◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 移行は、取引先ごとに「送り方を変えてもらう」か「手書きのまま自社側で取り込む」かを振り分けて進める
- 手書きのまま取り込む方式は、FAX画像向けの読み取り、受信データの直接利用、補正、実際の注文書での試験が条件になり、人の確認は残る
- 送り方の変更を頼む前に取引先の負担を洗い出し、定型用紙などの選べる手段を用意する。断られた取引先は取り込み側に残す
- 期間は一律に示せないため取引先ごとの調整を足し上げ、二重受注と漏れへの決めごとをして並行運用する
- 注文書は法人税法上、原則7年間(欠損金が生じた場合等は10年間)保存し、受信をデータに変えるときは保存方法もあわせて確かめる
目次

手書き注文書の転記ミスと入力負担を減らす道は二つ:取引先に何かを頼むか、頼まないか
FAXで届いた手書きの注文書を見ながら、品番や数量を受注システムへ打ち直している。
読み違いに気づくのが出荷の後になることもある。
それでも取引先に書式や送り方の変更は頼みにくい。
この悩みは、自社側で手書きのまま取り込む道と、取引先に送り方を変えてもらう道に分けると整理できます。
前者は取引先の負担が小さい一方、FAXの画質などで精度が変わり、確認作業が残ります。
後者は効果が大きい反面、取引先ごとの調整に時間がかかります。
取引先をグループに分け、並行運用しながら段階的に切り替えるのが基本の進め方です。
自社側で吸収する道
手書きの注文書を受けてから受注システムに登録するまでの作業は、三つに分けられます。
FAXや郵便で届いた紙を読む、品番や数量を画面に打ち込む、打ち込んだ内容を元の注文書と見比べる、という流れです。
転記ミスが起きるのは、主に「読む」と「打ち込む」の二か所です。
くせのある数字を読み違える、似た品番の行を取り違える、打ち込むときに桁を一つずらす、といった誤りがここで生まれます。
どれも担当者の注意だけで防ぎ続けるのは難しい種類の誤りです。
自社側で吸収する道では、届いた注文書の画像をOCR(画像に写った文字を読み取り、データに変える技術)にかけます。
打ち込みの作業は「読み取った結果を確かめて直す」作業に置き換わります。
取引先はこれまでどおり注文書を書いて送るだけで、頼みごとは発生しません。
取引先への影響を心配している担当者にとって、この点が最大の利点です。
一方で、読み取りが常に正しいとは限らないため、画像と結果を見比べる人の工程は残ります。
減るのはキーを打つ量です。
注文書に目を通す仕事そのものがなくなるわけではありません。
どれだけ確認が残るかは、FAXの画質や書き方、使う仕組みによって変わります。
取引先の送り方を変える道
もう一つの道は、取引先に注文の送り方を変えてもらう方法です。
たとえば、自社が用意したWeb受注の画面に取引先が品番と数量を入力する形があります。
EDI(企業間で注文などのデータを決まった形式でやり取りする仕組み)でデータを送ってもらう形もあります。
どちらも注文が最初からデータとして届くので、自社で読む・打ち込むという工程そのものがなくなります。
その代わり、取引先が手書きしていた手間は、取引先側での画面入力に置き換わります。
取引先から見れば、慣れた用紙とFAXをやめ、新しい操作を覚え、場合によっては社内の手順まで変えることになります。
切り替えにかかる期間も自社の準備だけでは決まらず、取引先ごとの都合に左右されます。
移行後は、操作が分からないといった問い合わせを自社で受ける役目も生まれます。
この二つは、どちらか一方を全取引先で選ぶものではありません。
すべての取引先に同じやり方を求めると、対応できない取引先が一社でも出た時点で、その取引先の注文だけ手入力が残り、計画が中途半端なまま止まります。
送り方の変更をお願いできる取引先には頼み、難しい取引先には何も頼まずに自社側で取り込みます。
取引先ごとに道を振り分けることが、取引先に負担をかけずに転記を減らすための前提になります。
| 観点 | 自社側で取り込む | 送り方を変えてもらう |
|---|---|---|
