◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 販売管理システム連携はデータ連携・機能連携・帳票連携の3種類に分かれ、更新の頻度と件数で方式を選び分けます。
- 方式はファイル連携(CSV)、API連携、EDI・連携基盤の3つで、併用する場合は同じデータを2経路で流さない設計にします。
- クラウドサービスを利用する企業は80.6%に達し、社外のサービスとつなぐ前提での設計が求められます。
- 導入は棚卸しから定着までの5段階で進み、前半の2工程は社内でしか判断できません。
- 費用は初期の4項目と運用の3項目で内訳を比べると、稼働後の負担まで見通せます。

販売管理システム連携とは
販売管理システム連携とは、受注・出荷・在庫・請求といった販売業務のデータを、会計や在庫管理、受発注の仕組みと自動でやり取りできる状態にすることです。目的は転記作業の削減だけではありません。同じ取引データを1か所で持ち、部門をまたいで同じ数字を参照できるようにする点にあります。連携の設計を誤ると、二重登録や在庫数の食い違いが日々の業務に残り続けます。まず連携という言葉が指す範囲を3つに分けて整理します。
販売管理システムが担う業務は、見積・受注・出荷指示・売上計上・請求・入金消し込みの6工程が中心です。この6工程は、前の工程の結果を次の工程が受け取る関係にあります。受注の内容が変われば出荷も請求も変わりますので、途中に人の転記が挟まると誤りがそのまま下流へ流れていきます。連携の検討は、6工程のどこで情報が止まっているかを見ることから始まります。
連携という言葉は、データ連携・機能連携・帳票連携の3種類に分けて考えると設計しやすくなります。データ連携は、受注や在庫の値そのものを渡す方式です。機能連携は在庫の引き当てや与信の判定など、処理そのものを他システムへ委ねる形を指します。帳票連携は納品書や請求書の様式を共通の書式でやり取りするもので、取引先との合意が前提になります。
連携していない状態では、同じ数字を複数の担当者が別々の画面へ入力します。入力の回数が増えるほど誤りの機会も増えますが、影響が出るのは入力した本人ではありません。出荷担当が引き当てた在庫と会計側の在庫が合わず、月次の締めで差異の原因調査に時間を取られます。欠品や過剰在庫が起きた場合も、原因が入力の遅れなのか発注の判断なのかを切り分けられません。
転記の遅れは、社外への影響としても表れます。在庫の反映が翌日以降になると、実際には売り切れている商品を在庫ありとして受け付け、後から欠品の連絡を入れる事態になります。請求データの誤りは入金の消し込みを止め、督促の要否を判断できない状態を生みます。数値の食い違いを人手で突き合わせる作業は属人化しやすく、担当者が交代したときに引き継げません。
連携先として挙がるのは、会計、在庫管理や倉庫管理、EC・受発注、顧客管理、生産管理の5領域です。どこから手を付けるかで効果の出方が変わります。取引先からの受注が電話やメールに分かれている場合は、受注の入口をそろえる作業が先に来ます。入口が定まらないまま会計側だけをつないでも、元データの誤りはそのまま残ります。
すべての項目をつなげばよいわけではありません。連携の範囲は、更新の頻度と、誤りが出たときの影響の大きさという2つの軸で決めます。日々件数が動く業務と、月次でまとめて処理する業務では、求められる仕組みが違います。次節では、連携の必要性を押し上げている外部の動きを、統計と制度の両面から整理します。
連携に着手する前に確認する優先順5点(順位根拠:着手順序の依存関係)
- 連携の対象データを、受注・出荷・在庫のデータ、請求・入金・会計、商品・取引先マスタの3区分で洗い出します。範囲を決めないまま方式を選ぶと、後から対象が膨らみます。
- 商品・取引先マスタのコード体系を統一し、どのシステムを正とするかを決めます。マスタがそろわないまま連携すると、重複と不一致がそのまま下流へ流れます。
- 業務ごとに待てる時間を定め、ファイル連携(CSV)、API連携、EDI・連携基盤のいずれを使うかを割り当てます。同じデータを2つの経路で流さないことが条件です。
- 請求データがデジタルインボイスの標準仕様の項目に対応できるかを確認します。対応の可否が、今後の改修範囲を左右します。
- エラーの検知、再送の判断、記録の残し方を決め、担当と連絡の経路を明記します。失敗時の扱いを決めずに稼働すると、人手の確認作業が残ります。
