まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

ISDN終了に伴うインターネットEDI移行:発注側はいつまでに何を決めるか

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • INSネットのディジタル通信モードは2024年1月から段階的に終了しており、今もINSネット経由で動いている発注EDIは補完策の上にあります。
  • 補完策を含むINSネットの提供終了は、NTT東西とも2028年12月31日です。取引先が旧方式の受信を先にやめるなら、その日が実際の期限になります。
  • JCA手順は流通BMS・Web-EDI、全銀系の手順は全銀TCP/IP手順・広域IP網が行き先の候補です。通信手順の変更とあわせて、データ形式が変わるかを取引先と確かめます。
  • 移行先は、自社で通信環境を整える・仲介サービスを使う・取引先の方式に合わせるの三つから、取引先の数と手順のばらつきを見て選びます。
  • 取引先とは方式、テスト、切替日の順に1社ずつ合意します。2016年の1社の事例では1社あたり約1か月かかっており、期限直前の集中を避けて逆算します。

50代後半の日本人男性が窓際での書類確認をしている場面

取引先から移行を求められた発注EDIは、もう止まっているのか、いつ止まるのか

取引先から「ISDN回線のEDIをやめて、インターネットEDIへ移ってほしい」と頼まれても、発注データは今も届いているため、急ぐ理由がつかみにくいかもしれません。
INSネットのディジタル通信モードは、2024年1月から地域ごとに順に終了しています1。
NTT東西の回線で今もつながっているなら、そのEDIは終了後の補完策で動いている状態です。
その補完策も2028年末に提供を終えます1。
発注側が先に決めるのは三つです。
自社の手順を確かめること、移行先の方式を選ぶこと、取引先1社ずつの切替の順番を組むことです。

ディジタル通信モードは終了済み、補完策は2028年12月31日まで

INSネットには、電話として使う通話モードと、データを送るためのディジタル通信モードがあります。
ISDN回線で発注データを送るEDIに関係するのは、このうちディジタル通信モードの終了です。
NTT東日本の案内によると、ディジタル通信モードは2024年1月から地域ごとに段階的に終了しています1。
通話モードは引き続き利用できます1。

それでも発注データが今も取引先に届いているのは、終了に合わせて補完策が用意されたためです。
補完策は、ディジタル通信モードの終了までに別のサービスへ移れない利用者に向けた当面の対応策です。
既存の端末のまま、データを送受信できます1。
NTT東西のINSネットで発注EDIを運用していて、地域のディジタル通信モードが終わった後も送信が続いているとします。
その場合、そのEDIは止まらずに済んだのではなく、補完策の上で動いている状態にあります。

では、補完策はいつまで使えるのでしょうか。
NTT東日本は、INSネット64・64ライト・1500の新規受付を2024年8月31日に終了しました。
そのうえで、2028年12月31日にサービスの提供を終了すると発表しています2。
この終了には、切替後のデータ通信である補完策も含まれます2。
NTT西日本も、補完策を含むINSネットの提供を2028年12月31日に終えるとしています3。
東西どちらのエリアでも、ISDN回線でデータを送れる最後の日は同じです。

ただし、2028年12月31日は回線そのものが終わる日です。
取引先がISDN経由の受信をやめる日と同じとは限りません。
取引先が先に新しい方式へ移り、旧来の受信設備を止める計画を持っていることもあります。
その場合、発注側にとっての実際の期限は、取引先が受信をやめる日になります。
移行の依頼を受けたら、まず取引先に二つのことを尋ねておくと、後の計画が立てやすくなります。
一つは依頼文に希望時期が書かれているかどうか、もう一つは書かれていなければ旧方式でいつまで受け付けてもらえるかです。

補完策で動いている間も、以前とまったく同じに使えるとは限りません。
案内では、伝送遅延によって処理時間が長くなるなど、機器によっては影響が出ることが示されています1。
どの程度遅くなるかは、使っている通信機器やEDIソフトの組み合わせで変わるため、一律には言えません。
たとえば、夕方に締めた発注データを夜間にまとめて送っているとします。
送信に掛かる時間が延びれば、取引先がデータを受け取って処理を始める時刻もその分だけ後ろへずれます。
また、補完策のデータ通信料は全国一律で3分あたり9.35円と案内されています1。
通信時間が延びれば、料金にも響く可能性があります。

