◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 一次対応の整備は、入口の集約、分類と振り分け、一次回答の範囲、引き継ぎと完了、記録という5つの工程を順に決めていきます。
- 苦情対応の指針を示す規格は2019年に定められ、受理から追跡、回答、是正までを一連の過程として扱っています。
- 初回応答までの時間は、営業時間で数えるかカレンダー時間で数えるかで値が変わるため、定義を先に文書化します。
- 個人情報の取り扱いの指針は令和8年6月に一部が改正されており、利用目的の特定と閲覧範囲の設定を先に整理します。
目次
問い合わせの一次対応とは何かを整理します
問い合わせの一次対応とは、届いた問い合わせを受け付け、内容を分類し、その場で答えられる範囲を回答したうえで、残りを担当部門へ引き継ぐまでの一連の工程です。企業間取引では納期の照会や在庫の確認、単価や請求内容の問い合わせが中心となり、回答の遅れが受注や出荷の予定へそのまま響きます。苦情対応の指針を定めた規格*5も、受理から追跡、回答へと段階を分けて示しています。まずはこの分け方を社内でそろえるところから始まります。
一次対応と二次対応は、扱う判断の重さで分かれます。一次対応が担うのは、受け止めと事実の確認、そして手元の資料で答えられる範囲の回答です。二次対応が担うのは、他部門の判断や社外への照会が要る調査、条件の交渉、例外の可否といった領域になります。境目を「自席の資料と参照できる画面で確認できるかどうか」に置くと、担当者が迷う場面を減らせます。
この境目を決めないまま運用すると、対応の粒度が人によって変わります。ある担当者は自分で調べて答え、別の担当者は同じ内容をすぐ二次へ回す、という差が生まれるためです。差が出ると二次対応の負荷が読めなくなり、増員や配置の判断材料も作れません。範囲の明文化は、品質をそろえる作業であると同時に、負荷を測るための前提でもあります。
企業間取引の問い合わせには、消費者向けとは異なる特徴があります。取引条件が契約ごとに異なるため、同じ質問でも取引先によって答えが変わる場面が生じます。窓口も電話、ファクシミリ、電子メール、ウェブの受付フォームという4つの入口に分かれやすく、担当者個人の受信箱へ直接届く経路も残ります。相手も業務として問い合わせており、回答の期限が相手側の作業予定へ組み込まれている点も押さえておきたいところです。
苦情への対応については、国際規格と一致する内容の日本産業規格が2019年に定められています*5。この規格は、対応する国際規格が2018年版であることを明記したうえで、苦情を受け付けてから追跡し、回答し、必要に応じて是正へつなげる過程を指針として示すものです。規格そのものは認証を約束するものではありません。自社の対応方針を見直す際の手引きとして、工程の抜けを探す用途に向いています。
整理の最初の一歩として、用語の定義を書き出す方法をお勧めします。受付、一次回答、引き継ぎ、完了という4語について、それぞれ何をもってその状態と見なすかを1文で決めます。言葉がそろうと、記録の項目も、後の工程で決める指標の定義も、同じ土台の上で組み立てられるようになります。
一次対応を整える目的は、対応の速さだけではありません。同じ問い合わせに同じ品質で答えられる状態を作り、担当者が欠けても業務が止まらない状態へ近づけることにあります。速さだけを追えば回答の正確さが落ち、正確さだけを追えば回答が遅れます。この2つを同時に見る前提が、後半で決める指標へつながっていきます。
一次対応の整備で先に決める5点(順位の根拠:後の工程が前の工程の決定に依存するため、実施の順序で並べています)
- 問い合わせの入口を書き出し、受付の記録を1か所へ集約します。電話、ファクシミリ、電子メール、ウェブの受付フォームに加えて、担当者個人へ直接届く経路も数えます。
- 内容の分類を決めます。在庫と納期、見積と単価、注文の変更、請求と入金、出荷と配送、製品仕様、不具合の申し出といった区分から、自社に現れるものを選びます。
- 分類ごとの一次担当と二次担当を対応表にします。担当者名ではなく役割で書き、不在時の代替担当と、判断が付かない場合の相談先も併記します。
