◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- LINE公式アカウントには担当者設定・タグ付け・チャット内検索があり、少人数・少品目の受注ならこの範囲で回せる
- 無料範囲ではタグは1チャットに1個・種類5個までのため、進捗と取引先区分を両方タグで管理することはできない
- チャット内検索はメッセージを探す機能であり、注文データの集計・一覧化はできない
- 担当者が未設定のチャットは最初に返信した人が自動的に担当者になるため、注文受付時の明示的な設定が要る
- 外部の受発注システムと自動連携するにはMessaging APIの利用が前提で、個人アカウント向けの提供は原典に記載がない
目次

LINEでの受発注、電話・FAX対応と何が変わるのか
電話で受けた注文を書き取り、FAXの手書き文字を読み解き、メールの本文から品番と数量を拾って基幹システムへ入力する。
その繰り返しのなかで「取引先とはLINEでやり取りしているのだから、注文もそこで受けられないか」と考えるのは自然な発想です。
実際、LINE公式アカウントには担当者を割り当てる機能やタグ付け、チャット内のメッセージ検索があり、少人数・少品目なら受注のやり取りをそのまま記録として扱えます。
ただし注文データを集計したり、在庫や基幹システムへ自動で流し込んだりする機能は備わっていません。
外部の受発注ツールとつなぐならMessaging APIの利用が前提になります。
分かれ目は機能の良し悪しではなく、自社の注文件数・商品点数・対応人数で、手作業の記録管理をどこまで続けられるかという一点です。
「記録が最初から文字になっている」ことの意味
電話受注とLINE受注のいちばん大きな違いは、注文内容が最初から文字として残るかどうかです。
電話では、相手が話した品番・数量・希望納期を担当者が聞き取り、メモに書き、そこから受注伝票や基幹システムへ入力します。
この「耳で聞いて手で書く」工程に、聞き間違いと転記漏れが入り込みます。
LINEの場合、取引先が打ち込んだ文字がそのまま画面に残るため、聞き取りの段階での誤りは起きません。
後から「先週の注文、何て言っていましたか」と確認するとき、記憶やメモではなくトーク履歴を見に行けます。
FAXやメールと比べて楽になる部分、変わらない部分
FAXは紙として残りますが、手書き文字の判読や、注文書のフォーマットが取引先ごとに違うという問題が残ります。
メールは文字で残る点でLINEに近いものの、件名や本文の書き方が相手任せになりやすく、注文なのか問い合わせなのか判別しにくい場合があります。
LINEはチャットである分、やり取りの往復が軽く、「この品番、在庫ありますか」「あります、何個ですか」といった確認が短時間で済みます。
受注前の相談から確定までを一本の流れで扱える点は、電話やFAXにはない性質です。
ただし、楽になるのは「受け取る」ところまでで、その先は変わりません。
LINEで受けた注文も、最終的には受注伝票や在庫引当、出荷指示へつなぐ必要があります。
チャットの文字を誰かが読んで別の画面へ入力する作業は、電話やFAXのときと同じように残ります。
むしろ、文字が残っていることで「あとで入力すればいい」と後回しにしやすく、入力漏れという別の形の抜けが生まれることもあります。
LINE受発注は二つの運用に分かれる
「LINEで受発注」と一口に言っても、中身は大きく二つに分かれます。
ひとつはLINE公式アカウントのチャット画面をそのまま受注窓口として使い、人が読んで処理する運用。
もうひとつは、Messaging APIを介して外部の受発注システムとつなぎ、注文データの受け渡しを仕組み化する運用です。
この二つは、必要な準備も、記録管理にかかる手間も、対応できる規模もまったく違います。
どちらを選ぶかで、日々の業務で何が減り何が残るかが変わります。
LINE公式アカウントをそのまま使う場合にできること・できないこと
担当者設定とタグ付けでできる管理
LINE公式アカウントのチャット機能には、個々のトークルームに担当者を割り当てる機能があります1。
「この取引先は営業の誰々が見る」と決めておけば、複数人で管理画面を開いていても対応の重複を減らせます。
あわせて、トークルームにタグを付けることもできます。
「対応中」「出荷済み」といった状態を表すタグを運用すれば、未処理の注文が埋もれるのをある程度防げます。
タグと担当者設定は、言い換えれば「チャットの一覧を、注文管理の一覧に近づける」仕組みです。
