◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 月額は取引先数と受発注件数、機能範囲、導入形態の3つで動き、そこに自社が受注側か発注側かという立場が加わって決まる。
- 一社の価格表を相場として扱わず、初期に一度だけ発生する費用、毎月の基本料、使った量に応じた費用に分けて、何に対する金額かで比べる。
- 受注側は共通EDI標準に対応した仕組みなら大きな費用はかからないとされる一方、届いた注文を自社システムへ取り込む手間が人件費として残る。
- 発注側は取引先にアカウントを無償発行するクラウド型なら補助率2/3以内・上限350万円のインボイス枠(電子取引類型)の対象になりうるが、受注側が単独で申請する形にはならない。
- 制度上の中小企業者かどうかは業種別の基準で決まり、従業員数では小売業50人以下、卸売業・サービス業100人以下、製造業その他300人以下が目安となる。
目次

インターネット受発注システムの月額費用は何で決まるのか
取引先から「来期から受発注はシステム経由で」と言われ、見積もりを取ろうとして手が止まる。
そんな場面でまず知りたいのは金額ですが、同じ「インターネット受発注システム」でも、月額は取引先数と受発注件数、在庫連携や請求書発行まで含めるかという機能範囲、そしてクラウドで相手と画面を共有する形か個別に接続する形かという導入形態で変わります。
さらに、取引先の要請で使う受注側なのか、自社で選んで取引先に配る発注側なのかという立場によって、費用が誰にどの形で乗るかが変わります。
金額を聞く前に、自社がどちらの立場で、何社と何件やり取りしているかを数えておくと、出てきた見積もりの高い安いを自分の基準で判断できます。
「月額いくら」と一言で答えられない理由
受発注システムの月額は、電気料金のように単価と使用量だけで決まるものではありません。
同じ機能名が並んでいても、何社とつなぐか、どこまで自動で動かすか、相手側の環境にどこまで合わせるかで構成が変わり、その構成の差がそのまま金額の差になります。
「相場はいくらですか」という問いに意味のある答えが返ってこないのは、条件がそろっていないからです。
一社の価格表を見て、これが相場だと考えると判断を誤りやすくなります。
価格表の金額は、そのサービスが想定している取引規模と機能の組み合わせに対する金額であり、取引先が3社の会社と80社の会社では、同じサービスでも請求額が変わります。
見積もりを比べるときに必要なのは、金額の大小より、その金額が何に対する金額かを分解して読むことです。
費用を「何に払うのか」で分けて考える
見積もりを読むときは、金額を対価の性質で分けると比較しやすくなります。
多くの場合、費用は最初に一度だけ発生するもの(初期設定や導入支援)、使い続ける限り毎月発生するもの(基本料や利用アカウント分)、使った量に応じて増減するもの(取引件数やデータ量)に分かれます。
この三つのうちどれが自社の負担の中心になるかは、取引の形によって変わります。
取引先が少なく、毎月の受発注件数も安定している場合、費用の中心は基本料になります。
逆に繁忙期と閑散期で件数が大きく動く商売なら、量に応じて増える部分の単価と、そこに上限があるかどうかが月額の実感を左右します。
同じ「◯◯円から」という下限の表記でも、前者は実際にその金額で収まりやすく、後者は忙しい月に膨らむ、という違いが生まれます。
もう一点、見積書に現れにくい費用があります。
切り替えの期間中に紙やFAXの受付を残す場合、システムの月額と従来の運用が同時に走るため、その期間だけ費用は二重になります。
この期間をどれくらい見込むかは自社で決められる部分であり、月額を判断するときの前提として先に置いておくと、後から想定外が出にくくなります。
費用を左右する3つの軸:取引先数・機能範囲・導入形態
取引先数・受発注件数で変わる部分
取引先の数は、二つの経路で費用に効いてきます。
一つは、相手ごとにアカウントや接続先を用意する分の費用です。
もう一つは、相手ごとに違う注文書式や商品コードをそろえる手間で、これは初期の設定作業として現れることもあれば、追加の開発費として見積もりに載ることもあります。
受発注件数のほうは、明細行数やデータ量として課金に関わることがあります。
ここで確かめておきたいのは、自社の件数が月あたり何件かだけでなく、どの月に偏るかです。
年末や期末に注文が集中する商材なら、平均件数で組んだ見積もりが繁忙期に合わなくなります。
数え方も先に決めておく必要があります。
一枚の注文書に10品目が並んでいるとき、それを1件と数えるのか10件と数えるのかで、同じ業務量でも見積もりは変わります。
