◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 連携の基本は、受注確定で在庫を引き当て、出荷完了で在庫数を更新する流れで、同じ数字の二度打ちと台帳の照合が減ります。
- 同期がリアルタイムか一定間隔かは、在庫がズレていられる時間そのものを決めるため、販路の数と在庫の薄さを基準に選びます。
- 社内をつないでも受注の入口が電話や紙なら入力は残るため、受注手段の内訳を数えてから自動化できる範囲を見積もります。
- 初期設定で時間がかかるのは操作ではなく商品コードの統一と保管場所の定義で、開始前の棚卸を省くとズレの原因調査ができなくなります。
- 在庫ズレは前提として、販売を止める基準と手作業調整の記録を決めておくと、一人でも原因特定の時間を短くできます。
目次

二重入力に悩む一人担当へ:この記事で分かること
受注はメールやFAXで受け取って販売管理システムに入力し、そのあと在庫のExcelを開いて数を引く。
出荷したらまた別の画面を開いて記録する。
一人で回していると、この往復そのものが時間と気疲れの原因になります。
この記事では、販売管理システムと在庫管理を連携させたときに実際に減る作業と、代わりに増える設定・確認の手間を分けて説明します。
結論から言えば、受注が確定した時点で在庫が自動的に引き当てられ、出荷完了に合わせて在庫数が更新される流れができるため、同じ数字を二度入力する作業は減らせます。
ただし同期がリアルタイムか一定間隔かで在庫ズレの起きやすさは変わり、取引先や既存システムの対応状況によって連携できる範囲も変わります。
同じ注文の情報を二度打ち込むこと自体は、一件あたり数十秒から数分の作業です。
それでも負担として重く感じるのは、作業時間よりも「どちらの数字が正しいか分からない状態」が一日中続くからではないでしょうか。
販売管理システムの受注一覧には出荷待ちの注文が並び、在庫の表には昨日時点の数量が残っている。
その二つを頭の中で突き合わせながら、電話で「在庫ありますか」と聞かれて即答する。
一人担当の場合、この照合が他の仕事の合間に何度も差し込まれ、まとまった作業時間が細切れになっていきます。
まず、この記事で言う「連携」が何を指すのかをはっきりさせておきます。
販売と在庫まわりで連携と呼ばれるものには、性質の違う三つがあります。
一つ目は、社内の販売管理システムと在庫管理システムのあいだをつなぐもの。
二つ目は、自社と取引先のあいだで受発注の情報を電子データでやり取りするもの。
三つ目は、自社ECサイトやモール、店頭のレジといった販売の窓口と社内システムをつなぐものです。
本記事の中心は一つ目、つまり社内の販売管理と在庫管理をつなぐ話です。
ただ、実際に手入力がどれだけ残るかは二つ目と三つ目に大きく左右されます。
受注そのものが電話や紙で入ってくるなら、社内をいくらつないでも入口の入力はなくなりません。
そのため後半では、社内をつなぐ前に自社の受発注環境をどこまで見ておくべきかにも踏み込みます。
数字の扱いについても先に線を引いておきます。
公的な調査で確認できるのは、主に企業と企業のあいだで受発注データをやり取りした場合の効果や、その普及状況です。
社内の販売管理と在庫管理をつないだときの削減時間を測った統計は、この記事では扱いません。
したがって「導入すれば何時間減る」といった断定はせず、どの作業が仕組みとして消えるのか、どの作業が新しく発生するのかという形で説明していきます。
連携で変わること:自動化される範囲とかかる時間の目安
受注確定で在庫がどう動くか
連携の中心にあるのは「引当」という処理です。
引当とは、在庫を実際に減らすのではなく、この注文のためにこの数量を確保しておく、という印を付ける操作を指します。
倉庫の棚から商品はまだ出ていないけれど、他の注文には回せない状態にする、と考えると分かりやすいと思います。
連携した状態では、在庫の数量が三つに分かれて見えるようになります。
