◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受発注の反映が遅い原因は、回線だけではありません。ディジタル通信モードの最大スループットは64kbps3、光アクセスの下り最大は1Gbpsです4。待ち時間は回線・通信手順・基幹システムへの取り込みの3層に分かれて残ります。
- INSネットは2024年に新規申込受付が終わり、提供終了は2028年の予定です1。移行の期限から逆算して、回線・手順・期限の3点を先に決めます。
- 国内の固定電話の回線数は、2005年の5,500万回線から2017年には2,042万回線へ減りました6。設備を維持する前提そのものが変わっています。
- 取引先から通信手順を指定される場合があります。2017年には広域IP網を前提とするTCP/IP手順が制定され7、2025年には流通BMS基本形Ver2.2.1が公開されています8。
- 3,800品種の製品を3,000社の販売加盟店へ供給する例では、BtoBサイトの初期掲載が25,000品でした9。動かすデータの点数が、計画の規模を決めます。
目次

64kbpsの回線が生む受発注の待ち時間
インターネットEDIの速度の課題とは、回線を光アクセスへ替えても受発注の反映が速くならない状態を指します。ディジタル通信モードの最大スループットは64kbps3、光アクセスの下り最大は1Gbpsです4。待ち時間は、回線・通信手順・基幹システムへの取り込みの3層に分かれて残ります。
3,800品種を3,000社の販売加盟店へ届ける受発注
待ち時間の前に、扱う量があります——日東電工CSシステム株式会社が扱う製品は3,800品種です9。この製品を、全国3,000社の販売加盟店が発注します9。受注の入口が複数に分かれていれば、同じ注文を二度打ち込む場面が出てきます。担当者の机には、届いた注文書と、基幹システムの入力画面が並びます。「二重入力」という言葉は、この机の上の風景を指しています。
送信ボタンの後に生まれる64kbpsの待ち時間
二重入力の手間が片付いても、待ち時間は送信ボタンを押した後に生まれます。ディジタル通信モードによる通信の最大スループットは64kbpsです3。明細の多い注文を送る間、担当者は画面の前で手を止めます。夜間の処理が朝までに終わらなければ、翌日の出荷指示がそのぶん後ろへずれます。あなたの現場にも、心当たりはないでしょうか。
画面の前で待つこの時間は、どの請求書にも載りませんが、出荷が一日ずれるたびに費用として払っています。
2028年12月に終わるINSネット
2024年に終わった新規申込受付
この費用を払い続けられる期間には、INSネットの側から区切りが置かれています。新規申込受付の終了は2024年でした1。INSネットの提供終了は2028年の予定と公表されています1。いま動いている回線は、更新の効かない設備の上で動いていると言えます。移行の判断を先送りできる幅は、年々狭くなります。
先送りできる幅が狭いのは、ISDNを前提にした接続サービスでも同じです。フレッツ・ISDNの終了は2026年と案内されています3。回線の契約だけを延ばして様子を見る選択は、取りにくくなっています。移行先を決める作業と、取引先へ知らせる作業を、同じ時期に進めることになります。
9.35円/3分の補完策と伝送遅延
移行が間に合わない場合の受け皿は用意されています。補完策のデータ通信料は、全国一律で3分あたり9.35円です2。ただし、この経路には伝送遅延が残ります。送信そのものが通っても、往復のたびに待ちが積み上がる前提で運用を組み直すことになります。延命は、費用と制約の両方を引き受ける選択です。
2,042万回線に減った固定電話網
その延命を支える設備の側でも、維持の前提そのものが変わっています。国内の固定電話の回線数は、2005年に5,500万回線でした6。2017年には2,042万回線まで減っています6。利用が減った設備を同じ形で維持し続けることは難しく、移行の計画は業界横断で進められてきました。
計画の側にも年の区切りが置かれています。加入電話やISDN電話からメタルIP電話への移行は2024年と示されました5。IP網への移行の完了は2025年の予定とされてきました5。自社の回線をいつ替えるかという問いは、この流れの中に置かれていますね。
いまの形を続けるという判断にも値札は付いていて、補完策のデータ通信料として3分あたり9.35円が積み上がります2。
速度を決める回線・手順・取り込みの3層
回線速度が効くのは送信そのものの区間
待ち時間を減らす作業は、層ごとに分けて進めます。第一の層は回線速度です。ディジタル通信モードの最大スループットは64kbps3、光アクセスの下り最大は1Gbpsです4。ここを替えれば、送信そのものに要する時間は短くなります。これは「上限の値」であり、実際の待ち時間の全部を説明するものではありません。
通信手順の往復が生む待ち時間
