◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受発注の手作業は注文の入り口の多さから生まれます。2023年の企業間電子商取引のEC化率は40.0%で、残る経路は人手が中心です。
- 最初に着手するのは現状の計測です。同じ項目を何回入力しているかを数えると、削減の対象が特定できます。
- 様式は標準へ寄せます。適格請求書の記載事項は6項目、登録番号はTと13桁の数字で構成されます。
- 自動化は全件を対象にしません。例外率の低い定型だけを機械に渡し、与信や納期調整は人が担います。
- 電子取引のデータは2024年1月から電子保存が原則です。法人の帳簿書類の保存期間は原則7年です。
目次
受発注の手作業が生まれる場面を洗い出します
受発注の手作業は、注文の入り口が複数に分かれていることから生まれます。電話・ファクス・メール・専用の受発注システム・自社の通販サイトと受け口が並ぶと、同じ注文情報を人が何度も打ち直すことになります。電子商取引に関する市場調査の2024年公表分では、2023年の企業間電子商取引の市場規模は465.2兆円、EC化率は40.0%でした。裏を返せば6割近くは電子化されていない経路です。まずは1か月分の受注を入り口別に数え、転記が起きる地点を一覧にすることから始めます。
棚卸しの単位は、入り口と件数と1件あたりの所要時間の3つです。入り口ごとに、注文を受け取ってから基幹システムへ登録し終えるまでの時間を実測してください。感覚での回答は避け、数件を実際に計測すると数字が動かなくなります。件数と所要時間を掛け合わせれば、人手が集中している経路が並びます。ここで得た数字が、後の判断の土台になります。
次に見るのは転記が起きる地点です。受注の登録、在庫の引き当て、出荷の指示、請求書の作成と、同じ品番や数量が何度も打ち直されていないかを追います。同じ項目を3回以上入力している経路があれば、そこが削減の候補になります。転記の回数は、そのまま入力誤りが起きる機会の数でもあります。誤りが1件出るたびに、確認と訂正でさらに人手を使うことになります。
例外の扱いも忘れずに書き出します。得意先ごとの特別単価、納期の指定、分納、返品や欠品の振り替えといった処理は、件数が少なくても時間を奪います。例外が全体の何割を占めるかを、月次の件数で押さえてください。例外率が高いまま仕組みを入れ替えると、機械に載らない注文が人の側へ滞留します。洗い出しの段階で例外を可視にしておくことが、後の線引きを楽にします。
請求と支払の側にも手作業は残ります。2023年10月に始まった適格請求書等保存方式では、請求書に6項目の記載が求められます。登録番号はTと13桁の数字で構成され、受け取る側は番号の確認と税率ごとの区分を確かめる必要があります。消費税率は10%と軽減税率8%の2区分があるため、区分ごとの合計額と消費税額を突き合わせる作業が発生します。この確認を目視で続けると、月末に人手が集中します。
保存の要件も作業量に効きます。電子取引でやり取りした注文書や請求書のデータは、2024年1月から電子データのまま保存することが原則となりました。紙に印刷しただけの保存は原則として認められません。法人の帳簿書類の保存期間は原則7年で、後から探す場面も想定しておく必要があります。保存の場所と検索の条件が定まっていないと、探す手間が毎月積み上がります。
検索の条件も要件の一部です。電子取引のデータは、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態にすることが求められます。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者などは、データのダウンロードの求めに応じられれば検索の要件は不要とされています。自社がどちらに当たるかを先に確認し、必要な項目を台帳やファイル名に持たせる運用を決めてください。
担当の偏りも記録してください。特定の1人だけが手順を把握している経路は、休暇や退職で止まります。誰がどの入り口を受け持ち、代わりに処理できる人が何人いるかを併記します。人に依存した経路は、仕組みを入れ替える優先度が上がります。属人化の有無は、削減の効果とは別の軸で押さえておきましょう。