自社が補完策を使っているかを請求書で確かめる

回線の契約や支払いは総務や経理が管理していることがあります。
その場合、発注EDIの担当者からは、どの回線がINSネットなのかが見えていないこともあります。
NTT東日本の案内では、ディジタル通信モードを使っているかどうかを確かめる方法として、二つが示されています1。
通信機器の仕様を確認する方法と、請求書の「INS通信料」の表示を見る方法です。
請求書は1か月分ではなく、複数月分で確かめるよう案内されています1。
月に数回しか送らない取引先があると、1か月分だけでは表示を見落とすおそれがあります。
複数月を見る方法は、こうした見落としを防ぐ点で理にかなっています。

請求書で表示が見つかったら、次はその回線に何がつながっているかを突き合わせます。
具体的には、回線の先にあるターミナルアダプターなどの通信機器、EDIの送受信ソフト、そのソフトがどの取引先へどの手順で送っているかの三つです。
これらを一つの表にまとめておくと、後の作業で何度も使えます。
1本の回線で複数の取引先へ送っている場合、取引先によって使っている手順が違うことがあります。
この違いが、次に考える引き継ぎの問題に直接かかわります。

補完策の遅延が自社の運用にどう出ているかも、この段階で見ておけます。
以前より送信の完了が遅くなっていないか、取引先から受信の遅れを指摘されていないかを、送信ログや担当者の記録で確かめます。
こうした記録は、期限より前に不具合が表に出そうかどうかを見極める手掛かりになります。
遅延の出方は機器によって違います1。
そのため、他社で問題がなかったという話を、そのまま自社の判断材料にはできません。

現行の手順・データ形式は引き継げるのか:JCA手順・全銀手順・全銀TCP/IP手順の行き先

流通系:JCA手順から流通BMS・Web-EDIへ

回線の期限が分かると、次に気になるのは、いま使っている手順をインターネット上へそのまま持っていけるのかという点です。
先に答えを言えば、手順ごとに移行先の候補があり、どれも通信手順の変更を伴います。
2016年の日経クロステックの記事は、JCA手順・全銀手順・全銀TCP/IP手順といった従来型のEDIについて、ISDN回線を使うことが多いと伝えています4。
移行先の候補として挙げられていたのは、IP網に対応した流通BMSやWeb-EDIです4。
同じ記事は、通信手順の変更が大きな負担になるとも伝えています4。

JCA手順は、流通業界の企業間取引で長く使われてきた通信手順です。
その移行先として名前が挙がる流通BMSは、EDIの標準仕様です。
電子取引文書と、通信プロトコル・セキュリティについて定めています5。
電子取引文書とは、発注や出荷などの伝票をデータにしたものです。
流通BMSでは、この電子取引文書も標準の対象に含まれます。
そのため、JCA手順から流通BMSへ移る場合は、回線とソフトを替えるだけでは済まないと考えておくほうが安全です。
送る発注データの書式を標準に合わせる作業も加わると見込んでおきます。

普及の目安として、卸・メーカー側の流通BMS導入企業は、2025年6月1日時点の推計で21,600社以上とされています5。
ただし、この数字は卸・メーカー側の導入数です。
発注する小売などがどれだけ導入しているかを示すものではありません。
それでも、取引先が卸やメーカーであれば、移行先として流通BMSを提示してくる可能性を考える材料にはなります。

Web-EDIは、Webブラウザの画面などを通じて取引データをやり取りする形態を指すことが多く、提供のしかたは取引先や事業者ごとに異なります。
発注側から見ると、日々の作業を大きく左右するのは、データの渡し方です。
自社の発注システムから出したデータをファイルで受け渡せるのか、それとも画面に入力し直すのかで、作業量が変わります。
画面への入力になると、新しい手間が二つ生まれます。
これまで発注システムから自動で送っていた品番や数量を担当者が別の画面へ転記する手間と、その転記が正しいかを確かめる手間です。

銀行系:全銀手順から全銀TCP/IP手順・広域IP網へ

全銀手順は、全国銀行協会(全銀協)の名を冠した通信手順です。
従来型の企業間EDIにも使われてきました4。
流通系とは別の系統なので、行き先も別に考える必要があります。

全銀協は、ISDNディジタル通信モードの終了に伴い、「全銀TCP/IP手順・広域IP網」を制定しました6。
通信製品を提供する事業者も、これに準拠した製品を出しています6。
全銀系の手順で発注データを送っている場合、まず移行先の候補になるのはこの手順です。

