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多頻度小口の受注締切の決め方|出荷便から逆算し、取引先へ伝える小規模向けの手順

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 受注の締切は注文を断る線ではなく、出荷便や仕入の発注時刻に注文をまとめて乗せるための線として置く
  • 締切の時刻は、最も動かしにくい後工程から梱包と余裕の時間を差し引いて決め、他業界の時刻をそのまま使わない
  • 締切後の注文は翌回に回すことを基本にし、条件付きの受け付けと緊急の例外は範囲を先に決めておく
  • 取引先には理由・開始日・例外をそろえて伝え、条件を話し合う取引は取適法の対象かを自社の立場ごとに確かめる
  • 出荷回数・時間外対応・例外の件数を導入前の自社と比べ、締切の時刻や本数を調整する

50代前半の日本人男性が小売店での検品をしている場面

多頻度小口の負担は、どの作業の割り込みから生じているか

同じ取引先から朝に数点、昼に数点、夕方にまた追加と、少量の注文が1日に何度も入ります。
そのたびに梱包の手を止めて伝票を作り直すことになります。
多頻度小口の対策として受注の締切を設定するとき、締切は注文を断るための線ではありません。
出荷便や仕入の発注時刻に、注文をまとめて乗せるための線として置きます。
まず割り込みがどの作業から出ているかを見分け、最も動かしにくい後工程の時刻から逆算して締切を決めます。
締切後の注文の扱いと取引先への伝え方まで先に決めておけば、小規模な体制のままでも試しながら始められます。

梱包・出荷の回数

多頻度小口とは、1回あたりの量は少ないまま、注文や出荷が高い頻度で繰り返される取引のことです。
国土交通省が洋紙・板紙分野の物流ガイドラインを策定した際の報道発表(2020年)は、不十分なリードタイムでの発注や少量多頻度納品という商習慣が、運送事業者やドライバーの負担増につながると整理しています2。
この資料は紙・パルプ分野の荷主と運送事業者に向けたもので、注文を受けて出荷する小規模事業者に向けたものではありません。
それでも、注文が細かく分かれるほど後ろの工程が細切れになるという構造は、受注側の事務所や倉庫の中でも同じ形で起きます。

最初に増えるのは梱包・出荷の回数です。
1件の注文には、数量にかかわらず、ピッキング、梱包、送り状の作成、出荷の記録といった一通りの作業が付いてきます。
同じ取引先の注文が朝と昼と夕方に分かれて届けば、まとめて1回で済んだはずの作業が3回に増えます。
しかも、それぞれの注文は別の作業の最中に届くため、手を止めて切り替える時間も回数分だけ積み重なります。

これが負担の中心かどうかは、1週間分ほどの受注と出荷の記録を並べると見当が付きます。
取引先ごとに、1日に何回注文が来て、何回出荷したかを数えます。
注文の回数と出荷の回数がほぼ同じなら、注文がそのまま出荷の回数になっています。
その場合は、締切を置いて注文をまとめることで、作業の回数を減らせる余地があります。

集荷や配送の手配

次に、出荷のたびに集荷を依頼したり、営業所へ持ち込んだり、自社の車で届けたりする手配が発生します。
集荷を一度頼んだあとに同じ取引先から追加の注文が入ると、別の集荷を頼むか、翌日に回すかを判断し直すことになります。
自社で配送している場合は、車を出す回数そのものが増えます。

先の報道発表は、改善の方向として、リードタイムの確保による効率的な配車と積載率の向上、物量の平準化や共同輸送による少量多頻度納品の効率化を挙げています2。
運送の側から見ても、細かい注文をそのまま流すより、まとめて運べる形に整えるほうが効率がよいという認識です。
受注側にとっては、注文を一定の時刻で区切って出荷を1回にまとめることが、この方向に沿った自社内の手当てになります。

手配の負担を確かめるには、1日の集荷依頼や配送の回数と、その日の注文件数を比べます。
注文が入るたびに手配が増えているなら、締切の基準には集荷や配送の時刻を置くのが自然です。

仕入・発注と問い合わせ

在庫を持たずに注文を受けてから仕入れる商品や、材料を取り寄せてから加工する商品では、取引先からの小さな注文が、そのまま仕入先への小さな発注になります。
自社が受けた少量多頻度を、仕入先へ同じ形で流してしまう状態です。
仕入先にも発注の締切や最低発注量があれば、注文が届くたびにそれに間に合うかを確かめる手間が加わります。

