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LINE受発注の導入|仕組み・手順・法対応の要点

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 窓口は三つの方式から選べます。トーク運用は初期の費用を抑えられ、入力フォームは項目がそろい、API連携は転記が消えます。
  • 注文のやり取りが注文書に当たる場合は電子取引データとして保存し、取引年月日・取引金額・取引先の三項目で探せる状態を保ちます。
  • 委託取引で注文内容を電子で伝える際の扱いは、2026年から施行される法律で改まります。施行前後のどちらを前提にするかを社内で決めます。
  • 費用は公表されている三つの料金プランと、無料通数を超えた分の従量、そして社内の手数の合計で見積もります。

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LINE受発注とは何か

LINE受発注とは、メッセージアプリの公式アカウントを注文の窓口にして、注文の受け取りから確認、出荷連絡までを同じトーク画面で進める受注のやり方です。取引先は新しいアプリを入れずに済み、受注側は届いた内容をデータとして残せます。電話とFAXをやめるための道具ではありません。国内の月間利用者数が1億人を超えたと公表されている連絡手段を窓口に据え、口頭と紙に頼っていた部分を減らす取り組みだと捉えると、判断の材料がそろいます*8

トーク画面での受注は四つの段階で進みます。注文受付では取引先が品番と数量を送り、内容確認では受注担当が確認の返信をします。続く在庫引き当てでは確認が済んだ内容を販売管理へ渡し、最後の出荷連絡では出荷予定日を同じ画面へ返すため、取引先は電話をかけずに状況をつかめます。
トーク画面で回る受注から出荷連絡までの流れ

仕組みは三つの部品でできています。ひとつ目は注文の窓口になる公式アカウントで、取引先はここを友だちとして登録します。ふたつ目は注文の内容を受け取る入力の画面であり、トークの文章そのままか、選択式の入力欄かで形が変わります。三つ目は受け取った内容を残す保存先で、販売管理システムや台帳がこれに当たります。三つのうちどれを外部の仕組みに任せるかで、費用と手間の配分が決まります。

送受信の土台は、公式アカウント向けに公開されている接続の仕様です。届いたメッセージを自社の処理へ知らせる通知と、こちらから送る二通りの送信方法が用意されています9。2026年時点で公開されている仕様では、こちらから送る際に1回の送信リクエストへ最大5件のメッセージオブジェクトをまとめられます9。前者は注文の受け取りに、後者は受注内容の確認や出荷連絡に使います。仕様が公開されているため、自社の販売管理と接続する余地が残されている点は押さえておきたいところです。

電話とFAX、メールとの違いは、記録の残り方に表れます。電話は聞き間違いが起きても後から確かめる手立てがなく、担当者の手控えに頼りがちです。FAXは紙が残るものの、数量や品番を人が読み取って入力し直す手間が消えません。メールは記録が残りますが、件名や本文の書き方が取引先ごとにばらつき、必要な項目を探す時間がかかります。トーク画面のやり取りは時系列に並び、送信した本人と時刻が一緒に残る点が違いです。

受発注システムやEDIとの関係は、代わりではなく手前の窓口という位置づけです。EDI(企業間で注文データを決まった形式でやり取りする仕組み)は、送り手と受け手の双方が同じ形式を扱える場合に力を発揮します。導入には取引先側の準備が要り、取引量の少ない相手ほど負担が見合いません。メッセージアプリを窓口に据える案は、その負担を取引先に求めずに電子化を進める道と言えます。

便利な入口である一方で、電子にすれば書類の保存が自動的に片づくわけではありません。トーク画面のやり取りが注文書に当たる場合、電子取引のデータとして保存する義務がかかります3。この義務は、2023年(令和5年)12月31日をもって宥恕措置が終わり、2024年(令和6年)1月1日から本格的に適用されています3。保存すべき期間は原則として7年間であり、注文の記録が数か月で消える運用は認められません*3。どの取引をこの窓口に載せるかを決める段階で、保存と法令の確認まで一緒に進める必要があります。窓口を開けてから要件を知ると、記録の取り直しという後戻りが生じます。

