◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 発注が止まる原因は「手順が共有されていない」「代行する権限がない」「発注先への出し方を担当者しか知らない」の3つに分けて考えると、手当てを選びやすくなります。
- 発注アプリは発注内容の共有や履歴で役立つ可能性がありますが、代理発注・権限分け・承認などの有無は製品とプランごとに提供元へ確かめます。
- 代行者・発注できる範囲・金額の上限・事後確認を先に決め、IDを貸すのではなく代行者ごとに権限を付けると、誰が発注したかを後からたどれます。
- 受付方法が違う発注先は発注先台帳にまとめ、電子化を頼むときは中小企業共通EDIのような標準に対応した手段で受け取れるかを相談材料にできます。
- 短い休みは権限、突然の欠勤は連絡経路、退職は記録と定型化を先に整え、代行者だけで発注する訓練で止まる箇所を確かめます。
目次

担当者が休んだ日、発注はどこで止まるのか
担当者が休んだ朝、在庫が減っていることは分かるのに、代わりの人は何をどれだけ、どこへ出せばよいか分からない。
そのまま発注の締め時間を過ぎてしまう。
止まる原因は、手順が共有されていない、代行する権限がない、発注先への出し方を担当者しか知らない、の3つに分けられます。
発注アプリは発注内容の共有や履歴の面で役立つ可能性があります。
ただし、誰が代行し誰が承認するか、発注先がどう受け取るかを決めておかなければ、不在の日の問題は残ります。
短い休み・突然の欠勤・退職のどれに備えるかで、ルール整備とアプリ導入のどちらを先にするかが変わります。
手順・権限・出し方の3つに分ける
仮の例で考えます。
担当者が一人で、仕入れ先3社へ週2回発注している職場です。
A社には発注アプリから、B社にはメールで発注書を、C社にはFAXで注文用紙を送っています。
担当者が急に休んだ木曜日、代わりを頼まれた同僚がまず迷うのは、今日は何をいくつ頼めばよいのか、という点です。
発注数は、在庫の残りや次の納品日、売れ行きの波を見ながら担当者が決めていました。
しかし、その判断の目安はどこにも書かれていません。
過去の発注書が棚に残っていても、なぜその数量にしたのかまでは読み取れません。
これが1つ目の「手順が共有されていない」状態です。
数量の見当がついたとしても、A社の発注アプリには担当者のIDでしか入れません。
入れたとしても、確定の操作ができる権限がない場合もあります。
これが2つ目の「代行する権限がない」状態です。
このとき、担当者に電話してパスワードを聞き出すという対応になりがちですが、その問題は権限の渡し方とあわせて後で考えます。
B社の宛先は担当者のメールソフトのアドレス帳にしか入っていません。
C社は、何時までにFAXが届けば翌日に納品されるのかを担当者しか知りません。
これが3つ目の「発注先への出し方を担当者しか知らない」状態です。
ここでは止まる原因を3つに分けて考えます。
分ける理由は、効く手当てがそれぞれ違うからです。
手順は書き残せば共有できます。
権限は、誰に何を渡すかを決めれば付与できます。
出し方は、発注先ごとの情報を集めれば引き継げます。
自分の職場で止まった場面、または止まりそうな場面を思い出し、どれに当たるかを見分けておくと、アプリで補える部分と人が決めるべき部分を混同せずに済みます。
3つは同時に起きることがあります。
その場合、どれか一つを片付けても発注は出せません。
例の職場で、手順書に発注数の目安を書き、代行者がアプリに入れるようにしても、C社のFAXの締め時間が分からなければ、C社の分だけは翌日の納品に間に合わなくなります。
どれから手を付けるかは後で考えますが、まずは3つすべてを点検の対象にしておきます。
属人化は珍しくない(経理担当者の調査から)
特定の人しか業務の進め方を知らない状態は、「属人化」と呼ばれます。
発注業務についての調査ではありませんが、MJS税経システム研究所が2024年に中小企業の経理担当者362名へ行ったWebアンケートでは、働くうえでの悩みとして最も多く挙がったのが「業務の属人化」で、50.0%でした1。
この調査の対象は経理担当者です。
