◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 最低発注条件は数量・金額・手数料・送料のどれかを確かめ、自社の発注履歴と突き合わせてから判断する。
- 4つの案は在庫保管と資金、納期、単価、事務・送料、取引先が応じられるかの同じ軸で比べ、品目ごとに当てはめる。
- 社内でのまとめ方の見直しと取引先への相談を先に試し、残った費用を年間額で比べ、それでも許容を超える品目で仕入先を検討する。
- 規格品をそのまま買う注文は原則として取適法の対象外で、自社仕様の注文では発注側が価格協議に応じ、単価を一方的に決めない。
目次

最低発注条件を示されたら、最初に確かめること
毎週のように少しずつ頼んでいた品目について、取引先から「1回の注文はこの数量以上で」「この金額に届かない注文には手数料がかかる」と示された。
社内でも発注書の作成や受け取りの手間、送料がかさみ、まとめて頼むべきか迷っている。
そんなときは、まず示された条件が数量・金額・手数料・送料のどれなのかを確かめ、自社の直近の発注履歴と突き合わせます。
そのうえで、まとめる・受け入れる・相談する・替えるの4案を、在庫と資金、納期、単価、事務と送料、取引先が応じられるかという同じ軸で比べます。
最低発注条件を示すこと自体を禁じる規定は確認できませんが、自社仕様の品を作らせる取引なら、発注側に取適法上の価格協議などの義務がかかります。
示された条件の種類を取引先に確認する
取引先が示す条件は、まとめて「最低発注条件」と呼ばれていても、中身はいくつかに分かれます。
どれに当たるかで発注側に残る選択肢が変わるため、最初に種類を見分けます。
・最低発注数量:1回の注文で受け付ける最小の数量です。
品目ごとに決まっている場合は、その品目を多めに頼まない限り届きません。
・最低発注金額:1回の注文の合計金額の下限です。
注文全体で計算されるなら、同じ取引先の別の品目を同じ注文に載せることで届く場合があります。
・小口手数料:基準に届かない注文に上乗せされる費用です。
断られるわけではなく、費用を払えば小口のまま頼めます。
・送料条件:一定の金額や数量に届かない注文の送料を発注側が負担する、といった条件です。
これも費用の問題で、注文の回数が多いほど積み上がります。
数量や金額の条件は、「届かない注文は受けない」という形で示されることもあれば、「届かない場合は手数料がかかる」という形と組み合わされていることもあります。
前者なら注文の出し方そのものを変える必要があり、後者なら費用と手間のどちらを取るかの比較になります。
同じ言葉でも意味が違うので、文面だけで判断せず、取引先に確かめます。
もう一つ確かめたいのは、条件が設けられた背景です。
背景は取引先ごとの事情によるため、発注側が推測で決めつけると、後で相談するときに相手の困り事と合わない提案をしてしまいます。
次のような点を尋ねておくと、比較と相談の材料がそろいます。
・条件は品目ごとか、1回の注文全体で計算するか。
・基準に届かない注文は受けないのか、費用を足せば受けるのか。
・いつの注文から適用するか。
・条件を設けた理由と、取引先にとって特に負担になっている作業は何か。
・発注日や納期、受け取り方を変えれば、条件を緩められる余地はあるか。
最後の二つへの答えは、条件の緩和を相談するときの土台になります。
取引先が負担に感じている作業が分かれば、発注側が何を変えれば相手の手間が減るのかを具体的に考えられるからです。
自社の直近の発注を件数・金額・頻度で並べる
条件の中身が分かったら、次は自社側の数字をそろえます。
その取引先への発注を、直近の一定期間について一覧にします。
期間は、季節による使用量の波が分かる程度の長さがあると、条件に届かない注文が特定の時期に偏っていないかも見えます。
・発注日
・品目と数量
・注文1回あたりの金額
・送料や手数料の有無
・定期の注文か、急ぎで出した追加の注文か
一覧にすると、条件に届かない注文がどんな形で生まれているかが分かります。
たとえば、定期の注文はおおむね条件に届いているのに、欠品しかけて慌てて出した追加の注文だけが届いていない、という形なら、手を打つべきは追加の注文を減らすことです。
