◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- インボイスかどうかは書類の名称ではなく、登録を受けた事業者が所定の6項目をそろえているかで決まる
- 納品と同時に払う取引は納品書兼請求書の一枚、月締めは納品ごとの納品書と期間をまとめた請求書という組み方が考えやすい
- 6項目はインボイスとして渡す一枚でそろえ、複数の書類を組み合わせる運用は税務署や税理士に確認してから始める
- 取適法の対象取引では、支払期日は受領日から60日以内で定められ、検収や請求書の時期で起算点は動かない
- 交付したインボイスの写しは保存が必要で、受領側の7年や取適法の2年を発行側の期間としてそのまま当てはめない
目次

納品書と請求書、どちらを出すか迷ったときの考え方と役割の違い
商品を届けたあと、納品書だけで済むのか、請求書も別に作るべきか。
月末に請求書を出したら、納品書と金額が合わないと言われた。
こうした迷いは、書類を名前ではなく、役割と記載事項で分けて考えると片づきます。
インボイスは名称を問わず、所定の6項目が載っていれば納品書でも請求書でも成り立ちます3。
納品書は渡した事実、請求書は代金の求めと整理し、取引の形に合わせて一枚にまとめるか分けるかを決めましょう。
取適法の対象取引なら、支払期日は受領日から60日以内に定める決まりで、検収や請求書の時期で起算点は動きません4。
書類の名前ではなく記載事項で決まるインボイス
納品書と請求書のどちらを出すかで迷うとき、その迷いの中に「インボイスとして通用するのはどちらか」という心配が混ざっていないでしょうか。
国税庁の説明では、請求書に限らず、所定の事項が記載された書類であれば、納品書や領収書など名称を問わずインボイスになるとされています3。
税務の面で見るべきなのは、書類の表題ではなく、そこに何が書いてあるかです。
反対に、表題が「請求書」でも、決められた事項が欠けていればインボイスとしては足りません。
たとえば登録番号を書き忘れた請求書は、代金の支払いを求める書類としては使えても、取引先が仕入税額控除の根拠として保存する書類としては不十分になります。
仕入税額控除とは、取引先が仕入れの際に支払った消費税を、自社が納める消費税から差し引く仕組みのことです。
取引先が気にしているのは、まさにこの控除に使える書類かどうかです。
もう一つ押さえておきたいのは、インボイスを出せる事業者が限られている点です。
インボイスを交付できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者だけです2。
登録している事業者は、課税事業者である買手から求められたときにインボイスを交付する必要があります3。
取引先が求めているのはインボイスとしての中身なので、それを納品書の形で渡すか請求書の形で渡すかは、取引先と話して決める余地があります。
一方で、インボイスの交付とは別に、「納品書」「請求書」という名前の書類そのものを必ず出さなければならないかは、ここで扱う国税庁や公正取引委員会の説明からは決まりません。
実際にどの書類を何枚出すかは、取引先との契約や日ごろの取り決めに合わせて組み立てることになります。
だからこそ、自社の都合だけで書類を増やしたり減らしたりする前に、取引先がどの書類をどう処理しているかを知っておくことが役に立ちます。
納品書は渡した事実、請求書は代金の求めと考える
名称で決まらないなら、何を手がかりに出し分ければよいのか。
ここでは、法律で決まった区分ではなく、実務で考えやすくするための整理として、納品書を「物やサービスを渡した事実を相手に伝える書類」、請求書を「代金の支払いを求める書類」と分けて考えます。
納品書が働くのは、物を届けた時点です。
受け取った取引先は、届いた品物と注文の内容を見比べ、品名や数量に間違いがないかを確かめます。
このとき手元にあると助かるのは、何を、いくつ、いつ届けたかが分かる書類です。
金額は、この確認の段階ではまだ主役ではありません。
請求書が働くのは、代金が確定して支払ってもらう段階です。
取引先は請求書を見て、金額が合っているかを確かめ、社内で支払いの手続きを進めます。