見落とされやすいのが問い合わせです。
締切が決まっていないと、取引先は注文のたびに「今日出せますか」「明日着きますか」と確かめるしかありません。
電話やメッセージで1件ずつ答えるやり取りも、梱包と同じく作業の手を止めます。
ルールが無いこと自体が問い合わせを生んでいるので、締切を決めて伝えれば、この種のやり取りが減る余地があります。

記録を見るときは、割り込みを梱包・出荷、集荷や配送の手配、仕入・発注、問い合わせの4つに分けて数えると、どこに負担が寄っているかが見えます。
いちばん多く割り込みを生んでいる作業が、次に考える締切の基準を決める手掛かりになります。

割り込みの出どころと、締切の基準を探す手掛かり(模式図)
梱包・出荷、集荷や配送の手配、仕入・発注、問い合わせの4つの作業ごとに、割り込みの中身と確かめる数字、締切の基準の手掛かりを並べた図梱包・出荷、集荷や配送の手配、仕入・発注、問い合わせの4つの作業ごとに、割り込みの中身と確かめる数字、締切の基準の手掛かりを並べた図梱包・出荷注文のたびにピッキング・梱包・送り状が繰り返される注文の回数と出荷の回数がほぼ同じなら、まとめて回数を減らせる余地がある集荷や配送の手配追加の注文のたびに別の集荷か翌日回しかを判断し直す注文のたびに手配が増えているなら、集荷や配送の時刻を基準にする仕入・発注取引先の小さな注文が仕入先への小さな発注に連なる仕入先の発注の締切が基準になる問い合わせ締切が無いと「今日出せますか」の確認が注文ごとに来る締切を決めて伝えると、この種のやり取りが減る余地がある

▼ 図の内容を文字で読む
  • 梱包・出荷
    • 注文のたびにピッキング・梱包・送り状が繰り返される
    • 注文の回数と出荷の回数がほぼ同じなら、まとめて回数を減らせる余地がある
  • 集荷や配送の手配
    • 追加の注文のたびに別の集荷か翌日回しかを判断し直す
    • 注文のたびに手配が増えているなら、集荷や配送の時刻を基準にする
  • 仕入・発注
    • 取引先の小さな注文が仕入先への小さな発注に連なる
    • 仕入先の発注の締切が基準になる
  • 問い合わせ
    • 締切が無いと「今日出せますか」の確認が注文ごとに来る
    • 締切を決めて伝えると、この種のやり取りが減る余地がある

締切は何を基準に決めるか:出荷便・仕入の発注時刻・作業の区切り

最も動かしにくい後工程から逆算する

受注の締切は、注文を受け付けたあとに続く作業のうち、自社の都合で時刻を動かしにくいものから逆算して置きます。
候補になるのは主に3つです。

  • 出荷便の時刻:運送会社の集荷が来る時刻、営業所への持ち込みの受付時刻、自社便が出発する時刻
  • 仕入の発注時刻:仕入先が当日分・翌日分の注文を受け付ける締切
  • 作業の区切り:担当者の勤務時間、他の業務との切り替え、梱包場所が空く時間帯

このうち自社だけで決められるのは作業の区切りで、出荷便と仕入の時刻は相手の都合で決まります。
動かせない側の時刻を基準にし、作業の区切りはそれに合わせて組み直す、という順で考えると無理がありません。

逆算の手順は単純です。
基準の時刻から、締切までに入った注文をまとめてピッキング・梱包する時間を差し引き、さらに検品や急な電話に備える余裕を差し引いた時刻が、受注の締切になります。
梱包にかかる時間は日によって違うので、注文が多い日に合わせて見積もっておくと、締切直前に注文が集中した日でも便に乗せられます。
反対に、注文の少ない日の所要時間で締切を置くと、忙しい日に便へ間に合わず、結局その日のうちに別の手配が必要になります。

