◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受発注の機能を持つソフトは、通常枠・インボイス対応類型・電子取引類型で対象になり得る。どれが候補になるかは、自社の立場と必要な機能数で変わる
- 交付決定前に発注・契約・支払いをすると、補助金は交付されない
- 通常枠の第6次締切は2026年10月30日17時、交付決定は12月10日予定で、ソフトの契約はその後になる
- 補助金を使えば負担は下がるが、開始時期・ソフトの選択幅・報告の手間に制約がかかる
- 取引先がFAXのままなら、件数の多い取引先から移し、併用中は記録を1つにまとめる
目次

受発注の手間とミスは、補助金を使う前に「どの業務のどこ」かを決める
電話やFAXで届いた注文を手で打ち直し、転記ミスや確認漏れが続いている。
仕組みを変えたくても、費用を考えると踏み切れない。
その段階で補助金を調べているなら、まず「使えるか」と「いつ動くか」を確かめます。
受発注の機能を持つソフトは、デジタル化・AI導入補助金の通常枠、インボイス枠のインボイス対応類型、電子取引類型で対象になり得ます。
ただし、対象者・必要な機能・補助率は枠ごとに違います。
交付決定前に契約・発注・支払いをすると対象外です。
直近の公式ページで示されている第6次の締切に間に合うかを見極め、補助金なしの段階導入も含めて選びます。
注文の受け取り・発注の送信・請求のどこで詰まるか
受発注の手間といっても、詰まっている場所は会社ごとに違います。
受注する側なら、FAXや電話で届いた注文を担当者が読み取り、販売管理の表に打ち込み、出荷の指示を書きます。
月末にはその記録から請求書を作ります。
発注する側なら、発注書を作ってメールで送り、取引先からの受注確認を待ち、届いた請求書を自社の発注記録と突き合わせます。
同じ「受発注」でも、手で写す回数が多い場所や確認が漏れる場所が違うのです。
この違いは、補助金を考えるときにそのまま効いてきます。
デジタル化・AI導入補助金では、何が補助の対象になるかがソフトの機能で決まるためです。
インボイス枠(インボイス対応類型)では、ソフトが「会計」「受発注」「決済」のうち、補助額50万円以下なら1機能以上、50万円超なら2機能以上を持つことが条件です2。
通常枠では、業務プロセスを1種類以上持つソフトが必要で、汎用的なプロセスだけのソフトでは申請できません1。
つまり「注文の受け取りだけを変えたい」のか「受注から請求まで一続きにしたい」のかで必要な機能の数が変わり、候補になる枠や補助額の区分も変わります。
書き出すときは、1件の注文を最初から最後まで追いかけるのが分かりやすい方法です。
注文がどの経路で届き、誰がそれを読み、どの表や画面へ何回写し、請求や支払いの確認でどこへ戻るかを順に並べます。
写す回数が多い箇所や、担当者しか分からない確認がある箇所が、ソフトで置き換える候補です。
逆に、件数が少なく写し間違いも起きていない業務まで一度に変えようとすると、機能が増えて見積が膨らみ、補助の区分の判断も複雑になります。
企業間データ連携の実証で業務時間が減った例と、その読み方の限界
ソフトを入れたら、どのくらい手間が減るのか。
公的な資料にある目安として、中小企業庁のミラサポplusが紹介している中小企業共通EDIの実証があります。
EDIは、企業間で注文書や請求書などのデータを電子的にやり取りする仕組みです。
記事によると、2016年度補正の実証事業(12プロジェクト)で、中小企業の業務時間が平均51.4%減りました5。
ただ、この数字をそのまま自社の見込みに当てはめることはできません。
実証の対象は、取引先とデータ形式を揃えてやり取りする企業間の連携です。
特定のソフトを社内に入れた効果ではありません。
記事は大企業との比較としてこの値を示しており、業務時間の定義や算出方法も書かれていません5。
この数字から読み取れるのは、取引先とのやり取りがデータになれば打ち直しや照合の作業が減る余地がある、という方向性までです。
自社でどれだけ減るかは、先ほど書き出した注文の流れを見て、どの転記がなくなり、どの確認が残るかを考えるほうが確かです。
取引先からの注文が紙やFAXのまま届くか、データで届くかによっても、減る範囲は変わります。
この点は、取引先との関係を扱う節で改めて考えます。
受発注DXに使える3つの枠と、対象になる費用・ならない費用
通常枠・インボイス枠・電子取引類型の比較表