連携が求められる背景と制度の動き
販売管理システム連携が課題として挙がる背景には、社内の効率化に加えて、企業間でやり取りするデータの形が定まってきた事情があります。クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は80.6%で、これは2024年時点の企業向け調査による数値です1。この80.6%という値は、総務省が2025年に公表した令和7年版の情報通信白書へ収められたものでございます(出典:総務省『令和7年版 情報通信白書(クラウドサービスの利用状況)』2025年)。請求書についてはデジタルインボイスの標準仕様が公開され3、受発注や決済の側でも共通の書式づくりが進んでいます。社内の都合だけで様式を決められる前提は、すでに崩れています。
クラウド利用の広がりは、連携の前提を変えました。自社の建物内に置いた機器同士をつなぐ設計から、社外のサービスとインターネット越しにつなぐ設計へ移っています。先の数値は通信利用動向調査を基にしたもので、直近の調査結果も公表されています*2。その報道資料は令和7年通信利用動向調査の結果として2026年に公表されており、白書へ載った2025年公表の数値とは1年の開きがございます(出典:総務省『令和7年通信利用動向調査の結果(報道資料)』2026年)。調査の対象や方法が異なる数値どうしは単純に比べられませんので、社内の検討では同じ調査の経年変化を追うほうが判断を誤りません。
請求業務では、デジタルインボイスの標準仕様が影響します*3。この標準仕様はJP PINTと呼ばれ、デジタル庁が2026年の時点で公開している日本向けの取り決めでございます(出典:デジタル庁『JP PINT(日本のデジタルインボイス標準仕様)』2026年)。これは請求書のやり取りを、紙やPDFではなく機械が読める構造化データで進めるための取り決めです。項目の名前と並び順が定まっているため、受け取った側は内容をそのまま自社の会計へ取り込めます。販売管理側で請求データを作る場合、この項目に対応できるかどうかが今後の改修範囲を左右します。
受発注の側でも、中小企業共通EDIのように業種を越えて使える標準仕様が公開されています*5。この中小企業共通EDI標準は、つなぐITコンソーシアム(特定非営利活動法人ITコーディネータ協会)が2026年の時点で案内している仕様でございます(出典:つなぐITコンソーシアム『中小企業共通EDIとは(中小企業共通EDI標準)』2026年)。取引先ごとに異なる様式へ個別に対応してきた企業にとって、標準仕様は改修の回数を減らす手掛かりになります。ただし取引先が対応していなければ、当面は従来の様式との併存が続きます。併存を前提として、どちらの様式でも同じ内部データへ落とせる設計にしておくと、後の切り替えが軽く済みます。
決済の情報も、商流のデータとつながり始めています。振込の電文に商流の情報を添付できる仕組みが用意されており、支払いと請求の突き合わせに使えます*4。この仕組みはZEDI(全銀EDIシステム)と呼ばれ、全国銀行協会が2025年の時点で案内しております(出典:一般社団法人全国銀行協会『ZEDI(全銀EDIシステム)』2025年)。従来は振込名義と金額だけを頼りに消し込みをしていましたので、同額の請求が2件以上あると判別できませんでした。請求番号が電文に載れば、入金の消し込みを機械的に処理できる範囲が広がります。
外部の様式が定まるほど、社内側の作り込みが足かせになります。特定の取引先だけを想定した項目を販売管理システムへ直接埋め込むと、標準仕様へ寄せるときに手を入れる箇所が増えます。制度の動きは数年単位で続きますので、いま組む連携は書式の差し替えに耐える形にしておく必要があります。この観点は、次に述べる方式の選び方にも直結します。
制度の動きを自社の計画へ落とすときは、対応の期限ではなく対応の順序で考えると整理できます。国内のデジタル化の進み具合を継続して追った資料としては、IPAが2025年に公表したDX動向2025がございます(出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX動向2025』2025年)。請求、受発注、決済の3領域のうち、どれが自社の取引量に対して負担になっているかを先に見ます。取引量の多い領域から標準仕様へ寄せると、改修の効果が早く表れます。稟議の場でも、順序の根拠を示せるかどうかが説明のしやすさを分けます。
