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通販マルチサイト運営の効率化|BtoB EC統合の要点

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 通販のマルチサイト運営を効率化する鍵は、サイト数を減らすことではなく、共通化する層と分ける層を切り分ける設計にあります。
  • BtoB-EC市場の拡大にともない、取引先別サイトやブランド別サイトが増える動きは今後も続くと見られます。
  • 法令上の注意点や運用体制まで含めた5ステップで、統合の着手順序を整理します。
通販のイメージ
▽ 写真の出典元

通販のマルチサイト運営とは——統合ではなく層で切り分ける

通販のマルチサイト運営を効率化する要点は、商品マスタ・在庫・受注・取引先情報を1つに束ね、価格(掛率)・決済条件・画面や導線はサイトごとに分けて持つことです*1。サイトの数を減らすことは効率化の必須条件ではありません。重複して人手が触れるデータをなくすことが、効率化の本質にあたります。

図
BtoB-EC市場規模の推移(出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」)

通販のマルチサイト運営の定義と4つの型

通販のマルチサイト運営とは、1つの事業者が複数のECサイト(自社サイト・取引先別サイト・ブランド別サイト・モール店舗など)を並行して運営する形態を指します。BtoB通販では、取引先グループごとに条件を分けた取引先別サイト、ブランドごとに立てたブランド別サイト、卸売とBtoC併売を分けた販路別サイト、拠点や地域で分けた地域別サイトの4つの型が主に見られます。

掛率(取引先や取引条件ごとに設定する仕入価格・販売価格の割合)を複数持つBtoB通販では、条件の異なる取引先を1つの画面・1つの価格体系にまとめきれない事情があります。そのため、サイトが分かれること自体は自然な結果と言えるでしょう。

なぜ今サイトが増えるのか

経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円で、前年(465.2兆円)から10.6%増加しました*1。EC化率(対象業種の商取引全体に占めるECの比率。同調査では「その他」業種を除いて算出)は43.1%となり、前年から3.1ポイント上昇しています*1。卸売業に限ると、EC化率は40.3%まで伸びました*1

受発注の電子化が進むほど、取引先ごとの画面・チャネルの数も増える傾向にあります。加えて、NTT東日本は固定電話(加入電話・INSネット)の局内設備について、2024年1月1日以降、地域ごとに段階的な切替を実施し完了したことを公表しています*6。通信基盤の世代交代にともない、従来型のEDIを使ってきた取引先ではインターネットEDIやWeb受注画面への切り替えを検討する動きが見られ、受発注チャネルの再編が続いています。

サイトが増えるほど落ちる5つの効率

マルチサイト運営そのものが問題なのではなく、サイトが増える過程でデータと作業が重複することが効率を落とします。実務でつまずきやすい5つの論点を、影響が大きい順に整理します。

効率が落ちる5つのポイント(順位根拠:業務全体への影響度)

  1. 商品マスタと掛率の二重管理:品番・仕様・価格をサイトごとに個別入力すると、改定のたびに全サイトへの反映漏れが発生しやすくなります。
  2. 在庫の分散と引当ミス:サイトごとに在庫情報を持つと、同じ在庫を複数の注文で引き当ててしまう二重引当が起こります。
  3. 受注データの取り込みと基幹システムへの連携:サイトの数だけ受注フォーマットが増え、基幹システムへの手入力や個別変換作業が積み上がります。
  4. サイトごとに増える表示・法令対応の確認:BtoC併売サイトを含む場合、表示義務の確認範囲がサイト単位で増えます。
  5. 運用権限とアカウントの分散:担当者ごとにサイト別アカウントを持つと、退職・異動時の権限整理が煩雑になり、セキュリティ運用の負荷が増します。

特に注意したいのは在庫の引当ミスです。二重引当が起きると欠品連絡や出荷遅延の個別対応が発生するため、取引先ごとの信頼回復には相応の時間が必要です。なお、在庫そのものの持ち方を揃える手順は「通販のオムニチャネル在庫統合」で別途扱いました。IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」[組織]では、1位にランサム攻撃による被害、2位にサプライチェーンや委託先を狙った攻撃が挙げられており*5、アカウントが分散したまま放置される状態は、こうした攻撃の侵入口を増やすことにもつながります。

自社の現状で何が滞留しているかを数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。マスタ・在庫・受注のどこに重複があるかを洗い出すところから、統合の設計は始まります。

共通化する層・分ける層——効率化の設計原則

法令のイメージ
▽ 写真の出典元

マルチサイト運営を効率化する設計の核心は、全部をまとめる・全部を分けるという二択ではありません。データ・業務・画面という3つの階層のうち、どこを共通化し、どこをサイトごとに分けたままにするかを決める作業が、その中身です。

共通化する層——商品マスタ・在庫・受注・取引先与信

商品マスタ(品番・仕様・カテゴリなどの基本情報)、在庫、受注データ、取引先ごとの与信情報は、事業者として1つに束ねるべき層です。これらを複数箇所で管理すると、更新のたびに反映漏れや不整合が生じます。取引先情報を1つに束ねる具体的な進め方は「BtoB ECの取引先マスタ名寄せ・統合」で解説しています。