窓口をひとつ増やすという捉え方をすると、判断の順序が見えてきます。まず、どの取引を載せるかを決めます。次に、載せた注文をどこに残すかを決めます。最後に、残した記録が保存の要件を満たすかを確かめます。この三つの順序を守れば、後から入力の方式を差し替えても手戻りは小さく収まるでしょう。

導入前に片づける確認5点(順位根拠:着手の順序)

  1. 窓口に載せる取引を決めます。品目が定番であること、数量以外に変わる項目が少ないこと、承認が一段で済むことという三つの条件で選びます。
  2. 商品マスタを整えます。現場で使う略称や旧品番と、台帳の品番をつなぐ対応表を用意しておかないと、注文の文面と在庫が突き合わせられません。
  3. 保存の要件を確かめます。注文書に当たるやり取りは電子取引データとして残し、取引年月日・取引金額・取引先の三項目で探せる状態にします。
  4. 明示事項の扱いを決めます。委託取引で注文内容を電子で伝える際の扱いは2026年から施行される法律で改まるため、どちらを前提にするかを社内で定めます。
  5. 権限と受付時間を決めます。アカウントを操作できる人と配信だけができる人を分け、何時までの注文を当日扱いにするかを案内文に書きます。

LINE受発注の導入が広がる背景

導入の方式は三つあり、注文の件数が伸びた段階で順に移れます。トーク運用は、トーク画面で注文を受け、受注担当が読み取って販売管理へ入力する方式です。入力フォームは、トーク画面から専用の入力画面を開いて注文を受けるため、届いたデータの形がそろいます。API連携は、届いた注文を接続の仕様に沿って販売管理へ渡し、受注データが自動で起票される方式です。
注文の件数に応じて選ぶ三つの導入方式の違い

導入が広がる背景には、連絡手段の普及と、受注と発注の双方に残る手作業があります。国内の月間利用者数は1億人を超えたと公表されており*8、取引先の担当者がすでに毎日開いている画面を窓口にできます。専用のシステムを配る案と比べ、相手に新しい操作を覚えてもらう場面が減ります。加えて、紙と口頭に頼る受注が抱える転記の手間と、時間外の注文への対応が電子化を後押ししました。三つの流れが重なり、窓口の選び直しが現実の課題になっています。

普及の度合いは公的な調査で確かめられます。通信利用動向調査をまとめた白書では、SNSを利用する人の割合が個人で八割を超えました1。この白書は2025年に公表された令和7年版であり、もとになっているのは令和6年(2024年)の通信利用動向調査です1。世帯や個人の利用状況は、2025年に公表された同じ調査の報道資料でも確かめられます*2。年代の幅も広がり、業務の担い手が私生活で毎日触れている画面になりました。取引先の担当者に操作を教える手数が小さく済むのは、この日常性によるものです。

取引先の側から見ると、発注は本業の合間の作業にすぎません。専用のWeb発注画面を用意しても、IDとパスワードの管理や画面の覚え直しが負担になり、電話へ戻ってしまう例が実務で見られます。トーク画面であれば、注文の履歴は相手の手元にも残ります。前回の注文をなぞって送れるため、品番の書き間違いが起きにくくなるでしょう。

受注側の負担は、聞き取りと転記に集中します。電話は担当者の時間を拘束し、応対中は他の作業が止まります。手書きの控えを販売管理へ入力し直す工程では、数量の桁や品番の読み取り違いが混入します。誤って出荷すれば、返品と再出荷の運賃、在庫の差異の調整まで波及するでしょう。窓口を電子にする動機は、この波及を減らすところにあります。

制度の側も電子でのやり取りを前提に動いています。電子取引でやり取りした注文書や請求書は、電子データのまま保存することが求められます3。委託取引の注文内容を電子で伝える扱いも整理が進み、2026年からは中小受託取引適正化法の下で運用されます4。同法の施行日は2026年1月1日です4。対象となる取引の切り分けには、製造委託等について資本金3億円超と資本金1,000万円超という二つの資本金の区分が用いられ、これに加えて2025年の改正では、製造委託等で従業員300人、役務提供委託等で従業員100人という従業員数の基準が新たに置かれました4。手形による支払の禁止など、取引条件そのものに関わる変更も同じ時期に効いてきます6。手形による支払の禁止が適用されるのも2026年1月1日からです6。紙に戻す前提が薄れた分、最初から電子で受ける窓口の値打ちが上がりました。