提案を比べるときにこの単位がそろっているかを見ると、金額差がサービスの差なのか数え方の差なのかが分かります。
機能範囲(在庫連携・請求書発行等)で変わる部分
二つ目の軸は、受発注そのものの前後にどこまで踏み込むかです。
注文を受けて画面に表示するだけなら構成は単純ですが、在庫数を引き当てて欠品を知らせる、納期回答を返す、締め日に請求書を作るところまで含めると、必要な機能も連携先も増えます。
機能が増えれば月額が上がるのは当然として、増えた分だけ設定と検証の手間も初期にかかります。
ここで見落としやすいのが、データがあることと、そのデータを処理する仕組みが動いていることの違いです。
画面に在庫数の項目があっても、基幹システムの在庫と自動で突き合わせる仕組みは別に用意する構成になっている場合があります。
機能の名前だけでなく、それがどこまで自動で動き、どこから人の確認が残るのかを確かめておくと、後から追加費用が出る場面を減らせます。
機能を絞れば月額は下がりますが、その分は人の作業として残ります。
受注データを基幹システムへ手で入れ直す運用が続くなら、システムを入れたのに転記と確認の作業はそのまま、という状態になります。
月額の安さと毎月の作業時間のどちらを優先して削りたいのかは、見積もりを取る前に決めておいたほうが選びやすくなります。
クラウド共有型と個別接続型で変わる部分
三つ目は導入形態です。
取引先と同じ画面を共有し、ブラウザでログインして注文を受け渡すクラウド共有型は、双方が同じ仕組みに乗るぶん個別の開発が少なくて済みます。
一方、自社の基幹システムと取引先のシステムを直接つなぐ個別接続型は、相手の数だけ接続の設計が必要になり、費用は月額より初期と改修のほうに寄ります。
どちらが向くかは、相手が誰かで決まります。
取引先が大手で、すでに自社の仕組みを持っている場合は、相手が指定する形式に合わせる個別接続が前提になることがあります。
逆に、小規模な取引先が多く、相手にシステム投資を求めにくいなら、相手はブラウザで使うだけで済むクラウド共有型のほうが現実的です。
この選択は、後から変えにくい部分でもあります。
個別接続を積み重ねた後で共有型に移ると、作ってきた接続をもう一度設計し直すことになります。
月額を比べる前に、今後数年でつなぐ相手がどちら寄りかを見ておくと、安いほうを選んだはずが割高になる展開を避けられます。
取引先との関係(受注側か発注側か)で費用の掛かり方が変わる
取引先の要請でシステムを使う側(受注側)
同じシステムでも、自分が注文を受ける側か出す側かで、費用の話の出発点が変わります。
取引先から「このシステムで発注します」と言われた受注側は、そもそも選ぶ余地が限られます。
検討すべきは、どのサービスが安いかではなく、指定された形に合わせるために自社側で何が要るかです。
費用として現れやすいのは、指定されたシステムの利用料そのものより、その周辺です。
受け取った注文をどうやって自社の基幹システムや在庫表へ取り込むか、取引先が複数いるときに画面をいくつ開くことになるか、といった運用側の負担が人件費として残ります。
利用料だけで判断すると、導入後に安く済んだが手間は増えた、という結果になりやすいところです。
受注側の費用は、取引先との関係の話でもあります。
切り替えにかかる費用を要請された側が全部かぶるのか、発注側が何らかの形で持つのかは、要請を受けた時点で確認しておく価値があります。
発注側が費用を負担する前提で進めている場合もあり、こちらから聞かなければ分からないままになります。
自社で導入し取引先に配布する側(発注側)
発注側は逆に、選ぶ自由がある代わりに、費用を主導して負担する立場になります。
自社が使いやすいだけでは電子化は進まず、取引先が使えるかどうかが成否を決めます。
取引先に新しい費用や作業を求めれば、そのぶん切り替えは進みにくくなるため、相手側の負担をどこまで小さくできるかが設計の中心になります。
この構造があるため、発注側の費用には自社の利用料だけでなく、取引先に使ってもらうための費用が含まれます。
相手の分までアカウントを用意する、操作の説明の場を設ける、紙やFAXでの受付をしばらく併走させる、といった費用です。
これらは月額の見積書には載りませんが、切り替えが終わるまでは確実に発生します。
発注側が見落としやすいのは、取引先ごとに準備の状況が違うことです。
日常的にパソコンで受発注をしている相手もあれば、事務所のFAXが唯一の窓口という相手もあります。
全社を一斉に切り替える計画を立てると、準備の遅い相手に合わせて全体が止まるため、対象を分けて進める設計が費用の見通しにも効いてきます。

導入前に自社が中小企業に該当するかを取引規模とあわせて確認する
業種別の資本金・従業員数基準
