◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 請求の突き合わせを軽くする鍵は、確認の速さではなく照合に使う項目を先に決める設計にあります。
- 電子取引データは取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態が求められ、この3項目は照合の鍵と重なります。
- 適格請求書の記載事項は6項目、適格簡易請求書は5項目で、制度上の必要項目と自社の照合に必要な項目は別です。
- 免税事業者等からの課税仕入れの経過措置は、2026年9月30日までが80%、翌日以降は50%へ移ります。
- 入金消込は請求書番号か支払通知番号を鍵に据え、20桁のEDI情報欄という制約を前提に経路を設計します。
目次
請求の突き合わせとは何かを整理します
請求の突き合わせとは、受け取った請求書の記載内容を、自社に残る発注書や納品書の記録と項目ごとに照合し、支払ってよい金額かを確かめる作業です。作業を軽くする鍵は、確認の速さではなく、照合に使う項目をあらかじめ決めておく設計にあります。適格請求書に求められる記載事項は6項目とされており*3、この6項目を自社の記録側にもそろえておくと、確認の手が止まりにくくなります。
突き合わせが必要になる理由は2つに分けられます。第一に、支払の根拠を社内に残すためです。第二に、消費税の仕入税額控除の適用にあたって、原則として適格請求書等の保存が求められるためです*3。前者は社内の統制、後者は制度対応にあたり、片方だけを満たしても月次の締めは終わりません。
適格請求書等保存方式は2023年10月1日に開始し、それ以降の課税仕入れでは、原則として適格請求書等と帳簿の両方の保存が控除の要件になりました3。帳簿に記載する事項は、相手方の氏名または名称、取引年月日、取引内容、対価の額の4項目とされています3。請求書側の6項目と帳簿側の4項目は重なる部分が多く、照合の項目設計はこの対応関係を写す形になります。保存の期間は、原則として課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日より7年間です*3。
二点照合は、請求書と発注書の2種類を照合する方法です。単価と数量が発注時の取り決めどおりかを確かめます。三点照合は、ここに納品書を加えて、実際に受け取った数量や検収の結果まで確かめる方法になります。物品の取引では三点照合を用い、役務の提供では検収記録を納品書の代わりに置きます。
どちらを選ぶかは、取引の性質と金額で切り分けます。継続的な役務のように毎月同額が続く取引では、三点照合の追加確認が差異の発見につながりにくいと言えます。資材や商材の仕入れでは、数量差と単価差が同時に起きるため、納品書を含めた三点での確認が効きます。切り分けの基準は取引先単位ではなく、取引の型ごとに置くほうが管理しやすくなります。
突き合わせの対象は、売り手が発行した請求書だけではありません。買い手が作成して売り手の確認を受けた仕入明細書等も、必要な記載事項を満たせば仕入税額控除の要件を満たす書類として扱えます*3。買い手側で数量と単価を確定できる取引では、この形にすると照合の相手が自社の記録どうしになり、書式の不一致が起きません。適用には売り手の確認という手続が要るため、取引先との合意を先に取り付けておく必要があります。
受け取りから入金消込までの流れは、6つの段に分かれます。請求書の受け取り、記載事項の確認、発注・納品記録との照合、社内承認、支払、そして入金側の消込です。前段の粒度が粗いと、後段で人手が増えます。たとえば受け取りの段で取引先名の表記がそろっていないと、消込の段で名寄せの作業が残ります。
照合で出てくる差異は、金額差・数量差・期間差・記載差の4つに整理できます。4つのうち、金額差と数量差は上流の取り決めに戻して直せます。期間差は締め日の認識違いから生まれ、記載差は書式の問題です。差異を型で数えておくと、どの原因から手を付けるべきかが見えてきます。
突き合わせを人手だけで支える運用には限りがあります。取引先が増えるほど、書式の種類と受け取り経路の数が掛け算で増えていきます。月あたりの請求書の枚数が伸びた段階で、確認の速さを上げる方向ではなく、確認しなくてよい状態を作る方向へ切り替える判断が求められます。