企業側の取り組みも進んでいます。国内企業のデジタル化の取り組み状況を継続して調べた調査では、取り組む企業の割合が年ごとに高まっています*7。ただし、全社の基幹システムを入れ替える案は費用も期間も大きく、中小の受注現場では手が出ません。窓口だけを先に電子にする進め方は、その間を埋める選択肢になり得ます。

背景を整理すると、取引先に負担をかけずに電子化できる点が支持されています。普及した連絡手段を使うため、教育にかかる手数が小さく収まります。紙と口頭を残したまま並行して動かせるため、合わなければ元へ戻せます。この戻しやすさが、最初の一歩を軽くしていると言えるでしょう。

自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。

LINE受発注でできることと向かない業務

導入の進め方は三つの段階に分かれます。第一の段階である対象取引の棚卸しには、注文で使われる呼び名と台帳の品番を合わせる商品マスタの整備と、注文の件数が多く担当者が固定されている相手から選ぶ対象取引先の選定が入ります。第二の段階である取引先への案内には、友だち登録の手順や注文に必要な項目、受付の時間帯を一枚にまとめる操作案内の作成と、従来の電話とFAXを残したまま両方の窓口を開けておく期間を決める併走期間の設定が入ります。第三の段階である運用ルールの整備には、何時までの注文を当日扱いにするかを決める受付時間の明示と、アカウントを操作できる人と配信だけができる人を分ける担当者の権限設定が入ります。
窓口を開けるまでの三段階と各段階の社内準備

この窓口が得意なのは、品目が決まっていて数量だけが動く繰り返しの注文です。注文受付から内容確認、在庫引き当て、出荷連絡までを一本の流れで回せます。反対に、多品目の見積や社内の承認が何段も挟まる取引には向きません。繰り返しの多い定番の注文を先に載せ、残りは従来のやり方を残す切り分けが現実的でしょう。できることの範囲を先に線引きすれば、後戻りが減ります。

基本の流れは四段階です。取引先がトーク画面に品番と数量を送ると、受注担当が内容確認を返します。確認が済んだ内容を販売管理へ渡し、在庫引き当てまで進めます。最後に出荷連絡として出荷予定日を同じ画面へ返せば、取引先は電話をかけずに状況をつかめます。

販売管理と接続すると、できることが広がります。得意先ごとの単価や出荷の可否をその場で返せるため、確認の往復が減ります。定番品の一覧から選ばせる形にすれば、品番の打ち間違いも起きにくくなるでしょう。接続の仕様は公開されており、通知の受け取りと送信の両方が扱えます9。2026年時点の仕様では、複数の相手へまとめて送るマルチキャストで1回あたり最大500人分の宛先を指定できるため、同じ案内を配る場面でも送信の回数を抑えられます9。ただし接続には開発の工数がかかるため、最初から全部をつなぐ必要はありません。

時間外の注文にも形がつきます。営業時間外に届いた注文は、受付の自動応答で受領を知らせ、翌営業日に処理すると決めておけます。電話と違って相手を待たせないため、担当者の時間外対応を減らせるでしょう。ただし自動応答は受け付けた事実を伝えるだけで、在庫を確保したことにはなりません。ここを取り違えると、引き当ての行き違いが生じます。

向かない業務もはっきりしています。数十行に及ぶ見積のやり取りは、トーク画面では前後の関係が追えなくなります。承認が複数の部署にまたがる取引も、誰がどの版を承認したかが残りにくく適していません。図面や仕様書を突き合わせる取引、金額の交渉が続く取引は、従来のやり方か専用の仕組みに任せた方が安全です。

切り分けの目安は三つです。品目が定番かどうか、数量以外に変わる項目が少ないか、承認が一段で済むかを見ます。三つとも当てはまる取引から載せると、最初の運用が安定するはずです。当てはまらない取引を無理に載せれば、確認の往復が増え、かえって時間が延びてしまいます。

