◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受注側の移行は、注文の受信から出荷・請求データの返信までを、新しい通信方式でも同じ業務結果になるよう置き換える作業です。
- INSネットの補完策の終了(2028年12月31日)は回線側の上限で、取引先ごとの切替期限は取引先の案内で別に確かめます。
- 取引先ごとに受信方式、データ形式・コード、返信データ、例外処理、受注システムとの連携、担当者の6欄で棚卸します。
- 棚卸の結果から、そのまま移行、運用変更を伴う移行、別方式の検討に分け、判断が固まった取引先から並行して進めます。
- 移行後は棚卸表を台帳として更新し、方式が混在する期間の問い合わせや証明書の更新に備えます。
目次

取引先からインターネットEDI移行を求められたら、最初に確かめること
取引先から「インターネットEDIへ切り替えてほしい」という案内が届いても、自社の受注業務のどこが今の回線や通信手順に頼っているかが見えないうちは、何から手を付ければよいか決められません。
受注側の移行は、注文を受け取ってから出荷や請求のデータを返すまでの流れを、新しい通信方式でも同じ業務結果になるよう置き換える作業です。
まず旧回線を使っているかと、その期限を確かめます。
次に、取引先ごとに受信方式、データ形式・コード、返信データ、例外処理、受注システムとの連携、担当者の6欄で棚卸します。
その表をもとに取引先ごとの進め方を選び、1社ずつの調整期間を見込んで並行して進めます。
自社が旧回線を使っているかの確認方法
案内を受け取ったら、まず切替の理由が自社の側にも関係するのかを見極めます。
取引先のシステム更改だけが理由なら、期限を決めるのは取引先です。
一方、今の受注データが電話回線系の通信で届いているなら、回線そのものの終了が自社の機器や契約にも及びます。
同じ「移行のお願い」でも、どちらが理由かで、自社で確かめる範囲が変わります。
ここでいう回線の終了は、NTT東日本・西日本のINSネットのディジタル通信モードを指します。
このモードは2024年1月から地域ごとに段階的に終了しています3。
2016年の報道では、ある発注側の企業の取引先の多くがJCA手順や全銀手順、全銀TCP/IP手順といった従来の通信手順を使っており、ISDNの終了に向けた通信手順の変更が大変だと述べられていました5。
通信手順はデータを送受信するときの取り決めのことで、どの回線を通るかとは別に考える必要があります。
自社がINSネットを使っているかは、次の二つの方法で確かめられます3。
<ul><li>受注データを受け取る端末や専用機につながる機器を見て、DSUやTA(デジタル回線と端末をつなぐ装置)を介した構成になっているかを確かめる</li><li>NTT東日本・西日本からの請求書に「INS通信料」の項目があるかを見る</li></ul>
前者は受注データを受け取る現場で、後者は請求書を管理する経理や総務の手元で確かめられます。
現場の担当者が機器の名前に詳しくなくても、請求書に項目があれば利用していると判断する手掛かりになります。
反対に、どちらにも当てはまらないなら、EDIの通信は別の回線やインターネット経由で動いている可能性があります。
その場合はINSネットの期限とは別に、回線を手配した部署や機器の保守先に、受注データがどの経路で届いているかを聞く必要があります。
通信事業者の期限と取引先ごとの期限を分けて見る
INSネットを使っている場合も、期限は一つではありません。
NTT東日本・西日本はディジタル通信モードの終了後に向けた補完策を用意していますが、その補完策も2028年末に提供を終えます3。
しかも補完策では従来より伝送遅延が生じて処理時間が増えるなど、機器によっては通信に影響が出るとされています3。
つまり2028年末は「そこまでは何もしなくてよい日」ではなく、回線側の上限にすぎません。
取引先の切替期限は、これとは別に取引先が決めます。
取引先が自社のシステム更改に合わせて、回線の上限より早い時期を指定してくることもあり得ます。
案内に日付が書いてあればそれが優先で、書いていなければ「旧方式での受信をいつまで続けるか」を取引先に尋ねることになります。
棚卸表には、回線側の期限と取引先の期限を別の欄に分けて書いておくと、後で日程を組むときに混同しません。