洗い出しの粒度は、担当者が1日でたどれる程度に留めます。細かく分けすぎると作り込みに時間がかかり、粗すぎると削減の対象が見えません。入り口・件数・所要時間・転記回数・例外率の5つを1枚にまとめ、関係者で読み合わせてください。読み合わせの場で認識が食い違う箇所は、実測で決着させます。ここまでで、どこに手を付けるかの候補が絞り込めます。
受発注の手作業を減らす着手順の5点(順位根拠:前の工程の結果が次の工程の前提になる実施順序)
- 注文の入り口を1か月分数え、転記が起きる地点を一覧にします。入り口ごとの所要時間を実測し、人手が集中している経路を特定します。
- 受注の受け取りから入金の消込までを1本の線で書き出します。品番・数量・納期・単価の4項目について入力回数を数え、作業時間と待ち時間を分けて記録します。
- 商品コードと電文と請求の様式を標準へ寄せます。商品識別コードは13桁と8桁の2種類があるため、自社の型番との対応表を先に整えます。
- 例外率を測り、自動処理に載せる範囲と人が判断する範囲を線引きします。例外が1割を超える処理は、自動化の前に例外そのものを減らします。
- 1つの取引先と1つの商品群に絞って並行運用します。月次の締めを少なくとも1回またぎ、差し戻しの件数と月末の未処理件数で切り替えを判定します。
- 月に1回、同じ4つの指標を確認する見直しの型を決めます。制度の要件が変わった月は、様式と保存の設定を併せて点検します。
作業の流れを書き出して重複と待ちを見つけます
洗い出した地点を1本の線につないで書き出すと、重複入力と待ち時間が見えてきます。注文の受け取りから、在庫の引き当て、出荷の指示、納品、請求、入金の消込までを途切れずに並べてください。線にすれば、同じ項目を何度入力しているか、どこで書類が止まっているかが同じ視野に入ります。前の節で数えた件数と所要時間をこの線に重ねると、削減の効果が大きい区間が特定できます。ここでの目的は改善案を出すことではなく、現状を数字で写し取ることです。
書き出す範囲は、自社の担当が終わる地点までではなく、入金の消込までを含めます。受注側の入力を減らしても、請求や消込で人手が増えれば全体の時間は変わりません。範囲を狭く切ると、下流へ手間を押し出しただけの改善になりがちです。取引先へ渡す情報と、取引先から返ってくる情報も線の上に置いてください。
重複入力は、追跡する項目を決めると見つけやすくなります。品番・数量・納期・単価の4項目に絞り、それぞれが何回入力されているかを数えます。1つの注文で同じ品番を4回入力している経路があれば、そこが優先の対象です。数える対象を絞るほど、関係者の間で結果がぶれません。
待ちは作業時間とは別に記録します。承認の待ち、在庫確認の待ち、与信の返答待ちは、担当者が手を動かしていない時間です。作業時間と待ち時間を分けて記録すると、人を増やしても解けない区間が判別できます。待ちが長い区間は、判断の権限や連絡の順序を見直す対象になります。
実測はシステムに残る記録から取ります。受け付けた時刻、登録した時刻、出荷を指示した時刻の差を、1週間分ほど並べてください。記録が残らない紙や電話の経路は、担当者に手元の控えを残してもらいます。平均だけでなく、最も長かった数件も併せて見ておくと、例外の姿がつかめます。
用語をそろえる作業も同時に進めます。受注日・出荷指示日・納品日の定義が部署ごとに違うと、書き出した線が食い違います。どの時点をもってその日付とするかを、1つの文で定義してください。定義を先に固めておけば、後で指標を測るときに数字が一致します。
誤りが後工程へ波及する経路も線の上に印を付けます。品番の打ち間違いは誤出荷につながり、返品と再出荷で送料と人手が二重にかかります。数量の誤りは欠品または過剰在庫を生み、取引先への謝罪と納期の再調整が発生します。単価の誤りは請求の訂正と再発行を招き、入金の消込まで遅れます。誤りが起きる地点と、その影響が及ぶ範囲を対にして記録してください。
誤りの影響は、件数だけでなく金額でも押さえます。1件の誤出荷では、返品の引き取り、再出荷、在庫の訂正の3つの作業と送料が積み上がります。月に何件の誤りが出ているかを入り口別に数え、1件あたりの復旧時間を掛けてください。金額に直すと、先に手を付ける区間の順序が関係者の間で揺れなくなります。
書き出した線は、関係者が集まって読み合わせる場で仕上げます。担当者ごとに認識が異なる箇所は、その場で実測の記録に当たって確定させます。完成した線は、この後の様式そろえと自動化の線引きで繰り返し使う土台になります。作り込みに時間をかけすぎず、2週間程度で第1版を出すことをおすすめします。