載せる範囲を誤ったときの費用も見ておきます。引き当ての行き違いで欠品のまま出荷すれば、再出荷の運賃と在庫差異の調整が発生します。トーク画面の記録が注文書に当たる場合、保存の要件を満たさないまま消してしまう危険もあります3。保存の期間は原則7年ですが、欠損金の生じた事業年度については10年に延びるため、窓口に載せた取引の記録は年単位で残る前提で考えてください3。範囲の線引きは、運用の話であると同時に法令の話でもあると考えてください。

導入方式の選び方

窓口を電子にすると、五つの確認が付いてきます。保存対象の切り分けでは、注文書や請求書に相当するやり取りを取り出す手立てを決めます。真実性の確保では、訂正や削除の記録が残る保存先を使うか、訂正削除の手順を定めた社内規程で担保します。可視性の確保では、取引年月日と取引金額、取引先の三つで探せる状態を保ちます。明示の義務では、注文の内容を書面か電子の方法で取引先へ明示します。アカウントの管理と権限の設計では、操作できる範囲を分け、退職や異動の際に権限を外す手順を決めます。
電子取引データの保存と明示をめぐる確認の要点

方式は大きく三つです。公式アカウントのトーク運用、入力フォームを挟む方式、既存の基幹システムとのAPI連携があります。トーク運用は初期の費用を抑えて始められる代わりに、入力のばらつきを人が吸収します。入力フォームは項目がそろい、API連携は転記が消える代わりに開発の工数が要ります。三つは排他ではなく、注文の件数が伸びた段階で順に移れる形です。取引の件数と品目の数を軸に選べば、判断はぶれません。

トーク運用は、公式アカウントを開設してトーク画面で注文を受ける方式です。準備は窓口の開設と受付ルールの取り決めで済み、着手までの期間が短くて済みます。届く文面は取引先ごとにばらつくため、受注担当が読み取って販売管理へ入力します。件数が少ないうちは回りますが、増えると入力の人手が効いてくるでしょう。

入力フォームは、トーク画面から専用の入力画面を開いて注文を受ける方式です。品番と数量の欄が決まっているため、届いたデータの形がそろいます。定番品を一覧から選ばせれば、品番の打ち間違いが減ります。取引先には画面の操作を覚えてもらうことになりますが、入力する項目は限られます。トーク運用とAPI連携の中間として選ばれる位置づけです。

API連携は、届いた注文を接続の仕様に沿って自社の販売管理へ渡す方式です。公開されている仕様では、届いたメッセージの通知と、こちらからの送信の両方が扱えます*9。受注データが自動で起票され、在庫や与信の判定結果を返せるようになります。ただし要件の整理、接続の開発、動作の確かめまでを含めた工数が欠かせません。社内に担当者がいない場合は、外部の支援を前提に見積もってください。

選ぶ軸は三つに絞れます。ひとつは月あたりの注文件数、ふたつ目は取り扱う品目の数、三つ目は既存の販売管理に接続の口があるかどうかです。件数が少なく品目も限られるなら、トーク運用から始めて差し支えありません。ただし2026年時点で公表されている料金プランのうち、月額固定費のかからないものは無料で送れるメッセージが月200通にとどまるため、件数の見積もりはこの通数と突き合わせておきましょう*10。件数が伸びて入力の人手が追いつかなくなった時点で、入力フォームやAPI連携へ移ります。

内製と外部委託の差も見ておきます。トーク運用は社内だけで始められますが、入力フォームとAPI連携では、要件の整理、接続の開発、保存要件の確認という三つの知識が要ります。社内の担当者が兼務のまま抱え込むと、途中で止まって窓口だけが残る事態になりかねません。外部に任せる判断は、作業を手放すためではなく、止まる危険を下げるための選択です。

三つの方式は、順に移れる形で設計しておくと安全です。トーク運用の段階から、注文に必要な項目を決めて文面の型を配っておけば、入力フォームへ移るときの手戻りが減ります。窓口のアカウントを変えずに中身だけを差し替えられるため、取引先への案内も一度で済むでしょう。