そのため、発注担当者のうち何割が同じ悩みを抱えているかは、この数字からは言えません。
読み取れるのは、日々の定型業務が一人に寄ってしまう悩みが、事務の現場で広く自覚されているということです。
発注が担当者一人に頼っていると気づいたとしても、それは職場の管理が特別に甘いことの表れとは限りません。
気づいた時点で、止まる箇所を順に洗い出していけば足ります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 手順が共有されていない
- 何をいくつ頼むか決められない
- 書き残せば共有できる
- 代行する権限がない
- 発注アプリに入れない・確定できない
- 誰に何を渡すかを決めれば付与できる
- 発注先への出し方を担当者しか知らない
- 宛先・締め時間・記載事項が分からない
- 発注先ごとの情報を集めれば引き継げる
発注アプリで解決できること、先に決めておくこと
アプリに確認する6項目
発注アプリを入れたとき、3つの原因のうちまず手が届きやすいのは「手順が共有されていない」部分です。
発注内容が紙や担当者の頭の中ではなくアプリの中に残れば、代行者は前回いつ何をいくつ頼んだかを、同じ画面で見られる可能性があります。
ただし、どこまで見られるか、誰がどの操作をできるかは、製品とプランによって異なります。
そのため、機能の一覧を眺めて判断するより、不在の日に代行者がつまずく場面を質問に直し、提供元に確かめるほうが確実です。
次の6項目は、その質問の形にしたものです。
- 代理発注:担当者以外の人が、担当者の受け持つ発注先へ、自分の名前で発注を出せるか
- 権限分け:発注できる人、閲覧だけの人、承認する人を分けて設定できるか。
プランによって人数や設定の幅が変わるか - 承認:一定の金額や品目を超える発注について、確定前に別の人が承認する流れを作れるか
- 履歴:誰がいつ何を発注し、変更したかが、人ごとに残るか
- 通知:発注の確定や発注先からの返信が、担当者と代行者の両方に届くか
- 定型発注:毎回同じ品目・数量の発注を、ひな形として保存して呼び出せるか
6項目はそれぞれ別の原因に関わります。
定型発注と履歴は、1つ目の「手順」の共有に関わります。
代理発注・権限分け・承認は、2つ目の「権限」に関わります。
通知は、代行者が出した発注を担当者が後から知るための仕組みで、戻ってきた担当者との引き継ぎを支えます。
どの項目が欠けると困るかは、職場によって違います。
休みの予定が前もって分かる職場なら、代理発注と権限分けを優先して確かめることになります。
一回の発注額が大きい職場なら、承認の流れを作れるかが判断を左右します。
確かめるときは「できますか」で終わらせず、どのプランから使えるか、設定は誰が行うかまで聞いておくと、導入後に代行者の権限が付けられないという食い違いを避けやすくなります。
アプリを入れても残るもの
3つ目の「発注先への出し方」は、アプリだけでは片付かないことがあります。
アプリから出した注文を発注先がどの形で受け取れるかは、発注先側の事情で決まるからです。
例のC社がFAXでしか受け付けないなら、アプリの中に発注内容がそろっていても、誰かがFAXを送る必要があります。
もう一つ残るのが、誰が代行し、誰が承認するかという決めごとです。
アプリに権限を分ける機能があったとしても、どの人にどの権限を付けるかは職場が決めることです。
決めないまま導入すると、担当者一人だけが発注できる初期設定のまま運用が始まり、不在の日の状況は導入前と変わりません。
アプリは、決めたルールを毎回守りやすくする道具であって、ルールの代わりにはなりません。
先に代行者と権限、発注先の受け取り方を決め、それをアプリで実現できるかを確かめる順にすると、アプリを選ぶ基準もはっきりします。
▼ 図の内容を文字で読む
- 手順の共有に関わる項目
- 定型発注
- 履歴
- 権限に関わる項目
- 代理発注
- 権限分け
- 承認
- 担当者との引き継ぎを支える項目
- 通知
- アプリを入れても残るもの
- 発注先がどの形で受け取れるか
- 誰が代行し、誰が承認するか
代わりの人に何の権限を渡し、何を決めておくか
代行者・上限・承認の決め方
