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受発注システムの費用|初期費用の内訳と方式別の相場

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 費用は初期費用・月額費用・従量課金の3区分で、判断に使うのは比較年数分の総額です。5年なら月額に60を掛けます。
  • 初期費用は初期設定費・マスタ移行費・連携開発費・導入支援費の4項目に分かれ、幅が出るのは連携開発費とマスタ移行費です。
  • クラウド型・パッケージ型・自社開発の3方式で費用の重心が移りますが、総額の計算式は同じです。
  • 電子取引データの保存期間は原則7年で、選定の段階で保存要件を確かめます。
  • 補助制度の補助率と対象経費は公募年度ごとに定まり、2026年度は公募要領で確認します。

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受発注システムの費用とは何を指すのか

受発注システムの費用とは、導入時に一度だけ発生する初期費用と、利用期間中に続く月額費用・従量課金を合わせた総額です。見積書の金額は初期費用と月額費用の2区分で示されますが、稟議で要る数字は比較する年数分の総額に社内工数を足した金額になります。同じ機能でも、取引先数と商品数、基幹システムとの連携範囲という3つの条件で水準が動きます。費用を3区分に分けて押さえることが、見積を比べる出発点です。

費用は初期費用・月額費用・従量課金の3つに分かれます。初期費用は環境の開設、マスタの移行、連携開発、導入支援といった一度きりの作業に対する対価です。月額費用は利用料と保守サポートを含み、契約が続く間ずっと発生します。従量課金は受注件数や決済金額、データ通信量に応じて増える部分で、事業が伸びるほど金額も上がります。

見積書に現れない費用として、社内工数があります。商品マスタ(商品情報の台帳)の棚卸し、取引先ごとの掛率の確認、取引先への案内と操作説明は、発注側の担当者が手を動かす作業です。これらは見積書の金額に入らないため、稟議の段階で見落とされやすい部分でしょう。担当者が本来の業務と兼務すれば、その分だけ通常業務が滞ります。工数を人日で見積もり、社内の人件費単価を掛けて金額に直しておくと、総額の見え方が変わります。

費用が取引先数と商品数で動くのは、料金区分と作業量の両方に効くためです。登録できる取引先数や商品数の上限でプランが分かれる料金体系では、上限を1件超えるだけで上位プランの月額が適用されます。株式会社Daiの「Bカート」の料金プランでは、初期費用と月額費用が区分ごとに示されています8。株式会社アイルの「アラジンEC」の料金ページも、同じく2つの区分で金額を掲げています9。いずれも2026年時点で参照した内容で、掲載は改訂されるため検討時点の公式ページで確かめてください。商品数が増えれば移行するデータ件数も増え、初期費用のマスタ移行費が膨らみます。

総額は1本の式で出せます。初期費用に、月額費用を比較する月数分だけ足すという形です。5年で比べるなら月額費用に60を掛け、初期費用と社内工数の金額を加えます。従量課金がある場合は、現在の受注件数を前提にした年額を別に足します。この式に自社の数字を入れれば、方式の違う見積を同じ土俵に載せられます。以降の節では、この式を前提にしながら各費用の中身を見ていきます。

受発注のデジタル化は、費用だけの話にとどまりません。経済産業省は『令和6年度 電子商取引に関する市場調査』を2025年に公表しています1。この調査では、企業間取引の市場規模とEC化率という2つの指標が年度ごとに更新されています1。企業間の取引がデータでやり取りされる場面は、着実に広がっています。電子取引のデータは電子帳簿保存法(帳簿や取引データの電子保存の要件を定めた法律)の保存対象です。2022年1月の改正で電子データのまま保存する扱いが定められ、2023年12月末に宥恕措置が終わりました5。そのため2024年1月以後は、紙に出力して保存するだけの扱いが認められません5。保存期間は原則7年で、選定の段階で保存要件を満たせるかを確かめる必要があります5

本節では費用の3区分を示しました。次節では初期費用の内訳を4項目に分け、それぞれ何の作業に対する対価かを見ます。内訳の項目名が見積書と対応していれば、追加費用が出た理由もあとから追えます。逆に「導入一式」とだけ書かれた見積書では、削れる項目も判断できません。

見積書を比べる前に確認する6点(順位根拠:確認の実施順序)