- 一次回答の範囲を、公表済みの資料と契約書の記載、参照できる画面で確認できる事実までに限ります。価格や納期の確約、契約条件の解釈は二次へ渡します。
- 引き継ぎの様式と完了の判断基準を決めます。依頼者、対象の番号、確認済みの事実、未確認の事項、伝えた期限の5点を渡し、依頼者に追加の質問がない状態を完了とします。
一次対応が滞ると業務にどのような影響が出るのかを確認します
一次対応が滞ったときの影響は、窓口の中では収まりません。回答待ちの案件は取引先の発注判断を止め、出荷指示の修正や納期の再調整を後ろへ押し出します。社内でも、担当者ごとに受け付け方が違えば同じ内容でも回答までの時間が変わり、遅れの原因を切り分けられなくなります。人手の確保と生産性の向上を論点に据えた令和7年版の労働経済の分析*4が扱うとおり、限られた人員で業務をどう回すかという問いは、窓口だけの話ではありません。
回答待ちが停滞へつながる流れは、いくつかの段階を踏みます。取引先は在庫や納期の回答を得てから発注を確定し、社内はその発注を受けて出荷の手配へ進みます。最初の照会への回答が半日遅れれば、発注の確定も、出荷指示の作成も、同じだけ後ろへずれます。1件の未回答が、複数の工程の待ち時間へ姿を変えていきます。
当日出荷の締め時刻を挟むと、遅れ方が変わります。締めを過ぎた案件は翌営業日の便へ回り、輸送の手配も取り直しになります。相手側の入荷予定や検収の日程まで動くため、窓口での半日が、取引全体では数日分の予定変更になる場合があります。連休や月末の締めと重なれば、影響はさらに後ろへ伸びていきます。
担当者ごとの対応差は、能力の差ではなく仕組みの欠けから生まれます。原因を分けると、受付の記録が残らないこと、回答してよい範囲が決まっていないこと、過去の回答を探せないこと、引き継ぎの様式がないことの4点に集約されます。どれも個人の努力では埋まりません。逆に言えば、この4点は工程の設計によって先に埋められる部分です。
属人化した状態は、欠員が出た瞬間に表面化します。特定の担当者しか経緯を知らない案件は、休暇や異動のたびに止まります。申し送りの様式がなければ、引き継ぎのたびに口頭での説明が要り、伝え漏れも起こります。繁忙期に人を足しても教える側の時間が奪われるため、すぐには戦力になりません。
問い合わせ対応は、計画していた業務を分断する形で入ってきます。作業を中断して対応し、戻ってから前の作業を思い出す、という手間が回数分だけ積み上がります。記録がなければ、この総量は誰にも見えません。件数と所要時間を残すことが、体制を見直すための最初の材料になります。
影響の大きさは、問い合わせの内容によっても変わります。出荷や請求に関わる照会は期限が明確で、遅れがそのまま相手の業務を止めます。仕様や資料に関する照会は期限が緩い一方で放置されやすく、後から苦情へ発展する場合もあります。期限の緩急で扱いを分ける発想が、次に決める振り分け規則の下地になります。
窓口の負荷は、件数だけでは測れません。同じ1件でも、契約条件の確認が要る照会と、公表済みの資料を案内して終わる照会では、要する手間が大きく異なります。1件あたりの所要時間を記録に残しておけば、件数だけでは見えない手間の偏りを数字で示せます。件数と内容の両方を残しておくと、負荷の実像に近づけます。
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一次対応を整える手順を工程ごとに見ていきます
一次対応の整備は、入口の棚卸し、分類と振り分け、一次回答の範囲、引き継ぎと完了の判断、記録という5つの工程を順に決めていきます。後ろの工程は前の工程の決定に依存するため、順序を入れ替えると決め直しが生じます。分類が決まっていなければ、定型の回答文をどの単位で用意するかも決まりません。5つの工程はいずれも、特別な道具がなくても文書だけで着手できます。
最初の工程は、問い合わせの入口をすべて書き出す作業です。電話、ファクシミリ、電子メール、ウェブの受付フォームに加えて、担当者個人の名刺や署名から直接届く経路も数えます。営業担当が訪問先で受け取る依頼、受発注の画面から送られる連絡も入口の一つです。書き出したうえで、共有の受け皿へ寄せられるものから順に集約していきます。
