◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受注締切は時刻を先に決めず、集荷時刻から積込・検品・ピッキング・出荷指示の所要を引いて置ける時刻を出す
- 締切の一本化と商品区分による除外は組み合わせられ、拠点ごとの逆算時刻の差で締切の単位を選ぶ
- 締切後の注文は次の便・追加便・受付停止の違いを踏まえて扱いを決め、例外の条件と判断者を先に定める
- 作業は締切前に進める準備と締切後の作業に分け、委託便では集荷時刻の前に照合を終えておく
- 全ての荷主に2025年4月から努力義務があり、取扱貨物の重量9万トン以上は特定荷主として追加の義務の対象になる
目次

多頻度小口の締切間際に出荷が詰まるとき:まず便の出発時刻から逆算する
多頻度小口の注文が締切直前にまとまって入り、ピッキングも積込も便の出発に間に合わない。
残業や追加便でしのいでいるなら、最初に変えるのは締切の時刻ではなく、締切を決める順番です。
運送会社の集荷時刻(自社便なら出発時刻)を起点に、積込・検品・ピッキングにかかる時間を引いていくと、無理なく置ける締切が分かります。
そのうえで、締切を一本にするか分けるか、締切後の注文をどう扱うか、納品日をまとめられるかを、自社の便数と運送契約に合わせて選びます。
荷主には法令上の努力義務もあるため、自社の位置づけも確かめておきます。
詰まりの場所を切り分ける確認項目
締切直前に注文が集まると、困りごとは最後に「便に間に合わない」という形で表に出ます。
ただ、遅れが生まれている場所は一つとは限りません。
FAXやメールで届いた注文を出荷指示に起こすまでに時間がかかっているのか、ピッキングが同じ時間帯に重なっているのか、検品や梱包で待ちが出ているのか、積込場所が足りないのか。
どこで詰まっているかによって、締切を動かすべきか、作業の順番を変えるべきかが変わります。
そこで締切の時刻を話し合う前に、次の項目を一日の流れに沿って並べてみることをおすすめします。
いずれも公的な基準ではなく、詰まりの場所を見つけるための整理です。
- 運送会社が荷物を引き取る時刻(集荷時刻)、自社便なら便の出発時刻(曜日や繁忙期で変わるかも含む)
- 積込にかかる時間と、積込場所を同時に何便分使えるか
- 検品・梱包にかかる時間と、そこに入れる人数
- ピッキングにかかる時間(平均ではなく、締切直後にまとまって届く件数で見た場合)
- 注文を受けてから出荷指示に変わるまでの時間(転記や在庫確認の手間を含む)
- 締切後に入った注文が、実際にはどこで処理されているか
ピッキングの所要を平均で見ると、詰まりは見えにくくなります。
多頻度小口の注文は一件ごとの作業は軽くても、締切直前の短い時間に件数が積み上がるため、問題になるのはその山の高さです。
締切直後に何件が残っていて、それを片付けるのに何人で何分かかったかを数日分記録するだけでも、どの工程が便の時刻を圧迫しているかがかなり具体的になります。
集荷締切から逆算する考え方
確認した時刻と所要が並んだら、順番を逆にたどります。
起点は集荷時刻です。
集荷時刻から積込の所要を引いた時刻が、積込を始めなければならない期限になります。
そこから検品・梱包の所要を引くと検品開始の期限が、さらにピッキングの所要を引くとピッキング開始の期限が出ます。
最後に、注文を出荷指示へ変える時間を引いた時刻が、その便に載せるために受注を締め切れるいちばん遅い時刻です。
この計算で大事なのは、各工程の所要を締切直後のいちばん混む状態で見積もることと、引き算の途中に余裕を残すことです。
平均の所要で計算すると、注文が多い日だけ便に間に合わず、結局は毎回の綱渡りに戻ってしまいます。
余裕をどのくらい取るかに決まった基準はありませんが、ドライバーを待たせて出発を遅らせる余地がない委託便ほど、余裕は厚めに見ておくほうが崩れにくくなります。