注文が一日数件で、扱う商品も定番品が中心という段階なら、この範囲で回せる可能性は十分にあります。
無料プランのタグ上限は1個、種類は5個まで
ただしタグには上限があります。
無料の範囲では、ひとつのチャットに追加できるタグは1個まで、作成できるタグの種類は最大5個までです1(2026年時点の仕様。
有料のチャットProオプションではそれぞれ上限が拡大します)。
この数字は、運用設計にそのまま効いてきます。
タグが1チャットに1個しか付かないということは、「対応中」と「至急」を同時に表すことができないという意味です。
状態を表すタグを使えば取引先の区分には使えず、取引先区分に使えば進捗管理には使えません。
種類が5個までという制限も、たとえば「受付」「確認待ち」「出荷準備」「出荷済み」「請求済み」と並べれば、それだけで埋まります。
ここに「初回取引先」や「要与信確認」といった別の軸を足す余地はありません。
つまり無料プランのタグは、注文の進捗を細かく分類する道具としては使えません。
使うなら軸を一つに絞り、他の情報はチャットの文面そのもので判断する前提に立つことになります。
チャット内検索でできること・できないこと
過去のやり取りを探すときは、チャットルーム内のメッセージ検索が使えます1。
特定の取引先とのトークを開いて品番で検索すれば、その品番をいつ注文したかを追えます。
ここで区別しておきたいのが、「データが残っていること」と「データを処理できること」の違いです。
チャットには注文の文字列が確かに残っています。
しかしチャット内検索は、メッセージを探すための機能であって、注文データを集計・一覧化する機能ではありません1。
「今月、A商品は全取引先で何個出たか」「先月と比べて注文件数はどう変わったか」といった問いに、チャット画面から直接答えることはできません。
答えを出したければ、担当者がトークを一つずつ開いて数え、別途集計表へ書き写す必要があります。
この差は、注文件数が増えるほど効いてきます。
月に十数件なら数えられますが、取引先が数十社になり、それぞれが週に何度も注文してくるようになると、手作業の集計は現実的でなくなります。
LINE公式アカウントをそのまま使う運用の限界は、機能が足りないというより、人が数える前提の仕組みだという点にあります。
受発注ツールと連携させる場合の仕組み(API連携の基本)
Messaging APIで外部システムと連携する仕組み
LINE公式アカウントを外部の受発注システムとつなぐときに使うのが、Messaging APIです。
APIというのは、システム同士がデータをやり取りするための決められた窓口を指します。
Messaging APIの場合、事業者側が用意したサーバー(ボットサーバー)とLINEプラットフォームとの間で、HTTPSという通信方式とJSONという形式でデータを受け渡しできます3。
具体的な流れとしては、取引先がLINEでメッセージを送ると、その内容がLINEプラットフォームから事業者側のサーバーへ届きます。
サーバー側でその内容を処理し、返信をLINEプラットフォームへ送り返すと、取引先の画面に表示されます。
この経路があることで、「注文内容を受け取ったら受注データとして登録し、受付番号を自動で返信する」といった処理を組み立てる余地が生まれます。
担当者がチャットを読んで別画面へ入力する工程を、仕組みの側に寄せていけるわけです。
ここで正確に押さえておきたいのは、Messaging APIが提供しているのはあくまでデータをやり取りする経路だという点です3。
注文を解釈して在庫を引き当てる処理そのものは、事業者側のサーバーや連携先の受発注システムが担います。
APIをつなげば自動的に受発注業務が回るのではなく、受け取ったデータをどう扱うかは別に用意する必要がある、という順序です。
なお、Messaging APIはLINE公式アカウントを前提とした仕組みです3。
個人のLINEアカウント向けにMessaging APIが提供されているという記載は、開発者向けドキュメントには見当たりません。
個人アカウントで受注を受けている場合、外部システムとの自動連携を考える段階では、まず公式アカウントへの切り替えが出発点になります。
複数端末・複数人での同時対応
連携の話の前段として、そもそも複数人で対応できるのかという疑問があります。
LINE公式アカウントは複数の端末から同時にログインでき、本部と店舗のように複数人が同一アカウントで並行して対応することが可能です2。