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導入の進め方と社内準備

進め方は三つの段階に分けます。対象取引の棚卸し、取引先への案内、運用ルールの整備という順序です。最初に商品マスタの整備と対象取引先の選定を済ませ、次に操作案内の作成と併走期間の設定を進めます。最後に受付時間の明示と担当者の権限設定を決めれば、窓口を開けられます。順番を入れ替えると、案内した後で品番がそろっていない事態が起こります。どの段階で止まっても従来のやり方へ戻せるようにしておいてください。

最初の段階は対象取引の棚卸しです。どの取引先の、どの品目を窓口に載せるかを一覧にします。ここで商品マスタの整備を済ませないと、注文で使われる呼び名と台帳の品番が合いません。現場が使う略称や旧品番も、対応表として残しておきましょう。対象取引先の選定では、注文の件数が多く、担当者が固定されている相手から選ぶと運用が安定します。

二つ目の段階は取引先への案内です。操作案内の作成では、友だち登録の手順、注文に必要な項目、受付の時間帯を一枚にまとめます。文字だけの説明より、実際の画面を並べた方が問い合わせは減るでしょう。併走期間の設定では、従来の電話とFAXを残したまま、両方の窓口を開けておく期間を決めます。切り替えを一度に迫れば、取引先の都合で注文そのものが止まります。

三つ目の段階は運用ルールの整備です。受付時間の明示では、何時までの注文を当日扱いにするかを決め、時間外の扱いを案内文に書きます。担当者の権限設定では、アカウントを操作できる人と、配信だけができる人を分けます。退職や異動のときに権限を外す手順まで決めておけば、後任が困りません。

受注担当の教育は、手順書よりも例文で進めると定着します。注文が届いてから返す文面、在庫が足りないときの返し方、数量を訂正するときの書き方を型として配ります。担当者ごとに言い回しが違うと、取引先からは同じ会社の応対に見えません。型を配る作業は、応対の速さと記録の読みやすさの両方に効いてきます。

必要な手数も見ておきます。棚卸しは商品マスタを扱える担当者、案内は取引先を知る営業事務、権限設定はアカウントを管理する担当者と、役割の異なる三者が関わります。兼務のまま回せば、棚卸しの途中で通常業務に戻され、案内だけが先に出る事態が起きかねません。着手の前に、誰が何を持つかを一枚に書き出しておいてください。

うまくいかなかったときの戻し方も、先に決めておきます。併走の期間を設けていれば、窓口を閉じても従来の受注は動き続けます。トーク画面に残った注文の記録は、保存の要件を満たす形で残す必要があるため、閉じる際も消してはいけません3。電子帳簿等保存制度は電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引データ保存という3つの区分からなり、このうち電子取引データの保存は2024年(令和6年)1月1日以降すべての事業者に及びます3。戻せる形で始めることが、最初の判断を軽くします。

法令・データ保存への対応

窓口を電子にすると、保存と明示の要件が付いてきます。トーク画面のやり取りが注文書に当たる場合は、電子取引のデータとして保存します3。求められるのは真実性の確保と可視性の確保で、後から探し出すための項目もそろえます。委託取引では、注文内容を電子で伝える際の扱いが2026年から改まります4。メッセージアプリを使えば要件が自動で満たされる、ということはありません。窓口を開ける前に、この二つを確かめてください。

最初に保存対象の切り分けをします。電子取引データの保存は、注文書や請求書に相当する内容を電子でやり取りした場合に求められます*3。挨拶や日程の相談だけのやり取りは対象ではありません。同じトーク画面に両方が混ざるため、注文に当たるやり取りを取り出す手立てを決めておきます。取り出し方を決めずに運用すれば、後から探す手間が膨らみます。

真実性の確保は、後から書き換えられない状態をつくる作業です。訂正や削除の記録が残る保存先を使うか、訂正削除の手順を定めた社内規程で担保します*3。トーク画面は送信の取り消しができるため、保存先を別に用意する運用が現実的でしょう。受け取った内容を台帳へ写す際は、写した担当者と時点が分かるようにしておきます。

可視性の確保では、画面と書面で速やかに出力できる状態を保ちます。検索要件への対応として、取引年月日、取引金額、取引先の三つで探せるようにします3。判定の期間の売上高が5,000万円以下といった条件に当てはまる場合、検索の要件は緩和されます3。この判定に用いる期間は、法人であれば2事業年度前、個人事業者であれば2年前の期間です*3。自社が当てはまるかどうかは、原典の記載で確かめてください。