| 取引先にお願いすること | 基本はなし(これまでどおり送ってもらう) | 入力画面などへの切り替えと操作の習得 |
| 自社で減る作業 | 品番・数量などのキー入力 | 注文書を読む作業とキー入力 |
| 自社に残る作業 | 読み取り結果と画像の見比べ・修正 | 操作の問い合わせへの対応 |
| 期間を左右するもの | 自社での試験と確認手順づくり | 取引先ごとの調整 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社側で吸収する道
- 取引先への頼みごとは発生しない
- 減るのはキーを打つ量
- 画像と結果を見比べる工程は残る
- 取引先の送り方を変える道
- 取引先は新しい操作を覚える
- 読む・打ち込む工程がなくなる
- 切り替えの期間は取引先ごとの都合に左右される
- 操作の問い合わせを受ける役目が生まれる
- 取引先ごとに振り分ける
- 全取引先に同じやり方を求めない
- 難しい取引先には何も頼まず自社側で取り込む
取引先と注文書の棚卸し:どの取引先にどの方式が合うかを決める
棚卸しの軸
振り分けの材料は、手元にある注文書の実物と受注の記録です。
直近の注文書を取引先ごとに束ね、どの取引先がどんな形で、どれくらいの頻度で注文してくるのかを並べると、方式の向き不向きが見えてきます。
見る軸は、たとえば次のようなものです。
- 注文の量と頻度:毎週のように届くのか、月に数回なのか
- 注文書の書式:自社が配った定型の用紙か、取引先独自の用紙か、白紙やメモ書きか
- 届き方と受信形態:FAXか郵便か、FAXを紙に印刷して受けているか、データとして受け取れているか
- 取引先の事情:発注担当者が画面での入力に対応できそうか、社内に発注の承認手順があるか
- 注文以外のやり取り:電話での追加や変更、備考欄への書き込みがどれくらいあるか
これらは、どれも方式を選ぶときに判断が分かれる点です。
注文の多い取引先ほど、送り方を変えてもらえたときに減る転記の量が大きくなります。
書式が自社の定型用紙にそろっていれば、どの欄に何が書かれるかが決まっているため、読み取った結果を確認する人も見比べやすくなります。
反対に、白紙に自由に書かれた注文や、備考欄で「前回と同じ」「一部変更」と指示する注文は、文字が読めても内容の解釈に人の判断が要ります。
取引先の規模だけで振り分けないことも大切です。
規模の大きい取引先でも、発注書は現場の担当者が手書きしていることがあります。
逆に小さな取引先でも、ほかの仕入先にはすでに画面で発注していて、切り替えに抵抗が少ない場合もあります。
見るべきなのは会社の大きさより、注文書を書いている人の作業の実態です。
受信形態は見落とされやすい軸です。
FAXを紙に印刷して受けている場合、取り込み方式を選ぶ前に、受信の仕方そのものを見直す必要が出てきます。
理由は、次の節で扱う読み取りの条件とつながっています。
取引先のグループ分け
軸を並べたら、取引先を大きく二つのグループに分けます。
一つは、注文が多く定期的で、送り方の変更をお願いできそうな取引先です。
もう一つは、注文が少ない、取引先の社内事情で変更が難しそうなど、当面は手書きやFAXのまま受けて自社側で取り込む取引先です。
判断に迷う取引先は、取り込み側に入れておくのが無難です。
取り込み側にいる限り、取引先には何の変化も起きないため、関係を損なう心配がありません。
後から相手の状況が分かり、変更をお願いできそうだと判断できた時点で移せば足ります。
反対に、先に変更をお願いして断られると、同じ取引先に改めて別の話を持ち出しにくくなります。
グループ分けは、受注担当者だけで決めないほうが確かです。
取引先の発注担当者が誰で、どんな環境で注文書を書いているかは、営業担当者のほうが知っている場合があります。
この段階で作った一覧は確定版ではありません。
試験や依頼の結果に応じて取引先を動かすための台帳として使います。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先ごとに軸を見る
- 注文の量と頻度
- 注文書の書式
- 届き方と受信形態
- 取引先の事情