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代表的な連携方式と選び方
連携方式は、ファイル連携(CSV)、API連携、EDI・連携基盤の3つに大きく分かれます。どれが優れているという順位はなく、更新の頻度、扱う件数、相手先の対応可否という3点で選ぶ形になります。1日1回の締め処理で足りる業務にAPI連携を持ち込むと、費用と保守の負担だけが増えます。逆に在庫のように分単位で動く数値をファイル連携(CSV)で回すと、欠品の判断が遅れます。
ファイル連携(CSV)は、決められた形式の表データを出力し、相手側が取り込む方式です。仕組みが単純で、既存のシステムへ大きな追加開発をしなくても始められる場合があります。弱点は時間差と、取り込みに失敗したときの扱いです。ファイルが1本壊れると、その回の全件が止まり、どこまで取り込めたかを人が確認することになります。
API連携(システム同士が決められた手順でデータをやり取りする接続方式)は、必要なときに必要な件数だけをやり取りできます。在庫の残数照会や受注の即時登録のように、待てない処理に向く方式です。前提として、双方のシステムが接続の口を公開していることと、通信の認証や上限回数の取り決めが要ります。接続の口が用意されていない古い仕組みでは、この方式を選べません。
EDI・連携基盤は、取引先や複数システムとの間に変換の層を挟む構成です。取引先ごとに異なる様式を1か所で吸収できますので、接続先が増えるほど効果が出ます。iPaaS(複数のクラウドサービスをつなぐ連携基盤サービス)を使えば、変換の設定を画面上で組める場合もあります。中継の層が増える分、障害時にどこで止まったかを追える記録の設計が欠かせません。
以下では、3方式の向く場面、前提になる条件、留意点を並べて比べます。
3方式は排他ではありません。実務では、在庫照会だけAPI連携、日次の売上仕訳はファイル連携(CSV)、取引先との受発注はEDI・連携基盤という組み合わせが取られます。方式を混ぜる場合は、同じデータを2つの経路で流さないことが条件になります。同じ受注が2経路から入ると、後から重複を消す作業が発生します。
選び方を1つの軸に絞るなら、データが動く間隔です。数分から数時間で結果を返す必要があるならAPI連携、翌営業日でよいならファイル連携(CSV)が候補になります。取引先が複数で様式が分かれるなら、EDI・連携基盤を挟む構成が現実的でしょう。この3択を業務ごとに割り当てていくと、全体の姿が見えてきます。
方式の選定を内製で進める場合、必要な知見は3系統に分かれます。販売管理の業務知識、接続先の仕様の読み解き、そして障害時の運用設計です。この3つを1人で担える担当者は社内に置きにくく、異動があれば設計の意図が失われます。判断の根拠を文書として残せるかどうかが、方式選定の質を分けます。
| 連携方式 | 向く場面 | 前提になる条件 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| ファイル連携(CSV) | 日次や月次でまとめて渡す業務 | 出力と取込の書式を双方で固定 | 取込失敗時に全件が止まる |
| API連携 | 在庫照会など待てない処理 | 双方が接続の口と認証を用意 | 上限回数と障害時の再試行 |
| EDI・連携基盤 | 取引先や接続先が複数ある場合 | 変換の設定と記録の保管 | 中継の層が増え原因追跡が要る |
連携の対象になる業務とデータ
連携の対象は、受注・出荷・在庫のデータ、請求・入金・会計、商品・取引先マスタという3区分で捉えると漏れがありません。この3区分は更新の頻度が違います。受注は日々動き、請求は締めの周期で動き、マスタは変更の頻度が低い代わりに全体へ影響します。頻度の異なる3区分を同じ仕組みでまとめて流そうとすると、どこかに無理が出ます。
受注・出荷・在庫のデータでは、受注データの取り込みが起点になります。電話、メール、EC、EDIと入口が分かれている場合、入口ごとに項目の粒度が違います。取り込んだ後は在庫の引き当てへ進み、出荷指示へ渡す流れです。出荷実績の反映が遅れると在庫の残数が実態とずれ、次の受注判断が狂います。
請求・入金・会計では、売上の確定した受注から請求データの作成へ進みます。締め日、支払サイト、端数の処理という3点が取引先ごとに違うため、この分岐を販売管理側で持つか会計側で持つかを決めます。入金の消し込みは、請求番号が入金の情報に載っていれば機械的に処理できます。会計へ渡す段階では仕訳への変換が必要で、勘定科目の割り当て規則を事前に定めておきます。
