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受発注システムの初期費用は小規模でいくら?形態別の目安と総額の見方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 受発注システムの初期費用は導入形態で桁が変わり、提供元1社の目安ではSaaS型30〜50万円、パッケージ型は数百万円以上とされるが、小規模向けの相場ではない
  • SaaS型は初期費用より月額が総額に効き、初期50万円・月20万円なら1年目は約290万円、2年間で530万円になる
  • アカウント数、オプション・カスタマイズ、連携、追加開発が見積もり額を分ける条件で、見積書では初期費用に含まれる作業を確かめる
  • 補助金の通常枠はクラウド利用料(最大2年分)や導入設定も対象経費の区分に含むが、対象者と製品の可否は公募要領と提供元で確かめる

Two professionals exchanging documents in an office setting, focusing on paperwork and data analysis.
▽ 写真の出典元

受発注システムの初期費用は「何を入れるか」で桁が変わる:形態別の目安

注文の電話やFAXをExcelへ書き写すたびに確認が増え、受発注システムを考え始めたものの、初期費用が数万円なのか数百万円なのか見当がつかず、見積もりも稟議も止まっている。
小規模な事業者がこの状態から進むには、まず「どの形で入れるか」で費用の桁が変わることを押さえるのが近道です。
提供元1社の目安では、SaaS型は初期30〜50万円・月額10〜20万円、パッケージに追加開発する形は初期数百万円以上、一から作るフルスクラッチは数千万円とされています1。
小規模向けの相場ではないため、月額や追加費用まで含めた総額で比べ、補助金の対象経費も見ながら見積もりの条件を固めていきます。

SaaS・パッケージ・フルスクラッチの目安

受発注システムと一口に言っても、入れ方は大きく三つに分かれます。
SaaS型は、提供元がインターネット上で動かしているシステムを、自社はアカウントを借りて使う形です。
パッケージ型(ハーフスクラッチとも呼ばれます)は、既製のシステムを土台にして、自社に必要な機能を追加で開発する形です。
フルスクラッチは、画面や機能を一から自社用に開発する形です。

受発注システムを提供している竹田印刷が自社調べとして公開している目安では、初期費用はSaaS型で30〜50万円、パッケージ型で数百万〜数千万円、フルスクラッチで数千万円とされています1。
導入後に毎月かかる運用費用も、SaaS型の10〜20万円に対して、パッケージ型は数十万円、フルスクラッチは数十万〜数百万円と、形態によって違います1。

「数万円か数百万円か」という迷いにこの目安を当てはめると、借りて使う形なら数十万円の単位、自社用に開発する部分が入ると数百万円以上の単位になる、という桁の違いが見えてきます。
同じ受発注システムでも、どこまでを自社のために作るかで、初期費用は一桁から二桁変わります。
見積もりを頼む前に自社がどの形を想定しているのかを決めておくと、提示された金額がどの桁の話なのかを見誤らずに済みます。

この目安をそのまま自社の予算にできない理由

ただし、この数字を自社の予算額としてそのまま稟議書に書くのは避けたほうがよいでしょう。
理由は三つあります。

一つ目は、出所が提供元1社の自社調べだという点です1。
複数の事業者の価格を集めた相場ではなく、小規模な事業者向けの価格として示されたものでもありません。

二つ目は、金額の前提となる条件が書かれていない点です。
何人で使うのか、取引先が何社あるのか、どの機能を入れるのかといった条件は示されておらず、同じSaaS型でも条件が違えば金額は変わります。
実際、同じ記事の中でも、SaaS型の費用は表では初期30〜50万円・月額10〜20万円とされ、本文では「導入までに50万円程度、毎月の運用に20万円程度かかる想定です」と書かれています1。
本文の想定は表の上限に近い値で、目安そのものに幅があると読むのが自然です。

