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受発注DXの費用|内訳・相場の考え方と補助金活用

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 受発注DXの費用は、初期費用・ランニング費用・社内工数の3区分で捉えます。見積書に載らない社内工数を数えるかどうかで、判断は変わります。
  • 導入方式はクラウド型・個別開発・EDI連携の3つで、費用の出る時期と積み上がり方が異なります。
  • 電子取引データの保存には真実性と可視性の2要件があり、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態が求められます。
  • 補助制度の補助額や対象経費は年度ごとに改定されるため、公募要領の原典で確かめる必要があります。

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受発注DXとは何か

受発注DXとは、電話・FAX・メール・表計算ソフトに分かれている受注から出荷指示までのやり取りを、電子データとして一つの流れにまとめ直す取り組みです。紙への転記や電話の聞き取りを減らし、受注データをそのまま在庫の引き当てや出荷指示へ渡せる状態を目指します。費用を検討する前に、どの業務までを対象にするかを決めておくと、見積りのぶれは小さくなります。対象範囲の広さが、そのまま金額の幅になるからです。

対象とする業務範囲は、受注の入口だけにとどまりません。見積りの提示、注文の受付、内容の確認、在庫の引き当て、出荷指示、納品書と請求書の発行までが候補に入ります。どこまでを電子化するかで、必要な機能の数も接続先も変わってきます。範囲を広げれば削減できる時間は増えますが、初期の作業量も同時に増えます。

範囲を決めるときは、件数の多い業務から順に並べると判断しやすくなるでしょう。月間の注文件数が多い業務ほど、電子化による削減時間が積み上がるからです。年に数回しか起きない例外処理まで初期段階で作り込むと、費用は膨らみます。定型の注文を先に対象とし、例外は手作業として残す判断も選べます。

紙・電話・FAXが中心の受発注では、同じ情報を人が何度も書き写す作業が残ります。注文書を見て基幹システムへ入力し、出荷指示書へ書き写し、請求の段階でもう一度突き合わせる流れです。転記の回数が増えるほど、桁違いや品番違いが生まれる余地も広がるでしょう。誤りの修正には、確認の連絡と再出荷という別の作業が付いてきます。

受注が集中する時間帯に電話が重なると、担当者は入力を中断して応対に回ります。中断のたびに手が止まり、締めの時刻の直前に作業が積み上がっていくのです。属人化も進み、担当者が不在の日に受注状況を誰も把握できない事態も起こります。この負荷は人数を増やしても消えず、件数の増加とともに戻ってきます。

制度の側でも、電子でのやり取りを前提とした見直しが進んでいます。2026年1月に施行された取適法(中小受託取引適正化法。委託する側と受託する側の取引を適正化する法律)では、手形による代金の支払いが禁じられました1。代金の支払期日は、給付を受領した日から60日以内に定める必要があります1。発注の内容を示す書面は、電磁的方法で提供する形も認められています*1

この法律は、1956年に制定された下請代金支払遅延等防止法を約70年ぶりに改めたもので、改正法は2025年に成立しました1。適用の判定には従来の資本金の額に加えて従業員数の基準が加わり、2026年時点では製造委託等で従業員300人、情報成果物作成委託や役務提供委託等で従業員100人が境目となります1。支払期日までに代金を支払わなかった場合の遅延利息は、2026年時点で年14.6%と定められています1。発注内容を示す書面の交付や電磁的方法での提供を怠った場合には、2026年時点で50万円以下の罰金が科される定めもあり、受注側だけでなく発注側の事務も電子でのやり取りを前提に組み直す必要があります1。

税務の面では、電子取引で授受した注文書や請求書を電子データのまま保存する扱いが定められています2。保存にあたっては、改ざん防止に関わる真実性の確保と、画面や書面で確認できる可視性の確保という2つの要件を満たさなければなりません2。検索の機能は、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で絞り込める状態が求められます2。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者には、条件を満たす場合に検索の要件を不要とする措置も用意されています2。