個人のLINEアカウントを一台の端末で回している状態と比べると、この点は大きな違いです。
加えて、店舗ごとにアカウントを分け、各店舗のスタッフが直接対応するという運用例も紹介されています2。
受注の窓口を拠点や部門で分けたい場合、アカウントそのものを分割するという選び方もあるということです。
ただしアカウントを分ければ、注文情報も分かれた場所に溜まります。
全社で在庫や売上を把握したいなら、分けた先をどこかで束ねる必要が出てきます。
注文の聞き間違い・記録漏れを防ぐために必要な運用ルール
担当者の自動アサインに注意する
複数人でチャット対応をする場合、思わぬところで担当が決まってしまう仕様があります。
担当者が未設定のチャットでは、最初にそのチャットへメッセージを送信したメンバーが自動的に担当者として設定されます1。
一見すると便利な仕様ですが、運用によっては困ることがあります。
たとえば、本来の担当者が外出中に、別のメンバーが「確認して折り返します」と一言返したとします。
その瞬間、そのメンバーが担当者になります。
本来の担当者が戻ってきたとき、自分の担当一覧にその注文が出てこなければ、対応が止まったまま気づかれない状態が生まれます。
防ぐ方向は二つあります。
ひとつは、注文が入った時点で明示的に担当者を設定してしまうこと。
もうひとつは、一次返信を誰がするかをあらかじめ決めておき、その後で担当者を付け替える手順を決めておくことです。
どちらにせよ、「自動で決まる」仕様を知らないまま運用を始めると、担当の所在が曖昧なチャットが混ざります。
人数が増えるほど、この曖昧さは事故に近づきます。
注文内容の確認・訂正の機会を設ける
チャットで注文を受けるとき、もう一つ考えておきたいのが、注文内容の確認をどう挟むかです。
参考になる考え方として、インターネットを利用した通信販売では、最終確認画面で申込み内容を表示することが定められています(特定商取引法第15条の3ただし書、省令第44条)4。
消費者が申込み直前に、何をいくつ、いくらで注文するのかを確認し、訂正できる機会を設けるという趣旨です。
この規定は、インターネットを利用した通信販売の申込み全般を対象としたものです。
LINEでのチャット注文にそのまま適用されると明記した記載は、消費者庁のガイド上には見当たりませんでした4。
事業者間の取引か消費者向けの販売かによっても、法令上の扱いは変わります。
自社の取引がこの規定の対象になるかは、実際の取引形態に照らして専門家に確認してください。
ただし、法令の適用可否とは別に、実務として学べることがあります。
チャットでのやり取りは、「〇〇を3つ」「了解しました」で成立してしまいがちです。
このとき、担当者が理解した品番・数量・納期が、取引先の意図と一致しているかを確かめる工程がありません。
受注を確定する前に、担当者側から「品番◯◯、数量3、納期◯月◯日で承ります」と内容を書き出して返信し、取引先の同意を得る。
この一往復を運用ルールとして決めておけば、確認の記録がチャットに文字として残ります。
電話受注での復唱にあたる工程を、チャットでも省かないということです。
この確認返信は、あとで注文内容に食い違いが生じたときにも効きます。
取引先の最初のメッセージが曖昧でも、確認返信とそれへの返答が残っていれば、どの時点で何が合意されたかを示せます。
チャットが記録として役立つのは、やり取りが残るからではなく、確定した内容が特定できる形で残るからです。
LINE公式アカウントをそのまま使う運用は、担当者設定・タグ・チャット内検索の範囲で少人数・少品目の受注を回せます。
一方で注文データの集計や自動処理はできず、外部システムとつなぐにはMessaging APIの利用が前提になります。
どちらが自社に合うかは、注文件数・商品点数・対応人数がどの段階にあるかで決まります。

LINEをそのまま使えるかどうかは、機能の一覧を眺めても答えが出ません。自社の注文件数、商品点数、対応する人数を並べて初めて、手作業の記録管理がどこまで保つかが見えてきます。
商品点数が多い卸売業の受発注を実際に支援してきた立場から、今の受注の流れを伺ったうえで、どの作業が仕組み側に寄せられ、どの判断が人に残るのかを整理してお伝えします。無料相談で要件を整理する
LINEでの受発注を、規模の面から見分ける
注文件数・商品点数・対応人数がどの段階にあるかという規模の軸で並べています。
- 注文が一日数件で、対応する担当者も一人か二人:チャットの担当者設定とタグで所在を管理できる範囲