振込先や支払期日はインボイスの6項目には含まれませんが、取引先が支払いを進めるうえでは欠かせない情報です。
請求書には、インボイスとしての記載事項と、支払いのための情報の両方が求められやすいということです。
この二つの役割を並べると、出し分けの考え方が見えてきます。
物を渡すことと代金を求めることが同じ時点に重なる取引なら一枚で足り、時点がずれる取引なら二枚に分けたほうが取引先の処理の流れと合います。
そして、どちらの書類に役割を持たせるにしても、インボイスとして渡すのはどの一枚かを決めておけば、取引先は保存する書類を迷わずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 適格請求書発行事業者の登録
- 登録を受けた事業者だけがインボイスを交付できる
- 所定の6項目の記載
- そろっていれば名称を問わずインボイスになる
- 欠けていれば代金の支払いを求める書類にとどまる
- インボイスとして渡す一枚
- 課税事業者の買手から求められたら交付する
- 取引先は仕入税額控除の根拠として保存する
取引の形で変わる書類の出し方(都度払い・月締め・納品と同時払い)
取引の形を比べる三つの物差し
役割の分け方が決まったら、自分の取引に当てはめてみます。
比べるときの物差しは、代金がいつ確定するか、取引先がいつ支払うか、書類で何を示しておきたいか、の三つです。
同じ商品を扱っていても、取引先によって支払いの約束が違えば、ふさわしい書類の組み方は変わります。
ここから示す組み方は、制度で決められた分類ではなく、取引先と書類の扱いを取り決められることを前提にした提案です。
取引先の社内には、受け取った書類をどの順で誰が確認するかという流れがあります。
その流れと合わない書類を送ると、取引先から別の形式で出し直してほしいと頼まれることになります。
最初に取引先がどの書類をインボイスとして保存したいかを聞いておけば、こうした作り直しを前もって避けやすくなります。
納品と同時に払う取引
商品を届けたその場で代金を受け取る、あるいは納品と同じ日に支払ってもらう取引では、物を渡すことと代金を求めることが同じ時点に重なります。
この場合は、6項目を満たした納品書兼請求書を一枚作り、それをインボイスとして渡す形が分かりやすい選択肢です。
一枚にまとめると、取引先は届いた物と照らし合わせた書類を、そのまま支払いと保存に回せます。
発行する側も、同じ取引について二枚の書類の金額や日付をそろえる手間がなくなります。
書類が一枚なら、食い違いが起きる場所もその一枚の中だけです。
気を付けたいのは、代金を受け取った後に領収書も求められた場合です。
領収書もまた、所定の事項が書かれていれば名称を問わずインボイスになり得る書類です3。
同じ取引に6項目のそろった書類が二枚ある状態になると、取引先はどちらを保存すべきか迷います。
どちらをインボイスとして扱うかを取引先と決め、もう一方は受領の事実を示す書類として扱うと、混乱を避けやすくなります。
都度払いの取引
納品のたびに請求し、取引先が月末にまとめずに一件ずつ支払う取引では、納品と支払いの間に時間が空きます。
組み方の候補は二つあります。
納品時に納品書を渡し、後から請求書を出してそれをインボイスにする形と、納品時に納品書兼請求書を渡してしまう形です。
前者は、納品後に数量の確認や追加作業の精算が入り、金額が変わる可能性がある取引に向いています。
確定した金額で請求書を作れるので、一度出した書類を作り直す場面が少なくなります。
後者は、納品時点で金額が動かない取引に向いています。
取引先は一枚で済み、発行する側も書類の数を半分にできます。
前者の形で納品書に金額を載せるかどうかは、取引先との取り決め次第です。
載せる場合は、請求書と同じ単価と同じ計算方法で金額を出しておかないと、後で二枚の金額が食い違う原因になります。
納品書に金額を載せない取り決めにすれば、金額の確認は請求書一枚に集まり、照合の対象は品名と数量だけになります。
月締めの取引
同じ取引先に月に何度も納品し、締め日に期間分をまとめて請求する取引では、納品ごとに納品書を渡し、締め日の後に期間分の請求書を出す組み方が自然です。