三つ目は、ここで示されているよりも安い選択肢があるかどうかが、この資料からは分からない点です。
初期費用が数万円程度で始められるサービスがあるかどうかは、この目安の範囲の外にあります。
そうしたサービスを候補にする場合も、初期費用が低い理由が機能の範囲の狭さなのか、月額側の料金なのか、利用人数の少なさなのかを見ないと、他の選択肢と比べる材料になりません。

この目安は、自社が数十万円の話をしているのか、数百万円以上の話をしているのかを見分ける物差しとして使い、実際の金額は条件をそろえた見積もりで確かめる、という使い方が向いています。
そのうえで残る疑問は、同じ形態の中でも金額がどこで動くのかです。

初期費用の差はどこから生まれるか

自社開発の要否と機能数

形態によって桁が変わる一番の理由は、自社のために開発する作業があるかどうかです。
SaaS型は、提供元がすでに動かしているシステムを使うため、自社で開発したり、サーバーなどの機器を購入したりする必要がなく、初期費用を抑えやすいとされています1。

フルスクラッチの費用は、開発の規模や機能の数によって変わるとされています1。
注文の受け付け、確認、出荷への引き継ぎ、請求と、システムに持たせる仕事を増やせば、それだけ作るものが増えるからです。

パッケージ型はその中間にあたります。
既製のパッケージを使うぶん初期費用は抑えやすい一方で、追加で開発する機能が増えるほど高くなる可能性があるとされています1。
目安の表でも、パッケージ型の初期費用の上限は数千万円で、フルスクラッチの目安と重なっています1。
「うちの注文のやり方に合わせたい」という要望を追加開発で一つずつ叶えていくと、パッケージ型を選んだ意味が薄れるほど費用が膨らみうる、ということです。

見積もりの前に自社でできるのは、いまの受発注の仕事のうち、どこまでをシステムに任せたいのかを書き出しておくことです。
たとえば、取引先からの注文を受け付けて一覧にするところまでで足りるのか、出荷や請求まで続けて扱いたいのかで、必要な機能の数が変わり、どの形態が候補になるかも変わります。

アカウント数・オプション・カスタマイズ

SaaS型の中で金額が動くのは、主に利用者の数と、標準以外に足す機能です。
SaaS型の料金はアカウント数に応じた従量課金が一般的で、オプションの追加や独自のカスタマイズには別途費用がかかるとされています1。
同じ記事でも、料金の体系はサービス事業者によって異なると断られています1。

アカウントとは、システムにログインして使う人ごとの利用権のことです。
社内で注文を処理する人が2人なのか5人なのかで、月額が変わる仕組みのサービスがあるということになります。
受発注システムの場合、自社の担当者だけでなく、取引先にも画面から注文を入れてもらう使い方が考えられます。
そのとき取引先のログインがアカウント数に数えられるのか、取引先が増えると料金も増えるのかは、サービスごとに確かめないと分かりません。

オプションとカスタマイズの違いも押さえておきます。
オプションは提供元があらかじめ用意している追加機能で、カスタマイズは自社の業務に合わせて標準の動きを変えてもらう作業です。
どちらも別途費用とされているため1、標準機能だけで出された初期費用と、自社に必要なオプションやカスタマイズを足した金額とを、分けて見る必要があります。

導入設定・研修・連携の見積もり上の扱い

見積書に初期費用が一行だけ書かれている場合、その中にどの作業が入っているのかが比較の分かれ目になります。
手がかりになるのが、国の補助金(デジタル化・AI導入補助金、旧IT導入補助金)で補助の対象となる経費の分け方です。
通常枠では、ソフトウェア購入費・クラウド利用料のほかに、機能拡張やデータ連携ツール、セキュリティといったオプション、導入コンサルティング・導入設定・マニュアル作成・導入研修・保守サポートといった役務が対象経費の区分に挙がっています2。