- 二つのグループに分ける
- 変更をお願いできそうな取引先
- 手書きのまま取り込む取引先(迷う取引先もこちら)
- 台帳で取引先を移す
- 試験や依頼の結果に応じて見直す
手書き注文書を手書きのまま取り込む方式は、どの条件なら実用になり、確認作業はどれだけ残るか
精度を左右する条件
手書きのまま取り込む方式が実用になるかどうかは、読み取りの精度で決まります。
FAX注文書の読み取りについて、OCR製品を提供するPFUは、AI-OCR(大量の文字画像で学習させた読み取りの仕組み)の精度は学習データによって大きく変わるとし、FAX画像で学習したものを選ぶよう解説しています4。
FAXは送信の過程で画像が粗くなります。
きれいなスキャン画像で学習した仕組みが、FAXでも同じように読めるとは限らないということです。
同じ解説では、紙に印刷したFAXを改めてスキャンして読み取る運用は避け、複合機が受信したデータをそのまま使うこと、傾きや拡大・縮小を補正する機能があるかを確かめることも挙げています4。
印刷して読み取り直すと、すでに粗いFAXの画像に、印刷とスキャンの工程が一回ずつ加わります。
前の節で受信形態を棚卸しの軸に入れたのはこのためです。
紙で受けている場合は、使っている複合機の機種や設定で、FAXをデータとして受け取れるかを先に確かめることになります。
ただし、この解説は同社のAI-OCR製品を紹介する中で書かれたもので、認識率の数値は示されていません4。
他の製品にも同じ条件が当てはまるか、どの程度読めるかは、製品ごとに確かめる必要があります。
そのため同じ解説も、導入前に自社に実際に届いたFAX注文書で試すことを勧めています4。
確認工程の残し方と試験の進め方
認識率の一般的な目安がない以上、確認作業をどれだけ残すかは、自社の注文書で試した結果から決めることになります。
試験は、次の順で進めると判断に使える結果が残ります。
- 取引先ごとに、過去に届いた実際のFAX注文書を集める(読みやすいものだけを選ばず、かすれや傾きのあるものも含める)
- 試用する仕組みで読み取り、品番・数量・納期・届け先など項目ごとに誤りを数える
- 誤りの出方を取引先別・項目別に並べ、全件で確認を残す項目と、影響の小さい項目を分ける
- 本番の運用でも誤りの記録を続け、確認の範囲を見直す
項目ごとに分けて数えるのは、誤りの重さが項目によって違うからです。
数量の桁違いや品番の読み違いは、そのまま誤出荷や欠品につながります。
納期や届け先の誤りも同じです。
こうした項目は、試験の結果がよくても、当面は全件で画像と見比べる対象に残すのが安全です。
備考欄の手書きの指示は、文字が読めても意味を判断する必要があるため、読み取りの精度とは別に人が目を通す前提で考えます。
試験には、ふだん注文書を入力している担当者に加わってもらいます。
どの取引先のどの書き方で読み違えやすいかは、毎日手入力している人がいちばんよく知っています。
その経験と試験の結果を突き合わせると、確認の重点を置く場所を決めやすくなります。
確認する側の作業手順も、このときに一緒に試しておきます。
試験の結果は、取引先ごとに分けて見ます。
定型の用紙にはっきり書く取引先と、独自の用紙に細かく書き込む取引先では、同じ仕組みでも誤りの出方が変わりうるからです。
結果がよくない取引先は、取り込み側に残して確認を手厚くするか、送り方の変更を相談する候補に移すかを考える材料になります。
取り込み方式で変わるのは、キーを打つ作業が見比べて直す作業に置き換わることです。
確認がいらなくなるわけではない、という前提で計画を立てます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 読み取りの条件
- FAX画像で学習していない仕組み
- 紙に印刷したFAXの再スキャン
- 傾きや拡大・縮小を補正できない
- 読み取りの精度が下がる
- 粗くなったFAX画像を読み誤りやすい
- 画像との見比べと修正が増える
- 確認作業の量は自社の注文書での試験で決める
取引先に電子受発注への変更を依頼するとき、何を伝え、どう合意を得るか
依頼前に洗い出す取引先の負担