国税庁が示す適格請求書等の記載事項の説明には、一定期間の取引をまとめて記載する方法が例として挙げられています2。
月ごとの請求書をインボイスにして、そこに期間内の取引をまとめて書く運用は、この考え方に沿ったものです。
このとき納品書は、届いた物の確認と、月末の請求書との照合に使う書類という位置付けになります。
取引先は月の途中で納品書を受け取り、請求書が届いたら、手元の納品書の束と合計が合うかを見比べます。
この照合のしやすさが、月締めで書類を分ける大きな利点です。
ただし、国税庁の例が示しているのは一枚の書類の中での書き方であり、納品書と請求書の二枚を組み合わせて記載事項を満たすことまで説明したものではありません。
月締めでも、インボイスの6項目は月ごとの請求書一枚でそろえる前提で考えておくのが確実です。
もう一つ、月締めの組み方を決める前に知っておきたい法律があります。
取適法(中小受託取引適正化法)は2026年1月に施行された法律で、委託事業者と中小受託事業者の間の委託取引を対象に、発注した側の義務を定めています4。
取引先がこの法律の対象となる発注者であれば、書類の組み方より先に、支払期日の決まりが効いてきます。
月締めの書き方と期日の関係は、記載項目を確認した後で詳しく見ていきます。
| 取引の形 | 代金が確定する時点 | 取引先が支払う時点 | 書類の組み方の案 |
|---|---|---|---|
| 納品と同時に払う | 納品の時点 | 納品の時点 | 6項目を満たす納品書兼請求書を一枚 |
| 都度払い | 納品ごと(後から精算が入ることもある) | 納品の後、請求書で示した期日 | 納品書と請求書を分けるか、兼用の一枚にする |
| 月締め | 締め日に期間分が確定 | 締め日の後の支払期日 | 納品ごとの納品書と、期間をまとめた請求書 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 納品と同時に払う取引
- 物を渡すことと代金を求めることが同じ時点に重なる
- 6項目を満たす納品書兼請求書を一枚渡す
- 都度払いの取引
- 納品と支払いの間に時間が空く
- 金額が動くなら納品書と請求書を分ける
- 金額が動かないなら納品書兼請求書を一枚にする
- 月締めの取引
- 締め日に期間分をまとめて請求する
- 納品ごとの納品書と、期間をまとめた請求書を出す
納品書・請求書に載せる項目とインボイスの記載要件
インボイスの6項目
どの書類をインボイスにするかが決まったら、その一枚に載せる内容を確かめます。
国税庁の説明では、インボイスの記載事項は次の6項目です3。
- 書類の交付を受ける取引先の名称
- 発行する事業者の名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
- 税率ごとに区分した対価の総額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
日ごろの書類をインボイスに切り替えるときに気を付けたいのは、自社の書式の都合で抜けやすい項目です。
取引先の名称は、宛名欄を空けたまま手書きで補う運用だと、書き忘れがそのまま欠落になります。
登録番号は、会社の住所や電話番号と並べて書式に印字しておけば、書類ごとに書き足す必要がなくなります。
取引年月日は、納品書兼請求書なら納品した日、月締めの請求書なら対象とする期間を明らかにします。
取引内容では、軽減税率の対象になる品目を扱う場合、その旨が分かるようにしておく必要があります。
そして金額は、税率が一つしかない取引でも、税率ごとに区分した対価の総額と適用税率、消費税額等が読み取れる形にしておきます。
複数の税率の品目を同じ書類に載せるなら、合計を一本にまとめず、税率ごとに分けて示すことが欠かせません。
小売業・飲食店業・タクシー業などの事業では、一部の記載を省略できる簡易インボイスという形もあります3。
取引先の事業者に納品して代金を請求する場面では、まず6項目を基本に考え、自社が省略できる業種に当たるかは別に確かめておくと判断を誤りません。