これは補助制度上の経費の区分であって、各社の初期費用にこれらが含まれていることを示すものではありません。
それでも、ソフトの利用料と、導入を手伝う作業と、他のシステムとつなぐ部分とが、別々の費目として扱われうることは分かります。
たとえば2社の見積もりを並べたとき、一方の初期費用には導入設定と研修が入っていて、もう一方は利用開始の手数料だけだったとすれば、金額の差は価格の差ではなく中身の差です。

もう一つ尋ねておきたいのは、いまExcelや紙で持っている商品の一覧や取引先の情報を、新しいシステムに登録する作業の扱いです。
この作業を誰が行い、費用がかかるのかどうかは、提供元に聞かなければ分かりません。
自社で入力するなら費用は出なくても、その手間は導入の時期の担当者の仕事に重なります。

受発注システムの費用を動かす要因と、その要因が効く費用
自社開発の有無と機能数・追加開発は初期費用に、アカウント数は月額に、オプションとカスタマイズは別途費用に結びつき、導入設定・研修・連携・データ登録は初期費用に含まれるかを確認する項目であることを示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 自社開発の有無
    • 初期費用の桁(SaaS型は開発不要、フルスクラッチは開発規模で変動)
  2. 機能数・追加開発
    • 初期費用(パッケージ型は追加開発が増えるほど高くなりうる)
  3. アカウント数
    • 月額(アカウント数に応じた従量課金が一般的)
  4. オプション・カスタマイズ
    • 別途費用
  5. 導入設定・研修・連携・データ登録
    • 初期費用に含まれるかは提供元ごとに確認

出典:竹田印刷「Webの受発注システムの選び方とコストの目安」(2023年公開・2026年更新、提供元1社の説明)、デジタル化・AI導入補助金 通常枠ページ(補助対象経費の区分)

初期費用を抑えると増えやすい費用:月額と追加費用を含めた総額

形態別の比較表

ここまでの費用の目安と、費用が増える条件を、形態ごとに並べます。
いまのExcelや電話・FAXのやり方を続ける場合も、比べる相手として加えています。

表で目を向けたいのは、初期費用の列よりも、月額と追加費用の列です。
SaaS型は初期費用が最も低い一方で、月額10〜20万円が続き、利用者や機能を足すほど増える仕組みです1。
フルスクラッチは初期費用が大きいうえに、導入後も保守を自社で行うため技術者の人件費が高くなりやすく、数年に一度のセキュリティやブラウザへの対応で数十万〜数百万円のスポット費用、ドメインやSSL(通信を暗号化するための証明書)の維持費が別にかかるとされています1。

自社業務への合わせやすさの列は、費用の列の裏返しになっています。
SaaS型は標準の機能に自社のやり方を寄せることで費用を抑え、合わない部分をカスタマイズで埋めると別途費用になります。
パッケージ型とフルスクラッチは、合わせるための開発そのものが費用です。
初期費用を抑えるという選択は、自社の注文の受け方をどこまで標準に寄せられるかという選択でもあります。

Excel等の延長には費用の資料がありません。
新たなシステム費用はかからない一方で、注文を書き写す作業、取引先ごとに違う受け方への対応、転記ミスの確認は今のまま残ります。
この選択肢は金額同士では比べられず、システムに払う金額と、今の手間が続くことを天秤にかけて判断することになります。

初期50万円・月20万円の場合の1年目の総額

月額が総額にどれだけ効くのかを、竹田印刷の記事本文にあるSaaS型の想定(導入までに50万円程度、毎月20万円程度)で計算してみます1。
同記事の数値を単純に足し合わせた試算で、特定の製品の見積もりではありません。

1年目は、初期の50万円に、月20万円の12か月分である240万円を足して、約290万円になります。
2年目には初期費用がかからない一方で、月額だけで年240万円が続きます。
2年間で見ると、初期50万円に対して月額の合計は480万円で、合わせて530万円です。

表の幅で計算しても傾向は同じです。
初期30万円・月10万円の下限で計算すると1年目は150万円、初期50万円・月20万円の上限で計算すると290万円になり、どちらも月額の12か月分が初期費用を大きく上回ります。
初期費用が30万円か50万円かの差は20万円ですが、月額が10万円か20万円かの差は1年で120万円になります。