集約の目的は、受付の事実を1か所に残すことにあります。個人の受信箱に届いたままでは、不在時に誰も気付けません。電話については受付票の様式を決め、通話の直後に共有の場所へ記録する運用にします。すべての入口を一度に統合できない場合でも、記録の集約だけを先に進める方法が取れます。
次に、問い合わせの内容を分類します。企業間取引では、在庫と納期の照会、見積と単価、注文内容の変更、請求と入金、出荷と配送、製品仕様、不具合の申し出といった区分が現れます。分類は、受け付けた担当者が迷わず選べる粒度にとどめます。細かすぎれば選択に時間がかかり、粗すぎれば後の振り返りで使えません。
分類が決まったら、分類ごとに一次担当と二次担当を対応表へ落とします。表には不在時の代替担当と、判断が付かない場合の相談先も併記します。振り分けの規則は、担当者名ではなく役割で書いておくと、異動のたびに作り直さずに済みます。規則から外れる例外は、その場で判断せず相談先へ回す形にそろえます。
一次回答の範囲は、確認できる情報源で線を引きます。公表済みの資料、契約書に明記された条件、参照できる画面で確認できる事実までを一次回答とし、それ以外は二次へ渡します。価格や納期の確約、契約条件の解釈、責任の所在に関わる回答は、一次では出しません。よく届く問い合わせには定型の回答文を用意し、取引先ごとに変わる部分だけを書き換える形にします。
引き継ぎでは、渡す項目をあらかじめ決めておきます。依頼者と取引先、対象の注文や案件を特定する番号、確認済みの事実、未確認の事項、相手に伝えた期限の5点がそろえば、二次側は調査から着手できます。完了の判断は、担当者の作業が終わった時点ではなく、依頼者が回答を受け取り追加の質問がない状態に置きます。曖昧なまま閉じると、同じ案件が別の入口から再び現れます。
最後の工程が記録です。何をいつ受け付け、どう分類し、誰が答え、いつ終えたのかを残します。受付と完了の日時は分の単位まで残しておくと、後から数え方を変えても同じ記録から再集計できます。記録の項目は次に扱う指標と直結するため、指標を決めてから様式を固める順序でも構いません。
対応の質を測る指標と記録の残し方を決めます
対応の質を測るときは、数える前に定義を決めます。中心となるのは、初回応答までの時間と、一次対応で完結した割合の2つです。どちらも、開始と終了をどの時点に置くか、営業時間で数えるかカレンダー時間で数えるかによって値が変わります。ある業務用製品の公式ドキュメントも、返信までの時間を2通りの数え方に分けて示しています*7。定義を先に文書化し、途中で変えないことが、比べられる数値を作る条件になります。
初回応答までの時間は、問い合わせが届いた時点から、担当者が最初に返した回答までの経過で測ります。参照した公式ドキュメントの定義*7では、依頼が作られてから最初の公開の返信までを対象とし、営業時間で数える値とカレンダー時間で数える値を分けています。自動の受付通知を応答に含めるかどうかも、あらかじめ決めておきます。含めれば数値は良く見えますが、相手の待ち時間そのものは変わりません。
数え方の違いは、同じ案件でも値を大きく変えます。営業時間を1日8時間、週5日と定めた場合、金曜の夕方に届き月曜の午前に答えた1件は、カレンダー時間では60時間を超える一方、営業時間では数時間として計上されます。公式ドキュメント*7が2通りの値を並記しているのは、この差を混ぜないためです。社内の物差しはどちらか1つに決め、記録の様式にも同じ単位で残します。
この値を他社の公表値と横に並べる使い方は避けます。集計の対象も、営業時間の設定も、公開の返信をどう扱うかも、製品や運用によって異なるためです。比較の相手は自社の過去に置き、同じ定義で取り続けた値の推移を見ます。季節の繁閑があるため、前月ではなく前年の同じ時期と比べる方法も有効です。
一次対応で完結した割合は、二次へ引き継がずに終えた件数を、受け付けた件数で割って求めます。分母の置き方で値が動くため、誤送信や重複の扱いを先に決めておきます。この割合は高いほど良いとは限りません。無理に一次で答えれば誤りが増えるため、再び届いた問い合わせの件数と合わせて見る必要があります。
記録する項目は、受付の日時、入口、取引先、分類、一次回答の有無、引き継ぎ先、完了の日時を基本とします。自由記述の欄は要点だけにとどめ、選択式で埋められる項目を増やすと入力の手間が下がります。記録が負担になれば運用は続きません。入力そのものに要する時間も、あわせて見ておきます。