一枚で満たす運用を基本にする理由
6項目を納品書と請求書に分けて書き、二枚を合わせて初めてそろう形にすることも、考え方としてはあり得ます。
ただ、その形がインボイスとして認められるか、どんな条件が付くかは、ここで取り上げている国税庁の説明だけでは確かめきれません。
組み合わせで運用したい場合は、実際の書類を税務署や税理士に見せて確認してから始めるのが確実です。
受け取る側から見ても、一枚にそろっているほうが扱いやすくなります。
一枚で6項目がそろっていれば、取引先はその一枚を保存すれば済みます。
二枚に分かれていると、どの納品書がどの請求書に対応するかを取引先が管理し続けなければならず、片方を紛失したときには記載事項が欠けた状態になります。
インボイスにしない側の書類は、その書類で何を伝えたいかを基準に項目を考えます。
月締めの納品書であれば、宛名、納品日、品名、数量、そして月末の請求書と結び付けるための番号があると、照合が楽になります。
金額まで載せるかは取引先との取り決め次第ですが、載せるなら請求書と同じ計算方法にそろえておきます。
反対に、納品書にも6項目をすべて載せてしまうと、同じ取引について二枚のインボイスがあるように見えます。
取引先はどちらを保存すべきか迷い、場合によっては同じ取引を二度処理しかねません。
インボイスの役割を一枚に集めておく理由は、ここにもあります。

月末にまとめて請求するときの書類と、支払期日の落とし穴
合算請求の書き方
月締めの請求書をインボイスにする場合は、その請求書が対象にする期間を明記し、期間内の取引をまとめて記載します2。
まとめるといっても、合計額だけを書けばよいわけではありません。
取引先は手元の納品書と照らし合わせるので、期間内の納品を一件ずつ、納品日と納品書の番号を付けて並べておくと、どの納品が請求に含まれているかが一目で分かります。
金額の欄では、期間内のすべての取引について、税率ごとに区分した対価の総額と適用税率、消費税額等を示します3。
月の途中で税率の違う品目を納めた月は、明細の各行にもどちらの税率かが分かる印を付けておくと、取引先が合計を検算しやすくなります。
合算請求で食い違いが起きやすいのは、締め日の前後に届けた分の扱いです。
締め日の当日や前日に届けた分を、自社は今月分に入れ、取引先は来月分として受け付けている、というずれは、そのまま請求額の食い違いとして表に出ます。
納品日で区切るのか、取引先が受け取った日で区切るのかを決め、取引先と同じ基準で期間を切っておくと、このずれは起きにくくなります。
受領から60日以内という期限
取適法の対象となる委託取引では、発注した側の委託事業者に、支払期日を物品等の受領日から60日以内で、できる限り短い期間に定める義務があります4。
役務提供の委託であれば、起算点は役務が提供された日です4。
納品して代金を受け取る側から見ると、この決まりは取引先が守るべきものであり、自社の入金を守る仕組みとして働きます。
月締めで気を付けたいのは、60日が締め日からではなく、一件ごとの受領日から数えられる点です。
月の初めに受領された分は、締め日を迎えた時点ですでに1か月近くが経っています。
たとえば「月末締め、翌々月末払い」といった条件だと、月初に受領された分は受領から60日を大きく超えてしまいます。
締め日を設けること自体が問題なのではなく、締め日から支払日までの間隔を、その期間で最も早く受領された分を基準に考える必要があるということです。
起算点が受領日である以上、発行側の請求書がいつ届いたかで期日が後ろへずれることはありません。
とはいえ、締め日後に請求書がなかなか届かなければ、取引先は金額の確認を後回しにせざるを得ず、期日間際に処理を急ぐことになります。
急いだ確認では食い違いの見落としも起きやすく、後から差し戻しが来れば、その分だけ入金の手続きが滞ります。
発行側としては、締め日の後すみやかに請求書を出す運用にしておくと、取引先の確認が期日に間に合い、問い合わせの往復を減らしやすくなります。
支払期日までに支払われなかった場合、委託事業者は、受領から60日を経過した日から実際に支払う日まで、年率14.6%の遅延利息を支払う必要があります4。