稟議で「初期費用はいくらか」と聞かれたときも、1年目と2年目の合計を並べて示せば、初期費用の安さを選んだ結果として何年かけてどれだけ払うのかが見えます。
見積書を受け取ったら、初期費用と月額を別々に眺めるのではなく、同じ期間の合計に直してから比べると、安く見える見積もりの中身が分かります。

取引先側の負担を確認する

総額を考えるときは、自社が払う費用だけでなく、注文をやり取りする取引先の側に何が起きるかも見ておく必要があります。
受発注システムは自社の中だけで完結する道具ではなく、取引先が画面から注文を入れたり、自社が送った注文を取引先が受け取ったりする仕組みだからです。

たとえば自社が注文を受ける側で、これまで電話やFAXで注文してくれていた取引先に、システムの画面から注文を入れてもらう形に切り替えるとします。
このとき、取引先にログイン用のアカウントを用意する必要があるのか、そのアカウントが自社の料金に数えられるのか、取引先に費用がかかるのかは、一般的な目安からは分かりません。
取引先が慣れたFAXを使い続けたいと言えば、自社の担当者がFAXで届いた注文をシステムに入力する作業が残り、転記を減らすという目的の一部が果たせなくなります。

自社が発注する側の場合も同じ構図です。
仕入先がシステムから届く注文をメールの通知で受け取るのか、仕入先も画面にログインする必要があるのかで、仕入先にお願いすることの量が変わります。

60代前半の日本人男性が見積書の照合をしている場面

こうした取引先側の負担には費用の資料がなく、金額として見積もることができません。
見積もりを依頼するときに、取引先の利用に費用やアカウントが要るのか、画面を使わない取引先の注文をどう受け付けられるのかを、質問として加えておくのが確実です。

形態 初期費用 月額 追加費用が出る条件 自社業務への合わせやすさ
SaaS型 30〜50万円 10〜20万円 アカウント数の増加、オプション・独自カスタマイズ 標準機能に自社のやり方を寄せる
パッケージ+追加開発 数百万〜数千万円 数十万円 追加開発する機能が増えるほど高くなりうる 追加開発で合わせる
フルスクラッチ 数千万円 数十万〜数百万円 保守の技術者人件費、数年ごとのセキュリティ・ブラウザ対応、ドメイン・SSL維持 一から自社用に作る
Excel等の延長 資料なし 資料なし 資料なし 今のやり方のまま。転記と確認の手間は残る

自社の状況別に、どの受発注システムから見積もりを取るか

取引先の数と受注側・発注側

ここからは、前の節までの費用の仕組みを自社の状況に当てはめて、どの形態から見積もりを取り始めるかを考えます。
費用の資料から導いた見立てであり、どの事業者にも当てはまる正解ではありません。

取引先の数は、SaaS型の月額に効く可能性がある条件です。
料金がアカウント数に応じて加算される仕組みなら1、自社の担当者だけが使うのか、取引先にも画面を使ってもらうのかで、数えられる人数が変わりえます。
取引先が数社で、自社の担当者が受け取った注文をまとめて入力する使い方なら、利用者は少なく済みます。
取引先が数十社あり、それぞれに画面から注文を入れてもらう使い方なら、取引先の利用がどう課金されるかが月額を左右します。

受注側か発注側かで、システムに求める仕事も変わります。
注文を受ける側なら、取引先ごとにばらばらな注文の受け方を一つの画面にまとめ、受けた注文を出荷や請求へつなぐことが中心になります。
注文を出す側なら、複数の仕入先への注文を作って送り、納期や入荷を追うことが中心になります。
どちらを中心にするかが決まると、標準機能で足りそうか、追加の機能が要りそうかの見当が付きます。