倉庫にある総在庫、注文のために確保済みの引当済み数量、そして新しい注文を受けられる引当可能数量です。
この三つが一つの画面で見えることが、一人担当にとっては一番大きい変化かもしれません。
電話で在庫を聞かれたときに答えるべき数は総在庫ではなく引当可能数量ですが、Excelで在庫だけを管理していると、出荷待ちの注文を思い出しながら暗算することになります。
その暗算が不要になる、というのが連携の実感しやすい効果です。
引当をどの時点で行うかは、多くの場合設定で選べます。
受注を登録した瞬間に引き当てる、出荷指示を出す段階で引き当てる、入金が確認できてから引き当てる、といった違いです。
前払いの取引が多いなら入金後の引当が安全ですし、受注即出荷で回しているなら受注時に引き当てないと売り越しが起きます。
自社の商流に合わない基準を選ぶと、連携したのに在庫が信用できないという状態になります。
在庫が足りない注文をどう扱うかも、あらかじめ決めておく必要があります。
引当できないまま受注だけが残る、一部だけ引き当てて残りを待たせる、入荷予定に対して先に引き当てる、といった選択肢が考えられます。
どれを選んでも間違いではありませんが、決めていないと「なぜこの注文だけ止まっているのか」を毎回調べることになり、一人体制では確認の負担がそのまま残ります。
出荷完了で何が更新されるか
出荷の登録は、在庫側と売上側の両方に効いてくる処理です。
出荷実績が確定すると、引き当てていた数量が解放されると同時に、総在庫そのものが減ります。
販売管理側では同じ出荷実績が売上計上や請求の元データになるため、在庫を減らす操作と売上を立てる操作が一つの記録から派生する形になります。
これが、出荷したのに在庫が減っていない、請求を出したのに出荷記録がない、といったズレの入り込む余地を狭めます。
ロットや賞味期限、シリアル番号を管理している場合は、単に数量を減らすだけでは済みません。
どのロットから何個出したかまで記録する必要があり、その指定を出荷時に行う運用が要ります。
連携によって数量の更新は自動になっても、ロットの選択という判断は人が残す部分です。
逆に言えば、ここを自動で処理してほしいなら、先入先出などの基準をシステム側が持っているかを確認する必要があります。
見落としやすいのは、入荷側も同じ構造になっているという点です。
発注を登録し、入荷予定として在庫に反映し、実際に届いた時点で入荷を計上する。
販売側だけを連携して仕入側を手作業のまま残すと、増える側の数字だけが遅れて、結局は在庫が合わなくなります。
もう一つ、契約や仕様を見るときに区別したいことがあります。
データが存在することと、そのデータを使って在庫を自動更新する処理が組まれていることは別です。
出荷の情報を販売管理システムが持っていても、それを在庫側へ渡す設定が有効になっていなければ数量は動きません。
「連携できます」という説明を受けたときは、どの伝票のどの項目が、どちらの方向に、どのタイミングで渡るのかを一つずつ言葉にして確かめておくと、あとで想定外が減ります。
リアルタイム同期と一定間隔同期の違い
連携と一口に言っても、データが届く速さには幅があります。
受注が入った瞬間に在庫側へ伝わる方式と、一定の間隔でまとめて受け渡す方式があり、後者はファイルの受け渡しや定時処理として組まれることが多い形です。
この違いは、在庫がズレていられる最大時間そのものを決めます。
一定間隔の同期では、前回の同期から次の同期までのあいだ、在庫側の数字は古いままです。
その時間内に同じ商品が別の窓口で売れると、どちらの注文も受け付けてしまい、あとで欠品の連絡をする事態が起きます。
逆に、同じ商品を一つの窓口でしか売っていないなら、多少の遅れは実害になりにくい面もあります。
どちらが自社に必要かを考えるときの材料を挙げます。
・同じ商品を複数の販路や窓口で同時に売っているか
・一商品あたりの在庫が薄く、数個の差が欠品に直結するか