反対に、定期の注文そのものが毎回小さいなら、発注の間隔や品目のまとめ方を見直す話になります。
同じ「小口が多い」でも、原因が違えば打つ手も違います。
社内の作業も、同じ一覧から見積もれます。
注文が1回増えるごとに、発注書の作成、社内の承認、荷物の受け取りと検品、請求書と注文の照合といった作業が1回ずつ発生します。
まとめれば、これらの回数が減ります。
ただし、1回あたりにかかる時間や費用は会社ごとに違うので、自社の担当者の作業と実際の請求を見て数えます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 条件の種類を確かめる
- 適用範囲と理由を尋ねる
- 発注履歴を一覧にする
- 届かない注文の形を見る
4つの選択肢を同じ軸で比べる
比較の5つの軸
比べる案は次の四つです。
・まとめる:発注の回数を減らし、1回の注文を条件に届かせる。
・受け入れる:小口のまま頼み、手数料や送料などの条件をのむ。
・相談する:発注側の出し方を変える提案と引き換えに、条件の緩和を取引先と話し合う。
・替える:条件の合う別の仕入先を探す。
これらを、在庫保管と資金、納期、単価、事務・送料、取引先が応じられるか、の5つの軸で並べたのが次の表です。
金額は取引ごとに違うため、表では増えるか減るか、何で決まるかだけを示し、点数や順位は付けていません。
表で判断が分かれるのは、まとめる案と受け入れる案の間です。
まとめれば、手数料や送料として外に払う費用と、注文ごとの社内作業は減ります。
その代わり、在庫を置く場所と、先に払うお金を自社で抱えます。
受け入れれば、在庫も資金も今のままですが、毎回の注文に費用が乗り、社内の作業も減りません。
どちらが重いかは、倉庫や棚の余裕、資金繰り、その品目の使われ方で決まり、どの会社にも当てはまる正解はありません。
相談する案と替える案は、欄の多くが相手次第になっています。
結果が取引先や新しい仕入先の返事で決まるので、表だけでは評価できません。
そのため、この二つは単独で検討するより、まとめる案と受け入れる案を比べた結果を手元に持って臨む方が、話し合いで譲れる線と譲れない線がはっきりします。
品目ごとの当てはめ方
一つの取引先に複数の品目を頼んでいる場合、全部の品目に同じ案を当てはめる必要はありません。
品目ごとに、欠品したときの影響、使用量の安定、保管のしやすさ、使用期限や劣化の有無を見て分けます。
使用量が安定していて、欠品してもすぐには困らず、かさばらない品目は、まとめる案の候補です。
多めに持っても置き場や資金への影響が小さく、使い切れずに残る心配も少ないからです。
反対に、欠品すると作業や出荷が止まる品目、置き場所を取る品目、期限のある品目は、まとめると負担やリスクが大きくなります。
こうした品目は、小口のまま費用を受け入れるか、発注の出し方を変えて条件を緩めてもらう相談の対象にします。
たとえば、同じ取引先から梱包用の消耗品と、組立に使う部品を頼んでいるとします。
消耗品は使う量が読みやすく、多めに持っても困りにくい品目です。
部品は使用量が受注に左右され、多く持つと置き場と資金を取ります。
このとき、取引先の条件が注文全体の金額で計算されるなら、消耗品をまとめて注文額を満たし、部品は必要な量だけ同じ注文に載せる、という組み合わせが考えられます。
条件が品目ごとの数量なら、この方法は使えず、部品については別の案を考えることになります。
最初に条件の計算単位を尋ねておくのは、こうした組み合わせができるかどうかを知るためです。
軸ごとの重みは、会社によって、また品目によって違います。
表に点数を付けて合計しても、その重みが自社に合っていなければ判断を誤らせるだけなので、品目ごとに一番重い軸を見て決める方が実態に合います。
| 案 | 在庫保管と資金 | 納期 | 単価 | 事務・送料 | 取引先が応じられるか |
|---|---|---|---|---|---|
| まとめる | 保管量と1回の支払額が増える | 次の注文までの間隔が延びる | 条件内なら変わらない | 注文回数が減り作業と送料の回数が減る | 条件に届けば応じられる |
| 受け入れる | 今のまま | 今のまま | 手数料や送料の分だけ負担が増える | 社内の作業は減らない | 条件どおりなので応じられる |