標準の機能で自社の注文の流れが回り、他のシステムとつなぐ必要もないなら、まずSaaS型の見積もりを複数取り、月額とアカウントの数え方で比べるのが、費用の仕組みから見て無理のない始め方です。
SaaS型は初期費用を抑えやすく、自社に合わない部分はカスタマイズとして別に費用が示されるため1、何に払っているのかを見積書の上で切り分けやすいからです。

基幹・会計システム連携が要る場合

基幹システムとは、販売・在庫・会計など、会社の中心となる業務を管理しているシステムのことです。
受けた注文を会計ソフトや販売管理のシステムへ手で打ち直している場合、受発注システムとそれらをつなげば、その打ち直しが減ります。
一方で、つなぐ部分は費用が増えやすい部分でもあります。

SaaS型で連携の機能が標準に含まれず、オプションや独自のカスタマイズで対応する場合は、別途費用になります1。
パッケージ型では、連携の部分を追加開発すれば、その分だけ費用が上がりえます1。
どちらの形でも、連携が必須かどうかが見積もり額を大きく分ける条件になります。

連携が欠かせない、あるいは取引先ごとの単価や締め日の違いといった自社独自の取引ルールをシステムで扱う必要があるなら、SaaS型の見積もりだけで判断せず、パッケージ型に追加開発する場合の見積もりも並べて取ると、比較の幅が広がります。
SaaS型にカスタマイズを重ねた総額と、パッケージ型に追加開発した総額を、同じ期間で並べられるからです。

フルスクラッチの目安は初期数千万円で、月額も数十万〜数百万円とされています1。
小規模な事業者が受発注の仕組みを整える段階では、SaaS型とパッケージ型のどちらでも自社の業務が回らないと分かったときに検討する、という順番が費用の面からは自然です。

連携がどうしても必要か迷う場合は、連携しないまま運用したときに、誰がどの画面からどの画面へ、月に何件ほど打ち直すことになるかを数えてみると判断しやすくなります。
打ち直す件数が少なければ連携を後回しにしてSaaS型の標準機能で始め、件数が多ければ連携の費用を見積もりに含めて比べる、という分け方ができます。

Two colleagues in discussion over data reports and laptop in modern office setting.
▽ 写真の出典元

補助金で受発注システムの初期費用を下げられるか:小規模事業者の範囲と対象経費

法令上の小規模・中小企業の範囲

「小規模」という言葉には、法律上の定義があります。
中小企業基本法では、小規模企業者を、おおむね常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業を主とする事業者は5人以下)の事業者としています4。
その外側にある中小企業者の範囲は業種ごとに決められていて、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5000万円以下または従業員50人以下、サービス業は資本金5000万円以下または従業員100人以下です4。

たとえば従業員が10人の卸売業の会社は、商業を主とする事業者の小規模企業者の基準(5人以下)には入りませんが、中小企業者の基準には入ります。
自分の会社を「小規模」と感じていても、法律上の区分では小規模企業者ではなく中小企業者にあたる、ということは珍しくない組み合わせです。

気をつけたいのは、この法律上の区分が、補助金の対象になるかどうかとそのまま同じではないことです。
中小企業基本法は国の施策の対象を定める基本の区分で、個々の補助金の対象者は、その制度の公募要領で別に定められます。
自社が法律上の小規模企業者にあたるかどうかは目安にはなりますが、補助金を使えるかどうかは制度ごとの要件で判断します。

補助金の通常枠で対象になる費用

受発注システムの導入に関係しうる国の補助制度として、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)があります。
2026年の制度には、通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠という申請枠があります3。
ここでは、ソフトウェアやクラウドの利用料を対象経費とする通常枠の記載を見ていきます。

2026年時点の通常枠のページでは、ソフトウェア購入費とクラウド利用料(最大2年分)が必須の対象経費とされ、機能拡張・データ連携ツール・セキュリティといったオプション、導入コンサルティング・導入設定・マニュアル作成・導入研修・保守サポートといった役務も対象経費に挙がっています2。
補助率は1/2以内(条件によって2/3以内)で、補助額は、ソフトが持つ業務プロセスが1つ以上なら5万円以上150万円未満、4つ以上なら150万円以上450万円以下です2。