・受注が特定の時間帯に集中するか、一日を通して平均的に入るか
・欠品連絡や納期変更の対応に、どれだけ手間がかかるか
リアルタイムのほうが常に優れている、と単純に言えるわけでもありません。
即時連携は仕組みが複雑になる分、片側で不具合が起きたときの影響も即座に伝わります。
一定間隔であれば、同期前に誤りに気づいて止められる場面もあります。
在庫の薄さと販路の数を基準に、どこまでの遅れなら自社の対応力で吸収できるかを先に決めておくと、方式の選択はかなり絞れます。
連携で変わる作業時間とミスの起きやすさ
作業時間がどれだけ減るかは、多くの人が最初に知りたいところだと思います。
参考になる公的な数字として、中小企業庁の実証事業では、受発注情報を電子データで連携する12のプロジェクトの平均で、中小企業の業務時間が51.4%削減されたと報告されています1。
ただしこれは平成28年度補正の実証で、対象は企業と企業のあいだの受発注データ連携です。
社内の販売管理システムと在庫管理をつないだ場合の効果をそのまま示した数字ではありません。
connectすれば半分になる、と読み替えられるものではなく、データを人が打ち直す工程を機械に渡すと業務時間が大きく動きうる、という方向性の参考値として受け取るのが妥当です。
自社で減る時間を見積もりたいなら、減るのは二種類の作業だと考えると近いところに行けます。
一つは同じ数字を別の画面に打ち直す時間、もう一つは二つの記録が合っているかを照合する時間です。
前者は受注件数に比例するので数えやすく、後者は件数よりも問い合わせの頻度や販路の数に比例します。
一人担当の場合、実は後者のほうが体感の負担として大きいことが少なくありません。
同時に、ミスの性質が変わることも押さえておきたい点です。
手作業では、一件の転記ミスが一件の誤りで止まります。
連携後は打ち間違いそのものが減る代わりに、引当基準や同期設定の誤りが、その設定が効いているすべての注文に一律で波及します。
件数が少ない代わりに範囲が広く、しかも毎回同じ挙動なので、異常として目に付きにくいという厄介さがあります。
導入直後にしばらく実在庫と突き合わせる期間を取るのは、この性質への備えです。
なお、連携しないという選択が不合理になるわけでもありません。
取扱品目が数点で、受注も一日に数件という規模なら、手作業のほうが早く、設定や保守の手間を負わずに済むこともあります。
判断が変わるのは、品目数か販路数か受注件数のどれかが増えて、頭の中の照合が追いつかなくなったときです。
今その状態にあるかどうかが、連携を検討する最初の基準になります。
一人運用で連携を始める前に確認すべき条件
取引先・自社のIT対応状況
社内をつないでも、受注そのものが電話やFAXで入ってくるなら、入口の入力作業は残ります。
ここを曖昧にしたまま検討を進めると、期待していたほど手作業が減らなかった、という結果になりがちです。
最初にやっておきたいのは、直近一か月の受注が、どの手段で何件入ってきたかを大まかに数えてみることです。
取引先ごとに手段が違うのが普通なので、主要な数社だけでも内訳が見えると、自動化できる範囲の見当がつきます。
取引先が電子的な受発注の仕組みを持っている場合は、そのデータを販売管理システムへ取り込めるかが次の論点になります。
取り込めれば入口から出口まで一本につながりますが、取引先ごとにデータの形式や項目が違うため、一社ごとの調整が必要になることも珍しくありません。
一人体制では、この一社ごとの調整をどこまで引き受けられるかが現実的な制約になります。
そもそも取引先の側が電子的なやり取りに対応しているのか、という疑問も当然出てきます。
ここは自社の努力では動かせない部分なので、統計で全体の傾向を見ておくほうが判断しやすくなります。
対応システムの組み合わせ
販売管理と在庫管理をつなぐ手段は、実現の仕方によって手間の質が変わります。
大きく分けると、あらかじめ用意された標準の連携機能を使う、システムが公開しているAPIを介してつなぐ、CSVなどのファイルを受け渡す、個別に開発してつなぐ、の四つです。