送り方の変更をお願いするとき、自社の都合だけを伝えると、取引先には負担の押し付けに聞こえます。
依頼の前に、相手の側で何が変わるのかを自社で洗い出しておくと、説明の中身が変わります。
取引先の発注担当者の立場で考えると、少なくとも次のような変化があります。
- 注文に使う端末とネット環境、ログインIDやパスワードの管理
- 誰が入力するか、入力にかかる時間、操作を覚える手間
- 社内に残す発注の控え(手書きなら手元に控えが残ったが、画面入力ではどう残すか)
- 社内の承認(上司の確認を経てFAXしていた流れを、どう置き換えるか)
- 費用(利用料や準備の費用が取引先に生じるのか、自社が持つのか)
このうち費用と社内手続きは、取引先の担当者が一人では決められないことがあります。
担当者が前向きでも、社内の承認に時間がかかれば、切り替えの時期は延びます。
依頼の場では、何を準備してほしいか、自社が何を用意するか、費用はどちらが持つかを先に示します。
取引先の担当者が社内で説明するための材料を渡すと、話が進みやすくなります。
取引の内容によっては、法律上の整理も関わります。
取適法(委託取引のルールを定めた法律で、公正取引委員会が概要を公開しています)では、委託事業者は発注に際し、定められた事項をすべて記載した書面または電磁的記録を、直ちに中小受託事業者へ交付する義務があります2。
あわせて、取引の内容を記載した書類または電磁的記録を作成し、2年間保存する義務もあります2。
どちらも発注する側に課される義務です。
注文を受ける側が送り方の変更を求める根拠になるものではありません。
それでも、知っておく意味はあります。
自社の取引がこの法律の対象で、取引先が委託事業者に当たる場合、取引先にとって注文書は義務として交付している書面でもあります。
送り方を変えることは、取引先がその義務をどう果たし、記録をどう残すかにも関わるため、取引先の社内で確認が必要になる可能性があります。
依頼の時期を相手の都合に合わせる理由の一つになります。
自社の取引が対象かどうかは、取引の内容と双方の関係で決まるため、別に確かめておく必要があります。
受け入れられない場合の代替
依頼の場では、取引先が選べる手段を複数用意しておきます。
画面での入力に切り替える案だけを示すと、答えは「切り替える」か「断る」かの二択になります。
そこに、自社が用意した定型の用紙に記入してFAXで送ってもらう、という中間の案を加える方法があります。
取引先の操作はほとんど変わらないまま、自社の側では読み取りと確認がしやすくなります。
書式がそろえば、どの欄に何が書かれるかが決まり、確認する人が見比べやすくなるからです。
それでも変更が難しいと言われた取引先は、取り込み側に残します。
断られたことは移行の失敗ではありません。
取り込み側でもキー入力は減らせるので、その取引先の分も目的の一部は果たせます。
断られた理由は台帳に残しておきます。
取引先の担当者が替わった、注文の量が増えた、取引先が社内の仕組みを入れ替える、といった機会に、改めて相談するかどうかを判断できます。
一部だけ切り替える形もあります。
定期的な注文だけ画面で入力してもらい、急ぎの追加は従来どおりFAXや電話で受ける、という分け方です。
この場合は届く経路が二つになるため、並行運用のときに決める受け付けのルールが、その取引先では移行後も続くことになります。

移行期間と並行運用:取引先を段階的に切り替える組み方
確認できた期間の事例と限界
取引先に送り方を変えてもらうとき、いちばん知りたいのは全体で何か月かかるかでしょう。
期間は取引先の数や方式によって変わるため、一律の数字では示せません。
手掛かりとして、医薬品や健康食品の製造・販売や卸事業を手掛けるピップグループの事例があります。
同社は、ISDN回線を使う旧来の手順でEDIを行っていた取引先を、流通BMSやWeb-EDIなどインターネット回線に対応した方式へ移していました。
報道によると、事前調整から利用開始までは1取引先あたり1カ月ほどかかり3、約500弱の小売店との取引のうち、2016年12月時点で移行済みは10%強でした3。