前の節の試算と見比べると、この枠組みの意味が見えてきます。
SaaS型では月額が総額の大半を占めますが、通常枠ではクラウド利用料が最大2年分まで対象経費に含まれるため、初期費用だけでなく利用料の一部も補助の計算に入りうることになります。
初期費用に含まれるかを確かめる項目として挙げた導入設定や研修、連携も、対象経費の区分には含まれています。

一方で、申請するソフトは1種類以上の業務プロセスを持つ必要があり、汎用的なプロセスだけのソフトは対象になりません2。
また、このページには令和7年度の最低賃金に関する条件の注記があり、2026年度の公募要領で条件や金額が変わる可能性があります。
補助率や補助額は、申請する時点の公募要領で確かめてから計画に入れる必要があります。

受発注機能が対象か確かめる手順

自社が入れたい受発注システムが補助の対象になるかは、制度の一般的な説明だけでは決まりません。
確かめる順番は次のとおりです。

1. 自社が補助金の対象者にあたるかを、申請する年度の公募要領で確かめる(中小企業基本法の区分とは別に判断する)
2. 候補の製品の提供元に、その製品が補助金の申請に使えるか、どの業務プロセスを持つソフトとして扱われるかを尋ねる
3. 見積書の各行が、ソフトウェア・クラウド利用料、オプション、役務のどの区分にあたり、対象経費になりうるかを提供元と確かめる
4. 対象経費の合計に補助率を掛けた額が、補助額の下限と上限のどの帯に入るかを見る

補助額の帯はソフトが持つ業務プロセスの数で分かれているため2、候補の製品がいくつのプロセスを持つソフトとして扱われるのかで、見込める補助額の上限が変わります。
同じ受発注システムでも、提供元への確認なしには補助額の見当が付かないのはこのためです。

補助金は総額の負担を下げる手段の一つですが、補助を受けられるかどうかは申請の手続きの中で決まります。
見積もりの比較は、補助がない場合の総額でも成り立つかを先に見ておくと、稟議での説明がぶれません。

法令上の「小規模」は中小企業者の一部。補助金の対象者要件は別に確かめる
中小企業者の業種別の基準の中に小規模企業者の基準が含まれる入れ子の関係を示し、補助金の対象者は公募要領で別に定められることを添えた階層図中小企業者の業種別の基準の中に小規模企業者の基準が含まれる入れ子の関係を示し、補助金の対象者は公募要領で別に定められることを添えた階層図中小企業者(業種別に資本金または従業員数で定める)卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下サービス業:資本金5000万円以下または従業員100人以下小売業:資本金5000万円以下または従業員50人以下小規模企業者(中小企業者の一部)

▼ 図の内容を文字で読む
  • 中小企業者(業種別に資本金または従業員数で定める)
    • 卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下
    • サービス業:資本金5000万円以下または従業員100人以下
    • 小売業:資本金5000万円以下または従業員50人以下
    • 小規模企業者(中小企業者の一部)

出典:中小企業基本法第2条(法令条文の転載ページで確認)

見積もり依頼の前に整理すること、見積書で確認すること

依頼前に整理する項目

複数の提供元から見積もりを取っても、伝えた条件がばらばらだと、金額の差が条件の差なのか価格の差なのか分かりません。
依頼の前に次の項目を自社の言葉で書き出しておくと、どの提供元にも同じ条件で尋ねられます。

・取引先の数と、取引先にも画面を使ってもらうかどうか
・社内でシステムを使う人数(注文を受ける人、確認する人、出荷や請求につなぐ人)
・扱う注文の種類(定期的な注文か都度の注文か、取引先ごとの単価や締め日の違いがあるか)
・今の注文の経路(電話・FAX・メール・Excelのどれで、どれくらい届くか)
・つなぎたいシステム(会計ソフト、販売管理など)と、連携が必須か後回しでよいか
・現在の商品や取引先の一覧が、どこにどんな形で残っているか

