◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取引先からEDI対応を求められたら、方式・範囲と期限・費用負担・窓口の4点を聞き返してから判断する
- 取適法の対象取引かどうかで断れる余地や費用負担の考え方が変わる。卸の通常の売買は対象外の可能性が高く、交渉事項になる
- 方式は取引先の数と基幹システムの取込対応で選ぶ。Web画面型では基幹への転記が残ることがある
- 費用は初期・月額・取引先ごと・基幹改修に分けて見積もり、取引先の都合で発生する費用かどうかを交渉の論点にする
- 切替は取引先ごとに時期をずらし、試験データを出荷指示・請求まで流して確かめる
目次

EDI導入を取引先から求められたら最初に確認する4点
得意先から「EDIで発注したいので対応してほしい」と連絡が来た。
FAXや電話で受けてきた注文がどう変わるのか、費用はこちらが持つのか、そもそも断れるのかが分からず、返事を保留している。
この段階では、受けるか断るかを決める必要はありません。
方式、範囲と期限、費用負担、窓口の4点を取引先に聞き返せば、全面的に受けるか、一部で受けるか、条件を交渉するかを判断できます。
取引が取適法の対象なら、発注側が負担すべき費用の転嫁などには歯止めがあります。
通常の売買なら、時期や負担は交渉で決まります。
方式は、取引先の数と、自社の基幹システムが受注データを取り込めるかで選びます。
方式(相手指定か標準規格か)
EDIは、受発注や出荷・請求の情報を、決められた形式の電子データで企業間でやり取りする仕組みです。
ただ、取引先が「EDIで」と言うとき、指している仕組みは大きく二つに分かれます。
一つは、取引先が用意したWebの画面に自社がログインして、注文を確認する形です。
もう一つは、決められた標準形式のデータを受け取り、自社のシステムに取り込む形です。
標準形式の代表が流通BMSです。
流通BMSは、消費財流通業界の標準を目標に、やり取りする電子文書の形式と、通信の手順・セキュリティを定めたEDIの標準仕様です3。
導入企業は2025年時点で21,600社以上とされています3。
また中小企業庁は、業種をまたいで使える中小企業共通EDIを紹介しています。
この仕組みでは、受注側は標準に対応したプロバイダーや業務アプリを使って注文を受けます2。
流通BMSと中小企業共通EDIは別の仕組みです。
取引先がどちらを指しているのか、それともどちらでもない独自の画面なのかを区別して聞く必要があります。
この区別によって、受注担当の仕事の変わり方が大きく異なります。
Web画面型では、FAXを見る代わりに画面を見るようになりますが、販売管理システムへの入力は残る場合があります。
データ受信型では、取り込みが整えば転記そのものが減ります。
その代わり、自社側に受信と取込の仕組みが必要です。
返答の前に「御社が用意する画面を使う形ですか、データを当社のシステムで受け取る形ですか」「規格名やサービス名は何ですか」と聞いておくと、その後の検討が具体的になります。
範囲と期限
次に、どの書類までを電子化するのかを確かめます。
発注データだけを受け取るのか、出荷の案内や受領、請求までEDIでやり取りするのかによって、関わる部署が変わります。
受注だけなら、受注担当の作業の話で済みます。
請求まで含むなら、経理の締め処理や照合のやり方も見直しの対象になります。
期限は、いつから切り替えるのかと、FAXなど従来の方法との併用期間があるのかを分けて聞きます。
開始日が決まっていても、しばらく従来の注文書が並行して届くなら、取込の結果を突き合わせながら移行できます。
逆に、ある日から一斉に切り替わるなら、それまでに試験と現場の準備を終えなければなりません。
期限の有無や理由は取引先の事情で決まります。
一般論から推し量らず、通知や担当者の説明で確かめます。
費用負担
取引先が指定するサービスを使う場合、受注側に初期費用や月額の利用料がかかるのかどうかは、受けるかどうかの判断を左右します。
かかる場合は、誰がどれだけ負担するのかも重要です。
この段階では、金額が妥当かどうかを論じる必要はありません。