この事例は、もともとデータで注文をやり取りしていた取引先の通信方式を替えるもので、手書きの注文書を電子に移すものではありません。
期間をそのまま当てはめることはできません。
読み取れるのは、すでに電子でつながっていた相手でさえ取引先ごとに事前の調整が必要で、多くの取引先を一度に移せるわけではない、ということです。
紙とFAXから切り替える取引先には、さらに操作を覚えてもらう段階が加わります。
そこで期間は、一律の目安からではなく、取引先ごとの調整を足し上げて見積もります。
見積もりに入るのは、切り替えるグループの取引先の数、一度に並行して調整できる取引先の数、取り込み側の試験にかける期間です。
一度に調整できる数は、操作説明や問い合わせ対応に自社が割ける人手で決まります。
担当者が受注業務と兼務している場合は移行の調整に使える時間が限られ、同時に進める取引先を絞るほど全体の期間は延びます。
取り込み側の試験と、送り方を変えるグループの最初の調整は、同時に進めることもできます。
取り込み側は自社の中で完結する作業なので、取引先の返事を待つ間に試験を進めておけます。
二つを順番に並べるか重ねるかで全体の期間は変わるため、自社の人手と照らして組み合わせを決めます。
並行運用の組み方
並行運用とは、新しい送り方を始めた取引先からも、しばらくは従来のFAXや郵便を受け付けておく期間のことです。
取引先は操作に慣れるまで、急ぎの注文をついFAXで送ってしまうことがあります。
その注文を「もう受け付けていない」と扱えば、取引先に負担をかけないという方針と食い違います。
並行運用で気をつけたいのは、同じ注文が二つの経路から届く二重受注と、どちらの経路でも処理されない漏れです。
画面で入力した注文を、念のためFAXでも送ってくる取引先があれば、両方を受注として登録してしまうおそれがあります。
開始前に、両方の経路で届いたときにどちらを正とするか、FAXだけで届いたときに誰が入力するかを決め、取引先にも伝えておきます。
進め方は、最初に協力を得やすい取引先を少数選び、そこで操作説明の資料や問い合わせへの答えをそろえてから、次の取引先へ広げる形が組みやすいでしょう。
最初の取引先で見つかった分かりにくい操作や説明の漏れを直しておけば、後の取引先の調整を軽くできる見込みがあります。
取引先ごとに、事前調整、並行運用、照合、切り替えの判断という一巡を繰り返し、その結果を次の取引先の準備に生かします。
繁忙期に重ねないことも、期間の組み方の一部です。
注文が集中する時期に並行運用を始めると、照合の手間が普段の受注業務と重なり、二重受注や漏れを見落としやすくなります。
期間を短くしようとして詰め込むより、取引先と自社の双方に余裕のある時期を選ぶほうが、切り替えは滞りにくくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 協力を得やすい取引先を選ぶ
- 事前調整
- 並行運用
- 二重受注と漏れの照合
- 切り替えの判断
移行後に残る手書き注文と旧運用の止め時、注文書の保存
例外注文の扱い
切り替えが進んでも、手書きやFAXの注文がすべてなくなるとは限りません。
取り込み側に残した取引先の注文、電話での急ぎの注文、画面入力に慣れた取引先からのたまのFAXなどが残ります。
こうした例外を無理になくそうとするより、どの経路で届いても受注システムへの入り方を一本にしておくほうが、取引先に負担をかけずに済みます。
たとえば、FAXで届いた注文は取引先を問わず取り込みと確認の流れに乗せます。
電話で受けた注文は、受けた人がメモを残し、別の人が入力内容を確かめる、と決めておきます。
例外の件数を取引先別に記録しておけば、例外の多い取引先が見えてきます。
その取引先は、送り方を相談し直すか、取り込み側に戻すかを考える対象になります。
旧運用を止める判断
止める対象は、FAXの受信そのものではなく、注文書を見ながら受注システムへ一から打ち込む手作業の流れです。
取り込み側に残した取引先がいる限り、FAXの受信は続きます。
この区別をしないまま「FAX廃止」と伝えると、変更を頼んでいない取引先まで不安にさせてしまいます。