電子帳簿保存法が定める保存の区分は、2026年時点で電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3つに分かれます2。このうち電子取引データを電子のまま保存する扱いは、書面での保存を認めていた宥恕措置が終わった2024年から、すべての事業者に適用されています2。保存の期間は、2026年時点で帳簿書類が原則7年、欠損金の生じた事業年度については10年に延びます*2。受発注のデータをどの区分で保存するかによって、必要な機能も保管する容量の見積りも変わってきます。

見積り依頼の前に確定させる5項目(順位根拠:後の項目が前の項目の確定を前提とする実施順序)

  1. 対象業務の範囲を確定します。受注の入力までか、出荷指示や請求書の発行まで含めるかで、必要な機能の数と金額の幅が変わります。
  2. 取引先数と月間の取引件数を数えます。利用料が取引先数で決まる契約では、この数値がそのまま月額へ反映されます。
  3. 連携する既存システムを一覧にします。在庫・出荷・会計・販売管理のどれとつなぐかで、接続の本数と初期費用が変わります。
  4. 商習慣の条件を書き出します。得意先ごとの掛率、まとめ売りの単位、締日と請求のまとめ方が、設定作業の量を決めます。
  5. 法令に関わる要件を確認します。電子取引データは真実性と可視性の2要件を満たして保存し、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態が求められます*2

受発注DXにかかる費用の全体像と内訳

受発注DXの費用は、初期費用・ランニング費用・社内工数という3つの区分で捉えると全体像をつかめます。見積書に並ぶのは前の2つですが、社内で人が動く時間も実際の負担にあたります。3区分を同じ表へ並べて初めて、投資額と回収の見通しを突き合わせられるのです。区分を分けずに総額だけで議論すると、稟議の途中で見落としが表面化します。金額の大小より、どの区分に何が含まれているかを先に確かめてください。

初期費用には、初期設定・データ移行・操作教育の3つが含まれます。初期設定では、取引先マスタや商品マスタの登録、権限の設計、帳票のレイアウト調整を進めます。データ移行は、既存の表計算ソフトや基幹システムから品番・単価・取引条件を移す作業です。操作教育では、受注担当者と取引先の双方が迷わず使える状態まで準備します。

初期費用の見積りがぶれやすいのは、データ移行と帳票の調整です。既存データの表記ゆれが多いほど、事前の整備に手が掛かります。品番の全角と半角、単位の書き方、旧品番の扱いといった細部が金額に効いてくるのです。移行の対象を直近の取引に絞れば、初期の作業量は抑えられます。過去分は参照用に保管し、新しい台帳へは入れない選び方も取れるでしょう。

ランニング費用は、月額利用料・保守サポート・追加課金の3つに分かれます。月額利用料は利用者数や取引先数で単価が決まる契約が中心で、人数の増減に連動します。保守サポートには、問い合わせへの対応、法改正への追随、機能の更新が含まれます。追加課金は、データの保管容量、連携先の追加、繁忙期の一時的な利用者増で発生するのです。

見落とされやすいのが社内工数です。要件整理では、現行の受注手順を書き出し、例外処理の扱いを決める時間が要ります。取引先への案内では、切り替え時期の連絡、操作の説明、問い合わせへの対応が発生します。運用定着の段階では、稼働直後の並行運用と手順書の更新が続くでしょう。この3つは見積書ではなく、自社の予定表のほうに現れます。

社内工数は見積書に載らないため、稟議の場では抜けやすい項目です。担当者の時間単価に想定時間を掛け、金額として並べておけば比較がしやすくなります。稼働の後も、問い合わせ対応や設定変更の時間は毎月発生するのです。初期に集中する工数と、継続して掛かる工数は分けて数えてください。

3区分の合計は、初年度と次年度以降に分けて示すと判断の材料になります。初年度は初期費用と社内工数が重なるため、負担が大きく見えるでしょう。次年度以降は、ランニング費用と定着後の運用時間が中心です。保存期間が原則7年、欠損金のある事業年度で10年と定められている以上、データの保管に関わる費用は稼働の翌年以降も続くものとして数えてください(2026年時点)*2。複数年の合計で並べると、導入方式ごとの差も見えてきます。総額だけを示す資料より、区分ごとの推移を示す資料のほうが説明に耐えます。

