◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 連携の方式にはファイル・データベース直結・API・EDIの4種類があり、業務の性質によって使い分けます。
- 経済産業省とIPAの一次情報によれば、連携できる状態を保てているかどうかがレガシーシステムかどうかの分かれ目とされています。
- 連携プロジェクトは現状把握から運用監視までの4ステップで進めると、手戻りを防ぎやすくなります。
目次
基幹システムの連携とは、販売・生産・会計など複数の業務領域の基幹業務システムと、EC・倉庫管理・会計クラウド・取引先システムなど周辺システムの全体が有機的につながる体系を整備することです。単一の業務プロセスではなく、企業全体の複数のシステムペアが同期し、データを自動的に受け渡す仕組みです。目的は、同じデータを複数のシステムへ手入力する二重入力と、その転記に伴うミスをなくすこと、各システムの数字がそろうまでの時間差を減らすことです。
基幹システムの連携とは?まず結論
基幹システムの連携とは、既存の基幹業務システムと周辺システムの間でデータを自動的にやり取りする仕組みです。経済産業省とIPAは、連携できる状態を保っていることこそがレガシーからの脱却条件だとしています*1。
基幹システム連携とは何か―手入力をなくす仕組み
基幹システムとは、販売管理・生産管理・会計など企業の中核業務を支えるシステムを指します。連携とは、これらとEC・倉庫管理システム(WMS)・会計クラウド・取引先の受発注システムなどの間で、データを自動的に受け渡す取り組みです。
連携が整っていない場合、担当者は同じ内容を複数のシステムへ手作業で入力し直すことになります。件数が増えるほど転記ミスの発生機会が増え、締め作業の負荷も大きくなります。
連携が解決する3つの状態―二重入力・転記ミス・在庫と数字のタイムラグ
連携によって解消できる代表的な状態は3つあります。第一に、受注データをEC・基幹の両方へ手入力する二重入力です。第二に、転記の過程で生じる入力ミスや単位の取り違えです。
第三に、各システムの在庫数や売上数字がそろうまでの時間差です。連携が整えば、これらの手作業を自動化に置き換えられます。
「連携できないシステム」がレガシーと呼ばれる理由
経済産業省とIPAの「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年5月28日公表)は、技術が古いこと自体をレガシーの基準にしていません。デジタル技術の活用やデータ連携が可能で、仕様が明確であればレガシーには当たらないとしています*1。
裏を返せば、稼働年数が浅くても、他システムと連携できず仕様がブラックボックス化していれば、レガシー化の途上にあるといえます。この視点に立つと、連携への投資は「新しくするか」ではなく「つながる作りを保てているか」の問題として整理できます。
本記事は、基幹システムと周辺システム全体の連携を、企業全体のシステムレベルから解説します。特定の業務プロセス(卸売の見積受注管理など)に特化した業務別の記事とは異なり、経営方針の立案から現状把握・方式選定・実装・運用監視までの全体的な視点で、連携プロジェクトの進め方をカバーします。
なぜいま基幹システムの連携が課題になっているのか
ユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有している
IPAは「2024年度ソフトウェア動向調査」(回答企業799社)の結果を2025年2月27日に公開し、4月25日に更新しました*2。これを基にした前掲レポートによれば、業種業態を問わない516社の集計で61%が現時点でレガシーシステムを保有していると回答しています*1。
企業規模別に見た402社の内訳では、大企業では74%がレガシーシステムを保有すると回答しました*1。全産業の61%と企業規模別の74%は母集団が異なる集計のため、単純に比較はできません。
新しい技術を入れたくても連携や組み込みがスムーズに進まない
同レポートは、メインフレームを保有していた企業のうち52%が既に移行したと報告しています*1。一方で同レポートは、既存のレガシーシステムが足枷となり、生成AIなどの最新のデジタル技術を活用したくても、連携や組み込みがスムーズに進められない問題が起きていると指摘しています*1。
移行が一定程度進む一方で、レガシーが残る領域では新しい技術とつなぐこと自体が阻まれます。だからこそ、入れ替えて終わりにせず、周辺システムとつなぐ設計まで含めて整える必要があります。ここに、単なるリプレースと連携設計の違いがあります。
「2025年の崖」で語られる12兆円/年とは何の数字か
経済産業省は2018年公表の「DXレポート」で、レガシーシステムに起因する経済損失について推計しています。2025年以降、上限で12兆円/年(現在の約3倍)に達する可能性があるとしています*3。
この数値は、JUAS「企業IT動向調査報告書2016」が示した稼働年数の分布を踏まえた試算です*3。仮にこの状態が続いたまま2025年を迎えると、21年以上稼働するシステムの割合が約6割になる、という仮定に基づいています。実際の稼働年数の観測値ではなく、条件付きの推計である点に注意が必要です。
