◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 検収は民法に手続きの定めがないため、受入確認項目、検査期間、期間を過ぎた場合の扱い、差戻しの範囲を契約と運用で決める。
- 請負では完成した目的物を、準委任では作業実績か約束した成果を確認する。契約書の「検収」が何を指すかを先に言葉にしておく。
- 取適法の対象取引では、支払期日は検査の有無にかかわらず受領日(役務は完了日)から数える。確認時点を受領とする事前合意がある場合は、検査期間もあわせて決める。
- 差戻しは、合意した確認項目に照らした不合格か、項目にない追加要望かを切り分けてから対応し、日付つきで記録を残す。
- テンプレート、担当の指定、記録、振り返りを仕組みにし、期限超過と差戻しの件数を案件ごとに比べて見直す。
目次

納品後に検収が止まる4つの原因と、受注側が先に決めておくこと
納品物を送ったのに発注側から検収の返事が来ず、請求書を出せないまま月末を越える。
ようやく返ってきた指摘には、仕様書にない修正が混ざっている。
こうした止まり方の多くは、合格の基準、検査の期間、依頼の出し方、差戻しの扱いが、納品前に決まっていないことから起きます。
検収は民法に手続きとして定められたものではなく、契約で形をつくるものです。
見積・契約の段階で基準と期間を合意し、納品時に検収依頼書を出す流れにすると、止まる場所を減らせます。
取適法の対象取引では、支払期日は検収日ではなく受領日から数えます。
まず、自社の取引が対象かを確かめてください。
基準が曖昧:何をもって合格とするか
民法は、請負の報酬を、仕事の目的物の引渡しと同時に支払うと定めています1。
一方で、請負と委任の報酬に関する規定には「検収」という手続きは出てきません。
発注側が何を確かめれば合格になるのか、いつまでに確かめるのかも書かれていません。
検収は、当事者が契約と運用で中身を決める手続きです。
決めないまま納品すると、どこで止まってもおかしくない状態になります。
止まり方をたどると、基準、期間、依頼の出し方、差戻しの扱いのどれかが決まっていないことに行き着きます。
最初の基準は、何をもって合格とするかです。
たとえば、受注側が業務システムの画面一式を納めたとします。
発注側の担当者は入力の動きを確かめ、別の部署の人は画面の文言を読み、上長は全体の印象を見ます。
合格の物差しが決まっていなければ、それぞれが気付いた点をすべて指摘できます。
その結果、指摘がまとまるまで回答は返ってきません。
受注側にとって困るのは、返ってきた指摘が不合格の理由なのか、新しい要望なのかを区別できないことです。
区別できなければ、修正した後にまた次の指摘が出るかどうかも見通せません。
そこで先に決めておくのが、受入確認項目です。
仕様書のどの項目を、どの方法で確かめれば合格とするかを決めます。
項目は仕様書から起こし、画面操作、数量の照合、帳票の突き合わせといった確認の方法まで書いておきます。
そうすれば、発注側も確認の範囲が分かります。
期間が未設定:いつまでに返答をもらうか
二つ目は期間です。
検査の期限がないと、発注側の担当者にとって検収はいつ終えてもよい作業になります。
ほかの業務に押されて後回しになっても、発注側の社内で困る人はいません。
困るのは、請求を出せない受注側だけです。
しかも期限の取り決めがなければ、催促するときに「いつまでに」と言える根拠がありません。
先に決めるのは、検査期間と、期間を過ぎても回答がないときの扱いです。
扱いには段階があります。
受注側から連絡して回答予定日を確かめる、再依頼する、契約で合格とみなす条項を置く、といったものです。
合格とみなす条項は、発注側の合意があって成り立ちます。
受注側が一方的に宣言できるものではありません。
なお、取適法が適用される取引では、検査期間をどう決めても、支払期日の数え方は別のルールに従います。
依頼の出し方が不統一:依頼書の有無と宛先
三つ目は依頼の出し方です。
納品データを送るメールに「納品しました。ご確認ください」と一行添えるだけでは、発注側にはそれが検収の依頼なのか、事前の共有なのかが分かりません。
宛先が現場の担当者だけで、検収を決裁する人に届いていないこともあります。
担当者が確認を終えても、決裁者が内容を知らなければ、回答はそこで止まります。