  1. 前提条件を1枚にまとめ、取引先数・商品点数・月間受注件数・連携する基幹システム・必要な帳票の5項目を各社へ同じ文面で渡します。
  2. 初期費用の内訳を、初期設定費・マスタ移行費・連携開発費・導入支援費の4項目に分けて提示してもらいます。
  3. マスタ移行の対象データの種類と件数の上限、突き合わせの責任がどちら側かを書面に残します。
  4. 追加開発の積算方法と単価、変更の手続きを契約前に確かめます。単価が示されないまま進むと、稼働後の変更ごとに交渉が発生します。
  5. 契約期間と解約条件、解約時に自社データを受け取れる形式を確認します。電子取引データの保存期間は原則7年に及びます。
  6. 初期費用、月額費用の比較月数分、従量課金の年額、社内工数の金額という4つを同じ列に並べ、総額で比較します。

初期費用に含まれる項目とその中身

初期費用は、初期設定費・マスタ移行費・連携開発費・導入支援費の4項目に分けて読むと中身が見えます。金額が動きやすいのは連携開発費とマスタ移行費で、この2項目は自社側の準備で幅が出ます。初期設定費は標準作業に近く、方式が同じなら差が小さくなります。見積書が「導入費一式」の1行で示されている場合は、この4項目に分けた内訳を出してもらうところから始めます。4項目の中身は、次のとおりです。

<ul><li>初期設定費は、利用環境の開設とアカウント発行に対する費用です</li><li>マスタ移行費は、商品と取引先の情報を移し替える作業の費用です</li><li>連携開発費は、基幹システムとデータをつなぐ開発の費用です</li><li>導入支援費は、運用手順の整備と操作研修に対する費用です</li></ul>

項目ごとに作業範囲を確かめれば、金額の妥当性を自社の条件と突き合わせられます。逆に4項目に分かれていない見積書では、どこを削れるのかも判断できません。

初期設定費は、利用環境の開設と初期のアカウント発行に対する費用です。クラウド型では契約の開始にあわせて環境が用意され、管理者アカウントと権限の設定、画面表示や数量単位の初期値の登録が含まれます。作業の中身が標準化されているため、方式が同じなら見積の差は小さくなります。ここで確かめるのは、含まれるアカウント数と、追加発行の単価が別立てかどうかの2点です。

マスタ移行費は、商品と取引先の情報を新しい仕組みへ移し替える作業の費用です。金額は移行する件数と、元データの整い方で動きます。取引先ごとの掛率や個別単価、出荷単位や入荷リードタイムが表計算ソフトと基幹システムに分かれて持たれている場合、突き合わせの作業が先に要ります。廃番商品や取引の止まった取引先を先に落としておけば、移行件数そのものが減ります。データの整備を自社で引き受けるか委託するかで、この項目の金額は変わってきます。

連携開発費は、基幹システムと受発注システムの間でデータをつなぐ開発の費用です。受注データを基幹へ渡し、在庫数と出荷実績を戻す往復の経路を作ります。連携の向きが増えるほど、また即時に反映する要件になるほど、開発と試験の工数が積み上がります。ファイル受け渡しで日次に同期する形と、API(システム間でデータを受け渡す接続の仕組み)で即時に同期する形では、作業量が別物になります。連携方式の選び方は、<a href="[要追加:基幹システム連携の解説記事のURL]">基幹システム連携の進め方を解説した記事</a>で詳しく扱っています。

導入支援費は、運用手順の整備と操作研修に対する費用です。取引先へ配る案内と操作手引き、社内の受注担当者向けの研修、切り替え期間の並行運用の支援が含まれます。この項目を削ると、稼働直後の問い合わせが自社の担当者に集まります。仕様の確認が抜けたまま稼働させると、稼働後にマスタの再移行や連携の作り直しが必要になり、初期費用の項目が1つ増えることになります。

4項目のうち、どこまでが見積の範囲かを明文化してもらうと後の争点が減ります。とくにマスタ移行費では、移行するデータの提出形式と件数の上限、突き合わせの責任がどちら側かを書き入れてもらいます。連携開発費では、対象となる基幹システムの名称と版、連携する項目の一覧を添付にします。範囲が文章で残っていれば、追加開発が発生したときにも単価の根拠を確かめられます。

