、届け先の事情に合わせて日を相談する余地を残せる点が違います。
国土交通省の資料では、荷主による積載効率向上の取組として、積合せや帰り荷確保のための時間の確保、関係部門間の連携などが調査で挙げられています2。
積合せは、複数の荷主の貨物を同じ車両にまとめて運ぶことです。
ただし、これは国の調査で取組の実施状況として紹介されたもので、小口注文の採算がどれだけ改善するかを示したものではありません2。
集約や曜日配送で配送回数がどの程度減るかは、届け先の分布や注文の偏りによって大きく変わります。
試行期間を置き、出荷件数、配送回数、注文1件の採算の変化を測るのが確実です。
条件と集約は、どちらか一方を選ぶものでもありません。
たとえば曜日配送を基本にし、指定曜日以外の配送を希望する注文にだけ送料を受け取る形にすれば、取引先は急ぎのときの手段を残したまま、普段の注文をまとめる動機を持てます。
鮮度管理が必要な商品や店頭の欠品が許されない取引先では集約に限りがあるので、そうした品目には例外を設け、その他の品目で集約を進めるという分け方も考えられます。
自社の注文帯ごとの採算を出しておけば、こうした組み合わせのどこで利益が残るかを、取引先と同じ数字を見ながら話し合えます。
注文1件ごとの費用を出すには受注・出荷・配送の記録を突き合わせる必要があり、記録が別々に管理されていると自社だけでは集計に手間がかかります。
相談では、手元の受注と出荷の記録のどこから注文1件の費用を拾うかを整理し、注文金額の帯ごとの採算を出す手順を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に見る数字 | 注文1件ごとの処理費用と配送費を、注文金額の帯ごとの採算として並べる |
| 条件の水準 | 1件あたりの費用を粗利率や1個あたりの粗利で割った下限から決める |
| 手段の選び方 | 品目数が重いなら最低注文金額、単価が低いなら最低ロット、運賃が主因なら送料の条件 |
| 自社便と委託 | 自社便は曜日配送や納品日の集約、委託は運賃に連動する条件が合いやすい |
| 制度の確認 | 取適法は製造委託等の区分で判断、配送を委託する場合は荷主として物流特殊指定を確認 |
| 合意の進め方 | 費用を示し、複数の案を出し、試行期間と見直し時期を決めて書面に残す |
条件を決めた後も、試行期間の件数や採算の変化を同じ物差しで測り続ける必要があり、取引先ごとに選ぶ案が分かれると管理が複雑になります。 相談では、試行期間に追う項目と見直しの時期、取引先ごとに異なる条件の整理の仕方を確かめられます。
よくある質問
最低注文金額は、いくらを目安に決めればよいですか
どの会社にも当てはまる公的な相場や目安はありません。
自社の1件あたりの処理費用と配送費の合計を粗利率で割ると、その費用を賄える注文金額が出ます。
これが赤字にならない下限で、実際の条件は、資材や運賃の値上がりに備えた余裕と取引先の発注の仕方を加味して決めます。
見直しの時期もあわせて決めておくと扱いやすくなります。
最低条件を設けると、取引先から取引を断られませんか
断られる可能性はあります。
代わりの仕入先がある取引先ほど、条件の強さに敏感です。
費用の構造を示したうえで、最低注文金額・送料の負担・曜日配送など複数の案から選んでもらえば、取引先は自分の事情に合う形を選べます。
売上の大きな取引先には、受け入れやすい案から試行期間を置いて始めるのが現実的です。
配送を運送会社へ委託している場合、取適法や物流特殊指定は自社に関係しますか
物流特殊指定は関係します。
配送を運送会社へ委託している自社は荷主の立場になり、物流特殊指定は荷主と物流事業者の取引を対象にしているためです。
公正取引委員会の令和7年度の調査では、荷待ちの追加費用の未払い、出荷日変更時の費用補償なし、協議なしの運賃据え置きなどが問題行為として挙げられました。
取適法は、製造委託などの取引で資本金・従業員数の区分に当てはまる場合に適用されるため、自社の取引が該当するかは原典で確かめる必要があります。
最低条件を設けずに、曜日配送や納品日の集約だけで足りますか
足りる場合もあります。
自社便で、赤字の主因が立ち寄りの回数や曜日の偏りにあるなら、曜日配送や納品日の集約が効きやすい手段です。
一方、委託で1個口ごとの運賃が赤字の主因なら、まとめても運賃が十分に下がらないことがあり、送料の条件との組み合わせが必要になります。
どちらが当てはまるかは、試行期間に配送回数と注文1件の採算の変化を測って判断します。
既存の取引先にあとから最低条件を加えるとき、どう伝えればよいですか
まず、条件を変える理由を注文金額の帯ごとの採算で示します。
そのうえで複数の案を出し、試行期間と見直しの時期、急ぎの追加注文などの例外の扱いを決め、合意した内容を書面に残します。
開始までに予告の期間を置けば、取引先が発注の仕組みを合わせる時間を取れます。
- 1 出典:公正取引委員会「委託事業者の禁止行為(取適法)」(2026年)
- 2 出典:国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」(2025〜2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「令和7年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果等について」(2026年)
- 4 出典:国土交通省「第10回全国貨物純流動調査(物流センサス)の調査結果(速報)」(2015年実施)
画像の出典元
- High angle view of warehouse workers organizing and preparing shipments with boxes and pallets./Photo by Tiger Lily on Pexels