着手順序の依存関係で並べた、突き合わせを軽くする5手順(順位根拠:前の手順の出力が次の手順の前提になる依存関係)
- 現状を数えます。請求書の枚数・受け取り経路の種類・取引先数と、金額差・数量差・期間差・記載差の4型ごとの件数を1か月分記録します。
- 受け取り経路を1つの窓口へ寄せます。メールやウェブで受け取るデータは電子取引に当たり、電子のまま保存する扱いが原則です。
- 照合の鍵を決めます。主の鍵を発注番号、副の鍵を取引先コード・納品日・品目コードの3項目とし、片方が欠けても照合が続く形にします。
- 制度の要件を鍵に重ねます。取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態を保存側の要件として満たし、適格請求書の6項目を確認の第一段に置きます。
- 入金消込までつなげます。請求書番号か支払通知番号を鍵に据え、20桁のEDI情報欄では足りない情報を支払通知や決済データの添付情報で送ります。
- 効果を自社の基準点と比べます。照合完了までの日数、差異の件数比率、自動で照合が終わった取引の比率の3指標を、着手前の分布と対照します。
突き合わせが重くなる原因を分解します
突き合わせが重くなる原因は、確認作業そのものではなく上流にあります。書式と項目名がそろっていないこと、単価や締め条件の取り決めが文書に落ちていないこと、紙とデータの受け取り経路が混在していることの3点です。この3点を放置したまま道具を入れても、入力先が変わるだけで手作業は残ります。原因を先に分解すると、着手の順番が決まります。
書式と項目名の不一致は、照合の鍵を失わせます。自社が発注番号で管理していても、請求書に発注番号が記載されていなければ、金額と日付から推測する作業が発生します。適格請求書の記載事項は6項目ですが*3、そこに発注番号は含まれません。制度上の必要項目と、自社の照合に必要な項目は別だと理解しておく必要があります。
項目名の言い換えも手間を生みます。「納品数」「出荷数」「検収数」が同じ意味で使われる取引先と、別の意味で使われる取引先が混ざります。数え方の定義がそろわないと、数量差の原因を追う時間が伸びます。用語の対応表を取引先ごとに作るのではなく、自社側の定義を1つに固定して案内します。
単価差は、価格改定の適用日の認識違いから生まれます。締め条件のずれは、月末締めと20日締めが混在する取引で起きます。締め日が違えば、同じ納品が前月分と当月分に分かれ、請求書1枚に対して発注書2枚が対応する形になります。1対1の対応を前提にした照合の手順は、この場面で止まります。
受け取り経路の混在は、保存の側にも影響します。電子帳簿等保存制度は電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引の3つの区分で整理されており*1、メールやウェブからの受け取りは電子取引に当たります。同じ取引先から紙と電子が混ざって届くと、保存先が2つに分かれます。担当者は、どちらに原本があるかを探す作業から始めることになります。
この3区分は、義務の重さが同じではありません。電子帳簿等保存とスキャナ保存は任意の制度で、使わずに紙で保存する選択も残ります1。一方、電子取引で授受したデータは、要件を満たした電子保存が原則として求められる区分です1。紙と電子が混在すると、担当者は義務の区分と任意の区分を1件ずつ切り分ける判断を毎回行うことになります。
突き合わせを崩したときの影響は、支払の遅れだけではありません。仕入税額控除の適用には、原則として適格請求書等と帳簿の保存が求められます*3。保存や記載に不足があれば、控除の可否が個別の判断に委ねられます。可否は原典の記載と個別事情によるため、税務署や税理士への確認を前提に運用を組んでおくのが安全です。
取引先の登録状況によって、確認すべき点も変わります。適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れには、仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置が設けられています。控除できる割合は2026年9月30日までが80%、2026年10月1日から2029年9月30日までが50%です*3。区分ごとに帳簿へ書く事項が変わるため、登録番号の有無を受け取りの段で判定しておく必要があります。
