◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 公的資料で数値として示されている実績は、実証での受発注業務時間の平均51.4%削減で、ミス件数の減少率ではない
- オンライン受発注で減ると説明されているのは、電話・FAXの聞き違い・読み違い・転記ミスで、発注内容そのものやマスタの誤りが減るとは言えない
- 効果は取引先も同じ仕組みを使うことが前提で、取引先ごとに別画面になると打ち直しの転記が残る
- 導入前にミスを受け方と原因で記録し、使える取引先に限って試して前後を比べる
目次

オンライン受発注で言える実績は「時間の削減」まで。ミス減少率は確認できていない
FAXの注文書を見ながら品番と数量を打ち込み、電話で受けた注文はメモから入力し直す。
そのたびに数字や品番の取り違えが起き、訂正の連絡や再発送に時間を取られている。
オンライン受発注で減らせるのは、主にこうした手入力・転記に由来するミスです。
公的資料で数値として確かめられる実績は、実証での受発注業務時間の平均51.4%削減で、ミス件数の減少率ではありません1。
効果は取引先も同じ仕組みを使うことが前提です。
自社のミスを原因別に数え、使える取引先に限って試し、前後を比べて判断するのが確実です。
実証で確認された業務時間の削減
中小企業庁の支援サイト「ミラサポplus」の解説では、企業間で受発注のデータをやり取りする仕組みを実証した結果、参加した中小企業の業務時間が平均して51.4%削減されたと紹介されています1。
対象は平成28年度補正予算で行われた実証事業で、自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業界にわたる12のプロジェクトです1。
オンライン受発注の効果を公的な資料で示そうとすると、まず挙がるのがこの数字です。
ここで使われた仕組みは「中小企業共通EDI」と呼ばれます。
EDIは、注文書や納期の連絡を紙やFAXではなく、決まった形式の電子データで企業間に受け渡す仕組みのことです。
共通EDIは、その名のとおり複数の企業が共通の仕様でやり取りすることを前提にしています。
読者の会社が検討しているオンライン受発注が、受注サイトなのか、取引先から指定された入力画面なのか、EDIなのかによって細部は変わりますが、「注文を電子データで受け取り、人が読み取って打ち直す工程を減らす」という点は共通しています。
この51.4%を読むときに押さえておきたいのは、実証の条件です。
ITベンダーの協力のもとで仕組みを整えた実証プロジェクトの平均であり、一般に導入した企業の平均ではありません。
取引先と足並みをそろえ、支援を受けて進めた結果ですから、自社で同じ水準が出ると見込む根拠にはなりません。
それでも、受発注の手作業にかかる時間が仕組みの変更で大きく動きうることは、この数字から読み取れます。
時間の削減とミス減少率は別の数字
51.4%は受発注業務の時間がどれだけ減ったかを示す数字で、ミスの件数や誤出荷の割合が何%減ったかを示すものではありません。
同じ解説の中にも、ミスの件数が何%減ったという数値は示されていません1。
この二つを混ぜてしまうと、判断を誤りやすくなります。
受発注の業務時間には、注文書を読んで入力する時間のほか、内容を確かめる時間、取引先への問い合わせ、訂正の連絡や再入力など、いくつもの作業が含まれます。
時間が半分になったとしても、そのうちどれだけが「ミスの手戻りが減ったこと」によるのかは分かりません。
ミスがもともと少ない会社でも、注文件数が多ければ入力の時間は大きく減りますし、逆にミスが多くても件数が少なければ、時間の削減は小さく見えることがあります。
ですから、「時間が半分になったのだから、取り違えも半分になるはずだ」とは読めません。
転記ミスに悩んで検索してきた方にとって、本当に知りたいのは自社の取り違えがどれだけ減るかのはずです。
その答えを公的な数字から借りてくることは、いまのところできません。
代わりに資料が述べているのは、仕組みの面から「どの種類のミスが減るのか」です。
数値の実績がない分、何が減ると説明されているのかを正確に押さえ、自社のミスのうちそれに当たるものがどれだけあるかを数えることが、判断の一番確かな材料になります。
| 項目 | 平均削減率(%) |