蓄積した記録は、月に一度の振り返りで使います。分類ごとの件数と所要時間を並べると、手間の集中している領域が浮かび上がります。件数の多い分類は、資料の書き方や注文書の様式を直すことで、問い合わせの発生そのものを減らせる場合もあります。窓口の速度を上げるだけでなく、入口の手前を直す視点を持ちたいところです。
指標は、担当者の評価ではなく工程の点検に使います。個人の成績として扱えば、記録を軽くする動機が生まれ、数値の意味が失われます。見るのは工程の詰まりであり、責めるための道具ではないという前提を、運用の開始時に共有しておきます。
目標値は、いきなり高く置かないやり方が続きます。まず1か月ほど現状の値を取り、その分布を見てから無理のない水準を決めます。分布の中で特に遅い案件を選び、何が待ち時間を作ったのかを個別にたどると、次に直すべき工程が定まってきます。
情報の取り扱いと体制づくりで押さえる点を確認します
問い合わせの記録には、取引先の担当者の氏名や連絡先、やり取りの経緯といった個人情報が含まれます。個人情報の取り扱いを定めた法律の指針*3は令和8年6月に一部が改正されており、利用目的の特定、安全管理措置、第三者への提供の制限といった基本の考え方を示しています。部門をまたいで共有する運用を作るなら、これらの整理を先に済ませます。記録の様式を決める工程と同時に進めると、後からの作り直しを避けられます。
まず決めるのは、取得する情報の利用目的です。問い合わせへの回答と、その後の品質の改善に使うといった範囲をあらかじめ定め、指針*3に沿って本人が分かる形にしておきます。目的の範囲を超えた使い方、たとえば取得した連絡先を別の案内へ流用する運用は避けます。受付フォームを使う場合は、入力画面から目的の説明へたどれるようにしておきます。
社内の他部門へ回す行為そのものは、第三者への提供とは異なる扱いになります。ただし誰でも見られる状態にしてよいわけではなく、指針*3が求める安全管理措置として、閲覧できる範囲を業務上必要な担当へ絞ります。外部の事業者へ対応を委ねる場合は、委託先に対する監督が求められます。委託の範囲と記録の取り扱いを、契約の段階で明確にしておきます。
記録に残す情報は、必要な範囲にとどめます。回答に不要な事項まで書き写せば、管理すべき対象が増えるだけです。保存する期間と、期間を過ぎた記録の廃棄手順もあわせて決めておきます。誰がいつ廃棄するのかまで決めておかないと、運用は続きません。
体制の面では、負荷の偏りを先に想定します。当番制で一次窓口を持ち回る、時間帯で担当を分ける、分類ごとに主担当と副担当を置くといった方法があります。1人に集中させない配置にしておけば、休暇や急な欠員でも受付は続きます。コンタクトセンターの業界団体が毎年まとめている実態調査*6のように、業務単位で運用の実態を継続して調べた資料も、体制を見直す際の参照先になります。
交代時の申し送りは、様式を決めて短時間で終える形にします。未完了の案件、相手に伝えた期限、確認済みの事実、次に必要な作業の4項目がそろえば、引き継ぎ先はすぐ動けます。口頭だけの申し送りは、伝え漏れと解釈の食い違いを生みます。記録の画面をそのまま申し送りの資料として使えると、二重の作業がなくなります。
対応方針は、決めた後に見直す前提で作ります。苦情対応の指針を示した規格*5も、対応の過程を定期的に点検し、必要に応じて是正へつなげる流れを扱っています。分類が実態と合わなくなった、定型の回答文が古くなった、といった変化は運用の中で現れます。半期に一度など、見直しの時期をあらかじめ決めておく方法が続けやすいでしょう。
仕組みで支える段階へ進むときの判断材料を整理します
手作業のままでよい範囲と、仕組みへ置き換える範囲は、3つの材料で見分けられます。件数が多いか、判断の規則が決まっているか、記録として残す必要があるかの3点です。3つがそろう作業は置き換えの候補となり、どれかが欠けるなら人が担い続ける判断も成り立ちます。導入の前に、ここまでで整えた分類と記録の様式が固まっているかを見ておきます。土台がないまま道具だけを入れても、運用は定着しません。
