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検収基準の決め方|合格条件・検査期間・支払との関係を契約前に整理

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 検収基準は「何を・どの方法で・いつまでに確認し・満たさなければどうなるか」の4点を、契約前に受注側と書面で合意する
  • 合格条件は仕様書・検査仕様書のどの記載で判定するかに結び付け、判定者と判定方法を一緒に書く
  • みなし検収は書面で理由を示した異議の条件と、検査に必要な受注側の協力の範囲を合わせて書く
  • 取適法が適用される取引では、検査の有無にかかわらず受領日から60日以内に支払期日を定めるため、検査期間はその内側に置く
  • 請負では検収合格後も、不適合を知った時から1年以内の通知で追完などを求められるため、合格を責任の免除と読まない

20代前半の日本人男性が在宅での仕様の確認をしている場面

納品されたのに「完成」と言えないとき、検収基準で先に決めておくこと

納品データを開いてみたら、思っていた出来と違う。
受注側は「仕様書どおりに作った」と言い、こちらは「まだ完成していない」と考える。
そのまま支払も修正も止まってしまう。
こうした食い違いの多くは、合格の基準を事前に書面で決めていないことが原因です。
決めるのは「何を・どの方法で・いつまでに確認し・満たさなければどうなるか」の4点です。
これに、請負か準委任かで変わる支払時期と、取適法が適用される取引の支払期日(受領日から60日以内)を重ねて、検査期間と不合格時の手順を設計します2。

揉めやすい場面:完成か未完成かの食い違い

たとえば、自社サイトの改修を外部の制作会社に委託し、約束の日に納品データが届いたとします(仮定の例です)。
担当者が動作を確かめると、問い合わせフォームを送信した後の画面が社内で想定していたものと違っています。
発注側は「未完成なので直してほしい」と考えます。
受注側は「仕様書のとおりに作ったので完成している。変えたいなら追加の要望として扱う」と考えます。
どちらの言い分も間違いとは言い切れないまま、支払と修正の話が止まります。

食い違いの根は、「完成」の中身を事前に言葉にしていなかったことにあります。
請負は、受注側がある仕事の完成を約束し、発注側がその仕事の結果に報酬を支払うと約束することで成立する契約です7。
完成が報酬の前提になっているのに、何をもって完成とするかが書かれていなければ、納品後に双方がそれぞれの解釈を持ち出すしかありません。
発注書に「サイト改修一式」とだけ書いてあるような場合は、とくにこの状態になりやすくなります。

検収という言葉には、二つの行為が含まれています。
一つは、成果物を調べる検査という作業です。
もう一つは、その結果を受けて「受け入れる」または「受け入れない」と相手へ伝える意思表示です。
検査の手順が決まっていても、結果をいつまでに伝えるのか、伝えなかったらどうなるのかが空白だと、確認作業は終わったのに受け入れが宙に浮いた状態になります。

システム開発の契約で使われるみなし検収条項は、発注側の都合で検収が滞り、受注側が不安定な立場に置かれ続けるのを防ぎ、関係を公平に保つための条項だと解説されています8。
裏返せば、検査と受け入れの両方を契約で区切っておくことは、受注側だけでなく発注側にとっても揉め事の予防になります。
発注側が「まだ確認中です」と言い続けられる状態は、一見有利に見えて、支払や次の工程の予定も決められない状態だからです。

決める4点:何を・どの方法で・いつまでに・満たさなければどうなるか

契約前に決めておきたいことは、次の4点に整理できます。
これは法令が定めた必須項目ではなく、揉めやすい場面から逆算した編集部の整理です。

4点は互いにつながっています。
「何を」が曖昧だと「どの方法で」も決まらず、期限だけ決めても何を確かめれば終わりなのかが分かりません。
「満たさなければどうなるか」が空白なら、不合格を伝えた後に、修正の範囲や再検査の回数をめぐって再び話がこじれます。
手元の契約書や発注書の雛形を読み、4点それぞれに当たる文があるかを見ていくと、自社の取り決めのどこが空欄なのかがはっきりします。