標準機能があるなら設定作業が中心になりますが、無い場合は誰かが仕組みを作り、動かし続ける責任を持つことになります。
一人担当にとっては、この「動かし続ける責任」を誰が持つかが、機能の充実度より重い条件です。
手段が決まる前に、データの側をそろえる必要もあります。
両方のシステムで商品コードが一致しているか、単位が同じか(箱とバラ、ケース入数の扱い)、セット商品や同梱品をどう表現するか、倉庫や保管場所の区分が対応しているか。
ここがずれていると、連携そのものは動いても、届いた数字が意味を持ちません。
実務では、連携の設定より商品マスタの整理のほうが時間を取られることが多い部分です。
もう一つ決めておきたいのが、どちらのシステムを正とするかです。
商品マスタを販売管理側で作って在庫側へ流すのか、その逆か。
双方向に更新できる設定にすると便利に見えますが、両方で同じ商品を編集したときにどちらが勝つのかを理解していないと、原因の分からない上書きに悩まされます。
一人で運用するなら、片方向に寄せて入口を一つにするほうが、後々の調査が楽になります。
費用や利用条件については、提供形態や契約内容によって扱いが大きく異なります。
連携機能が標準の範囲に含まれるのか、別途の申し込みが要るのか、接続先の数に制限があるのかは、自社が契約している内容で確認するのが確実です。
一般的な相場としてまとめられる性質のものではないため、ここでは金額の目安は示しません。
複数店舗・複数販路がある場合
販路が複数ある場合、連携の設計で最初に分かれるのは、在庫を一つの数字として共有するか、販路ごとに割り当てるかです。
共有すれば在庫を目一杯売れますが、同期の遅れがそのまま売り越しの危険になります。
販路ごとに割り当てれば売り越しは起きにくくなる代わりに、片方で在庫が余り、もう片方で品切れという機会損失が生まれます。
この選択に絶対的な正解はなく、同期の速さと欠品時の対応コストの兼ね合いで決まります。
欠品の連絡と謝罪に時間を取られるのが一番つらい、という体制であれば、多少余らせても割り当て方式のほうが日々の心理的な負担は軽くなります。
逆に、在庫を寝かせる余裕がない商材なら、共有しつつ同期の間隔を詰める方向になります。
店頭を持っている場合は、さらに事情が加わります。
レジでの販売が在庫へ反映される速さは、POSと在庫側の連携の作り方によって変わり、販売のたびに反映されるとは限りません。
店頭在庫をECの引当対象に含めるかどうかは、この反映の速さを確かめてから決めるべき部分です。
反映が遅い在庫を引当対象に入れると、ズレが最も起きやすい組み合わせになります。
ここまでで、連携によって何が自動で動き、どこに人の判断が残るかの輪郭は見えてきたと思います。
次に気になるのは、その仕組みを使える前提が自社の取引環境に揃っているのか、という点です。

連携で減る作業と残る作業の切り分けは、受注の入り方や商品マスタの状態といった自社固有の条件に左右され、機能一覧を読むだけでは判断しきれません。
現在の受注手段の内訳と商品コードの持ち方をお聞かせいただければ、どこまでが自動化の対象になり、どこに手入力が残るのかを整理してお伝えします。無料相談で要件を整理する
中小企業のIT化はまだ限定的
電子的な受発注管理を導入している割合と、その裏側に残る手作業の比率という一点で並べており、業種別・規模別の内訳を示したものではありません。
- 中小商業・サービス業を対象とした調査では、「電子文書での商取引や受発注情報管理」を導入している割合は18.5%で、2割を下回っています2。
- 残りの8割超では、受発注のやり取りに紙・電話・メールなどの手段が残っていることになります。
- つまり、取引先の側が電子データでの受発注に対応していない前提で連携の範囲を設計する必要がある、という見方ができます。
- 一方で、社内の販売管理と在庫管理をつなぐことは、取引先の対応状況を待たずに自社だけで着手できる領域です。