費用の話に補助金が絡む場面では、自社が制度上の中小企業者に当たるかどうかが前提になります。
この区分は感覚ではなく業種ごとの基準で決まり、資本金基準と従業員数基準のいずれかに当てはまれば中小企業者として扱われます2。
両方を満たす必要はないため、資本金の額では外れても従業員数で該当する、という組み合わせもあります。
従業員数の基準は業種で分かれており、常時使用する従業員の数が小売業は50人以下、卸売業とサービス業は100人以下、製造業その他の業種は300人以下とされています2。
受発注システムを検討する会社は卸売や製造が中心になりやすいものの、同じ商品を扱っていても自社の業種区分がどれに当たるかで基準は変わります。
迷う場合は、決算書上の資本金額と常時使用する従業員数を並べて確認しておくと、支援制度の相談を始めるときに話が早くなります。
自社の取引先数・件数の整理
制度上の区分と並べて確認しておきたいのが、自社の取引規模です。
同じ中小企業でも、取引先が5社の会社と60社の会社では、必要な構成も月額も違います。
ここで効いてくるのは取引先の総数ではなく、電子化の対象にする取引先の数です。
全取引先のうち、毎月続けて注文が発生する相手はどれくらいか。
年に数回しか取引のない相手までアカウントを用意するのか、当面は上位の取引先だけに絞るのか。
この線引きによって、必要なアカウント数も、紙やFAXを併走させる期間の長さも変わります。
件数の数え方も、先に自社で決めておくと提案を比べやすくなります。
月間の注文書の枚数、その中の平均的な明細行数、繁忙期の最大値。
この三つを手元の伝票から拾っておけば、どの提案が自社の実態に合っているかを、金額だけでなく条件で比べられます。
電子化の最大の壁は費用負担、今も受発注の7〜8割がFAXという現実
費用負担が最多の課題という結果をどう読むか
費用の判断に迷っているのは、自社だけではありません。
東京商工会議所が会員企業1,218社を対象に2024年に実施した調査では、デジタルシフト・DXの課題として「コスト負担」を挙げた企業が31.9%で最多となりました4。
会員企業を対象にした調査であり、全国の中小企業の平均そのものを示すものではありませんが、費用が最初の関門になっている状況は広く共有されています。
この結果は、金額が高すぎるから止まっている、とだけ読むと見誤ります。
金額そのものより、その金額に見合う効果が読めないことが負担感につながっている場合があるからです。
取引先数と件数、機能範囲、導入形態を先に整理しておくと、同じ見積書でも何に対する金額かが読めるようになり、社内で説明できる材料が増えます。
FAXが残る一方で、検討そのものは進んでいる
受発注の現場では、紙とFAXが長く残ってきました。
経済産業省の委託で行われた帝国データバンクの調査を引用した2019年の報道では、日本の中小企業の7〜8割が受発注をFAXでやり取りしているとされています6。
これは2019年時点の数字であり、その後の電子化の進み方までを示すものではありませんが、FAXを前提にした業務が長く続いてきたこと自体は、今も多くの会社の実感と重なるはずです。
一方で、検討は進んでいます。
同じ東京商工会議所が2026年に1,272社を対象に実施した調査では、63.5%の企業が計画をもとにしたデジタルシフト・DXを検討または着手しており、進捗段階では「ITを活用して社内業務を効率化している」レベル3が38.1%で最多でした5。
社内の効率化まで進んだ企業が多い一方、取引先とのやり取りは相手の都合が絡むため、社外にまたがる部分が後回しになりやすいことがうかがえます。
費用をかける判断材料として、削減できる業務時間も見ておく価値があります。
中小企業庁が2016年度に12件のプロジェクトを選んで実施した中小企業共通EDIの実証事業では、受発注企業双方の業務時間が平均して51.4%削減されたと報告されています1。
これは業務時間の削減率であって、月額費用が安く済むことを示す数字ではありません。
ただ、毎月の入力や確認にかけている時間を自社の人件費に置き換えてみると、月額をどこまで許容できるかの基準を自分たちで作れます。
月額の数字そのものを先に探すより、取引先数と受発注件数、機能範囲、導入形態、そして自社が受注側か発注側かという4点を決めておくほうが、見積もりを読む力になります。
この4点目である立場の違いは、使える公的支援まで分かれる部分です。

取引先数や件数、どこまで自動で動かすかという条件は、自社の伝票と現在の業務の流れを見ながらでないと決まりにくく、条件が定まらないまま見積もりを取ると金額を比べる基準そのものができません。
現在の受発注の流れと取引先の構成を共有いただければ、どこが費用として動き、どの作業が人の手に残るのかを整理したうえで、見積もりを読む前に決めておくべき条件を一緒に洗い出せます。無料相談で要件を整理する