経過措置の適用を受ける課税仕入れでは、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要とされています3。受け取りの段で登録番号の有無を判定していなければ、この記載が抜けたまま月次が締まります。経過措置は2029年9月30日で終わり、それ以降は控除の対象外となります3。割合の切り替わる期日をまたぐ取引については、納品日と請求日のどちらで判定するかを先に決めておく必要があります。
| 原因 | 現れる場面 | 照合への影響 |
|---|---|---|
| 書式と項目名の不一致 | 請求書に発注番号が記載されていない | 金額と日付から推測する作業が発生します |
| 項目名の言い換え | 納品数・出荷数・検収数が取引先ごとに別の意味で使われる | 数量差の原因を追う時間が伸びます |
| 締め条件のずれ | 月末締めと20日締めが混在する取引 | 請求書1枚に発注書2枚が対応し、1対1を前提にした手順が止まります |
| 受け取り経路の混在 | 同じ取引先から紙と電子が混ざって届く | 保存先が2つに分かれ、原本を探す作業から始まります |
| 登録番号の有無 | 受け取りの段で判定していない | 経過措置の適用を受ける旨の記載が抜けたまま月次が締まります |
自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
突き合わせを軽くする手順を順に進めます
手順は、数える・そろえる・決めるの順で進めます。最初に現状の件数と差異の型を数え、次に受け取り経路をそろえ、最後に照合の鍵となる項目を決めます。順番を入れ替えると、そろえる対象が定まらないまま経路を統合し、やり直しが生じます。着手の依存関係が順番を決めており、好みで並べ替える余地は小さいと言えます。
最初の1か月は、数えるだけに使います。請求書の枚数、受け取り経路の種類、取引先の数、そして差異が出た件数を記録します。差異は金額差・数量差・期間差・記載差の4つに分けて数えます。合計の件数より、型ごとの分布が対策の優先順位を決めます。
数える単位は、担当者ではなく取引の型に置きます。担当者単位で数えると、負荷の偏りは見えても原因は見えません。型で数えれば、期間差が特定の締め条件に集まっているといった偏りが見つかります。ここで得た分布は、後の効果測定の基準点にもなります。
同じ段で、取引先を登録番号の有無によって2つに分けておきます。登録のない先からの課税仕入れは経過措置の対象となり、控除額の計算も帳簿の記載も別の扱いになります3。件数の比率が小さければ手作業で処理し、比率が大きければ判定を仕組みに載せるという判断ができます。件数だけでなく金額でも分けておくと、控除できない20%または50%の部分が損益に与える大きさが見えます3。
受け取り経路の統合は、窓口を1つに寄せる作業です。取引先ごとのメール宛先や担当者個人の受信箱に届く状態を、共有の受け取り口へ移します。紙で届く分は、スキャナ保存の要件を確かめたうえで電子化するか、紙のまま保存する区分を決めます*2。経路を先に絞ると、次の項目定義の作業が1本の流れで済みます。
電子化するかどうかは、要件を満たせるかどうかで決めます。スキャナ保存では、解像度200dpi相当以上での読み取りと、赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラー画像による保存が求められます2。入力の期間についても、おおむね7営業日以内といった区切りが定められています2。この期限を守れる体制がなければ、紙のまま保存する区分へ寄せるほうが手戻りは少なくなります。
照合の鍵は、発注番号を軸に置く形が扱いやすいです。発注番号が請求書へ転記されていれば、金額と日付からの推測が不要になります。転記を依頼できない取引先には、取引先コード・納品日・品目コードの3項目を組み合わせた代替の鍵を用意します。鍵は1つに絞らず、主と副の2段で設計しておくと、片方が欠けても照合が続きます。
自動化できる範囲は、鍵の設計に依存します。鍵がそろっている取引は、金額と数量の一致判定まで機械に任せられます。鍵が欠ける取引では、候補の提示までが機械の役割で、最終の判断は人が担います。全件の自動化を目標に置くのではなく、自動で終わる取引の比率を段階的に上げます。