依頼の形がそろっていないと、受注側の記録にも穴が空きます。
いつ、誰に、どの版を納めて検収を依頼したのかが、メールの山からしか分からない状態です。
後で支払期日や指摘の時期を確かめる場面では、この日付が手掛かりになります。
先に決めるのは、次の三つです。
検収依頼書という形式、担当者と決裁者を含めた宛先、送付日と納品物の版の記録方法です。
差戻し対応が未整理:修正の範囲と回数
四つ目は差戻しの扱いです。
差戻しを何回まで、どの範囲で受けるのかが決まっていないと、修正のたびに新しい指摘が加わります。
そのたびに、検収が終わる時点が後ろへ延びていきます。
再検査の範囲によっても、発注側の作業量と回答までの時間は変わります。
修正した箇所だけを確かめるのか、全体をもう一度確かめるのかの違いです。
先に決めるのは、次の点です。
差戻しは、受入確認項目に照らした不合格として受けます。
項目にない要望は、見積りや範囲の協議といった別の扱いに回します。
あわせて、再検査の期間と範囲も決めておきます。
4つの原因は互いにつながっていて、基準が決まっていなければ差戻しの切り分けもできません。
基準を最初に決めると、残りの取り決めはその上に組み立てられます。
ただし、検収で何を確かめるのかは、契約の形によって変わります。
| 止まる原因 | 決まっていないこと | 先に決めること |
|---|---|---|
| 基準が曖昧 | 何を確かめれば合格か | 仕様書から起こした受入確認項目と確認方法 |
| 期間が未設定 | いつまでに回答するか | 検査期間と期間を過ぎたときの扱い |
| 依頼の出し方が不統一 | 誰にどの版の検収を依頼したか | 検収依頼書の形式・宛先・送付日と版の記録 |
| 差戻し対応が未整理 | どこまで直せば終わるか | 不合格と追加要望の区別・再検査の期間と範囲 |
契約形態で検収の意味はどう変わるか(請負と準委任)
請負:完成と引渡しを確認する
請負は、仕事の完成を約束し、その結果に対して報酬を受け取る契約です。
民法は、目的物の引渡しが必要な仕事では、報酬を引渡しと同時に支払うと定めています1。
引渡しが必要ない仕事では、雇用の報酬の時期に関する規定(624条1項)を準用します1。
この原則のもとで検収を置くなら、発注側が目的物を確かめ、引渡しを受け入れる手続きと位置付けることになります。
確かめるのは、目的物が合意した内容のとおりに完成しているかどうかです。
受注側がそろえるのは、完成を判断するための受入確認項目と、引き渡す物の一覧です。
受注側が見落としやすいのは、検収に合格した後の扱いです。
民法637条1項は、注文者が不適合を知った時から一定の期間内に通知しなければ、追完の請求や報酬の減額請求などができなくなると定めています1。
不適合とは、目的物の種類や品質が契約の内容に合っていないことです。
追完は、修補などで契約どおりの状態にすることを指します。
期間の起点は検収日ではなく、注文者が不適合を知った時です。
また、請負人が引渡しの時に不適合を知っていた場合などは、この期間の制限が適用されません(同条2項)1。
つまり、検収に合格しても、それ以後の指摘がすべてなくなるとは限りません。
これは民法の原則で、契約で別の定めを置くこともできます。
受注側は、合格後の不適合対応をどの範囲と期間で受けるのかを、契約書で確かめます。
あわせて、検収の時点で何を確認し、どんな指摘を受けたのかを記録しておきます。
この記録が、後から出てきた指摘を整理するときの材料になります。
準委任:履行した事務の確認と報酬の考え方
準委任は、事務を処理すること自体を引き受ける契約で、仕事の完成は約束の中心ではありません。
民法648条は、受任者は特約がなければ報酬を請求できないと定めています1。
同条3項は、履行の割合に応じた報酬を請求できる場合を定めています1。
さらに648条の2は、事務処理の成果に対して報酬を支払うと約束した場合の支払時期を、別に定めています1。
この違いから、準委任で検収にあたる手続きを置くなら、それが何に対する確認なのかを契約の文言から読み取る必要があります。
作業の遂行に対して報酬を払う約束なら、確認するのは作業報告や実施記録で、成果物の出来ではありません。
成果に対して報酬を払う約束なら、成果が約束どおりかを確かめる手続きが必要です。