期限が先に見えても、すぐに棚卸へ進むほうがよい理由があります。
2016年の報道では、発注側の企業が、取引先1社ごとに事前調整から利用開始まで1カ月ほどかかり、取引先ごとのスケジュール調整が必要だと述べていました5。
同じ記事では、切替直前に移行が集中すると間に合わない取引先が出る懸念も語られています5。
これは発注側1社の2016年時点の見方で、受注側の標準的な期間ではありません。
それでも、受注側が複数の取引先から案内を受ければ、1社ずつの調整が重なって日程が詰まりやすくなります。
取引先から現状を問われたときに答えられるよう、先に棚卸を済ませておくことを勧めます。
移行で置き換わるもの:受注側から見た注文・出荷・請求の流れ
通信手順とメッセージの2層で考える
移行で何が変わるかを、今の受注業務の流れに当てはめて考えてみます。
たとえば、毎朝決まった時刻に専用の端末から取引先のセンターへ接続して注文データを受け取り、そのファイルを受注システムへ取り込んでいる会社を想定します。
出荷したら出荷データを返し、月末には請求データを送る、という流れです。
インターネットEDIへの移行で置き換わるのは、この流れのうち「どうやってデータを届けるか」と「データに何が書かれているか」の二つです。
消費財流通で使われる流通BMSは、この二つを分けて定めています。
流通BMSは、メッセージ(電子取引文書)と、通信プロトコルやセキュリティに関するEDIの標準仕様です1。
通信の側では、AS2、ebMS、JX手順という三つの手順が標準として示されています2。
メッセージは注文や出荷の文書の中身、通信プロトコルはそれを相手へ届ける取り決めと考えると分かりやすいでしょう。
2層に分けると、移行の重さが見えてきます。
通信手順だけが変わり、受け取る注文データの形が今と同じなら、受注システムへの取り込みはほとんど変わりません。
一方、取引先がメッセージも新しい標準に切り替えるなら、受け取るデータの項目やコードが変わり、取り込みの設定や返信データの作り方まで手を入れることになります。
同じ「インターネットEDIへの移行」でも、取引先によって作業量が大きく違うのはこのためです。
流通BMSを基準にできる場面とできない場面
取引先が小売業で、流通BMSでの接続を求めているなら、流通BMSの資料が準備の基準になります。
流通BMSを導入した卸・メーカーは、2025年時点で累計21,600社以上とされています1。
受注側にあたる卸・メーカーの側で導入が積み上がっている標準だということです。
ただしこの数は導入企業の累計で、受注側全体の何割が移行したかや、移行の難しさを示すものではありません。
一方で、流通BMSは消費財流通の標準です。
業界が別の規格を定めていたり、取引先が独自のWeb-EDIを指定していたりする場合は、その指定が仕様の出どころになります。
中小企業庁が紹介している中小企業共通EDIのように、受発注に最低限必要な項目を定めた別の規格もあります4。
通信もメッセージも双方が同じ取り決めでそろわないと成り立たないため、まず取引先の案内から通信手順の名前とメッセージの規格名を分けて読み取っておくと、次の棚卸の欄が埋めやすくなります。
| 層 | 決めていること | 受注側で確かめる点 |
|---|---|---|
| 通信手順(例:AS2・ebMS・JX手順) | データを相手へ届ける取り決め | 自社の受信の仕組みでその手順に接続できるか |
| メッセージ | 注文・出荷・請求などの文書の中身 | 受け取る項目やコードが今と変わるか |
受注業務の棚卸:取引先ごとに洗い出す項目と見方
棚卸表の形:取引先を行、6つの欄を列にする
棚卸は、取引先を行に、確かめる項目を列にした表にまとめると進めやすくなります。
ここでは列を、受信方式、データ形式・コード、返信データ、例外処理、受注システムとの連携、担当者の6欄にする形を提案します。
公的な標準項目ではなく、移行で業務結果が変わりうる場所を漏れなく拾うための整理です。
取引先が1社でも、この欄で書き出しておくと、取引先からの質問に答える材料になります。
欄を業務結果と結び付けておくのがポイントです。
受信方式とデータ形式が変われば注文が正しく届くか、返信データが変われば出荷や請求が取引先の記録と合うか、例外処理が変われば訂正や取消が反映されるかに響きます。