名前が似ているため、注意したい点があります。
「全銀TCP/IP手順」という名前でも、ISDN回線の上で使われてきたものがあります4。
そのため、すでにTCP/IP手順を使っているから影響はない、とは限りません。
いま使っている手順の名前だけで判断せず、その通信がどの回線を通っているかを、前の確認で作った表で確かめます。
ISDN回線の上で動いているなら、広域IP網での接続へ移す作業が必要になります。

旧来の全銀手順を取引先や通信製品の側でいつまで扱えるかは、製品の提供元や取引先によって事情が異なります。
移行を求めてきた取引先が全銀系の手順を使っているなら、依頼の段階で移行先の名前まで確かめておきます。
「全銀TCP/IP手順・広域IP網」なのか、それとも別の方式なのかを最初にはっきりさせておけば、後で行き違いが起きにくくなります。

データ形式の変更要否を取引先と確認する

通信手順とデータ形式は、分けて考えると整理しやすくなります。
通信手順は、データをどうつないで送り届けるかの約束です。
データ形式は、送る発注データにどの項目をどの並びで入れるかの約束です。
全銀TCP/IP手順・広域IP網は、名前のとおり通信手順の取り決めです6。
それだけで発注データの書式が決まるわけではありません。
書式が今のままでよいのか、変わるのかは、取引先との取り決めによって決まります。

仮の例で考えてみます。
発注システムから品番・数量・納品日を決まった桁数のファイルで出していて、取引先が流通BMSへの移行を求めてきたとします。
この場合、通信ソフトを替えるだけでなく、そのファイルを流通BMSの書式に変換する工程が要るかどうかが論点になります。
反対に、通信手順だけが変わり、書式は現行のままでよいと取引先が言えば、発注システム側の出力には手を入れずに済む可能性があります。
どちらになるかで社内の作業量が大きく違うため、方式の名前と一緒に書式の扱いも早めに聞いておく価値があります。

取引先に尋ねる内容は、次のように分けておくと漏れにくくなります。

  • 移行先の手順や方式の正式な名前
  • 発注データの書式は現行のままか、新しい書式に変わるか
  • 商品コードや取引先コードの付け方が変わるか
  • テスト用のデータをいつ、どの方法で送れるか
  • 旧方式での受付をいつまで続けるか
現行の手順 移行先の候補 変わること 取引先と確かめること
JCA手順 流通BMS・Web-EDI 通信手順。流通BMSでは発注データの書式も標準に合わせる 移行先の方式名と書式、ファイル連携か画面入力か
全銀手順 全銀TCP/IP手順・広域IP網 通信手順 書式を現行のままにするか
全銀TCP/IP手順(ISDN回線上で使っている場合) 全銀TCP/IP手順・広域IP網 回線と接続方法 広域IP網での接続条件
INSネットのデータ通信が終わるまでの流れ
2024年1月から補完策へ移り、2024年8月31日に新規受付が終わり、2028年12月31日に提供が終わる時系列2024年1月から補完策へ移り、2024年8月31日に新規受付が終わり、2028年12月31日に提供が終わる時系列2024年1月から ディジタル通信モードが地域ごとに段階的に終了し、補完策で継続2024年8月31日 INSネットの新規受付が終了2028年12月31日 補完策を含むINSネットの提供が終了

▼ 図の内容を文字で読む
  • 2024年1月から ディジタル通信モードが地域ごとに段階的に終了し、補完策で継続
  • 2024年8月31日 INSネットの新規受付が終了
  • 2028年12月31日 補完策を含むINSネットの提供が終了

移行先の選択肢:自社で通信環境を整える・仲介サービスを使う・取引先の方式に合わせる

3つの選択肢を作業負担・適合条件・費用構造で比べる

手順の行き先が見えたら、次は、その手順を誰がどの仕組みで動かすかを決めます。
発注側の選択肢は、大きく次の三つに分けられます。

  • 自社で通信環境を整える:移行先の手順に対応した通信ソフトや機器を自社で用意し、インターネット回線を通じて取引先と直接つなぐ
  • 仲介サービスを使う:EDIの通信やデータの変換を引き受ける事業者と契約し、自社はその事業者とつなぐ
  • 取引先の方式に合わせる:取引先が用意した方式を、取引先の指定どおりに使う