決めること 書面で答える問い 決めていないと起きること
何を 合格の物差しになる仕様書・検査仕様書はどれか 仕様にない要望か不具合かで意見が割れる
どの方法で 誰が、どの環境・資料・データで確かめるか 担当者や環境が変わると結果が変わる
いつまでに 検査期間と結果を通知する期限 受け入れが宙に浮き、支払の予定が立たない
満たさなければどうなるか 不合格の通知方法、修正の期限、再検査の扱い 修正と差し戻しが終わらない
検収に含まれる二つの行為と、空白があるときの状態(模式図)
検収を検査と受け入れの意思表示に分け、通知の期限が空白だと受け入れが宙に浮くことを示した図検収を検査と受け入れの意思表示に分け、通知の期限が空白だと受け入れが宙に浮くことを示した図検査という作業成果物を調べる受け入れの意思表示「受け入れる」または「受け入れない」と相手へ伝える空白があるとき結果をいつまでに伝えるのかが決まっていない伝えなかったらどうなるのかが決まっていない確認作業は終わったのに受け入れが宙に浮く

▼ 図の内容を文字で読む
  • 検査という作業
    • 成果物を調べる
  • 受け入れの意思表示
    • 「受け入れる」または「受け入れない」と相手へ伝える
  • 空白があるとき
    • 結果をいつまでに伝えるのかが決まっていない
    • 伝えなかったらどうなるのかが決まっていない
    • 確認作業は終わったのに受け入れが宙に浮く

合格条件は仕様書・検査仕様書にひも付けて書く

検査仕様書と仕様書の適合を判定の軸にする

4点のうち「何を」確認するかを書くとき、揉めにくいのは、合格の物差しを特定の書面に固定する方法です。
専門家が紹介する条項例では、発注側は検査期間内に検査仕様書に基づいて、成果物がシステム仕様書と合致するかを点検するとされています8。
同じ解説で紹介される裁判例の整理でも、完成の基準となる仕様を書面で明確に合意しておくことが重要だとされています8。

仕様書は「何を作るか」、検査仕様書は「それをどう確かめるか」を書いた書面です。
先ほどのサイト改修の例で、仕様書に「フォーム送信後に完了画面を表示する」とあり、検査仕様書に「必須項目を入力して送信し、完了画面が表示されること」とあったとします。
この場合、完了画面のデザインが社内の期待と違うことは仕様の不適合ではなく、仕様に書かれていない要望だと判断できます。
逆に、完了画面の文言やレイアウトまで仕様書に書いてあれば、違っていることは不合格の理由になります。
合否の線が、担当者の印象ではなく、書面のどの行に当たるかで引かれるわけです。

ただし、この条項例はシステム開発についての民間の契約例です8。
制作物や役務の委託でも同じ考え方は使えますが、どの書面を物差しにするかは成果物によって変わり、特定の契約にそのまま当てはまるとは限りません。

合格条件の書き方の型:仕様適合・テスト項目・数値基準・承認

合格条件の書き方には、いくつかの型があります。
ここでは編集部の整理として、四つの型を同じ軸で並べます。

型ごとに、迷う点が違います。
仕様適合型は、仕様書に書いていないことは合否の対象にならないため、仕様書の細かさがそのまま合格条件の細かさになります。
テスト項目型は判定が明確になる一方、項目から漏れた不具合を検収でどう扱うかを決めておかないと、「項目は全部通ったのに使えない」という食い違いが残ります。
数値基準型は、測る環境や条件を一緒に書かないと、受注側の環境では満たしていて発注側の環境では満たさない、というずれが起きます。
発注者承認型は柔軟ですが、承認するかどうかが発注側の判断に寄るため、受注側からは何を満たせばよいかが見えません。

デザインのように数値にしにくい成果物で承認型を使う場合でも、確認する観点を添えると判断が寄せやすくなります。
たとえば「事前に合意したデザイン案と構成・配色が一致していること」のように、何と見比べるのかを書いておく方法です。
また、一つの成果物に一つの型と決める必要はありません。
機能はテスト項目、見た目は承認、といった組み合わせのほうが実態に合う場面もあります。