変えたい業務と必要な機能が見えてきたら、次はどの枠に当てはめるかを考えます。
受発注のソフトが対象になり得るのは、通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型)、インボイス枠(電子取引類型)の3つです。
2026年度の公式ページ(2026年10月閲覧)の内容を、同じ軸で並べます。
条件は公募回で変わる可能性があり、申請時に基準になるのはその回の公募要領です。
表で判断が分かれるのは、補助率と必要な機能の関係です。
インボイス対応類型のソフトの補助率は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)で、通常枠の1/2以内より高く設定されています12。
その代わり、対象はインボイスに対応し、会計・受発注・決済の機能要件を満たすソフトに限られます。
また補助額が50万円を超える区分では、50万円以下の部分に3/4(小規模事業者は4/5)、超える部分に2/3が適用されます。
そのため、金額が大きくなるほど全体に占める補助の割合は下がっていきます2。
通常枠は、補助額の区分が業務プロセスの数で決まります。
1プロセス以上なら5万円以上150万円未満、4プロセス以上なら150万円以上450万円以下です1。
受発注だけでなく複数の業務をまとめて入れ替えたい場合に、この上限の大きさが意味を持ちます。
反対に、受発注と請求のように会計・受発注・決済の範囲で収まるなら、インボイス対応類型の補助率の高さと比べる意味があります。
電子取引類型は、ほかの2つと性格が少し違います。
対象は、発注する側が取引先にアカウントを無償で発行し、同じクラウド上で受注してもらえる受発注ソフトです3。
中小企業・小規模事業者等と受発注の取引をしている事業者であれば、大企業も対象になります3。
補助率は中小企業・小規模事業者等で2/3以内、その他の事業者で1/2以内です。
上限は350万円以下で、下限はありません3。
対象になる費用(ソフト・クラウド利用料・導入支援)
費用の内訳が公式ページで示されているのは、通常枠です。
必ず含まれるのは、ソフトの購入費と最大2年分のクラウド利用料です。
そのうえで、機能拡張・データ連携ツール・セキュリティといったオプションや、導入コンサルティング・設定・研修・保守といった役務も対象経費に挙がっています1。
経営判断として見落としやすいのは、クラウド利用料が最大2年分という点です。
月額や年額で払うクラウド型のソフトでは、3年目以降の利用料は補助の外になり、自社で払い続けることになります。
導入時の負担だけでなく、補助が終わった後も払い続けられる金額かどうかを、見積の段階で見ておく必要があります。
研修や設定の費用が対象になるのも、あくまで費用の分類としての話です。
研修を受ければ現場に定着するという保証ではありません。
誰が新しい画面で受注を入力し、誰が確認するかは別に決めておくことになります。
インボイス対応類型では、PCなどのハードウェアも対象になりますが、ソフトの使用に資するものに限られ、補助率は1/2以内です2。
電子取引類型の対象経費の内訳は、各回の公募要領で確かめることになります。
ハードウェアのみ・汎用プロセスのみは対象外
対象にならない形として、公式ページがはっきり示しているものが2つあります。
1つは、ハードウェアだけの申請です。
インボイス対応類型では、ハードはソフトの使用に資するものに限られ、ハードのみの申請はできません2。
もう1つは、汎用的なプロセスしか持たないソフトです。
通常枠では、業務プロセスを1種類以上持つソフトが必要とされています1。
「FAXの注文を読み取るためにスキャナーを買い替えたい」という発想から入ると、この条件に引っかかります。
受発注のどの業務をソフトで置き換え、そのソフトを使うためにどの機器が要るのか、という順で組み立てると申請の筋が通ります。
このほかに対象外となる費用の細目は、公募要領と見積の項目を一つずつ照らし合わせて判断します。
| 比べる点 | 通常枠 | インボイス対応類型 | 電子取引類型 |
|---|---|---|---|
| 補助率 | 1/2以内(賃金の条件を満たす場合は2/3以内) | ソフトは3/4以内(小規模事業者は4/5以内)。50万円を超える部分は2/3 | 中小企業・小規模事業者等は2/3以内(その他の事業者は1/2以内) |
| 補助額 | 1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下 | 350万円以下(50万円以下と50万円超で条件が変わる) | 下限なし〜350万円以下 |