代行の決めごとは、長い規程にする必要はありません。
担当者が休んだ日に代行者が迷う点に、答えが出ていれば足ります。
決めておきたいのは次の4つです。
- 代行者:誰が代わりに発注するか。
その人も不在のときに誰へ回すか - 発注できる範囲:どの品目を、どの発注先へ出してよいか。
普段の定型分だけか、追加の注文も含むか - 金額の上限:一回の発注で、代行者の判断だけで出してよい金額
- 事後確認:代行者が出した発注を、誰がいつ、どの記録で確かめるか
例の職場に当てはめると、次のような形になります。
代行者は同じ部署の同僚で、その人も不在なら課長が代わる。
3社への定型分は代行者の判断で出してよい。
いつもの数量から大きく外れる追加注文や、決めた金額を超える発注は、課長の承認を取ってから出す。
担当者は戻った日に、代行者が出した発注を履歴で確かめる。
上限の金額は、普段の発注額と、誤って発注した場合に取り消しや返品で対応できる範囲を見比べて、職場で決めます。
上限を決めておくのは、代行者を守るためでもあります。
判断の目安がないまま任されると、代行者は多めに頼んで欠品を避けるか、少なめに頼んで在庫を抑えるかを一人で背負うことになります。
範囲が決まっていれば、範囲の中は迷わず出し、外れるものだけ相談すればよくなります。
事後確認を入れるのは、代行者の発注を疑うためではありません。
担当者が在庫の見通しを取り戻すためです。
戻った担当者が何を発注されたかを知らないまま次の発注をすると、同じ品を重ねて頼むおそれがあります。
アプリの通知や履歴で確かめられれば手間は小さく済みますが、メールやFAXで出した分は、送った控えをどこに残すかまで決めておく必要があります。
ID共有を避けたい理由
不在の日に一番手早いのは、担当者のIDとパスワードを代行者に教えることです。
ただ、この方法では、発注の履歴に残る名前がすべて担当者になります。
後から数量の誤りが見つかったとき、担当者本人が出したのか代行者が出したのか、履歴からは区別できません。
パスワードを知る人が増えるほど、誰が知っているのかも分からなくなります。
担当者が退職したあとにパスワードを変え忘れれば、退職した人の名前で発注できる状態が残ります。
代行者に個別のアカウントと必要な権限だけを付けておけば、代行者が出した発注は代行者の名前で残り、不要になった権限も人ごとに外せます。
これは仕組みの面から考えた提案です。
アカウントを人ごとに分けられるか、分けると料金が変わるかは製品によります。
IDの共有を認めているかどうかも、利用規約で確かめておく点です。
アカウントの数に制約があって人ごとに分けにくい場合は、代行したときに誰がいつ何を出したかを別に記録し、代行が終わったらパスワードを変えるなど、誰が発注したかを後からたどれる形を残します。

発注先がアプリに対応していない、受注方法が複数ある場合
発注先台帳をつくる
例の職場では、A社はアプリ、B社はメール、C社はFAXと、発注先ごとに受け付け方が違っていました。
担当者にとっては慣れた使い分けでも、代行者にとっては3通りの手順を一度に覚えることになります。
そこで、発注先ごとの出し方を1か所にまとめた「発注先台帳」を作っておくと、3つ目の原因に手を打てます。
台帳に書く項目は、受付方法、締め時間、宛先、必要な記載事項の4つが基本です。
締め時間は、何時までに届けば何日に納品されるかまで書いておくと、代行者がその日のうちに出すべきかを判断できます。
宛先は、メールアドレスやFAX番号に加えて、発注先側の窓口の名前と、届いたかを確かめる連絡先も添えます。
必要な記載事項は、品番の書き方や納品先の指定など、発注先から問い合わせや差し戻しを受けやすい点を中心に書きます。
電話やFAXで受発注をしていると、受け取った側で内容を経理システムへ手で転記する必要があり、それがミスや書類紛失の原因になると中小企業庁は指摘しています2。
これは企業間の受発注一般についての指摘で、不在の日の対策について述べたものではありません。
ただ、慣れない代行者が電話やFAXを使う日は、聞き間違いや送り先の誤りが入り込む余地がさらに増えます。
台帳で書式と送り先を固定しておけば、電話口で何を伝えるか、FAXに何を書くかを代行者がその場で考える部分が減ります。