初期費用は4項目に分けて読みます。初期設定費は、利用環境の開設とアカウント発行に対する費用です。マスタ移行費は、商品と取引先の情報を移し替える作業の費用です。連携開発費は、基幹システムとデータをつなぐ開発の費用です。導入支援費は、運用手順の整備と操作研修に対する費用です。このうち金額が動きやすいのは連携開発費とマスタ移行費で、初期設定費は標準作業に近く方式が同じなら差が小さくなります。
見積書の初期費用を読み分ける4項目とその作業範囲

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導入方式による初期費用の違い

初期費用の水準は、クラウド型・パッケージ型・自社開発のどれを選ぶかで変わります。クラウド型は標準機能のまま使う前提なら初期費用が初期設定費とマスタ移行費に収まり、月額費用が総額の中心になります。パッケージ型はカスタマイズの範囲が金額を決め、自社開発は要件定義から試験までの工数がそのまま初期費用になります。3方式は優劣ではなく、業務手順をどこまで変えられるかという条件で選び分ける対象です。

クラウド型を標準機能のまま使う場合、初期費用は初期設定費とマスタ移行費が中心になります。株式会社Daiの「Bカート」では、初期費用と月額費用がプランごとに区分されています8。この内容は2026年時点で参照したものです。掲載内容は改訂されるため、検討時点の公式ページで初期費用と月額の2つを確認してください。標準機能に業務を合わせられるかどうかが、この方式の適否を分けます。

標準機能に寄せる判断は、受注の受け方を見直す作業とセットです。取引先ごとの発注書式や締め時間、単価の出し方に例外が積み上がっている場合、その例外を残すほど設定作業と個別対応が増えます。例外を業務側で整理できれば初期費用は抑えられますが、整理そのものに社内の工数が要ります。どちらを選ぶかで、見積書の金額と社内工数の配分が入れ替わります。

パッケージ型をカスタマイズする場合、初期費用の中心は導入一時費用に移ります。株式会社アイルの「アラジンEC」でも、初期費用と月額費用が区分して示されています9。こちらも2026年時点で参照した内容です。カスタマイズは画面の追加、帳票の様式変更、承認経路の作り込みといった単位で積算されるため、要望の件数が金額に直結します。業務手順を変えずに使いたい場合に向く方式ですが、改修のたびに検証の工数が付いてくる点も見ておきます。

自社開発を選ぶと、初期費用は要件定義・設計・開発・試験の工数の合計になります。取引先とのEDI(電子データ交換。企業間で伝票データを直接やり取りする仕組み)連携を前提にする場合、通信手順とデータ項目の取り決めが要件に加わります。EDIの仕組みと導入の手順は、<a href="[要追加:EDI解説記事のURL]">EDIの基礎を解説した記事</a>で整理しています。業界の標準仕様である流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)は、流通システム標準普及推進協議会が公開しています4。この標準では、業務ごとのメッセージとデータ項目が定められています4。標準に合わせれば取引先ごとの変換処理を作らずに済み、その分だけ開発の対象が狭まります。

方式の選択は、取引条件が他社と大きく異なるかどうかで判断できます。取引条件が標準に近いほどクラウド型の標準機能で足り、例外が積み上がるほどカスタマイズか自社開発の側へ寄ります。3方式のいずれでも、初期費用と月額費用の重心が違うだけで総額の考え方は同じです。比較する年数を決めたうえで、第1節で示した式に各方式の数字を入れてください。初期費用の重い方式と月額の重い方式が、同じ列で並びます。

導入方式は3つです。クラウド型では、初期設定費として利用環境の開設とアカウント発行が中心になり、マスタ移行費として商品と取引先の情報を移し替えます。パッケージ型では、導入一時費用に初期費用の中心が移り、カスタマイズは画面の追加や帳票の様式変更の単位で積算されます。自社開発では、要件定義に通信手順とデータ項目の取り決めが加わり、開発は標準仕様に合わせると対象が狭まり、試験までの工数の合計がそのまま初期費用になります。
導入方式ごとに初期費用の重心が置かれる項目

月額費用と運用にかかる継続コスト

月額費用は利用料・保守サポート・オプションの3要素からなり、契約が続く間ずっと発生します。総額に効くのは初期費用よりも月額費用のほうで、契約が長引くほど合計が積み上がります。月額費用に含まれる範囲は提供元ごとに違い、問い合わせ窓口の応対、障害時の復旧、版の更新のどこまでが料金内かで実質が変わります。契約前に含まれる範囲と含まれない範囲を一覧にしておくと、後から足される費用を防げます。