| 主な対象者 | 公募要領の事業者要件による | 公募要領の事業者要件による(小規模事業者は補助率が上がる) | 中小企業・小規模事業者等と受発注の取引がある事業者(大企業を含む) |
| 必要な機能 | 業務プロセスを1種類以上(汎用プロセスのみは不可) | 会計・受発注・決済のうち、50万円以下は1機能以上、50万円超は2機能以上 | 発注側が受注側へ無償でアカウントを発行できるクラウド型で、インボイス対応の受発注機能 |
| 対象経費 | ソフト購入費、クラウド利用料(最大2年分)、オプション、導入・研修・保守などの役務 | ソフトウェア等に加え、ソフトの使用に資するPC・ハード(1/2以内、ハードのみは不可) | 内訳は公募要領で確認 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 受注する側
- FAXや電話の注文を読み取る
- 販売管理の表に打ち込む
- 月末に請求書を作る
- 発注する側
- 発注書を作ってメールで送る
- 取引先の受注確認を待つ
- 届いた請求書を発注記録と突き合わせる
- 書き出すときに見る点
- 注文がどの経路で届くか
- 誰が読み、何回写すか
- 担当者しか分からない確認はどこか
自社はどの枠に当てはまるか、申請前に確認すること
受注側・発注側で候補が変わる
どの枠が候補になるかを最も大きく分けるのは、自社がどちらの立場でソフトを使うかです。
ここでいう立場は、会社として売り手か買い手かではありません。
変えたい業務で、自社が注文を受け取るのか送るのかという意味です。
仕入先へ発注し、得意先から受注する会社なら、どちらの業務を先に変えるかで答えが変わります。
注文を受け取る側の業務を変えたいなら、候補はインボイス対応類型か通常枠です。
受発注に加えて請求や決済まで1つのソフトで扱いたい場合は、会計・受発注・決済の機能要件と合いやすくなります。
この場合は、インボイス対応類型の補助率が使えるかを先に見ます2。
受発注以外の業務も含めて複数のプロセスをまとめて変えたい場合は、プロセス数で補助額の区分が決まる通常枠が候補になります1。
注文を送る側の業務を変えたいなら、電子取引類型が候補に加わります。
この類型は、発注する会社が取引先に無償でアカウントを発行し、取引先にも同じクラウド上で受注してもらう形を前提にしています3。
取引先が多く、発注書の送付と受注確認のやり取りを1つの画面に寄せたい場合に合う仕組みです。
反対に、自社が受注側で、取引先から無償のアカウントを渡されて使う立場なら、この類型を使うのはアカウントを発行する発注側と考えられます。
自社の補助の検討とは切り分けて考えます。
ソフトが対象として登録されているかを確かめる
立場が決まったら、次の3つを順に確認します。
- 立場:注文を受け取る業務か、送る業務か
- 必要な機能数と想定額:インボイス対応類型なら、50万円を境に必要な機能数が1から2に増える
- 候補のソフト:その枠の要件を満たし、補助対象のITツールとして申請できるか
2番目で迷いやすいのが、50万円の境目です。
受発注の機能だけを持つソフトで補助額が50万円を超える計画にすると、2機能以上という条件を満たせません2。
この場合は、受発注と会計の機能を持つソフトにするか、計画を50万円以下に収めるか、通常枠で考え直すかを選ぶことになります。
3番目は、ソフトの側の条件です。
補助の対象になるかどうかは、ソフトの業務プロセスや機能、インボイスへの対応、電子取引類型なら無償アカウントを発行できるか、といった要件で決まります123。
交付決定後の実績報告は、申請者・IT導入支援事業者・事務局の3段階で進む仕組みで4、ソフトの提供側も手続きに関わります。
候補のソフトがこの補助金の対象として申請できるものかは、見積を取る段階で提供側に確かめておくと、後から枠を組み直す手戻りを防げます。
小規模事業者に当たるかどうかも、ここで効いてきます。
インボイス対応類型の補助率は、小規模事業者なら4/5以内に上がります2。
ただし、業種ごとの規模の定義などの事業者要件は公募要領で定められています。
どの区分に入るかで自己負担が変わるため、申請する回の要領で自社の規模を照らしてから計算します。
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文を受け取る業務を変える