判定者と判定方法を一緒に書く

どの型でも共通して書いておきたいのが、誰が判定し、どの方法で確かめるかです。
「発注者が検査する」とだけあると、発注側の誰が、どの端末や環境で、どの資料を見て判断するのかが決まっていません。
検査担当者が交代したとたんに基準が変わる、受注側の検証環境で通った手順が発注側の環境では再現しない、といったずれはここから生まれます。

判定者は個人名ではなく部署や役割で書き、判定方法は使う環境・データ・資料を書いておくと、担当者が替わっても同じ物差しで確かめられます。
さらに、不合格を伝えるときにも「この方法で確かめた結果、この条件を満たさなかった」と具体的に示せるようになります。
この具体性が、次の不合格時の手順の土台になります。

型 合格の物差し 判定者・判定方法の書き方 注意点
仕様適合 仕様書の記載内容 検査仕様書に基づき仕様書との一致を点検する 仕様書に書いていないことは合否の対象外になる
テスト項目 事前に合意した確認項目の一覧 項目ごとに手順と期待する結果を書く 項目から漏れた不具合の扱いを決めておく
数値基準 測定できる値 測定する環境と条件を一緒に書く 環境が違うと結果が食い違う
発注者承認 発注側の確認と承認 確認する観点と承認者を書く 受注側から基準が見えにくい
完了画面が想定と違う場合の判定の分かれ方(サイト改修の仮定の例・模式図)
仕様書と検査仕様書の役割を示し、完了画面の違いが仕様書の記載の有無で判定が分かれることを示した図仕様書と検査仕様書の役割を示し、完了画面の違いが仕様書の記載の有無で判定が分かれることを示した図合格の物差しになる書面仕様書は「何を作るか」を書く検査仕様書は「それをどう確かめるか」を書く完了画面の文言やレイアウトが仕様書に無い場合「フォーム送信後に完了画面を表示する」とだけ書かれている違いは仕様に書かれていない要望と判断できる完了画面の文言やレイアウトまで仕様書にある場合書面のその行と画面が違っている違いは不合格の理由になる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 合格の物差しになる書面
    • 仕様書は「何を作るか」を書く
    • 検査仕様書は「それをどう確かめるか」を書く
  • 完了画面の文言やレイアウトが仕様書に無い場合
    • 「フォーム送信後に完了画面を表示する」とだけ書かれている
    • 違いは仕様に書かれていない要望と判断できる
  • 完了画面の文言やレイアウトまで仕様書にある場合
    • 書面のその行と画面が違っている
    • 違いは不合格の理由になる

検査期間・みなし検収・不合格時の手順を決める

検査期間の置き方と、取適法の60日との関係

合格条件が決まったら、それをいつまでに確かめるかを決めます。
書き方としては、「納品を受けた日から○日以内に検査し、結果を書面で通知する」のように、起点・期間・通知の方法をそろえて書く形が分かりやすくなります。
何日が妥当かは、成果物の規模や検査項目の量、社内で確認に関わる人数によって変わるため、ここで一律の目安は示しません。

日数を決めるときに外せないのが、支払との関係です。
取適法が適用される取引では、支払期日は受領日から起算して60日以内で定める必要があり、これは検査の有無にかかわらず適用されます2。
検査期間を長く取っても支払期日は後ろへ動かないため、検査期間は受領日から60日の内側に収めて設計する必要がある、というのが編集部の分析です。
この制約は取適法の適用要件を満たす取引に限られ、適用されるかどうかの見分け方と例外は後の節で扱います。

みなし検収の書き方と、受注側の協力義務

みなし検収は、検査期間内に発注側が異議を出さなければ、合格したものとみなす条項です。
経済産業省のモデル契約書の型として、検査期間内に書面で具体的な理由を示した異議がなければ合格とみなす条項が紹介されています8。
発注側から見ると、確認が間に合わなければ自動的に合格になる条項です。
異議を出すには「書面で」「具体的な理由を示して」という条件が付いているため、担当者が多忙で検査に手を付けられないまま期間が過ぎれば、不具合があっても合格として扱われる可能性があります。