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取引先とやり取りする様式をそろえます
受発注の手作業が減らない主な原因は、取引先ごとに様式が違うことにあります。注文書の項目名、商品の呼び方、単価の書き方、締めの日付がばらばらだと、自社で読み替える作業が毎回発生します。読み替えは自動処理に載せにくく、担当者の記憶に依存しがちです。そこで、自社の様式を業界で公開されている標準へ寄せ、取引先へも同じ様式を提案していきます。標準に寄せるほど、後の自動化で扱える範囲が広がります。
最初に整えるのは商品コードです。日本で広く使われている商品識別コードは13桁と8桁の2種類があり、事業者を識別するコードは9桁または10桁で割り当てられます。自社の型番と標準コードの対応表を作り、どちらが正なのかを1つに決めてください。対応表がないまま先へ進むと、注文の突き合わせが最後まで人手に残ります。
次に電文の様式を確認します。小売と卸の取引では、インターネット回線を前提とした流通ビジネスメッセージ標準が公開されており、発注・出荷・受領・請求といった電文の項目が定義されています。取引先がこの標準に対応していれば、項目の読み替えを自社で作り込む必要が減ります。対応していない先については、現行の様式を受け付けたうえで、自社側で標準の項目へ変換する入り口を1か所に集約します。
請求の様式についても標準が用意されています。国際的な文書交換の仕組みを基にした日本向けの仕様が公開され、請求書のデータを機械が読める形で送受信できます。紙やPDFの請求書を目視で確認している場合、この様式へ移すと消込までの手作業が減ります。導入の可否は取引先の対応状況で決まるため、上位の取引先から順に打診してください。
税の要件も様式に織り込みます。適格請求書には6項目の記載が求められ、登録番号はTと13桁の数字で構成されます。税率は10%と軽減税率8%の2区分があるため、税率ごとに区分した対価の合計額と消費税額を持たせる必要があります。項目を後から足すと改修が二度手間になるので、様式を決める段階で入れておきましょう。
仕入れ側の要件も様式に関わります。適格請求書発行事業者以外からの仕入れには経過措置が設けられ、2023年10月から2026年9月30日までは仕入税額の80%、2026年10月から2029年9月30日までは50%を控除できます。取引先が登録事業者かどうかで処理が変わるため、登録番号の有無を取引先台帳の項目として持たせてください。台帳にあれば、控除の割合が切り替わる時期にも一括で確認できます。
個別対応をどこまで受け入れるかは、先に線を引いておきます。取引額の上位から順に並べ、上位の先には標準への移行を相談し、少額かつ件数の少ない先は現行の様式のまま受け付けます。すべての先を一度に動かそうとすると、調整だけで数か月が過ぎます。受け入れる個別対応の数に上限を設け、超える場合は責任者が判断する運びにしてください。
移行の段取りは、取引先との合意を先に取ることが要点です。切り替える日、並行して両方の様式を受け付ける期間、問い合わせの窓口を文書で共有します。合意のないまま自社の都合で様式を変えると、注文が届かない事故につながります。切り替え後も、旧様式で届いた注文を受け止める手順を残しておくと安全です。
様式をそろえないまま自動化へ進むと、読み替えの処理が取引先の数だけ増えていきます。増えた処理は改修のたびに全数の確認が必要となり、保守の負担が年々重くなります。先に様式をそろえておけば、後から取引先が増えても同じ入り口で受け止められます。手前の工程に時間を使うほど、後の工程が軽くなると考えてください。
自動化する範囲と人が判断する範囲を分けます
自動化はすべての注文を対象にするものではありません。判定の基準が文書になっている定型の処理は機械へ渡し、条件が毎回変わる判断は人に残します。線を引かずに全件を機械へ載せると、例外が止まるたびに担当者が原因を調べることになり、かえって時間が増えます。前の節で数えた例外率を使い、どこまでを自動処理の対象とするかを数字で決めてください。線引きの結果は文書に残し、関係者が同じ基準で運用できるようにします。
自動処理に向くのは、次の3つの条件を満たす処理です。第一に、入力される項目と形式が定まっていること。第二に、判定の基準が文書化され、担当者が違っても同じ結果になること。第三に、例外の発生が少なく、止まったときの影響が限られていることです。3つのうち1つでも欠ける処理は、まず条件を満たす作業から先に進めます。