中小企業のDX課題で最多は「コスト負担」(31.9%):月額費用の判断を分ける4つの視点
金額の大小ではなく、見積もりを取る前に自社で数えたり決めたりできる条件の順に並べています。
- 取引先数と受発注件数:つなぐ社数と、月間の注文枚数・明細行数・繁忙期の最大値で費用が動く
- 機能範囲:在庫連携や請求書発行まで含めるか、どこから人の確認が残るかで構成が変わる
- 導入形態:クラウド共有型か個別接続型かで、初期費用と月額の配分が変わる
- 自社の立場:受注側は指定への対応と取り込みの手間、発注側は取引先分の費用と併走期間が中心になる
この4点のうち、後から変えにくく、使える公的支援も分かれるのが最後の「自社の立場」です。
受注側と発注側で、費用の掛かり方と使える支援はこう違う
| 立場 | 置かれる状況 | 費用の掛かり方 | 公的支援の当たり方 |
|---|---|---|---|
| 取引先の要請でシステムを使う側(受注側) | 取引先が指定する仕組みに合わせて注文を受ける | 指定されたサービスの利用料と、届いた注文を自社システムへ取り込む運用の手間 | 中小企業共通EDI標準に対応したプロバイダー・業務アプリを使う形なら、大きな費用はかからないとされる |
| 自社で導入し取引先へ配布する側(発注側) | 自社でシステムを選び、取引先にも使ってもらう | 自社の利用料に加え、取引先分のアカウント・説明・併走期間の費用 | インボイス制度に対応し取引先へアカウントを無償発行できるクラウド型なら、補助の対象になりうる |
指定されたシステムに合わせる受注側は、どこに費用がかかるのか
共通の標準に対応した仕組みなら、負担は小さいとされる
受注側にとって最初の心配は、取引先ごとに違うシステムを買わされるのではないか、という点です。
この点について中小企業庁は、中小企業共通EDIという標準に触れています。
取引先が同じ標準に沿った仕組みを使っている場合、受注側は同標準に対応したプロバイダーや業務アプリケーションを利用するだけで済み、大きな費用はかからないとされています1。
注意したいのは、この説明が共通EDI標準に対応している場合という条件つきである点です1。
取引先が独自の仕組みを使っていて、その形式に自社を合わせる必要があるなら、同じ話は当てはまりません。
切り替えを求められたときに最初に聞くべきなのは月額ではなく、どの標準や形式に沿った仕組みなのか、対応するサービスは複数から選べるのか、という二点です。
選べる場合と選べない場合では、その後の交渉の余地も変わります。
対応するサービスが複数あるなら、自社の基幹システムとの相性や、ほかの取引先の分もまとめて扱えるかという観点で選べます。
一社の仕組みに固定される場合は、費用そのものより、取引先が負担する範囲と自社が負担する範囲の線引きを最初に確かめておくほうが実務的です。
利用料が小さくても、自社に残る作業がある
受注側の費用は、利用料だけを見れば小さく収まることがあります。
ただし、画面に届いた注文をどうやって自社の中へ流すかは、別の問題として残ります。
注文内容を見ながら基幹システムへ入力し直す運用になれば、入力の手間と、入力ミスを確かめる作業が毎月続きます。
取引先が複数になると、この負担は掛け算で効いてきます。
A社は専用画面、B社はFAX、C社はメールに添付された表計算ファイルという状態では、受注担当者は毎朝いくつもの入口を回ることになります。
どの入口から何件来たかを突き合わせる作業も加わるため、システムを一つ増やしたのに全体の手間は減らない、という結果になりやすい構造です。
受注側が費用を判断する基準は、したがって利用料が安いかどうかではなく、届いた注文が自社の業務の流れにどこまで乗るかです。
取り込みの自動化に費用をかけるのか、当面は手入力を続けて件数の伸びを見てから判断するのか。
入口は取引先の指定で決まっているぶん、自社で選べるのはこの内側の部分になります。
取引先に配る発注側は、補助金の条件が費用設計を左右する
補助の対象になるのは「取引先に無償で使わせる」形
発注側が自社で選んだシステムを取引先にも使ってもらう場合、費用の一部を補助金でまかなえる可能性があります。
デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(電子取引類型)は、発注者側の事業者が取引先の中小企業・小規模事業者等にITツールを供与する場合を対象としており、対象となるのは受発注機能を持つクラウド型ソフトウェアで、インボイス制度に対応し、発注側が受注側事業者にアカウントを無償発行して利用させる機能を持つものに限られます3。