表の中で判断が分かれるのは、主に「対応できる取引先・方式」の行です。
取引先が1社だけで、その取引先が方式まで指定しているなら、取引先の方式に合わせるのがもっとも準備の少ない道になります。
一方、取引先が多く、流通系と全銀系の手順が混ざっている場合は事情が違います。
取引先ごとに合わせ続けると、発注担当者が取引先の数だけ違う画面やファイルの扱いを覚えることになりかねません。
日経クロステックの記事でも、移行済みの取引先は流通BMSやWeb-EDIなど異なる方式へ移っていたと伝えています4。
取引先ごとの調整が必要だという指摘もありました4。
取引先の対応方式を一覧にしてから選ぶのは、この行を埋めるためです。

自社で整えるか、仲介サービスを使うかの違いは、費用の出方と、手順が増えたときの対応にあります。
自社で整える場合は、通信ソフトや機器の導入、接続の設定、保守を自社で受け持ちます。
扱う手順が増えれば、その分の対応も自社で加えることになります。
仲介サービスでは、そうした作業を契約の範囲で事業者に任せる代わりに、契約に基づく利用料が掛かります。
どの手順や書式に対応するかは、サービスごとに異なります。
金額の比較は、見積もりをそろえてから行うことになります。
その前に、取引先一覧の手順がそれぞれの選択肢でどこまで賄えるかを見ておくと、見積もりを取る相手を絞れます。

既存システムを継続できる場合の条件

発注システムを今のまま使い続けたいという希望は、発注側の担当者にとって切実です。
発注の画面や締めの流れを変えると、現場の担当者の手順や社内の承認まで見直すことになるからです。
この点で参考になるのが、中小企業庁が紹介している中小企業共通EDIの仕組みです。
中小企業庁の説明では、発注側企業が対応するプロバイダーと契約すると、注文情報が共通辞書に従って変換されます7。
その結果、自社の独自システムを継続して利用できるとされています7。
共通辞書とは、やり取りする項目の意味や呼び方をそろえるための共通の取り決めです。
変換はプロバイダーの側が受け持つため、発注側は自社のシステムを使い続けられます。

ただし、これはデータ形式を共通化する仕組みとしての説明です。
ISDNの終了に合わせて作られた移行の案内ではありません。
この道が使えるのは、取引先の側もその仕組みに沿って注文情報を受け取れる場合に限られます。
また、仲介サービスであればどこでも同じように変換を引き受けてくれるわけではありません。
現行の手順で出しているファイルをそのまま受け付けるか、どの書式へ変換できるかは、サービスごとに確かめる必要があります。

変換を任せられたとしても、発注側に残る作業はあります。
たとえば、自社の商品コードや取引先コードと、取引先が使うコードとの対応を、誰がどこで保守するのかを決めておく必要があります。
これが決まっていないと、新商品を追加するたびに変換の設定が追いつかず、取引先の側で読めない発注が生まれるおそれがあります。
変換で弾かれたデータの通知を誰が受け取り、どう送り直すかも、契約の前に事業者と話しておきたい点です。
システムを変えずに済むのは、発注の入力と出力の部分です。
取引先とのデータの突き合わせまで不要になるわけではありません。

比べる軸 自社で通信環境を整える 仲介サービスを使う 取引先の方式に合わせる
作業内容 対応ソフト・機器の導入と取引先ごとの接続設定を自社で行う 事業者との接続と変換の設定を事業者と進める 取引先の指定に沿って利用を始める
必要な準備 インターネット回線、移行先の手順に対応したソフト・機器、保守の体制 事業者との契約、自社データの書式と取引先の要件の受け渡し 取引先の利用条件の確認、ファイル連携か画面入力かの確認
対応できる取引先・方式 自社で用意した手順に対応する取引先 事業者が対応する手順・書式の範囲 方式を指定したその取引先
費用の構造 導入時の費用と、自社での保守・運用の負担 契約に基づく利用料。内訳はサービスごとに異なる 取引先の条件による。画面入力なら担当者の作業時間
自社の発注EDIが補完策で動いているかを確かめる流れ
請求書の確認から、機器とソフトの特定、取引先ごとの手順の整理、送信の遅れの確認までの4つの手順1請求書の「INS通信料」の表示を複数月分確かめる2その回線につながる通信機器とEDIの送受信ソフトを特定する3どの取引先へどの手順で送っているかを一つの表にまとめる4送信ログや担当者の記録で、送信の遅れや受信の遅れの指摘を確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 請求書の「INS通信料」の表示を複数月分確かめる
  2. その回線につながる通信機器とEDIの送受信ソフトを特定する
  3. どの取引先へどの手順で送っているかを一つの表にまとめる
  4. 送信ログや担当者の記録で、送信の遅れや受信の遅れの指摘を確かめる