受発注DXの費用は3つの区分で捉えます。初期費用には、取引先マスタや商品マスタの登録と権限の設計を進める初期設定、品番・単価・取引条件を移すデータ移行、受注担当者と取引先の双方が使える状態まで準備する操作教育が含まれます。ランニング費用には、利用者数や取引先数で単価が決まる月額利用料、問い合わせ対応や法改正への追随を担う保守サポート、保管容量や連携先の追加で生じる追加課金が入ります。社内工数には、現行の受注手順を書き出す要件整理、切り替え時期の連絡を行う取引先への案内、並行運用と手順書の更新が続く運用定着があります。
受発注DXの費用を構成する3つの区分と含まれる項目

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導入方式ごとの費用構造の違い

導入方式は、クラウド型・個別開発・EDI連携の3つに大別できます。クラウド型は初期の負担が軽い代わりに利用料が続き、個別開発は初期に費用が集中して月々の負担が軽くなります。EDI連携では、取引先の指定する形式へ合わせる作業が金額を左右するのです。同じ機能名でも、方式によって費用の出方と発生する時期が変わります。どれが安いかではなく、自社の取引条件でどの費用が積み上がるかで選んでください。

クラウド型は、提供済みの機能を利用者として使う形です。初期費用は初期設定とデータ移行が中心で、開発の工程が入りません。月額利用料は利用者数や取引先数に応じて増減し、機能の追加は提供元の更新に従います。自社の商習慣が標準機能の範囲に収まるほど、費用も期間も抑えられるでしょう。稼働までの日数が短くなりやすい点も、この方式の性格です。

クラウド型で費用が膨らむのは、標準機能から外れた要望を追加の開発で埋める場合です。個別の帳票や独自の掛率計算を足すたびに、初期費用と保守の対象は増えていきます。標準へ業務を寄せられるかどうかが、金額の分かれ目になるのです。運用で吸収できる差異は、システムへ持ち込まない判断も検討してください。持ち込む条件は、件数の多い取引先から順に選ぶと絞り込めます。

個別開発は、自社の受発注手順に合わせて設計から作る形です。要件定義・設計・開発・検証・移行という工程ごとに人が動き、その人月が費用になります。初期費用は大きくなる代わりに、月々の負担は保守と基盤の利用料が中心です。仕様を自社で決められますが、決めきれない要件が残ると期間も金額も伸びていきます。

個別開発では、稼働した後の改修費用も見込んでおく必要があります。取引先の追加や商習慣の変更が生じれば、そのつど改修の依頼が発生するからです。法令の改正へ追随する作業も、自社の費用として計上されます。2025年に成立し2026年に施行された取適法のように、支払期日や書面の交付に関わる定めが変われば、帳票と締め処理の両方に手を入れることになります*1。複数年の合計で比べたとき、方式ごとの差ははっきりしてくるでしょう。開発を委ねる相手が代わった場合の引き継ぎも、あらかじめ考えておきたい点です。

EDI連携(電子データ交換。企業の間で注文データを直接やり取りする仕組み)では、取引先の指定に従う部分が費用を左右します。取引先ごとに項目名やコード体系が異なれば、変換の設定を個別に用意することになるでしょう。既存の基幹システムとつなぐ場合は、接続の作り込みと稼働時間の調整も要ります。連携先の数が増えるほど、初期の作業と保守の対象は積み上がります。

方式は排他ではなく、組み合わせる選び方もあります。定型の注文はクラウド型で受け、大口の取引先だけEDI連携でつなぐ形です。対象を分ければ、初期費用を段階的に配分できます。稟議でも、第一段階と第二段階に分けた説明のほうが理解を得やすいでしょう。

導入方式 初期費用 月々の負担 費用を左右する点
クラウド型 初期設定とデータ移行が中心で開発の工程が入らない 利用者数や取引先数に応じた月額利用料 標準機能から外れた要望を追加の開発で埋めるか
個別開発 要件定義から移行までの工程ごとの人月 保守と基盤の利用料が中心 稼働した後の改修と法令の改正への追随
EDI連携 変換の設定の用意と接続の作り込み 連携先の数に応じた保守の対象 取引先ごとの項目名やコード体系の違い

