◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 品目ごとの基準価格と、得意先の区分ごとの掛け率を分けて持てば、改定は基準価格の更新だけで全先へ届きます
- 5階層までの組織階層で卸価格を切り替えられるため、代理店と直販、本社と支店を別の掛け率で扱えます3
- 10,000件の取引先と30,000SKUの商品を一つの仕組みへ載せられるので、得意先が増えても価格表を分けずに済みます2
- 55.0%と50.0%という原材料費と労務費の転嫁率の差を踏まえ、改定の根拠は費目別に分けて示します1
- 月額88,000円(税抜)のクイックビジネスプランのような費用と、手作業に費やす時間を金額へ直して並べます2
目次

卸価格改定でコストを転嫁できる割合
卸価格改定でコストを転嫁できる割合とは、原価が上がった分のうち、取引価格へ反映できた比率のことです。卸価格の改定は、品目ごとの基準価格と、得意先の区分ごとの掛け率を分けて持つ形にすると軽くなります。5階層までの組織階層で価格を切り替えられれば、代理店と直販を別々の掛け率で扱えます3。改定のたびに得意先別の価格表を作り直す作業は要りません。
この仕組みを持たない事務所では、朝いちばんに担当者が仕入伝票の束をめくりながら電卓を叩きます。紙のこすれる音の合間に、得意先ごとの「掛け率」を一件ずつ確かめていく作業です。原材料費も労務費も上がったのに、卸価格の一覧表は前回の改定のまま止まっています。どこまで転嫁できるのかが決まらないまま、手が止まります。
まず全体の水準から確かめます。53.5%が、2025年時点で示された中小企業の価格転嫁率で、上がった原価のうち半分ほどが取引価格へ届いている水準です1。費目別ではさらに開きます。55.0%と50.0%が、それぞれ原材料費と労務費の転嫁率です1。同じ「値上げのお願い」でも、材料の高騰を根拠にするか人件費を根拠にするかで、通り方は変わります。
得意先ごとに掛け率を手で直し、通知文を作り直している時間は、毎月の人件費としてすでに支払っている費用です。
得意先ごとに掛け率が分かれる実務
卸価格は一本ではありません。同じ商品でも、代理店には代理店の、直販の小売店には小売店の掛け率があり、大口先にはさらに数量に応じた特別値が乗ります。実務ではこれを「得意先マスタ」の項目として持ち、受注のたびに該当する価格を引き当てます。区分の持ち方が担当者ごとに違うと、同じ得意先へ別の卸価格が出ます。改定のたびに照合の手間が生まれているなら、まずこの持ち方が揃っているかを確かめてください。
区分をどこまで分けられるかが、次の分かれ目になります。5階層までが、得意先の組織階層に応じて卸価格を切り替えられる対応の上限として、2026年時点で示されています3。本社と支店、代理店とその配下の販売店というように、階層をたどって価格を引き当てる形です。得意先ごとに「一社に一つ」の掛け率しか持てない台帳と比べると、扱える幅ははっきり広がります。親会社の契約を子会社へ引き継ぐか、子会社ごとに別の掛け率を置くかも選べます。
扱える件数の上限が、次の目安になります。10,000件が、2026年時点のEC-Rider Primo の有料プランで登録できる取引先数の上限で、同じプランで30,000SKUまでの商品を持てます2。得意先が数百社の卸売業なら、上限を気にせず区分を細かく設計できる余地があります。「主要な先だけ登録する」と絞らずに、取引のある先をまとめて載せられる幅です。
改定の作業そのものは、基準価格と掛け率を分けて持てるかで変わります。基準価格の側だけを直せば、掛け率を掛けた結果は得意先ごとに同時に変わります。得意先別の価格をそのまま数値で持っていると、一件ずつ転記し直す作業が残ります。通知も、同じ一覧から出す形にすれば、「改定のご案内」を一件ずつ書き起こす手間が消えますね。
88,000円(税抜)というEC-Rider Primo のクイックビジネスプランの月額を上回る人件費を、いまの手作業へ毎月かけていないか、一度時間を数えて確かめてください2。
卸価格を切り替える仕組みの有無