取引先の数と利用人数は、アカウント数で料金が決まるサービスの月額に関わります。
注文の種類と取引ルールは、標準機能で足りるのか、カスタマイズや追加開発が要るのかを分けます。
連携先は、オプションや追加開発の費用が出るかどうかを分けます。
今の注文の経路は、システムに切り替えた後も電話やFAXの注文が残るかどうか、つまり担当者の入力作業がどれだけ残るかを見るために使います。

商品や取引先の一覧は、導入時の登録作業を誰がどれだけ行うかの見積もりに関わります。
Excelにまとまっているのか、担当者ごとのファイルや紙に散らばっているのかで、登録の手間は大きく変わります。

見積書の確認項目チェックリスト

見積書を受け取ったら、金額を比べる前に、次の項目が書かれているかを見ます。

・初期費用に含まれる作業:導入設定、商品や取引先のデータ登録、操作の研修、マニュアルが入っているか
・月額の単位:アカウント単位か、何人までの定額か、取引先の利用は数えられるか
・オプションとカスタマイズ:自社に必要な機能のうち標準に含まれないものと、その金額
・連携:会計や販売管理とつなぐ費用が、初期・月額・別途のどこにあるか
・契約期間:最低利用期間や、途中で解約する場合の扱い
・保守とサポート:問い合わせ対応や更新の費用が月額に含まれるか
・補助金:見積もりの各行が補助の対象経費になりうるか

書かれていない項目は、含まれているとも含まれていないとも決めつけず、提供元に尋ねて書き足してもらうのが確実です。
そのうえで、各社の見積もりを1年目と2年目の合計に直して並べると、初期費用が安い見積もりと月額が安い見積もりのどちらが、自社が使い続ける期間で負担が軽いのかが見えます。

契約期間の縛りや取引先側の費用は、一般的な費用の目安からは分からない部分です。
ここが空白のままだと、同じ期間の合計で比べたつもりでも、解約時の費用や取引先への依頼の手間が後から加わり、比較の前提が崩れます。

見積もり依頼前の整理と、見積書で確認する項目のつながり
取引先の数と利用人数は月額の単位に、注文の種類と取引ルールはオプション・カスタマイズ・追加開発の費用に、つなぎたいシステムは連携の費用に、今の注文の経路と商品・取引先の一覧は初期費用に含まれる作業に結びつくことを示した図1取引先の数・社内の利用人数2注文の種類・取引ルール3つなぎたいシステム4今の注文の経路・商品や取引先の一覧

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 取引先の数・社内の利用人数
    • 月額の単位(アカウント数の数え方、取引先の利用の扱い)
  2. 注文の種類・取引ルール
    • オプション・カスタマイズ・追加開発の費用
  3. つなぎたいシステム
    • 連携の費用(初期・月額・別途のどこにあるか)
  4. 今の注文の経路・商品や取引先の一覧
    • 初期費用に含まれる作業(導入設定・データ登録)と、導入後に残る入力作業

形態ごとの費用の桁は目安で分かっても、自社の取引先数や連携の要否がどの費用に効くのかは、条件を並べてみないと判断しにくいためです。

今の注文の経路と取引先数、つなぎたいシステムを伝えると、どの形態から見積もりを取るか、提供元に何を条件として伝えるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
形態別の初期費用 SaaS型30〜50万円、パッケージ型数百万〜数千万円、フルスクラッチ数千万円(提供元1社の自社調べで、小規模向けの相場ではない)
総額の見方 初期費用と月額を1年目・2年目の合計に直して比べる
月額を動かす条件 アカウント数と、取引先の利用の数え方
別途費用になりうるもの オプション、独自カスタマイズ、連携、追加開発
見積もりの始め方 標準機能で足り連携不要ならSaaS型から、連携や独自ルールが必須ならパッケージ型も並べる
補助金 通常枠は利用料(最大2年分)や導入設定も対象経費の区分。対象者と製品の可否は公募要領と提供元で確かめる
Businesswoman in black blazer taking notes with a pen on a notepad indoors.
▽ 写真の出典元