|---|---|
| 受発注業務の時間(実証12プロジェクトの平均) | 51.4 |
減るのは手入力・転記に由来するミス。減らないミスもある
電話・FAXで手入力が要る場面
ミラサポplusの解説は、電話やFAXによる受発注では手入力での転記が必要になり、そこにミスや書類紛失のリスクがあると説明しています1。
受注側の担当者の作業に置き換えると、その意味がよく分かります。
たとえば、取引先からFAXで注文書が届いたとします。
担当者は紙を見ながら、品番、数量、納期、届け先を自社の受注管理の画面へ一つずつ打ち込みます。
手書きの「1」と「7」、かすれた「8」と「3」、似た品番の末尾一文字など、読み違えやすい箇所はいくつもあります。
読み取りが正しくても、打ち込むときに桁を一つずらすこともあります。
電話の注文ではさらに一段階増えます。
相手の言葉を聞いてメモに書き、そのメモを見て入力するため、「聞く」「書く」「打つ」の三回で内容が人の手を通ります。
「いち」と「しち」の聞き違い、メモの走り書きの読み違いは、どれだけ注意しても一定の頻度で起きます。
書類紛失のリスクも同じ構造から生まれます。
FAXの紙が別の書類の束に紛れたり、入力済みの印を付け忘れて二重に入力したりするのは、紙を起点に人が処理を進めるからです。
こうした取り違えは、担当者の注意力の問題に見えがちですが、実際には「同じ内容を人が何度も写す」工程そのものから生じています。
データ連携で変わること
データで受発注をやり取りすれば、手入力による人為的なミスがなくなると資料は説明しています1。
ここでなくなるのは、前の項で見た「読み取る」「聞き取る」「打ち直す」という工程です。
取引先の担当者が入力した品番や数量が、そのままデータとして受注側に届けば、受注側の担当者がFAXを読み解いたり、メモから打ち直したりする必要がなくなります。
工程そのものが消えるので、そこで起きていた読み違い・聞き違い・打ち間違いも起きなくなる、という理屈です。
注意深く入力する、ダブルチェックを増やすといった対策は、ミスの起きる工程を残したまま確率を下げるものですが、データ連携は工程を取り除く点で性質が違います。
データとして残ることで、過去の取引内容を検索しやすくなる点も資料で挙げられています1。
取引先から「先月と同じものを」と言われたとき、紙のファイルをめくって探す代わりに、過去の注文を呼び出して確かめられます。
前回の数量を思い込みで入れてしまうといった確認不足も、元の記録をすぐ見られれば防ぎやすくなります。
ただし、この効果が自社でそのまま出るかは、受け取ったデータをその先でどう扱うかによります。
受注データが自社の販売管理や出荷の仕組みに取り込まれるなら転記はなくなりますが、画面に表示された注文を見て、担当者が別のシステムへ打ち直す運用なら、その打ち直しの段階で転記が残ります。
FAXの紙が画面に変わっただけ、という状態にならないかは、導入を検討する段階で確かめておきたい点です。
減ると言い切れないミス
データ連携で防げるのは、注文の内容が発注側から受注側へ伝わり、受注側で処理されるまでの「写し間違い」です。
反対に、最初から誤った内容が送られてきた場合は、その誤りが正確に届くだけになります。
取引先の担当者が数量を一桁多く入力した、別の品番を選んだ、納期を前の注文と同じ日のまま送った。
こうした発注内容そのものの誤りが減るかどうかは、資料には書かれていません。
電話なら受注側が「いつもより多いですね」と気付けた場面が、データで自動的に流れるようになると、かえって気付く機会が減ることも考えられます。
これは仕組みから考えた懸念であり、実際に増えるという裏付けがあるわけではありません。
もう一つは、品番と商品名、単価などを対応させた商品マスタ(基本情報の一覧)の誤りです。
マスタに誤りがあれば、データが正しく届いても、引き当てられる商品や単価が違ってしまいます。
こちらもオンライン化で減るとは資料から言えません。
つまり、オンライン受発注の効果は、自社のミスが「どこで混入しているか」によって変わります。
写し間違いが中心なら効果が期待でき、発注内容やマスタの誤りが中心なら、オンライン化だけでは手応えが小さいかもしれません。