| 相談する | 提案の内容による | 提案の内容による | 協議の結果による | 発注日を固定すれば回数が減ることもある | 取引先の事情による |
| 替える | 新しい仕入先の条件による | 切り替えの間は不安定になり得る | 新しい見積による | 切り替えの手間が一時的に増える | 新しい仕入先への確認が要る |
▼ 図の内容を文字で読む
- 使用量が安定し保管しやすい品目
- まとめる案の候補
- 定期日に集約しやすい
- 欠品すると作業や出荷が止まる品目
- 受け入れる案か相談する案
- 欠品の損失と在庫の負担を比べる
- 期限や劣化がある品目
- まとめると残った分が損失になり得る
- 小口のまま条件を相談する
発注をまとめるとき、在庫・資金・納期・欠品はどう変わるか
発注間隔と手持ち日数の見方
発注をまとめるというのは、発注と発注の間隔を延ばし、そのぶん1回に多く頼むことです。
1回の量は、次の注文の品が届くまでに使う量に、少しの余裕を足したものになります。
ここで効いてくるのが、注文してから品が届くまでの日数です。
この日数が長い品目ほど、まとめたときに持たなければならない量が増えます。
手持ち日数とは、いま持っている在庫が、普段の使い方で何日分に当たるかを表したものです。
在庫の数量を1日あたりの使用量で割れば出せます。
まとめ発注に切り替えるときは、次の順で確かめると、増える在庫と資金の大きさが見えます。
1. 品目ごとに、一定期間の使用量から1日あたりの使用量を出す。
2. いまの発注間隔と、注文から入荷までの日数を確かめる。
3. 取引先の条件を満たす1回の量が、何日分の使用量に当たるかを計算する。
4. その日数分を置く場所があるか、1回の支払いが増えても資金繰りに無理がないかを確かめる。
まとめると増えるものと減るものを並べると、次のようになります。
増えるのは、保管する量、1回あたりの支払額、そして使い切る前に仕様が変わったり劣化したりして残る在庫のおそれです。
減るのは、発注の回数、注文ごとの社内作業、送料や手数料がかかる回数です。
資金については、請求の締め日と支払日によって実際にお金が出ていく時期が変わるので、支払条件も一緒に見ます。
まとめ方には段階があり、在庫や資金への影響が小さいものから試せます。
・定期日に集約する:週や月の決まった日に、その間に必要な分をまとめて注文します。
急ぎの追加注文を減らすことが主な狙いで、1回の量がどれだけ増えるかは間隔をどこまで延ばすかで決まります。
・品目をまとめる:同じ取引先の複数の品目を、一つの注文に載せます。
条件が注文全体の金額で計算される場合に効きます。
・安全在庫を持つ:使用量の急な増加や入荷の遅れに備え、普段の使用分とは別に余分を持ちます。
欠品は防ぎやすくなりますが、在庫と資金が最も増えるので、前の二つで足りない場合に検討します。
欠品リスクの高い品目の扱い
間隔を延ばすと、次の注文までに使用量が予想より増えたとき、追いつけない期間が長くなります。
小口で頻繁に頼んでいたときは、使用量の変化に合わせて次の注文で量を調整できました。
まとめると、その調整の機会が減ります。
この変化を受け止めるのが安全在庫ですが、持てば置き場と資金を使います。
欠品すると作業や出荷が止まる品目では、まとめる案を当てはめる前に、欠品したときの損失と、在庫を持つ費用を並べてみます。
どちらが大きいかは、その品目が切れたときに何が止まるか、在庫を置く場所にどれだけ余裕があるかで決まります。
欠品の損失が大きく、在庫を増やす余地も小さい品目なら、小口のまま費用を払う方が全体として軽い場合があります。
使用期限がある品目や、近く仕様の変更が予定されている品目も、まとめると損をしやすい品目です。
使い切る前に期限が来たり、旧仕様の在庫が残ったりすれば、まとめて浮かせた送料や手数料が消えてしまいます。
こうした品目は、まとめる案に無理に乗せず、取引先との相談の対象として残しておく方が無理がありません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文する
- 入荷する
- 使いながら在庫が減る
- 次の注文で量を調整する
小口のまま続ける・条件緩和を相談するときの進め方