一方で、期間が過ぎれば必ず合格になるとも限りません。
専門家の解説によれば、平成16年の東京地裁判決は、発注側が期間内に検査結果を通知していなくても、受注側が検査に必要な協力をしていなかったことを理由に、みなし検収を認めませんでした8。
他方、平成24年の東京地裁判決は、同様の条項を適用して検収を認めています8。
いずれも判決文そのものではなく解説での紹介であり、システム開発の事案です。
ここから言えるのは、みなし検収の成否を判断する際に、受注側の協力の有無が見られた例がある、という範囲までです。

そこで発注側としては、検査に必要な協力の範囲を契約に書いておくことを提案します。
サイト改修の例なら、検証用の環境、テスト用のアカウントやデータ、操作手順書、納品物の一覧といったものです。
何が届けば検査を始められるのかが書かれていれば、「資料が足りないので検査できなかった」「いや、渡してある」という起点をめぐる言い争いを避けやすくなります。
同時に、発注側自身も、期間内に結果を通知できる社内の段取りを組んでおくことが前提になります。

不合格時の理由の書面通知、修正・追完、再検査

不合格だったときの流れも書いておきます。
専門家が紹介する条項例では、不合格の場合は理由を明示した書面を受注側に交付し、修正・追完を求めるとされています8。
追完とは、足りない部分を補ったり不具合を直したりして、契約で決めた状態にすることです。

運用で詰まりやすいのは、不合格を伝えた後です。
修正の期限、修正後に再検査する期間、再検査でも不合格だった場合の扱いが書かれていないと、修正と差し戻しが終わらなくなります。
再検査の期間と回数、それでも合格しない場合に協議に移るのか契約の解除を検討するのかといった扱いを、あらかじめ決めておくことを提案します。
不合格の理由を書面で示す運用にしておけば、何を直せば合格になるのかが受注側にも伝わり、次の検査で確かめる範囲も絞れます。

納品から再検査までの流れ
納品と資料の受領、検査、合格通知または理由を示した不合格通知、修正と再納品、再検査へ進む流れ1納品と、検査に必要な資料・環境の受領2検査期間内に、合格条件に沿って検査3合格なら合格を通知、不合格なら理由を示した書面を交付4受注側が修正・追完し、再納品5再検査期限と回数を契約で定めておく

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 納品と、検査に必要な資料・環境の受領
  2. 検査期間内に、合格条件に沿って検査
  3. 合格なら合格を通知、不合格なら理由を示した書面を交付
  4. 受注側が修正・追完し、再納品
  5. 再検査(期限と回数を契約で定めておく)

検収は支払時期・契約不適合責任とどうつながるか(請負と準委任の違い)

請負:完成と引渡し、報酬の支払時期

ここまでで検査の手順は決まりました。
では、検収に合格すると支払や責任はどう動くのでしょうか。
民法では、請負の報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払うのが原則です4。
物の引渡しを要しない仕事では、別の規定を準用するとされています4。

条文には「検収」という言葉は出てきません。
そのため、契約で「検収合格をもって引渡しとする」と定めれば、検収の合格が支払の起点として働くことになります。
検収基準が曖昧なままだと、引渡しがいつ済んだのか、つまり支払がいつ来るのかまで曖昧になる、ということです。
なお、民法の原則を契約でどこまで変えられるかは個別の契約内容によるため、支払時期を特約で定める場合は専門家に確かめておくと安心です。

準委任:成果完成型の場合の扱い

準委任は、仕事の完成ではなく、事務の処理を目的とする契約です。
そのため、作業時間や工数に対して報酬を支払う形であれば、検収は成果物の合否というより、作業内容の報告を確かめる意味合いが強くなります。