取引先とは何を、どの順で合意するか:方式・テスト・切替

方式の合意、テスト、切替日の順

移行先の方式が決まっても、切り替えは取引先と合意しながら1社ずつ進めることになります。
合意する事柄は、方式、テスト、切替日の三つです。
この順に進めるのがよいと考えます。
これは確認済みの標準手順ではありません。
テストで見つかった食い違いが方式の決め直しにつながりやすいことを踏まえた、編集部としての提案です。

最初の方式の合意では、移行先の手順の名前、発注データの書式、接続に必要な情報、送信する時間帯を取引先とそろえます。
取引先に尋ねた手順・書式・コードの扱いを、ここで双方の取り決めとして確定させるイメージです。
ここが曖昧なままテストへ進むと、取引先が想定していた書式と自社が出したファイルが合わないことがあります。
そうなると、方式の話し合いへ戻らなければなりません。

テストでは、実際の発注に近いデータを新しい方式で送ります。
そして、取引先がそれを受け取り、自社のシステムに取り込めるかを確かめてもらいます。
発注側で見ておきたいのは、送信が完了したかどうかだけではありません。
品番や数量、納品日といった項目が取引先の側で正しく読めているか、文字化けや桁の欠けがないかも確かめます。
取引先から結果を返してもらい、自社の送ったデータと照合します。
送れたことと、受け取った側で使えることは、別々に確かめる必要があるからです。

切替日の合意では、旧方式での最後の送信と、新方式での最初の本番送信をいつにするかを決めます。
発注側が気を付けたいのは、切替の前後で起こりうる二つの事態です。
同じ発注が二重に届くことと、どちらの方式でも届かないことです。
たとえば、切替日の朝に新方式で発注を送ったのに、旧方式のソフトに夜間の送信予約が残っていたとします。
すると、取引先には同じ発注が二度届きます。
切替日には、旧方式の送信予約を止めたことと、新方式の初回分を取引先が受け取ったことを、双方で一度ずつ確かめておきます。
そうしておけば、二重の発注や欠けた発注があってもその日のうちに気付きやすくなります。

1取引先あたり約1か月という事例と集中リスク

調整にどれくらいの期間を見込めばよいかについて、手掛かりになる事例があります。
2016年の日経クロステックの記事では、約500弱の小売店とEDIで取引する企業が、小売店1社ずつ日程を合わせて切り替えていました4。
この企業では、事前調整から利用開始まで1か月ほどかかるとされていました4。
同じ企業では当時、取引先のうち10%強が、すでにIP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行していました4。
記事では、取引先の切替が期限の直前に集中すると、間に合わない取引先が出るという懸念も挙げられていました4。

ただし、これは2016年当時の1社の事例です。
今の移行状況を示す統計ではありません。
記事の企業は取引先の数も業界も読者の会社とは異なるはずで、立場も発注側と同じとは限りません。
1社あたり約1か月という数字は、あくまで目安として扱い、標準の期間とは考えないほうが安全です。

それでも、この事例から読み取れることはあります。
切替が1社ずつ進むこと、日程は相手の都合に合わせて決まること、そして期限が近づくほど日程が取りにくくなることです。
受注側の取引先は、自社以外の発注元とも並行して切替を進めている可能性があります。
そうであれば、期限の直前にはテストや切替日の枠が埋まっていくことも考えられます。
発注側が早めに方式の合意を申し出ておけば、取引先の側でも予定に組み込みやすくなります。