受注側の負担を減らす提案
小口のまま続けたいとき、取引先に「条件を下げてほしい」とだけ伝えても、相手が応じる理由はあまりありません。
取引先が条件を示したのは、小口の注文に何らかの負担を感じているからです。
そこで、発注側の出し方を変えることで、その負担を減らせないかを提案します。
最初に尋ねた、取引先が特に負担に感じている作業が、ここで役に立ちます。
・数量の見通しを共有する:今後の一定期間に頼む予定の量を、目安として伝えます。
取引先にとっては、材料の手配や作業の段取りを前もって考える材料になります。
・発注日を固定する:注文が決まった曜日や日にちに届くようにします。
受注側が注文の処理や出荷を決まった日にまとめやすくなります。
・納期に余裕を持たせる:急ぎでない注文は、納期を長めに設定します。
取引先が他の注文と合わせて作ったり出荷したりできる余地が生まれます。
・注文と納品の分け方を相談する:まとめて注文して分けて納品してもらうのか、注文は分けても出荷はまとめるのか、取引先にとって手間が少ない方を尋ねます。
見通しを伝えるときは、それが確定した注文なのか、目安なのかをはっきりさせておきます。
目安のつもりで伝えた量を取引先が確定と受け取り、材料や在庫を用意してしまうと、実際の注文が少なかったときに相手の負担が増え、関係がかえって悪くなります。
どこまでを約束し、どこからが変わり得るのかを、相談の場で言葉にしておくと行き違いが減ります。
これらの提案に取引先が応じるかどうかは、それぞれの関係と事情によります。
提案の目的は、相手の手間のどこが減るのかを示して、話し合いの材料を増やすことです。
応じてもらえなかった場合も、どの点がネックなのかが分かれば、次の案を選ぶ手掛かりになります。
自社仕様の品を作ってもらう取引では、条件の緩和と引き換えに単価の話が出たとき、発注側が額を一方的に決めると法律上の問題になり得ます。
どんな取引が対象で、発注側が何を守るのかは、次の節で整理します。
追加費用を受け入れるときの年間額の比較
相談しても条件が変わらない、あるいは欠品リスクの高い品目で小口を続けたいときは、追加の費用を受け入れる案が残ります。
受け入れる前に、その費用が何に対するものかを確かめます。
小口手数料なのか送料なのか、注文1回ごとにかかるのか品目ごとにかかるのかで、同じ注文の出し方でも年間の額が変わるからです。
比べるときは、1回あたりの費用ではなく、年間の額にそろえます。
最初に作った発注履歴から、条件に届かない注文がこの先1年でどれくらい出そうかを見込み、1回あたりの費用を掛けます。
1回ずつ見ると小さな額でも、回数が多い品目では積み上がり方が違って見えます。
この年間額を、同じ期間でまとめる案を取った場合の負担と並べます。
まとめる案の負担は、増える在庫を置く場所、先に払う資金、使い切れずに残るおそれのある在庫です。
受け入れる案では、こうした負担は増えない代わりに、注文ごとの社内作業はそのまま残ります。
両方を同じ1年という期間で見ると、どちらが自社にとって軽いのかを比べやすくなります。
受け入れる案は、取引先から見れば条件どおりの注文なので、応じてもらえないという心配はほとんどありません。
欠品の影響が大きい品目で、年間の追加費用が在庫を持つ負担より小さいなら、費用を払って小口を続けることは、消極的な妥協ではなく筋の通った選択です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 数量の見通しを共有する
- 材料の手配や段取りを前もって考えられる
- 発注日を固定する
- 注文処理と出荷を決まった日にまとめられる
- 納期に余裕を持たせる
- 他の注文と合わせて作り出荷できる
- 注文と納品の分け方を相談する
- 手間の少ない受け渡しを選べる
取適法は発注側にどう関わるか(自社仕様の注文か、規格品の購入か)
規格品の購入は対象外
取適法は、製造や加工などを他の事業者に委託する発注側を委託事業者、委託を受ける中小の事業者を中小受託事業者と位置づけ、委託事業者に禁止行為を課して中小受託事業者を守る法律です。
発注側は、この法律では守られる側ではなく、義務を守る側に立つことがあります。