第二の層は通信手順です。手順が1件ごとに応答を待つ形であれば、往復の回数がそのまま待ち時間になります。回線の速度が上がっても、往復の回数は変わりません。取引先から手順を指定されている場合、ここは自社の都合だけでは決められません。順序としては、回線を替える前に手順を確かめます。
夜間に1回動く取り込みが翌朝まで反映を遅らせる
第三の層は基幹システムへの取り込みです。受信が終わっても、取り込みが夜間に1回だけ動く設計であれば、反映は翌朝になります。この工程は回線の桁が変わっても短くなりません。起動の間隔と、明細を処理する時間を測ってから、どこを直すかを決めます。ここまでを3段で測り分ければ、次はどれから決めるかという問いが残ります。
移行で先に決める回線・手順・期限の3点
2025年完了の計画から逆算して置く自社の期限
先に決めるのは期限です。IP網への移行を2025年に完了する計画が、あらかじめ示されてきました5。そのうえで、INSネットの提供終了は2028年の予定です1。自社の期限は、この年より手前に置きます。「いつまでに何が動いていればよいか」を先に書き出せば、比較の土俵が定まりますね。
取引先の指定の有無で変わる手順の選べる幅
次に決めるのは手順です。取引先から指定を受けているかどうかで、選べる範囲が変わります。2017年に制定されたTCP/IP手順は、広域IP網を前提としています7。小売の取引では、2025年公開の流通BMS基本形Ver2.2.1が指定されることもあります8。指定がある場合は、その仕様に合うかどうかが最初の判断軸になります。
2万点の商品マスタ整備が回線より先に効く
最後に決めるのが回線です。回線は、期限と手順が決まった後でも替えられます。逆の順で進めると、契約を替えた後に手順が合わないと分かる場面が出てきます。
替える順序と並んで、動かすデータの規模が判断の材料になります。株式会社ポディウムは、商品マスタを2万点まで整理・精査したうえで、2025年に新しいシステムを稼働させています10。マスタの整備に要する手間は、扱う点数に比例して増えます。期限と手順を決め、この作業の量を見積もってから、回線に手を付けます。
以降は、取引先からの手順の指定や期限の切迫など、ここまでの進め方がそのまま当てはまらない条件を抱える方に向けた内容です。
ここまでの手順を自社の条件で確かめたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
64kbpsと1Gbpsの間にある段差
- 回線の上限値だけを見ても、実際の待ち時間は分かりません。ディジタル通信モードの最大スループットは64kbps3、光アクセスの下り最大は1Gbpsです4。この2つは上限の値であり、送信そのものに要する時間の目安にとどまります。
- 通信手順の往復の回数を数えます。取引先から手順を指定される場合があり、2017年には広域IP網を前提とするTCP/IP手順が制定されました7。往復が増えるほど、回線を替えても待ち時間が残ります。
- 基幹システムへの取り込みが動き出す間隔を測ります。受信が終わっても、取り込みが夜間に1回だけ動く設計であれば、反映は翌朝です。回線の桁が変わっても、この工程は短くなりません。
- 商品マスタの整備の状況を確かめます。2万点の商品マスタを整理・精査したうえで、新しいシステムが2025年に稼働した例があります10。マスタが揃わなければ、送信が速くても照合で止まります。
- 立ち上げに要する期間を見ます。全国3,000社の販売加盟店を抱える規模の例では、要件定義から検証用サイトの開設まで10か月を要しました9。期限から逆算する起点になります。
- 固定電話網そのものの縮小も、計画の前提に入ります。国内の固定電話の回線数は、2005年の5,500万回線から2017年には2,042万回線へ減りました6。設備の維持を前提にした先送りは、選びにくくなっています。
上の並びに順位は付けておりません。順位の出典が取れていないためでございます。
自社の行がここに見つからない方は、次の表から、取引先の指定や期限の条件で自社に当たる型を探せます。

取引先の指定と期限で分かれる3つの型
| 型名 | 当てはまる条件 |
|---|---|
| 決済連携を抱える型 | 取引先から決済に関わる通信手順を指定されている |
| 小売取引の標準指定を受ける型 | 流通BMSなどの標準仕様と着信時刻を指定されている |
| 期限が迫る型 | 2028年の提供終了までに移行が終わらない見通しがある |
全銀手順の指定が外せない決済連携
2017年制定のTCP/IP手順が先に決まる決済連携
取引先の指定がある場合、第1ブロックの順序がそのまま使えないことがあります。決済に関わる連携では、通信手順が取引の要件として先に決まっています。2017年に制定されたTCP/IP手順は、広域IP網を前提としています7。自社の都合で手順を替える余地は小さく、回線の検討から入ると手戻りになります。
速度ではなく互換で選ぶ手順互換の確認
この型で使う軸は、速度ではなく「互換」です。手順互換の確認を最初に置き、指定された手順の名称と版を取引先から受け取ります。次に、決済の締め時刻に送信が間に合うか、再送がどこまで認められるかを確かめます。速度の議論は、この2つが片付いた後で意味を持ちます。