この条件は、費用の設計そのものに影響します。
取引先に利用料を負担してもらう前提の構成では、この枠の要件に当てはまりません。
裏を返せば、取引先の負担をゼロにする設計が制度の側から求められているため、切り替えを進めやすい形と補助の条件が同じ方向を向いていることになります。
対象が発注側である点も押さえておく必要があります。
この枠は発注側が取引先へツールを供与する場合を対象とするため、取引先から指定されて使うだけの受注側が単独で申請する形にはなりません3。
受注側の立場で費用の支援を探している場合は、この枠とは別の制度を当たることになります。
補助率2/3以内・上限350万円をどう読むか
補助の規模は、中小企業・小規模事業者等の場合で補助率2/3以内、補助上限額は下限なし〜350万円以下とされています3。
補助率が2/3以内ということは、少なくとも3分の1は自社が負担する前提です。
上限額に近づくほど自社側の支出も大きくなるため、上限いっぱいまで使えるかではなく、自社が出せる3分の1がいくらかから逆算するほうが現実的です。
もう一つ押さえたいのは、補助されるのは公募要領で定められた対象の経費であって、システムに関わる支出のすべてではないという点です。
対象となるツールと経費の区分に沿って申請することになるため、社内の運用設計や、取引先への説明にかかる自社側の人件費まで同じように扱われるとは限りません。
申請を前提に計画を組むときは、補助の対象になる部分と持ち出しで負担する部分を分けて見積もっておくと、採択された後の資金繰りが読めます。
制度は年度ごとに枠や要件が見直されます。
ここで挙げた補助率と上限額は2026年度の公募要領に基づくものです3。
導入時期が翌年度にまたがりそうな場合は、申請の締切と導入スケジュールの関係を先に確認しておくと、要件の変更に振り回されずに済みます。
補助が終わった後に残る月額で判断する
補助金は導入時の負担を軽くしますが、毎月の利用料がなくなるわけではありません。
取引先の分までアカウントを持つ構成なら、取引先が増えるほど月額も伸びていきます。
判断の基準にすべきなのは補助を受けた初年度ではなく、補助がない状態で払い続けられるかどうかです。
ここで効いてくるのが、取引先数と機能範囲の整理です。
最初から全取引先を対象にすると月額は一気に上がりますが、注文件数の多い相手から始めれば、効果を確かめながら範囲を広げられます。
ただし段階的に進める場合、切り替えの済んだ相手と紙のままの相手が並ぶ期間が生まれ、その間は受注側と同じように二つの入口を管理することになります。
発注側の費用を考えるときは、この併走期間の長さも見積もりに入れておく必要があります。
併走が長引くほど、システムの月額と従来の運用にかかる費用を二重に払う期間が伸びます。
いつまでに何社を切り替えるかを取引先ごとに置き、そこから逆算してアカウント数を段階的に増やすほうが、月額の立ち上がりを抑えられます。
| 確認する点 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる事業者 | 取引先の中小企業・小規模事業者等にITツールを供与する発注者側 |
| 対象となるツール | 受発注機能を持つクラウド型ソフトウェアで、インボイス制度に対応したもの |
| 必要な機能 | 発注側が受注側事業者にアカウントを無償発行して利用させられること |
| 補助率 | 中小企業・小規模事業者等は2/3以内 |
| 補助上限額 | 下限なし〜350万円以下 |

要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 取引先数・受発注件数 | 電子化の対象にする取引先を数え、月間の注文枚数・平均明細行数・繁忙期の最大値を把握する |
| 機能範囲 | 在庫連携や請求書発行まで含めるか、どこから人の確認が残るかで構成と月額が変わる |
| 導入形態 | 取引先がブラウザで使うクラウド共有型か、相手ごとにつなぐ個別接続型かで、初期費用と月額の配分が変わる |
| 自社の立場 | 受注側は指定への対応と取り込みの手間、発注側は取引先分の費用と併走期間が中心になる |
| 公的支援の当たり方 | 発注側が取引先にアカウントを無償発行するクラウド型は補助の対象になりうる。受注側が単独で申請する形にはならない |
受注側として指定に合わせる場合も、発注側として取引先に配る場合も、月額の外側に残る運用の負担は自社の業務の組み方と切り替えの進め方で変わります。 自社の立場と取引先の状況をお聞かせいただければ、切り替えに必要な併走期間の見込みや、社内に残る確認作業の範囲を含めて、費用を判断するための条件を具体的にできます。
よくある質問