手作業の流れを止める目安は三つです。
送り方を変えてもらうグループの切り替えが一通り終わっていること、取り込み側で記録している誤りの出方が落ち着き確認の範囲を決められていること、例外の注文がどの経路で入るか決まっていることです。
どれか一つでも欠けると、止めた後に手作業で埋める場面が生まれます。
止める日を先に決めるより、三つがそろったことを確かめてから決めるほうが、現場の混乱を抑えられます。
保存期間の整理
移行で受信の形が変わると、注文書の保存の仕方も見直すことになります。
法人税法では、注文書は保存が必要な書類の例として挙げられており、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります1。
青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年間です1。
受け取った注文書も、この保存の対象として扱います。
一方、取適法の2年間の保存は、委託事業者、つまり発注する側の義務です2。
受注側の自社が税務のために保存する期間とは、根拠も期間も別です。
二つを混ぜて「2年残せばよい」と考えると不足します。
迷いやすいのは、FAXを紙に出さず、データで受けるように変えた場合です。
取り込み方式のために受信をデータに切り替えると、紙で届いていたときとは保存の扱いが変わる可能性があります。
受信の方法によって何が求められるかは、国税庁が公開している電子帳簿保存法の一問一答(電子取引関係)で、自社の受信方法に当てはまる問答を確かめてから決めます。
Web受注の画面で受けた注文のデータも、同じように確認します。
受信の形を変える時点で保存方法も決めておけば、移行後に保存の仕方を遡って直す手間を避けられます。
並行運用の間は、紙で届いた注文書とデータで届いた注文が混在します。
同じ取引先の注文が、月によって紙だったりデータだったりすることもあります。
どちらの形で届いたものを、どこに、どの単位でまとめて保存するかを決めておくと、後から特定の注文を探すときに迷わずに済みます。
| 観点 | 自社(受注側) | 取引先(発注側・取適法の委託事業者に当たる場合) |
|---|---|---|
| 根拠 | 法人税法上の帳簿書類の保存 | 取適法の取引記録の作成・保存 |
| 保存する期間 | 確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間(欠損金が生じた場合等は10年間) | 2年間 |
| 対象 | 受け取った注文書を含む書類 | 取引内容を記載した書類または電磁的記録 |
| 自社で確かめること | 受信形態に応じた保存方法 | 自社の取引が取適法の対象か |
どの取引先を取り込み側に残し、どこから送り方の変更を相談するかは、自社の注文書の実物と受注の流れを並べてみないと決めにくいためです。
手元の注文書と受信形態をもとに、取引先の振り分けと、最初に切り替えを相談する取引先の候補を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 方式の振り分け | 送り方を変えてもらえる取引先と、手書きのまま自社側で取り込む取引先に分ける。迷う取引先は取り込み側から始める |
| 取り込みの条件 | FAX画像向けの読み取り、受信データの直接利用、傾き・拡大縮小の補正、実際の注文書での試験 |
| 確認の残し方 | 品番・数量・納期・届け先と備考欄は人の確認を残し、ほかは試験結果で範囲を決める |
| 依頼の仕方 | 取引先の負担を先に洗い出し、定型用紙を含む選べる手段を用意する |
| 期間の見積もり | 一律の目安はなく、取引先ごとの調整と取り込み側の試験を足し上げる |
| 旧運用の止め時 | 切り替えの完了、誤りの出方の安定、例外の経路の決定がそろってから |
| 保存 | 注文書は原則7年間(欠損金が生じた場合等は10年間)。受信をデータに変えるときは保存方法も確かめる |

並行運用中の二重受注への備えや、受信をデータに変えたときの保存方法など、移行の途中では判断が重なりやすいためです。 取引先一覧に沿って、切り替えの順序と、手作業の流れを止める条件を確かめられます。