まず、どんな費用が誰に発生する前提なのかを聞き出します。
費用の内訳と負担の考え方は、方式を見たあとで改めて整理します。
窓口と担当
最後に、取引先側で接続設定や試験を担当する窓口を確認します。
あわせて、自社側で誰が導入を決め、誰が日々の操作をするのかも決めておきます。
EDIを導入するかどうかを決めるのが経営者や管理職でも、毎朝注文データを受け取って確認するのは受注担当です。
取込でエラーが出たときの取引先の連絡先や、出荷・請求の担当への引き継ぎ方が曖昧なままだと、切替の直後に問い合わせが行き来します。
EDI対応は断れるのか、交渉できるのか:取適法の対象かどうかで分かれる
承諾と費用転嫁の原則
要求の中身が見えてくると、次に気になるのは「断ったらどうなるか」という点です。
答えは、自社と取引先との取引が、下請法の後継である取適法の対象になるかどうかで変わります。
公正取引委員会が下請法の時代に示した留意事項では、発注を電磁的記録に切り替えるには、受注側の事前の承諾が必要とされています4。
承諾を強要することや、承諾しないことを理由に不利益な扱いをすることは、違反のおそれがあるとされています4。
システム開発費など、発注側が負担すべき費用を受注側に負担させることも、違反のおそれがあるとされています4。
ただし、この資料は下請法の時代のものです。
法改正で発注内容の示し方に関するルールにも見直しが行われています。
承諾の要否を含め、現行の取適法での扱いは、公正取引委員会の最新の案内で確かめる必要があります。
費用を不当に転嫁させないという考え方を交渉で持ち出す場合も、根拠とする規定を確認してから使うほうが確実です。
取適法の対象は、製造委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託の4つの取引です。
さらに、当事者の資本金や従業員数の基準を満たす場合に限られます5。
つまり、会社の規模だけでは決まりません。
取引の中身が「委託」に当たるかどうかが分かれ目です。
対象外の通常売買での考え方
卸がメーカーから仕入れた商品を小売店などへ販売する取引は、商品の売買です。
上の4つの委託のいずれにも当たらない可能性が高く、その場合は、取適法の承諾や費用負担のルールで守られる関係にはなりません。
一方、得意先の仕様で商品を製造・加工して納めている場合は、製造委託に当たる余地があり、扱いが変わります。
同じ得意先との間でも、取引ごとに中身が違うことがあります。
個別の取引が対象になるかどうかは、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口で確かめるのが確実です。
通常の売買であれば、EDIへの対応は取引条件の一つとして、交渉で決まります。
交渉の余地は、想像しているより広い場合があります。
発注側にとっても、取引先の切り替えは1社ずつスケジュールを合わせて進める必要があります。
発注側の事例では、切替が直前に集中すると間に合わない取引先が出るという懸念が示されています1。
発注側にも移行時期を分散させたい理由があるなら、開始時期の後ろ倒しや併用期間の設定は、相手にとっても受け入れやすい提案になり得ます。
交渉で持ち出しやすいのは、たとえば次の点です。
- 開始時期と、従来の注文書との併用期間
- 受注側に発生する利用料や接続費用の負担の分け方
- まず発注データだけで始め、出荷・請求は後から加える段階的な範囲
- 試験期間中の問い合わせ窓口と、取込エラー時の連絡手段
断るか受けるかの二択で考えると、取引全体を失うかどうかの話になってしまいます。
条件を付けて受けるという選択肢を持っておけば、自社の準備期間と費用を守りながら、取引先の移行計画にも協力できます。
受注側のEDI対応方式と、受注取込から請求までの作業の変わり方
3方式の比較表
受けると決めたら、次は方式を選びます。
たとえば、FAXで届いた注文書を受注担当が見て、販売管理などの基幹システムに商品と数量を入力し、在庫を引き当てて出荷指示を出し、月末に請求書をまとめているとします。
EDIで変わるのは、この流れのうち、注文の内容を基幹に入れるまでの部分です。