表を埋めるときは今のやり方を書くだけでなく、移行後にどう変わるかの欄も並べておくと、次の進め方の判断にそのまま使えます。
受信方式とデータ形式・コード
受信方式の欄には、回線の種類と通信手順の名前に加えて、いつ・誰が・何で接続しているかを書きます。
毎朝の接続を担当者が手で始めているのか、端末が決まった時刻に自動で動いているのかで、移行後に決め直すことが変わるからです。
前の段階で確かめたINSネットの利用有無もここに入れます。
データ形式・コードの欄は、移行で見落としやすいところです。
注文データの項目の並び、商品コードや店舗コードの体系、それを自社のコードへ置き換える変換表があるかどうかを書き出します。
変換表が受信ソフトの中にあるのか、表計算のファイルで担当者が管理しているのかも分けておくと、メッセージが変わったときに直す場所がすぐ分かります。
どこまで項目を揃えるかの目安には、中小企業共通EDIが最低限必要な項目として注文書番号や注文書発行日など13項目を定めていることが参考になります4。
自社が受け取っている注文データにこれらに当たる項目があるか、どの名前で入っているかを並べてみると、新しいメッセージとの対応づけを始めやすくなります。
ただし13項目は共通EDIでの最低限であり、取引先が指定する規格に必要な項目は取引先の仕様で確かめます。
返信データ(出荷・納期回答・請求)
受注側の移行で、取引先から見て結果が目に見えるのは返信データです。
注文を受け取れても、出荷データの数量や商品コードが取引先の記録と合わなければ、受領の照合で差異が出ます。
請求データが合わなければ、支払いの確認に手間が生じます。
この欄には、取引先ごとに返しているデータの種類、どのシステムで作っているか、いつ送っているかを書きます。
同じ出荷データでも、取引先Aには出荷のたびに送り、取引先Bには一日分をまとめて送る、といった違いがあるなら、それも書き分けます。
移行後に新しいメッセージで返す場合、今は返していない種類のデータを求められることもあるので、「今」と「移行後」の二列にしておくと漏れに気付けます。
例外処理と受注システムとの連携
例外処理は、注文の訂正、取消、欠品の連絡など、通常の流れから外れたときの扱いです。
今これを電話やFAXでやり取りしているなら、移行後もそのままにするのか、EDIのデータで扱うようになるのかを取引先に確かめる必要があります。
EDIで扱うようになると、受け取った訂正データを誰がどう受注システムへ反映するかという新しい手順が生まれます。
受注システムとの連携の欄では、受け取った注文が受注システムに入るまでの道筋を書きます。
受信ソフトから自動で取り込んでいるなら、その取り込みは今のデータ形式に合わせて作られているため、メッセージが変われば取り込みの修正が要ります。
受信した注文を見ながら担当者が手で入力しているなら、通信が変わっても入力作業自体は残りますが、受信画面や帳票の見え方が変わるかは確かめておきたいところです。
取り込みの仕組みを保守している社内外の担当先も、この欄に書いておきます。
担当者と取引先窓口
最後の欄は人です。
自社で受注データを受け取っている担当者とその代わりを務める人、受信の設定や機器を分かっている人、そして取引先側の移行の窓口を書きます。
受注業務を兼務で回している場合は、移行の作業を誰の時間で進めるのかもここで見えてきます。
中小企業共通EDIの紹介でも、1社だけで導入しても効果は得られず、取引先と共通認識を持って連携して導入することが前提だとされています4。
インターネットEDIへの移行でも、テストの日程やデータの確認は双方の担当者がそろって初めて進みます。
窓口の名前と連絡手段が表に入っていれば、調整が止まったときに誰に聞けばよいかで迷う時間を減らせます。
| 欄 | 書き出す内容 | 移行で響く業務結果 |
|---|---|---|
| 受信方式 | 回線・通信手順の名前・接続の時刻と回数・接続を始める人や仕組み | 注文が期日どおりに届くか |
| データ形式・コード | ファイルの項目・商品や店舗のコードと変換表の置き場所 | 受注システムへ正しく取り込めるか |
| 返信データ | 出荷・納期回答・請求のうち返しているもの・作成元・送るタイミング | 出荷や請求が取引先の記録と合うか |