受発注システムを使わないと、取引先との契約継続にどう影響しますか
取引条件は個別の契約で決まるため、切り替えないと必ず取引が終わる、とは言えません。
ただ、発注側が電子化を進める背景には自社の発注業務を紙から切り離したいという事情があり、紙やFAXでの受付だけが残ると、その相手のためだけに例外の運用を続けることになります。
まず確認したいのは、要請が「いつまでに」「どの範囲の取引で」求められているのか、併走の期間が設けられているのかという点です。
期限と範囲が分かれば、すぐ対応が必要な部分と、当面は現行のまま進められる部分を分けて計画できます。
個人事業主や少人数の会社でも、中小企業向けの補助金は使えますか
制度上の中小企業者の定義は「会社及び個人」を対象としており、従業員数の基準は小売業で50人以下、卸売業とサービス業で100人以下、製造業その他の業種で300人以下とされています2。
個人事業主や少人数の会社がこの定義から外れるわけではありません。
ただし、個々の補助金を使えるかどうかは規模の定義とは別に、各制度の要件で決まります。
たとえばデジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(電子取引類型)は、発注側が取引先にアカウントを無償発行して使わせる形が対象であり、規模の条件を満たしていてもこの形に当てはまらなければ対象になりません3。
取引先ごとに異なるシステムへの対応を求められた場合、費用負担はどう整理すればよいですか
この場合の費用は、それぞれの利用料の合計より、入口が増えることによる運用の負担のほうが大きくなりがちです。
整理の順番としては、まず相手ごとの要請が同じ標準に沿ったものかどうかを確かめます。
共通の標準に対応した仕組みであれば、その標準に対応したプロバイダーや業務アプリケーションを使うことで済む場合があります1。
標準がそろわない場合は、全社に同時に対応しようとせず、件数の多い相手から順に対応し、残りは現行の方法を続けるという線引きが現実的です。
あわせて、対応にかかる費用のどこまでを取引先が持つのかを、要請を受けた時点で確認しておきます。
補助金でシステムを配布した発注側と、受け取って使うだけの受注側で、その後の運用費用に違いは出ますか
違いは出ます。
補助金は導入時の費用を対象とするもので、その後の月額がなくなるわけではありません3。
発注側は取引先の分までアカウントを持つ構成になりやすく、取引先が増えるほど月額が伸び、切り替えが終わるまでは従来の運用と並走する費用も抱えます。
受注側は、対応する仕組みを使う分の負担は比較的小さく収まるとされますが1、届いた注文を自社の基幹システムへ取り込む部分が手作業で残れば、そこが毎月の人件費として効いてきます。
どちらも、見積書に載る月額の外側に費用が残る点は共通しています。
- 1 出典:中小企業庁「中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業)ミラサポplus解説」(2018年)
- 2 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小機構法上の中小企業・小規模企業者の定義」(2026年)
- 3 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(デジタル化・AI導入補助金事務局)「デジタル化・AI導入補助金 インボイス枠(電子取引類型)公募要領」(2026年度)
- 4 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果(2024年調査)」(2024年)
- 5 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果(2026年調査)」(2026年)
- 6 出典:日経クロステック(経済産業省委託・帝国データバンク調査を引用)「中小企業の8割が「ファクスで受発注」の現実、DX時代に日本の競争力が失われる」(2019年)
画像の出典元
- Spacious and bright open office area with cubicles, plants,/Photo by DOAN THANH BINH on Pexels
- Office building facade with glass windows and geometric patt/Photo by David Munoz on Pexels
- Bright and spacious office interior featuring open-plan cubi/Photo by DOAN THANH BINH on Pexels