置き換えに向くのは、規則で答えが決まる作業です。受付の記録を残す、分類に応じて担当へ割り当てる、対応の状況を依頼者へ知らせる、といった作業がこれに当たります。反対に、契約条件の解釈、価格や納期の交渉、例外の可否といった判断は人が担います。この線引きを先に決めておけば、道具の選び方も具体化します。
受発注の仕組みと問い合わせ窓口をつなぐ考え方も押さえておきます。注文番号のような共通の鍵で、問い合わせの記録と受注のデータを結べると、照会のたびに画面を行き来する手間が減ります。取引先が在庫や出荷の状況を自分で確認できる経路を用意すれば、問い合わせの発生そのものが減る場合もあります。窓口の速度を上げる前に、問い合わせを生まない経路を作るという発想です。
生成人工知能の業務利用が広がる状況も、前提として見ておきます。令和7年版の情報通信白書1は企業における利用の現状を扱い、2026年に公表された最新の動向調査2は、広がるAI導入という論点を表題に掲げています。過去の回答の検索や、回答文の下書きの作成は、一次対応と相性のよい用途です。ただし社外へ出す回答は人が確認する手順を残し、根拠となる資料を添える運用にします。
参照や学習の材料になるのは、自社に残した記録です。分類がそろい、回答と根拠が対で残っていれば、過去の事例を引く用途で使えます。記録が自由記述だけの状態では、参照の精度も上がりません。この意味でも、記録の様式を整える工程が先に来ます。
自社だけで進める場合に必要となる知見も見ておきます。受発注の仕組みとの接続、閲覧権限の設計、個人情報の取り扱いの整理、指標の定義と集計の設計といった領域を、業務の理解と併せて担う人員が要ります。窓口の運用を続けながらこれらを設計するには、通常業務とは別の時間の確保が欠かせません。外部の支援を使う判断は、作業を丸ごと渡すためではなく、設計の抜けや法令面の見落としを減らすために置く選択です。
進め方としては、一度に全体を置き換えない方法が現実的です。分類の割り当てと受付の記録だけを先に仕組みへ移し、残りは手作業のまま運用しながら効果を見ます。指標の定義を先に決めてあれば、置き換えの前後を同じ物差しで比べられます。効果が見えた範囲から順に広げていけば、うまくいかなかったときの戻し方も簡単です。
一次対応の整備によくいただくご質問にお答えします
一次対応の整備について寄せられる問いは、少人数でも進められるか、電話や紙の問い合わせが多い場合はどうするか、どこから着手すると効果が見えやすいか、の3つに集まります。答えを先に述べると、工程の順序は体制の規模によって変わりません。人数が少ないほど、入口の集約と記録の様式という前半の2工程が効いてきます。規模や入口の構成が違っても、決める項目そのものは共通です。
少人数の体制でも、決める順序は変わりません。担当が1人か2人であれば、分類の数を絞り、対応表も1枚に収まる範囲で作ります。この規模で効くのは、記録を残す習慣です。担当者が休んだ日に別の人が受付だけでも代われる状態は、記録の様式がなければ作れません。
一度に全部を決めようとせず、1工程ずつ運用しながら直す方法をお勧めします。入口の集約を1か月続けて件数の分布を見てから、分類を決めても遅くはありません。順に積み上げれば、通常業務を止めずに整備を進められます。
電話やファクシミリの比率が高い場合は、記録の集約から始めます。通話の内容は放っておけば残らないため、受付票の様式を1つに決め、通話の直後に書き込む運用にします。項目は、相手、分類、依頼内容、期限、次の作業の5つ程度に絞ると、通話中でも埋められます。ファクシミリは受信した紙を共有の場所へ集め、受付票と同じ項目を転記します。
紙のままでも、記録の項目がそろっていれば件数と分類は集計できます。仕組みへの置き換えは、その集計で手間の大きい領域が見えてからでも構いません。順序を逆にすると、何を置き換えるべきかが決まらないまま道具を選ぶことになります。
効果が見えやすい着手点は、入口の集約と受付の記録です。件数と分類が見えれば、増員の要否も、置き換えの対象も、根拠を持って決められます。逆に定型の回答文づくりから始めると、どの問い合わせが多いのか分からないまま文面だけが増えていきます。測れる状態を先に作る順序が、後の判断を助けます。
整備の効果は、すぐには数値へ現れません。初回応答までの時間は繁閑の影響を受けるため、同じ時期同士で比べる必要があります。最初の1か月から3か月は現状を測る期間と位置付け、その後に改善の幅を見ていく進め方が現実的です。急いで目標値だけを掲げれば、記録の質が落ち、判断の材料が失われます。