台帳を作ると、アプリで済む相手と、従来の手段が残る相手が分かれて見えてきます。
アプリで済む相手は、代行者の権限さえあれば同じ画面から発注を出せます。
従来の手段が残る相手は、台帳と注文用紙のひな形を、代行者が使える場所に置いておく必要があります。
担当者の個人のメールソフトやデスクの引き出しにしかないものは、共有の場所へ移しておきます。
共通EDIという標準もある
従来の手段が残る相手とも、いずれは電子のやり取りへ移したいと考えることがあるでしょう。
そのときに壁になるのが、発注先ごとに使っている仕組みが違うことです。
企業間で受発注のデータをやり取りする仕組みはEDI(電子データ交換)と呼ばれ、中小企業庁は中小企業向けの共通の標準として「中小企業共通EDI」を紹介しています2。
この標準の仕様書では、注文のメッセージについて、間をつなぐプロバイダー(データの変換や中継を担う事業者)に全135項目への対応を求め、業務アプリには最低限13項目への対応を求めています2。
残りの項目は参考の位置づけです。
発注側は、プロバイダーが注文情報を変換するため、自社の仕組みを使い続けられます。
受注側も、標準に対応したプロバイダーや業務アプリを使えば、大きな費用はかからないとされています2。
つまり、相手と同じアプリを使わなくても、共通の標準を通して注文情報をつなぐ道があるということです。
発注先に電子化を頼むとき、「こちらのアプリに合わせてほしい」ではなく「標準に対応した手段で受け取れるか」と相談できることは、相手の負担を考えるうえでの材料になります。
ただし、この仕組みは、標準に対応したプロバイダーや業務アプリを使うことが前提です。
すべての発注先や発注アプリが対応しているわけではありません。
費用についても具体的な金額は示されておらず、大きな費用はかからないという説明にとどまります。
自社のアプリや発注先の仕組みが対応しているかはそれぞれの提供元に確かめる必要があり、電子化が進むまでの間は、台帳による運用が不在の日を支えます。
▼ 図の内容を文字で読む
- アプリで受け付ける発注先
- 代行者のアカウントと権限
- 履歴・通知で担当者へ引き継ぐ
- メールで受け付ける発注先
- 共有の場所にある宛先と発注書の書式
- 送信の控えと受信の確認先
- 電話・FAXで受け付ける発注先
- 番号・締め時間・注文用紙のひな形
- 伝える項目と控えの残し方
短期不在・突発不在・退職で、先に手を付けるのはどちらか
状況別の比較表
ここまでの3つの原因と発注先台帳を使うと、備えたい不在の種類によって、先に手を付けるものが変わります。
不在の種類ごとに、先に決めることとアプリで補える点を並べると次のようになります。
これは状況を当てはめるための整理で、どの職場にも同じ順番が当てはまるという法則ではありません。
予定された休みは、前日までに引き継ぐ時間があります。
担当者が発注数の判断を前もって済ませておくこともできるため、手順の不足は当日まで表に出にくい面があります。
代わりに表に出やすいのが権限です。
代行者がアプリに入れない、承認する人がいないといった問題は、前日に気づいても設定が間に合わないことがあります。
短い休みに備えるなら、代行者と権限、金額の上限を先に決めておく意味が大きくなります。
突然の欠勤には、引き継ぎの時間がありません。
担当者が自宅から電話で指示を出せるのか、まったく連絡がつかないのかで、対応が分かれます。
だからこそ、誰が誰に連絡し、連絡がつかなければ誰が判断するかという経路を先に決めます。
担当者が外出先からアプリを見て代行者に指示を出せるかは、アプリで補える可能性のある点です。
ただし、スマートフォンや社外からの接続を認めるかどうかは、製品の対応と職場の決まりの両方にかかわるため、導入前に両方を確かめます。
退職や、担当者一人に業務が寄っている状態は、時間をかけて解く問題です。
いなくなってから聞くことはできないので、発注数の決め方や発注先ごとの事情を記録し、毎回同じ発注は定型にしておくことが先になります。
アプリの定型発注や履歴が使えれば、記録の置き場所になります。
しかし、なぜその数量にしているのかという判断の理由は、人が書き残さない限り残りません。