仕入が必要な商品では、基準が仕入先の締切に移ります。
仕入先の発注締切までに自社の注文をまとめて送る必要があるため、取引先からの受注締切は、仕入先の締切からさらに集計と発注の作業時間を差し引いた時刻になります。
仕入れた品が届いてから出荷する流れなら、取引先への締切は出荷日の前日以前に置くことになり、在庫品と同じ締切では間に合いません。
在庫品と取り寄せ品の両方を扱っているなら、締切を商品の区分で分けるかどうかが、次の節で本数を考えるときの論点になります。

公的資料に見る締切早期化の考え方

公的資料が示している改善の方向は、締切の具体的な時刻よりも、発注から納品までの時間を確保するという考え方です。
先に挙げた国土交通省の報道発表は、リードタイムの確保によって効率的な配車や積載率の向上を図ることを方策に挙げています2。
リードタイムとは、注文を受けてから納品するまでの時間のことです。
この報道発表のページは受注締切の時刻には触れていませんが、注文の時点を前に置いて後工程に時間を渡すという発想は、締切を逆算で置く考え方と同じ向きにあります。

締切を前倒しした業界の例としては、加工食品の小売・卸・製造の5団体による会議が、卸売業者からメーカーへの発注を納品日の前々日の午後1時までとする行動指針を定めたと、2023年に報じられています4。
これは報道を通じて伝えられた内容で、大規模な業界取引の中でも、卸からメーカーへの発注に限った取り決めです。
小規模事業者が取引先から受ける注文の締切として、この時刻をそのまま使う根拠にはなりません。

参考になるのは時刻ではなく決め方です。
この指針は、納品日を起点にして発注の期限を前へ置いた形になっています。
自社の場合も、出荷便や仕入の時刻を起点にし、そこから自社の作業に必要な時間を確保できる位置に締切を置く、という順序は共通しています。
他社や他業界の時刻に合わせるのではなく、自社の後工程の時刻から決めるのが筋です。

出荷便の時刻から差し引いて受注の締切を置く手順
出荷便や集荷の時刻を基準に、ピッキング・梱包の時間、検品と余裕の時間を順に差し引いて受注の締切が決まる流れを示す図1出荷便・集荷の時刻2ピッキング・梱包の時間を差し引く3検品と余裕を差し引く4受注の締切

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 出荷便・集荷の時刻
    • 動かしにくい基準の時刻
    • 仕入が要る商品は仕入先の発注時刻が基準になる
  2. ピッキング・梱包の時間を差し引く
    • 注文が多い日の所要時間で見積もる
  3. 検品と余裕を差し引く
    • 急な電話や確認への備え
  4. 受注の締切
    • 差し引いた結果として決まる時刻

締切は1本か、複数の時間帯か、取引先別か

1本で足りる場合

締切の本数は、前の節で基準にした後工程がいくつあるかで決まります。
集荷や出荷便が1日1回で、仕入先への発注も1日1回にまとめられるなら、締切も1本で足ります。
1本の締切は取引先にとって覚えやすく、社内でも「この時刻までの注文は今日出す」とだけ共有すれば済むので、小規模な体制では運用しやすい形です。

注意したいのは、締切の直後に入る注文です。
締切が1本だと、それを少し過ぎた注文は次の出荷まで丸1日待つことになります。
受注の記録を見て、締切の候補時刻の直後に注文が多く入っているなら、その取引先は自社の業務の都合でその時間に発注している可能性があります。
その場合は、本数を増やす前に、梱包や余裕の見積もりを見直して締切を1本のまま少し後ろへずらせないかを検討します。

時間帯を分ける場合

集荷が午前と午後に来る、自社便を1日に2回出している、仕入先ごとに発注の締切が違う、といった場合は、後工程の時刻ごとに締切を置けます。
午前の便に乗せる注文と午後の便に乗せる注文を分ければ、締切を過ぎた注文も半日後の便に回せるので、取引先の待ち時間は短くなります。

ただし、締切が増えるほど受注をまとめる回数も増えます。
1日に締切が3本あれば、梱包と手配の区切りも3回になり、締切を設けた目的だった割り込みの削減が薄れます。
締切の数は後工程の数を上限とし、後工程が複数あっても注文量が少なければ、あえて1本にまとめる判断もあり得ます。
在庫品と取り寄せ品で基準が違う場合も同じで、取り寄せ品だけ前日の締切にするなど、商品の区分で分けるのは後工程が実際に違うときに限ります。