- この数値は2018年時点の調査であり、業種や規模によって事情は異なります。自社の取引先が対応しているかどうかは、個別に確認するしかありません。
取引先を巻き込む部分と、自社だけで決められる部分が分かれたところで、後半では自社側で実際に手を動かす工程を見ていきます。
一人担当の初期設定と日々の確認作業
最初に決めておくこと
連携の初期設定でつまずくのは、たいてい機能の操作ではなく、決め事のほうです。
設定画面の項目自体は選ぶだけでも、その選択が自社の運用とかみ合っているかは誰も教えてくれません。
一人担当であればなおさら、あとから「なぜこう設定したか」を思い出せる形にしておく価値があります。
準備の段階で最も時間を取られるのが商品コードの統一です。
販売管理側と在庫側で同じ商品に違うコードが付いていると、連携は成立しません。
過去の商品や販売終了品まで全部そろえようとすると終わらないので、直近で動いている商品から着手し、動いていないものは移行対象から外すという割り切りが現実的です。
ここを丁寧にやるほど、後の調査時間が減ります。
次に保管場所の定義です。
自社倉庫だけでなく、店頭、預けている外部倉庫、サンプルや展示に出している分をどう扱うかを決めます。
数えられない場所を在庫として持つと、必ずズレの温床になります。
引当の対象にする場所と、対象にせず記録だけ残す場所を分けておくと、後から差異の原因を絞り込みやすくなります。
設定の段階では、引当のタイミングと同期の方式を前半で整理した基準に沿って決めます。
そして運用開始の直前には、基準日を切って実地棚卸を行い、両方のシステムの数字を同じ値からスタートさせる作業が要ります。
ここを省いて連携を始めると、最初から入っていたズレなのか運用中に生じたズレなのかが判別できなくなり、原因調査が一気に難しくなります。
決めた内容は、短くていいので文書に残しておくことをおすすめします。
一人体制では設定の理由が頭の中にしかなく、半年後の自分は他人と変わりません。
引当をこの時点にした理由、この保管場所を対象外にした理由が書いてあるだけで、変更の判断が速くなります。
日々どこを確認するか
連携は入れて終わりではなく、動き続けていることを見届ける作業が新しく発生します。
とはいえ、毎日全部を見る必要はありません。
頻度ごとに見る場所を分けると、日々の負担はかなり軽くできます。
毎日見たいのは、連携が動いているかと、止まっている注文がないかの二点です。
連携エラーの一覧、引当できずに残っている受注、そして同期が最後に実行された時刻。
このうち同期時刻は地味ですが重要で、エラーも出さずに静かに止まっている状態は、エラーが出ている状態より気づくのが遅れます。
週次では、マイナスになっている在庫と、長期間解放されていない引当を見ます。
マイナス在庫は、出荷の記録はあるのに入荷の記録が抜けているといった、処理順序の乱れのサインです。
動かない引当は、キャンセルされた注文の取り消し漏れであることが多く、放置すると売れるはずの在庫が確保されたまま眠ります。
月次は実地棚卸と帳簿在庫の突き合わせです。
全品目を毎月数えるのが難しければ、動きの多い品目と単価の高い品目に絞る形でも、傾向はつかめます。
確認の習慣を意志の力で維持するのは、一人体制では長続きしません。
エラーや在庫の閾値を通知として受け取れる設定があるなら、そちらへ寄せるほうが現実的です。
ただし通知を設定できるかどうかは製品によって異なるため、導入の検討段階で確認しておく項目に入れておくとよいと思います。
| 頻度 | 見る場所 | 気づけること |
|---|---|---|
| 毎日 | 連携エラーの一覧と、引当できずに残っている受注 | 注文が取り込めていない、在庫不足で出荷が止まっている |
| 毎日 | 同期が最後に実行された時刻 | 連携そのものが静かに停止していないか |
| 週次 | マイナス在庫と、長く動いていない引当 | 入荷の計上漏れ、キャンセルの取り消し忘れ |