整備を進める中で判断に迷うのは、例外の扱いです。規則から外れる依頼を一次で受けるかどうかは、相談先を決めておけば個々の場面で悩まずに済みます。例外の内容そのものを細かく定めるより、迷ったときの持ち込み先を1か所に決める方が、運用は続きやすくなります。
よくある質問
問い合わせの記録は、どのくらいの期間残しておけばよいですか
保存期間を一律に定めた決まりがあるわけではないため、自社で期間を決めます。取引に関わる照会は注文の履歴と突き合わせる場面があるため、受発注の記録と同じ期間にそろえる考え方が取れます。個人情報を含む記録については、目的を終えた後の廃棄手順と担当まで決めておきます*3。
外部の事業者へ一次対応を委ねる場合、何を決めておく必要がありますか
委託する範囲と記録の取り扱いを、契約の段階で明確にします。個人情報を含む業務を委ねる場合は、委託先に対する監督が求められます*3。あわせて、一次回答の範囲、二次へ引き継ぐ条件、指標の定義を委託先と共有しておかないと、社内で測ってきた数値と連続しなくなります。
繁忙期に人を増やす対応と、一次対応の整備はどちらを先に進めるとよいですか
整備を先に進める方法をお勧めします。分類と対応表、定型の回答文がそろっていれば、増員した担当者がその日から受付を担えます。様式がない状態で人を足すと、教える側の時間が奪われ、かえって回答が遅れる場合もあります。
指標の目標値は、どのように決めればよいですか
最初から目標値を置かず、1か月ほど現状の値を集めてから決める方法が続きます。分布を見たうえで、遅くなった案件が何によって遅れたのかをたどると、無理のない水準が見えてきます。他社の公表値は集計の定義が異なるため、そのまま目標へ転用しません*7。
規格に沿って整えると、認証を受けられますか
苦情対応の指針を示す規格は、対応の過程についての手引きであり、認証を約束するものではありません*5。自社の工程に抜けがないかを点検する材料として使う位置付けになります。第三者による評価が必要な場合は、別の枠組みを検討することになります。
- *1 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書(企業におけるAI利用の現状)」(2025) 経路
- *2 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026(広がるAI導入、DXは変われるか)」(2026) 経路
- *3 出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(2026年・令和8年6月一部改正) 経路
- *4 出典:厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析(労働経済白書)」(2025) 経路
- *5 出典:一般財団法人日本規格協会「JIS Q 10002:2019 品質マネジメント―顧客満足―組織における苦情対応のための指針(対応国際規格 ISO 10002:2018、IDT)」(2019) 経路
- *6 出典:一般社団法人日本コンタクトセンター協会「コンタクトセンター企業実態調査(2025年度版)」(2025) 経路
- *7 出典:Zendesk「Understanding ticket reply time(公式ヘルプドキュメント)」 経路
画像の出典元
- A blue figure in a suit on yellow floating discs against tea/Photo by Igor Omilaev on Unsplash
- text/Photo by Clayton Robbins on Unsplash
- Brown oval buttons stacked vertically against a green gradie/Photo by Puscas Adryan on Unsplash
- A large pile of brown cardboard boxes with blue tape/Photo by Rohit Choudhari on Unsplash