費用を大きく左右する要因

見積り金額を動かす要因は、取引先数と月間の取引件数、連携する既存システムの範囲、商習慣への対応の深さの3つに集約できます。この3つが決まらないまま依頼すると、各社の前提がそろわず、金額の比較は成り立ちません。逆に3つを数値と条件で示せれば、見積りの幅は狭まります。金額の差は、機能の優劣よりも前提条件の違いから生まれるのです。要因ごとに自社の値を書き出すところから始めてください。

取引先数と月間の取引件数は、費用へ直接つながる数値です。利用料が取引先数で決まる契約なら、そのまま月額に反映されます。件数は、必要な処理性能や繁忙期の同時利用者数の想定にも影響するでしょう。年間の件数だけでなく、月別の山と谷も併せて示してください。数値がそろえば、相談先も見積りの前提を組み立てやすくなります。

取引先の性質も費用に効いてきます。自社の画面へ入力してもらえる取引先と、従来どおり紙で送ってくる取引先が混在すれば、受け口を2つ用意することになるのです。切り替えに応じない取引先が残る前提なら、紙の受注を電子へ取り込む手当ても必要です。どの程度を電子へ寄せられるかは、営業の部門と事前に確かめておきましょう。

紙で届いた注文書を読み取って保存する場合は、スキャナ保存の要件が費用に関わります。2026年時点の要件では、解像度は200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラーで読み取る必要があります2。読み取りとタイムスタンプの付与は、2026年時点でおおむね7営業日以内が原則とされ、業務処理サイクル方式を採る場合でも最長2か月とおおむね7営業日以内に収めなければなりません2。読み取りの機器と担当者の作業時間は、この期限に間に合う範囲で見積もってください。

連携する既存システムの範囲は、初期費用の大きな部分を占めます。在庫・出荷・会計・販売管理のどれとつなぐかで、接続の本数が変わるからです。既存システムの側に接続用の入口がなければ、そちらの改修費用も別に発生します。連携の方式が日次のファイル受け渡しか、都度の呼び出しかによっても作業量は変わってきます。

連携は、つなぐ本数だけでなく、止まったときの備えも費用に含まれます。受注データが流れない時間帯に、手作業で回す代替の手順を用意しておかなければなりません。連携の誤りは、欠品や誤出荷という形で取引先へ届きます。請求データの遅れは、給付を受領した日から60日以内という支払期日の定めにも関わってきます1。支払いが期日を過ぎれば、2026年時点で年14.6%の遅延利息を支払う立場にもなり得るのです1。復旧の手順と連絡の経路を決めておけば、影響の範囲は小さく抑えられるでしょう。

商習慣への対応は、費用の見えにくい部分です。得意先ごとの掛率、まとめ売りの単位、締日と請求のまとめ方、返品の扱いが該当します。標準機能で表現できない条件が増えるほど、設定の作業と確認の範囲は広がるでしょう。運用で吸収する条件と、システムへ載せる条件を分けて整理してください。

対応の順序は、法令で求められる要件から先に押さえる形が確実です。電子取引データの保存要件や、取引年月日・取引金額・取引先の3項目での検索は、業務の都合で省けません2。真実性の確保と可視性の確保という2つの要件も、導入方式を問わず満たす必要があります2。要件を満たす優良な電子帳簿として届け出た場合には、後に修正申告となったときの過少申告加算税を5%軽減する措置も設けられています(2026年時点)*2。法令に関わる部分を先に固めれば、後からの手戻りを避けられます。

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費用対効果と投資回収の見積り方

投資回収の見積りは、業務工数の棚卸し・効果指標の設定・回収期間の算定・実測値との照合という4つの段階で進めます。削減できる時間を金額へ換算し、初期費用とランニング費用の合計と突き合わせる作業です。前提を書き添えないまま金額だけを示すと、稟議の場で根拠を問われます。数値の出どころと計算式を残しておけば、稼働後の検証にも使えるでしょう。効果は前提条件の付いた見通しとして示してください。