また委託事業者には、発注の時点で必要事項を記載した書面または電磁的記録を直ちに交付する義務もあります4。
受け取った注文書や発注のメールに支払条件が書かれていれば、自社の締め日と請求書の発行日をそれに合わせて組み立てておくと、期日との食い違いに早く気付けます。
取適法の対象は、委託事業者と中小受託事業者の関係にある委託取引に限られます4。
対象にならない取引では、支払期日は契約で取り決めた条件に従います。
自社の取引が対象に当たるかどうかは公正取引委員会の案内で確かめておくと、月締めの条件を見直す必要があるかを判断できます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 納品と納品書
- 納品ごとに納品書を渡す
- 取引先の受領
- 取適法の対象取引では、この受領日が60日の起算点
- 締め日
- 期間内の取引を集計する
- 締め日の前後に届けた分の扱いを取引先とそろえる
- 期間をまとめた請求書
- 税率ごとの合計と消費税額を示す
- 締め日の後すみやかに出す
- 支払期日
- 受領日から60日以内に定めた期日
- 遅れると60日経過日から年率14.6%の遅延利息
金額がずれたとき・検収が遅れたときの扱い
検収が遅れても期限は動かない
検収とは、納品された物を取引先が検査し、注文どおりかを確かめて受け入れることです。
月締めの取引では、取引先の検収が終わるまで請求書を出さないよう求められたり、検収が終わった分だけを今月分に入れる運用になっていたりすることがあります。
取適法の対象取引では、支払期日は検査を行うかどうかにかかわらず、受領日から60日以内で定めることになっています4。
検収が月をまたいで遅れても、検収の完了日から数え直すわけではありません。
受領日を起点にした期限はそのまま残るので、検収待ちで請求が翌月に回った分ほど、取引先にとって支払期日までの余裕は小さくなります。
ここで発行側が手元に残しておきたいのは、取引先がいつ受領したかが分かる記録です。
納品書の日付は自社が書類を作った日であり、取引先が受け取った日と一致するとは限りません。
配送の記録や受領の連絡など、受領日を後から示せるものを納品書の控えと一緒にしておくと、期日の話になったときに双方が同じ日付を見ながら話せます。
取適法の対象にならない取引では、検収と支払いの関係は契約の定めによります。
契約で検収後に請求すると決めているなら、その手順に従います。
同じ取引先でも、取引の内容によって対象になるものとならないものが混在する場合は、取引ごとにどちらの扱いかを分けておくと、請求の時期を誤りにくくなります。
金額ずれの直し方の提案
納品書と請求書の金額が合わないと連絡を受けたら、まず、どちらの書類がどの項目で食い違っているかを明細で突き合わせます。
見るべきは、数量、単価、税率の区分、そして請求書の対象期間に入っている納品の範囲です。
たとえば差額がちょうど消費税分に見える場合、一方が税込、もう一方が税抜で計算されている可能性が考えられます。
ただ、同じくらいの差額は、締め日の前後に届けた一件の納品が片方にだけ入っている場合にも生じ得ます。
差額の大きさだけで原因を決めつけず、一行ずつ明細を照らし合わせて原因を特定しておくことが、二度目の作り直しを避けることにつながります。
原因が分かったら、直し方を取引先と合意して決めます。
選択肢は、誤りのある書類を作り直して差し替える方法と、元の書類は残したまま差額を別の書類で調整する方法です。
書き間違いのように取引の中身は変わっていないなら、作り直して差し替えるほうが、取引先は正しい一枚だけを保存すれば済むので分かりやすくなります。
作り直すときは、どの書類を置き換えるものかを新しい書類に書き添え、古い書類を取引先の手元でどう扱ってもらうかも伝えておくと、同じ取引が二重に処理される心配が減ります。
一方、納品後の値引きや返品のように、取引そのものが変わった場合は事情が違います。
この場合の書類の作り方には税務上の扱いが関わるため、税務署や税理士に確認してから進めてください。