どちらが多いかは会社によって違うため、後の節で扱う原因別の記録が判断の分かれ目になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注内容そのものの誤り
- 数量・品番・納期の誤り
- 減るとは言えない
- 電話・FAXでの聞き違い・読み違い
- 書類の紛失も同じ工程から生じる
- 減ると説明されている
- 受注側の打ち間違い・転記ミス
- 減ると説明されている
- 画面を見て打ち直す運用なら転記が残る
- 商品マスタの誤り
- 品番・単価の引き当てが違ってしまう
- 減るとは言えない
効果が出る条件は取引先の利用。1社だけでは出ない
取引先が使うかどうか
手入力由来のミスにオンライン化が効くとしても、それは注文がデータで届く場合に限られます。
資料も、1社だけが導入しても効果は得られず、導入するかどうかは取引先の状況や環境を考えて判断するよう述べています1。
受注側の立場で考えると、これは当然の話でもあります。
自社がオンラインの受付画面を用意しても、取引先がこれまでどおりFAXを送ってくれば、担当者はFAXを読んで打ち込み続けます。
新しい受付の仕組みは動いているのに、取り違えの件数は変わらない、ということが起こりえます。
ここで見るべきなのは、取引先の社数よりも注文の流れです。
10社のうち8社が移っても、注文の大半を占める残りの2社がFAXのままなら、転記の量はあまり減りません。
反対に、ミスの多くが特定の数社からの電話注文で起きているなら、その数社が移るだけで手応えが出る可能性があります。
取引先が移るかどうかは、受注側だけでは決められません。
取引先にとっては注文の仕方を変える手間がかかり、パソコンで注文を入力する担当者がいるか、社内の承認の流れに合うかといった事情もあります。
導入を決める前に、主要な取引先に新しい方法で注文してもらえそうかを聞いておくことが、効果を見込むための前提になります。
受注側に残る多画面問題
取引先がオンライン化に積極的な場合にも、別の負担が生じることがあります。
資料は、発注側の企業ごとに独自のシステムがあり、受注側がそれぞれに対応するため「多画面問題」などのコスト負担が大きいと指摘しています1。
多画面問題とは、取引先ごとに違う注文画面を受注側が使い分けなければならない状態です。
たとえば、A社からは専用のWeb画面で、B社からは別の会社が用意した画面で注文が届くとします。
担当者は毎朝それぞれにログインして新しい注文を確かめ、内容を自社の受注管理へ入力し直します。
見る画面が増えるほど確認漏れの機会も増え、画面ごとに項目の並びや品番の表記が違えば、打ち直しの際の取り違えも起きます。
この状態では、転記の元がFAXの紙から取引先の画面に変わっただけで、前の節で見た「人が写す工程」は残っています。
オンライン受発注の効果を見込むときには、取引先が使う仕組みがそろっているか、届いた注文を自社の管理へ取り込めるかまで含めて考える必要があります。
共通EDIが共通の仕様を前提にしているのも、この負担を避けるためだと読み取れます。
Tier3以下で電話・FAXが残る事情
資料はまた、Tier3以下では取引の複雑さから電話やFAXが多いと述べています1。
Tierはサプライチェーンの階層を指し、完成品をつくる企業から見て直接の取引先が1次、その取引先が2次、さらにその先が3次以下にあたります。
階層が下がるほど、取引先の数が多く、一社ごとの規模は小さく、品目や仕様の細かいやり取りが増える傾向があります。
決まった形式のデータに収まりにくい注文が多ければ、電話で確かめながら進めるほうが早い場面もあるでしょう。
受注側の会社にとっては、取引先の中に電話やFAXでしか注文できない相手が残ることを、例外ではなく前提として考えておくほうが現実的です。

そうなると、オンライン化の計画は「全取引先を切り替える」ではなく、「移れる取引先の注文から写す工程を減らし、残る電話・FAXの注文は従来どおり確実に処理する」という形になります。
受付の窓口が二つに分かれる期間が長く続くことも想定し、どの注文がどちらで届いたかを担当者が見失わない運用まで考えておくと、移行の途中でかえって漏れが増える事態を避けやすくなります。
| 取引先の状況 | 受注側に残る作業 | 写し間違いの起きる場所 |
|---|---|---|