最低発注条件を示された場面でこの法律が関わるのは、取引先の条件の是非ではなく、発注側の代金の決め方や協議の仕方のほうです。
まず確かめるのは、その注文がこの法律でいう「委託」に当たるかどうかです。
公正取引委員会のQ&Aによると、規格品や標準品の購入は、発注側が仕様や内容を指定していないため、原則として「委託」になりません1。
一方で、刻印やラベル貼りなど、自社仕様への加工を頼むと「委託」に当たります1。
メーカーのブランドが付いた商品でも、汎用性が高く、自社向けの変更をさせていない場合は、実質的に規格品の購入と認められるとされています1。
これを小口の発注に当てはめると、取引先のカタログにある消耗品をそのまま少しずつ買っているなら、原則としてこの法律の対象外です。
同じ取引先から似たような品を買っていても、自社のロゴを入れる、指定のラベルを貼る、寸法や材質を指定して作ってもらう、といった注文なら対象になり得ます。
一つの取引先との間でも品目によって扱いが分かれる点は、品目ごとに案を分ける考え方と同じです。
自社仕様の注文での価格協議と見積
対象となる取引では、委託事業者に禁止行為が定められています。
小口の発注や最低発注条件の場面で関わりやすいのは、買いたたきと、協議に応じない一方的な代金決定です2。
買いたたきとは、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることを指します2。
たとえば、自社のロゴ入り梱包材を少量ずつ作ってもらっている取引先から、最低発注数量を設けるか、小口の注文は単価を上げたいという相談を受けたとします。
このとき、価格協議を求められたのに応じず、自社で妥当と判断した上昇分だけで代金を決めると、協議に応じない一方的な代金決定に該当するおそれがあるとされています1。
引き上げの要請を受け入れない場合でも、協議したうえで、その理由や根拠を十分に説明する必要があります1。
相談を受けたら、まず話し合いの場を持ち、受け入れるか断るかにかかわらず、判断の根拠を相手に伝えることになります。
逆向きの場面にも注意が要ります。
発注側が「小口のまま、手数料なしで、この単価で」と条件を示す場合です。
Q&Aは、十分な協議なく単価を一方的に指定する指値、すべての発注を一律の比率で引き下げた単価、見積の提出後に作業が増えたのに当初の見積単価のまま発注することを、買いたたきに該当するおそれがある例として挙げています1。
これらは小口の注文そのものを扱った例ではありませんが、単価を発注側だけで決めず、取引先と協議して決めるという点は、この場面にもそのまま通じます。
取引先が「その単価で構いません」と言っていれば問題ない、とは限りません。
中小受託事業者の了解があっても、委託事業者に違法性の認識がなくても、規定に触れれば違反になります2。
相手の同意だけで安心せず、協議の内容と額を決めた理由を記録に残しておくのが、実務上の備えになります。
支払いの面では、手形払いなどの禁止や、振込手数料を中小受託事業者に負担させることの禁止も定められています3。
小口の注文が多いと請求と支払いの回数も増えるため、対象となる取引では、支払方法や手数料の扱いを契約の段階で確かめておきます。
なお、公正取引委員会の禁止行為の説明やQ&Aには、最低発注数量や少量の発注、短納期の発注そのものを扱った項目はありません12。
最低発注条件の提示や小口の発注自体を禁じる規定は、これらの資料からは確認できません。
この場面で発注側が気をつけるのは、対象となる取引で代金をどう決め、どう協議するかです。
従業員基準の追加
対象になるかどうかは、取引の種類だけでなく、委託事業者と中小受託事業者それぞれの規模でも決まります。
規模の基準は資本金で定められていましたが、改正で従業員数の基準が加わりました。
公正取引委員会の特設ページでは、製造委託等は従業員300人、役務提供委託等は従業員100人が基準とされています3。
資本金の基準に当てはまらない場合でも、従業員数で対象になることがあります3。
以前は資本金の区分を見て対象外だと整理していた取引先でも、従業員数で見直すと対象に入る可能性があります。
自社仕様の品を頼んでいる取引先があるなら、取引の種類と双方の規模の両方で、いまの整理が合っているかを確かめ直す価値があります。