ここから先は、卸価格を切り替える仕組みを持つかどうかを決める手順です。判断の前に必要なのは、いまの取引の形を数えて紙に出すことです。得意先が何社あり、掛け率が何通りあり、そのうち例外が何件あるのかを、得意先マスタから拾ってください。「だいたいそのくらい」という感覚のままでは、仕組みを入れても同じ手作業が場所を変えて待っています。
得意先の区分と掛け率を書き出す
最初にやるのは、得意先マスタの棚卸しです。代理店・特約店・直販といった区分と、それぞれへ適用している掛け率を一覧へ書き出します。あわせて、自社の直近一年で価格を手で直した回数も数えておきます。ここで「この先だけ特別」という例外が何件出てくるかが、そのあとの設計を決めます。
書き出した区分は、そのまま階層へ置き換えます。先に挙げた階層の上限に収まるなら、本社と支店を親子で持ち、代理店とその配下の販売店も同じ形でつなげます。収まらないなら、区分を統合し、残った例外は数量の条件へ移します。「得意先ごとに一つずつ価格を持つ」形から離れられるかが、ここで決まります。
改定を一度に反映する手順
改定の当日にやることは、本来なら基準価格の更新だけです。品目ごとの新しい基準価格を登録すれば、得意先ごとの卸価格は掛け率を通じて同時に変わります。通知は、得意先の画面へ反映された価格をそのまま見てもらう形にすれば、「新価格表」の添付を作り直す作業が減ります。転記が要らない分、誤りの入り口も減りますね。
反映の範囲を分けたい場合もあります。先に挙げた費目ごとの転嫁率の差を踏まえ、原材料費の分を先に反映し、労務費の分は次の改定へ回す段取りも取れます。いずれの場合も、改定前の価格と改定後の価格を並べて保存しておくと、請求時の照合が短く済みます。「いつからどの価格か」を後から示せる状態を保ってください。
仕組みを選ぶときに確かめる条件
選ぶ基準は、機能の多さではなく、自社の件数が上限の内側に入るかどうかです。取引先の数と商品の数、そして区分の階層の深さを先に確かめれば、候補はかなり絞れます。月額と、上限を超えたときの扱いも、契約の前に聞いておく項目です。「使ってみないと分からない」部分は、試験導入の枠で潰します。
費用の比べ方も決めておきます。月額の数字に加えて、いまの改定作業に何時間かけているかを数え、その人件費と並べてください。得意先が増えたときに月額が上がるのか、上限の中で収まるのかも、契約の前に確かめておく項目です。「安いほうを選ぶ」判断は、作業時間を数えてからでも遅くありません。
以降では、着手する順番と、扱う品目や得意先の数が異なる場合の進め方を、それぞれ詳しく見ていきます。
卸価格の改定を基準価格の更新だけで済ませられるかどうかは、いまの得意先の区分と掛け率の持ち方を見てもらわないと判断がつきません。
自社の得意先数と掛け率の通り数を持ち込めば、区分を階層へ置き換えられるかどうかをその場で確かめられます。無料相談で要件を整理する
卸価格の改定で先に手を付けること
- 品目ごとの基準価格と、得意先の区分ごとの掛け率を分けて持つ
- 代理店・特約店・直販の区分を階層で持ち、本社と支店を親子でつなぐ
- 特別値で置いている例外を数え、区分へ吸収するか数量の条件へ移す
- 改定は基準価格の更新だけで済ませ、通知は同じ一覧から出す
- 改定前後の価格を並べて保存し、請求時の照合に使う
この並びに優劣の順序はありません。
同じ手順でも、扱う品目と得意先の数によって着手の順番は変わりますので、次の表で自社に近い形を選んでください。

扱う品目と得意先の数で変わる進め方
| あてはまる事業者 | 先に確かめる数 | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 多品種を多数の得意先へ卸す事業者 | 品目数と得意先数の上限 | 区分を階層で設計してから登録する |
| 取引先を絞って卸価格を試す事業者 | 試験導入で登録できる件数 | 主要な得意先だけで出し分けを確かめる |
多品種を多数の得意先へ卸す事業者
日東電工CSシステム株式会社は、全国の販売加盟店へ向けて法人向け販売サイトを運営しています。扱う品目も相手先も多い事業者では、価格表そのものが分厚くなり、一覧を配る形では改定が追いつきません。ここで効いてくるのは、区分の細かさよりも、登録できる件数の上限のほうです。「まず一覧を作り直す」という段取りでは、作り直しが終わる前に次の改定が来ます。