- インボイス対応類型か通常枠が候補
- 請求や決済まで扱うなら機能要件と合いやすい
- 注文を送る業務を変える
- 電子取引類型が候補に加わる
- 取引先に無償でアカウントを発行する形が前提
- 複数のプロセスをまとめて変える
- 通常枠が候補
- プロセス数で補助額の区分が決まる
締切・発注の順序・実績報告:時期を誤ると対象外になる
第6次締切から逆算した流れ
枠の見当がついても、時期が合わなければ補助は受けられません。
通常枠の公式ページによると、第6次の日程は次のとおりです1。
締切は17時、交付決定は締切の後に予定されています。
事業実施期間と実績報告の期限は、締切の翌年5月末の予定とされています1。
これは通常枠のページに載っている日程で、インボイス枠の各類型の日程はそれぞれのページで確かめる必要があります。
「予定」とされた日程は変わる可能性もあります。
この日程に次の項で述べる発注のルールを合わせると、導入の時期が見えてきます。
交付決定が出るまでは発注できないため、第6次で申請した場合、ソフトの契約は早くても12月10日以降になります。
そこから2027年5月31日までに、契約、納品、支払いを済ませ、ソフトを実際に使い始め、実績報告を出すことになります。
年末年始や年度末に繁忙期がある会社なら、現場が新しい受注の手順に慣れる時間をこの期間のどこで取るかも考えておく必要があります。
締切まで時間が少ない場合、申請書類を揃えることと、業務のどこを変えるかを決めることを同時に進めなければなりません。
書き出した業務の流れが固まっていないなら、無理に今回へ合わせるより、次の公募に向けて準備するほうが枠選びの誤りを避けられます。
その場合の進め方は、最後の節で扱います。
交付決定前に発注・契約・支払いをしない
時期の誤りで最も影響が大きいのが、この順序です。
公式ページは、ITツールの発注・契約・支払いを交付決定後に行うこととし、交付決定前に行った場合は補助金の交付を受けられないと明記しています4。
申請しただけでは、まだ発注してよい状態ではありません。
この誤りは、急ぐ事情が重なる場面で起きやすくなります。
たとえば、いま使っている受注の仕組みの契約更新が近い、繁忙期の前に入れておきたい、といった事情で、交付決定を待たずに申込書へ署名してしまう場合です。
そうなると、そのソフトは補助の対象から外れます。
見積を取って機能を比べるところまでは進めても、契約・発注・支払いに当たる行為は交付決定まで止めておく。
これがこの制度で守るべき線です。
交付決定後の順序も決まっています。
発注・契約、納品、支払いの順に進め、それぞれの証拠となる書類を実績報告で提出します4。
注文書や契約書、納品の記録、支払いの記録を最初から1つのフォルダにまとめておけば、報告の時期に探し回らずに済みます。
実績報告と効果報告
補助金は、導入すれば終わりではありません。
この点も経営判断に入れておく必要があります。
実績報告の時点で、申請したすべてのツールの利用・運用が始まっていなければなりません4。
受注の画面だけ先に動かして請求の機能は後回し、という進め方では、申請した内容によっては条件を満たさなくなります。
報告は、申請者、IT導入支援事業者、事務局の3段階で進みます4。
事務局の確定検査を経た補助金額を、申請者が申請マイページで承認しなければ交付されません4。
その後も期限内に事業実施効果報告を出す必要があります。
また、賃上げの目標が必須となる枠や類型で目標に届かなかった場合は、補助金の返還を求められることがあります4。
手続きの流れを見ると、補助金は、ソフトの代金を支払って証拠を報告し、検査と承認を経てから交付される順になっています。
つまり導入時には、いったん自社で支払いを済ませる資金が要ります。
補助率で計算した自己負担だけでなく、交付までの資金繰りも含めて、使うかどうかを考えます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 補助額50万円以下
- 会計・受発注・決済のうち1機能以上
- 補助額50万円超
- 会計・受発注・決済のうち2機能以上
- 受発注の機能だけでは条件を満たせない
- 受発注だけで50万円を超える計画のとき
- 受発注と会計の機能を持つソフトにする
- 計画を50万円以下に収める
- 通常枠で考え直す
補助金を使う場合と使わない場合の比べ方
自己負担・手間・時期・自由度の比較表