| 月次 | 実地棚卸と帳簿在庫の差異 | 記録されない持ち出しや破損、運用ルール外の操作 |
在庫ズレ・システム障害が起きたときの対処
ズレに気づいたときの一次対応
どれだけ設定を詰めても、在庫が合わない日は来ます。
問題は、ズレたこと自体よりも、気づいた瞬間に何から手を付けるかが決まっていないことです。
一人で対応する場合、迷っている時間がそのまま出荷の遅れになります。
最初の判断は、その商品の販売を止めるかどうかです。
数字が信用できない状態で受注を受け続けると、ズレの上にズレが積み重なり、あとで解きほぐすのが難しくなります。
止めることによる機会損失と、欠品連絡の手間を比べて、止める基準をあらかじめ決めておくと、その場で悩まずに済みます。
次に数え直す範囲を絞ります。
全品目を数えるのは一人では非現実的なので、ズレが見つかった商品と、同じ棚にある商品や似た型番の商品まで広げる程度が妥当です。
取り違えは近い場所や似た名前で起きやすいためです。
そのうえで履歴を突き合わせます。
受注、出荷、入荷、返品、そして手作業で行った在庫調整。
連携のログが残っていれば、どの時点までは両者の数字が一致していたかをたどれます。
この「いつから合っていないか」が分かると、原因の候補は大きく絞れます。
逆に、手で直接数量を書き換えた履歴が残らない運用だと、ここで調査が行き止まりになります。
連携そのものが止まる障害への備えも、考え方は同じです。
止まっているあいだ、どちらのシステムに入力を集めるかを先に決めておきます。
両方に手入力してしまうと、復旧後に同じデータが二重に流れ込む可能性があり、かえって面倒になります。
片側に寄せておき、復旧後にもう片側へ反映する手順にしておくほうが、後始末は単純です。
復旧直後は、障害の前後に処理した伝票が正しく反映されているかを個別に確認する時間を見込んでおきます。
再発防止の考え方
ズレの原因は、突き詰めるといくつかの型に収まります。
入力そのものが抜けている、連携の処理が失敗している、そして決めたルールの外で在庫が動いている、という三つです。
三つ目は、サンプルとして持ち出した、店頭で急ぎ渡した、破損して廃棄したといった、記録に乗りにくい動きを指します。
連携を入れても三つ目は自動では拾えないので、記録の入り口を用意しておくしかありません。
一人体制で効いてくるのは、ズレを完全に防ぐ工夫よりも、原因を早く特定できる状態を保つことです。
誰がいつ何をしたかが残っていれば、調査は数十分で終わります。
残っていなければ、同じズレに何時間もかかります。
だから在庫を手で調整したときの理由欄は、面倒でも埋める価値があります。
設定を変えたときの記録も同じ役割を果たします。
引当のタイミングや同期の間隔を変えた日付が分かっていれば、その日を境にズレが増えていないかという見方ができます。
変更と症状を時間軸で並べられることが、一人で原因を追うときの最大の武器です。
そして、ズレをゼロにする前提を置かないことも現実的な判断です。
どこまでの差異なら許容し、どの水準を超えたら原因を追うのか。
この基準を持っていないと、小さな差異のたびに全件を調べることになり、日常業務が回らなくなります。
点検の周期と許容の幅を決めておくほうが、結果として在庫の精度は安定します。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 連携で減る作業 | 同じ数字を別画面へ打ち直す時間と、二つの記録を照合する時間。受注件数と販路数が多いほど効きます |
| 新しく発生する手間 | 商品コードの統一、引当と同期の設定、日次の連携確認、ズレたときの原因調査 |
| 同期方式の選び方 | 同じ商品を複数の窓口で売っているか、在庫が薄いか。遅れを自社の対応力で吸収できるかで決めます |
| 始める前の確認 | 受注の入口がどの手段で何件入っているか、両システムで商品コードと単位が対応しているか |