月額費用に含まれる範囲は、利用料と最低限の保守が中心です。利用できる機能、登録できる取引先数と商品数の上限、管理者と担当者のアカウント数がここで決まります。上限を超えると上位区分の月額が適用されるため、取引先を増やす計画がある場合は次の区分の金額も見ておきます。含まれない範囲としてよく出るのは、次の3種です。

<ul><li>契約した容量を超える追加のデータ保管には、別の費用がかかります</li><li>個別の帳票作成は、都度の見積で対応する提供元が多くあります</li><li>取引先ごとの接続設定の代行には、件数に応じた費用が付きます</li></ul>

この3種は月額の欄に現れないため、契約前に一つずつ確かめておきます。

従量課金は、事業の伸びに合わせて増える部分です。受注件数、送受信するデータ件数、保管するデータ量、決済金額のいずれかが単位になります。オンライン決済を組み込む場合は、決済代行の手数料が決済金額に対する割合で別に発生します。売上が伸びれば手数料も伸びますから、月額の固定分とは別に、割合で効く費用として試算に入れます。

保守サポートの費用は、月額に含める形と別建てにする形の2通りがあります。含める形では応対時間帯と一次回答までの目安が契約に書かれ、別建ての形では初期費用に対する割合で年額が決まることがあります。パッケージ型と自社開発では、版の更新に伴う検証の費用が別に立つ場合も見ておきます。応対時間帯が自社の受注業務の時間と合っているかは、金額と同じ重さで確かめる点です。

クラウド型では提供元が版の更新を進めるため、更新そのものの費用は月額に含まれるのが通例です。ただし更新で画面や項目が変わると、社内の手順書と研修資料の手直しが要ります。自社開発では、基幹システムや連携先の更新に合わせた改修を自社の負担で計画します。この改修は毎年は起きませんが、起きたときの費用の出どころを先に決めておくほうが安全でしょう。

継続コストには、法令対応の維持も入ります。電子取引のデータは電子帳簿保存法の保存対象で、保存期間は原則7年です5。訂正や削除の履歴を残す扱いと、日付・金額・取引先で探せる状態の維持が求められます5。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者には、探す機能の確保を不要とする扱いも設けられています5。ただしこの扱いは、税務職員のダウンロードの求めに応じられる場合に限って適用されます5。要件の詳しい中身は、国税庁の電子取引データ保存制度サイトで確かめられます5。保存要件への対応手順は、<a href="[要追加:電子帳簿保存法の解説記事のURL]">電子帳簿保存法の要件をまとめた記事</a>で解説しています。保存の要件を仕組み側で満たせるか、運用側の手作業で埋めるかで、月々の作業時間が変わってきます。

月額費用の比較は、金額の大小より含まれる範囲の違いを見る作業です。同じ月額でも、保守と接続設定の代行が入っているかで実質の負担は違います。含まれない範囲を洗い出し、自社で引き受ける分を工数に置き直せば、方式をまたいだ総額が並びます。ここまでの数字を自社の条件で確かめるには、要件を整理したうえで概算見積を取る手順を踏みます。FSOLは、受発注システムの要件整理と見積レビューを担い、費用の内訳と作業範囲の突き合わせを支援します。提供内容は、<a href="[要追加:FSOLの受発注システム導入支援サービスページのURL]">FSOLの受発注システム導入支援サービス</a>のページに掲載しています。

Profile view of a sleek modern laptop in a minimalist style,
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初期費用を抑えるための考え方

初期費用を抑える道は、補助制度の確認・標準仕様の活用・段階的な導入の3つです。補助制度はソフトウェアの費用やクラウドの利用料が対象経費に含まれる区分があり、補助率と上限は公募年度ごとに定められます。標準仕様や共通EDIを使えば、取引先ごとに作る変換処理を減らせます。対象取引先と対象業務を絞って始めれば、初回の初期費用は小さくなり、効果を見てから広げられます。値引きを求めるより、作業の量そのものを減らす発想が効きます。

補助制度の確認は、対象経費の確認から始めます。独立行政法人中小企業基盤整備機構は、中小企業デジタル化・AI導入支援事業の公募要領を公開しています6。この要領では、ソフトウェアの導入費用のほか、クラウドの利用料や導入に伴う関連費が経費の区分として整理されています6。補助率・補助上限・クラウド利用料の対象期間は年度ごとに見直されるため、公募年度の確認が要ります。2026年度の申請を考えるなら、その年度の公募要領で区分と上限を読み合わせてください6

