◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- ISDNのディジタル通信モードは2024年1月に終了しており、いま動いているのは補完策の可能性がある。NTT東日本の案内では補完策は2028年12月31日に終わる。
- 棚卸しは取引先ごとに行い、データの行き先・出どころと頻度・時刻まで書き出すと、移行後に残る転記やテストの範囲が見える。
- 取引先ごとに必須・選択可・未確認に分け、取引先との調整を製品・サービスの選定より先に進める。
- 並行稼働は月末の締めや請求まで流れるまで続け、切り戻しの基準を事前に決めて、補完策の終了日から余裕を持たせて置く。
- 旧回線の解約日は、もっとも遅く移行する取引先と契約の解約条件から逆算して決める。
目次

取引先から切り替えを求められたら最初に確かめる、現行の回線の状態
取引先から「インターネットEDIへ切り替えてほしい」と言われても、いま何の回線で、どの取引先と、何を送受信しているかを説明できなければ、返事も段取りも決められません。
ISDN(INSネット)のディジタル通信モードは終了しています2。
いまも同じ端末で送受信できているなら、補完策で動いている可能性があり、NTT東日本の案内ではその補完策も終わります1。
まず取引先ごとに受発注の流れを棚卸しします。
次に、取引先の指定に従う部分と自社で選べる部分を分けます。
そのうえで補完策の終了日から逆算し、テスト・並行稼働・切り戻しと旧回線の解約時期を決めます。
ディジタル通信モードは2024年1月に終了済み
INSネットはNTTが提供してきたISDNのサービスで、通話とは別に、データをそのまま送る「ディジタル通信モード」を備えていました。
ISDN回線を使って取引先と受発注データを送受信していた場合に関係するのが、このモードです。
ディジタル通信モードは地域ごとに段階的に終了しました1。
報道によると、山形県と鳥取県、東北の一部などが先に終わり、残りの地域も終了しています2。
INSネットで取引先とつながってきた会社にとっては、取引先から切り替えを求められた時点で、元の仕組みはすでに終わっていることになります。
それでも毎日の注文データが届いているなら、何が代わりに動いているのかを先に押さえる必要があります。
いま動いているのは補完策かもしれない
NTT東日本は、ディジタル通信モードの終了後も既存のINSネット対応端末のままデータを送受信できる「切替後のINSネット上のデータ通信」、いわゆる補完策を提供しています1。
2024年1月以降も端末を替えずに送受信できているなら、補完策で動いている可能性が高いと考えられます。
ただし、補完策は従来と同じ品質で動くことを前提にした仕組みではありません。
NTT東日本の案内では、従来より伝送遅延が生じて処理時間が増える可能性があり、切替前と同一品質で使えない場合があるとされています1。
通話料金は全国一律で3分9.35円と案内されています1。
この料金はNTT東日本の補完策についての案内に基づくもので、NTT西日本のエリアや他社の回線では、それぞれの通知や契約書面に書かれた条件を見る必要があります。
現場で困るのは、遅延そのものより、遅延に気づかないまま後の工程が動くことです。
たとえば、毎朝決まった時刻に取引先から注文データを受け取り、販売管理システムへ取り込んで出荷指示を出している場合、受信が終わる前に取込みが始まると、一部の注文が抜けたまま出荷の準備が進むおそれがあります。
受信の終了時刻が以前より遅くなっていないか、再送が増えていないかを見ておくと、いまの回線の状態をつかむ手掛かりになります。
どの回線を使っているかは、回線の請求明細、端末やEDIソフトの接続設定、回線契約の書面を突き合わせると見えてきます。
INSネットではなく、別の専用回線や、取引先との間でデータを中継する事業者のサービス(VAN)を使っている場合もあります。
INSネット以外の回線や接続サービスは、ここで述べた終了日程とは別に扱われるため、終了や変更の予定は契約先からの通知で確かめます。
補完策の終了日から逆算する
補完策の終了時期は、2023年の報道時点では「2027年ごろまでをめど」とされていました2。
現在のNTT東日本の案内では、補完策は提供を終了すると記載されています1。