逆算した時刻がいまの締切より早くなった場合、その差が毎日の詰まりの正体です。
埋め方は三つあります。
締切を前倒しする、作業の所要を縮める、便の時刻や本数を変える、のいずれかです。
どれを選ぶかは、納品先がどこまで早い締切を受け入れられるか、作業側で並行化できる余地があるか、運送契約で集荷時刻を動かせるかで決まります。
締切の単位や締切後の扱い、注文のまとめ方、作業手順の見直しは、いずれもこの差を埋めるための手段です。
事例:運送側の集荷締切が早まった場合
締切が出荷側の都合だけで決められないことは、実際に締切を前倒しした事業者の告知からも読み取れます。
医療機器メーカーのセンチュリーメディカルは、当日出荷のFAX受注の締切を2024年5月受注分から13時に統一すると告知し、その理由として配送業者の集荷締め切り時間が早まっていることを挙げています6。
包帯などの医療衛生関連製品を製造・販売する日本衛材も、ドライバー不足や2024年問題、出荷量の増加によって円滑な出荷対応の継続が難しくなったとして、当日出荷の受注締切を2024年4月受注分から14時から12時へ変更しました5。
どちらも、運送側の時刻や事情が先に動き、それに合わせて受注締切を前へ動かした形です。
国土交通省が示す荷主の判断基準も、主に発荷主に当たる第一種荷主に対して、トラック事業者が積合せや共同配送に取り組めるよう、実態に即した適切なリードタイムの確保を求めています2。
事例と判断基準は同じ方向を向いており、締切を運送側の時刻から逆算するという考え方の背景になります。
ただし、逆算の手順そのものは公的資料が示したものではなく、出荷の流れから組み立てた整理です。
また、2社はいずれも医療関連の事業者間取引で、当日出荷を前提とした各社の運送契約のもとでの判断です。
12時や13時という時刻が業界の目安になるわけではなく、前倒しによって作業負担がどれだけ減ったかも告知には示されていません。
自社の締切は、あくまで自社の集荷時刻と作業の所要から出す必要があります。
運送側の時刻が今後も動きうる前提で考えておく理由もあります。
関東運輸局は、2024年4月からのトラックドライバーの時間外労働の上限規制を背景に、対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力が2024年に約14%、2030年に約34%不足するおそれがあるという推計を示しています1。
これは実際に不足した実績ではなく見込みですが、集荷時刻を一度決まれば変わらないものとは考えず、変わったときに締切を見直す段取りまで用意しておく理由にはなります。
締切は全体で一本か、地域・部署・商品で分けるか
一本化・地域別・商品区分別の比較
逆算で置ける時刻が分かると、次に迷うのは締切をいくつ持つかです。
出荷拠点が一つで便も一本なら答えは簡単ですが、地域によって便の出発時刻が違う、部署ごとに受注窓口が分かれている、在庫品と受注生産品が混ざっているといった事情があると、逆算した時刻も一つには定まりません。
選び方は大きく、全体で一本にする、地域や担当部署ごとに分ける、商品区分ごとに分ける、の三つです。
同じ軸で並べると次のようになります。
表の評価は編集上の整理で、各方式の効果を測った資料に基づくものではありません。
判断が分かれるのは、便ごとの時刻差をどこまで納品先に反映させたいかです。
全体で一本にすると、いちばん早い便に合わせることになるため、遅い便で出せる地域の納品先にとっては締切が早まります。
その代わり出荷側は締切後の作業を一斉に始められ、受注担当が地域ごとの時刻を覚えたり、問い合わせのたびに確認したりする手間がなくなります。
地域別・部署別に分けると遅い便の余裕を生かせますが、締切が複数あるぶん、どの注文がどの締切に当たるかを受注のたびに判断する作業が残ります。
商品区分で分ける方式は、時刻よりも工程の違いが理由になる場合に向きます。