回線の切り替えと取り込みの見直しへ進む順番
確認が済んだら、回線の切り替えに進みます。手順を維持したまま、回線だけをIP網へ替える形が取れるかどうかを見ます。最後に取り込みの見直しとして、基幹システム側の処理時間を測り直します。順序を守れば、決済を止めずに移行できる範囲が見えてきます。
指定された手順が1つだけで、締め時刻にも余裕がある場合は、外部に頼まず自社で進められます。手順の名称と版、締め時刻、再送の可否の3点を書き出し、現行の設定と突き合わせる作業で足ります。その範囲であれば、回線の契約を替える手続きが中心になります。
手順の指定が複数の取引先にまたがる場合、確認は情報システムと経理の双方へ同時に及び、担当者1人で短期に片付けられる作業ではありません。
| 確認の対象 | 確かめる内容 | 確かめる時期 |
|---|---|---|
| 通信手順の指定 | 取引先が指定した手順の名称と版 | 回線の契約を替える前 |
| 決済の締め時刻 | 送信が間に合う時刻と再送の可否 | 手順の確認と同時 |
| 回線の扱い | 回線だけをIP網へ替える形が取れるか | 手順の確認の後 |
| 取り込みの時間 | 基幹システム側で明細を処理する時間 | 回線を替える前後の両方 |
流通BMSの指定を受ける小売取引
2025年公開の基本形Ver2.2.1に自社を合わせる取引
小売との取引では、標準仕様が指定されることがあります。2025年には流通BMS基本形Ver2.2.1が公開されました8。この型では、自社が仕様を選ぶのではなく、取引先ごとの指定に自社を合わせます。第1ブロックの順序が使えないのは、回線や取り込みを直しても指定そのものは変わらないためです。
取引先ごとに異なる着信時刻から決める取り込み間隔
使う軸は、着信時刻の制約です。取引先ごとに締め時刻が違えば、1つの取り込み間隔では全部を満たせません。まず、取引先と締め時刻の一覧を作ります。取り込みの起動間隔は、締め時刻が早い取引先に合わせて決めます。
明細の項目の対応表を作ってから戻る回線の検討
締め時刻の一覧ができたら、仕様の版を揃えます。基本形Ver2.2.1に合わせられるかを、自社の明細の項目と突き合わせます8。項目の対応が取れない箇所は、対応表を作って残します。ここまでを終えてから、回線と取り込みの話に戻ります。
着信時刻の洗い出しは取引先の数だけ確認の往復が生じるため、通常の受発注業務と並行して短期に終わらせることは見込みにくい作業です。
| 取引先の条件 | 確かめる内容 | 移行の判断 |
|---|---|---|
| 標準仕様の版 | 基本形Ver2.2.1に合わせられるか | 仕様の版を先に揃える |
| 着信時刻の指定 | 締め時刻が取引先ごとに違うか | 時刻の一覧を作る |
| 明細の項目 | 自社マスタの項目と対応が取れるか | 対応表を作って残す |
2028年12月までに移行が終わらない計画
9.35円/3分の補完策で持ちこたえる期間の費用
期限までに移行が終わらない見通しになることがあります。この型では、間に合わせることより、間に合わない期間をどう持ちこたえるかが先の問いになります。補完策のデータ通信料は、全国一律で3分あたり9.35円です2。伝送遅延も残るため、延命の期間が延びるほど費用と制約が積み上がります。
2028年の提供終了から逆算して置く3つの区切り
使う軸は、期限からの距離です。INSネットの提供終了は2028年の予定ですから1、そこから逆算して区切りを置きます。回線の決定、手順の決定、取り込みの決定の順に、それぞれ前倒しの期日を決めます。立ち上げに要する期間の目安は、公表された例から取れます。要件定義から検証用サイトの開設まで10か月を要した例があります9。
取引先へ先に伝える期日が社内の優先順位を動かす
逆算した区切りを、取引先へ先に伝えます。伝えた期日は、社内の優先順位を動かす材料になります。延命を選ぶ期間については、補完策の費用を月ごとに見える形にしておきます。費用が見えれば着手の判断は早くなり、残るのは軸ごとに何を見るかという問いになります。
期限からの逆算は、社内の意思決定と取引先への連絡を同時に動かす作業であり、情報システム部門だけで完結させることは見込みにくい難しさがあります。
| 区切り | 決めること | 期限からの距離 |
|---|---|---|
| 回線の決定 | IP網へ替える方式を決める | 提供終了の2028年から数えて最初に置く区切り |
| 手順の決定 | 取引先の指定に合わせる手順を決める | 回線の決定の直後に置く区切り |
| 取り込みの決定 | 基幹システム側の処理時間を決める | 立ち上げの直前に置く区切り |

この型に当てはまる場合は、判断の抜けによる手戻りを防ぐために、無料相談で自社の条件を持ち込むのが確実です。
要点の整理
| 判断の軸 | 第1ブロックの基準 | 型ごとの基準 |
|---|---|---|