| 例外処理 | 訂正・取消・欠品の連絡方法(EDIの中か電話・FAXか) | 変更が双方の記録に反映されるか |
| 受注システムとの連携 | 自動取込か手入力か・取り込みの仕組みを保守している先 | 移行後も同じ手順で取り込めるか |
| 担当者 | 自社の担当と代わりの人・設定を分かっている人・取引先の移行窓口 | 調整とテストを誰が進めるか |
棚卸の結果から、取引先ごとの進め方を選ぶ
3つの条件で取引先を分ける
棚卸表が埋まったら、取引先ごとに進め方を選びます。
分ける手掛かりは、取引先が指定する方式に自社の今の仕組みで応じられるか、受注システムとの連携があるか、業務の変更がどれくらい大きいか、の3条件です。
この分け方は、どの進め方が優れているかという順位ではありません。
取引先ごとの条件に合うものを選ぶための目安です。
そのまま移行できる取引先
通信手順だけが変わり、受け取るデータの形や返信の中身は今と同じ、という取引先です。
棚卸表でいえば、受信方式の欄だけが書き換わり、他の欄は「変更なし」で埋まる状態です。
この場合の作業は、新しい通信手順での接続設定と、実際にデータが届くかのテストが中心になります。
作業が軽いぶん日程を早く確定しやすいので、全体の段取りでは先頭に置く候補になります。
運用変更を伴う取引先
メッセージやコードが変わる、返信データの種類が増える、例外処理がEDIの中に入ってくる、といった取引先です。
棚卸表で複数の欄に「変更あり」が付く状態で、受注システムとの連携がある場合は特に作業が増えます。
進め方としては、まず新旧の項目とコードの対応表を作り、それに合わせて取り込みや返信データの作成を直し、担当者の手順書を書き換える順になります。
受注システムの保守を外部に頼んでいるなら、その相手の予定も日程に入ってくるため、そのまま移行できる取引先より早めに話を始めておく必要があります。
例外処理の扱いが変わる場合は、誰が訂正データを見て反映するかを決めておかないと、移行後に訂正が埋もれるおそれがあります。
別方式を検討する取引先
取引先が指定する方式に、自社の今の受信の仕組みでは応じにくい場合です。
たとえば受信ソフトが新しい通信手順に対応していない、あるいはその取引先とのやり取りが少なく、受注システムとの連携もない、という状況が考えられます。
選択肢の一つは、対応するサービスを使って受けることです。
中小企業共通EDIの紹介では、受注側は共通EDIに対応したプロバイダーと業務アプリを利用するだけで済み、大きな費用はかからないとされています4。
ただしこれは共通EDIの規格に対応することを前提にした説明で、金額は示されていません。
取引先が別の規格を指定している場合や、自社の費用を見積もる場合には、この記述をそのまま当てはめず、取引先の指定方式に対応しているかを個別に確かめることになります。
もう一つは、取引先と受け方そのものを相談することです。
取引先側に複数の受け方が用意されている場合もあるため、棚卸表の内容を示して、自社の業務量や連携の有無に合う受け方があるかを尋ねる価値があります。
どちらにするかはその取引先との取引の量や今後の見込みで変わるため、すべての取引先で一律に決める必要はありません。
| 進め方 | 取引先の指定方式 | 受注システムとの連携 | 業務変更の大きさ | 主に進めること |
|---|---|---|---|---|
| そのまま移行 | 自社の受信の仕組みで対応できる | 取り込みの形が変わらない | 小さい | 接続設定とテスト |
| 運用変更を伴う移行 | 対応できるがメッセージやコードが変わる | 取り込みや返信の修正が要る | 中〜大 | 項目の対応づけ・取り込みの修正・手順書の更新 |
| 別方式の検討 | 今の仕組みでは受けにくい | 連携の有無で選択肢が変わる | 状況による | 対応サービスの利用や取引先との受け方の相談 |
インターネットEDIで受注側が準備する通信・認証・データの条件
標準が用意している資料から準備項目を拾う
進め方が決まった取引先について、自社で整える条件を具体的にしていきます。
流通BMSの場合、通信基盤の標準として、通信プロトコル利用ガイドライン、ひな型CPA、機能確認シート、証明書ポリシーが提供されています2。