規模を数で押さえます。3,800品種が、2018年時点で同社の法人向け販売サイトが扱っていた品種数です4。3,000社が、2020年時点で全国に広がった販売加盟店の数です4。数十品目を数十社へ卸す事業者と比べると、品目と相手先の組み合わせは桁が違います。「品種ごとに一覧を作る」やり方は、この規模では続きません。
この形では、掛け率の細かさより先に、上限へ収まるかを確かめます。先に挙げた取引先数と商品数の上限に対して、自社の品種数と得意先数がどの位置にあるかを数えてください。収まるなら区分の設計へ進み、収まらないなら、取扱いの少ない品目を別の一覧へ分けます。「全部を一つに載せる」ことを目的にしないほうが、運用は続きますね。
棚卸しの結果は、表の形で残します。品目数、得意先数、区分の階層、改定の頻度の四つを並べておけば、次の改定のときに同じ調査をやり直さずに済みます。「前回どう決めたか」を探す時間が、そのまま削れます。
区分の設計と棚卸しをまたぐぶん、難易度は高く、工数も相応にかかります。
| 確かめる項目 | 数えるもの | 上限に対する目安 |
|---|---|---|
| 品目数 | 取扱いのある品種の数 | 取扱いの少ない品目を分けても収まるか |
| 得意先数 | 加盟店と支店を含めた実数 | 支店単位まで数えても収まるか |
| 区分の階層 | 本社と支店の親子関係の段数 | 階層の上限の内側に入るか |
| 改定の頻度 | 一年あたりの改定回数 | 基準価格の更新だけで回せるか |
品目数と得意先数がどちらも多い場合は、掛け率を細かくする前に、扱える件数の上限へ収まるかを確かめておく必要があります。
取扱い品目の数と、加盟店や支店を含めた得意先の実数を伝えれば、どこまで一つの仕組みへ載せられるかが見えてきます。無料相談で自社の条件を持ち込む
取引先を絞って卸価格を試す事業者
取引のある先が数十社なら、進め方は変わります。全社を一度に載せ替えるより、主要な数社で卸価格の出し分けを試し、受注から請求までをひと通り流してみるほうが確実です。ここで確かめたいのは、自社の「掛け率」が意図どおりに引き当てられるかどうかです。
試せる範囲には上限があります。50件が、2026年時点のEC-Rider Primo の無料トライアルで登録できる取引先数の上限です2。主要な得意先をひととおり並べるには足りる数で、本番の上限と比べれば小さいものの、出し分けの確認には十分です。「本番と同じ掛け率」で入れておくと、あとの移行が楽になります。
絞って試す場合の基準は、上限の大きさではなく、戻せるかどうかです。試験導入で作った得意先の登録と掛け率が、本番へそのまま引き継げるかを先に聞いておきます。引き継げないなら、同じ入力を二度行うことになります。「試したあとに何が残るか」を、始める前に確かめてください。
試す前に決めておく項目は、次の表のとおりです。試す相手と含める例外、流す業務、本番への引き継ぎまでを書き出してから始めれば、期間を短く区切れます。「とりあえず入れてみる」から始めると、確かめたいことが曖昧なまま終わります。
作業は数社分の登録にとどまり、難易度は低く、短い期間で試せます。
| 決めておく項目 | 試験導入での中身 |
|---|---|
| 登録する得意先 | 代理店と直販の両方を入れる |
| 含める例外 | 特別値のある先を一件は入れる |
| 流す業務 | 受注から請求までひと通り流す |
| 本番への引き継ぎ | 作った登録をそのまま使えるか確かめる |

数社で試す場合は、試験導入で作った得意先の登録と掛け率を本番へ引き継げるかどうかが、そのあとの進め方を左右します。
試したい得意先の顔ぶれを挙げておけば、どの範囲まで無料の枠で確かめられるかを聞き出せます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 確かめる項目 | 自社で数える基準 |
|---|---|
| 卸価格の持ち方 | 基準価格と掛け率を分けて持てているか |