| 取引先が電話・FAXのまま | 紙やメモを読んで自社の管理へ入力 | 聞き取り・読み取り・打ち込み |
| 取引先ごとに別の注文画面 | 各画面を確認し自社の管理へ打ち直し | 画面からの打ち直し・確認漏れ |
| 取引先と同じ仕組みでデータを受け取り自社の管理へ取り込む | 届いた内容の確認 | 伝達と転記の工程がなくなる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先が電話・FAXのまま
- 紙やメモを読んで自社の管理へ入力する
- 聞き取り・読み取り・打ち込みで起きる
- 取引先ごとに別の注文画面
- 各画面を確認して自社の管理へ打ち直す
- 画面からの打ち直し・確認漏れで起きる
- 取引先と同じ仕組みでデータを受け取る
- 届いた内容を確認して自社の管理へ取り込む
- 伝達と転記の工程がなくなる
導入前に自社のミスを原因別に数える方法
記録する項目
ここまでで、オンライン受発注が効くのは写し間違いに対してであり、それも取引先がデータで注文してくれる場合に限られることが見えてきました。
そうなると、自社のミスのうちどれだけがそこに当たるのかが、導入を判断する一番の材料になります。
公的な測定の手順は示されていないため、ここからは編集部としての進め方の提案です。
期間を決めて、訂正の連絡、再入力、再発送、取引先からの問い合わせが発生した注文を、1件ずつ記録します。
記録しておきたい項目は次のとおりです。
・日付と取引先
・注文の受け方(FAX、電話、メール、取引先の注文画面など)
・何が違っていたか(品番、数量、納期、届け先、単価など)
・原因の区分(聞き違い、読み違い、打ち間違い・転記ミス、発注側の誤り、マスタの誤り、不明)
・どの段階で気付いたか(入力時、出荷前、納品後の取引先からの連絡など)
原因の区分は、誰の責任かを決めるためのものではありません。
「どの工程で違いが入り込んだか」を見るための区分です。
担当者が自分のミスを申告しにくい雰囲気だと記録が偏るので、工程の問題として扱うことを最初に共有しておくと、実態に近い数字が集まります。
原因が分からないものは無理に振り分けず「不明」としておけば、後で読み返したときに判断を誤りにくくなります。
あわせて、同じ期間の注文件数を受け方別に数えておきます。
ミスの件数だけでは、FAXの注文が多いからミスも多いのか、FAXの注文はミスが起きやすいのかが区別できないためです。
手戻りの時間の控え方
件数とあわせて、ミス1件ごとの手戻りにかかった時間も控えておきます。
訂正の連絡、再入力、出荷の差し替え、再発送の手配など、ミスがなければ発生しなかった作業の時間です。
正確な計測でなくても、「10分程度」「半日がかり」といった目安で十分です。
時間を控える理由は二つあります。
一つは、ミスの重さが件数だけでは分からないことです。
入力段階で気付いて直せた取り違えと、納品後に発覚して再発送になった取り違えでは、手間も取引先への影響もまったく違います。
件数は少なくても、後で見つかるミスが一部の取引先や受け方に集中していれば、そこを優先する理由になります。
もう一つは、試行の後に比べられる数字を持っておくためです。
公的な実績として示されているのは業務時間の削減でした。
自社でも、通常の注文処理にかかる時間を数日分だけ控えておけば、ミスの件数とは別に時間の変化も比べられます。
ミスは減らなかったが処理は早くなった、あるいはその逆、という結果も判断の材料になります。
結果の読み方
記録がたまったら、原因の区分ごとに件数と手戻りの時間を集計します。
見たいのは、聞き違い・読み違い・打ち間違いといった写し間違いが全体のどれくらいを占めるかです。
写し間違いが多くを占め、しかもそれが電話やFAXで注文してくる特定の取引先に偏っている場合は、オンライン化の効果を見込みやすい状況です。
その取引先がデータで注文してくれれば、写す工程ごとなくなるからです。
反対に、発注側の誤りやマスタの誤りが中心なら、オンライン化だけでは取り違えの件数はあまり動かない可能性があります。
その場合は、注文内容を取引先とどう確かめ合うか、商品マスタをどう保守するかといった別の手当てを先に考えるほうが、困り事に直接届きます。
オンライン化を見送るという意味ではなく、期待する効果を時間の削減のほうに置き直す、という読み方もできます。