3つの段を1か月ずつで区切ると、途中で止まりにくくなります。数える段の出力は差異の分布、そろえる段の出力は受け取り口の一覧、決める段の出力は鍵の定義書です。段ごとに残す成果物を先に決めておけば、担当者が替わっても再開できます。成果物のない期間が続くときは、前の段に戻って数え直す判断が要ります。
制度面の要件を手順に織り込みます
制度対応は、突き合わせの手順に織り込む形で進めます。電子取引データの保存要件、適格請求書の記載事項、標準仕様に沿ったデータの受け取りの3点を、別の作業として並べないことが要点です。記載事項の確認は照合の第一段に、保存要件の判定は受け取りの段に組み込みます。制度を後追いで満たす運用は、二重の点検を生みます。
電子取引で受け取ったデータは、電子のまま保存する扱いが原則です2。要件は真実性の確保と可視性の確保の2つに整理されています。真実性については、タイムスタンプの付与、訂正削除の履歴が残るシステムでの授受と保存、訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付けなどの方法が示されています2。自社の運用に合う方法を1つ選び、受け取りの段で適用します。保存要件の全体像は、<a href="/column/denshichobo-hozonho-hozonyoken/">電子帳簿保存法の保存要件を整理した記事</a>で確認できます。
可視性の側では、検索の要件が置かれています。取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態が求められます*2。この3項目は、照合の鍵の候補とも重なります。保存のための項目付けと照合のための項目付けを別に作らず、1回の登録で両方を満たす設計にすると手数が減ります。
検索要件には緩和の定めがあります。緩和の対象は2種類あります。1つは、判定期間の売上高が5,000万円以下の事業者です2。もう1つは、出力した書面を取引年月日および取引先ごとに整理して提示できる事業者です2。いずれの場合も、税務職員によるダウンロードの求めに応じられることが条件になります2。加えて、相当の理由があると認められる場合の猶予措置も設けられています2。自社がどの扱いに当たるかは個別の判断になるため、税務署や税理士への確認を前提に線を引きます。
適格請求書の記載事項は6項目です3。前半は、発行者の氏名または名称と登録番号、取引年月日、取引内容の3点です。後半は、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等、交付を受ける事業者の氏名または名称です。小売業などで交付できる適格簡易請求書では、交付を受ける事業者の氏名または名称が不要になります3。加えて、適用税率と税率ごとに区分した消費税額等は、いずれか一方の記載でよいとされています*3。項目数の引き算だけでは足りず、記載の選択肢が広がる点まで押さえておく必要があります。記載事項の一覧と確認の観点は、<a href="/column/invoice-kisai-jiko/">インボイス制度の記載事項をまとめた記事</a>で詳しく扱っています。
6項目のうち、税率ごとに区分した消費税額等には端数処理の定めがあります。1つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う扱いとされています*3。明細行ごとに端数処理を重ねた請求書は、合計額が自社の計算と1円単位で食い違います。金額差として上がってくる差異の一部はここから生まれるため、差異の閾値を設ける前に計算方法をそろえておく必要があります。
金額による特例も、手順の設計に関わります。税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿の保存のみで仕入税額控除を認める措置が2029年9月30日まで設けられています3。対象は基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です3。適用の可否は個別の要件によるため、税務署や税理士への確認を前提に判定の線を引きます。
受け取るデータの形をそろえる方向では、デジタルインボイスの標準仕様が公表されています4。この仕様は国際的な規格をもとに日本の制度へ対応させたもので、送り手と受け手がそれぞれの仕組みを介してやり取りする4者の経路を前提としています4。仕様に沿って受け取れば、項目の意味が送り手と受け手で一致します。普及に向けた事業者団体の活動も公開されています*6。