古い社内資料や記事に2027年と書かれていたら、案内の日付に置き換えておきます。
この日付は、移行を終える目標ではなく、旧回線が使えなくなる上限です。
取引先とのテスト、並行稼働、切り戻しの余地、解約の手続きをすべてこの日より前に収める必要があり、最後に動き出す取引先の都合で全体の日程が押されます。
取引先から切り替えの期限を別に示されているなら、早いほうがその取引先との実際の締め切りになります。
NTT東日本の案内も、事業者に補完策の利用有無を確認し、移行が終わるまでに別のサービスへの切替を検討するよう求めています1。
受発注の流れを取引先単位で棚卸しする
取引先ごとに書き出す項目
期限の上限が分かったら、次はその日までに何を移すのかを確定させます。
棚卸しの単位を回線や機器ではなく取引先にするのは、移行の段取りも期限も取引先ごとに決まるからです。
同じ回線でつながっていても、ある取引先は来年に切り替えたい、別の取引先はまだ予定がない、ということが起こり得ます。
取引先ごとに、次の欄を一行ずつ埋めていきます。
ここに挙げる欄は、移行の判断に使う情報から逆に組んだ一案です。
- 取引先名と、相手側の窓口(担当者・連絡先)
- やり取りするデータの種類(注文、出荷案内、請求など)と、送るか受け取るかの向き
- いまの方式・回線・機器・ソフト(INSネットか、別の回線や接続サービスか)
- 送受信の頻度と時刻
- 受け取ったデータの行き先、送るデータの出どころ(どの業務システムか、手入力か)
- 社内の担当者と、不在時に代わる人
- 取引先が指定している方式や標準の名前、切替の期限
移行の作業量を左右するのは、データの行き先と出どころの欄です。
回線と方式が変わっても、受け取った注文が販売管理システムへそのまま取り込まれる形を保てれば、現場の作業はほとんど変わりません。
反対に、新しい方式で届くデータの形式が変わり、いまの取込み設定が使えなくなると、取り込めない分を画面から転記する作業が生まれます。
移行を回線の付け替えとだけ捉えていると、この転記が切替後に初めて見つかります。
頻度と時刻の欄は、テストの日程を組むときに効いてきます。
週に一度しか流れないデータや、月末にだけ送る請求データは、テストの期間中に一度も流れないまま本番を迎えることがあるからです。
担当者の欄は、移行作業と日々の送受信が一人に集中していないかを見るためにも使います。
必須項目と任意項目を分ける
欄を埋めたら、次はやり取りしているデータの中身に目を移します。
新しい方式に移るとき、取引先から項目の対応表を示されることがありますが、自社がどの項目を実際に使っているかが分かっていないと、表を受け取っても判断ができません。
中小企業共通EDIの標準は、注文メッセージとして全135項目を定めたうえで、業務アプリに対応を求める最低限必要な項目を13項目(注文書番号、注文書発行日など)としています3。
すべての項目を常に使うのではなく、欠かせない項目と、取引によって使う項目を分けて扱う考え方です。
この135項目と13項目は中小企業共通EDIの注文メッセージについての数で、自社の棚卸しで何項目を書き出すべきかの基準ではありません。
この考え方は、自社のデータを点検するときにも使えます。
いまの注文データのうち、出荷や請求の処理で必ず使う項目を必須、特定の取引先や商品でだけ使う項目を任意として印を付けておくと、新しい方式の項目対応表を受け取ったときに、必須の項目に行き先があるかどうかから先に確かめられます。
必須の項目が新しい形式で受け取れないと、その項目だけを別の手段で補う作業が毎回発生するため、ここが移行の可否を分ける点になります。
取引先が消費財流通の標準である流通BMSを使っている場合は、項目の定義はその標準のメッセージに従います5。
その場合の自社側の作業は、項目を選ぶことではなく、標準の項目と社内システムの項目をつなぐ対応づけが中心になります。
| 欄 | 書き出す内容 | 移行で使う場面 |
|---|---|---|
| 取引先と窓口 | 相手側の担当者・連絡先 | 方式の確認とテストの調整 |
| データの種類と向き | 注文・出荷案内・請求など、送るか受け取るか | 移す対象の範囲を決める |
| 方式・回線・機器・ソフト | INSネットか別の回線・接続サービスか | 期限と解約対象を決める |