ただし、準委任でも成果に対して報酬を支払う約束をすることがあります。
民法第648条の2は、事務の履行によって得られる成果に対して報酬を支払うと約束し、その成果の引渡しを要するときは、成果の引渡しと同時に報酬を支払うと定めています6。
この形では、請負と同じように成果物の合否と支払が結びつくため、合格条件がないと請負と同じ食い違いが起きます。
契約書の題名が「業務委託契約」となっていても、報酬が作業に対するものか成果に対するものかで、検収の位置づけが変わる点に注意が必要です。

契約不適合は知った時から1年以内の通知

検収に合格した後で不具合が見つかることもあります。
請負では、目的物の種類や品質が契約に適合しないとき、発注側がそれを知った時から1年以内に受注側へ通知しないと、追完の請求、報酬の減額請求、損害賠償の請求、契約の解除ができなくなります5。
ただし、受注側が引渡しの時にその不適合を知っていた場合や、重大な過失によって知らなかった場合には、この制限は適用されません5。

ここから、検収合格を「以後は責任を問えない」という意味に読まないことが大切です。
合格は、決めた方法で確かめた範囲で合格したということにとどまり、検査で見つけられなかった不適合は別に扱われる、というのが編集部の整理です。
発注側の実務としては、不具合に気づいた日を記録し、そこから1年の通知期限を管理しておくことを提案します。
契約で不適合への対応期間を別に定めている場合は、その条項と民法の定めとの関係を契約書で確かめる必要があります。

項目 請負 準委任(成果に対して報酬を払う場合)
契約の目的 仕事の完成 事務の処理
報酬の支払時期の原則 目的物の引渡しと同時 成果の引渡しと同時
検収の位置づけ 完成と引渡しを確かめる区切り 成果の引渡しを確かめる区切り
検収合格後に不具合が見つかったときの、通知期限と請求の関係(請負・現行の民法)
不具合を知った日を記録し、1年以内に通知しないと追完・減額・損害賠償・解除の請求ができなくなることを示した図1検収に合格したあとで、契約に適合しない不具合が見つかる2不具合に気づいた日を記録し、1年の通知期限を管理する3知った時から1年以内に、その旨を受注側へ通知する4通知しないと、追完・報酬の減額・損害賠償の請求と契約の解除ができなくなる

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 検収に合格したあとで、契約に適合しない不具合が見つかる
  2. 不具合に気づいた日を記録し、1年の通知期限を管理する
  3. 知った時から1年以内に、その旨を受注側へ通知する
  4. 通知しないと、追完・報酬の減額・損害賠償の請求と契約の解除ができなくなる

取適法が適用される取引では、検収を理由に支払を遅らせられない

適用の見分け方:取引類型と従業員・資本金基準

民法の原則では、支払は引渡しに合わせて動きます。
しかし、発注の内容と規模によっては、取適法(中小受託取引適正化法)の制約が重なります。
取適法は下請法が改められた法律で、2026年から施行されています3。

適用は、取引の類型と規模の要件の両方で判断します。
規模の要件には、従来の資本金の基準に従業員数の基準が加わり、資本金の基準に当たらなくても従業員数の基準に当たれば適用対象になります3。
従業員数の基準は、製造委託等で300人、役務提供委託等で100人です3。
資本金の区分や、自社の委託がどの類型に当たるかの細かな当てはめは、公正取引委員会の公表資料で確かめてください。

従業員数は、委託をした時点で判断します。
その時点で基準を満たしていなければ、後で満たしても対象にはなりません1。
また、常時使用する従業員にはパートやアルバイトなども含まれます1。
正社員の数だけを見て「対象外」と判断すると、見落としにつながります。

受領日から60日以内の支払期日

適用される取引では、支払期日を物品等の受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定める義務があり、これは検査をするかどうかにかかわらず適用されます2。
情報成果物についても、検査の有無にかかわらず受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要があり、検収を理由とする支払の先延ばしは基本的に認められません1。