業務工数の棚卸しでは、受注に関わる作業を工程ごとに分け、時間を記録します。注文書の受領、内容の確認、入力、確認の連絡、訂正への対応という順に並べてください。1件あたりの時間と月間の件数を掛ければ、工程ごとの月間時間が出ます。記憶に頼らず、繁忙期と閑散期の両方で実測すると、稟議の場でも議論に耐えるでしょう。

棚卸しでは、誤りの訂正に費やす時間も忘れずに数えてください。転記の誤りが出れば、確認の連絡、伝票の訂正、再出荷の手配が続きます。訂正の1件には、原因の確認と関係者への連絡という別の時間も加わるのです。件数が少なくても、担当者の負荷としては大きく残ります。訂正の記録が残っていない場合、当面の期間だけでも件数を数えておきましょう。

効果指標の設定では、削減する対象を数えられる形にします。受注1件あたりの処理時間、訂正の発生件数、締め処理の終わる時刻などが候補です。指標は稼働の前に測っておき、同じ方法で稼働の後も測ります。測り方を変えてしまうと、比較そのものが成り立ちません。指標の定義は、稟議資料へそのまま書き写せる粒度で残してください。

指標は3つ程度に絞ると、計測が続きます。数が多いと測ること自体が負担になり、途中で止まってしまうからです。金額へ換算する指標と、品質を見る指標を1つずつ入れる形は扱いやすいでしょう。誰がいつ測るのかも、指標と一緒に決めておいてください。効果は前提条件の付いた見通しとして書き、断定した言い方は避けます。

回収期間の算定は、年間の削減額で投資額を割る形が基本です。年間の削減額は、削減時間に人件費の時間単価を掛け、12か月分を積み上げて求めます。投資額には初期費用だけでなく、社内工数を金額へ換算した分も含めてください。ランニング費用は削減額から差し引き、残った額で割ると実態に近づきます。

回収の年数を置く期間は、保存や制度の区切りに合わせると説明しやすくなります。帳簿書類の保存が原則7年、欠損金の生じた事業年度で10年と定められている以上、システムを使い続ける前提の年数もその範囲で考えられるからです(2026年時点)*2。3年で回収する案と5年で回収する案を並べ、どちらの前提でも成立するかを確かめてください。

実測値との照合は、稼働から数か月後の予定として組み込んでおきましょう。想定より削減が小さい場合、原因は運用の手順か、電子へ切り替わっていない取引先のどちらかにあります。差分の理由を記録しておけば、次の投資判断の材料になるでしょう。国内企業のDXやAI活用の動向を扱う調査3や、ユーザー企業のIT予算の動向を扱う調査4は、自社の位置づけを確かめる材料として使えます。

投資回収の見積りは4つの段階で進めます。業務工数の棚卸しでは、受注に関わる作業を工程ごとに分け、繁忙期と閑散期の両方で時間を実測します。効果指標の設定では、削減する対象を数えられる形にし、指標を3つ程度に絞ります。回収期間の算定では、年間の削減額で投資額を割り、社内工数を金額へ換算した分も含めます。実測値との照合では、稼働から数か月後に差分の理由を記録し、次の投資判断の材料とします。
受発注DXの投資回収を見積もる4つの段階の進め方

費用負担を軽くする補助金と支援制度

受発注の電子化に使える補助制度は、中小企業向けに用意されています5。ソフトウェアの導入費用やクラウドの利用料が補助の対象になる枠があり、申請には事前の登録と事業計画の提出が要ります5。ただし補助額・補助率・対象経費・公募期間は年度ごとに改定されるため、公募要領の原典で最新の内容を確かめてください*5。制度の名称が変わる場合もあり、前年の資料をそのまま使うと条件が食い違います。補助を前提に予算を組まず、自己資金でも成立する計画を先に作りましょう。

補助の対象になりやすいのは、導入するソフトウェアそのものに関わる費用です。ライセンスの費用、クラウドの利用料、導入時の設定作業、操作の説明が候補に挙がります5。既存業務の人件費や汎用の事務機器は、対象経費から外れる枠もあります5。対象の範囲は枠ごとに違うため、見積書の内訳を経費の区分に合わせて作ってもらいましょう。