履歴を残すことと、判断の目安を手順書に書くことは、分けて考えます。
どれを先にするかは、アプリを既に入れているかどうかでも変わります。
導入済みなら、まず今のアプリで代行者のアカウントを作れるか、権限を分けられるかを確かめます。
使えるなら、ルールを決めてすぐ設定へ移れます。
検討中なら、先に決めたルールを満たせるかを、製品を選ぶ基準にできます。
複数の不在に同時に備えたい場合も、自分の職場でいま起きやすい不在から着手し、残りを順に埋めていくほうが進めやすくなります。
| 不在の種類 | 先に決めること | アプリで補える点 |
|---|---|---|
| 短期の休み(予定が分かっている) | 代行者と権限・金額の上限 | 代行者ごとのアカウントと承認(提供元に確認) |
| 突然の欠勤 | 連絡経路と外出先から関われるか | 社外からの閲覧や通知(提供元に確認) |
| 退職・属人化 | 発注内容の記録と定型化 | 定型発注と過去の履歴(提供元に確認) |
導入前に確認し、導入後は担当不在でも回る運用にする
導入前の4点確認
アプリを入れる前に確かめておきたいのは、料金体系、アカウント数、初期設定、操作の習得の4点です。
不在対策の視点から見ると、それぞれ次の点で判断が分かれます。
- 料金体系:利用人数で料金が変わるのか、発注件数や発注先の数で変わるのか。
代行者のアカウントを足すと費用がどう動くか - アカウント数:プランごとの上限の中で、担当者・代行者・承認者の全員に個別のアカウントを用意できるか
- 初期設定:発注先や品目、定型発注の登録を誰が行うか。
提供元の支援はどこまで含まれるか - 操作の習得:代行者が月に数回しか触らなくても迷わない画面か。
試用の段階で代行者本人が操作できるか
料金は提供元ごとに条件が違うため、金額だけを並べても比べにくいところです。
不在に備えてアカウントを増やすと費用が変わる料金体系なら、何人分を用意するかが判断の分かれ目になります。
操作の習得は、担当者ではなく代行者に試してもらうのが要点です。
毎日使う担当者が使いやすいと感じても、たまにしか触らない代行者が迷う画面なら、不在の日には役に立ちません。
初期設定も見落としやすい点です。
発注先や品目の登録を担当者が一人で行うと、設定の中身を知っているのがまた担当者だけになります。
登録の作業に代行者も加わっておくと、どこに何が入っているかを代行者が知る機会になります。
代行者だけで発注する訓練
ルールと台帳、アプリの設定がそろったら、担当者が休む日などに合わせて、代行者だけで一度発注してみます。
担当者は横で手を貸さず、代行者が手順書と台帳だけで発注を最後まで出せるかを見ます。
確かめるのは、代行者だけで発注が完了するかどうかです。
止まった箇所は、そのまま直す場所になります。
権限が足りず確定できなかったなら、アカウントの設定を直します。
C社の締め時間が分からなかったなら、台帳を直します。
数量の判断に迷ったなら、手順書の目安を直します。
直したら次の機会にもう一度試し、止まる箇所がなくなるまで繰り返します。
手順書は、一度作って終わりにすると、発注先の変更や品目の入れ替えに追いつかなくなります。
発注のたびに、いつもと違うことをしたら手順書へ書き足すという運用にしておくと、更新の作業が一回ごとに小さく済みます。
発注先が受付方法や締め時間を変えたときは、台帳も同じタイミングで直します。
訓練をしても、不在の日に何も起きなくなるとは言い切れません。
それでも、代行者が担当者に電話で確かめる回数や、締め時間の直前に慌てて手順を探す場面は、事前に一度通しておくことで減らせます。
どこで止まるかを担当者がいるうちに知っておくことが、この訓練の目的です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 担当者が休む日に合わせて訓練日を決める
- 代行者だけで手順書と台帳を使って発注する
- 止まった箇所を書き出す
- 手順書・発注先台帳・権限の設定を直す
発注先ごとに受け付け方が違い、どこまでをアプリに任せ、どこからを代行ルールで決めるかは、社内だけでは切り分けにくいことがあります。