| 頻度と時刻 | 毎日・週次・月末など | テストと並行稼働の期間を決める |
| データの行き先・出どころ | どの業務システムか、手入力か | 移行後に残る転記を見つける |
| 社内の担当者 | 主担当と代わりの人 | 作業の集中を避け、運用台帳にする |
| 取引先の指定 | 方式・標準の名前と切替期限 | 自社で選べる範囲を分ける |
取引先の指定に従う部分と自社で選べる部分を分ける
標準が決まっている業界の場合
棚卸しの一覧には、取引先が指定している方式の欄がありました。
ここを埋めようとすると、取引先ごとに事情が大きく違うことが見えてきます。
EDIは、1社だけが導入しても効果を得られない仕組みです3。
相手が受け付けない方式を自社だけで選んでもデータは届かないので、移行の自由度は取引先の側の条件で決まる部分が大きくなります。
業界で標準が決まっている取引先がその典型です。
流通BMSは、消費財流通業界でやり取りするメッセージと、通信プロトコル・セキュリティを定めたEDIの標準仕様で、インターネットEDIの標準として使われています5。
取引先がこの標準を指定しているなら、データの形式も通信の手順も標準に沿うことになり、自社で選べるのは、その標準に対応した製品やサービスのどれを使うか、いつ切り替えるか、といった範囲に狭まります。
流通BMSは消費財流通の卸やメーカーなどの取引で使われる標準なので、部品の受発注や建設資材など、別の業種の取引先には当てはまりません。
業種ごとに別の標準があったり、取引先独自の方式を指定されたりすることもあるため、標準の名前は取引先からの通知や仕様書で確かめます。
指定がない場合に選べる範囲
取引先が方式を指定していない場合は、自社で選べる範囲が広がります。
どのサービスを使うか、自社の業務システムとどうつなぐか、どの取引先から先に移すかを、自社の事情で決められます。
それでも相手が受け取れることが前提であることは変わらないため、候補を絞った段階で、取引先に受け付けられるかを打診します。
中小企業共通EDIの導入の進め方では、説明とヒアリング、検討と取引先調整、製品・サービス選定、導入計画策定、運用開始という順序が示されています4。
取引先との調整が製品やサービスの選定より前に置かれているのは、相手の条件が決まらないと候補を比べる軸が定まらないからだと読めます。
自社の都合で先に製品を決めてしまうと、後から取引先の指定と合わずに選び直す手戻りが起こります。
取引先が方式を指定してきたとき、どこまで従うかは取引ごとの取り決めや契約で変わり、すべての取引に当てはまる線引きを示せるものではありません。
そのため、指定の有無と中身を取引先ごとに一つずつ確かめていくことが、この段階の作業になります。
取引先への確認の進め方
取引先ごとの確認では、方式の欄を「必須」「選択可」「未確認」の三つに分けて埋めていく方法を勧めます。
必須は、取引先が方式や標準を指定していて、それに合わせる取引です。
選択可は、指定がなく、自社で方式やサービスを選べる取引です。
未確認は、まだ取引先に聞けていない、または返答があいまいな取引です。
分ける意味は、未確認の取引を目に見える形で残すことにあります。
必須の取引は、指定された方式に対応できる手段を探す話になり、選択可の取引は、方式を比べる対象になります。
未確認が残ったまま進めると、その取引先が後から別の方式を指定してきたとき、すでに選んだサービスで対応できるかどうかが分からず、移行計画を引き直すことになりかねません。
確認するときは、相手の担当者に次の点をまとめて尋ねると、やり取りの往復が減ります。
- 指定する方式や標準の名前、通信の手順
- 切替の期限と、旧方式での受付をいつまで続けるか
- テスト接続の環境と日程の候補
- 項目の対応表やコード表の有無
- 移行作業の窓口と、障害時の連絡先
このうち旧方式の受付期限は、後で旧回線の解約時期を決めるときにそのまま使います。
返答をもらったら、棚卸しの一覧の同じ行に書き込み、区分も更新しておきます。
方式と回線の選択肢を負担と条件で比べる
クラウド型と標準対応アプリ
選択可に分けた取引では、どの方式で移るかを自社で比べることになります。
公的な資料で仕組みを確かめられる選択肢の一つが、中小企業共通EDIです。