見積書は提供元ごとに書き方が違い、初期費用に含まれる作業や月額の単位をそろえて比べるのは、初めての導入では手間がかかるためです。 手元の見積書をもとに、別途費用になりうる行と、1年目・2年目の合計で比べたときの差を確かめられます。

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よくある質問

小規模でも初期費用が数万円で済む受発注システムはありますか?

提供元1社の目安では、最も低いSaaS型でも初期30〜50万円とされています1。
それより低い初期費用のサービスがあるかは、この目安からは分かりません。
候補にする場合は、初期費用が低い代わりに月額・アカウント数・機能の範囲がどうなっているかを、1年目と2年目の合計に直して比べると判断できます。

初期費用0円のサービスは、月額やオプションでどこが変わりますか?

特定のサービスの料金体系によるため一概には言えません。
見るべきなのは、月額がアカウント数に応じて加算されるか、必要な機能がオプションやカスタマイズとして別料金になっていないか、導入設定や研修、データ登録が別途になっていないかです。
初期費用が0円でも、同じ期間の合計で比べると他の見積もりとの差が分かります。

補助金は受発注システムの初期費用に使えますか?誰が対象ですか?

デジタル化・AI導入補助金の通常枠では、ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)に加え、導入設定や研修、データ連携ツールなども対象経費の区分に挙がっています2。
ただし対象者の要件は申請年度の公募要領で定められ、中小企業基本法の小規模企業者の区分とは別に判断します。
候補の製品が申請に使えるかも提供元への確認が必要なため、一律に「使える」とは言えません。

取引先に使ってもらう場合、取引先に費用や操作の負担は出ますか?

一般的な費用の目安からは分かりません。
取引先にアカウントが要るか、それが自社の料金に数えられるか、取引先に費用がかかるか、画面を使わない取引先の注文をどう受け付けるかを、見積もり依頼の質問に入れておくと、導入後に自社の入力作業がどれだけ残るかまで見通せます。

見積もりは何社に、どんな条件で頼めばよいですか?

決まった社数の目安はありません。
大切なのは、どの提供元にも同じ条件を伝えることです。
取引先の数、社内の利用人数、注文の種類と取引ルール、つなぎたいシステムを書き出して渡し、連携や独自のルールが必須なら、SaaS型だけでなくパッケージ型に追加開発する場合の見積もりも並べると比較の幅が広がります。

Excelや既存ツールの延長で当面しのぐのは、どんなときですか?

Excel等の延長には費用の資料がなく、金額では比べられません。
取引先や注文の件数が少なく、転記や確認の手間を今の人員で吸収できているなら、当面続ける判断もありえます。
転記ミスの確認や取引先ごとの受け方の違いが負担になっているなら、その手間とSaaS型の月額を並べて判断することになります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:竹田印刷株式会社(TS-BASE運営)「Webの受発注システムの選び方とコストの目安」(2023年公開・2026年更新)
  2. 2 出典:デジタル化・AI導入補助金事務局「通常枠」(2026年)
  3. 3 出典:デジタル化・AI導入補助金事務局「デジタル化・AI導入補助金2026」トップページ(2026年)
  4. 4 出典:中小企業基本法 第2条(法令条文の転載ページ)

画像の出典元

  1. Two professionals exchanging documents in an office setting, focusing on paperwork and data analysis./Photo by RDNE Stock project on Pexels
  2. Two colleagues in discussion over data reports and laptop in modern office setting./Photo by Kindel Media on Pexels
  3. Businesswoman in black blazer taking notes with a pen on a notepad indoors./Photo by Alena Darmel on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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