取適法の対象取引では、取引先の委託事業者は、給付の内容や代金の額などを記載した書類または電磁的記録を作成し、2年間保存することになっています4。
取引先の側にも代金の額を記録しておく決まりがある以上、金額を直したときは口頭で済ませず、合意した金額と理由をメールや書面で残しておくと、後で双方の記録を突き合わせやすくなります。
発行した書類の保存期間と、渡す側が控えておくこと
交付したインボイスの写し
インボイスを交付した発行事業者は、その写しを保存しておく必要があります3。
写しは、取引先に渡したインボイスと同じ内容の控えと考えると分かりやすいでしょう。
納品書兼請求書で渡したならその控えが、月締めの請求書をインボイスにしたなら月ごとの請求書の控えが、保存の中心になります。
インボイスにしなかった納品書の控えも、月ごとの請求書の内訳を後から説明するときの裏付けになります。
請求書の控えと、その対象期間の納品書の控えを同じ単位でまとめておけば、取引先から問い合わせがあったときに、どの納品が請求に含まれているかをすぐに示せます。
受領日の記録や、金額を直したときの合意の記録も同じ場所に置いておくと、探す手間が省けます。
写しを何年保存するかについては、次に見る受け取った側の7年をそのまま当てはめず、税務署や顧問の税理士に確認しておくのが確実です。
また、PDFをメールで送るなど電子データでやり取りした場合は、紙とは別の保存の決まりが関わってくるため、その要件も合わせて確かめておく必要があります。
受領側の7年と取適法の2年
書類を受け取る取引先の側では、仕入税額控除を受けるために帳簿と請求書等を保存する必要があります。
国税庁のタックスアンサーでは、請求書等は「受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する」と説明されています1。
この請求書等には、適格請求書や適格簡易請求書、仕入明細書等と、それらの電磁的記録も含まれます1。
発行側にとってこの7年が意味するのは、自社が渡した一枚が、取引先の手元で長く保存され、税務の根拠として見返されるということです。
宛名や税率ごとの金額があいまいな書類を渡すと、何年も経ってから取引先が内容を問い合わせてくることもあり得ます。
そのときに自社の写しや納品書の控えがすぐに出てこなければ、説明に困ります。
7年は発行側の保存期間を定めたものではありませんが、取引先がそれだけ長く書類を手元に置くことは、自社の控えの管理を考えるうえで知っておく価値があります。
取適法の対象取引では、発注した側の委託事業者に、給付の内容や代金の額などを記載した書類または電磁的記録を作成して2年間保存する義務があります4。
これも取引先側の義務であり、納品して請求する側の保存期間を定めたものではありません。
ただ、取引先がこうした記録を残していることを知っておくと、支払期日や金額について確認が必要になったとき、双方の記録を並べて話を進められます。
| 立場 | 保存するもの | 期間 | 関係する制度 |
|---|---|---|---|
| インボイスを交付した発行側 | 交付したインボイスの写し | 税務署や税理士に確認 | インボイス制度 |
| 仕入税額控除を受ける受領側 | 帳簿と請求書等(電磁的記録を含む) | 7年(請求書等は受領日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から) | 消費税の仕入税額控除 |
| 取適法の対象取引の委託事業者 | 給付の内容や代金の額などを記載した書類または電磁的記録 | 2年 | 取適法 |
▼ 図の内容を文字で読む
- インボイスを交付した発行側
- 交付したインボイスの写しを保存する
- 期間は税務署や税理士に確認する
- 仕入税額控除を受ける受領側
- 帳簿と請求書等(電磁的記録を含む)を保存する
- 7年(受領日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から)
- 取適法の対象取引の委託事業者
- 給付の内容や代金の額などを記載した書類または電磁的記録を保存する
- 2年