在庫品は棚から取って出せますが、受注生産品や加工が必要な商品は、締切の時刻をいくら早めても当日には出せません。
この場合は、当日出荷の締切と、それ以外の商品の納期を別のルールとして書き分けるほうが、納品先にも誤解されにくくなります。
事例:13時への統一と特注品の除外
センチュリーメディカルの告知では、当日出荷のFAX受注の締切は、出荷地域または担当部署によって13時または14時に分かれていました6。
それを13時に統一した理由は、先に見た配送業者の集荷締切の前倒しです。
14時の締切は遅い集荷に間に合うことを前提にしていたと考えられ、その前提が崩れたことで分けておく理由が薄れた、と読むことができます。
日本衛材は当日出荷の締切を12時に変えつつ、特注品・受注生産品は従来どおり所定の納期とすると明記しています5。
締切の時刻は一本にまとめ、商品区分による例外は残す。
一本化と区分別は二者択一ではなく、組み合わせて使えることが分かります。
なお、2社とも前倒しや統一の事例であり、分けた方式より一本化のほうが優れていると示すものではありません。
出荷拠点が複数あり、拠点ごとに便が違う場合に無理に一本にすると、早い拠点の時刻に全体を合わせることになります。
拠点ごとの逆算時刻を並べ、差が小さければ一本に、差が大きく納品先への影響も大きければ分ける、という順で考えると判断がつきやすくなります。
| 締切の単位 | 出荷側の負担 | 納品先への影響 | 向く条件 |
|---|---|---|---|
| 全体で一本 | 締切後の作業を一斉に始められる/早い便に合わせるため遅い便の余裕は使いにくい | 時刻が一つで分かりやすい/遅い便の地域では前倒しになる | 拠点が一つで便の時刻差が小さい |
| 地域別・部署別 | 締切が複数あり受注ごとに当てはめる判断が残る | 便に合わせて遅めの締切を残せる地域がある | 拠点や便が地域ごとに分かれ時刻差が大きい |
| 商品区分別 | 受注時に商品区分を判定する手間がある | 在庫品と受注生産品などで納期の違いが明確になる | 商品によって出荷までの工程が異なる |
締切後に入った注文:翌便・追加便・受付停止の違い
3つの扱いの比較(負担・納品先への影響・前提)
締切を引いても、締切後の注文はなくなりません。
多頻度小口では、納品先が在庫の不足に気づいたタイミングでそのまま追加の注文を送ってくることがあり、締切の外側の扱いを決めておかないと、担当者がその都度判断して受けることになります。
そうなると、逆算して置いた締切が形だけのものになってしまいます。
扱い方は、次の便に回す、追加便や特急で当日中に出す、受付を止めて翌営業日の受注として扱う、の三つに整理できます。
どれが正解というより、出荷側の負担と納品先への影響の釣り合いで選ぶものです。
以下の比較も編集上の整理で、効果を測った資料はありません。
次の便に回す扱いと受付停止は、どちらも当日には出ないという点で似ていますが、注文がいつ確定するかが違います。
次の便に回す場合、注文はその時点で受け付けられ、在庫の引当も済みます。
納品先は出荷が一便遅れるだけで、注文し直す必要はありません。
受付停止は締切後の注文を翌営業日の受注として扱うため、在庫の引当も翌日になり、その間に在庫が他の注文へ回る可能性があります。
その代わり、受注の記録と出荷の日付がそろうので、締切後の注文がどれだけあったかを後から数えやすくなります。
追加便や特急は、納品先への影響がいちばん小さい扱いですが、費用と手配の手間が出荷側に積み上がります。
費用や手配できるかどうかは運送契約と地域によって大きく変わるため、一般的な相場で判断することはできません。
また、国土交通省の判断基準は、荷主に繁閑差の平準化や納品日の集約による発送量の適正化を求めています2。
締切後の個別対応を常態化させる運用は、この方向とは逆向きになる点も踏まえておきたいところです。