受領日は、原則として納品された時点です1。
支払期日は具体的な日を特定して定める必要があり、「納品後○日以内」という書き方は認められません1。

前の節の民法の原則と並べると、違いがはっきりします。
民法の原則に沿って「検収合格をもって引渡し」と定めた契約では、支払は検収の終わりに合わせて後ろへ動きます。
取適法の適用取引では、起点は受領日に固定され、検収が長引いても期日は動きません。
サイト改修の例でいえば、納品データを受け取った後、社内の確認者の予定がつかずに検査が止まっていても、支払期日は受領日を基準に定めた日のままです。
だからこそ、検査期間はこの60日の内側に収め、検査に必要な社内の段取りも契約前に組んでおく必要があります。

納期前確認を受領とする事前合意の例外

例外として、納期前に一定の水準を満たすことを確認した時点で受領とする旨を事前に合意していれば、その確認の時点が起算日になります1。
ただしこれは、検査が終わってから受領したことにして期日を遅らせることを認める趣旨ではありません1。
事前の合意があり、確認が納期前に行われることが条件です。

発注側がこの例外を使うのは、たとえば納期より前に受注側と一緒に動作を確かめる段取りを組む場合です。
その場合も、確認の時点を受領とすることを契約の段階で書面にしておかなければ、原則どおり納品された時点が受領日になります。

やり直しと起算日、検査結果の記録

支払期日前に不適合が見つかってやり直しとなった場合は、当初の受領日から60日以内に支払う必要はなく、やり直し後の受領日が起算日になります1。
不合格を通知して修正版を受け取ったら、その受領日から改めて期日を数えることになります。
前の節で決めた不合格時の手順を、この起算日の切り替えと対応させて書いておくと、検査担当と支払担当の間で期日の認識がずれにくくなります。

記録の義務もあります。
検査を行った場合は、検査の完了日、結果、不合格品の取扱いを記録する必要があり、給付内容の変更ややり直しをさせた場合は、その内容と理由を記録します2。
不合格の理由を書面で通知する運用にしておけば、その書面がそのまま記録の元になります。
取適法が適用されない取引ではこれらの制約は同じ形ではかかりませんが、検査期間と支払期日の関係を契約で書いておく意味は変わりません。

取適法が適用される取引での受領日・検査期間・支払期日の関係(模式図)
受領日を起点に検査期間を60日の内側に置き、60日以内に具体的な支払期日を定め、やり直しの場合は再受領日から数え直す関係を示した図受領日を起点に検査期間を60日の内側に置き、60日以内に具体的な支払期日を定め、やり直しの場合は再受領日から数え直す関係を示した図受領日(原則として納品された時点)検査期間(契約で定め、60日の内側に置く)支払期日(受領日から60日以内で具体的な日を定める)支払期日前にやり直しとなった場合は、やり直し後の受領日から改めて数える

▼ 図の内容を文字で読む
  • 受領日(原則として納品された時点)
  • 検査期間(契約で定め、60日の内側に置く)
  • 支払期日(受領日から60日以内で具体的な日を定める)
  • 支払期日前にやり直しとなった場合は、やり直し後の受領日から改めて数える

出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(取適法の概要)」「中小受託取引適正化法(取適法)よくある質問コーナー」(2026年、取適法が適用される取引)

取り決めを契約書・仕様書・発注書のどこに置き、どう合意するか

書面ごとの置き場所の分担案

ここまでで決める中身はそろいました。
最後に、それをどの書面に置くかです。
取適法の適用取引では、発注時に発注内容等を書面または電磁的方法で直ちに明示する義務があります2。
適用がない取引でも、決めた内容を書面に残しておけば、担当者が替わったときや食い違いが起きたときに、どの約束に立ち返ればよいかが分かります。

置き場所は、変わりやすいものと変わりにくいもので分けると管理しやすくなります。
案件ごとに変わる「何を」は発注書や仕様書に、取引全体で共通する手続きや支払の決まりは契約書に置く、という分担です。
以下は編集部の提案で、どの書面に何を置くべきかを法令が定めているわけではありません。

発注書に仕様書や検査仕様書の版を書いておくのは、後で仕様書が更新されたときに、どの版で合否を判断するのかを明らかにするためです。
取適法の適用取引では支払期日を具体的な日で定める必要があるため1、発注書の支払期日の欄に「検収後○日」と書く雛形を使っている場合は、見直しが必要になります。