委託取引では、注文の内容を書面か電子の方法で明示する義務があります。この明示の義務は下請法の第3条に置かれ、電磁的記録で提供する場合の留意事項が2023年に整理されています5。従来の運用では、電子で提供する際に相手方の承諾を得る扱いが示されてきました5。同法の第5条に基づいて作成する書類は2年間の保存が求められており、電子取引データの原則7年とは期間が異なる点にも注意が要ります5。2026年から施行される中小受託取引適正化法では、この承諾をめぐる扱いが改められます4。支払期日を給付の受領日から60日以内とする定めや、手形による支払の禁止も併せて確かめる必要があります*6。どちらの取扱いを前提に運用しているかは、社内で明確にしておきましょう。

アカウントの管理と権限の設計も要件のうちです。担当者ごとに操作できる範囲を分け、退職や異動の際に権限を外す手順を決めます。取引先の担当者名や連絡先を扱う以上、取得の目的と保管の場所を社内で定めておく必要があります。個人の連絡先が業務の記録と混ざらないよう、保存先を分けておくのが安全です。

要件を外したときの費用も見込んでおきます。保存の要件を満たさない状態が続けば、税務の場面で説明の手間が積み上がります。明示の要件を欠いた発注が続けば、取引先との認識違いが金額の争いへ発展しかねません。窓口を軽く開けられる分だけ確認の工程を省きたくなりますが、ここは省けない部分です。

コストと運用体制の見積もり方

費用は三つに分けて見積もります。窓口そのものにかかる月額、配信量に応じた分、そして社内の手数です。窓口には無料で始められるものを含む三つの料金プランが公表されており、プランごとに月額と無料のメッセージ通数が異なります*10。入力フォームやAPI連携を足せば、開発と保守の費用が加わります。効果は削減できた時間ではなく、転記の件数と問い合わせの件数で測ってください。

初期に見込む項目は四つです。窓口の開設と表示名の設定、案内文と操作案内の作成、商品マスタの整備、そして入力フォームやAPI連携を選ぶ場合の開発です。前の三つは社内の手数で収まり、費用の中心は四つ目に寄ります。開発の額は要件の幅で変わるため、方式を決める前に見積もりを取ると比べやすくなるでしょう。

月額の費用は、固定の部分と配信量に応じた部分に分かれます。公表されている料金プランは三つあり、無料で使える通数を超えた分に追加の費用がかかる形です10。2026年時点の公表内容では、月額固定費0円で月200通まで送れるプラン、月額固定費5,000円で月5,000通まで送れるプラン、月額固定費15,000円で月30,000通まで送れるプランが並んでいます10。無料の通数を超えた分の単価は、月額5,000円のプランで1通あたり最大5円、月額15,000円のプランで1通あたり最大3円です10。いずれの金額も税別の表示である点に注意してください10。注文の確認や出荷連絡を一件ごとに送る運用では、取引先が増えるほど通数が伸びます。一斉の案内配信と受注のやり取りを同じ窓口で混ぜると、通数の見通しが立ちません。料金の内容は改定されることがあるため、見積もりの時点で公表内容を確かめてください。

人にかかる費用も並べます。受注担当は窓口を見る時間が増える一方、電話の応対と転記の時間が減ります。案内の期間中は、取引先からの問い合わせに答える手数が上乗せされます。併走の期間を長く取るほど、二つの窓口を見る負担が続くことになります。期間の長さは、費用と安全のどちらを重く見るかで決めましょう。

内製と外部委託の差は、止まったときの立て直しに表れます。内製では、要件の整理、接続の開発、保存要件の確認という三つの知識を社内でそろえなければなりません。担当者が一人であれば、異動や休みのたびに窓口が止まります。外部に任せる場合は、開発だけでなく、要件の見直しと制度改定への追随まで含めて範囲を決めてください。