制度の要件は改正されます。適用の基準日や改訂の年月は、原典の表示で確かめる運用にしておく必要があります。社内の手順書へ要件を写して固定すると、改正のたびに手順書と原典が離れていきます。手順書には原典の参照先と確認の頻度を書き、要件そのものは原典で確かめる形にします。
| 制度の要件 | 織り込む段 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 電子取引データの保存要件 | 受け取りの段 | 真実性の確保と可視性の確保の2つ |
| 検索の要件 | 受け取りの段 | 取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態 |
| 適格請求書の記載事項 | 照合の第一段 | 6項目と、適格簡易請求書での記載の選択肢 |
| 端数処理の定め | 照合の第一段 | 1つの適格請求書につき税率ごとに1回の端数処理 |
| 金額による特例 | 判定の線引き | 税込1万円未満の課税仕入れは帳簿の保存のみで控除 |
| 標準仕様に沿ったデータの受け取り | 受け取りの段 | 項目の意味が送り手と受け手で一致 |
支払と入金の消込までつなげます
突き合わせの成果は、入金消込までつないで初めて出ます。支払側と入金側を結ぶ鍵の項目を1つ決め、決済データに商流の情報を添え、差異が出たときの差し戻しの経路を先に用意します。3つのうち鍵の項目が決まっていないと、入金は届いているのに消込先が特定できない状態が残ります。振込の摘要欄に頼る運用は、桁数と表記の制約から限界が出ます。
支払側と入金側を結ぶ鍵には、請求書番号か支払通知番号を置きます。取引先名や金額を鍵にすると、同額の複数請求や部分入金で候補が分かれます。相殺や手数料の差引があると、金額一致による判定はさらに外れます。番号を鍵に据えたうえで、金額は検証の材料として使う順序にします。
振込のデータに添えられる情報には、桁数の制約がありました。総合振込のEDI(電子データ交換)情報欄は20桁で、複数の請求書番号を書ききれない場面が生じます*5。番号を省いた振込が届くと、受け取った側は金額と日付から対応を推測します。この推測作業が、月初の入金消込の負荷になります。消込そのものの進め方は、<a href="/column/nyukin-keshikomi/">入金消込の手順を解説した記事</a>で詳しく説明しています。
この制約に対しては、決済データに商流の情報を添える仕組みが用意されています。全銀EDIシステムでは、振込電文にXML形式のEDI(電子データ交換)情報を添付でき、支払通知番号などを桁数の制約なく送れます5。この仕組みは2018年12月に稼働しています5。利用には送り手と受け手の双方の対応が要るため、取引先との調整が前提になります。
自社の側でも、受け取ったEDI情報を消込へ渡す経路を用意しておく必要があります。20桁の固定長では請求書番号1件分でも桁が埋まる場合がありますが5、XML電文であれば複数件をまとめて添付でき、部分入金や相殺のある取引でも対応関係を保てます5。会計や販売管理の側がこの情報を受け取れなければ、送られてきた番号は使われないまま残ります。導入の順序は、鍵の項目を決めてから決済側の対応へ進む形になります。
商流の側で標準仕様に沿ったデータを受け取れていれば、決済側との接続も短くなります。標準仕様では項目の意味が送り手と受け手で一致するため、請求側で採番した番号をそのまま支払通知と入金の照合に使えます4。取引先の対応状況は、普及に向けた事業者団体の公開情報からも確かめられます6。全取引先の対応を待たず、対応済みの取引先から番号による消込へ移します。
支払側の運用も見直します。支払の前に支払通知を送り、どの請求書へいくら支払うかを明示すると、受け取った側の消込が番号で完結します。相殺や値引きは通知の明細に載せます。返還インボイス(返品や値引きの際に交付する適格返還請求書)にも定めがあります。税込1万円未満の値引き等については、交付義務が免除される扱いが示されています*3。
差異が出たときの経路を、あらかじめ決めておきます。差し戻しの単位は請求書1枚ではなく、差異のある明細行に置くほうが早く収束します。全体を止めて再発行を求めると、支払も止まります。明細行の単位で確認と修正を回し、確定した行から支払う運用にすると、月次の締めが遅れにくくなります。