基幹システムの連携方式4種と選び方
ファイル連携(CSV・バッチ)―大量処理の安定性
CSVなどのファイルを定時に受け渡す方式です。大量データを一括処理でき、仕組みが単純なため構築負荷が軽い一方、処理タイミングのずれによって一時的な数字の差異が生じます。
データベース直接連携―速いが結合が強くなる
相手システムのデータベースへ直接読み書きする方式です。応答は速いものの、片方のデータベース構造を変更すると、もう一方にも影響が及びやすくなります。
API連携―リアルタイム性と疎結合
API(Application Programming Interface、システム間でデータをやり取りするための接続窓口)を介して連携する方式です。データベースへ直接触れないため結合が緩やかで、即時性が求められる受注反映などに向きます。
EDI連携―取引先とつなぐ(中小企業共通EDI標準)
EDI(Electronic Data Interchange、企業間で受発注データを電子的に交換する仕組み)は取引先との受発注に使われます。中小企業庁は、中小企業共通EDI標準の普及を進めており、業種を超えた規格統一を後押ししています*4。
【比較表】4方式の比較
| 連携方式 | リアルタイム性 | 初期構築の重さ | 運用・監視の負荷 | 向く業務 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファイル連携 | 低い(定時バッチ) | 軽い | 中(生成・取込の監視) | 大量データの一括処理 | タイミングのずれで一時的な差異が生じる |
| データベース直結 | 高い | 中程度 | 高い(相手側の改修に追随) | 同一ベンダー内の密な連携 | 構造変更が双方に影響する |
| API連携 | 高い | 中〜重い | 中(API監視・認証管理) | 即時性が必要な受注反映等 | 呼び出し先の仕様変更や障害の影響を受ける |
| EDI連携 | 中(バッチ〜準リアルタイム) | 重い(取引先との規格合わせ) | 中 | 取引先との受発注データ交換 | 取引先ごとの規格の違いを吸収する必要がある |
選び方の判断軸―「全部リアルタイム」にしない
全業務をAPI連携に寄せる必要はありません。大量データの一括処理はファイル連携に任せ、即時性が事業に直結する業務だけをAPI連携にする、という切り分けが現実的です。
何と何をつなぐのか―組み合わせ別の要点
基幹×EC―受注取込と在庫の反映
ECで受けた注文を基幹システムへ取り込み、在庫数を双方で一致させる連携です。反映が遅れると、在庫切れ商品の販売や二重受注につながります。
基幹×WMS・倉庫―出荷指示と実在庫の突合
倉庫管理システム(WMS)へ出荷指示を渡し、実在庫と突合する連携です。件数がまとまった出荷業務では、ファイル連携でまとめて渡す運用がよく使われます。
基幹×会計―締めと証憑の突合
受発注や入出金のデータを会計システムへ渡し、月次の締め作業で証憑と突合する連携です。手作業の転記が残っていると、締めの度に差異調査の工数が発生します。
基幹×取引先(受発注)―電子受発注の対応状況
中小企業庁の「令和3年度取引条件改善状況調査」(2021年)によれば、受注側で電子受発注に対応している企業は48.5%でした*4。取引先からEDIやAPIでの連携を求められる場面は今後も増える可能性があります。
連携プロジェクトの進め方4STEP
- STEP1 現行システムの全体把握
- STEP2 連携要件を決める
- STEP3 方式を選び、疎結合に設計する
- STEP4 テストと運用監視を設計する
STEP1 現行システムの全体把握―「全体システム構成図」で連携を洗い出す
IPAの「DX実践手引書 レガシーシステム刷新ハンドブック」は、現行ITシステムの全体把握を最初の工程に置いています*5。システム間の関係を示す全体システム構成図の作成手順を、段階別に示しています。連携を検討する前に、まずこの構成図で既存の接続関係を可視化する必要があります。
STEP2 連携要件を決める―対象データ・頻度・粒度・エラー時の扱い
次に、どのデータを・どの頻度で・どの粒度で受け渡すかを決めます。エラーが発生した場合にどう検知し、誰が対処するかも、この段階で取り決めておく事項です。
STEP3 方式を選び、疎結合に設計する
要件が固まった段階で、先に整理した4方式の中から適切なものを選びます。前掲レポートは、連携先との結びつきを弱め、互いの変更が影響しにくい疎結合な設計と、データ形式の統一を推奨しています*1。
STEP4 テストと運用監視を設計する―連携は「作った後」が本番
連携は稼働を開始した後こそが本番です。異常な件数のデータが流れていないか、処理が失敗していないかを継続的に監視する仕組みを、稼働前の設計段階で組み込んでおく必要があります。
連携でつまずく典型パターンと回避策
仕様がブラックボックス化している
長年の改修でドキュメントが更新されず、担当者しか仕様を把握していない状態です。前掲ハンドブックは、こうした状態からの仕様復元を段階的に進めるV字モデルの手順を示しています*5。いきなり全体を作り直すのではなく、範囲を区切って復元していく進め方です。