写し間違いが多くても、それが電話でしか注文できない取引先に集中している場合は、前の節で見たとおり、オンライン化では届かない部分が残ります。
原因の区分と取引先を掛け合わせて見ることで、効果が出そうな範囲と出にくい範囲を、導入前におおまかに見分けられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 写し間違いが多く、特定の取引先に偏る
- 電話やFAXで注文してくる取引先に偏っている
- オンライン化の効果を見込みやすい
- 発注側の誤りやマスタの誤りが中心
- 取り違えの件数はあまり動かない可能性がある
- 注文内容の確かめ合いやマスタの保守を先に考える
- 写し間違いが電話でしか注文できない取引先に集中
- オンライン化では届かない部分が残る
- 期待する効果は時間の削減に置き直す
一部の取引先から試し、ミスと時間の変化を比べる
試す取引先の選び方
取引先が使わなければ効果が出ない以上、いきなり全取引先を切り替えるより、使ってもらえる取引先に限って試すほうが、効果を確かめやすくなります。
資料が導入の要否を取引先の状況や環境から判断するよう述べていることとも合う進め方です1。
ここでも、具体的な手順は編集部の提案です。
候補を選ぶときは、前の節の記録を手がかりにします。
写し間違いが多く起きている取引先、注文の件数がある程度あって変化を見て取れる取引先、そして新しい注文方法に協力してもらえそうな取引先。
この三つが重なる相手が、最初の試行先として向いています。
協力してもらいやすい相手だけを選ぶと、もともとミスが少なく、試行しても変化が見えないことがあります。
反対に、ミスは多いが注文方法を変える余裕のない取引先を選ぶと、試行そのものが進みません。
取引先側の担当者に、注文の入力に手間が増えないか、社内の流れに合うかを事前に聞いておくと、試行の途中で元のFAXに戻ってしまう事態を避けやすくなります。
試行前に決める判断基準
試行を始める前に、何を比べて、どうなれば次に進むのかを決めておきます。
後から数字を見て基準を決めると、都合のよい解釈になりがちだからです。
比べる対象は、試行先からの注文に絞ります。
導入前に記録した、その取引先の写し間違いの件数、手戻りの時間、1件あたりの処理時間を基準にして、試行中の同じ項目と並べます。
月末や繁忙期など注文の波がある場合は、比べる期間の時期をそろえておかないと、仕組みの違いではなく季節の違いを見てしまいます。
どれだけ減れば成功とするかについて、公的な目安はありません。
自社の手戻りにかかっている時間や、取引先への影響の大きさから、「写し間違いが目立って減り、処理時間が増えていなければ次へ進む」といった基準を自社で決めることになります。
試行中は、新しく起きたミスも同じ区分で記録します。
取引先の入力の誤りがそのまま流れてくる、受付画面の確認を忘れる、といった、仕組みを変えたことで現れる種類のミスがあるかもしれないからです。
写し間違いが減った分だけ別の種類が増えていないかを見て、初めて差し引きの効果が分かります。
全面切り替えへ進むかの判断
試行の結果は、いくつかの形に分かれます。
写し間違いが減り、処理時間も減っていれば、条件の近い取引先へ範囲を広げる根拠になります。
写し間違いは減ったものの処理時間が増えた場合は、届いた注文を画面で見て自社の管理へ打ち直していないかを疑います。
多画面問題と同じく、転記が場所を変えて残っている可能性があるためです。
ミスも時間もほとんど変わらなかった場合は、その取引先のミスが写し間違い以外のところで起きていたか、注文の一部がまだ電話やFAXで届いていたかのどちらかであることが多いはずです。
導入前の記録と照らし合わせれば、どちらが当てはまるかを見分けられます。
次の取引先へ広げるときも、同じように導入前の記録を取り、試行し、比べる流れを繰り返します。
全取引先がそろうまで続ける必要はありません。
電話やFAXでしか注文できない取引先が残ることを前提に、写し間違いが多いところから順に移していけば、効果の見えやすい範囲から手作業を減らしていけます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 導入前の記録を取る
- 比べる項目と判断基準を決める
- 試行先の注文をオンラインで受ける