例外区分の線引き
締切後の注文を原則として次の便や翌営業日に回すとしても、例外をまったく認めないのは現実的でない場合があります。
その品物がないと納品先の業務が止まってしまう、といった事情があるからです。
例外を認めるなら、何を例外にするか、誰が判断するかを受注担当の裁量に任せず、先に決めておくことが大切です。
線引きの手掛かりになるのは、商品の区分、納品先の事情、受付時刻の三つです。
日本衛材の告知は、当日出荷の締切から特注品・受注生産品を外すという、商品区分による線引きを明示しています5。
これは締切を緩める例外ではなく、そもそも当日出荷の対象外とする線引きですが、条件を告知文の中に書いておくと、納品先も受注担当も同じ基準で判断できるという点は参考になります。
例外として受けた注文は、件数と理由を記録しておくことをおすすめします。
例外が特定の納品先や特定の曜日に偏っているなら、それは例外ではなく、締切の位置や納品日の決め方に原因がある可能性があります。
その場合に検討したいのが、注文と配送をまとめる方向の見直しです。
| 締切後の扱い | 出荷側の負担 | 納品先への影響 | 向く条件 |
|---|---|---|---|
| 次の便に回す | 当日の作業は増えない/翌日の作業に上乗せされる | 注文し直しは不要/届くのが一便遅れる | 便が毎日あり一便遅れても納品先の業務が止まらない |
| 追加便・特急で当日に出す | 運送費と手配の手間が増える/締切後も作業が続く | 影響が最も小さい | 例外が少なく費用を負担できる |
| 受付を止めて翌営業日の受注とする | 締切後の作業がなくなる/締切後の件数を数えやすい | 在庫の引当が翌日になる/事前の周知が必要 | 取引条件で受付時刻を定められる |
注文と配送をまとめる:納品日の集約・平準化・積合せ
納品日の集約と繁閑差の平準化
締切と締切後の扱いは、届いた注文をどう受けるかの整理でした。
もう一つの方向は、注文と出荷の回数そのものを減らすことです。
国土交通省の判断基準は、荷主に対して、年・月・週単位の繁閑差の平準化や納品日の集約などによる発送量・納入量の適正化、配車システムの導入などによる配車・運行計画の最適化を求めています2。
納品日の集約は、たとえば毎日少しずつ届けている納品先について、納品する曜日を決めてまとめて届ける形です。
出荷側から見ると一件あたりの作業は大きくなりますが、ピッキングや積込の回数が減り、締切直前に小さな注文が積み上がる山も低くなります。
一方で、納品先にはまとめて受け取るための保管場所や在庫の余力が必要になり、在庫を少なく持ちたい納品先ほど抵抗は大きくなります。
集約できるかどうかは出荷側だけでは決まらず、納品先の在庫の持ち方と合わせて話し合うことになります。
平準化は、週明けや月末に注文が集中するといった波をならす考え方です。
締切の位置を変えても、特定の曜日に注文が偏っていれば、その曜日だけ便に間に合わない状態は残ります。
締切後の注文や例外の記録を曜日別に見ると、どこをならせばよいかの手掛かりになります。
自社便を持っている場合は、配車や運行計画を見直して、山の日に便を寄せるのも一つの方法です。
判断基準は、発荷主に当たる第一種荷主だけでなく、着荷主に当たる第二種荷主にも向けて定められており、納品先の側でも検品の効率化などが対象になっています2。
物流の負担を減らすことは出荷側だけの都合ではなく、双方が取り組む課題として切り出せる、という点は納品先との話し合いの糸口になります。
積合せ・共同配送が使える条件
積合せは、ほかの荷主の荷物と一台のトラックに一緒に載せること、共同配送は、複数の荷主の配送をまとめて同じ便で届けることです。
判断基準は発荷主に対して、トラック事業者が積合せや共同配送、帰り便の荷物(復荷)の確保に取り組めるよう、実態に即した適切なリードタイムの確保や荷主間の連携を求めています2。