受注側がゼロから準備項目を考えるより、これらの資料を手元に置いて自社に当てはまる項目を拾うほうが、抜けを減らせます。
なかでも機能確認シートは、自社の準備状況を確かめるのに使いやすい資料です。
各通信手順で接続に必要な機能が一覧になっているため2、今使っている受信ソフトや、これから使うサービスがその機能を備えているかを一つずつ照らし合わせられます。
足りない機能が見つかれば、その取引先を「別方式の検討」に回す判断材料になります。
認証と証明書の考え方
インターネットEDIでは、専用の回線ではなく多くの利用者が使う網を通るため、相手が本当に取引先かを確かめる仕組みと、データを守る仕組みが要ります。
流通BMSも、メッセージとあわせて通信プロトコルとセキュリティの標準を定めています1。
電子証明書を使う接続については、証明書を発行する認証局が守るべき事項を証明書ポリシーが説明しています2。
受注側の実務で押さえたいのは、証明書を誰が手配し、どこに入れ、いつ更新するかを決めておくことです。
証明書には有効期限があるため、移行時に入れたまま担当者が替わると、更新の時期に気付けないおそれがあります。
この情報は棚卸表の担当者欄と並べて記録しておくと、移行後の運用にもそのまま引き継げます。
データの条件と取引先の個別要件
データの条件は、メッセージの標準と、取引先の個別のルールの二段で決まります。
標準が項目の枠を決めていても、どの項目を必須にするか、どのコードを使うかは取引先の案内で指定されることがあります。
標準の資料と取引先の案内で食い違いがあれば、取引先の案内に合わせるのが実務上の順序です。
ここで挙げた資料は流通BMSの通信基盤のもので、他の業界標準や、取引先が独自に用意するWeb-EDIにはそのまま当てはまりません。
その場合は、取引先から渡される接続の手引きや仕様書が、同じ役割を果たす資料になります。
手引きのどこに通信の設定が、どこにデータの項目が書かれているかを棚卸表の欄に対応づけて読むと、自社で整える条件が抜けにくくなります。
| 資料 | 書かれていること | 受注側で使う場面 |
|---|---|---|
| 通信プロトコル利用ガイドライン | 通信のパラメータ設定の推奨値 | 受信ソフトやサービスの設定を決めるとき |
| 機能確認シート | 各通信手順の接続に必要な機能の一覧 | 自社の受信の仕組みが必要な機能を備えているか照らし合わせるとき |
| ひな型CPA | 通信の取り決めを記す文書のひな型 | 取引先と接続の取り決めを整理するとき |
| 証明書ポリシー | 認証局が守るべき事項 | 電子証明書を使う接続の前提を理解するとき |
切替テスト・並行稼働・本番切替の段取り
取引先1社ごとの流れ
受注を止めずに切り替えるために、取引先1社ごとに、事前調整、接続テスト、データの確認、本番切替の順で進める形を提案します。
定められた標準手順ではなく、棚卸表に沿って漏れを防ぐための段取りです。
事前調整では、通信手順、切替の予定日、テストの日程、テストに使うデータ、双方の窓口を取引先と決めます。
2016年の報道では、発注側の企業が、この事前調整から利用開始まで取引先1社あたり1カ月ほどかかるとしていました5。
発注側1社の事例なので受注側の標準的な期間とは言えませんが、1社ずつ日程に幅を見込んでおく目安にはなります。
テストで確かめる中身は、棚卸表の欄に対応させると決めやすくなります。
<ul><li>受信方式:新しい通信手順で接続でき、決まった時刻に注文データが届くか</li><li>データ形式・コード:届いた注文が受注システムへ正しく取り込まれ、商品や店舗のコードが正しく変換されるか</li><li>返信データ:出荷・納期回答・請求のデータを作って返し、取引先側で受け取れたか</li><li>例外処理:訂正や取消が、EDIのデータまたは従来の連絡手段で反映されるか</li><li>受注システムとの連携:取り込みから出荷指示までの流れが今と同じ結果になるか</li><li>担当者:手順書どおりに、普段の担当者と代わりの人が操作できるか</li></ul>
並行稼働は、一定の期間、旧方式と新方式の両方でデータを受け、結果が一致するかを見るやり方です。
できれば安心材料になりますが、旧方式を続けられるかどうかは取引先の都合にもよるため、事前調整の段階で並行稼働をするか、するならいつまでかを決めておきます。