商品・取引先マスタは、連携の土台にあたります。コード体系の統一ができていないと、同じ商品が別コードで並び、在庫も売上も分散します。更新元の一本化も欠かせません。どのシステムを正とするかを決めずに双方向で更新すると、後から入った値が正しいとは限らない状態が生まれます。マスタの整備を後回しにしたまま先へ進むと、連携した分だけ誤りが増えます。
3区分をつなぐときに詰まるのは、項目の粒度の違いです。販売管理では1件の受注に複数の明細がぶら下がりますが、会計は取引の単位で受け取ります。数量と金額のどちらを主とするか、値引きを明細で持つか合計で持つかを決めないと、金額が合いません。差異が出たときにどちらを正とするかも、あらかじめ取り決めておきます。
履歴の扱いも設計の対象です。受注の内容が変更された場合、上書きするのか、変更前の値を残すのかで、後からの照会のしやすさが変わります。マスタについても、取引先名や単価の変更が過去の伝票へ遡って反映されると、過去の売上が変わってしまいます。適用の開始時点を持たせる形にしておくと、この問題を避けられます。
どこまでを対象に含めるかは、扱う件数で判断します。件数が少なく変更も少ない項目は、当面は手入力のままでも運用が回ります。日々発生し、複数の部門が同じ値を見る項目については、早い段階で自動のやり取りへ寄せるほうが安全です。対象の線引きを文書に残すと、後から範囲が膨らむことを防げます。

連携を進める手順
連携の導入は、現行業務の棚卸し、連携要件の定義、項目マッピングの確定、検証と移行、本番稼働と定着という5段階で進みます。この順序は入れ替えられません。項目マッピングの確定を飛ばして開発に入ると、テストの段階で仕様の食い違いが噴き出します。5段階のうち、社内でしか判断できない工程が前半に集中する点も押さえておきます。
現行業務の棚卸しでは、誰がどの画面にどの順で入力しているかを、例外の処理まで含めて書き出します。標準の手順書だけを見ると、実際に回っている例外が抜け落ちます。急ぎの受注を電話で受けて後から登録する運用や、特定の取引先だけ別様式で処理している運用は、この段階で表に出しておきます。ここで出し切れなかった例外は、稼働後の手戻りとして戻ってきます。
連携要件の定義では、対象データ、更新の方向、実行の間隔、失敗時の扱いという4点を決めます。更新の方向は片方向か双方向かを明示し、双方向にする場合はどちらを正とするかを併記します。実行の間隔は、業務が待てる時間から逆算して置きます。失敗時の扱いを後回しにすると、稼働してから人手の確認作業が残ります。
項目マッピングの確定は、両システムの項目を1対1で突き合わせる作業です。桁数、必須の有無、コードの体系、日付の形式が食い違う箇所を洗い出します。片方にしかない項目は、既定値を入れるのか、変換の規則を持つのかを決めます。この表が最後まで残る資料になりますので、変更の履歴を追える形で管理します。
検証と移行では、本番に近い件数と、実務で出る例外データで試します。正常なデータだけを通しても、現場で起きるのは例外のほうです。移行の際は、切り替えの前後で二重に流れる期間を短く区切り、どちらの経路が正かを担当者が判別できるようにします。旧経路をいつ止めるかを決めずに始めると、両方が動き続けます。
本番稼働と定着の段階では、監視と問い合わせ先を先に決めます。連携が止まったことに気付くのが翌朝の締め作業のときでは遅く、失敗の通知が担当者へ届く形にしておきます。稼働の初期は件数と失敗の回数を記録し、想定と違う動きがないかを見ます。定着とは、手作業の代替経路が使われなくなった状態を指します。
5段階のうち、外部へ委託しやすいのは項目マッピングの確定より後の工程です。現行業務の棚卸しと連携要件の定義は業務の判断そのものですので、外部へ丸ごと預けると要件が実態からずれます。委託する場合も、決めた内容を自社で読める形にしておくと、稼働後の改修を引き継げます。
つまずきやすい論点と対策
連携でつまずく箇所は、マスタの不一致、エラー時の運用、権限管理とデータ保護の3つに集約されます。いずれも設計の段階では軽く見られ、稼働してから負担として表れます。とりわけエラー時の運用は、正常時の設計に比べて検討が薄くなりがちです。エラーが出ること自体は避けられませんので、出た後に誰が何をするかを先に決めておく必要があります。