取引先ごとに変える場合

記録を見ると、多頻度小口の大半が特定の1社か2社から来ていることがあります。
その場合、全取引先に同じ締切を課す前に、その取引先と個別に注文の出し方を話し合うほうが、割り込みの元に直接手が届きます。
たとえば、取引先の発注担当者が在庫を見て足りないものをその都度発注しているなら、発注する曜日や時刻を決めてもらうだけで、注文の回数そのものが減ります。

取引先側にも事情があります。
荷受けできる曜日や時間帯が決まっている、店舗や現場の稼働に合わせて届けてほしい、といった条件があれば、締切だけ全社共通にしても届け先で受け取れません。
取引先別の締切は、こうした相手の受け取り条件と自社の後工程を両方満たす位置に置くことになります。

20代後半の日本人女性が倉庫事務所での受注対応をしている場面

取引先ごとに条件が違うと、現場で誰の締切が何時か分からなくなるおそれがあります。
社内の締切時刻はできるだけ共通にし、取引先ごとに変えるのは出荷日や便の割り当てにとどめると、作業の区切りは変えずに済みます。
それでも時刻を分ける場合は、取引先名・締切・出荷日・例外の連絡先を1枚の表にまとめ、受注を受ける全員が同じ表を見る形にしておきます。

締切の区切り方 基準になる後工程 合う状況 現場で増える管理
1本 1日1回の出荷便・発注 便と仕入先への発注が1日1回 締切直後の注文の待ち時間
時間帯別 複数の便・仕入先ごとの締切 集荷や自社便が1日に複数回 受注をまとめる回数が増える
取引先別 取引先の荷受け条件と自社の後工程 注文が特定の取引先に集中 取引先ごとの締切を1枚の表で管理

締切後の注文と緊急注文の扱い

翌回に回す

締切を決めても、締切後の注文は必ず来ます。
そのたびに受けるか断るかを担当者がその場で判断していると、判断のための確認や取引先とのやり取りが増え、締切を置く前と同じように作業が割り込まれます。
締切後の扱いは、締切そのものと同時に決めておく必要があります。
選び方は、翌回に回すことを基本にし、それで困る場合に条件付きの受け付けを加え、最後に緊急の例外を限定して設ける、という順で考えると整理しやすくなります。

翌回に回すとは、締切後に届いた注文を次の出荷便に乗せることです。
注文自体は受け付けるので、取引先から見ると断られたわけではなく、届く日が1回分遅れるだけです。
受け付けたときに「本日の締切後のため、次回の出荷(〇日)となります」と返す文面を決めておけば、担当者が1件ずつ判断する必要がなくなります。
注文を失うのではないかという不安に対しても、この扱いなら注文は手元に残り、変わるのは出荷のタイミングだけです。

条件付きで受ける

翌回では間に合わない注文を、条件を付けて当日に受ける方法もあります。
条件の中心は2つで、後工程に余裕があるかどうかと、当日扱いで追加の費用や作業が出るかどうかです。
集荷の前に梱包が終わっていて手が空いている日なら、追加の割り込みは小さく済みます。
一方で、繁忙日に同じことをすれば、締切までに入った他の注文の出荷が危うくなります。

追加の費用を求めるかどうかは、当日扱いで実際に何が増えるかで決めます。
別便の集荷を頼む送料、梱包のための時間外の作業、急ぎの仕入にかかる費用など、増える項目を書き出し、それを取引先に負担してもらうのか、自社で吸収するのかを決めます。
増える費用は業種や取引によって違うため、他社の金額を当てはめるより、自社で増える項目から積み上げるほうが取引先にも説明しやすくなります。
料金を取る場合は、後から請求するのではなく、事前に取引先と合意した条件として伝えておくと、のちの行き違いを防げます。

緊急のみ例外にする

それでも、取引先の現場が止まる欠品など、翌回では本当に困る注文はあります。
こうした注文を受ける例外は残しておきつつ、何を緊急とするかを先に決めて範囲を狭くします。
たとえば、取引先の稼働が止まる場合や、自社の誤出荷・欠品を補う場合に限る、といった決め方です。
自社の誤りを補う出荷は、取引先の都合による急ぎの注文とは性格が違うため、分けて扱うほうが取引先にも説明しやすくなります。