人が担う領域として残るのは、与信の判断、特別単価の適用、納期の再調整、返品やクレームの処理です。これらは取引先との関係や在庫の状況によって結論が変わり、過去の記録だけでは決められません。人に残す処理を明示しておくと、担当者は自分の役割を把握しやすくなります。機械に任せた範囲と人が判断する範囲の境目を、手順書の1ページ目に置いてください。
線引きの目安には例外率を使います。ある処理で例外が1割を超えるなら、自動化の前に例外そのものを減らす手立てを検討します。特別単価が多いなら価格表の整理、納期指定が多いなら受付の締め時刻の見直しが先です。例外を残したまま仕組みを入れると、止まった注文を人が拾う運用が常態になります。
誤りのコストも線引きの材料になります。品番の誤りによる誤出荷は、返品の引き取り、再出荷、在庫の訂正という3つの作業を生みます。数量の誤りは欠品による納期遅れか、過剰在庫による保管費用のどちらかにつながります。単価や税率の誤りは請求書の再発行を招き、入金の消込が翌月へずれ込みます。影響が大きい処理ほど、機械の判定だけで完結させず確認の手順を挟んでください。
証跡の設計も同時に決めます。電子取引でやり取りしたデータの保存では、訂正や削除の記録を残すなどの措置と、後から探して確認できる状態にすることの双方が求められます。自動処理が何をいつ実行したかの記録がないと、後から誤りをたどれません。誰が承認し、どの条件で処理されたかを残す設計を、機能の設計と同じ段階で決めておきましょう。
改ざん防止の措置には選べる方法があります。タイムスタンプの付与、訂正や削除の履歴が残るシステムでの授受と保存、訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付けと運用のいずれかで足ります。規程を備える方法は費用がかからないため、仕組みの入れ替えを待たずに着手できます。どの方法を採るかを決め、選んだ根拠を証跡の設計と併せて文書に残してください。
責任の分界も文書にします。機械が処理した結果を誰が確認するのか、確認しない範囲はどこまでかを明記してください。分界が曖昧だと、誤りが出たときに確認の担当が決まらず、対応が遅れます。確認を省く範囲については、省いてよいと判断した根拠も併せて残します。
この線引きは一度決めて終わりにはしません。取引先が増えれば例外の種類も変わり、機械に渡せる範囲は広がったり狭まったりします。次の節で扱う試行の結果を見ながら、線の位置を動かしていきます。線を動かした記録を残しておけば、判断の理由が後任へ引き継がれます。
小さく試して運用に載せます
新しい手順は、範囲を絞って試してから広げます。1つの取引先と1つの商品群に限定し、現行の手順と並べて動かしてください。全社で一斉に切り替えると、想定外が起きたときに戻る先がなくなります。絞った範囲で数字を取り、判定の基準を満たしたら次の取引先へ広げる進め方が確実です。試行の目的は成功を証明することではなく、想定外を早く見つけることにあります。
試す範囲は、件数が中位で例外の少ない取引先から選びます。件数が多すぎる先は影響が大きく、少なすぎる先は判定に足るだけの記録が集まりません。商品群も、標準の商品コードが振られていて単価の変動が小さいものを選びます。難しい先から始めると、手順そのものの良し悪しが評価できなくなります。
並行運用の期間は、月次の締めを少なくとも1回はまたぐように取ります。受発注の作業は月末と月初に偏るため、その山を通過しないと本当の負荷は見えません。並行の間は、新旧どちらの結果も残し、差が出た注文をすべて記録してください。差の原因を1件ずつ潰す作業が、そのまま手順の修正になります。
判定の指標は、始める前に決めておきます。同じ項目の入力回数、受け付けから登録までの所要時間、差し戻しの件数、月末に残った未処理の件数の4つを使うと比べやすくなります。これらは前の節で現状を測った指標と同じものにしてください。指標が変わると、改善したのか測り方が変わっただけなのかが判別できません。
比較の土台となる現行の数字は、試行を始める前に3か月分ほど押さえます。受発注の作業は月末と月初に偏るため、1か月分だけでは季節の偏りと改善の差が区別できません。4つの指標それぞれについて、平均と最も悪かった月を並べて記録してください。この記録がないと、切り替えの判定で数字の解釈が分かれます。