よくある質問
FAXで届く注文書を、紙に出力せずOCRにかけるほうがよいのはなぜですか
OCR製品を提供するPFUの解説では、紙に印刷したFAXを改めてスキャンして読み取る運用は避け、複合機が受信したデータをそのまま使うよう勧めています4。
FAXの画像はもともと粗く、印刷とスキャンを挟むと、そこに工程が二つ加わります。
紙で受信している場合は、使っている複合機でデータとして受け取れるかを先に確かめます。
受信をデータに変えると保存の扱いも変わる可能性があるため、保存方法もあわせて決めておきます。
OCRで取り込んだ後も、人の確認はどの項目に残すべきですか
品番・数量・納期・届け先は、誤りがそのまま誤出荷や欠品につながるため、当面は全件で画像と見比べる対象に残すのが安全です。
備考欄の手書きの指示は、文字が読めても意味の判断が要るため、人が目を通す前提にします。
それ以外の項目をどこまで確認するかは、自社の実際の注文書で試験し、項目別・取引先別に誤りを数えた結果から決めます。
一般的な認識率の目安はないため、本番の運用でも誤りの記録を続けて見直します。
取引先に電子受発注への切り替えを断られたら、どう扱えばよいですか
その取引先は、手書きやFAXのまま受けて自社側で取り込むグループに残します。
取り込み側でもキー入力は減らせるので、移行の目的の一部は果たせます。
自社が用意した定型の用紙に記入してFAXで送ってもらう案なら、取引先の操作をほとんど変えずに読み取りと確認をしやすくできます。
なお、取適法の書面交付の義務は発注する側に課されるもので2、受注側が切り替えを求める根拠にはなりません。
断られた理由を記録し、担当者の交代や注文量の変化などの機会に改めて相談するかを判断します。
手書き注文書の保存は、紙のままでも問題ありませんか
保存期間は、法人税法上、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間で、欠損金が生じた場合等は10年間です1。
紙で受け取った注文書は、この期間を満たすように保管します。
一方、FAXをデータで受けるように変えた場合やWeb受注で受けた場合は、紙で届いていたときと扱いが変わる可能性があります。
国税庁の電子帳簿保存法の一問一答(電子取引関係)で、自社の受信方法に当てはまる問答を確かめてから保存方法を決めます。
並行運用の期間は、どの条件で長くなりますか
切り替える取引先の数が多いのに、操作説明や問い合わせ対応に割ける人手が限られていると、一度に進められる取引先が減り、全体が延びます。
取引先の社内で承認や手続きの見直しが必要な場合も、担当者の意向とは別に時間がかかります。
照合で二重受注や漏れが続く、急ぎのFAXなどの例外が減らない、といった状態では、切り替え完了の判断ができず並行運用が続きます。
繁忙期を避けて開始時期をずらすと暦の上では遅くなりますが、見落としを減らせます。
- 1 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(現行制度)
- 2 出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(取適法の概要)」(現行制度)
- 3 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 4 出典:PFU(リコーグループ)「FAX注文書はOCRできる?精度を向上させる3つのポイント」(2025年)
画像の出典元
- Professional meeting discussing business agreements with laptops and documents on a rustic table./Photo by Mikhail Nilov on Pexels
- Hands holding a wall calendar, writing with a marker, organizing schedule./Photo by RDNE Stock project on Pexels