通信手順とデータ形式を分けて考える整理(模式図)
通信手順とデータ形式の違いと、取引先に確かめる点を分けて示した図通信手順とデータ形式の違いと、取引先に確かめる点を分けて示した図通信手順データをどうつないで送り届けるかの約束移行先の手順や方式の正式な名前を確かめる旧方式での受付をいつまで続けるかを確かめるデータ形式発注データにどの項目をどの並びで入れるかの約束現行のままか、新しい書式に変わるかを確かめる商品コードや取引先コードの付け方が変わるかを確かめる取引先との取り決め書式が変わるかどうかは取引先との取り決めで決まるテスト用のデータをいつ、どの方法で送れるかを確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 通信手順
    • データをどうつないで送り届けるかの約束
    • 移行先の手順や方式の正式な名前を確かめる
    • 旧方式での受付をいつまで続けるかを確かめる
  • データ形式
    • 発注データにどの項目をどの並びで入れるかの約束
    • 現行のままか、新しい書式に変わるかを確かめる
    • 商品コードや取引先コードの付け方が変わるかを確かめる
  • 取引先との取り決め
    • 書式が変わるかどうかは取引先との取り決めで決まる
    • テスト用のデータをいつ、どの方法で送れるかを確かめる

状況別に決める:取引先主導か自社主導か、現行手順を維持したいか見直せるか

期限からの逆算

ここまでの材料をつなぐと、いつまでに何を決めるかを逆算できます。
確定している終点は、補完策を含むINSネットの提供が終わる2028年末です3。
ただし先に触れたとおり、取引先が旧方式の受信をそれより先にやめるなら、その日が自社にとっての終点になります。
また、補完策の間は機器によって処理時間が延びる可能性があります1。
終点の当日まで今の運用が問題なく続く、という前提には立たないほうが無難です。

仮の条件で計算してみます。
ISDN経由で発注データを送っている取引先が12社あり、社内の体制で同時に調整できるのは3社まで、1社あたり約1か月かかるとします。
約1か月という長さは、2016年の1社の事例を目安として借りた仮定です4。
この条件なら、取引先との調整と切替だけで4か月程度を見込むことになります。
実際には、ここにさらに期間を加えていきます。
移行先の方式を社内で決める期間、仲介サービスや通信ソフトの見積もりと契約の期間、テストで不具合が出たときのやり直し、取引先の繁忙期を避けるための余裕です。
取引先の数や並行できる数が変われば結果も変わるので、自社の一覧に当てはめて計算し直してください。

逆算すると、最初に決めるべきは方式で、その次が取引先ごとの日程です。
方式が決まらないうちは、どの取引先とも合意やテストに入れません。
補完策で動いている間に自社の機器で送信の処理時間を見ておくと、期限より前に不具合が出そうかどうかも見極めやすくなります。
ただし、遅延が個々のEDIにどう響くかまでは、事前に言い切れるものではありません。

取引先主導の場合

取引先から方式と時期を指定されている場合、基本はその方式に合わせることになります。
そのうえで発注側が決めるのは、その方式を自社のどの仕組みで扱うかです。
取引先が全銀TCP/IP手順・広域IP網を指定しているなら、選択肢は二つです。
対応する通信ソフトを自社で用意するか、その手順に対応した仲介サービスを使うかです。
取引先がWeb-EDIの画面を用意しているなら、発注システムからデータをファイルで渡せるのか、画面に入力し直すのかを先に確かめます。
入力し直す場合は、担当者の手間と転記の確認が増えることを社内で共有しておきます。

発注システムやデータの出し方を今のまま保ちたい場合は、取引先が指定した方式へ変換を挟んでつなげられるかが焦点になります。
中小企業共通EDIのように、対応プロバイダーが注文情報を変換し、独自システムを使い続けられる仕組みもあります7。
ただし、取引先がその仕組みで受け取れることが前提です。
決める時期の目安は、取引先が示した期限からテストと切替の期間を差し引いた日より前と置くと考えやすくなります。

取引先主導で1社に合わせた方式が、他の取引先にも使えるとは限りません。
最初の1社の依頼に合わせて仕組みを選ぶ前に、ほかの取引先の手順も一覧で眺め、同じ仕組みで賄える範囲を確かめておきます。
そうすれば、取引先ごとに別の仕組みが増えていくのを避けやすくなります。

自社主導の場合

取引先から具体的な指定がなく、自社から移行を呼びかける立場なら、取引先全体の方式を見て選ぶことになります。
一覧を手順ごとに並べると、取引先は二つに分かれてきます。
同じ方式でまとめられる取引先の群と、個別の対応が要る取引先です。
流通系の取引先が多いなら流通BMSに対応できるかを、全銀系の取引先が多いなら全銀TCP/IP手順・広域IP網に対応できるかを、選択肢ごとに確かめます。