その場合は、請負に近い受入確認項目を用意することになります。
同じ「検収」という言葉でも、請負の受入確認と準委任の作業報告の確認とでは、受注側が出す書類も、発注側が見る場所も違います。
契約書に「検収」とだけ書かれている場合は、対象が成果物か作業実績かを、見積・契約の段階で発注側と言葉にしておきます。
そうすれば、納品後の解釈違いが起きにくくなります。
情報システムの受託開発では、IPAと経済産業省が「情報システム・モデル取引・契約書」の第二版(2020年)を公開しています4。
第二版では、請負の契約不適合責任と、請負・準委任の報酬請求権が見直されています4。
情報システム以外の取引にそのまま当てはめるものではありません。
ただ、契約形態ごとに報酬と確認の関係をどう書くかを見る参考になります。
| 項目 | 請負 | 準委任 |
|---|---|---|
| 約束の中心 | 仕事の完成 | 事務の処理 |
| 報酬の時期の原則 | 目的物の引渡しと同時(引渡し不要なら624条1項を準用) | 特約がある場合に報酬。成果報酬の約束なら648条の2 |
| 検収で確かめる対象 | 合意した内容どおりに完成した目的物 | 作業報告・実施記録、または約束した成果 |
| 検収後に残る論点 | 不適合を知った時から一定期間内の通知(637条) | 履行の割合に応じた報酬(648条3項) |
▼ 図の内容を文字で読む
- 請負
- 仕事の完成を約束する
- 合意した内容どおりに完成しているかを確かめる
- 受入確認項目と引き渡す物の一覧をそろえる
- 準委任(作業の遂行に報酬)
- 事務の処理を約束する
- 作業報告や実施記録を確かめる
- 成果物の出来は確認の対象にしない
- 準委任(成果に報酬)
- 成果が約束どおりかを確かめる手続きが要る
- 請負に近い受入確認項目を用意する
取適法の対象取引では「検収日」ではなく「受領日」で支払期限を数える
自社の取引が対象かを確認する順序
ここまでは、支払時期は契約で決まるという前提で話を進めてきました。
この前提が変わるのが、取適法の対象になる取引です。
取適法では、受注側を中小受託事業者、発注側を委託事業者と呼びます。
そのうえで、委託事業者の義務や禁止事項を定めています3。
対象かどうかは、取引の内容と、事業者の資本金規模または従業員の基準との組み合わせで決まります3。
確かめる順序としては、まず、受注している仕事が法律の対象となる委託の類型に当たるかを見ます。
次に、自社と発注側それぞれの資本金や従業員数が、その類型の基準に当たるかを見ます。
基準の具体的な区分は、公正取引委員会の取適法の概要資料で、自社の数字と突き合わせて確認してください。
この確認を先に行うのは、結果によって検収の遅れが持つ意味が変わるからです。
対象外の取引なら、支払時期は契約の定めに従います。
検収の完了を支払の条件にしている契約なら、検収の遅れはそのまま入金の遅れにつながります。
対象の取引なら、次に説明する受領日のルールが働きます。
判断に迷う場合は、取引の内容を具体的にまとめたうえで、公正取引委員会の資料や専門家に照らして確かめます。
検査が長引いても起算日が動かない場合と、事前合意がある場合
公正取引委員会のよくある質問では、取適法の対象取引の支払について次のように説明されています。
委託事業者は、検査をするかどうかにかかわらず、給付を受領した日から法律が定める期間内に設定した支払期日までに、代金を支払う必要があります2。
検査期間の長短で、支払期日の起算日は動きません。
対象取引では、検収が終わっていないことだけを理由に、支払期日を後ろへずらせるわけではないと読めます。
例外は、一定の水準を満たすことを確認した時点を受領とすると、事前に合意している場合です。
この場合は、その確認の時点が起算日になります2。
受注側から見ると、この合意がある取引では、検収の完了が再び支払期日の起点になります。
合意を結ぶときに検査期間をあわせて決めておかないと、確認が延びるほど起算日も後ろへずれる余地が残ります。
役務提供の委託では、起算日は役務を提供し終えた日で、報告書などが発注側に届いた日ではないとされています2。
継続的な作業を役務として受けている場合、発注側による作業報告の受け取りや確認が遅れても、起算日は役務の完了日です。