- 扱う商品が定番品中心で、品番の取り違えが起きにくい:チャットの文面をそのまま受注内容として扱える範囲
- 取引先ごとの注文履歴を、月に数回さかのぼれば足りる:チャット内検索で対応できる範囲
- 注文件数や取引先が増え、商品別・期間別の集計が必要になった:チャット画面では答えを出せない領域
- 複数拠点・複数担当で同じ注文を扱う:アカウント分割か、外部システムでの一元管理を検討する領域
- 在庫や基幹システムへの反映を自動化したい:Messaging APIによる連携が前提になる領域
上の三つに当てはまるうちは、そのまま使う運用で足ります。下の三つが自社の課題になってきたら、外部ツールとの連携か専用システムへの移行を検討する段階です。
注文数・商品数が増えたとき、LINE運用のままで対応できる範囲
| 運用の型 | 向いている状況 | 判断の基準 |
|---|---|---|
| LINE公式アカウントをそのまま使う | 注文件数・商品点数が少なく、担当者も少人数。チャットのやり取りをそのまま記録として扱える段階 | 担当者設定とタグ(無料範囲で1チャット1個・種類5個まで)、チャット内検索の範囲で注文管理が追いつくか |
| 外部の受発注ツールとAPI連携させる | 注文件数・商品点数が増え、複数人での対応や注文データの一元管理が必要になった段階 | Messaging APIによる外部システム連携、または専用の受発注システムへの移行を検討する必要があるか |
複数アカウント運用で広げられる範囲と、その先の壁
1ビジネスIDあたり100個までアカウントを作れる
注文が増えてきたとき、まず考えられるのがアカウントを分ける方法です。
LINE公式アカウントは、ひとつのビジネスIDにつき最大100個まで作成できます2(2026年時点)。
拠点ごと、商品カテゴリごと、取引先の区分ごとにアカウントを分けるという運用は、数の上では十分に成り立ちます。
分割の利点は、一つのチャット一覧に流れ込む量を抑えられることです。
全社で一つのアカウントを使っていると、営業所Aへの問い合わせと営業所Bへの注文が同じ画面に混在します。
分ければ、各担当者は自分が見るべきチャットだけを見られます。
無料範囲のタグが1チャットに1個しか付かない制約も、アカウントを分けることで「そのアカウント内では取引先区分は自明」という状態を作れば、タグを進捗管理に振り向けられます。
ただし分割は、管理する場所を増やす行為でもあります。
アカウントが10個あれば、ログイン管理も10通り、メンバー権限の設定も10通りです。
どのアカウントにどの注文が入ったかを全体で把握したければ、結局は誰かが横断して集計することになります。
もう一点、アカウントを分けても解決しないことがあります。
注文データの集計や在庫との連携の仕組みは、アカウントを何個作っても備わりません1。
100個という上限は「窓口をいくつ持てるか」の上限であって、「注文を何件処理できるか」の答えではないのです。
手作業の記録管理が保たなくなる地点
では、どこで限界が来るのか。
件数の閾値を示した資料は確認できていませんが、限界が現れる形はいくつか予測できます。
ひとつは、同じ品番の注文が複数の取引先から同時に入ったとき。
チャットは取引先ごとに分かれているため、在庫の取り合いが起きていることに気づけません。
誰かが在庫表を見ながら手で引き当てない限り、二重に受けてしまいます。
もうひとつは、商品点数が増えたとき。
取引先が「いつものやつ」と書いてきた場合、担当者の記憶か、過去のチャットをさかのぼる作業に頼ることになります。
品番が似た商品が並ぶほど、取り違えの確率は上がります。
三つ目は、担当者が休んだとき。
担当者設定で割り当てられたチャットは、その人が見るものとして運用されています。
急な不在で別の人が引き継ぐとき、その取引先の注文の癖や未処理の状態は、チャットを頭から読んで把握するしかありません。
これらはいずれも、「文字として残っている」ことでは解決しません。
解決するには、注文を取引先横断で並べ、商品別に集計し、在庫と突き合わせる仕組みが要ります。
そこがLINEをそのまま使う運用の境界線です。
商品点数が多い事業者は、どう移行したか
約2万点の商品を扱う卸売業の例
商品点数が多い状態で、電話・FAX・メール中心の受注をどう変えたか。
参考になる例があります。
欧州を中心にスポーツ自転車部品を輸入・卸売する株式会社ポディウムでは、導入前は電話・FAX・メールで注文を受け、それを手入力する作業が中心でした6。