ここで締切との関係が出てきます。
運送側がほかの荷物と組み合わせて便を組むには、どこへどれだけの荷物が出るかを、ある程度前もって知る必要があります。
締切が遅く、出荷の量が集荷の直前まで決まらない状態では、運送側は組み合わせの計画を立てにくくなります。
締切を前に置くことは、出荷側の作業時間を確保するだけでなく、運送側が便をまとめるための時間を渡すことにもつながります。
実際に積合せや共同配送を使えるかどうかは、荷物の量、行き先、荷姿、運送会社が持っている便によって変わります。
小口の荷物で使える仕組みがあるのか、どの地域なら組めるのかは一律には言えないため、いまの運送会社に出荷の量と行き先を示して、組み合わせの余地があるかを相談するのが近道です。
その際、受注締切を何時にすれば組みやすいかを運送側から聞いておくと、逆算で出した締切と突き合わせることができます。
受注から引渡しまでの手順を並行も含めて組む
受注確定前に進める準備と締切後の作業
締切と便の時刻が決まると、その間に入る作業の順番を組み直す段階です。
受注締切、出荷指示、ピッキング、検品・梱包、積込、引渡しを一列に並べると、締切後にすべての作業が始まるため、締切から集荷までの時間がそのまま作業の上限になります。
多頻度小口で詰まりやすいのは、この直列の組み方です。
判断基準は荷役等の時間を短くする取り組みとして、パレットの導入・標準化、事前出荷情報の活用、検品の効率化、作業環境の整備を挙げています2。
また、2023年に経済産業省・農林水産省・国土交通省が策定したガイドラインは、トラック1運行あたりの荷待ち・荷役作業等の時間が計約3時間あることを踏まえ、これを2時間以内、さらに1時間以内にする目標を置いています4。
この2時間はドライバーの荷待ちと荷役の時間についての目標で、出荷担当者の作業時間の基準ではありません。
ただ、積込のときにドライバーを待たせない段取りを組むことは、この目標に沿う方向でもあります。
これを踏まえた組み方の提案として、作業を締切前に進められるものと、締切後でないと進められないものに分けて並べます。
- 締切前:定期的に入る注文や前日までの注文について、ピッキングと梱包資材の準備を先に進める
- 締切前:受注を時間帯で区切って出荷指示を出し、締切を待たずに途中までの分をピッキングに回す
- 締切前:運送側へ、出荷の見込み個数や行き先を事前に伝える
- 締切後:最後の区切りの注文をピッキングし、検品・梱包を済ませる
- 締切後:便ごとに積込順を確定し、伝票と個数をそろえて積込場所へ出す
- 引渡し:個数と伝票を照合して運送側へ渡し、積み残しがあれば記録する
締切前の作業をどこまで増やせるかは、受注がどの形で届いているかに左右されます。
FAXや電話の注文を手で起こしている場合、注文が入るたびに出荷指示へ変えるのは負担が大きく、区切って出す回数も限られます。
受注データを画面で確認できる仕組みがあれば、区切りを細かくしても転記の手間は増えにくくなります。
どちらの場合でも、締切後に残る作業が最後の区切りの分だけになれば、逆算で必要だったピッキングの所要がその分短くなり、締切を前倒しする幅を小さくできる可能性があります。
自社便と委託便での引渡し確認の違い
引渡しの最後の確認は、便が自社のものか委託かで担当と考え方が変わります。
自社便であれば出発時刻を自社で決められるため、積込が少し遅れても出発をずらす判断ができます。
配車や運行計画を出荷の山に合わせて組み直す余地もあり、引渡しの確認は積込担当と自社のドライバーの間で完結します。
委託便では、集荷時刻は運送会社の都合で決まり、ドライバーはほかの荷主の集荷も抱えています。
出荷側が個数や伝票の確認に手間取ると、それがそのままドライバーの荷待ちになり、運送側の運行計画にも響きます。