クラウドの利用料は、補助の対象となる期間が区切られている枠があります*5。対象の期間を過ぎた後の利用料は自社の負担へ戻るため、その時点の年間費用を先に確かめてください。初年度だけ負担が軽く見え、次年度に予算が足りなくなる展開は避けたいところです。申請の前に、補助対象分と自己負担分を分けた資金の計画を作っておきましょう。

申請では、事業者としての登録や、情報セキュリティの取り組みの宣言が求められる場合があります5。登録には日数が掛かるので、公募の締切から逆算して着手しなければなりません。導入するツールが、あらかじめ登録された対象製品であることを条件とする枠もあります5。相談先の候補が対象製品を扱っているかは、早い段階で確かめておきたい点です。

交付が決まる前に契約や発注をすると、補助の対象から外れる場合があります*5。稼働時期を優先して先に発注し、後から補助を受けられないと分かる展開は避けたいところでしょう。希望する稼働日と公募の日程が合わないなら、補助を使わない判断も選択肢に入ります。時期の制約は、見積りを依頼する段階で相談先へ伝えておいてください。

補助金は費用の一部を軽くする仕組みであって、投資の判断そのものを代えるものではありません。採択されない前提でも回収が成り立つかを、先に確かめておきましょう。採択の後にも、実績の報告と証拠書類の提出という社内工数が発生します5。証拠書類の保存は税務上の保存期間とも重なり、帳簿書類は原則7年、欠損金の生じた事業年度は10年の保存が必要です(2026年時点)2。この工数も初年度の負担として見積りへ入れておけば、計画は崩れにくくなります。

補助を受ける場合でも、軽くなるのは初期費用の側が中心です。ランニング費用と社内工数は、補助の有無にかかわらず毎年発生します。3区分のうちどこが軽くなるのかを、稟議の資料へ明記してください。総額ではなく区分ごとの負担で説明すると、経営層の理解も得やすいでしょう。

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見積り取得から社内稟議までの進め方

見積りの取得は、前提条件の整理・見積り依頼・複数見積りの比較・稟議資料の作成という順で進めます。各社へ同じ前提を渡さなければ、金額の差が条件の差なのか提案の差なのか判別できません。比較の軸は、初期費用とランニング費用と社内工数の3区分でそろえてください。稟議では、金額そのものより前提と回収の見通しが問われます。進め方を固定しておけば、担当者が代わっても同じ判断ができるでしょう。

前提条件の整理では、取引先数、月間の取引件数、対象業務の範囲、連携する既存システム、商習慣の条件という5項目を書き出します。数値で示せる項目は数値で、判断が分かれる項目は現状の運用を添えて記述してください。稼働を希望する時期と、予算の上限も同じ資料へ入れます。前提が1枚にまとまっていれば、相談先の理解も速く進むでしょう。

見積り依頼では、同じ文面を各社へ渡す形を守ってください。口頭で条件を足していくと、社ごとに前提がずれて比較ができなくなります。見積書の内訳は、こちらから区分を指定して依頼すると並べやすくなるでしょう。初期費用の内訳、月額の算定根拠、追加課金が発生する条件は明記してもらいます。回答の期限も、あらかじめ伝えておきましょう。

複数見積りの比較では、総額を並べる前に前提の差を確かめます。含まれる作業範囲、対応する取引先数、保守の対応時間帯が違えば、総額の比較は成り立ちません。同じ表へ並べ、含まれていない項目には印を付けてください。空欄のまま比較を進めると、稼働の後に追加費用として現れます。金額の低い見積りほど、含まれない範囲を丁寧に確かめる必要があるでしょう。

比較には、複数年の合計で見る視点も加えましょう。初期費用が低くても、月額と追加課金が積み上がれば合計は逆転します。契約期間の縛りと、途中で解約する場合の条件も確認しておきたい点です。データの持ち出し方法を確かめておけば、将来の乗り換えでも困りません。比較の結果は、選ばなかった理由も含めて残しておくと稟議で役立ちます。