例外を受けたら、誰が受けたか、どの取引先からか、理由は何だったかを記録します。
特定の取引先の例外が続くなら、その取引先にとって締切の位置が合っていないか、相手の発注の仕方に別の事情があるかのどちらかです。
記録があれば、例外を個別に断るのではなく、締切や出荷日の見直しとしてその取引先と話し合えます。
例外を承認する人を1人に決めておくと、担当者ごとに判断が違い、取引先が受けてくれる人を選んで連絡してくる、という事態も防げます。

締切後の注文の3つの扱いと判断条件
締切後の注文を翌回に回す場合、条件付きで受ける場合、緊急のみ例外にする場合に分け、それぞれの条件と決めておくことを並べた図締切後の注文を翌回に回す場合、条件付きで受ける場合、緊急のみ例外にする場合に分け、それぞれの条件と決めておくことを並べた図翌回に回す注文は受け付け、次の出荷便に乗せる「次回の出荷(〇日)となります」と返す文面を決めておく条件付きで受ける後工程に余裕があるかどうか当日扱いで追加の費用や作業が出るかどうか緊急のみ例外にする取引先の稼働が止まる場合など、範囲を狭く決める誰が受けたか・どの取引先か・理由を記録する

▼ 図の内容を文字で読む
  • 翌回に回す
    • 注文は受け付け、次の出荷便に乗せる
    • 「次回の出荷(〇日)となります」と返す文面を決めておく
  • 条件付きで受ける
    • 後工程に余裕があるかどうか
    • 当日扱いで追加の費用や作業が出るかどうか
  • 緊急のみ例外にする
    • 取引先の稼働が止まる場合など、範囲を狭く決める
    • 誰が受けたか・どの取引先か・理由を記録する

取引先への伝え方と、法令上の注意

伝える3点:理由・開始日・例外

締切を取引先に伝えるときは、理由、開始日、例外の扱いの3点をそろえて事前に知らせます。
理由は、出荷便や仕入先への発注の時刻に合わせるためだと具体的に書きます。
締切が自社の都合だけで決めたものではなく、届く日を確実にするための区切りだと分かれば、取引先にとっても「締切までに出せばいつ届くか」が読めるという利点が見えます。

開始日は、取引先が社内の発注の流れを組み直せるだけの期間を空けて設定します。
取引先の担当者が締切を知っていても、その上司や現場が知らなければ、締切後の注文は減りません。
主要な取引先には文書やメールで送るだけでなく、電話や訪問の機会に口頭でも伝え、相手の荷受けの条件や発注のタイミングを聞いておくと、締切の位置を相手の事情とすり合わせられます。

例外の扱いには、締切後の注文がどうなるか、急ぎのときにどこへ連絡すればよいかを書きます。
例外を書かずに締切だけ伝えると、取引先は締切後の注文が受け付けられないのかと受け取り、必要以上に身構えます。
文面の例を示します。

「〇年〇月〇日より、ご注文の受付締切を〇時とさせていただきます。
当社の出荷便(仕入先への発注)の時刻に合わせ、ご注文の品を確実にお届けするためです。
締切までのご注文は〇日の出荷、締切後のご注文は次回の出荷となります。
お急ぎの場合は〇〇(担当者名・電話番号)までご連絡ください。
開始後〇か月をめどに運用を見直し、ご意見を反映いたします。」

最後の一文のように試行の期間を示しておくと、取引先は意見を言う機会があると分かり、自社も見直しの約束を持って始められます。

取適法の対象かを確かめる

取引の条件を変えるときに確かめておきたいのが取適法です。
下請法は2026年(令和8年)1月から取適法(中小受託取引適正化法)に変わり、従来の資本金の基準に加えて、従業員数の基準(製造委託等で300人、役務提供委託等で100人)が加わりました3。
中小受託事業者から価格協議を求められたのに応じない、必要な説明をしないといった一方的な代金の決定が禁止され、買いたたきや手形払等の禁止も示されています3。
この法律が対象にするのは委託事業者と中小受託事業者の間の取引で、対象になるかは取引の内容と双方の資本金や従業員数によって取引ごとに決まります。