資本金の具体的な区分や、個別の取引が対象かどうかの判断は、公正取引委員会の資料を確かめたうえで、迷う場合は公正取引委員会や中小企業庁に問い合わせるのが確実です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 規格品や標準品をそのまま買う注文か
- 刻印やラベル貼りなど自社仕様を指定する注文か
- 取引の種類と資本金または従業員数の基準に当てはまるか
- 対象なら価格協議、単価の決め方、支払条件を守る
出典:公正取引委員会「取適法よくある質問(Q&A)」「取適法とは(禁止行為のページ)」「取適法特設ページ」
別の仕入先に替える判断と、最初に試す順番
替える前の確認項目
まとめる案と相談する案を試しても、年間の追加費用や欠品のリスクが自社で許せる範囲を超えるなら、別の仕入先を検討します。
替える案は、条件が合えば問題を根本から解消できる一方、切り替えの手間と、新しい取引先の対応力がまだ分からないというリスクを伴います。
・最低条件:新しい仕入先にも、最低発注数量や金額、小口手数料などの条件があるか。
・送料:どの注文で送料がかかり、誰が負担するか。
・納期:注文から届くまでの日数と、急ぎの注文への対応。
・品質の確認方法:見本や試作で確かめられるか、受け入れ時にどんな検品をするか。
・切り替え期間:今の取引先からの購入をいつまで続け、どの時点で新しい先に移すか。
最低条件と送料は、今の取引先で問題になったことそのものなので、最初に確かめます。
新しい先でも同じような条件が付くなら、替えても状況は変わりません。
小口の注文への対応は仕入先ごとに違うため、自社の発注履歴を見せて、その頻度と量で受けてもらえるかを具体的に尋ねるのが確実です。
自社仕様の品であれば、品質の確認と切り替え期間に特に時間がかかります。
試作や検品の基準をそろえる間は、今の取引先からの購入を続け、在庫が途切れないようにします。
また、新しい仕入先との取引も、委託に当たり規模の基準に当てはまれば取適法の対象になり得るので、前の節で確かめた点は新しい取引にもそのまま当てはまります。
試す順番の決め方
ここまでの四つの案は、どれか一つを選ぶものというより、順番に試していくものです。
自社の発注量、頻度、欠品のリスクを踏まえると、次の順番が無理の少ない進め方になります。
1. 社内でできるまとめ方から始める:急ぎの追加注文を減らし、発注日を決めて集約する。
2. 並行して取引先に相談する:取引先の負担を減らす提案を出し、条件の緩和を話し合う。
3. 残った費用を年間額で比べる:条件が変わらなかった品目について、受け入れる案とまとめる案の負担を同じ期間で並べる。
4. それでも許容を超える品目について、別の仕入先を検討する。
この順番にしているのは、自社だけで始められるものから、取引先との関係を大きく変えるものへと進むためです。
まとめ方の見直しは、取引先の返事を待たずに始められます。
相談は、最初に尋ねた条件の理由や取引先の負担を受けて、そのまま進められます。
替える案は手間とリスクが最も大きいので、ほかの案で解決しなかった品目に絞って検討します。
ただし、品目によって順番は前後します。
欠品すると作業や出荷が止まる品目では、まとめ方を試している間に欠品しては元も子もないので、相談の結果が出るまでは費用を受け入れて小口を続ける方が安全です。
反対に、使用量が安定していて保管しやすい品目は、まとめる案だけで条件に届き、相談の必要がないこともあります。
どの段階でも、取引先とのやり取りは記録に残しておきます。
何を提案し、取引先が何を理由に応じたのか、あるいは応じなかったのかが残っていれば、次に条件が変わったときや担当者が替わったときにも、同じ話をいちから繰り返さずに済みます。
自社仕様の品の取引では、協議を経て額を決めたことを後から確かめられる材料にもなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 社内でまとめ方を変える
- 取引先に負担を減らす提案をする
- 残った費用を年間額で比べる
- 許容を超える品目で仕入先を検討する
条件の種類と自社の発注履歴を突き合わせ、品目ごとにどの案を当てはめるかは、社内の数字を並べただけでは決めきれないことがあります。