現行の手順やデータの出し方を見直せる余地があるなら、これを機に標準の仕様へ寄せる選択も取れます。
流通BMSは、電子取引文書から通信プロトコルまでを定めた標準です5。
取引先が対応していれば、取引先ごとに書式を作り分ける場面を減らせる可能性があります。
ただし、書式の変更は発注システム側の出力の変更を伴うことがあります。
社内のシステム担当や開発の委託先の予定も、あわせて押さえておく必要があります。

見直せない場合は、仲介サービスでの変換を前提にします。
そのうえで、取引先の手順をどこまで受け持てるかで事業者を比べます。
どちらの場合も、方式を決める時期は最初の取引先との調整を始める前です。
そこから、取引先の群ごとに日程を組んでいきます。
自社から呼びかける立場では、取引先の側の準備期間も自社の計画に左右されます。
方式と希望時期を早めに伝えておくほど、相手にとっても予定を立てやすくなります。

変換を任せる場合の役割分担と前提(模式図)
プロバイダーの受け持ち、発注側に残る作業、使える前提を分けて示した図プロバイダーの受け持ち、発注側に残る作業、使える前提を分けて示した図プロバイダーが受け持つ注文情報を共通辞書に従って変換する発注側に残る作業自社の商品コードや取引先コードの対応を誰が保守するか決める変換で弾かれたデータの通知を誰が受け、どう送り直すか決める成り立つ前提取引先もその仕組みで注文情報を受け取れる現行のファイルを受け付けるか、どの書式へ変換できるかをサービスごとに確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  • プロバイダーが受け持つ
    • 注文情報を共通辞書に従って変換する
  • 発注側に残る作業
    • 自社の商品コードや取引先コードの対応を誰が保守するか決める
    • 変換で弾かれたデータの通知を誰が受け、どう送り直すか決める
  • 成り立つ前提
    • 取引先もその仕組みで注文情報を受け取れる
    • 現行のファイルを受け付けるか、どの書式へ変換できるかをサービスごとに確かめる

自社の発注EDIが補完策で動いていると分かっても、取引先ごとに手順や書式が異なると、どの方式に寄せれば一覧全体を賄えるかを社内だけで見極めるのは難しくなります。

今の取引先一覧と使っている手順をもとに、どの選択肢でどの取引先まで対応できそうか、取引先に何を尋ねればよいかを整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
回線の期限 補完策を含むINSネットの提供終了は、NTT東西とも2028年末
実際の期限 取引先が旧方式の受信を先にやめるなら、その日
利用の確認 機器の仕様と、請求書の「INS通信料」の表示(複数月分)
流通系の行き先 JCA手順から流通BMS・Web-EDI。流通BMSでは書式も標準に合わせる
全銀系の行き先 全銀TCP/IP手順・広域IP網。ISDN上の全銀TCP/IP手順も対象
移行先の選び方 取引先の数と手順のばらつき、既存システムを残したいかどうか
取引先との合意 方式、テスト、切替日の順に1社ずつ(1社約1か月は2016年の1社の事例)
取引先1社ごとの切替の進め方(提案の順序)
方式の合意、テスト、切替日の合意、切替当日の確認の順に進める流れ1方式の合意手順・書式・接続情報・送信する時間帯2テスト取引先での取り込みと項目の照合3切替日の合意旧方式の最後の送信と新方式の最初の本番送信4切替当日の確認旧方式の送信予約の停止と初回分の受信

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 方式の合意(手順・書式・接続情報・送信する時間帯)
  2. テスト(取引先での取り込みと項目の照合)
  3. 切替日の合意(旧方式の最後の送信と新方式の最初の本番送信)
  4. 切替当日の確認(旧方式の送信予約の停止と初回分の受信)
状況別に発注側が決めることの比較(模式図)
取引先主導、自社主導で見直せる場合、見直せない場合ごとの決めることを分けた図取引先主導、自社主導で見直せる場合、見直せない場合ごとの決めることを分けた図取引先主導指定された方式に合わせ、自社のどの仕組みで扱うかを決めるWeb-EDIならファイルで渡せるか、画面入力かを先に確かめる自社主導で見直せる流通BMSなど標準の仕様へ寄せることを検討するシステム担当や開発の委託先の予定を押さえる自社主導で見直せない仲介サービスでの変換を前提にする取引先の手順をどこまで受け持てるかで事業者を比べる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 取引先主導
    • 指定された方式に合わせ、自社のどの仕組みで扱うかを決める
    • Web-EDIならファイルで渡せるか、画面入力かを先に確かめる
  • 自社主導で見直せる
    • 流通BMSなど標準の仕様へ寄せることを検討する
    • システム担当や開発の委託先の予定を押さえる
  • 自社主導で見直せない
    • 仲介サービスでの変換を前提にする
    • 取引先の手順をどこまで受け持てるかで事業者を比べる