| 回線 | 上限の値ではなく実際の待ち時間で見る | 手順の指定がある場合は回線だけを替える形を検討する |
| 手順 | 往復の回数を数える | 指定された手順の名称と版を先に確かめる |
| 取り込み | 起動の間隔と処理の時間を測る | 締め時刻が早い取引先に合わせて間隔を決める |
| 期限 | 提供終了の2028年から逆算する | 延命の費用を月ごとに見える形にしてから区切りを置く |
| データ | 動かす品目の点数を数える | マスタの項目の対応表を作ってから回線へ戻る |
よくある質問
INSネットはいつまで使えますか。
提供終了は2028年の予定と公表されています1。新規申込受付は2024年に終わりました1。ISDNを前提にした接続サービスについては、フレッツ・ISDNの終了が2026年と案内されています3。年ごとに区切りが異なりますので、自社が契約しているサービス名で確認してください。
移行が期限に間に合わない場合、どのような手当てがありますか。
補完策が用意されています。データ通信料は全国一律で3分あたり9.35円です2。ただし伝送遅延が残るため、送受信の時刻に余裕を持たせた運用へ組み直すことになります。延命の期間が延びるほど通信料も積み上がりますので、費用を月ごとに把握しておくと判断しやすくなります。
取引先から通信手順を指定されている場合、自社で手順を選べますか。
指定がある場合、自社の都合だけでは選べません。決済に関わる連携では、2017年に制定された広域IP網を前提とするTCP/IP手順が指定されることがあります7。小売の取引では、2025年公開の流通BMS基本形Ver2.2.1が指定されることもあります8。指定の名称と版を先に受け取り、そこから回線を検討します。
移行の準備にはどれくらいの期間を見ればよいですか。
公表された例が目安になります。要件定義から検証用サイトの開設まで10か月を要した例があります9。別の例では、商品マスタを2万点まで整理・精査したうえで、2025年に新しいシステムが稼働しています10。扱う品目の点数と取引先の数で必要な期間は変わりますので、この2つを先に数えてください。
回線を替えずに待ち時間を短くする方法はありますか。
取り込みの側から手を付ける方法があります。基幹システムへの取り込みが夜間に1回だけ動く設計であれば、起動の間隔を短くするだけで反映は早まります。通信手順の往復の回数を減らせる設定がある場合も同じです。回線の契約を替える前に、この2つを測っておくと、替えたときの効果を見積もれます。
移行の計画を立てる前に、社内で用意しておく資料は何ですか。
3種類の一覧を用意してください。1つ目は取引先と締め時刻の一覧、2つ目は指定されている通信手順の名称と版の一覧、3つ目は商品マスタの点数と項目の一覧です。この3種類が揃えば、回線・手順・期限の3点をどの順で決めるかが判断できます。用意そのものは社内の作業で進められます。
- 1 出典:東日本電信電話株式会社「INSネットの新規申込受付・提供終了について(報道発表)」(2024年) 経路
- 2 出典:東日本電信電話株式会社「INSネットをご利用の事業者さまへ(固定電話のIP網移行)」(2024年) 経路
- 3 出典:東日本電信電話株式会社「フレッツ・ISDN 提供条件」(2026年) 経路
- 4 出典:東日本電信電話株式会社「フレッツ 光ネクスト ファミリー・ギガラインタイプ 提供条件」(2026年) 経路
- 5 出典:総務省「固定電話網の円滑な移行(情報通信審議会報告書)」(2017年) 経路
- 6 出典:一般社団法人情報サービス産業協会「固定電話網のIP網移行によるEDIへの影響と対策」(2018年) 経路
- 7 出典:一般社団法人全国銀行協会「広域IP網をベースとした全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)の制定について」(2017年) 経路
- 8 出典:一般財団法人流通システム開発センター「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)」(2025年) 経路
- 9 出典:株式会社ロジザード「導入事例 日東電工CSシステム株式会社様」(2020年) 経路
- 10 出典:株式会社ロジザード「導入事例 株式会社ポディウム様」(2025年) 経路
画像の出典元
- A mesmerizing display of glowing neon blue optical fibers cr/Photo by Georgie Devlin on Pexels
- Detailed view of various metal drill bits and tools arranged/Photo by Pixabay on Pexels
- Futuristic digital cube arrangement, showcasing vibrant LED-/Photo by Pachon in Motion on Pexels