受注側の担当者でも、この法律との関わり方は立場で変わります。
1つは、自社が買う側になる場面です。
締切に合わせるために、加工を外注している先などに自社の都合で時刻や条件を求めるときは、その取引で自社が委託事業者にあたらないかを確かめる必要があります。
対象になる取引なら、相手から価格協議を求められたときに応じて説明することが前提になります。

もう1つは、自社が売る側として、規模の大きい取引先と条件を話し合う場面です。
多頻度小口への対応にかかる費用を価格に反映したいと考えて協議を求めるとき、その取引が対象であれば、相手が協議に応じず一方的に代金を決めることは禁止されています3。
締切の導入や締切後の受け付け条件を伝えるときは、前の節で書き出した増える費用の項目を示せるようにしておくと、協議の材料になります。

公的資料から言えるのは、少量多頻度の納品とリードタイムの不足が物流の負担として課題に挙げられていること2と、取引条件を決める場面では取適法の対象かどうかを確かめる必要があることまでです。
受注の締切を設けること自体が適法か違法かを示した資料ではありません。
個別の取引が対象になるか、条件の示し方に問題がないかは、公正取引委員会の資料や専門家への相談で取引ごとに確かめます。

始めたあと、締切が合っているかを見直す

見る指標

締切は、始めた時点で正解が決まるものではなく、使いながら位置を合わせていくものです。
合っているかどうかを見る指標として、次の3つを提案します。

  • 出荷回数:1日あたり、取引先ごとに何回出荷したか
  • 時間外対応の件数:締切や便の都合で勤務時間外に梱包や手配をした件数
  • 締切後の例外の件数:条件付きの受け付けや緊急の例外として受けた件数と、その取引先

これらに一般的な目標値は無く、比べる相手は他社ではなく締切を導入する前の自社です。
導入前の数週間分を同じ方法で数えておき、導入後の数字と並べれば、出荷回数が減ったのか、時間外の対応が残っているのか、例外がどこに集まっているのかが分かります。
注文を失わないかという点は、取引先ごとの注文量を導入の前後で並べて見ると確かめられます。
出荷回数が減っても注文量が保たれていれば、注文がまとまって届くようになったと読めます。

記録の付け方は、体制の規模に合わせて軽くしておきます。
中小機構法上の定義では、小規模企業者は常時使用する従業員が商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下、工業・鉱業・運送業などで20人以下の事業者とされています1。
この定義は中小機構法上のもので、補助金などの制度ごとに定義が違う場合があります。
この規模では、受注を受ける人と梱包する人が同じこともあるため、受注表に出荷の回数と例外の印を付ける程度の記録にとどめると続けやすくなります。

見直しの時期

最初は試行期間として始め、期間の終わりに一度見直します。
期間の長さに決まりはありませんが、取引先の発注に週単位や月単位の波があるなら、その波が一巡する長さを含めておくと、たまたま注文が少ない時期だけで判断せずに済みます。

見直しでは、数字の動きから締切のどこを直すかを読み取ります。
出荷回数が減ったのに時間外対応が減らない場合は、締切から便までの時間が短すぎて、梱包が詰まっている可能性があります。
例外が特定の取引先の特定の時間帯に集まる場合は、その取引先にとって締切が早すぎるか、発注の仕方が締切に合っていないかのどちらかです。
締切後の注文が少なく、時間外対応も減っていれば、締切の位置はおおむね合っていると判断できます。

試行の結果、締切を元に戻す判断もあり得ます。
ただ、締切そのものを外す前に、時刻をずらす、本数を変える、特定の取引先だけ別の扱いにする、といった調整を先に試すほうが、減った割り込みを残したまま問題を直せます。
また、運送会社や仕入先が変わる、主要な取引先が増えるなど、基準にした後工程が変わったときは、試行期間に関係なく見直しの時期です。
締切を変えたら、取引先にも理由と開始日をそろえて改めて知らせます。

締切を試して見直す繰り返し
試行期間を始め、出荷回数や例外の件数を記録し、導入前の自社と比べて時刻や本数を調整し、取引先へ知らせて再び試行に戻る流れを示す図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 試行期間を始める
  2. 出荷回数・時間外対応・例外の件数を記録する
  3. 導入前の自社と比べる
  4. 時刻・本数・取引先別の扱いを調整する
  5. 理由と開始日を取引先へ知らせる