マスタの不一致は、同じ取引先が別コードで登録されている状態から生まれます。統合の際は名寄せの規則を先に決め、判断が割れる組み合わせは人が確認する流れにします。自動の判定だけに任せると、別法人を同一とみなす誤りが混ざります。重複を消す作業は、過去の伝票との紐づけを保ったまま進めなければなりません。
エラー時の運用は、エラーの検知、原因の切り分け、再送の判断、記録と再発防止という順で組み立てます。エラーの検知は、失敗した件数がゼロでないことを担当者へ知らせる仕組みが土台です。原因の切り分けでは、通信の失敗なのか、データの内容の誤りなのかを分けます。通信の失敗は送り直しで解決しますが、内容の誤りは元データを直さない限り何度送っても同じ結果になります。
再送の判断で問題になるのは、二重の計上です。1回目が途中まで処理されていた場合、そのまま送ると同じ受注が2件登録されます。送信のたびに一意の番号を付け、受け取り側が同じ番号を2回処理しない仕組みにしておくと、この事故を防げます。記録と再発防止では、いつ何件が失敗し、どう復旧したかを残します。
権限管理とデータ保護の負担は、連携の口が増えるほど広がります。連携用の利用者は人の利用者と分けて作り、必要な操作だけに絞ります。人事の異動で担当が変わったときに、誰の権限で動いているか分からない接続が残ると、止めるに止められません。取引先の情報や単価は社外へ出せない値ですので、取り出せる範囲を接続ごとに定めます。
稼働から時間がたつと、件数の増加が新たな詰まりを生みます。夜間にまとめて流す設計では、件数が増えた分だけ処理の終了が遅れ、朝の業務に間に合わなくなります。処理の所要時間を記録し、目安の時間を超えたら設計を見直す段取りを決めておきましょう。仕組みを作った時点の前提は、取引の増減で変わります。
これらの論点を放置した場合の負担は、社内の作業に留まりません。誤った請求書が取引先へ届けば、訂正の連絡と再発行の手間が生じ、支払いも遅れます。在庫の誤りは、本来受けられた注文を断る結果につながります。連携の設計は、止まったときの影響から逆算して決めるほうが安全です。

費用と体制の考え方
連携の費用は、初期費用と運用費用の2つに分け、それぞれの内訳を項目の単位で見積もると比較できます。初期費用は要件定義、開発、テスト、移行の4項目、運用費用は保守、監視、改修の3項目が中心です。方式ごとの提示額だけを並べても判断はできません。稼働後に人手の作業が残るかどうかで、数年単位の負担が変わるためです。見積もりを取るときは、この7項目に沿って内訳の提示を求めると、各社の前提の違いが見えてきます。国内企業のIT投資や案件の動きは、JUASが2026年に公表した企業IT動向調査2026で継続して調べられております(出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)『企業IT動向調査2026』2026年)。
初期費用の中で見落とされやすいのは、移行とテストです。既存データを新しい形式へ移す作業は、件数よりも例外の多さで手間が決まります。取引先ごとの特例や、過去の伝票に残る旧コードの扱いは、移行の段階で判断が要ります。テストについても、正常なデータだけを通す想定で見積もると、後から追加の費用が発生します。
運用費用は、稼働してから毎年かかり続けます。接続先のサービスが仕様を変えれば、こちらの改修が必要になります。クラウドサービスを利用する企業が80.6%に達している状況では、社外のサービスの更新に自社が合わせる場面が増えます*1。同じ調査の結果は、2026年に出されたプレスリリース第2弾でも公表されております(出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)『企業IT動向調査2026』プレスリリース第2弾、2026年)。仕様の変更へ追随できる体制を、費用の前提に含めておきます。
内製と外部委託の分担は、工程で分けると整理できます。現行業務の棚卸しと連携要件の定義は社内、開発と検証は外部という分け方が現実的でしょう。社内に残す判断は、業務の例外をどう扱うかという経営に近い判断だからです。外部へ委託する場合も、成果物として設計の資料を受け取る取り決めにしておきます。