受発注サイトへの移行にあたり、登録した商品点数は約2万点にのぼります6。
この規模になると、取引先が品番を指定する場面でも、担当者が在庫を確認する場面でも、記憶や検索では追いつきません。
商品マスタを持ち、取引先が画面上で商品を選んで注文する形にすることで、品番の取り違えと手入力の両方を減らす方向に進んだ例だと言えます。
なお、この事例はLINEでの受発注運用そのものの事例ではありません。
自転車部品の卸売業という業種、商品点数約2万点という条件下での実績であり、他の業種や規模にそのまま当てはまるものでもありません6。
ここで参考になるのは削減量の数字ではなく、「商品点数が一定を超えると、注文の受け取り方そのものを変える判断が要る」という筋道のほうです。
移行を検討する材料と、残る作業
外部ツールとの連携や専用システムへの移行を考えるとき、検討材料になるのは次のようなところです。
まず、商品マスタを整備できるか。
取引先が画面から商品を選ぶ形にするには、品番・商品名・価格・在庫の情報を揃える必要があります。
ポディウムの例でも、約2万点あった商品登録を精査する作業が発生しています6。
既存の商品データが紙やExcelに散らばっている場合、この整備が最初の山になります。
次に、取引先が新しい方法を使ってくれるか。
LINEでの注文が定着している取引先に、別の画面へ移ってもらうには説明と移行期間が要ります。
すべての取引先が一斉に移るとは限らず、しばらくはLINEと新しい仕組みが併存する期間が生まれます。
そして、自動化しても人が見る部分は残ります。
Messaging APIで注文データを外部システムへ渡せるようになっても3、在庫が足りないとき、納期の相談があるとき、いつもと違う数量が来たときの判断は人が担います。
連携で減るのは転記の作業であって、判断の作業ではありません。
この区別をつけずに導入すると、「自動化したはずなのに手間が減らない」という感覚になります。
LINEで注文情報をやり取りする際の個人情報の注意点
ガイドラインで禁止されていること
LINEで注文を受けると、氏名・住所・電話番号といった個人情報がチャットに流れます。
事業者間の取引でも、配送先が個人宅であれば同じです。
LINE公式アカウントガイドラインでは、第三者の個人情報、登録情報、利用履歴情報などを不正に収集、開示または提供する行為が、禁止事項として定められています5。
未認証・認証済みを問わず、公式アカウントの運用者に共通して適用される規定です。
注意したいのは、この規定が「不正な収集・開示・提供」を禁じているという点です。
正当な取引のために必要な範囲で注文者の情報を受け取ること自体が禁じられているわけではありません。
問題になるのは、目的の範囲を超えて集めること、本人の同意なく第三者へ渡すことのほうです。
同意取得の手続きは、事業者側で定める必要がある
では、どうやって同意を取ればよいのか。
ここは、ガイドラインを読んでも答えが出ませんでした。
個人情報を取得する際の同意取得の具体的な手続きを定めた条項は、LINE公式アカウントガイドラインには見当たりません5。
つまり、同意取得の方法は事業者側で決める領域です。
個人情報保護法をはじめとする一般的な法令に沿って、利用目的をどこで示すか、どのタイミングで同意を得るかを自社で設計することになります。
LINEというチャネルを使っているから特別な手続きが要る、あるいは不要になる、という関係ではありません。
実務として考えておきたいのは、次のような点です。
アカウントの友だち追加時や、初回の注文受付時に、取得する情報と利用目的を伝える機会を設けているか。
担当者の個人端末にトーク履歴が残る運用になっていないか。
退職や異動でメンバーが外れるとき、アカウントへのアクセス権を確実に外す手順があるか。
チャットは手軽なぶん、情報が担当者個人の手元に留まりやすい性質があります。
管理画面へのアクセス権限と、実際に情報を見られる人の範囲を一致させておくことが、扱いを整える出発点です。
具体的な同意取得の文面や手順は、自社の取引形態に合わせて法務や専門家と詰めてください。
そのまま使う運用と外部ツール連携、どちらを選ぶか
比較の軸は「記録の正確性をどこまで人が担えるか」
ここまでの内容を、選ぶ側の視点で整理します。
LINE公式アカウントをそのまま使う運用で得られるのは、担当者設定・タグ付け・チャット内検索という範囲の受注管理です1。
これらはいずれも、人が見て、人が判断し、人が処理することを前提にした機能です。
注文が少なく担当者も限られていれば、この前提は成立します。