消込の精度は、与信と資金繰りの見通しにも効きます。入金の消込が遅れると、売掛の残高が実態より大きく見えます。残高が読めない状態では、取引先ごとの与信枠の見直しも遅れます。突き合わせの省力化は、経理の作業時間だけで評価しないほうが実態に合います。
定着させる運用と効果の確かめ方
定着の条件は、担当者に依存しない引き継ぎ、効果を測る指標、取引先への案内の3点です。手順は作業の順序ではなく判断の分かれ目で書き、例外の扱いを1か所へ集めます。指標は照合完了までの日数・差異の件数比率・自動で終わった取引の比率の3つに絞ります。案内は取引先の対応可否で3段に分けて進めます。
引き継ぎの文書は、条件と行動を対で書く形にします。「発注番号がない場合は代替の鍵で照合する」という書き方です。順序だけを並べた手順書は、例外が来た時点で止まります。例外の記録を1か所へ集め、月に1度、手順書へ反映する回し方にします。
指標は着手前に数えた分布を基準点にして比べます。照合完了までの日数は締め後の何営業日で終わったかで測り、差異の件数比率は型ごとに分けて追います。自動で終わった取引の比率は、鍵がそろった取引の広がりを表します。3つとも他社の数値と並べず、自社の基準点との差で確かめます。
測定は月次で行い、少なくとも12か月分を並べて判断します。締め後の営業日数は決算期や連休の位置で動くため、単月の増減は手順の効果とは切り離して見る必要があります。差異の件数比率は、母数を請求書の枚数ではなく明細行の数に置くと、1枚のうち一部の行だけがずれる型の増減まで拾えます。3つの指標のうち2つ以上が同じ向きに動いたときに、手順の効果とみなす線を引いておきます。
効果の数値は、自社の測定値に基づいて示します。工数の削減幅は取引先の対応状況と取引の型の分布で変わるため、社外の数値をそのまま当てにはできません。削減幅は、鍵のそろった取引の比率と、紙で届く請求書の残り方によって大きく振れます。数値を外部へ示す場面では、測定した期間と母数の定義を添えて、自社の実測値であることを明記します。
取引先への案内は、対応可否で3段に分けます。標準仕様のデータで送れる先、指定の書式でデータを送れる先、紙のままの先です。第1段の先から順に移すと、自社側の受け取り口の整備が段階的に進みます。案内には記載してほしい項目と送付先だけを書き、社内の承認の詳細は載せません。
見直しの時期は、制度上の期日に合わせて先に置いておきます。経過措置の控除割合は2026年10月1日に80%から50%へ切り替わり、2029年9月30日で措置そのものが終わります3。税込1万円未満の少額特例も2029年9月30日までです3。期日の前後で帳簿の記載事項と判定の分岐が変わるため、この時点を手順書の確認日として固定しておくと漏れにくくなります。
内製で進める場合に要る知見は、制度・データ設計・取引先調整の3領域にまたがります。制度側では電子取引の保存要件と適格請求書の記載事項、データ側では販売管理と会計の項目対応、調整側では書式と送付経路の変更依頼を担います。3領域を兼ねる担当者は社内に置きにくく、欠けた領域から手戻りが出ます。
外部の仕組みや支援を使う判断は、難しいからではなく手戻りを減らすためです。要件の確認、鍵の設計、取引先への案内文の型は、先に経験のある側から受け取ったほうが早く固まります。自社で持つべきは、照合の鍵と例外の判断基準を決めることです。決定を外に出さず、実装と維持の負荷を分け合う切り分けを取ります。
最後に、要点を3つに絞って振り返ります。第一に、照合の鍵となる項目を発注番号を主、3項目の組合せを副として設計しておくと、確認の手が止まりにくくなります。第二に、紙とメールに分かれた受け取り経路を共有の窓口へ統合すると、保存の区分と照合の項目付けが1本の流れでそろいます。第三に、経過措置の割合が変わる2026年10月1日と、措置が終わる2029年9月30日を手順書の確認日として先に固定しておきます*3。
| 定着の条件 | 組み方 | 回し方 |
|---|---|---|
| 担当者に依存しない引き継ぎ | 条件と行動を対で書きます | 例外の記録を月に1度手順書へ反映します |
| 効果を測る指標 | 3つに絞り着手前の分布を基準点にします | 月次で12か月分を並べて判断します |