出荷便や仕入の時刻、取引先ごとの注文の出方が重なると、どの後工程を基準に締切を置くかを社内だけでは決めきれないことがあります。

相談では、受注から出荷までの流れのどこで割り込みが起きているかを整理し、自社の条件で締切と締切後の扱いをどう置くかを確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
締切の基準 最も動かしにくい後工程(出荷便・仕入の発注時刻)から、梱包と余裕の時間を差し引いて置く
本数 後工程の数を上限にし、注文が集中する取引先とは個別に話し合う
締切後の注文 翌回に回すを基本に、条件付きの受け付け、限定した緊急の例外の順で決める
伝え方 理由・開始日・例外の3点をそろえ、試行期間を示す
法令 取適法の対象かを、自社が委託する側か受託する側かの立場で取引ごとに確かめる
見直し 出荷回数・時間外対応・例外の件数を導入前の自社と比べる
60代前半の日本人男性が見積書の照合をしている場面

締切を始めたあとの記録の読み方や、取引先ごとに扱いを分けるかどうかは、自社の数字を前にしないと判断しにくいところです。 相談では、試行期間の記録から締切の時刻や本数のどこを直すかを確かめられます。

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よくある質問

締切を過ぎた注文を断らずに受けたい場合、どう扱いを決めればよいですか。

まず、翌回の出荷に回すことを基本の扱いにします。
注文は受け付けたまま届く日だけが次の便になるので、取引先との関係を保ちながら当日の割り込みを避けられます。
当日に出す必要がある注文だけを条件付きで受け、その条件は、後工程に余裕があるかと、別便の送料や時間外作業などの追加費用をどちらが負担するかの2点で決めます。
費用を求める場合は、事前に取引先と合意しておきます。

取引先が緊急注文を頻繁に出してくるときは、例外をどう限定すればよいですか。

緊急とみなす場面を、取引先の稼働が止まる欠品や自社の誤出荷の補填などに絞り、承認する人を1人に決めます。
受けた例外は取引先・理由・時刻を記録しておくと、特定の取引先に偏っているかが分かります。
偏りがあれば、例外を断るより、その取引先に発注の曜日や時刻を決めてもらう、取引先別の締切を設けるといった形で、注文の出し方そのものを話し合うほうが根本の対処になります。

まず試す期間と、途中で締切を戻すかどうかの判断はどうすればよいですか。

期間に決まった長さはなく、取引先の発注に週や月の波があるなら、その一巡を含む長さにします。
判断は導入前の自社の記録との比較で行い、出荷回数、時間外対応の件数、締切後の例外の件数、取引先ごとの注文量を並べます。
問題が出ても、締切を外す前に時刻・本数・取引先別の扱いを調整するほうが、減った割り込みを保ったまま直せます。

自社が仕入先や外注先に締切を求める側のときも、取適法を確認すべきですか。

確かめておくべきです。
取適法は委託事業者と中小受託事業者の取引を対象にし、2026年1月からは資本金に加えて従業員数(製造委託等で300人、役務提供委託等で100人)の基準でも対象が決まります3。
自社が委託する側になる取引が対象なら、相手から価格協議を求められたときに応じて説明することが前提になります。
締切の設定そのものの適否を示した資料ではないため、個別の取引は公正取引委員会の資料や専門家に確認します。

取引先ごとに締切が違うと、現場が混乱しませんか。

社内の締切時刻はできるだけ共通にし、取引先ごとに変えるのは出荷日や便の割り当てにとどめると、作業の区切りは変わりません。
時刻まで分ける場合は、取引先名・締切・出荷日・例外の連絡先を1枚の表にまとめ、受注を受ける全員が同じ表を見るようにします。
取引先別の締切は、注文が特定の取引先に集中している場合や、相手の荷受け条件が他と違う場合に限ると、表も短く保てます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小機構法上の中小企業・小規模企業者の定義」(2026年)
  2. 2 出典:国土交通省「洋紙・板紙分野の物流ガイドライン策定の報道発表」(2020年)
  3. 3 出典:公正取引委員会「取適法・振興法 特設ページ」(2026年)
  4. 4 出典:労働新聞社「加工食品業界の物流の行動指針に関する報道」(2023年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

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