受注側とのすり合わせ手順

合意の順番も、揉め事を減らすうえで大切です。
契約書の雛形を先に送り、仕様は後から詰める流れだと、検収の条項に書いた「仕様書」の中身が決まらないまま署名することになります。
次の順で進めることを提案します。

  1. 仕様書を確定する(何を作るか)
  2. 検査仕様書を受注側と共有し、検査の項目と方法に合意する
  3. 検査に必要な協力(環境・データ・資料)の範囲を確かめる
  4. 検査期間、不合格時の手順、支払期日を契約書と発注書に反映する

検査仕様書を事前に共有しておくと、受注側は納品前に同じ項目で自社チェックができます。
発注側にとっては、納品後に初めて基準を示して「それは聞いていない」と言われる場面を避けられます。
協力の範囲を確かめる段階では、みなし検収で見たように、検査を始めるのに何が必要かを双方で同じ一覧にしておくことが、期間の起点をはっきりさせることにつながります。

仕様変更が出たときの扱い

制作の途中で仕様が変わることは珍しくありません。
仕様が変われば合格の物差しも変わるため、変更の内容を書面で残し、検査仕様書も同時に更新しておく必要があります。
口頭で変更を伝えたまま元の検査仕様書で検査すると、受注側は変更後の内容で作り、発注側は変更前の項目で確かめる、という食い違いが生まれます。

取適法の適用取引では、給付の内容を変更させた場合、その内容と理由を記録する必要があります2。
変更のたびに、何を・なぜ変えたか、どの検査項目に影響するか、納期や支払期日を見直すかを一つの書面にまとめておけば、記録と検収基準の更新を一度に済ませられます。

書面 置く内容
仕様書 何を作るか(合格の物差しになる記載)
検査仕様書 どの方法で、誰が、どの環境・資料で確かめるか
発注書 案件ごとの成果物、納期、仕様書・検査仕様書の版、支払期日
契約書 検査期間、みなし検収、検査への協力、不合格時の手順、不適合の通知
受注側とのすり合わせの進め方(編集部の提案)
仕様書の確定、検査仕様書の合意、協力範囲の確認、契約書と発注書への反映の順に進める流れ1仕様書を確定する何を作るか2検査仕様書を受注側と共有し、検査の項目と方法に合意する3検査に必要な協力(環境・データ・資料)の範囲を確かめる4検査期間、不合格時の手順、支払期日を契約書と発注書に反映する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 仕様書を確定する(何を作るか)
  2. 検査仕様書を受注側と共有し、検査の項目と方法に合意する
  3. 検査に必要な協力(環境・データ・資料)の範囲を確かめる
  4. 検査期間、不合格時の手順、支払期日を契約書と発注書に反映する

検収の4点は、自社の雛形や過去の発注書に当てはめてみないと、どこが空欄なのかが見えにくいものです。契約を結ぶ前のほうが、受注側とのすり合わせもしやすくなります。

手元の契約書・発注書・仕様書を見ながら、合格条件・検査期間・不合格時の手順・支払期日のどこに書き足しが必要かを整理できます。無料相談で要件を整理する

契約書案を受け取ったら確かめたいこと

本文で扱った合格条件・期間・不合格時の手順・支払・責任の順に、契約書案の上で見る箇所を並べた

  • 合格の物差しになる仕様書・検査仕様書がどれか、版まで特定されているか
  • 判定者と判定方法(環境・データ・資料)が書かれているか
  • 検査期間の起点と、結果を通知する方法が書かれているか
  • みなし検収がある場合、検査を始めるのに必要な受注側の協力が書かれているか
  • 不合格時の通知、修正の期限、再検査の期間と回数が書かれているか
  • 取適法が適用される場合、支払期日が受領日から60日以内の具体的な日になっているか
  • 検収合格後に見つかった不適合をどう扱うかが書かれているか