委託便では、集荷時刻の前に照合を終え、ドライバーが来た時点で渡すだけの状態にしておくことが、引渡しの手順の目標になります。
どちらの場合も、集荷時刻や便の本数が変わったときに、その知らせが受注締切を決める担当まで届く経路を決めておくことが大切です。
運送側の時刻だけが変わり受注締切が古いまま残ると、逆算で合わせた手順がまた崩れます。
納品先へ締切変更を伝える・運用後に見直す
通知文に入れる項目
締切を変えると決めたら、納品先への伝え方で運用の立ち上がりが変わります。
ここまでに見た2社の告知は、構成がよく似ています。
日本衛材は、変更前と変更後の締切、適用を始める受注分、変更の理由、対象となる当日出荷商品と除外される特注品・受注生産品を示しています5。
センチュリーメディカルも、変更前は13時と14時に分かれていたこと、統一後の時刻、適用を始める受注分、配送業者の集荷締切が早まったという理由を示しています6。
これを手掛かりに、通知に入れておきたい項目を並べると次のとおりです。
締切後の扱いと問い合わせ先は2社の告知から確認した項目ではなく、締切後の注文の整理を踏まえて加えた提案です。
- 変更前と変更後の締切時刻
- 適用を始める時期(受注日で特定する)
- 変更の理由(運送側の集荷時刻の変更など)
- 対象となる商品・地域と、除外する区分
- 締切後に入った注文の扱い(次の便に回すか、翌営業日の受注とするか)
- 問い合わせ先
適用の始まりを受注日で示すのは、出荷日で示すと、切り替え前日に受けて当日に出す注文がどちらのルールに当たるのか分かりにくくなるためです。
理由を書いておくと、納品先が社内で発注の時刻を変えるときの説明にも使ってもらえます。
ただし、2社の告知はあくまで通知文の例で、納品先とどう合意したかを示すものではありません。
締切の前倒しで納品先の業務が変わる場合は、通知の前に主な納品先と話しておくほうが、運用開始後の問い合わせや例外の依頼を減らしやすくなります。
見直しで見る観点
運用を始めたあとに何を見て見直すかについて、公的な指標や目安は示されていません。
ここでは、締切と手順を組んだ目的、つまり便に間に合わせることと、注文と出荷をまとめることがどこまでできているかを見る観点を提案します。
- 締切後に入った注文の件数と、その理由
- 例外として受けた注文の件数と、納品先・曜日の偏り
- 便に間に合わなかった出荷と、詰まった工程
- 便ごとの積込量の偏り
- 運送側からの集荷時刻や条件の変更の有無
これらは一度見て終わりではありません。
締切や手順を調整したら、同じ観点で記録を取り直し、また次の調整に生かす流れになります。
数字が改善しない場合、締切の位置ではなく別の工程に原因があることもあります。
締切後の注文が減ったのに便に間に合わないなら作業手順の側を、締切後の注文が特定の納品先や曜日に偏っているなら納品日の決め方の側を見直す、というように記録の偏りから戻る場所を選びます。
そうすると、見直しが締切の時刻だけを動かす作業になりません。
自社は法令上の対象か:荷主の努力義務と特定荷主の線引き
全ての荷主の努力義務
締切の置き方や納品日の集約は、自社の業務を回すための工夫であると同時に、荷主に求められている取り組みとも重なります。
物流効率化法のもとで、発荷主・着荷主を問わず全ての荷主に、物流の効率化に向けた努力義務が2025年4月から課されています3。
その内容を具体化したのが判断基準で、第一種荷主は主に発荷主、第二種荷主は主に着荷主を指します2。
判断基準は努力義務の中身を示すもので、強制ではありません2。
リードタイムの確保、繁閑差の平準化や納品日の集約、荷役等の時間の短縮といった項目について、どう取り組むかは各社の事情に応じて選ぶことになります。
そのうえで、便の出発時刻から締切を逆算することや納品日の集約は、判断基準の項目と同じ方向の取り組みとして位置づけられます。