手順書と教育も試行のうちに整えます。担当者が迷った場面をその場で書き足し、次の人が読める形に直していきます。手順書は完成してから配るのではなく、試行の初日から使いながら育てるものです。例外が出たときの連絡先と差し戻しの基準を、手順書の前半に置いてください。
切り替えの条件は、数値で表します。差し戻しの件数が並行運用の後半で減り続けていること、月末の未処理が現行と同等以下であることを最低条件にします。条件を満たさないまま日程だけで切り替えると、締めの時期に業務が止まります。条件を満たさない場合は、原因を特定してから期間を延ばす判断をしてください。
切り戻しの手順も用意しておきます。新しい手順を止めて現行へ戻す判断は誰がするか、戻す作業に何が必要かを、試行を始める前に決めます。戻せる状態を保っているという前提があると、担当者は落ち着いて試行に取り組めます。切り戻しを使わずに済めば、その手順は次の展開先へそのまま引き継げます。
展開の順序は、試行で得た記録に沿って決めます。同じ様式で受け付けている取引先をまとめ、似た条件の先から順に広げてください。取引先ごとに手順を作り直すのではなく、共通の手順に対する差分だけを管理します。差分の一覧が短く保たれているうちは、展開の速度を落とす必要はありません。
続けて改善するための見直しの型を決めます
仕組みを入れ替えた後も、手作業は少しずつ戻ってきます。取引先が増え、商品が入れ替わり、税や保存の要件が変われば、例外の受け皿として人手が足されるからです。そこで、見直す周期と担当と見る指標をあらかじめ決めておきます。月に1回、決まった指標を同じ形で確認する型を作れば、増えた手作業に早く気づけます。型がないと、気づいたときには元の姿へ戻っています。
月次で見る指標は、試行で使ったものをそのまま引き継ぎます。同じ項目の入力回数、受け付けから登録までの所要時間、差し戻しの件数、月末の未処理件数の4つです。数字が悪化した月は、原因を取引先別と商品群別に分けて見てください。全体の平均だけを追うと、特定の先で起きている滞留が平均に埋もれます。
制度の改定にも追随が必要です。適格請求書等保存方式では請求書に6項目の記載が求められ、登録番号はTと13桁の数字で構成されます。電子取引のデータは2024年1月から電子データのまま保存することが原則となり、法人の帳簿書類の保存期間は原則7年です。要件が変われば様式と保存の設定を見直す必要があるため、確認の担当を決めておきましょう。
期日は暦に落として管理します。免税事業者からの仕入れに係る経過措置は、控除の割合が2026年10月に80%から50%へ切り替わり、2029年9月30日で終わります。帳簿書類の保存期間は原則7年ですが、欠損金額が生じた事業年度については10年間の保存が必要です。これらの期日を年間の予定表に載せ、見直しの回で残りの期間を確認してください。
取引先の増減も見直しの引き金になります。新しい取引先を迎えるたびに、標準の様式で受け付けられるか、個別対応が必要かを判定してください。個別対応の数が増え続けているなら、標準へ寄せる打診をやり直す時期です。判定の結果は一覧に残し、次の見直しで前月との差を確認します。
記録の残し方も型に含めます。指標の数字、判断した内容、変更した手順を1つの場所に時系列で残してください。記録が散らばると、なぜその手順になっているのかを後任がたどれません。手順を変えたときは、変えた理由を1文で添えておくと引き継ぎが楽になります。
内製だけで進める場合、必要となる知識の範囲は広くなります。受発注の業務手順、商品コードと電文の標準、税と保存の要件、基幹システムの連携仕様を同時に扱える人が要ります。加えて、取引先との調整と社内の合意形成にも時間がかかります。1人で担うのは難しいため、業務側と情報システム側の双方から担当を出す前提で計画を立ててください。外部の支援を使う場合も、判断の基準と証跡の設計まで含めて委ねる範囲を明確にします。
見直しの場は、短く定例で開くほうが続きます。指標の数字を先に配り、悪化した項目だけを扱う運びにすれば、時間は30分ほどで足ります。全項目を毎回説明する会にすると、参加者が減り、やがて開かれなくなります。決めたことと次回までの担当を、その場で記録に残してください。