中小企業共通EDIは平成28年度(2016年度)の中小企業庁の事業で策定・実証された標準で、クラウド型のプロバイダがインターネット経由で取引情報を交換する仕組みを提供し、利用する企業は自社でサーバーを持たずに使えます4。
中小企業庁の解説では、受注側は標準に対応したプロバイダと業務アプリを利用するだけで大きな費用はかからないとされています3。
この記述は中小企業共通EDIに受注側として参加する場合についてのもので、発注側の負担や、ほかの方式の費用には当てはまりません。
担当者の作業に引き寄せると、ここで効いてくるのは、いま使っている販売管理や受発注のソフトが標準に対応しているかどうかです。
対応していれば、受け取った注文がそのまま業務アプリに入り、棚卸しで書き出したデータの行き先は変わりません。
対応していなければ、プロバイダの画面で受け取った注文を業務アプリへ転記するか、変換の仕組みを別に用意することになり、サーバーが不要という利点とは別に、日々の手作業が残ります。
自社のソフトの提供元に標準への対応状況を尋ねておくと、この差を選ぶ前に把握できます。
通信手順で変わる自社側の準備
取引先が流通BMSのような標準を指定している場合、データの形式だけでなく通信の手順も標準で決まっています5。
通信の手順によっては、自社側に求められる準備が変わります。
考え方として分けると、自社から相手側へデータを取りに行く形と、相手側から送られてくるデータを自社で受け付ける形があり、後者では自社側に常に受け付けられる仕組みを用意しておく必要が出てきます。
指定された手順がどちらに当たり、どの程度の運用が要るかは、取引先が示す仕様書や、利用を検討するサービスの提供元の説明で確かめます。
自社でサーバーを置かずに済ませたいなら、指定された通信の手順をサービス側で引き受けてもらえるかが、候補を絞る条件になります。
比較の軸
取引先が用意した画面にログインして注文を受け取る形を含め、どの方式を候補にする場合も、比べる軸は次の四つにそろえると判断しやすくなります。
- 費用:初期費用、月額、通信や取引の件数で増える部分
- サーバー運用の要否:自社で機器を置いて動かし続ける必要があるか
- 取引先の対応条件:その取引先が受け付ける方式か、標準の指定に合うか
- 操作の負担:受け取ったデータを業務システムへ入れるまでに、誰が何を手で行うか
判断が分かれやすいのは、費用と操作の負担の組み合わせです。
取引先が少ないうちは、取引先ごとの画面から注文を取り出して転記する形でも回りますが、取引先が増えるほど、画面の数だけ確認と転記が増えます。
反対に、業務システムと直接つながる形は、準備に手間がかかっても、取引先が増えたときに担当者の手作業が比例して増えることは避けやすくなります。
費用を比べるときは、月額の安さだけでなく、その方式で残る転記を誰が毎日何件こなすのかを並べて見ると、実際の負担が見えてきます。
金額は取引件数や必要な機能、契約の条件で変わるため、相場ではなく、自社の取引件数を前提にした候補ごとの見積もりで比べます。
テスト・並行稼働・切り戻しを組んで移行する
取引先とのテスト
方式とサービスが決まったら、実際に切り替える段取りに移ります。
中小企業共通EDIの進め方では、導入計画を立ててから運用開始へ進む流れが示されています4。
その導入計画の中身として、ここでは取引先との取り決め、テスト接続、並行稼働、本番切替、旧経路の保持という順序を提案します。
取り決めでは、項目の対応表、商品や取引先のコード、送受信の時刻、エラーが起きたときの連絡方法を、取引先と文書で合わせておきます。
テスト接続は、まずデータが届くかどうかの疎通から始め、次に実際の注文に近い内容で、業務システムへの取込みまで通します。
届いたことだけを確かめて取込みを試さないと、項目の欠け、文字化け、コードの不一致は本番まで見つかりません。
訂正や取消のデータ、月末の締めで流れるデータなど、頻度の低いものもテストに含めます。
テストを待つ間に社内でできる作業は、取引先との調整と並べて進めます。
新しい方式での業務手順書の作成、担当者と代わりの人への操作説明、業務システム側の取込み設定などは、取引先の返事を待たなくても始められます。
取引先とのやり取りが一つ終わるたびに社内作業を始める直列の進め方にすると、取引先が多いほど、期限までの余裕が削られていきます。
並行稼働と切り戻しの考え方
並行稼働は、新しい方式で本番のデータを流しながら、旧方式もすぐ使える状態に残しておく期間です。