| ズレへの備え | 販売を止める基準、実地で数える範囲、手作業での調整に理由を残す運用 |

引当のタイミングや同期の間隔、在庫を販路で共有するか割り当てるかは、一人で運用を回せるかどうかに直結する設計判断で、あとから変えると影響範囲が広くなります。 取扱品目と販路の状況を前提に、自社で決めておくべき項目と、外部に任せたほうがよい範囲の線引きを一緒に確認できます。
よくある質問
販売管理システムと在庫管理を別々のクラウドサービスで契約している場合でも連携できますか
できる場合とできない場合があり、決め手は双方がデータをやり取りする手段を用意しているかどうかです。
あらかじめ相手先を指定した標準の連携機能が用意されていれば設定作業で済みますが、そうでなければAPIを使ってつなぐ、CSVなどのファイルを受け渡す、個別に開発する、といった方法を検討することになります。
確認したいのは、連携できるか否かだけでなく、どの伝票のどの項目が、どちらの方向に、どの頻度で渡るのかという中身です。
在庫数は同期できても商品マスタは手作業、といった部分的な対応も珍しくありません。
連携後に返品・キャンセルが発生した場合、在庫数はどう扱われますか
自動で元に戻るとは限らず、どの操作を起点に在庫を戻すかの設定次第です。
出荷前のキャンセルであれば引当を解放する処理が必要で、出荷後の返品であれば返品入荷として在庫を増やす処理が必要になります。
このとき、返品された商品をそのまま販売可能な在庫へ戻すのか、検品待ちの状態で分けて持つのかを決めておかないと、実際には売れない商品が在庫として表示されます。
キャンセルの取り消し漏れは引当が解放されないまま残る典型例なので、週次の確認項目に入れておくと早く気づけます。
自社EC・店頭・卸など複数の販売チャネルがある場合、連携設定はチャネルごとに必要ですか
在庫の持ち方をどう設計するかによります。
在庫を一つの数字として全チャネルで共有する設計なら、在庫側の設定は一つで済み、各チャネルから受注を取り込む部分だけがチャネルごとの作業になります。
チャネルごとに在庫を割り当てる設計なら、割当の数量や補充の考え方をチャネル単位で決めることになります。
いずれの場合も、チャネルごとに受注データの形式や取り込みの間隔が違うため、新しい販路を増やすたびに設定と検証の作業は発生すると見ておくのが安全です。
連携の初期設定は自分で行えますか、それとも業者への依頼が前提になりますか
標準の連携機能が用意されていて、商品コードや単位が両方のシステムでそろっているなら、設定画面の操作は自力で進められる範囲に収まることが多いと考えられます。
難しさが出るのは設定操作ではなく、その前段のデータ整理と、想定どおり動くかの検証です。
APIを使う、ファイルの受け渡しを組む、個別に開発するといった方法になる場合は、作った仕組みを動かし続ける責任が伴うため、一人で抱えられるかを先に判断したほうがよいと思います。
どこまで自分で行い、どこから外部に頼むかは、連携後のトラブル対応まで含めて考える問題です。
- 1 出典:中小企業庁「経営力向上・IT基盤整備支援事業(次世代企業間データ連携調査事業)実証結果」(2017年) 経路
- 2 出典:日本政策金融公庫 総合研究所「中小商業・サービス業におけるIT利活用の現状と課題(日本公庫総研レポートNo.2018-3)」(2018年) 経路
画像の出典元
- 20代後半の日本人女性が倉庫の棚での在庫確認をしている場面/画像:生成AI(自社)
- Close-up of outdoor electrical utility boxes with cabling on/Photo by panumas nikhomkhai on Pexels
- Business meeting with diverse professionals discussing strat/Photo by Pavel Danilyuk on Pexels