並行稼働をしない場合は、切替日に受けた注文を受注システムの記録と照らし合わせる体制を用意しておくと、届いていない注文に早く気付けます。
本番切替の日は、旧方式で最後に受けた注文と新方式で最初に受けた注文の間に、抜けや重複がないかを確かめるのが要点です。
切替日を月末の請求処理と重ねないなど、返信データが集中する時期を避けた日を選ぶと、問題が出たときに対応しやすくなります。
全体を並行して進める
取引先が複数あるなら、1社ずつ順番に終わらせていくと、後ろの取引先ほど期限に追われます。
先の報道では、切替直前に移行が集中すると間に合わない取引先が出る懸念が述べられていました5。
受注側にとっても、複数の取引先の調整が同じ時期に重なれば、テストや確認を担う担当者の手が足りなくなります。
そこで、棚卸表の判断が早く固まった取引先から着手し、作業を重ねて進める方法を提案します。
たとえば、そのまま移行できる取引先の接続テストを進めながら、運用変更を伴う取引先とは項目の対応表づくりを並行して始め、別方式を検討する取引先には受け方の相談を先に持ちかけておく、という組み方です。
取引先の切替期限が早いものは、進め方の種類にかかわらず前に寄せます。
並行して進めるときに効くのが、棚卸表の担当者欄です。
どの取引先のどの作業を誰が持っているかが一覧で分かれば、テストの日程が重なったときに、別の担当者へ振り替えるか、取引先に日程の相談をするかを早めに判断できます。
移行後に残る運用:方式の混在と問い合わせ対応
方式が混在する期間を前提にする
すべての取引先が同じ時期に切り替わることは考えにくく、移行の途中では旧方式と新方式が混在します。
2016年の報道で紹介された発注側の企業では、取引先の10%強がすでに流通BMSやWeb-EDIなどIP網に対応したEDIへ移行し、残りは従来の手順のままでした5。
これは発注側から見た当時の状況ですが、取引先ごとに移行が進む以上、受注側でも一定の期間、複数の方式を同時に運用することになります。
混在そのものより、どの取引先がどの方式で、いつ切り替わったかが分からなくなることのほうが困りごとになります。
たとえば取引先から「注文データが届いていないようだ」と問い合わせがあったとき、その取引先がすでに新方式なのか旧方式なのかで、確かめる機器や画面がまったく違います。
棚卸表を台帳として更新し続ける
移行のために作った棚卸表は、移行後も台帳として使い続けることを提案します。
移行の作業のために集めた情報が、そのまま運用に必要な情報になっているからです。
移行後は、次のような欄を足しておくと使いやすくなります。
<ul><li>切替日と、旧方式を止めた日</li><li>使っている通信手順と、接続の設定を管理している先</li><li>電子証明書の更新時期と担当</li><li>問い合わせを受けたときの社内の確認先と、取引先の窓口</li><li>取引先からの仕様変更の連絡と、その反映日</li></ul>
台帳があれば、問い合わせを受けた担当者が詳しい人を探して社内を回る手間や、取引先とのやり取りの履歴を掘り返す手間を減らせます。
ただし台帳は更新されて初めて役に立つので、取引先から変更の案内が来たときに誰が書き換えるかも、担当者欄で決めておきます。
旧方式が残る取引先については、回線側の期限と取引先の予定もこの台帳で追い続けます。
棚卸表を作っても、取引先の案内にある通信手順やメッセージの指定を自社の受信の仕組みで受けられるのか、どの取引先を別方式の検討に回すべきかは、社内だけでは判断しにくいことがあります。
棚卸表と取引先からの案内を手元に用意してご相談いただければ、取引先ごとにどの欄が移行で変わるのか、先に確かめるべき点はどこかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 旧回線の利用確認 | DSU/TAを介した機器構成、または請求書の「INS通信料」 |
| 期限 | 回線側の上限(補完策は2028年末終了)と取引先の切替期限を別に記録 |
| 棚卸の欄 | 受信方式・データ形式とコード・返信データ・例外処理・受注システムとの連携・担当者 |
| 進め方の分け方 | 指定方式への対応可否・システム連携の有無・業務変更の大きさ |