稟議資料の作成で問われるのは、投資額・回収の見通し・実行体制の3点です。内製だけで進める場合、担う作業は広い範囲に及びます。業務要件の整理、データの名寄せ、接続の設計、取引先への案内、稼働後の運用手順の作成が自社の担当となります。受発注の実務とシステムの接続の双方を分かる担当者を確保できるかが、進め方の分かれ目です。

実行体制の説明では、担当者の兼務の状況も添えてください。通常業務を抱えたまま導入の作業を進めると、稼働の時期は後ろへずれます。外部へ委ねる範囲と自社で持つ範囲を先に線引きしておけば、見積りの前提も明確になるのです。前提が明確なら、金額のぶれも小さく収まります。2026年時点で50万円以下の罰金や年14.6%の遅延利息といった定めが置かれている以上、誤りによる損失を避ける備えとして、体制の記述は具体的に残しておきましょう*1

見積りの取得は4つの段階で進めます。前提条件の整理では、取引先数や対象業務の範囲など5項目を1枚に書き出します。見積り依頼では、同じ文面を各社へ渡します。複数見積りの比較では、総額を並べる前に前提の差を確かめます。稟議資料の作成では、投資額・回収の見通し・実行体制の3点を示します。
見積り取得から社内稟議までの4段階の順序

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よくある質問

見積りを依頼する前に、社内で決めておくことは何ですか。

取引先数、月間の取引件数、対象業務の範囲、連携する既存システム、商習慣の条件という5項目を先に確定してください。この5項目がそろわないと各社の前提が異なり、金額の差が条件の差なのか提案の差なのか判別できません。稼働を希望する時期と予算の上限も同じ資料へ入れておくと、提案の幅が絞り込まれます。

取引先が電子化に応じてくれない場合、費用はどう変わりますか。

紙や電話の受注を残す前提になるため、受け口を2つ運用する費用が加わります。従来の手順を残しながら電子の仕組みも動かすことになり、削減できる時間は想定より小さくなるでしょう。切り替えに応じる取引先の割合を事前に見込み、その割合で効果を計算し直してください。段階的に対象を広げる計画にすれば、初期の負担を抑えられます。

補助金の交付が決まる前に発注してもよいのですか。

交付が決まる前の契約や発注は、補助の対象から外れる場合があります*5。稼働時期を優先して先に発注し、後から補助を受けられないと分かる展開は避けたいところです。補助額・補助率・対象経費・公募期間は年度ごとに改定されるため、公募要領の原典で最新の内容を確かめてください*5。日程が合わない場合は、補助を使わない判断も選べます。

電子で受け取った注文書は、紙に印刷して保管してもよいのですか。

電子取引で授受した取引情報は、電子データのまま保存する扱いが定められています*2。保存では、改ざん防止に関わる真実性の確保と、確認できる状態を保つ可視性の確保という2つの要件を満たす必要があります*2。検索は取引年月日・取引金額・取引先の3項目で絞り込める状態が求められ、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者には要件を不要とする措置もあります*2

稼働した後に追加費用が出やすいのは、どの部分ですか。

連携先の追加、データの保管容量、繁忙期の一時的な利用者増、帳票の変更が挙げられます。いずれも契約時に想定していなかった変化が引き金になるため、見積りの段階で追加課金の条件を明記してもらってください。取引先の追加が見込まれるなら、1社増えるごとの費用も確認しておくと、次年度の予算を立てやすくなります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:中小企業庁「【2026年1月1日施行】受注者を守る法!手形払い禁止など「取適法」がもたらす変化(ミラサポplus)」(2025) 経路
  2. *2 出典:国税庁「電子帳簿保存制度特設サイト」(2026) 経路
  3. *3 出典:独立行政法人情報処理推進機構「「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか」(2026) 経路
  4. *4 出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「『企業IT動向調査2026』プレスリリース第1弾」(2026) 経路
  5. *5 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠(中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金)」(2026) 経路

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  1. Hand holding three colorful paper shopping bags on a white b/Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels
  2. Close-up of a hand using a pencil with a red calculator, sur/Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels
  3. Minimalist image of a white shopping bag and mini cart on a soft pastel background./Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
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