取適法が適用される取引では、支払期日の項目を検査期間より先に確かめる

要点の整理

軸 基準
合格条件 仕様書・検査仕様書のどの記載で判定するかを特定し、判定者と方法を書く
検査期間 起点・期間・通知方法をそろえ、取適法の適用取引では受領日から60日の内側に置く
みなし検収 書面で理由を示した異議の条件と、受注側の協力の範囲を合わせて書く
不合格時 理由を書面で示し、修正の期限、再検査の期間と回数を決める
支払時期 請負は引渡しと同時が原則。取適法の適用取引では受領日から60日以内の具体的な日
合格後の不具合 請負では知った時から1年以内に通知。合格を責任の免除と読まない

取適法の適用の有無や、請負か準委任かによって、検査期間と支払期日の組み立て方が変わります。社内だけで判断すると、どちらかの前提を見落としやすくなります。 自社の委託の形に合わせて、検査期間を支払期日の内側に収める組み立てと、仕様変更や不合格時の記録の残し方を確かめられます。

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よくある質問

検収と受領は何が違い、取適法では受領日はいつになりますか。

受領は成果物を受け取ること、検収は受け取った成果物を検査し、受け入れるかどうかを伝えることです。
取適法が適用される取引では、受領日は原則として納品された時点で、支払期日はこの受領日から60日以内で定めます1。
検収が終わった日が受領日になるわけではありません。

検査期間中に支払期日が来てしまった場合はどうなりますか。

取適法が適用される取引では、検査の有無にかかわらず受領日から60日以内に定めた支払期日までに支払う必要があり、検収を理由とする先延ばしは基本的に認められません1。
支払期日前に不適合が見つかってやり直しとなった場合は、やり直し後の受領日が起算日になります1。
検査期間は、最初から60日の内側に収めて設計しておくのが安全です。

みなし検収を入れれば、検査せずに放置しても合格にできますか。

みなし検収は、期間内に書面で具体的な理由を示した異議がなければ合格とみなす条項として紹介されています8。
ただし、受注側が検査に必要な協力をしていなかったためにみなし検収が認められなかった裁判例が紹介されており8、期間が過ぎれば必ず合格になるとは限りません。
発注側にとっても、放置すれば不具合があっても合格扱いになるおそれがあるため、期間内に結果を通知する段取りが必要です。

検収に合格した後に不具合が見つかったら、請負ではいつまでに何を請求できますか。

目的物の種類や品質が契約に適合しない場合、発注側がそれを知った時から1年以内に受注側へ通知すれば、追完の請求、報酬の減額請求、損害賠償の請求、契約の解除を検討できます5。
通知しないとこれらができなくなりますが、受注側が引渡し時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかった場合は、この制限は適用されません5。
契約で別の定めがある場合は、その条項も確かめてください。

準委任で成果物を受け取る場合、検収基準は決めなくてよいですか。

成果に対して報酬を支払う約束をし、成果の引渡しが必要な場合は、成果の引渡しと同時に報酬を支払うのが民法の原則です6。
この場合は成果物の合否と支払が結びつくため、請負と同じように合格条件を決めておく必要があります。
作業時間に対して報酬を支払う形でも、作業報告の内容や確認方法を決めておくと食い違いを防げます。

受注側が個人(フリーランス)でも、取適法の対象になりますか。

取適法の適用は、取引の類型と規模の要件で判断されます3。
受注側が個人であるという理由だけで対象外と決めつけることはできませんが、個別の取引が対象になるかどうかは、公正取引委員会の公表資料や専門家に確かめてください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)よくある質問コーナー」(2026年)
  2. 2 出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(取適法の概要)」(2026年)
  3. 3 出典:公正取引委員会「取適法・振興法(特設ページ)」(2026年)
  4. 4 出典:e-Gov法令検索「民法 第633条(報酬の支払時期)」(現行法)
  5. 5 出典:e-Gov法令検索「民法 第637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)」(現行法)
  6. 6 出典:e-Gov法令検索「民法 第648条の2(成果等に対する報酬)」(現行法)
  7. 7 出典:e-Gov法令検索「民法 第632条(請負)」(現行法)
  8. 8 出典:弁護士法人モノリス法律事務所「システム開発のみなし検収条項の解説」(2026年確認)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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