過剰なカスタマイズが再レガシー化を招く
前掲レポートは、刷新した後の移行先でも個別カスタマイズを重ねる傾向があると指摘しています*1。せっかく刷新しても、同じ作り方を繰り返せば数年後に再びレガシー化するおそれがあります。
マスタ・コード体系の不整合
商品コードや取引先コードの体系がシステムごとに異なると、連携時のデータ突合に手間がかかります。連携の失敗の多くは、方式選定以前のデータ設計の段階に原因があります。
個別接続を増やし続ける(点対点の増殖)
接続先が増えるたびに個別の連携を追加していくと、経路が複雑に絡み合い、1つの改修が他の接続に予期せぬ影響を及ぼしやすくなります。接続先が増える見込みがある場合は、個々の接続を都度組むのではなく、全体を見渡した設計から着手する価値があります。可視化した運用コストを自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。
自社で対応するか、外部に委託するか
内製で持てる範囲と、外注が向く範囲
要件定義や運用ルールの取り決めは、業務を理解する自社担当者が主体的に関わるべき領域です。一方で、現行システムの仕様復元や疎結合設計、複数方式にまたがる実装は、専門知識と工数を要する領域であり、内製だけで完結させるには相応の体制が必要です。
委託先を選ぶときに確認すべきこと
連携方式を最初から決め打ちせず、現状把握の工程を丁寧に踏む委託先かどうかは、確認しておきたい点です。以下に、確認する優先順を整理しました。
委託先を選ぶ際に確認する優先順4点/順位根拠:着手順序の依存関係
- 現状把握(全体システム構成図の作成)を独立した工程として持っているか。
- 連携方式を先に決めず、要件を確認したうえで選定するか。
- 疎結合設計とデータ形式の統一を提案に含めているか。
- 稼働後のテスト・運用監視まで設計範囲に含めているか。
まとめ:基幹システム連携を進める3つの判断軸
本稿では、基幹システムの連携について、方式の選び方から進め方の4STEPまでを整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、連携できる状態を保てているかどうかがレガシーかどうかの分かれ目であるという視点です。第二に、方式はファイル・DB直結・API・EDIの4つから業務の性質に応じて選ぶ必要があるという点です。第三に、進め方は現状把握から運用監視までの4ステップで、いきなり方式選定から入らないことが手戻りを防ぐという点です。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
基幹システムの連携にはどのくらいの期間がかかりますか?
期間は現行システムの規模と、現状把握がどこまで終わっているかによって大きく変わります。一律の目安を示すことは難しく、まずSTEP1の全体把握を終えてから見積もる進め方が現実的です。
古い基幹システムでも連携できますか?
技術が古いこと自体は連携の妨げになりません。経済産業省とIPAは、デジタル技術の活用やデータ連携が可能で仕様が明確であればレガシーではないとしています*1。稼働年数よりも連携可否と仕様の明確さが判断材料になります。
API連携とEDI連携は何が違いますか?
API連携はシステム間の接続窓口を介してリアルタイムに近い形でデータをやり取りする方式です。EDI連携は主に取引先との受発注データを電子的に交換する仕組みで、中小企業共通EDI標準のような業界規格に沿って運用します*4。
連携ツール(EAI・iPaaS)は必要ですか?
接続先の数や方式が増えるほど、個別に接続を組むよりも連携基盤を介したほうが管理しやすくなります。ただし接続先が少ない場合は、ファイル連携やAPI連携を個別に組む方法でも対応できます。
連携は一度作れば終わりですか?
終わりではありません。取引先のシステム変更や自社の業務変化に応じて連携内容も見直しが必要になるため、STEP4で設計した運用監視を継続することが前提になります。
- *1 出典:経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年5月28日)
- *2 出典:独立行政法人情報処理推進機構「2024年度ソフトウェア動向調査 調査結果データの公開」(2025年2月27日公開、2025年4月25日更新)
- *3 出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月7日)
- *4 出典:中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化(中小企業共通EDI標準を含む)」(令和3年度取引条件改善状況調査、2021年)
- *5 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX実践手引書 ITシステム構築編 レガシーシステム刷新ハンドブック」
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