この作業を内製で完結させる場合、必要な知見は5つに分かれます。販売管理の業務知識、接続先の仕様の理解、データ変換の設計、認証や権限の設定、そして障害時の運用設計です。これらを兼ねる担当者を社内で確保できるかどうかが、内製の可否を分けます。担当が1人に集中すると、その担当者の不在時に連携が止まったままになります。
外部の支援を使う利点は、作業の肩代わりよりも、判断の材料が早くそろう点にあります。同種の接続を扱った経験があれば、詰まりやすい箇所を設計の段階で潰せます。内製の場合、詰まりに気付くのは検証の段階で、そこから設計へ戻る手戻りが生じます。リスクを小さくするために外部を使うという整理のほうが、稟議の説明にも合うのではないでしょうか。
稼働後の改善は、記録がなければ進みません。失敗の件数、処理の所要時間、手作業で補った回数という3つを残すと、次に手を入れる箇所が見えてきます。取引先の追加や制度への対応が生じたときも、記録があれば影響の範囲を短い時間で見積もれます。連携は作って終わりではなく、取引の変化に合わせて手を入れ続ける仕組みです。
よくある質問
販売管理システムがAPI連携に対応していない場合はどうすればよいですか
接続の口が用意されていない場合は、ファイル連携(CSV)や連携基盤を挟む構成が現実的です。決められた形式で出力し、相手側が取り込む方式であれば、既存システムを大きく改修せずに始められます。将来の入れ替えを見据えて、変換の規則を自社側に残しておくと、接続の方式が変わっても設計を引き継げます。
連携の検証はどこまで試せばよいですか
正常なデータだけでなく、実務で出る例外を含めて試します。値引きのある受注、取引先ごとの特例、途中で取り消された注文などが対象です。件数も本番に近い規模で通し、処理の所要時間を測っておきます。検証した内容と結果を記録に残すと、稼働後に不具合が出たときの切り分けが早くなります。
取引先ごとに帳票の様式が違う場合でも連携できますか
様式の差は、変換の層を挟むことで吸収できます。取引先ごとの様式を販売管理システムへ個別に作り込むと、取引先が増えるたびに改修が必要になります。共通の内部形式をひとつ決め、出力の直前で取引先ごとの様式へ変換する構成にすると、追加の負担を抑えられます。
連携したあとに販売管理システムを入れ替える場合、作り直しになりますか
連携の処理を販売管理システムの内部に埋め込んでいる場合は、入れ替えとともに作り直しになります。変換や振り分けを外側の層に置いていれば、接続先の設定を差し替える範囲で済むこともあります。項目マッピングの資料を維持しているかどうかも、移行の負担を左右します。
社内に専任の担当者がいなくても連携を進められますか
進められますが、社内で決めるべき判断は残ります。現行業務の棚卸しと、例外をどう扱うかの決定は、外部へ委託しても社内の確認が要ります。開発と検証を任せる場合でも、窓口となる担当者を1人決め、決定事項を文書で残す運用にしておくと、稼働後の改修を引き継げます。
- *1 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書(クラウドサービスの利用状況)」(2025) 経路
- *2 出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果(報道資料)」(2026) 経路
- *3 出典:デジタル庁「JP PINT(日本のデジタルインボイス標準仕様)」(2026) 経路
- *4 出典:一般社団法人全国銀行協会「ZEDI(全銀EDIシステム)」(2025) 経路
- *5 出典:つなぐITコンソーシアム(特定非営利活動法人ITコーディネータ協会)「中小企業共通EDIとは(中小企業共通EDI標準)」(2026) 経路
画像の出典元
- Three adults discussing documents at a car dealership beside/Photo by Vitaly Gariev on Pexels
- A smiling couple buys a new car from a confident salesman inside a modern car dealership./Photo by Vitaly Gariev on Pexels
- Buyers and sales representative shake hands at a car dealership for a successful car purchase./Photo by Vitaly Gariev on Pexels