ここまでの条件を並べると、補助金を使うことは「費用が下がる代わりに、時期と選び方に制約がかかる」選択だと分かります。
制度の条件をもとに、補助金を使う場合と自己資金だけで導入する場合を、4つの軸で整理しました。
ソフトごとの料金は製品と契約によるため、ここでは金額の相場は示しません。
表のうち判断が分かれやすいのは、「開始できる時期」と「ツールの選択幅」です。
転記ミスによる誤出荷や請求の誤りが頻繁に起き、その対応に人手を取られているなら、交付決定を待つ数か月の間もその手間は続きます。
この場合は、補助で下がる費用と、待つ間に続く手間とを比べることになります。
選択幅の制約は、受発注の流れが自社独特な会社ほど重くなります。
取引先ごとに注文の形式が違ったり、特定の取引先のための確認手順があったりする場合を考えてみます。
補助の要件を満たすソフトの中に合うものがなければ、補助率が高くても現場で使われない仕組みになりかねません。
逆に、受発注と請求の流れが標準的で、インボイス対応のソフトで足りるなら、補助を使わない理由は小さくなります。
手続きの手間は、担当者を誰にするかで重さが変わります。
実績報告や効果報告は導入からしばらく経ってからも続きます。
導入を進めた担当者が異動しても引き継げるよう、書類と日程を共有しておけるかが現実的な分かれ目です。
経営者自身が申請から報告まで抱えるのか、社内の誰かに任せるのかを申請前に決めておくと、途中で迷いません。
| 比べる点 | 補助金を使う | 自己資金だけで導入 |
|---|---|---|
| 自己負担 | 補助率の分だけ小さくなる。ただし交付までは自社で支払いを済ませる | 全額を負担する |
| 手続きの手間 | 申請、証憑の整理、実績報告、補助金額の承認、効果報告がある | 社内の決裁と契約 |
| 開始できる時期 | 交付決定後に発注(第6次なら2026年12月10日予定以降) | 社内で決まり次第 |
| ツールの選択幅 | 枠の要件を満たし、補助対象として申請できるソフトに限られる | 自社の業務に合うものを広く選べる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 2026年10月30日17時:申請締切
- 申請後から交付決定まで:見積と比較までにとどめる
- 2026年12月10日(予定):交付決定
- 交付決定後:発注・契約、納品、支払い、利用開始
- 2027年5月31日17時(予定):事業実施期間と実績報告の期限
取引先が受発注の方法を変えない場合の進め方
共通EDIの仕組みと受注側の負担
受発注のやり方は、自社だけでは決められません。
注文を受け取る側なら、取引先がFAXで送ってくる限り、FAXの注文は届き続けます。
注文を送る側なら、新しい仕組みに取引先が付き合ってくれるかどうかが壁になります。
取引先側の負担を考える材料として、中小企業共通EDIの考え方があります。
これまで取引先ごとにばらばらだったEDIのデータ形式を、国際標準に沿って共通化しようというものです。
受注側は共通EDIに対応したプロバイダーとアプリを使えばよく、大きな費用はかからないとされています5。
ただし、これは共通EDIという標準の考え方の紹介です。
個々の受発注ソフトがそうなっているという意味ではありません。
同じ記事は、日本政策金融公庫総合研究所の2018年の調査として、電子文書での商取引や受発注情報管理の導入率が18.5%だったことも紹介しています5。
今の導入率を示す数字ではありませんが、少なくとも当時は導入していない企業のほうがはるかに多かったことが分かります。
取引先のすべてがすぐに切り替わる前提より、FAXやメールが混ざる期間がある前提で計画を立てるほうが現実に合います。
その前提で、立場ごとに何が減り、何が残るかを分けておきます。
受注側がソフトを入れても、FAXで届く注文は、誰かが一度ソフトへ入力する作業が残ります。
減らせるのは、その入力を出荷や請求のためにもう一度写す作業です。
受発注と会計の機能が1つのソフトにあるかどうかで、減らせる範囲が変わります。
発注側が電子取引類型でアカウントを発行する場合、アカウントは無償なので取引先に利用料はかかりません3。
ただし、ログインして注文を確認し、受注を返すという新しい作業をお願いすることになります。
取引先の多い順に少数から始める
取引先が一斉に変わらないなら、変える範囲を絞って始める方法が考えられます。
取引の件数が多い取引先から数社を選んで新しい仕組みに移し、残りは従来のFAXやメールと併用するやり方です。