補助を前提に計画を立てる場合、採択の可否と交付のタイミングを見ておきます。申請には事業計画の作成と実績の報告が伴い、社内の担当者の工数が発生します。対象になるのは補助対象として認められた経費だけで、社内工数や対象外のカスタマイズは自社負担のままです。補助を当て込んで要件を膨らませると、対象外の部分が増えて総額が上がる場合もあります。補助が下りなかった場合の判断も、申請の前に決めておくほうが動きやすいでしょう。

標準仕様の採用は、連携開発費を直接減らします。業界標準の流通BMSでは、業務ごとのメッセージとデータ項目が公開されています4。これに合わせれば、取引先ごとの個別変換を作らずに済みます。中小企業向けには、中小企業庁が中小企業共通EDIの取り組みを整理しています3。実証の結果を含む資料も、あわせて公開されています3。共通EDIの利用は、取引先ごとに接続を作り込む作業を減らす方向に働きます。

段階的な導入では、対象取引先の絞り込みと対象業務の絞り込みを組み合わせます。取引件数の多い取引先から先に切り替えれば、同じ工数でも消える作業時間が大きくなります。業務側は受注の受け付けから出荷指示までを先に載せ、請求や返品の処理は次の段に回す組み立てが取れます。1段目で運用が回ることを確かめてから広げれば、作り直しの費用を避けられます。

抑える工夫にも限度があります。マスタの整備と導入支援を削ると、稼働後の問い合わせと手戻りが増え、削った金額以上の工数が社内に戻ってきます。連携開発を後回しにすれば、受注データを人手で基幹へ入れ直す期間が続きます。削る対象は作業の量であって、確認の手数ではありません。何を削り、何を残したかを記録に残せば、次の段の判断も速くなります。

初期費用を抑える道は3つです。補助制度の確認では、対象経費の区分と補助率を公募年度ごとに確かめます。標準仕様の活用では、取引先ごとに作る変換処理を減らせます。段階的な導入では、対象取引先と対象業務を絞って始め、運用が回ることを確かめてから広げます。削る対象は作業の量であって、確認の手数ではありません。
値引きではなく作業量を減らす初期費用の抑え方

見積書を比較するときの確認点

見積書を比べる作業は、金額の大小を見る前に作業範囲を揃えるところから始めます。同じ「初期費用」の欄でも、マスタ移行が含まれる見積と別建ての見積では比較になりません。確認するのは、含まれる作業範囲の明文化、追加開発の単価と変更手続き、契約期間と解約条件とデータの持ち出しという3点です。この3点を各社に同じ問いで投げれば、返ってきた回答の差がそのまま条件の差になります。様式を揃えてから金額を並べる順序が、比較の精度を決めます。

作業範囲は、成果物の単位で書き出してもらいます。初期設定費なら設定する項目の一覧、マスタ移行費なら移行するデータの種類と件数の上限、連携開発費なら連携する項目とその向きです。「一式」「標準対応」といった語で括られた欄は、後から解釈が分かれる箇所になります。どちらの担当かが曖昧な作業は、責任の所在を1行ずつ決めておきます。

追加開発の単価と変更手続きは、契約前に確かめる点です。人日単価か機能単位かという積算の方法、見積の提示から着手までの手順、稼働後の改修の受け付け方を書面にします。単価が示されないまま進むと、稼働後の小さな変更ごとに交渉が発生します。変更手続きが決まっていれば、社内の予算申請の段取りも組み立てられます。

契約期間・解約条件・データの移管は、続けられなくなった場合に効いてきます。最低利用期間の有無、期間内解約の扱い、解約時に自社のデータをどの形式で受け取れるかを確かめます。データを持ち出せない条件では、次の仕組みへ移るときにマスタの再作成が要ります。電子取引のデータは保存期間が原則7年に及ぶため、解約後の保存の受け皿も先に決めておきます5

各社に渡す前提条件は同じ文面にします。1枚にまとめて渡す項目は、次の5つです。

<ul><li>現在の取引先数と、1年後に見込む社数を書きます</li><li>登録する商品点数を書きます</li><li>想定する月間受注件数を書きます</li><li>連携する基幹システムの名称と版を書きます</li><li>必要な帳票の一覧を添えます</li></ul>

前提が揃っていない見積を並べると、安い見積が安い理由を取り違えます。同じ前提で返ってきた3社の見積であれば、差額の理由まで追えます。

見積を読み解く作業を自社だけで進めるには、4領域の知識が要ります。必要になるのは、次の4つの理解です。

<ul><li>受発注業務の実務を理解している必要があります</li><li>基幹システムのデータ設計を読み解く力が要ります</li><li>EDIの通信手順についての知識が要ります</li><li>電子取引データの保存要件を押さえる必要があります</li></ul>

この4領域を1人で持つ担当者は社内に置きづらく、部門をまたいだ確認が必要になります。FSOLは要件整理と見積レビューを担い、作業範囲の抜けと連携要件の漏れを稼働前に洗い出します。仕様の抜けを稼働前に見つければ、稼働後の作り直しという後戻りの費用を避けられます。

比較の最後は、方式をまたいだ総額の一覧に落とします。初期費用、月額費用の比較月数分、従量課金の年額、社内工数の金額という4つを列に並べます。同じ列で並べば、初期費用が高い見積が総額では安くなる場合も見えてきます。数字が並んだ時点で、判断の材料はそろいます。

費用対効果の試算と社内での合意形成

費用対効果の試算は、削減時間の把握・金額への換算・総額との比較・前提条件の明記という4つの手順で組み立てます。電話とFAXの受注対応にかかる時間を実測し、人件費の単価を掛けて金額に直せば、投資額と同じ単位で並べられます。数字で示しにくい効果は、受注ミスと再作業の減少として別に書き分けます。稟議書では前提条件を明記し、条件が変われば結論も変わることを示しておくほうが通りやすくなるでしょう。

削減時間の把握は、実測から始めます。受注の1件あたりの処理時間を、電話・FAX・メールの3経路に分けて計り、1か月の件数を掛けます。FAXの受注では、1件に次の5工程が含まれます。

<ul><li>送られてきたFAXを受信します</li><li>注文の内容を読み取ります</li><li>基幹システムへ入力します</li><li>疑問点を電話で確認します</li><li>控えを保管します</li></ul>

この工程のうち、システム化で消える部分と残る部分を分けて数えれば、削減時間が過大になりません。

金額への換算では、時間に社内の人件費単価を掛けます。単価は自社の給与と法定福利費から出せる数字で、外部の相場を持ち込む必要はありません。繁忙期の残業時間が減る場合は、残業単価で別に数えます。ここで出た年額が、投資判断の一方の材料になります。

総額との比較は、同じ年数で切って並べます。投資額には、第1節で示した式で出した5年分の総額をそのまま使います。削減額の年額に5を掛けた金額と突き合わせれば、差額がそのまま判断の材料になります。投資額を削減額の年額で割れば、回収に要る年数が出ます。投資額が上回る場合でも、削減以外の効果を数えれば結論が変わることがあります。

受注ミスと再作業の削減は、金額に直しにくい効果です。誤った数量で出荷すれば、再出荷の運賃、回収の手間、取引先への謝罪が同時に発生します。データで受け取る仕組みでは、口頭とFAXの読み取りで起きる転記の誤りがそのまま消えます。件数で数えられるなら、月あたりの誤出荷件数と再作業の時間を並べて示すと、金額に直さなくても効果が伝わります。

稟議書には、試算の前提条件を必ず書き添えます。書いておく項目は、次の5つです。

<ul><li>比較の前提とした取引先数を書きます</li><li>登録する商品点数を書きます</li><li>月間受注件数の想定を書きます</li><li>対象とする業務の範囲を書きます</li><li>比較した年数を書きます</li></ul>

前提を書いておけば、条件が変わったときに再計算の範囲だけを直せます。導入の推進側には、受発注業務の実務、基幹システムのデータ設計、EDIの通信手順、電子取引データの保存要件という4領域の理解が要ります。独立行政法人情報処理推進機構の『DX白書2023』でも、デジタル化を進める人材の確保が課題として扱われています7。中小企業庁が公開する中小企業の受発注デジタル化の情報も、社内の説明資料の裏づけに使えます2

本記事で参照した資料は、次のとおりです。いずれも2026年時点で参照しています。

<ul><li>1 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課『令和6年度 電子商取引に関する市場調査』(2025年公表、https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html)を参照しています。</li><li>2 中小企業庁『中小企業の受発注デジタル化』(2024年、https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/gijut/digitalization/index.html)を参照しています。</li><li>3 中小企業庁『中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業の実証結果を含む)』(2024年、https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/gijut/edi.html)を参照しています。</li><li>4 流通システム標準普及推進協議会『流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)の概要』(2026年、https://www.gs1jp.org/ryutsu-bms/)を参照しています。</li><li>5 国税庁『電子取引データ保存制度サイト(電子帳簿保存法)』(2026年、https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm)を参照しています。</li><li>6 独立行政法人中小企業基盤整備機構『中小企業デジタル化・AI導入支援事業(デジタル化・AI導入補助金2026)通常枠』(2026年、https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/)を参照しています。</li><li>7 独立行政法人情報処理推進機構『DX白書2023』(2023年、https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/index.html)を参照しています。</li><li>8 株式会社Dai『Bカート 料金プラン』(2026年、https://bcart.jp/plan/)を参照しています。</li><li>9 株式会社アイル『アラジンEC 料金』(2026年、https://aladdin-ec.jp/price/)を参照しています。</li></ul>

費用対効果の試算は4つの手順で組み立てます。削減時間の把握では、経路別に処理時間を実測します。金額への換算では、社内の人件費単価を掛けます。総額との比較では、同じ年数で切って並べます。前提条件の明記では、稟議書に前提を書き添えます。
費用対効果の試算を稟議へつなぐ4つの手順

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よくある質問

初期費用は分割して支払えますか

提供元によって扱いが分かれます。初期費用を一括で請求する形と、初期費用を抑えて月額に上乗せする形があり、見積書の支払条件の欄で確認します。分割にすると総額が増える場合があるため、比較する年数分の総額に直して並べたうえで判断してください。

補助金は初期費用のどこまで対象になりますか

対象は公募年度ごとに定められた経費区分に限られます。ソフトウェアの費用やクラウドの利用料、導入に伴う関連費が区分として整理されており、補助率と上限も年度ごとに設定されます6。社内工数や対象外のカスタマイズは自社負担のままです。2026年度の申請では、その年度の公募要領で区分を確かめてください。

他社より初期費用が安い見積は何を疑えばよいですか

含まれる作業範囲を先に揃えてください。マスタ移行や基幹システムとの連携開発が範囲外になっていると、初期費用の欄は小さく見えます。移行するデータの件数の上限、連携する項目と向き、導入支援の有無という3点を1行ずつ突き合わせると、差の理由が出てきます。

取引先が増えると費用はどう変わりますか

登録できる取引先数の上限でプランが分かれる料金体系では、上限を1件超えるだけで上位区分の月額が適用されます。接続の設定や案内の作業も、取引先の件数に比例して増えます。増やす計画がある場合は、次の区分の月額と追加設定の単価を契約前に確認してください。

電子帳簿保存法への対応は費用に影響しますか

影響します。電子取引のデータは電子データのまま保存する対象で、保存期間は原則7年です5。訂正・削除の履歴の扱いと、日付・金額・取引先で探せる状態の維持が求められ、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者には探す機能の確保を不要とする扱いも設けられています5。仕組み側で満たせない要件は運用の手作業として残ります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. 1 出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和6年度 電子商取引に関する市場調査(報道発表)」(2025) 経路
  2. 2 出典:中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化」(2024) 経路
  3. 3 出典:中小企業庁「中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業の実証結果を含む)」(2024) 経路
  4. 4 出典:流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会/一般財団法人流通システム開発センター)「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)の概要」(2026) 経路
  5. 5 出典:国税庁「電子取引データ保存制度サイト(電子帳簿保存法)」(2026) 経路
  6. 6 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業デジタル化・AI導入支援事業(デジタル化・AI導入補助金2026)通常枠」(2026) 経路
  7. 7 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」(2023) 経路
  8. 8 出典:株式会社Dai「Bカート 料金プラン(公式)」(2026) 経路
  9. 9 出典:株式会社アイル「アラジンEC 料金(公式)」(2026) 経路

画像の出典元

  1. Overhead view of an office desk with laptop, payment termina/Photo by Mikhail Nilov on Pexels
  2. Profile view of a sleek modern laptop in a minimalist style,/Photo by 500photos.com on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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