受注側は、作業報告書に役務の完了日を明記しておくと、起算日を確かめやすくなります。
納期より前に納品した場合は、検査を終えた時点を受領日とすることができます。
ただし、検査の途中で納期が来た場合は、納期が受領日になります2。
早めに納めたことで検収が長引いても、起算日がいつまでも後ろへ延びるわけではありません。
これらのルールを受注側が活かすには、納品日、役務の完了日、納期、事前合意の有無が記録に残っていることが前提になります。
記録があれば、支払期日を過ぎているかどうかを自社で整理してから、発注側と話せます。
違反に当たるかどうかは個別の事情で判断が分かれます。
記録をそろえたうえで、公正取引委員会の資料や専門家に照らして確かめます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 通常の給付
- 給付を受領した日から数える
- 検査期間の長短で起算日は動かない
- 事前合意がある場合
- 一定の水準を満たすことを確認した時点を受領とする
- 検査期間をあわせて決めておく
- 役務提供の委託
- 役務を提供し終えた日から数える
- 報告書が届いた日ではない
- 納期より前の納品
- 検査を終えた時点を受領日にできる
- 検査の途中で納期が来たら納期が受領日
発注側に検収条件を受け入れてもらう:見積・契約・納品時に出すもの
見積・契約段階で示す項目
ここまで見てきたとおり、検収の条件は二つの意味で受注側の材料になります。
取適法の対象外の取引では、支払時期そのものを決める条件です。
対象の取引でも、確認時点を受領とする事前合意を結ぶ場合は、起算日を左右します。
どちらの場合も、条件が書面に残っているかどうかで、後から受注側が説明できる範囲が変わります。
見積・契約の段階で示す項目は、次のとおりです。
- 検査の対象:成果物か、作業報告・実施記録か
- 受入確認項目:仕様書のどの項目を、どの方法で確かめるか
- 検査期間:納品から回答までの期限
- 期間を過ぎた場合の扱い:連絡・再依頼の手順と、合格とみなす条項を置くかどうか
- 差戻しの範囲:不合格の指摘として受ける範囲と、再検査の期間・範囲
- 基準外の要望の扱い:別途の見積りや範囲の協議に回すこと
これらは、契約書の段階で初めて出すより、見積書の前提条件の欄に短く書いておく方法があります。
そうすれば、金額と同じ場で発注側と話し合えます。
「この確認項目で検収する前提の金額です」と示しておけば、確認項目の外側の作業が別料金になる理由も、発注側に伝わりやすくなります。
発注側にとっても、確認すべき範囲と期限が先に分かれば、社内で誰が何を見るかを決めやすくなります。
ただし、どの条件も発注側の合意があって初めて効力を持ちます。
受注側の提案がそのまま通るとは限りません。
合格とみなす条項には、特に注意が要ります。
受注側にとっては期限超過への備えになりますが、条項が有効に働くかどうかは、契約全体の内容や個別の事情によって変わります。
また、取適法の対象取引で確認時点を受領とする合意を結ぶ場合は、検査期間を具体的に決めておく必要があります。
前の節で見たとおり、決めておかないと起算日が後ろへずれる余地が残るからです。
情報システムの受託開発なら、IPAのモデル契約書の第二版が使えます。
受託開発・保守運用の契約書本体、パッケージ・SaaSなどを使う場合の追補版、重要事項説明書などが公開されています4。
こうしたひな形を出発点にして、自社の取引に合わない部分を削り、足りない部分を書き足していくと、項目の漏れに気付きやすくなります。
情報システム以外の業種では、構成の参考にとどめます。
条項の文言は専門家と確認します。
納品時に出す検収依頼書の構成
納品時に出す検収依頼書は、契約で決めた条件をその納品に当てはめ、発注側へ渡す書類です。
契約書に条件があっても、発注側の担当者が納品のたびに契約書を読み返すわけではありません。
依頼書に条件が書かれていれば、担当者も決裁者も、何をいつまでに返せばよいかが分かります。
- 案件名と、対応する契約・注文の特定(注文番号など)
- 納品物の一覧と版
- 納品日(役務の場合は役務の完了日)
- 合意済みの受入確認項目(確認欄つき)
- 検査期限と、期限を過ぎた場合の扱い(契約条項の参照)
- 回答の方法:合格の連絡か、指摘一覧の書式