| 取引先への案内 | 対応可否で3段に分けます | 第1段の先から順に移します |
よくある質問
二点照合と三点照合は、どちらから始めるとよいですか
取引の型で切り分けて始めるのが現実的です。毎月同額が続く役務の取引は二点照合から入り、数量差と単価差が同時に起きる仕入れは納品書を含めた三点照合に置きます。取引先単位で決めると例外が増えるため、型ごとに基準を書いておくと引き継ぎも進みます。
紙で届いた請求書は、電子化して保存しなければならないのですか
受け取りの経路によって扱いが分かれます。メールやウェブで受け取ったデータは電子取引に当たり、電子のまま保存する扱いが原則です*2。紙で受け取った請求書は、スキャナ保存の要件を満たす形で電子化するか、紙のまま保存する区分を選びます*1。個別の判定は原典の記載と税務署・税理士への確認に沿って決めてください。
取引先が発注番号の記載に応じてくれない場合はどうしますか
代替の鍵を用意して照合を続けます。取引先コード・納品日・品目コードの3項目を組み合わせ、金額は検証の材料に回します。あわせて、支払通知に請求書番号を明示して送る運用へ切り替えると、入金消込の側で番号が使えます。記載の依頼は書式変更の案内とまとめて出すほうが通りやすいでしょう。
決済データに商流の情報を添えるには何が要りますか
送り手と受け手の双方の対応が要ります。全銀EDIシステムでは振込電文にXML形式のEDI情報を添付でき、支払通知番号などを桁数の制約なく送れます*5。稼働は2018年12月です*5。自社の対応だけでは効果が出ないため、取引先との調整を計画に含めてください。
制度が改正されたとき、社内の手順書はどう直しますか
要件そのものを手順書へ写さない形にしておくと直しが軽くなります。手順書には原典の参照先と確認の頻度、判断の分かれ目を書き、基準日や改訂の年月は原典の表示で確かめます*1*3。改正の内容が仕入税額控除の可否に関わる場合は、税務署や税理士への確認を前提に運用を直してください。
- *1 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」(2026・随時更新) 経路
- *2 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト 電子取引関係」(2026・随時更新) 経路
- *3 出典:国税庁「タックスアンサー No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(2025・令和7年4月1日現在法令等) 経路
- *4 出典:デジタル庁「JP PINT(日本におけるデジタルインボイスの標準仕様)」(2026) 経路
- *5 出典:一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク「全銀EDIシステム(ZEDI)」(2026・随時更新) 経路
- *6 出典:デジタルインボイス推進協議会(EIPA)「デジタルインボイス推進協議会 公式サイト」(2026・随時更新) 経路
画像の出典元
- a large warehouse filled with lots of boxes/Photo by Alberto Rodríguez on Unsplash
- A woman taping a cardboard box in a warehouse/Photo by GB The Green Brand on Unsplash
- Man operating an automated modula lift storage system/Photo by GB The Green Brand on Unsplash
- Wooden pallets stacked high against a building/Photo by T on Unsplash
- Woman in pink hoodie labeling a package/Photo by GB The Green Brand on Unsplash
- A large pile of brown cardboard boxes with blue tape/Photo by Rohit Choudhari on Unsplash