一次資料で効果が確かめられた方法ではなく、制度と取引先の事情から考えた進め方の提案です。
件数の多い取引先から始めるのは、1社を移したときに減る転記の量が大きく、効果を確かめやすいからです。
確かめるには、その1社分の注文について、受け取ってから請求までにかかる処理時間を導入前と導入後で比べます。
最初に書き出した注文の流れがあれば、どの段の作業がなくなったかも同時に見えます。
併用期間に注意したいのは、受注の記録が2か所に分かれることです。
FAXの注文は従来の表、データの注文はソフト、と分けたままにすると、在庫や請求を確認するたびに両方を見ることになり、確認漏れの原因が新しく生まれます。
併用中もどちらの記録を正とするかを決めておきます。
たとえばFAXの注文もソフトへ入力して記録を1つにするなど、二重管理をどこで断つかを先に決めておきます。
補助金を使う場合は、この進め方と実績報告の条件が両立するかも見ておきます。
申請したツールは、実績報告までに利用を始めている必要があります4。
少数の取引先から始める場合でも、ツールそのものは期限内に動かしておく段取りが要ります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 申請したすべてのツールの利用・運用を始める
- 実績報告を出す(申請者、IT導入支援事業者、事務局の3段階)
- 事務局が確定検査を行う
- 申請者が申請マイページで補助金額を承認する
- 補助金が交付され、期限内に事業実施効果報告を出す
補助金が使えない・間に合わない場合の始め方
次回公募を待つ場合の準備
締切に間に合わない、候補のソフトが要件を満たさない、社内で報告を担う人が決まらない。
こうした理由で今回の申請を見送る場合、道は2つあります。
次の公募を待つか、補助金なしで始めるかです。
ここからの手順は、制度の条件から考えた編集部の提案です。
通常枠の公式ページには、第7回公募の資料も掲載されています1。
次回の締切や交付決定の日程はその回の資料で確かめることになりますが、待つ期間は準備に使えます。
具体的には、次の順で進めます。
- 次の公募を待つか、補助金なしで始めるかを決める
- 業務の手順、取引先、扱う品目を整理する
- 見積と機能比較まで進める(発注・契約・支払いはしない)
- 補助金なしで始める場合は、一部の取引先から段階的に導入する
2番目の整理は、最初に書き出した注文の流れを、取引先と品目の単位まで広げる作業です。
どの取引先からどの経路で注文が来るか、品目ごとに確認の手順が違うかが分かれば、必要な機能、補助額の区分、どの枠に当たるかを、次の公募が始まった時点ですぐに判断できます。
交付決定前に行うと補助の対象外になるのは発注・契約・支払いなので4、見積と比較は準備として進められます。
補助金なしで段階導入する場合
補助金なしで始める判断は、待つ間に続く手間が大きい場合や、自社の受発注に合うソフトが補助の要件から外れる場合に意味を持ちます。
そのときも、一度にすべてを変える必要はありません。
件数の多い取引先や、転記ミスが集中している業務から始めれば、費用を抑えながら効果を確かめられます。
ここで一つ、知っておきたい点があります。
補助金なしで契約したソフトは交付決定前の契約に当たるため、後からその費用を補助の対象にすることはできません4。
まず自己資金で小さく始め、うまくいったら補助金で広げる、という順を考えるなら注意が必要です。
後から補助の対象にできる範囲があるかは、その時点の公募要領と照らして判断することになります。
補助金を使うかどうかは、受発注を変えるかどうかとは別の判断です。
補助金は費用を下げる手段の一つにすぎず、使えないことは、転記ミスや確認漏れをそのままにする理由にはなりません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受注側がソフトを入れた場合
- FAXの注文を一度ソフトへ入力する作業は残る
- 出荷や請求のために写し直す作業は減らせる
- 発注側がアカウントを発行する場合
- アカウントは無償で取引先に利用料はかからない
- 取引先にログインして注文を確認し受注を返す作業をお願いする
- FAXやメールとの併用期間
- 受注の記録が2か所に分かれやすい
- どちらの記録を正とするかを先に決める
どの業務がどの枠に当たるかを締切までに判断するには、自社の注文の流れと制度の条件を同時に照らし合わせる必要があり、一人では見落としが出やすいためです。