相談では、自社の発注履歴を基に、まとめる品目と小口を続ける品目をどう分けるか、取引先に何を尋ねるかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に確かめること | 条件が数量・金額・手数料・送料のどれか、計算単位と適用時期、取引先の負担 |
| 自社の数字 | 発注履歴を日付・品目・金額・送料・定期か追加かで並べる |
| まとめる案が向く品目 | 使用量が安定し、保管しやすく、欠品してもすぐには困らない |
| 受け入れる案が向く品目 | 欠品の影響が大きく、年間の追加費用が在庫を持つ負担より小さい |
| 相談の材料 | 数量の見通しの共有、発注日の固定、納期の余裕、注文と納品の分け方 |
| 取適法の確認 | 規格品の購入は原則対象外。自社仕様の注文は取引の種類と規模で判断し、価格協議に応じる |
| 替える前の確認 | 最低条件、送料、納期、品質の確認方法、切り替え期間 |
取引先との相談や仕入先の切り替えは、品目ごとの費用の比較と取引の記録がそろってはじめて進めやすくなります。 相談では、残った費用の年間比較の組み立て方や、切り替えの際に確かめる項目を自社の取引に当てはめて確認できます。取適法の個別の適用判断は、公正取引委員会や中小企業庁への確認をおすすめします。
よくある質問
最低発注数量に届かない注文は、取引先に断られても仕方ないのか。
最低発注数量は、取引先が示す取引条件の一つです。
公正取引委員会の取適法の禁止行為の説明やQ&Aには、最低発注数量の設定や、それに届かない注文を受けないことを扱った項目はありません12。
断られた場合は、基準に届かない注文を一切受けないのか、費用を足せば受けるのかをまず確かめ、発注日の固定や品目のまとめ方など、発注側から変えられることを示して相談するのが現実的です。
自社で定期発注日を決めると、取引先は小口対応をしやすくなるのか。
注文が決まった日に届けば、取引先は処理や出荷の段取りを前もって考えられるようになります。
ただ、それで小口の注文を受けやすくなるかは、取引先が何に負担を感じているかによります。
発注日の固定は注文や出荷の回数に関わる負担に向いた提案で、1回ごとの作業量そのものが負担なら別の提案が必要です。
提案する前に、取引先にとってどの作業が重いのかを尋ねておくと、的外れな提案を避けられます。
取適法の対象になるかどうかは、何を見て判断するのか。
取引の種類と、双方の規模の二つで判断します。
取引の種類では、規格品や標準品をそのまま買う注文は原則として「委託」に当たらず、刻印やラベル貼りなど自社仕様への加工を頼むと「委託」に当たります1。
規模では、資本金の基準に加えて従業員数の基準があり、製造委託等は300人、役務提供委託等は100人が基準とされています3。
個別の取引が当てはまるか迷うときは、公正取引委員会や中小企業庁に確認してください。
価格の相談を受けたとき、発注側が最低限しておくべきことは何か。
対象となる取引では、相談に応じて協議することです。
協議に応じずに自社で妥当と判断した額だけで代金を決めると、一方的な代金決定に該当するおそれがあります1。
引き上げを受け入れない場合も、理由と根拠を十分に説明する必要があります1。
協議の日付、取引先の説明、自社の判断の理由を記録しておくと、後から経緯を確かめられます。
小口の自社仕様の注文で、見積時より少ない量を発注するときに注意することは何か。
見積は、ある数量や納期を前提に出されていることがあります。
その前提と違う量で発注するなら、見積の前提を取引先と確かめ、必要なら見積を出し直してもらい、協議したうえで単価を決めるのが安全です。
公正取引委員会のQ&Aは、見積の提出後に作業が増えたのに当初の見積単価のまま発注することや、十分な協議なく単価を一方的に指定することを、買いたたきに該当するおそれがある例として挙げています1。
数量が減る場合をそのまま扱った例ではありませんが、前提が変わったときに発注側だけで単価を決めないという点は共通しています。
画像の出典元
- Two workers manage inventory in a spacious warehouse aisle./Photo by Tiger Lily on Pexels