期間は月数で一律に決めるより、取引の周期に合わせて決めることを提案します。
週次の発注、月末の締め、請求のデータまで一通り新しい方式で流れるまでを並行稼働に含めると、頻度の低いデータを見落としたまま旧経路を止めることを避けやすくなります。
切り戻しは、新しい方式で問題が起きたときに旧方式へ戻す判断です。
戻す条件は、問題が起きてから話し合うのではなく、並行稼働に入る前に取引先と決めておきます。
たとえば、取り込めない注文が何件出たら戻すのか、受信が何時までに終わらなければ旧方式で再送してもらうのか、といった形で誰が見ても判断できる基準にしておくと、当日の判断を担当者一人の勘に頼らずに済みます。
気をつけたいのは、旧経路が補完策で動いている場合です。
補完策は伝送遅延が生じ、切替前と同一品質で使えない場合があると案内されているため1、切り戻し先としての頼りやすさは、ディジタル通信モードが動いていたころより下がっていると見ておくほうが安全です。
終了日の直前に並行稼働を置くと、切り戻した先の回線もまもなく止まるので、戻る場所がない状態で問題を抱えることになります。
並行稼働は、補完策の終了日から余裕を持たせた時期に置きます。
旧回線の解約時期と、移行後の運用を決める
解約日の逆算
旧回線の解約日は、最後の取引先の移行が終わってから決まります。
逆算の起点は補完策が終わる時点で1、そこから解約の手続き、並行稼働の終了、全取引先の切替完了、最後の取引先とのテストと、手前へ順に置いていきます。
手続きにかかる日数や違約の条件は個々の契約によるため、回線やVANの契約書面で解約の条件を見て、その日数を手続きの枠に入れます。
取引先が複数あると、旧回線を止められる日は、もっとも遅く移行する取引先で決まります。
棚卸しで未確認のまま残った取引先があると、その一社のために旧回線を残し続けることになるため、確認の遅れはそのまま解約の遅れになります。
INSネットの回線を通話にも使っている場合は、データ通信をやめることと回線そのものを解約することが別の話になるので、何をいつ止めるのかを分けて決めます。
取引先が旧方式での受付を、自社の予定より早く打ち切ることもあり得ます。
確認の段階で尋ねた旧方式の受付期限を一覧に書き込み、補完策の終了日と比べて早いほうを、その取引先との期限として扱います。
セキュリティとバックアップ
インターネットEDIへ移ると、取引先とのやり取りは電話回線での接続から、インターネットを経由する形に変わります。
そのため、運用で守るものの中心も、回線そのものから、サービスに入るための認証の情報や、やり取りしたデータの保管へ移ります。
移行後の運用として、次のことを決めておくことを提案します。
- サービスにログインするアカウントを誰が持ち、異動や退職のときに誰が止めるか
- パスワードなどの認証の情報を、紙のメモや共有の文書で回さない運用
- 送受信したデータをどこに、どの期間保存し、バックアップをどう取るか
- 取込みに使う端末やソフトの更新を誰が管理するか
これらは事故が起きないことを保証するものではありませんが、誰が何を管理しているか分からない状態をなくすことで、異常に気づいたときに確かめる先がはっきりします。
流通BMSのように、標準の中でセキュリティの取り決めまで定めているものもあります5。
取引先が標準を指定している場合は、認証や暗号化の要件も取引先の指定とあわせて確かめます。
担当者と障害時の連絡
移行を担当した人に知識が集まったままだと、その人が不在の日に送受信が止まったとき、誰も動けません。
棚卸しで作った一覧に、代わりの担当者、取引先の窓口、利用するサービスの問い合わせ先を書き加えると、そのまま移行後の運用台帳として使えます。
取引先が増えたときも、同じ一覧に行を足していけば、どの取引先がどの方式でつながっているかを一か所で追えます。
障害時の扱いも、取引先と事前に決めておきます。
新しい方式で送受信できない状態が続いたとき、取引先が注文をどの手段で、何時までに送り直すか、自社はどう受け取ったことを返すかを取り決めておけば、当日の連絡の行き違いで注文が漏れたり、二重に処理されたりする場面を減らせます。
旧回線を解約した後は切り戻す先がないので、この取り決めが代わりの手段になります。