- 導入前の記録と比べる
- 次の取引先を選ぶ
ミスの記録を取っても、どの取引先から移すか、届いた注文を自社の管理へどう取り込むかは、取引先の事情と自社の業務の流れを合わせて見ないと決めにくいためです。
記録した結果をもとに、オンライン化で減らせそうな写し間違いの範囲と、試行先の候補を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 公的な実績の範囲 | 実証での受発注業務時間の平均51.4%削減。ミス件数の減少率ではない |
| 減ると説明されるミス | 電話・FAXの聞き違い・読み違い・転記ミス |
| 減るとは言えないミス | 発注内容そのものの誤り、商品マスタの誤り |
| 効果の前提 | 取引先も同じ仕組みで注文し、届いたデータを自社の管理へ取り込めること |
| 導入前の準備 | ミスを受け方・原因・気付いた段階で記録し、手戻りの時間も控える |
| 試行の判断 | 試行先の注文に絞り、時期をそろえて導入前の記録と比べる |

試行の結果は、ミスの種類の入れ替わりや、画面から打ち直す転記の残り方によって読み方が変わり、数字だけでは次に進むかを判断しにくいためです。 導入前と試行中の記録を並べ、効果が出た部分と転記が残っている部分を見分け、次に広げる取引先を検討できます。
よくある質問
FAXや電話の注文が残る取引先がある場合、オンライン受発注にしても意味はありますか。
オンラインに移った取引先の注文については、読み取りや打ち直しの工程がなくなるため、写し間違いを減らせる可能性があります。
ただし効果はデータで届く注文の分に限られ、FAXや電話の注文では従来どおりの転記が続きます。
意味があるかどうかは、取り違えの多くがどの取引先からの注文で起きているかによります。
原因別の記録で、移れる取引先にミスが集中していると分かれば、一部だけでも取り組む価値は見込めます。
オンライン化しても、発注側の入力ミスは防げますか。
公的資料で減ると説明されているのは、手入力による転記のミスです。
取引先が最初から誤った数量や品番を入力した場合、その内容が正確に届くだけで、オンライン化で防げるとは言えません。
電話なら受注側が気付けた違和感を見落としやすくなる面も考えられるため、試行中は発注側の誤りも区分して記録し、増えていないかを確かめておくと安心です。
ミスの件数を数えるとき、どのくらいの期間を記録すればよいですか。
公的な目安は示されていません。
月末の締めや季節の繁閑など、自社の注文の波が一巡する期間を含めて記録すると、偏りの少ない数字になります。
ミスがもともと少ない会社では、短い期間だと件数が少なすぎて傾向が読めないため、取引先ごとの差が見えるまで期間を延ばすことも考えられます。
取引先ごとに別の受発注システムを使うよう求められたら、どう対応すればよいですか。
取引先ごとに違う画面で注文を確かめ、自社の管理へ打ち直す状態は「多画面問題」と呼ばれ、受注側の負担として資料でも指摘されています。
まずは、それぞれの画面から自社の管理へ打ち直す作業が残るかを確かめます。
残る場合は、写す元が紙から画面に変わっただけで、写し間違いの機会は続きます。
注文件数の多い取引先から優先して対応しつつ、共通の仕組みで受けられないかを取引先と相談する余地も探っておくとよいでしょう。
一部の取引先で試すとき、どの取引先から始めるのがよいですか。
導入前の記録で写し間違いが多く起きている取引先、変化が見えるだけの注文件数がある取引先、新しい注文方法に協力してもらえそうな取引先の三つが重なる相手が向いています。
協力しやすさだけで選ぶとミスが少なく変化が見えにくく、ミスの多さだけで選ぶと試行が進まないことがあります。
候補の取引先には、注文の手間が増えないかを事前に聞いておくと、試行が途中で止まりにくくなります。
画像の出典元
- typing, hands, keyboard, computer, letters, fingers, keys, buttons, electronic, technology, office, candidphotocontest/BlenderTimer on Pixabay
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