サイトごとに分ける層——掛率・決済条件・UI・ドメイン

一方で、掛率・決済条件(請求書払い・掛売り・与信枠など)・配送条件・画面デザイン・ドメインは、取引先ごとの商習慣に応じて分けたままにしてよい層です。ここまで無理に統一すると、取引先固有の条件が扱えなくなり、かえって個別対応の作業が増える結果になりかねません。

判断の順序は「データ→業務→画面」

設計の順序も重要です。先に画面のデザインを統一しようとすると、その裏にあるデータ構造の違いに後から突き当たり、手戻りが発生します。共通化はまずデータ(マスタ・在庫・受注)、次に業務(承認フロー・引当ルール)、最後に画面という順で進めるのが妥当です。

区分 対象項目 そう判断する理由
共通化する層 商品マスタ・在庫・受注データ・取引先与信情報 サイトをまたいで同一の実体(同じ商品・同じ在庫・同じ取引先)を指すため、分散させると不整合が生じます。
サイトごとに分ける層 掛率・決済条件・配送条件・UI・ドメイン 取引先や販路ごとの商習慣を反映する項目であり、統一すると個別条件が扱えなくなります。

マルチサイト運営を効率化する5ステップ

図
統合はデータの棚卸しから始め、最後に運用体制を整える5段階で進めます

Step1 サイトとチャネルを棚卸しする

まず、現在稼働しているサイト・受注チャネルを一覧化し、それぞれの月次受注件数と担当者を洗い出します。電話・FAX注文が残っている取引先がどれだけあるかも、この段階で押さえておきたい点です。モール経由の受付をまとめる手順は「通販モール連携の受注受付一元化」で詳しく整理しています。

Step2 商品マスタ統合の基準を決める

品番体系・単位・カテゴリの基準を先に決めます。サイトごとに異なる商品コードを使っている場合は、どちらの体系に寄せるか、あるいは新しい共通コードを設けるかを判断する場面です。

Step3 在庫と受注を一元化する

在庫の引当ルール(先着順か優先取引先を設けるか)と、受注の締め時刻をサイト横断で統一します。ここが曖昧なまま接続を進めると、Step4以降で二重引当の問題が再発します。

Step4 基幹システム・EDIとの接続方式を決める

基幹システムとの連携方式を決める段階です。従来型のEDI(電子データ交換)を使っている取引先については、インターネットEDIへの移行を視野に入れる必要があります。NTT東日本は固定電話(加入電話・INSネット)の局内設備のIP網移行を2024年1月1日以降に地域ごとに実施し、完了したことを公表しています*6。通信基盤が切り替わった以上、旧来の回線を前提にした接続方式は、この段階で棚卸しの対象に含めておくのが確実です。

Step5 運用体制と権限を設計する

最後に、誰がどのサイトのどのデータを触るのかを権限として設計します。Step1〜4で統合したデータ基盤に対して、担当者ごとの権限を明確にすることで、アカウント分散によるセキュリティリスクを抑えられます。

見落としやすい法令・保存・セキュリティの論点

セキュリティのイメージ
▽ 写真の出典元

BtoB取引と特定商取引法——通信販売規定は適用除外

特定商取引に関する法律は、通信販売について、販売価格・送料、支払いの時期・方法、引き渡し時期、申込みの撤回や解除に関する事項などの表示を義務づけています*3。ただし同法第26条第1項第1号は、購入者が「営業のために若しくは営業として」締結する売買契約について、通信販売を含む規定の適用を除外すると定めています*3。取引先が事業者としてBtoB取引する場合はこの適用除外に該当しますが、「BtoBなら一律に対象外」と単純化はできません。契約の性質が営業目的かどうかで判断される点に注意が必要です。

BtoC併売サイトには表示義務がかかる

マルチサイトの中にBtoC向け(消費者向け)の販路を含む場合は事情が異なります。特定商取引法第11条の表示義務は、消費者との通信販売取引に適用されるため、BtoC併売サイトでは販売価格・支払時期・引渡時期などの表示項目を満たす必要があります*3。BtoBサイトとBtoC併売サイトで基盤を共通化する場合、この非対称性を踏まえて表示要件をサイトごとに確認する運用が欠かせません。

電子取引データの保存はサイトが増えても事業者単位で満たす

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)は、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務を定めています*4。サイトが複数になっても、この保存義務は事業者単位でかかります。サイトごとに保存の仕組みを別々に作るのではなく、事業者として一元的に満たせる形で設計する方が運用の負荷を抑えられます。

複数サイト運用のセキュリティ

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」[組織]は、1位にランサム攻撃による被害、2位にサプライチェーンや委託先を狙った攻撃を挙げています*5。サイトが増えるほど管理アカウントや外部委託先の接点も増えるため、権限の棚卸しと定期的な見直しは、この2つの脅威に対する直接の備えです。