- 宛先:検収の担当者と決裁者、受注側の連絡先
このうち、納品日や役務の完了日は、取適法の対象取引で支払期日を確かめるときの起点になります。
版の記載は、差戻しの指摘がどの納品物に対するものかを特定するために使います。
指摘一覧の書式を受注側から渡しておけば、指摘ごとに「どの確認項目に対するものか」を書いてもらいやすくなります。
書式は、使う前に発注側と合意しておきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 納品物を特定する
- 案件名と、契約・注文の特定
- 納品物の一覧と版
- 納品日(役務の場合は役務の完了日)
- 確認の基準を示す
- 合意済みの受入確認項目(確認欄つき)
- 検査期限と、期限を過ぎた場合の扱い
- 回答を受け取る
- 回答の方法(合格の連絡か、指摘一覧の書式)
- 宛先(検収の担当者と決裁者、受注側の連絡先)
差戻しと検査期限の超過が起きたときの対応順
基準内の指摘か、基準外の追加要望かを切り分ける
指摘一覧が返ってきたら、修正に取りかかる前に、各指摘を合意した受入確認項目と照らし合わせます。
確認項目に反している指摘は、基準に照らした不合格です。
修正して再検査を依頼します。
確認項目にない指摘は、基準外の追加要望として扱い、別途の見積りや範囲の協議に回します。
仕様書の書き方が曖昧で、どちらとも読める指摘も出てきます。
その場合は受注側の判断で修正を始めず、解釈を発注側と協議し、決まった内容を記録に残します。
たとえば、受入確認項目に「一覧画面に取引先名と金額が表示される」とあったとします。
返ってきた指摘には、「金額の表示が合っていない」と「並び順を取引先名順にしてほしい」が並んでいました。
前者は確認項目に照らした不合格で、後者は項目にない要望です。
同じ一覧に並んでいても、前者は修正、後者は協議と、扱いが分かれます。
基準を先に合意していなければ、この区別そのものができません。
両方とも無償で直すのかどうかという議論から始めることになります。
請負の場合は、前に見たとおり、不適合を知った時から一定の期間内に通知することを前提とした民法の規定があります1。
検収時にどの項目を確認し、どんな指摘を受け、どう修正したかを、日付つきで残しておきます。
そうすれば、後から出てきた指摘が、検収の時点で確認済みの項目に関わるものかどうかを整理できます。
その指摘をどう扱うかは契約の定めによります。
記録は、その判断を助ける材料です。
期限超過時の連絡と記録の順序
検査期限を過ぎても回答がないとき、いきなり強い手段に出るより、あらかじめ段階を決めておくほうが、相手との関係を損ねずに進められます。
次の順序は一つの例です。
実際の手順は、契約の条項と、取引に適用される法令によって変わります。
- 期限の当日に、担当者と決裁者へ回答の状況と予定日を確かめる連絡を入れる
- 予定日を過ぎても回答がなければ、検収依頼書を添えて再依頼し、新しい回答予定日と連絡した日を記録する
- 支払期日を確かめる。
取適法の対象取引では受領日(役務の場合は完了日)から、対象外の取引では契約の定めから数える - 契約に合格とみなす条項があれば、その条項に沿った通知をするかどうかを社内の責任者が判断する
- 手順3と4の結果に合わせて、請求の時期を決める
支払期日の確認を、みなし条項の判断より前に置いているのには理由があります。
対象取引なら、検収の回答がなくても、支払期日はすでに数え始められているからです。
その場合、受注側が発注側に求めるべきなのは、検収の完了よりも、支払期日どおりの支払いになるかもしれません。
一方、合格とみなす条項が有効に働くかどうかは、個別の事情によります。
条項を根拠に請求するときは、事前に専門家へ確認しておきます。
どの段階でも、連絡した日、相手、回答の内容を記録します。
期限を過ぎた後のやり取りが口頭や電話だけで終わると、後で起算日や合意の有無を整理するときに使えません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 確認項目に反している指摘
- 基準に照らした不合格として受ける
- 修正して再検査を依頼する
- 確認項目にない指摘
- 基準外の追加要望として扱う
- 別途の見積りや範囲の協議に回す
- どちらとも読める指摘