納品先に締切の変更を説明するときに、運送側の事情だけでなく、荷主として求められている取り組みの一部だと添えることもできます。
物流事業者の立場でこの見直しを進めている場合は、扱っている貨物について自社が荷主に当たるかで、努力義務との関わり方が変わります。
自社で商品を仕入れて販売・出荷しているなら、自社が発荷主としての立場で判断基準と向き合うことになります。
荷主から出荷業務や配送を請け負っている場合は、受注締切や納品日は委託元と納品先の取引条件に関わるため、見直しは委託元の荷主と一緒に進める話になります。
自社がどの立場に当たるかの判断は、所管機関の案内で確かめておくと確実です。
特定荷主の基準と義務
努力義務とは別に、一定規模以上の荷主は特定荷主として指定され、さらに義務が加わります。
指定の基準は取扱貨物の重量で、9万トン以上が対象です3。
特定荷主には、中長期計画の作成、物流統括管理者の選任、定期報告などが課され、施行は2026年4月の予定とされています3。
自社が9万トンに届かないなら、関わるのは全ての荷主に共通する努力義務の側です。
届くかどうかは、自社が扱う貨物の重量を集計して比べることになりますが、重量の数え方や指定の手続きの細部は、施行後の運用も含めて所管機関の最新の案内で確かめる必要があります。
ここで示した施行時期や義務の内容は、国土交通省のポータルに掲載された概要に基づくものです。
特定荷主に当たる場合、締切や納品日の見直しは個別の現場改善ではなく、中長期計画に沿って進める取り組みの一部になります。
当たらない場合でも、取引先が特定荷主であれば、その取引先から納品日の集約やリードタイムの見直しについて相談を受ける場面は考えられます。
どちらの場合も、便の出発時刻から逆算した締切の根拠を手元に持っておくと、社内外への説明がしやすくなります。
| 区分 | 対象 | 施行 | 求められること |
|---|---|---|---|
| 全ての荷主 | 発荷主・着荷主 | 2025年4月 | 判断基準に沿った努力義務(リードタイムの確保・納品日の集約・荷役等時間の短縮など) |
| 特定荷主 | 取扱貨物の重量9万トン以上 | 2026年4月(予定) | 中長期計画の作成・物流統括管理者の選任・定期報告等 |
置ける締切を出すには、集荷時刻と各工程の所要、受注の届き方を並べる必要があり、担当者一人では締切をどこまで動かせるかの見極めがつきにくいためです。
いまの受注の届き方と出荷の流れを並べ、締切を前倒しする場合と作業を並行化する場合のそれぞれで、どの工程に無理が残るかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 締切の決め方 | 集荷時刻から積込・検品・ピッキング・出荷指示の所要を引き、置ける時刻を出す |
| 締切の単位 | 拠点ごとの逆算時刻の差が小さければ一本、大きければ地域別・商品区分別を検討 |
| 締切後の注文 | 次の便・追加便・受付停止を負担と納品先への影響で選び、例外の条件と判断者を決める |
| 回数を減らす | 納品日の集約・平準化は納品先の在庫余力と合わせて話し合う |
| 作業手順 | 締切前の準備と締切後の作業を分け、委託便は集荷前に照合を終える |
| 法令上の位置づけ | 全ての荷主に努力義務(2025年4月)、取扱貨物9万トン以上は特定荷主(2026年4月施行予定) |
締切の変更は納品先への通知や運送側との調整、荷主としての位置づけまで関わり、社内の判断だけでは説明の筋道を組み立てにくいためです。 締切変更の通知に入れる項目や締切後の注文の扱い、運用後に記録する観点を、自社の取引条件に合わせて整理できるかを確かめられます。
よくある質問
締切を早めると納品先から反発された場合、どう折り合いをつければよいですか
まず反発の理由を、発注の時刻が業務上動かせないのか、在庫の持ち方の問題なのかに分けて聞くと、打てる手が変わります。