マルチサイト対応システムの選び方

マルチサイト運営を効率化するシステムを選ぶ際は、機能の多さよりも、共通化する層と分ける層をどこまで両立できるかを確認する必要があります。この作業を内製で進める場合、商品マスタ設計・在庫引当ロジック・EDI接続方式・与信管理という複数領域の知識を、同時に扱える担当者が求められます。単独の担当者ですべてをカバーするのは難しく、要件定義から移行までを並行して進められる外部パートナーとの協業を検討する事業者も少なくありません。総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、全社利用と一部部門での利用を合わせた企業のクラウドサービス利用率は2024年時点で80.6%に達しており*2、複数サイトの基盤をクラウド側に寄せる前提は、すでに一般的な選択肢になっています。

1インスタンス複数サイト型と個別構築型の違い

マルチサイト対応の方式は大きく2つに分かれます。1つの基盤(インスタンス。システムが稼働する実行環境の単位)で複数サイトを運用する1インスタンス複数サイト型と、サイトごとに個別のシステムを構築する個別構築型です。前者はマスタ・在庫の共通化が容易な一方、後者はサイトごとの独自条件を作り込みやすいという特性があります。

比較項目 1インスタンス複数サイト型 個別構築型
サイト追加の容易さ 既存の基盤に設定を追加する形で対応しやすい構成です。 サイトごとに新規構築が必要になり、追加のたびに工数がかかります。
取引先ごとの条件の作り分け 共通機能の範囲で条件を設定します。 サイトごとに個別の条件を実装できます。
改修の影響範囲 基盤側の改修が全サイトへ及ぶため、影響範囲の確認が必要です。 改修はサイト単位で完結しやすい一方、同じ改修を複数回行うことになります。

BtoB通販で確認すべき機能要件

選定の際は、掛率設定・与信管理・請求書払い対応・承認フロー・EDI接続の5点を最低限のチェック項目とすることをおすすめします。これらはBtoB通販特有の商習慣に関わるため、BtoC向けを前提にした機能一覧だけでは判断できません。

移行時に確認すること

既存データの持ち出しやすさ、並行稼働できる期間、現場担当者への教育期間の3点は、契約前に確認しておきたい事項です。特に在庫と受注が絡む移行は、並行稼働の期間が短いと引当ミスの再発リスクが高まります。

まとめ:マルチサイト運営効率化の3つの判断軸

選び方のイメージ
▽ 写真の出典元

本稿では、通販のマルチサイト運営を効率化する設計の考え方を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、サイト数を減らすことではなく、共通化する層と分ける層を切り分けることが効率化の本質です。第二に、統合はデータ・業務・画面の順で進めることで手戻りを防げます。第三に、BtoC併売時の表示義務や電子取引データの保存要件など、法令上の非対称性を踏まえた設計が欠かせません。


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よくある質問

マルチサイトにすると管理コストはどうしても増えますか

共通化する層と分ける層を切り分けて設計すれば、サイト数の増加がそのまま管理コストの増加には直結しません。重複入力が残る設計のまま拡張すると、コストは線形に増えやすくなります。

サイトごとに違う掛率を1つのシステムで扱えますか

扱えます。掛率・決済条件はサイトごとに分ける層に位置づけ、商品マスタ・在庫・受注は共通化する層に位置づけることで、取引先ごとの条件を保ったまま基盤を1つにまとめることが可能です。

BtoBとBtoCを1つの基盤に載せてよいですか

基盤としては可能ですが、表示義務の扱いが異なる点に注意が必要です。特定商取引法第11条の通信販売の表示義務はBtoC取引に適用されるため*3、BtoC併売サイトでは表示項目の確認を個別に行う設計にします。

既存の基幹システムを入れ替えずに一元化できますか

既存の基幹システムを残したまま、EC側の商品マスタ・在庫・受注を一元化し、基幹システムとはEDIやAPIで接続する構成が一般的です。入れ替えの要否は、既存システムの接続方式が現在の商習慣とEDI標準に対応できるかどうかが判断軸です。

統合はどこから着手するのが早いですか

サイトとチャネルの棚卸しから着手するのが実務上の近道です。現状の受注経路と件数を可視化しないまま基幹連携やシステム選定に進むと、要件の見落としが後工程で発覚しやすくなります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査 報告書」(令和7年8月)
  2. *2 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」図表Ⅰ-1-1-12(令和7年)
  3. *3 出典:e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」第11条・第26条
  4. *4 出典:e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
  5. *5 出典:独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日公表)
  6. *6 出典:東日本電信電話株式会社「固定電話(加入電話・INSネット)IP網移行 工事完了のご案内

画像の出典元

  1. 通販のイメージ/Photo by Jess Bailey on Unsplash
  2. 法令のイメージ/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash
  3. セキュリティのイメージ/Photo by Domaintechnik on Unsplash
  4. 選び方のイメージ/Photo by Haberdoedas on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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