- 受注側の判断で修正を始めない
- 解釈を発注側と協議し、決まった内容を記録に残す
▼ 図の内容を文字で読む
- 状況確認の連絡:期限の当日に、担当者と決裁者へ回答の予定日を確かめる
- 再依頼と記録:検収依頼書を添えて再依頼し、連絡した日と新しい予定日を記録する
- 支払期日の確認:取適法の対象取引では受領日(役務は完了日)から、対象外では契約の定めから数える
- みなし条項の判断:合格とみなす条項があれば、通知するかを社内の責任者が判断する
- 請求時期の決定:支払期日の確認とみなし条項の判断の結果に合わせて決める
決めた検収手順を現場に定着させる仕組み
テンプレートと担当
ここまでの取り決めは、決めた本人の案件では使われても、別の担当者の案件では使われず、案件ごとのばらつきに戻ってしまいがちです。
見積の前提条件や依頼書を毎回一から書く形だと、忙しい案件ほど省かれやすくなります。
仕組みにする一つ目は、テンプレートです。
見積書の前提条件の文、検収依頼書、指摘一覧の書式を、社内共通のひな形にしておきます。
これで減るのは、毎回の文面づくりと、宛先・期限・版の書き漏れの確認です。
一方、受入確認項目は案件ごとに仕様書から起こす必要があるため、担当者の作業として残ります。
二つ目は、担当の指定です。
案件ごとに、検収依頼を送る人、期限を管理して催促する人、基準外の要望かどうかを判断する人を決めます。
不在のときの代行者も決めておきます。
基準外かどうかの判断は、見積や契約の範囲に関わります。
現場の担当者一人に任せず、責任者が判断する形にしておけば、案件ごとに扱いが変わることを防げます。
記録と振り返り
三つ目は、記録です。
案件ごとに、検収の依頼日、検査期限、回答日、差戻しの件数と内訳を残します。
内訳は、基準内の指摘か、基準外の要望かで分けます。
記録先は、表計算の一覧でも、案件管理の仕組みの項目でもかまいません。
大事なのは、案件をまたいで同じ項目で比べられることです。
四つ目は、案件が終わった後の振り返りです。
期限を超えた件数や差戻しの件数を案件ごとに並べると、どこで止まりやすいかが見えてきます。
基準外の要望が多い案件が続いていれば、見積・契約の段階で受入確認項目の詰めが足りていない可能性があります。
期限超過が特定の発注先に偏っている場合は、見直しのきっかけになります。
宛先に決裁者が入っているか、検査期間がその発注先の社内手続きに合っているかを確かめます。
こうした仕組みで、期限超過や差戻しが必ず減るとまでは言えません。
ただ、記録が同じ項目で残っていれば、テンプレートや担当の決め方を変えた後に、期限超過や差戻しの件数がどう動いたかを比べられます。
効果を確かめる手段が手元にあることが、取り決めを形だけで終わらせないための支えになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- テンプレート
- 見積書の前提条件の文
- 検収依頼書と指摘一覧の書式
- 担当の指定
- 依頼を送る人と、期限を管理して催促する人
- 基準外かどうかを判断する責任者と、不在時の代行者
- 記録
- 依頼日、検査期限、回答日
- 差戻しの件数と、基準内・基準外の内訳
- 振り返り
- 期限を超えた件数と差戻しの件数を案件ごとに並べる
- 宛先と検査期間を見直す
自社の取引が取適法の対象に当たるか、契約書の「検収」が成果物と作業実績のどちらを指すかは、条文や資料を読むだけでは判断しにくい部分です。
見積書・契約書・検収依頼書のどこに検収の条件を書き足せば、支払期日や差戻しの扱いを整理できるかを一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 検収の位置付け | 民法に手続きの定めはなく、基準・期間・依頼・差戻しを契約と運用で決める |
| 契約形態 | 請負は完成した目的物を、準委任は作業実績か約束した成果を確認する |
| 取適法の対象取引 | 支払期日は検収日ではなく受領日(役務は完了日)から数える。事前合意があれば確認時点 |
| 発注側への提示 | 見積の前提条件で確認項目と期間を示し、納品時に検収依頼書で条件を当てはめる |
| 差戻し・期限超過 | 基準内か基準外かを切り分け、連絡・再依頼・支払期日の確認・みなし条項の判断の順に記録する |