取引先ごとに支払条件や受け取りたい書類が違うと、どの一枚をインボイスにするか、締め日と支払期日が合っているかを、自社だけで一件ずつ見直すのは手間がかかります。
取引先ごとの取引の形と、いま出している書類の流れを並べ、書類が重なっている箇所や、締め日と期日の関係で見直したほうがよい箇所を一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| インボイスかどうか | 書類の名称ではなく、登録事業者が6項目をそろえているか |
| 納品と同時に払う取引 | 6項目を満たす納品書兼請求書の一枚 |
| 月締めの取引 | 納品ごとの納品書と、期間をまとめてインボイスにした請求書 |
| 6項目のそろえ方 | 一枚でそろえる。複数書類の組み合わせは税務署や税理士に確認 |
| 支払期日(取適法の対象取引) | 受領日から60日以内。検収や請求書の時期で起算点は動かない |
| 保存 | 交付したインボイスの写しを保存。7年と2年は取引先側の決まり |

書類の組み方を変えると、取引先の照合や保存の手順にも影響が及ぶため、切り替える前に流れ全体を見ておくと安心です。 納品書と請求書の役割分担、締め日の区切り方、控えの保管のまとめ方を取引先ごとに整理し、税理士や取引先に確認しておくべき点を洗い出せます。
よくある質問
納品書と請求書は、一枚にまとめて「納品書兼請求書」にしてもよいですか。
インボイスは名称を問わないため、所定の6項目を満たしていれば、納品書兼請求書の一枚をインボイスとして渡せます3。
納品と同時に支払ってもらう取引や、納品時点で金額が動かない取引に向いた形です。
ただ、取引先の社内で納品書と請求書を別の担当者が処理している場合もあるので、切り替える前に取引先の受け取り方を確かめておくと出し直しを避けられます。
月締め取引で、納品書にも税込金額を載せておくべきですか。
月ごとの請求書をインボイスにする組み方なら、税率ごとの対価の総額と消費税額等は請求書の側でそろえます。
納品書に金額を載せるかは取引先との取り決め次第です。
載せる場合は、税込か税抜か、単価の計算方法を請求書とそろえておかないと、月末の照合で金額が合わない原因になります。
インボイスの登録番号は、納品書と請求書の両方に書くべきですか。
登録番号はインボイスの記載事項なので、インボイスとして渡す書類には欠かせません3。
もう一方の書類に載せるかは運用の選択ですが、そちらにも6項目がすべてそろうと、同じ取引について二枚のインボイスがあるように見え、取引先が保存する書類に迷います。
どちらをインボイスにするかを決め、その一枚で6項目をそろえるのが分かりやすい形です。
検収が遅れて請求書を出せないとき、支払期日はどうなりますか。
取適法の対象取引では、支払期日は検査の有無にかかわらず受領日から60日以内で定めることになっており、検収の完了日から数え直すわけではありません4。
対象にならない取引では、契約で定めた条件に従います。
どちらの場合も、取引先がいつ受領したかを示せる記録を手元に残しておくと、期日の確認がしやすくなります。
取適法の対象になる取引かどうかは、どこで確認できますか。
公正取引委員会が取適法の案内を公開しており、委託事業者の義務もそこで説明されています4。
対象は、委託事業者と中小受託事業者の関係にある委託取引に限られます。
自社の取引が当てはまるか判断がつかないときは、案内を確かめたうえで、取引先や専門家に相談すると確実です。
- 1 出典:国税庁「タックスアンサー No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」(2026年)
- 2 出典:国税庁「タックスアンサー No.6625 適格請求書等の記載事項」(2026年)
- 3 出典:国税庁「インボイス制度の概要(適格請求書等保存方式)」(2026年)
- 4 出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(中小受託取引適正化法・取適法)」(2026年)
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