| 得意先の区分 | 代理店と直販を階層でつないでいるか |
| 例外の件数 | 特別値のある先が区分へ吸収できる件数か |
| 改定の作業 | 基準価格の更新だけで全先へ反映できるか |
| 試す範囲 | 主要な得意先だけで出し分けを確かめたか |
| 費用の比べ方 | 手作業の時間を金額へ直して月額と並べたか |
卸価格の決め方は一度固めると数年は続く運用になりますので、設計の段階で相談しておくと、あとの作り直しを避けられます。 現在の価格表と改定の頻度を示せば、改定の作業をどこまで一括へ寄せられるかの見通しが立ちます。
よくある質問
卸価格の改定は、どの費目から根拠にすればよいですか
まず、費目ごとに進み方が違う点を押さえます。48.9%が、エネルギーコストの転嫁率で、原材料費の水準より低く並びます1。金額を仕入伝票で示せる原材料費から根拠をそろえ、燃料や電気の上昇分は、使用量と単価の推移を別の資料として添える形が扱いやすいです。
掛け率は得意先ごとに何通りまで持てばよいですか
通り数そのものに正解はありません。数えるべきは、いま実際に使っている掛け率の種類と、そこから外れている「特別値」の件数です。例外が数件なら区分へ吸収でき、数十件あるなら区分の設計をやり直す合図になります。まず得意先マスタを開いて、掛け率の重複を数えてください。
価格改定の通知は、どのくらい前に出すものですか
時期の決まりは取引先との契約によって変わります。実務では、改定日と、その日をまたぐ受注の扱いを先に決めておくと混乱が減ります。改定前に受けた注文を旧価格で通すか、出荷日を基準にするか。どちらにするかを「改定のご案内」へ書き、改定前後の価格を並べて保存しておけば、請求時の照合が済みます。
価格転嫁の調査は、どれくらいの規模で行われたものですか
30万社が、受注側の中小企業を対象とした調査の規模です1。業種や取引先によって結果は分かれますので、「全国の平均」を自社の水準と同じとみなす必要はありません。自社が直近の改定で通した割合を出し、この水準と並べて比べてください。
仕組みを入れる前に、社内で決めておくことはありますか
決めておきたいのは、掛け率を誰が変更できるかという権限の置き方です。営業担当が個別に値引きを入れられる形のままでは、区分を整えても「この先だけ特別」が増えます。変更の申請と承認をどこで行い、変更の履歴をどこへ残すかは、先に決めておきたいところですね。
一括改定をすると、大口先との交渉に影響しませんか
一括で反映する対象と、個別に交渉する対象は分けられます。区分ごとの掛け率を持っていれば、標準の区分だけを改定し、大口先の区分は据え置く扱いもできます。「全先一律」と「区分ごと」のどちらも選べる状態にしておくことが、交渉の余地を残す形です。
- 1 出典:中小企業庁(経済産業省)「価格交渉促進月間(2025年9月)フォローアップ調査結果」(2025年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider Primo サービス紹介ページ・料金プラン条件」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える(EC-Riderお役立ちコラム)」(2026年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社)」(2026年) 経路
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- Two colleagues in a professional meeting discussing business/Photo by MART PRODUCTION on Pexels
- Business professionals collaborating in a modern office with/Photo by fauxels on Pexels
- Professionals engaged in a collaborative business meeting wi/Photo by MART PRODUCTION on Pexels