| 定着 | テンプレート・担当・記録・振り返りをそろえ、期限超過と差戻しの件数を比べる |
テンプレートや記録の項目は、取引先や契約形態の組み合わせによって必要な欄が変わります。社内だけで決めると、案件ごとの違いを拾いきれないことがあります。 自社の取引に合わせた依頼書・指摘一覧の項目と、期限超過や差戻しの件数を比べるための記録の付け方を確かめられます。
よくある質問
検収期間は何日に設定するのが一般的ですか。
一般的な日数として示せる根拠はありません。
受入確認項目の量や、発注側で確認に関わる人数、決裁の段階から逆算し、見積・契約の段階で合意するのが現実的です。
取適法の対象取引では、検査期間を何日にしても、支払期日は原則として受領日から数えます2。
ただし、確認時点を受領とする事前合意を結ぶ場合は、検査期間が起算日に直接影響します。
その場合は、期限を具体的に決めておきます。
検査期間を過ぎても返事がないとき、合格とみなす条項は必ず有効ですか。
必ず有効とは言えません。
この条項は発注側の合意があって成り立つもので、実際に効力を持つかどうかは、契約全体の内容や、期限を過ぎるに至った事情などによって変わります。
条項を根拠に請求する前に、連絡と再依頼の記録をそろえ、専門家に確認しておきます。
口頭発注で検収条件が書面にないときは、どう補えばよいですか。
受注側から、発注内容と検収の条件をメールなどの書面にまとめて送り、発注側から了承の返信をもらっておく方法があります。
検収の条件とは、受入確認項目、検査期間、差戻しの扱いなどです。
そのうえで、納品時の検収依頼書にも同じ条件を書いておけば、納品物ごとに条件が残ります。
自社の取引が取適法の対象なら、委託事業者に課される義務もあります3。
公正取引委員会の資料で確かめておきます。
検収書がもらえないまま請求してよいですか。
請求できるかどうかは、契約の定めによります。
検収の完了を請求の条件にしている契約なら、まずは検収の回答を得る手順を進めます。
取適法の対象取引では、支払期日は検査の有無にかかわらず受領日(役務の場合は完了日)から数えます2。
そのため、検収書が届いていないことだけを理由に、支払期日が後ろへずれるわけではありません。
どちらの場合も、納品日と依頼の記録をそろえてから発注側と話すと、整理しやすくなります。
仕様書にない追加修正を求められたとき、無償で対応する必要がありますか。
合意した受入確認項目にない修正は、基準に照らした不合格ではなく、追加の要望として扱える余地があります。
無償か有償かは、契約の定めと発注側との協議で決まります。
修正を始める前に、どの確認項目にも当たらないことを示して扱いを協議し、決まった内容を記録します。
見積の段階で、確認項目の外側の作業は別途見積りとする旨を書いておけば、この協議の前提になります。
準委任契約で、成果物がなくても検収は必要ですか。
民法の準委任の規定に、検収の手続きは定められていません。
ただ、民法は準委任の報酬を、特約がある場合に限って認めています1。
そのため、何に対して報酬を払う約束なのかを確かめる手続きは、請求の根拠として役立ちます。
作業に対する報酬なら作業報告の確認を、成果に対する報酬なら成果の確認を、契約で決めておきます。
取適法の役務提供委託に当たる場合、起算日は役務の完了日で、報告書が届いた日ではありません2。
- 1 出典:法務省(e-Gov法令検索)「民法(明治29年法律第89号)請負・委任の規定」(現行)
- 2 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「取適法の概要」(2026年)
- 4 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)・経済産業省「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年)
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- A businessman writing on financial documents with charts in an office setting./Photo by RDNE Stock project on Pexels