本稿では、受発注の手作業を減らす進め方を6つの節で整理しました。要点を3つに集約すると次のとおりです。第一に、入り口と転記の地点を数えて現状を数字で写し取ること。第二に、商品コードと電文と請求の様式を標準へ寄せ、自動処理に載せられる土台を作ること。第三に、例外率で自動と人の範囲を線引きし、範囲を絞った試行で判定してから広げることです。この順序を守れば、手戻りを抑えながら手作業を減らしていけます。
よくある質問
受発注の手作業を減らす取り組みは、どのくらいの期間を見ておけばよいですか。
期間は対象の範囲と取引先の数で変わるため、一律には示せません。まず1か月分の受注を数える棚卸しと、受注から入金の消込までの流れの書き出しを先に終えます。その後、1つの取引先と1つの商品群に絞った並行運用で判定してから広げると、手戻りを抑えられます。期間を先に決めるより、判定の指標を先に決めるほうが確実です。
取引先が標準的な様式に対応していない場合はどうすればよいですか。
取引額の大きい先から順に相談し、対応が難しい先は現行の様式のまま受け付けます。受け口は残したうえで、自社側で標準の項目へ変換する手順を1か所に集約してください。変換の入り口をまとめておけば、個別対応が社内に散らばらず、保守の負担も抑えられます。個別対応の件数は月次で数え、増え続けている場合は打診をやり直します。
電子帳簿保存法への対応は、受発注の見直しとどう関係しますか。
電子取引でやり取りした注文書や請求書のデータは、2024年1月から電子データのまま保存することが原則です。紙に印刷しただけの保存は原則として認められません。法人の帳簿書類の保存期間は原則7年で、後から探す場面も想定されます。保存の場所と検索の条件を様式の設計と同じ段階で決めておくと、月々の探す手間を減らせます。
費用はどのように見積もればよいですか。
費用は対象の範囲と取引先の数で変わるため、先に現状の人手を数値化してください。削減できる転記の件数と所要時間を月あたりで算出しておくと、投じる費用と比べる基準ができます。範囲を絞った試行にかかる費用と、全社へ広げる費用は分けて見積もります。試行の結果を見てから展開の規模を決める順序が、無駄な投資を避ける近道です。
自動化を進めると、担当者の仕事はどう変わりますか。
入力と転記に使っていた時間が減り、判断と交渉へ時間を移せます。与信の判断、特別単価の適用、納期の再調整、返品やクレームの処理は人が担う領域として残ります。担当者には、機械が処理した結果を確認する手順と、例外を差し戻す基準を先に渡してください。役割の変更を事前に説明しておくと、新しい運用が定着しやすくなります。
- *1 出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」(2024年) 経路
- *2 出典:国税庁「インボイス制度(適格請求書等保存方式)の概要」(2023年) 経路
- *3 出典:国税庁「電子帳簿保存法関係」(2024年) 経路
- *4 出典:デジタル庁「デジタルインボイスの推進」(2024年) 経路
- *5 出典:一般財団法人流通システム開発センター「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)」(2024年) 経路
- *6 出典:一般財団法人流通システム開発センター「JANコード(GTIN-13、GTIN-8)」(2024年) 経路
画像の出典元
- A yellow forklift in a large warehouse/Photo by Kseniia Ilinykh on Unsplash
- Two women walking through a warehouse aisle with blue shelvi/Photo by Centre for Ageing Better on Unsplash
- Person preparing a cardboard box on a warehouse conveyor system/Photo by GB The Green Brand on Unsplash
- Abstract arrangement of layered cardboard pieces/Photo by Alexander von Schulz on Unsplash
- Woman in pink hoodie labeling a package/Photo by GB The Green Brand on Unsplash