取引先ごとの指定方式や期限がそろわないうちは、どの取引先から着手し、何を先に決めるかを社内だけで判断しにくいためです。
棚卸しした一覧をもとに、必須・選択可・未確認の区分と、補完策の終了日までに決めておく事柄の順番を整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 旧回線の期限 | 補完策の終了日(NTT東日本の案内)が上限。取引先の期限が早ければそちらを優先 |
| 棚卸しの単位 | 取引先ごと。データの行き先・出どころと頻度・時刻まで書き出す |
| 取引先の区分 | 必須・選択可・未確認に分け、未確認を残さない |
| 方式の比較 | 費用・サーバー運用の要否・取引先の対応条件・操作の負担 |
| 並行稼働 | 月末の締めや請求まで一通り流れるまで。切り戻しの基準は事前に決める |
| 解約 | 最後の取引先の切替と並行稼働の終了後。契約の解約条件を見込む |
並行稼働や解約の時期は、取引先の数と契約の条件が絡むため、一覧を作った後も判断が残りやすいためです。 手元の契約書面と取引先からの回答に照らして、取引先別の移行順と、並行稼働・解約の時期が無理なく収まるかを確かめられます。
よくある質問
ISDNの補完策を使い続けても問題ないか。
当面の送受信は続けられますが、長く頼る前提にはしにくい仕組みです。
NTT東日本の案内では、補完策は2028年12月31日に提供を終了し、それまでの間も伝送遅延で処理時間が増える可能性や、切替前と同一品質で使えない場合があるとされています1。
受信の終了時刻が遅れていないかを見ながら、終了日から逆算して移行の段取りを組みます。
取引先が方式を指定してきたら断れるか。
すべての取引に当てはまる答えはなく、取引先との取り決めや契約によって変わります。
EDIは1社だけでは成り立たない仕組みなので3、断るかどうかより、指定された方式に対応する手段と時期をどう用意するかを取引先と話し合うほうが進めやすくなります。
流通BMSのような業界標準を指定された場合は、データの形式と通信の手順が標準で決まります5。
受注側と発注側で移行の負担はどう違うか。
中小企業共通EDIに受注側として参加する場合は、標準に対応したプロバイダと業務アプリを使えば大きな費用はかからないと中小企業庁の解説にあります3。
この記述は受注側についてのもので、発注側の負担やほかの方式には当てはまりません。
どちらの立場でも相手と方式をそろえる調整が要る点は同じなので、棚卸しの一覧で取引ごとに送る側か受け取る側かを分け、負担を見積もります。
並行稼働は何か月ぐらい必要か。
月数で一律に決めるより、取引の周期で決めることを勧めます。
週次の発注、月末の締め、請求など、頻度の低いデータまで一通り新しい方式で流れ、事前に決めた切り戻しの基準に当たらなかったことを確かめられるまでを目安にします。
補完策で動いている旧経路は品質が下がる場合があるため1、並行稼働は補完策の終了日から余裕を持たせた時期に置きます。
取引先が少ない場合でも棚卸しは必要か。
必要です。
取引先が一、二社でも、データの行き先や送受信の時刻、取引先が指定する方式を書き出しておかないと、テストで何を確かめるかが決まりません。
行数が少ない分、作業は短く済み、移行後の運用台帳としてもそのまま使えます。
旧回線の解約は移行完了のどの時点で行うか。
全取引先の切替が終わり、並行稼働で切り戻しが不要と判断できた後が基本です。
上限はNTT東日本の案内にある補完策の終了日、2028年12月31日です1。
解約の手続き日数や違約の条件は契約によるため、その分を見込んで手前に置きます。
回線を通話にも使っている場合は、データ通信をやめることと回線の解約を分けて決めます。
- 1 出典:NTT東日本(フレッツ)「INSネットをご利用の事業者さまへ 固定電話のIP網移行」(2026年確認)
- 2 出典:INTERNET Watch(インプレス)「INSネットの「ディジタル通信モード」、提供終了日が明らかに」(2023年)
- 3 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2018年)
- 4 出典:つなぐITコンソーシアム「中小企業共通EDIとは」(2026年確認)
- 5 出典:GS1 Japan(流通システム開発センター)「流通BMS」(2025年)