期限から逆算した計画は、取引先の数や並行できる社数、取引先が示す受付期限によって大きく変わります。一般的な目安だけでは、自社の日程に落とし込みにくい部分が残ります。 自社の取引先数と体制を前提に、方式を決める時期と取引先ごとの調整の順番を、仮の日程として並べて確かめられます。

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

自社がまだ補完策を使っているかを、どこで確認できるのか

NTT東日本の案内では、ディジタル通信モードを使っているかを確かめる方法が示されています1。
通信機器の仕様を確認する方法と、請求書の「INS通信料」の表示を見る方法で、請求書は複数月分を見るよう案内されています1。
NTT東西のINSネットで、地域のディジタル通信モードが終わった後もデータ通信が続いているなら、補完策で通信している状態です。
請求書の見方や回線ごとの状況で分からない点は、契約しているNTT東日本・西日本の窓口に尋ねると確実です。

補完策でEDIがつながっていれば、2028年末まで急がなくてもよいのか

急がなくてよいとは言い切れません。
補完策は、ディジタル通信モードの終了までに移れない利用者向けの当面の対応策です。
機器によっては、伝送遅延で処理時間が延びるといった影響が出るとされています1。
また、取引先が旧方式の受信を2028年末より前にやめる計画であれば、実際の期限はその日になります。
取引先との調整は1社ずつ進み、2016年の1社の事例では1社あたり約1か月かかっていました4。
取引先の数が多いほど、早めに方式を決めておく意味は大きくなります。

取引先ごとに通信方式が違う場合、移行はどの順で進めるのか

まず、取引先ごとの手順と、旧方式での受付期限を一覧にします。
そのうえで、受付期限が早い取引先や、取引先から時期を指定されているところを先に進めます。
同じ手順の取引先はまとめて日程を組むと、方式の合意やテストの進め方を使い回しやすくなります。
最初の1社で方式の合意からテスト、切替までを一通り経験しておくと、2社目以降に何を確認すればよいかが具体的になります。
これは編集部の提案で、取引先の数や業界によって適した順は変わります。

現行のシステムを変えずにインターネットEDIへ移れるのか

条件が合えば可能です。
中小企業共通EDIでは、発注側企業が対応プロバイダーと契約すると、注文情報が共通辞書に従って変換され、独自システムを継続して利用できると説明されています7。
ただし、取引先がその仕組みで受け取れることが前提です。
ほかの仲介サービスが同じ変換を引き受けるかどうかは、サービスごとに異なります。
システムを変えずに済んでも、コードの対応表の保守や、変換で弾かれたデータの扱いといった運用は残ります。

NTT東日本とNTT西日本で、期限や案内に違いはあるのか

提供終了の時期は同じです。
NTT東日本は、INSネット64・64ライト・1500の新規受付を2024年8月31日に終え、補完策を含めて2028年12月31日に提供を終了するとしています2。
NTT西日本も、2024年8月31日に新規・移転の受付を終え、補完策を含むINSネットを2028年12月31日に終了するとしています3。
手続きや問い合わせ先などの細かな案内は各社のページに分かれています。
自社の回線がある地域の会社の案内を見てください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「INSネット(ディジタル通信モード)サービス終了のご案内」(2024年)
  2. 2 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「「INSネット」の新規申込受付終了及びサービス提供終了について」(2024年)
  3. 3 出典:西日本電信電話株式会社(NTT西日本)「INSネットの場合(固定電話・INSネットの今後)」(2024年)
  4. 4 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
  5. 5 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「流通BMS(卸・メーカーの導入企業数推計 第28回)」(2025年)
  6. 6 出典:インプレス(Cloud Watch)「セイコーソリューションズ製品の全銀TCP/IP手順・広域IP網対応の報道」(2021年頃)
  7. 7 出典:中小企業庁「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!(ミラサポplus)」(2020年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top