外部の受発注ツールとの連携で得られるのは、注文データが処理可能な形で残ることです。
Messaging APIを使えば、ボットサーバーとLINEプラットフォームの間でHTTPS・JSON形式のデータをやり取りできます3。
データがシステム側に渡れば、集計も在庫との突き合わせも、仕組みとして行えます。
この二つの違いを一言にすると、記録の正確性を人の注意力で担保するか、仕組みで担保するかの差です。
どちらが優れているという話ではなく、自社の注文量に対して人の注意力が保つかどうかが判断の中身になります。
判断のポイント
具体的に自社を見るとき、次の問いに答えてみると位置がつかめます。
ひとつ。
今週入った注文を、商品別に集計してくださいと言われたら、何分で出せますか。
チャットを開いて数えるしかないなら、その作業時間は注文件数に比例して増えます。
今は耐えられても、件数が二倍になったときに同じ作業を続けられるかを考えてみてください。
ふたつ。
担当者が一人休んだとき、その人が抱えていた注文の状態を、別の人がどれだけの時間で把握できますか。
チャットを頭から読む必要があるなら、それは属人化しているということです。
担当者設定は誰が担当かを示しますが、何がどこまで進んだかまでは示しません。
みっつ。
同じ商品に複数の取引先から注文が入ったとき、在庫の重複引当をどう防いでいますか。
チャットが取引先ごとに分かれている以上、横断的な在庫の状態はチャットの外にあります。
そこを人が突き合わせているなら、その突き合わせが抜けたときが事故です。
この三つのどれかに詰まるなら、そのまま使う運用は限界に近づいています。
逆に、いずれもすぐ答えられる規模なら、今すぐシステムを入れる必要はありません。
LINEでのやり取りを丁寧に運用しながら、注文件数の推移を見ておけば十分です。
なお、移行を判断する件数や担当者数の明確な閾値は、確認できた資料の中にはありませんでした。
ここで示した判断のポイントは、確認できた仕様と事例から編集部として整理したものです。
自社の業務に当てはめるときは、実際の作業時間を一度測ってみることをおすすめします。
感覚で「まだ大丈夫」と思っている作業が、実は毎日30分を食っていたという例は珍しくありません。

要点の整理
| 判断の軸 | 見極めの基準 |
|---|---|
| 注文件数 | チャットを開いて数える集計が、今後の件数でも現実的な時間で終わるか |
| 商品点数 | 品番の取り違えを担当者の記憶と検索で防げる範囲に収まっているか |
| 対応人数 | 担当者が不在のとき、別の人がチャットを読むだけで状況を把握できるか |
| 在庫との突き合わせ | 複数取引先からの同一商品の注文を、人が突き合わせて防げているか |
| 連携の前提 | 外部システムとつなぐなら、LINE公式アカウントとMessaging APIの利用環境が用意できるか |
移行を考える段階でつまずきやすいのは、商品マスタの整備と、取引先に新しい方法を使ってもらう進め方です。ここは自社だけで見積もると、必要な工数を読み違えやすいところです。 扱っている商品の数と取引先の状況を伺えば、マスタ整備にどれだけの手間がかかり、移行期間に何が併存するのかを具体的に見立てられます。今の運用を続ける選択肢も含めて、判断材料を揃えるところからご相談いただけます。
よくある質問
LINEでの注文にキャンセルや変更があった場合、履歴はどう残せばよいですか
チャットのやり取り自体は残りますが、最新の注文内容がどれかは文面からは判別しにくくなります。
変更やキャンセルの連絡を受けたら、担当者側から「◯月◯日にご注文の品番◯◯、数量3を、数量5へ変更で承ります」と確定内容を書き出して返信し、それを最新の合意として扱う運用を決めておくと、後からたどれます。
チャット内のメッセージ検索は使えますが1、変更前後のどちらが有効かを自動で判定する機能はありません。
変更が頻繁に起きる取引なら、注文の版を管理できる仕組みを持つほうが安全です。
複数の担当者がいる場合、誰が対応したかを後から確認する方法はありますか
LINE公式アカウントのチャットには担当者設定機能があり、トークルームごとに担当者を割り当てられます1。
ただし担当者が未設定の場合は、最初にそのチャットへメッセージを送信したメンバーが自動的に担当者になります1。
本来の担当者ではない人が先に返信すると、意図しない割り当てが起きます。
注文が入った時点で明示的に担当者を設定する、あるいは一次返信の後に付け替えるという手順を決めておいてください。