発注を早められない納品先には、締切を一本で前倒しするのではなく、その地域の便に合わせた締切を残す、締切後の注文を次の便に回すと明確にする、といった選択肢があります。
在庫に余力がある納品先なら、納品日の集約と組み合わせることで、締切の前倒しによる不便を補える場合があります。
変更前と変更後の時刻、理由、適用の始まり、除外区分をそろえて示すと、納品先の社内説明にも使ってもらえます。
当日出荷の締切を商品ごとに変えてもよいですか
変えることはできます。
日本衛材は当日出荷の締切を12時としつつ、特注品・受注生産品は従来どおり所定の納期としています5。
工程が商品によって違う場合は、時刻を細かく分けるより、当日出荷の対象と対象外を区分で書き分けるほうが分かりやすくなります。
ただし受注のたびに区分を判定する手間が出るため、区分は受注担当が迷わない粒度にとどめるのが無難です。
委託の運送会社の集荷時刻が変わったとき、受注締切はいつ見直しますか
変更の知らせを受けた時点で、逆算をやり直します。
新しい集荷時刻から積込・検品・ピッキング・出荷指示の所要を引き直し、いまの締切との差を確かめます。
差が出たら、締切を動かすか作業を縮めるかを決め、納品先への通知に回します。
センチュリーメディカルも、配送業者の集荷締切が早まったことを理由に受注締切を統一しています6。
運送側の変更が受注締切の担当まで届く経路を、あらかじめ決めておくことが前提になります。
荷主の努力義務は、出荷側の小規模な事業者にも関係しますか
関係します。
努力義務は発荷主・着荷主を問わず全ての荷主に、2025年4月から課されています3。
規模で線が引かれるのは特定荷主に加わる義務のほうです。
努力義務の内容を具体化した判断基準は強制ではないため2、自社の便数や取引条件に合わせて、締切の逆算や納品日の集約など取り組める項目から進めることになります。
特定荷主に当たるかどうかは、どの数値で確認しますか
取扱貨物の重量で、9万トン以上が指定の基準です3。
施行は2026年4月の予定とされており、該当すると中長期計画の作成、物流統括管理者の選任、定期報告などが課されます3。
重量の数え方や指定の手続きの細部は、所管機関の最新の案内で確かめてください。
締切後に入った緊急の注文だけを例外にする場合、線引きをどう決めますか
「緊急」を受注担当の感覚で判断すると、例外が少しずつ広がり締切が形だけになります。
商品の区分、納品先の事情(その品物がないと業務が止まるか)、受付時刻のどれで線を引くかを先に決め、判断する人も一人に定めておくと運用がぶれにくくなります。
例外として受けた注文は件数と理由を記録し、特定の納品先や曜日に偏っていれば、例外ではなく締切の位置や納品日の決め方を見直す合図として扱います。
- 1 出典:国土交通省関東運輸局「物流の2024年問題に対する関東運輸局の取組」(2026年時点)
- 2 出典:国土交通省(物流効率化法ポータル)「荷主(第一種・第二種)の判断基準等」(2026年時点)
- 3 出典:国土交通省(物流効率化法ポータル)「荷主に対する規制的措置の概要」(2026年時点)
- 4 出典:経済産業省・農林水産省・国土交通省「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(2023年)
- 5 出典:日本衛材株式会社「受注締切時間変更の御案内」(2024年)
- 6 出典:センチュリーメディカル株式会社「当日出荷受注締め切り時間変更のお知らせ」(2024年)
画像の出典元
- Two couriers loading cardboard boxes into a delivery van outdoors./Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels