◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 掛け仕入れは支払いを減らす仕組みではなく支払う日を動かす仕組みで、楽になるのは切り替えた月だけ。売上の入金日と支払日の前後関係が判断の中心になる
- 導入方法は取引先との直接交渉と掛け払い代行サービスの2つ。代行サービスを契約して費用を負担するのは請求する側で、仕入れ側は与信審査を受ける立場になる
- 公開料金はNP掛け払い・Paidとも初期費用0円だが、月額や保証料・事務手数料は取引条件に応じた個別提案が基本で、見積もりを取るまで総額は確定しない
- 記帳は仕入時と支払時の2回に分かれ、締め日ごとの残高照合が加わる。差額は金額の大小で決めつけず、納品書と請求明細を突き合わせて原因を特定する
- 適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れは控除割合が80%から段階的に下がり令和13年10月以降は控除できなくなるため、継続取引を始める相手は登録の有無を先に確認する
目次

現金払いを続けるか、掛け仕入れに切り替えるか―最初に整理すること
仕入れのたびに振込や現金の支払いが発生し、取引件数が増えるほど入出金の対応に時間を取られる。
買掛(掛け仕入れ)を考え始めるのは、たいていこうした場面です。
掛けにすれば、商品を受け取る日と代金を払う日を切り離せます。
ただし始め方は、取引先と直接条件を決める方法と、掛け払い代行サービスを間に入れる方法とで、審査を受ける相手も費用の出どころも変わります。
導入後は記帳も仕入時と支払時の二回に分かれ、仕入税額控除の扱いは取引先が適格請求書発行事業者かどうかで変わります。
判断の中心は、支払いを後ろへずらして得られる余裕が、新しく引き受ける審査と期日管理に見合うかどうかです。
仕入れのたびに支払い手続きが発生する状態では、取引の件数がそのまま事務の件数になります。
月に数件なら気になりませんが、週に何度も発注するようになると、振込のたびに残高を確認し、支払い漏れがないかを追う時間が積み上がっていきます。
この負担が無視できなくなったときに、掛けへの切り替えが選択肢に入ってきます。
切り替えで変わるのは、大きく二つです。
ひとつは代金を払うタイミングで、納品を受けた日と支払う日が別になります。
もうひとつは帳簿への記録の仕方で、仕入れの時点で「まだ払っていない金額」を帳簿に載せることになります。
この二点が同時に動くので、資金繰りの話と経理の話を別々に検討していると、片方だけ決まって進まなくなります。
見落とされやすいのは、掛けにできるかどうかを自社だけでは決められないという点です。
支払いを待ってもらうということは、相手が代金を回収できないリスクを一定期間引き受けるということです。
そのため、取引先と直接交渉するなら取引先自身が、掛け払い代行サービスを介するなら代行会社が、自社の信用を判断します。
現金払いには存在しなかった「審査を受ける立場」が、どちらの道を選んでも必ず発生します。
そのうえで最初に確かめたいのは、支払いを後ろ倒しにする必要が本当にあるのかということです。
売上の入金より仕入れの支払いが先に来る状態が続いているなら、掛けにする意味は大きくなります。
逆に、すでに入金が先で支払いが後という順番になっているなら、掛けにしても資金の流れはあまり変わらず、増えるのは管理の手間だけということもあり得ます。
自社の入金日と支払日を並べて、どちらが先に来ているかを見るところから始めるのが現実的です。
もうひとつ、立場の違いで準備が変わります。
取引先から掛け取引を打診された場合は、条件が相手から提示されるので、自社はその日程と金額で確実に支払えるかを見る側になります。
自社から申し出る場合は、取引実績や支払い能力を相手に示す側になります。
どちらの入り方かによって、先に固めておくべき材料が違ってきます。
買掛(掛け仕入れ)とは何か 現金仕入れとの会計上の違い
買掛金の仕訳の流れ(仕入時・支払時)
買掛金は、仕入などの継続的な営業取引から生じた、まだ支払っていない代金を表す科目です4。
掛けで仕入れたとき、代金の支払いは後日でも、商品はすでに手元にあります。
この「受け取ったが払っていない」状態を帳簿に残すために使うのが買掛金です。
記帳は二段階になります。
商品が納品された時点で、借方に仕入高10,000円、貸方に買掛金10,000円というように計上します4。
この時点ではまだ現金は動いていませんが、仕入れは発生しているので費用として立て、同時に支払う義務を負債として残します。
そして支払期日が来て代金を払ったときに、借方の買掛金と貸方の現金預金で相殺し、残していた負債を消します4。
ここで初めて現金が動きます。
現金仕入れであれば、この二段階が同じ日に一度で済むため、帳簿に買掛金が現れることはありません。
つまり掛け仕入れに切り替えて新しく生まれるのは、支払期日までのあいだ帳簿に残り続ける残高です。
この残高は取引先ごとに積み上がっていくので、どの相手にいくら払う義務が残っているかを常に把握できる状態にしておく必要があります。
逆にいえば、残高を見れば近い将来に出ていく現金の量が分かるので、資金繰りの見通しを立てる材料にもなります。
| 比べる点 | 現金・都度払い | 掛け仕入れ(買掛) |
|---|---|---|
| 代金を支払う時点 | 仕入れのつど | 取り決めた支払期日 |
| 仕訳のタイミング | 支払い時の1回 | 仕入時と支払時の2回 |
| 帳簿に残るもの | 残らない | 支払期日までの買掛金残高 |
| 必要になる管理 | 都度の支払い手続き | 期日と取引先別残高の管理 |
買掛金と未払金の違い
同じ「まだ払っていないお金」でも、すべてが買掛金になるわけではありません。
買掛金は仕入などの継続的な営業取引から生じる債務で、固定資産の購入代金や広告宣伝費、消耗品費のように単発の取引から生じるものは未払金として区別されます4。
商品を仕入れて掛けにしたなら買掛金、事務所で使う複合機を購入して代金が翌月払いなら未払金、という分かれ方です。
どちらも支払う義務という点では同じですが、本業の仕入れから生じたものかどうかで置き場所を変えます。
この区別が実務で効いてくるのは、残高を見て判断するときです。
買掛金の残高だけを抜き出せば、本業の仕入れに対して今どれだけの支払いが控えているかが分かります。
ここに単発の支払いが混ざっていると、仕入量の増減と支払い残高の動きが対応しなくなり、来月いくら必要かという見込みが立てにくくなります。
掛け取引を始めるタイミングは、この科目の使い分けを決めておく機会でもあります。
掛け仕入れを導入する2つの方法―取引先との直接交渉と代行サービスの審査・手数料
取引先との直接交渉で決める場合
直接交渉は、間に誰も入れずに自社と取引先の二者で条件を決める方法です。
サービス利用料のような費用は発生しませんが、代金を回収できないリスクは取引先がすべて引き受けます。
だからこそ、掛けにしてもらえるかどうかは、相手が自社の取引実績や支払いの確実さをどう見ているかで決まります。
交渉で決めるのは支払いを待ってもらう期間だけではありません。
締め日と支払日をいつにするか、支払いは振込か別の方法か、一度に掛けられる上限をいくらにするか、返品や値引きが出たときにどの請求で調整するか、支払いが遅れた場合にどう扱うか。
このあたりを取り決めて、取引基本契約書や注文書の条件欄に文字で残します。
口頭の了解だけで始めると、締め日をまたいだ納品の扱いや返品の相殺方法で、最初の月から食い違いが出ます。
たとえば「月末締め・翌月末払い」のように、締め日と支払日をセットで決める形は分かりやすい例です。
ただし、どの条件が標準ということはなく、業界や相手の資金繰りによって提示される内容は変わります。
他社の例をそのまま自社に当てはめるより、提示された日程で自社が確実に支払えるかを確かめてから返答するほうが安全です。
取引を始めて日が浅い段階では、いきなり全量を掛けにしてもらうのが難しいこともあります。
一部の品目だけ、あるいは一定金額までを掛けにして、支払い実績を積んでから枠を広げていく進め方であれば、相手も判断しやすくなります。
枠を広げる交渉のときに、遅延なく支払ってきた履歴がそのまま材料になります。
掛け払い代行サービスを利用する場合の与信審査
掛け払い代行サービスは、売り手と買い手の間に代行会社が入る仕組みです。
代行会社が買い手の与信審査を行い、請求書の発行と代金の回収を引き受けます。
ここで押さえておきたいのは、サービスを契約して費用を負担するのは請求する側、つまり売り手(加盟店)だという点です23。
そのため、仕入れ側である自社は、このサービスを自分で導入するというより、取引先が使っているサービスの審査を受ける側になります。
取引先がすでに代行サービスを利用しているなら、直接交渉で実績を積まなくても、初回の取引から掛けで購入できる可能性があります。
反対に、自社が商品を掛けで売る側に回るときは、自社が加盟店として契約し、料金を負担する立場になります。
同じサービスでも、買う側として関わるのか売る側として関わるのかで、見るべき情報がまったく違います。
審査で何を見られるのかは気になるところです。
Paidでは、取引先企業の信用度を、財務データだけでなく将来性や事業計画も含めて調査・分析するとされています3。
決算の数字だけで機械的に線を引くわけではない、という説明です。
ただし、どの程度の割合が通るのか、どんな内容だと通らないのかは各社とも公開していません。
審査に通る前提で仕入れの予定を組むのではなく、通らなかったときに現金払いで対応できる範囲を残しておくほうが現実的です。
初期費用・月額費用の比較(NP掛け払い・Paid)
費用の構造を、両社が自社サイトで公開している情報で見ていきます。
NP掛け払いは初期導入費用が0円で2、月額利用料は手数料と固定費の組み合わせで構成され、取り扱う商材や販売方法に応じて個別に提案される形です2。
一律の料率は公開されていません。
Paidも初期費用は0円、月額利用料は0円からとされています3。
入り口の費用という意味では、どちらも負担なく始められる建て付けになっています。
| 料金項目 | NP掛け払い | Paid |
|---|---|---|
| 初期費用 | 0円 | 0円 |
| 月額利用料 | 手数料と固定費の組み合わせ(個別提案) | 0円〜 |
| 保証料 | 公開の一律料率なし(個別提案) | 請求金額の0.5〜3.5% |
| 事務手数料 | 公開の一律料率なし(個別提案) | 125円/件 |
並べて分かるのは、差が出るのは入り口ではなく継続的にかかる部分だということです。
そしてその部分は、どちらも取引の中身に応じた個別提案が基本で、見積もりを取るまで総額が確定しません23。
比較するときは、月間の請求件数、1件あたりの平均金額、希望する支払い条件といった前提を同じにして両社に伝えないと、出てきた金額を並べても意味のある比較になりません。
なお、ここで挙げた数字は各社が自社サイトで公開しているもので、掛け払い代行サービス全般の相場を示すものではありません。
保証料・事務手数料の考え方
Paidの場合、保証料は請求金額の0.5〜3.5%、事務手数料は125円/件と公開されています3。
ただし具体的な料率は取引金額や支払い条件などをもとに個別に提案されるため3、下限の0.5%で計算して予算を組むと、実際の提示額との差に驚くことになります。
幅がある数字は、上限側でも成り立つかを確認しておくほうが安全です。
この二つは性質が違う費用です。
保証料は請求金額に対する割合なので、1件あたりの単価が大きい取引ほど金額が膨らみます。
事務手数料は件数あたりの固定額なので、小口の取引が数多くあるほど積み上がります。
公開されている125円/件3を当てはめれば、月3件なら375円ですが、月300件なら37,500円です。
請求の総額が同じでも、それが何件に分かれているかで負担の出方が変わるということです。
そして繰り返しになりますが、これらを支払うのは請求する側です3。
仕入れ側が代行会社に手数料を払うわけではありません。
それでも知っておく意味はあります。
取引先が代行サービスを入れて掛けに対応する場合、そこには相手のコストが発生しています。
そのコストをどこで吸収するかは相手の判断で、単価や最低発注金額といった形で条件に現れることもあります。
掛けにしてほしいと交渉するときは、相手に負担が生じる前提で話を進めるほうが、落としどころを見つけやすくなります。
導入後に変わる会計処理―買掛金の記帳・仕訳のタイミング
会計処理の変化は、仕訳の数が増えるという一点に集約されます。
現金仕入れなら支払った時点の一回で完結していたものが、掛けでは仕入時と支払時の二回に分かれます4。
手間としては単純に二倍ですが、それ以上に影響が大きいのは、二回の記帳のあいだに「照合」という作業が挟まることです。
まず仕入時の計上です。
商品が納品された時点で仕入高と買掛金を立てます4。
ここで起きやすいのが、請求書が届いてから記帳する運用にしてしまうことです。
月末に納品されて請求書が翌月に届く取引だと、仕入れた月と記帳した月がずれ、月ごとの仕入額が実態と合わなくなります。
納品書を受け取った時点で記帳する流れにしておくと、このずれは起きません。
次に支払時の消し込みです。
買掛金を減らす仕訳を入れるとき、どの仕入れに対する支払いなのかを特定できる状態にしておく必要があります4。
一か月分の複数の納品をまとめて一回で振り込む形が一般的ですから、金額だけを見ても内訳が追えません。
取引先ごとに残高を追える形にしておかないと、支払ったはずの分が残高に残り続け、翌月の請求と突き合わせたときに原因が分からなくなります。
照合でつまずく典型は、帳簿の買掛金残高と取引先の請求額が一致しないケースです。
原因として考えられるのは、返品や値引きが請求に反映されるタイミングのずれ、締め日をまたいだ納品の計上月の違い、振込手数料をどちらが負担するかの認識の差などです。
ここで注意したいのは、差額の大小から原因を決めつけないことです。
数百円だから手数料だろう、と当たりをつけて処理すると、実際には値引きの反映漏れだった場合に翌月以降も同じ差額が残り続けます。
納品書と請求明細を並べ、締め日の条件と照らして一件ずつ突き合わせるほうが、結局は早く片づきます。
記帳の負担そのものは、取引先の数と月間の取引件数でほぼ決まります。
数社との取引なら手作業でも回りますが、仕入先が増えるほど、締め日ごとの照合作業が月末に集中します。
掛けに切り替える前に、誰がいつこの照合をやるのかを決めておくと、導入後に経理が回らなくなる事態を避けられます。
インボイス制度は買掛の仕入税額控除にどう影響するか
経過措置による控除割合の推移
掛けにするかどうかは支払いのタイミングの話であり、消費税の計算そのものを変えるものではありません。
ただし、掛け取引は同じ相手と継続して仕入れる形になりやすいので、相手が適格請求書発行事業者かどうかの影響が、毎月積み重なる形で効いてきます。
ここを確認せずに条件を固めると、後から税負担の見込みが変わって交渉をやり直すことになります。
適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについては、仕入税額控除に経過措置が設けられています。
控除できる割合は、令和5年10月から令和8年9月までが80%、令和8年10月から令和10年9月までが70%、令和10年10月から令和12年9月までが50%、令和12年10月から令和13年9月までが30%と段階的に下がり、令和13年10月以降は控除できなくなります1。
この適用期間は、令和8年度税制改正により2年間延長されたものです1。
実務への影響は、同じ金額で仕入れても相手によって最終的な税負担が変わる、という形で現れます。
割合は時期が進むほど下がっていくので、いま問題なく回っている取引でも、数年単位で見れば負担の大きさは変わります1。
新しく継続的な掛け取引を始める相手であれば、登録の有無を最初に確認し、そのうえで価格や支払い条件を決めておくほうが、後の調整が少なくて済みます。
確認の目的は相手を選別することではなく、税負担の見込みを織り込んだ条件にしておくことです。
1億円基準に関する注意
経過措置には適用の範囲に関する定めもあります。
一のインボイス発行事業者以外からの課税仕入れの合計額が1億円を超える場合、その超えた部分については仕入税額控除の対象となりません1。
仕入規模が大きい事業者ほど関係してくる条件です。
掛け取引で毎月まとまった額を同じ相手から仕入れていると、年間の合計額は思ったより早く積み上がります。
登録のない相手との取引が仕入れの中心を占めている場合は、課税期間ごとの累計を把握しておく必要があります。
なお、経過措置の適用にあたっては帳簿や請求書の記載など個別の要件も関わります。
自社の取引がどこまで該当するかは、仕入れの内容と相手の状況によって変わるため、金額が大きくなりそうな場合は国税庁の資料で条件を確認するか、顧問税理士に相談して判断するのが確実です。
資金繰り・取引先との関係にどう影響するか―導入前に確認したいこと
掛けにすると、仕入れた月に出ていくはずだった現金が、翌月なり翌々月なりに移ります。
切り替えた最初の月は、支払いがほとんど発生しないので手元資金が厚くなったように見えます。
ただし二か月目からは、前の月の仕入れ分の支払いが毎月やってきます。
楽になるのは切り替えた一度きりで、その後は支払いが一か月ずれた状態が続くだけです。
この性質を取り違えて最初の月の余裕を使ってしまうと、二か月目の支払いで詰まります。
効果の出方を左右するのは、売上の入金がいつあるかとの関係です。
仕入れの支払いが売上の入金より先に来ている状態なら、支払いを後ろへずらすことで手元の資金が回りやすくなります。
逆に、すでに入金が先で支払いが後という順番であれば、掛けにしても資金繰りの形は大きく変わりません。
入金日と支払日を同じカレンダーに並べ、どちらが先に来ているかを確かめるのが、導入の可否を判断する一番の材料になります。
一方で、掛けにすると管理の仕事が増えます。
期日までに残高を用意する、締め日ごとに請求内容と帳簿を照合する、遅延が出ないよう資金を確保しておく。
いずれも現金払いでは発生しなかった作業です。
そして支払いが一度でも遅れると、相手は与信の枠を絞るか、現金払いに戻すかを判断します。
いったん狭まった条件を元に戻すのは、最初に掛けにしてもらうより難しくなります。
代行サービスを介する場合は、別の制約が加わります。
審査に通らなければ掛けでは買えませんし、通っても利用できる金額には上限が設けられます。
どのサービスを使うかを決めるのは売り手側なので、仕入れ側が選べる余地は限られます23。
複数の仕入先があるなら、掛けで買える相手と現金払いの相手が混在する前提で、支払いの管理を組み立てておく必要があります。
どれくらい資金繰りが楽になるかは、支払サイトの長さ、月々の仕入額、売上の入金時期の組み合わせで決まります。
一般的な目安があるわけではなく、自社の数字を並べて計算するしかありません。
掛け仕入れは支払いを減らす仕組みではなく、支払う日を動かす仕組みです。
動かした結果として毎月の現金の出入りがどう変わるのかを一度書き出してみると、導入すべきかどうか、どの条件なら意味があるのかが見えてきます。
掛けに切り替えると、注文から納品、請求の受け取り、支払い、消し込みまでの流れのどこかで手作業が増えます。どこがどれだけ増えるかは取引先の数と請求の受け取り方で変わるため、一般論だけでは自社の負担量が読めません。
いまの受発注と請求の流れを一緒に洗い出せば、掛けにしたときに新しく発生する確認作業と、仕組みで減らせる転記がどこにあるのかを具体的に確かめられます。無料相談で要件を整理する
掛け仕入れ導入前に確認する3つの視点(仕組み・審査条件・会計処理)
導入前に判断が分かれる領域を、取引の仕組み・与信の受け方・記帳と管理という観点で分けています。
- 仕組み:仕入れた日と支払う日を切り離す取り決めで、期日までのあいだ帳簿に買掛金という残高が残る
- 審査条件:直接交渉なら取引先が、代行サービスなら代行会社が自社を見る。どちらの道を選んでも与信を受ける側になる
- 会計処理:仕入時と支払時の2回に分けて記帳し、締め日ごとに取引先別の残高照合が加わる
取引先がすでに掛け払い代行サービスを使っているかどうかで、先に確かめるべき項目が変わります。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 導入方法の選択 | 取引先が掛け払い代行サービスを使っているか、直接交渉できる関係かで入り口が決まる |
| 費用の見方 | 初期費用は2社とも0円。月額や料率は取引条件に応じた個別提案で、負担するのは請求する側 |
| 審査を受ける立場 | 直接交渉なら取引先が、代行サービスなら代行会社が自社を見る。通る前提で仕入れ計画を組まない |
| 会計処理の変更点 | 仕入時と支払時の2回の仕訳、締め日ごとの取引先別残高照合 |
| 税務の確認 | 相手が適格請求書発行事業者か。経過措置の控除割合は段階的に縮小し、令和13年10月以降は控除不可 |
| 資金繰りの判断 | 売上の入金日と支払日の前後関係。楽になるのは切り替えた月だけ |
支払サイトをどう置くかの答えは、売上の入金時期と受注の波によって変わります。数字を並べないまま条件を決めると、二か月目以降の支払いで無理が出ます。 入金と支払いの時期、月間の取引件数と仕入先の数を持ち寄って相談すれば、どの条件なら資金が回るのか、照合作業のどこから手をつければ管理が軽くなるのかを整理できます。
よくある質問
掛け仕入れの支払いサイト(締め日・支払い日)はどう決まりますか
直接交渉の場合は、締め日・支払日・支払方法・上限額をまとめて当事者間で取り決めます。
決まった標準形があるわけではなく、業界や取引先の資金繰りによって提示される条件は変わるため、他社の例をそのまま自社に当てはめないほうが安全です。
代行サービスを介する場合は、そのサービスの提供条件に沿った日程になります。
どちらの場合も、提示された日程で自社が確実に支払えるかを、売上の入金時期と並べて確認してから合意してください。
掛け払い代行サービスの与信審査に通らなかった場合はどうすればよいですか
通過の基準や割合は各社とも公開していないため、落ちた理由が明示されるとは限りません。
現実的な進め方としては、全量を掛けにするのをやめて一部を現金払いにする、申し込む金額を下げる、取引先との直接交渉に切り替えて少額から実績を積む、といった選択肢があります。
Paidは財務データだけでなく将来性や事業計画も含めて調査・分析するとしているので3、事業計画の資料を整えたうえで相談する余地もあります。
いずれにせよ、審査結果に関わらず仕入れを止めずに済むよう、現金払いの手段は残しておくことです。
買掛金と未払金で、消費税の扱いは変わりますか
買掛金と未払金の違いは、継続的な営業取引から生じた債務か、単発の取引から生じた債務かという会計上の区分です4。
仕入税額控除に影響するものとして確認できるのは、相手が適格請求書発行事業者かどうかという点で、そうでない相手からの課税仕入れは経過措置により控除できる割合が段階的に下がります1。
科目の付け方そのものが控除の可否を決めると考えるより、請求書の記載要件と相手の登録状況を確認するほうが実務に沿います。
個別の取引で判断に迷う場合は、顧問税理士や所轄の税務署に確認してください。
取引先が適格請求書発行事業者かどうかは、掛け取引を始める前に確認すべきですか
継続して仕入れる相手であれば、条件を固める前に確認しておくほうが手戻りが少なくて済みます。
適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れは、令和8年9月までは80%、令和8年10月からは70%と控除できる割合が下がっていき、令和13年10月以降は控除できなくなります1。
掛けの条件を決めた後に税負担の見込みが変わると、価格や支払い条件を交渉し直すことになります。
確認の目的は相手を選ぶことではなく、負担の見込みを織り込んだ条件にしておくことです。
掛け仕入れを導入した後、資金繰りが悪化した場合はどこを見直せばよいですか
最初に見るのは、支払日が特定の日に集中していないかです。
複数の取引先の支払期日が同じ日に重なっていると、その日だけ資金が足りなくなるので、一部の相手と支払日をずらせないか相談する余地があります。
次に、買掛金の残高が毎月増え続けていないかを確認します。
売上の入金より仕入れの増加が速いと、枠を使い切った時点で仕入れが止まります。
それでも回らない場合は、支払い条件の調整より、仕入量そのものと売上の入金サイトを見直す話になります。
- 1 出典:国税庁「インボイス制度の仕入税額控除に係る経過措置(令和8年度税制改正特集)」(2026年)
- 2 出典:株式会社ネットプロテクションズ「NP掛け払い サービス価格ページ」(2026年)
- 3 出典:株式会社ラクーンフィナンシャル「Paid(BtoB後払い決済サービス)公式サイト 料金・与信審査ページ」(2026年)
- 4 出典:弥生株式会社「買掛金とは?仕訳方法、売掛金や未払金との違いを解説」(2026年)
画像の出典元
- Business professionals reviewing analytics on a tablet during a meeting./Photo by Yan Krukau on Pexels