いまの注文の受け取りから請求までの流れを伝えていただければ、変える業務の範囲と、今回申請するか次の公募を待つかの考え方を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 使える枠 | 注文を受け取る業務はインボイス対応類型か通常枠。発注側で取引先にアカウントを出すなら電子取引類型も候補 |
| 必要な機能 | インボイス対応類型は会計・受発注・決済のうち、50万円以下で1機能以上、50万円超で2機能以上 |
| 発注の時期 | 交付決定後。決定前の発注・契約・支払いは補助の対象外 |
| 第6次の日程(通常枠) | 締切は17時、交付決定は締切後の予定、実績報告期限は締切の翌年5月末17時予定 |
| 導入後の義務 | 全ツールの利用開始、実績報告、補助金額の承認、効果報告 |
| 補助金なしの場合 | すぐ始められ選択の幅も広いが全額負担。契約したソフトは後から補助の対象にできない |
取引先ごとに注文の方法が違うと、どこから移し、併用中の記録をどう1つにするかを自社だけで決めにくいためです。 取引先と注文の経路を並べながら、最初に移す取引先の選び方と、併用期間に二重管理を断つ方法を相談できます。
よくある質問
発注側でも受注側でも補助金は使えますか。
どちらの立場でも対象になり得ますが、候補の枠が変わります。
注文を受け取る業務を変えるなら、インボイス対応類型か通常枠が候補です。
注文を送る側で、取引先に無償でアカウントを発行して同じクラウド上で受注してもらう形なら、電子取引類型も候補に入ります。
電子取引類型は、中小企業・小規模事業者等と受発注の取引をしている事業者であれば、大企業も対象です。
交付決定前に見積を取るのは問題ありませんか。
交付決定前に行うと補助を受けられなくなるのは、ITツールの発注・契約・支払いです。
見積を取って機能を比べることは、準備として進められます。
ただし、見積書に承諾の署名をして返す、申込金を払うなど、実質的に契約や支払いに当たる行為は交付決定まで避けてください。
PCやスキャナーだけの購入は補助対象になりますか。
インボイス対応類型では、ハードウェアのみの申請はできません。
ハードウェアは、ソフトの使用に資するものに限って対象になり、補助率は1/2以内です。
受発注のどの業務をソフトで置き換え、そのためにどの機器が要るのか、という順で考えます。
取引先がFAXのままでも受発注ソフトを入れてよいですか。
入れることはできます。
その場合、FAXで届く注文は誰かが一度ソフトへ入力する作業が残り、減るのはその後の出荷や請求のための書き写しです。
件数の多い取引先から順に移し、併用中はどちらの記録を正とするかを決めておくと、確認先が2か所に分かれるのを防げます。
今回の締切に間に合わない場合、次の公募まで何を準備すべきですか。
通常枠の公式ページには第7回公募の資料も掲載されています。
日程はその回の資料で確かめてください。
待つ間は、注文の流れ・取引先・扱う品目を整理し、必要な機能と枠の見当をつけておきます。
見積と機能比較までは進めてかまいませんが、契約や支払いはしないでください。
補助金なしで先に契約すると、そのソフトは後から補助の対象にできません。
補助金を受けた後、どんな報告が必要ですか。
実績報告では、発注・契約、納品、支払いの証憑を提出します。
報告の時点で、申請したすべてのツールの利用が始まっている必要があります。
事務局の確定検査を経た補助金額を申請マイページで承認しないと交付されず、その後も期限内に事業実施効果報告が必要です。
賃上げの目標が必須となる枠や類型で目標に届かない場合は、返還を求められることがあります。
- 1 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠」(2026年度)
- 2 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026年度)
- 3 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)」(2026年度)
- 4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 交付決定後に必要な手続き」(2026年度)
- 5 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)