相談では、いまの発注の流れのどこが担当者一人に頼っているか、アプリで補える部分と人が決めておく部分の切り分けを一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 止まる原因 | 手順・権限・発注先への出し方のどれに当たるかを見分ける |
| アプリで補える点 | 発注内容の共有と履歴。代理発注・権限・承認はプランごとに提供元へ確認 |
| 人が決めること | 代行者・発注できる範囲・金額の上限・事後確認 |
| 発注先 | 受付方法・締め時間・宛先・記載事項を発注先台帳にまとめる |
| 不在の種類 | 短い休みは権限、突然の欠勤は連絡経路、退職は記録と定型化を先に |
| 定着 | 代行者だけで発注できるかを訓練で確かめ、止まった箇所を直す |

代行者の権限や発注先台帳を整えても、自社の発注先や品目に当てはめると判断に迷う点が残ることがあります。 相談では、不在の種類ごとに先に手を付ける項目と、導入前に提供元へ確かめる質問を、自社の状況に合わせて整理できます。
よくある質問
発注担当者が休むとき、代行者にIDを貸してもよいですか。
できれば避け、代行者に個別のアカウントと必要な権限を付けることをおすすめします。
IDを貸すと、履歴に残る名前がすべて担当者になり、誰が発注したかを後から区別できなくなるためです。
アカウントを人ごとに分けられるか、分けると料金が変わるかは製品によるため、提供元に確かめます。
分けられない場合は、代行の記録を別に残し、代行が終わったらパスワードを変えるなど、誰が出したかをたどれる形を残します。
発注先が電話やFAXしか受け付けない場合、不在時はどうすればよいですか。
発注先台帳に、受付方法・締め時間・宛先・必要な記載事項をまとめ、注文用紙のひな形と一緒に代行者が使える場所へ置いておきます。
電話やFAXの受発注は、受け取った側での手入力の転記がミスや書類紛失の原因になると指摘されています2。
伝える項目と書式を固定し、送った控えの残し方まで決めておくと、代行者がその場で考える部分が減ります。
突然の欠勤で、外出先からでも発注を出せる状態にするには何が要りますか。
まず、誰が誰に連絡し、連絡がつかなければ誰が判断するかという経路を決めます。
そのうえで、アプリがスマートフォンや社外からの接続に対応しているかを提供元に確かめ、職場として社外からの操作を認めるかを決めます。
製品が対応していても、職場の決まりで認めていなければ使えないため、両方をそろえる必要があります。
退職者が使っていた発注アプリのアカウントはどう扱えばよいですか。
退職が決まった段階で、そのアカウントで登録していた定型発注や発注先の情報を後任や代行者が使える状態に移し、退職後は速やかに利用を止めることをおすすめします。
パスワードを知る人が残っていると、退職した人の名前で発注できる状態が続くためです。
過去の履歴をどう残せるか、アカウントを止めても履歴を見られるかは製品によるので、提供元に確かめておきます。
手順書は誰がどの頻度で更新すればよいですか。
普段発注している担当者が、いつもと違うことをした発注のたびに書き足す運用が続けやすくなります。
まとめて年に一度直そうとすると、変更点を思い出す作業が大きくなるためです。
書き足した内容が代行者に伝わるかは、代行者だけで発注する訓練の機会に確かめます。
発注先が受付方法や締め時間を変えたときは、発注先台帳も同時に直します。
小さな会社でも代行者を二人置くべきですか。
二人置くことが必須というわけではありません。
ただ、代行者が一人だと、担当者と代行者が同じ日に不在になったときに発注が止まります。
人数が限られる職場では、代行者を一人決めたうえで、その人も不在のときに判断する人(たとえば承認を担う上司)を決めておくだけでも、止まる場面を減らせます。
- 1 出典:株式会社ミロク情報サービス MJS税経システム研究所「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」(2024年)
- 2 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)