LINE公式アカウントの無料プランのままでも受発注の運用は始められますか
担当者設定、タグ付け、チャット内メッセージ検索といった機能は使えるため、始めること自体は可能です。
ただし無料範囲ではタグは1チャットに1個まで、作成できるタグの種類は最大5個までという制限があります1(2026年時点。
チャットProオプションでは上限が拡大します)。
進捗と取引先区分を両方タグで管理することはできないため、軸を一つに絞る前提で設計する必要があります。
無料プランにはメッセージ配信数の制限もあるため、配信も含めて運用するなら現行のプラン内容を確認してください。
受発注専用システムに切り替える場合、LINEでのやり取り履歴を引き継ぐことはできますか
チャットの履歴をそのまま注文データとして専用システムへ移す仕組みは、確認できた資料の範囲では見当たりません。
チャット内検索は過去のメッセージを探す機能であって、注文データとして書き出す機能ではないためです1。
現実的には、切り替え時点で必要な情報(取引先ごとの取引条件、定番品の品番、価格など)を整理して新しいシステムのマスタへ登録し、過去のチャットは参照用として残す形になります。
商品点数が多い場合、このマスタ整備に相応の工数がかかります。
約2万点の商品を扱う卸売業の例でも、登録内容を精査する作業が発生しています6。
個人のLINEアカウントで受注を受け付けるのは問題ありませんか
個人アカウントでの受注可否について、規約上の明確な線引きを示した記載は、確認した資料の範囲では見当たりませんでした。
契約上の判断は利用規約の内容に照らす必要があります。
一方、実務上は複数の制約がはっきりしています。
担当者設定やタグ付けといったチャット管理の機能は公式アカウントのものであり1、複数端末からの同時ログインによる複数人対応も公式アカウントの仕様です2。
また、Messaging APIは公式アカウントを前提とした仕組みで3、個人アカウント向けに提供されているという記載は開発者向けドキュメントにはありません。
担当者個人の端末だけに注文履歴が残る状態は、退職や異動のときに情報を引き継げないという問題も抱えます。
受注に使うなら公式アカウントへの切り替えが出発点です。
取引先が多い場合、アカウントを分けたほうがよいですか
LINE公式アカウントは1つのビジネスIDにつき最大100個まで作成でき2、店舗ごとにアカウントを分けて各店舗のスタッフが直接対応するという運用例も紹介されています2。
拠点や部門で対応が完結するなら、分割は有効です。
ただし分ければ管理する場所も増え、全社での注文集計は横断して手作業で行うことになります。
分割で解決するのは窓口の混雑であって、データの集計や在庫連携ではありません。
全体を一つの表で把握したい段階にあるなら、分割より連携や移行を検討する時期です。
- 1 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント マニュアル(チャット)」(2026年)
- 2 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント複数作成&運用ガイド(LINEヤフー for Business コラム)」(2026年)
- 3 出典:LINEヤフー株式会社「LINE Messaging API概要(開発者向けドキュメント)」(2026年)
- 4 出典:消費者庁「特定商取引法ガイド 通信販売」(2026年)
- 5 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウントガイドライン」(2026年)
- 6 出典:株式会社フライトソリューションズ(EC-Rider B2B)「導入事例 株式会社ポディウム様」(2025年)
画像の出典元
- Close-up view of surgeons in an operating room performing a/Photo by Stéf -b. on Pexels
- Abstract green render of transparent geometric glass panels./Photo by Insaanu Studio on Pexels
- A diverse group of coworkers collaborating around a table in/Photo by RDNE Stock project on Pexels