| 準備の資料 | 流通BMSなら通信プロトコル利用ガイドラインと機能確認シート、他の方式なら取引先の手引き |
| 日程 | 1社ずつ調整期間を見込み、判断が固まった取引先から並行して着手 |
| 移行後 | 棚卸表を台帳として更新し、方式の混在と問い合わせに備える |
複数の取引先の切替が重なると、テストの日程や担当の割り振りを社内だけで組み直すのは負担が大きくなります。 取引先ごとの期限と進め方を並べた一覧をもとに、着手の順番や並行して進める組み方を相談の中で確かめられます。
よくある質問
旧回線を使っているかどうかはどう確認すればよいですか。
NTT東日本・西日本のINSネットを使っているかは、受注データを受け取る端末につながる機器がDSUやTAを介した構成になっているか、またはNTT東西の請求書に「INS通信料」の項目があるかで確かめられます3。
どちらにも当てはまらない場合は、別の回線やインターネット経由で動いている可能性があるため、回線を手配した部署や機器の保守先に、受注データがどの経路で届いているかを尋ねてください。
取引先ごとに指定方式が違う場合、自社システムの対応はどう決めればよいですか。
棚卸表で取引先を方式ごとにまとめ、自社の今の受信の仕組みで受けられる方式と受けにくい方式を分けます。
受けられる方式は設定を整えて対応し、受けにくい方式は対応サービスの利用か、取引先との受け方の相談を検討します。
方式ごとに取り込みの仕組みが増えると保守の手間も増えるため、受注システムへの取り込み口をどう揃えるかもあわせて考えておくと、移行後の運用が楽になります。
JX手順・ebMS・AS2のどれを使うかは誰がどう決めるのですか。
通信は送る側と受ける側が同じ手順でそろわないと成り立たないため、実務では取引先の案内に示された手順に合わせて準備するのが出発点です。
流通BMSでは、AS2、ebMS、JX手順の三つが通信の標準として示されています2。
取引先が複数の手順を受け付けている場合は、機能確認シートで自社の受信の仕組みが備える機能と照らし合わせ、対応できる手順を取引先に伝えて決めます。
取引先の切替期限が分からないときは何を確認すればよいですか。
案内に期限が書かれていない場合は、取引先に旧方式での受信をいつまで続けるかを尋ねます。
INSネットを使っているなら、回線側の上限として補完策が2028年12月31日に終わり、補完策では伝送遅延などで機器によっては通信に影響が出るとされています3。
そのため回線の期限まで待てばよいとは限りません。
回線の期限と取引先の期限は、棚卸表で別々に記録しておきます。
移行後に取引先ごとの方式が混在しても問題ありませんか。
取引先ごとに移行の時期が違う以上、混在はある程度避けられません。
大切なのは、どの取引先がどの方式で、いつ切り替わったかを台帳で把握し、問い合わせを受けたときに確かめる場所がすぐ分かるようにしておくことです。
返信データ(出荷・請求)のコードや形式が取引先ごとに異なる場合はどう整理すればよいですか。
棚卸表の返信データの欄で、取引先ごとに返しているデータの種類、項目、コード、送るタイミングを「今」と「移行後」に分けて書き出します。
そのうえで、自社のコードと取引先のコードの対応表を取引先ごとに持ち、どこで変換しているかを明確にしておきます。
項目を揃える目安には、中小企業共通EDIが注文書番号や注文書発行日など最低限必要な13項目を定めていることが参考になりますが4、取引先が指定する規格の項目は取引先の仕様で確かめます。
- 1 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)/流通BMS協議会「流通BMS関連情報」(2025年)
- 2 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)/流通BMS協議会「通信基盤関連の標準│流通BMS標準仕様」
- 3 出典:NTT東日本「INSネットをご利用の事業者さまへ(固定電話のIP網移行)」
- 4 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」
- 5 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)