効果は指標で測ります。置く指標は、電話とFAXで届く注文の件数、転記の誤りによる訂正の件数、注文から出荷指示までの時間、取引先からの問い合わせの件数という四つです。導入の前に一か月分を数えておかなければ、後から比べられません。削減できた時間を見積もりで語るより、件数の変化を並べた方が社内の説明は通りやすいでしょう。

体制は、窓口を持つ人と、要件を持つ人を分けて置きます。窓口を持つ人は日々の応対と権限の管理を担当し、要件を持つ人は保存と明示の確認、料金プランの見直しを担当します。兼務でも構いませんが、どちらの役割で動いているかを本人が分かる形にしておきます。役割が曖昧なまま運用を続ければ、制度や料金の改定の知らせが誰にも届きません。

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よくある質問

導入から運用開始までにどれくらいの期間を見ればよいですか

期間は選ぶ方式で変わります。トーク運用は窓口の開設と受付ルールの取り決めで着手できるため、社内の準備が中心です。入力フォームやAPI連携を選ぶ場合は、要件の整理と接続の開発、動作の確かめが加わります。いずれの方式でも、取引先への案内と併走の期間を別に見込む必要があるため、開発の期間だけで計画を立てないでください。

取引先の一部が電話とFAXのままでも運用できますか

運用できます。むしろ、併走を前提に設計するほうが安全です。注意点は、注文の入口が二つになっても在庫の引き当ては一か所に集めることです。トーク画面で受けた注文と電話で受けた注文を別々の台帳に置くと、同じ在庫を二重に押さえる行き違いが生じます。受付の締め時刻も、入口ごとに変えず同じ時刻でそろえておきましょう。

トーク画面のやり取りだけで電子帳簿保存法の要件は満たせますか

満たせません。電子取引でやり取りした注文書に当たる内容は、真実性の確保と可視性の確保を満たす形で保存する必要があります*3。トーク画面は送信の取り消しができるため、訂正や削除の記録が残る保存先を別に用意するか、社内規程で手順を定めて担保します。取引年月日・取引金額・取引先の三項目で探せる状態も併せて整えてください。

費用は何を見れば方式ごとに比べられますか

四つの項目で並べると比べられます。窓口の月額、無料通数を超えた分の配信費用、入力フォームやAPI連携の開発と保守、そして受注担当と案内にかかる社内の手数です*10。開発の額だけを比べると、通数が伸びたときの配信費用や、併走の期間に増える人の手数が抜け落ちます。月あたりの注文件数を仮に置いて、三つの方式で同じ条件の試算を並べましょう。

情報システムの専任担当がいなくても運用を続けられますか

続けられますが、役割を分けることが前提になります。窓口を持つ人が日々の応対と権限の管理を担当し、要件を持つ人が保存と明示の確認、料金プランの改定への追随を担当します。一人が両方を抱えると、休みや異動のたびに窓口が止まります。接続の開発まで内製する場合は、外部の支援を含めて立て直しの手段を決めておいてください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書(コミュニケーションツール・SNS)」(2025) 経路
  2. *2 出典:総務省「令和6年通信利用動向調査の結果(報道資料)」(2025) 経路
  3. *3 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト(電子取引データの保存)」(2024) 経路
  4. *4 出典:公正取引委員会「取適法・振興法(中小受託取引適正化法の施行に関する案内)」(2025) 経路
  5. *5 出典:公正取引委員会「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」(2023) 経路
  6. *6 出典:中小企業庁「ミラサポplus 受注者を守る法!手形払い禁止など取適法がもたらす変化」(2025) 経路
  7. *7 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025(企業等におけるDX推進状況調査分析)」(2025) 経路
  8. *8 出典:LINEヤフー株式会社「プレスリリース LINE、国内月間利用者数が1億ユーザーを突破」(2026) 経路
  9. *9 出典:LINEヤフー株式会社(LINE Developers)「Messaging APIの概要」(2026) 経路
  10. *10 出典:LINEヤフー株式会社(LINEヤフー for Business)「LINE公式アカウント 料金プラン」(2026) 経路

画像の出典元

  1. Through glass of group positive multiethnic lawyers in forma/Photo by Sora Shimazaki on Pexels
  2. Traffic officer managing road with vehicles in an urban outdoor setting./Photo by Nguyễn Đại Phát on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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