受注側が取れる方式は、大きく3つあります。
1つ目は、取引先が指定するWeb画面に入って注文を確認する方式です。
2つ目は、流通BMSなどの標準形式のデータを受信して、基幹に取り込む方式です。
3つ目は、標準に対応したプロバイダーなどに、変換や中継を任せる方式です。
表の中で判断が分かれるのは、基幹への連携と、取引先が増えたときの作業です。
Web画面型は始めやすい反面、画面の構成や出力できるデータの形は取引先ごとに異なります。
そのため、注文を基幹に入れる作業が手作業のまま残ることがあります。
取引先が1社なら負担は限られます。
しかし、別の取引先も別の画面を求めてくると、ログインして確認する先が増え、入力の手間も取引先の数だけ重なります。
この点は公的な資料で作業量が示されているわけではなく、仕組みの違いから言える整理です。
標準形式のデータを直接受ける方式は、基幹システムがその形式を取り込めるかどうかに左右されます。
取り込めれば、注文を見て打ち直す作業はなくなり、受注担当の仕事は取り込まれた内容の確認に変わります。
取り込めない場合は、変換の仕組みを足すか、基幹側に取込機能を加える改修が必要です。
プロバイダー経由の方式は、変換や中継をサービス側に任せるものです。
中小企業庁は中小企業共通EDIについて、受注側は標準に対応したプロバイダーや業務アプリを利用するだけで済み、大きな費用はかからないと説明しています2。
ただし、これは中小企業共通EDIについての説明で、金額は示されていません。
流通BMSを使う取引先にも同じ条件が当てはまるとは限りません。
取引先が指定する規格にプロバイダーが対応しているかを確かめる必要があります。
データで受けても残る作業
データで受けるようになっても、受注担当の仕事がなくなるわけではありません。
取引先の商品コードと自社の商品コードの対応、納品先の店舗や倉庫のコード、単価の取り決めが基幹の登録内容とずれていると、取り込んだ注文が正しい商品や単価で入りません。
取込の段階で止まる仕組みなら、エラーとして気づけます。
しかし、別の商品に置き換わったまま出荷や請求へ流れると、後から原因をたどるのに手間がかかります。
欠品や数量の訂正を取引先にどう返すかも、方式によって変わります。
出荷の案内までEDIで返す取り決めなら、その入力が新しい作業になります。
中小企業庁は、卸・小売を含む6業界の12の実証プロジェクトで、平均すると受発注の業務時間が削減されたと報告しています2。
ただしこれは実証の結果であり、自社で同じ効果が出ることを示すものではありません。
どこで転記が減り、どこに確認が残るかを自社の流れに当てはめてみることが、方式選びの実質的な中身です。
| 方式 | 受注取込の方法 | 基幹・請求への連携 | 取引先追加時の作業 | 費用の発生点 |
|---|---|---|---|---|
| 取引先指定のWeb画面 | 画面にログインして注文を確認 | 出力形式によっては基幹への転記が残る | 取引先ごとに別の画面と操作を覚える | 取引先が定める利用料の有無による |
| 標準形式のデータを直接受信 | 受信したデータを基幹に取り込む | 基幹が形式に対応すれば転記が不要 | 同じ規格なら接続設定と試験が中心 | 受信の仕組みと基幹の取込対応 |
| プロバイダー経由 | 変換・中継されたデータを業務アプリ等で受ける | アプリから基幹への渡し方次第 | プロバイダー側の接続先追加で対応 | プロバイダーやアプリの利用料 |
EDI導入の費用は誰が持つのか:発生する場面と負担の考え方
費用が発生する4つの場面
方式が決まると、費用がどこで発生するかも具体的になります。
受注側で考えておきたいのは、次の4つの場面です。
- 初期:接続の設定、受信用のソフトやサービスの申込み、取引先との試験
- 月額:Web-EDIやプロバイダーの利用料、通信の費用
- 取引先ごと:接続先を1社増やすたびに発生する設定や追加料金
- 基幹改修:受信したデータを販売管理などへ取り込むための機能追加や変換の仕組み
このほか、マスタの整備や試験、現場の操作の習得にかかる社内の時間も、外部に払う費用ではないものの、導入の負担として見込んでおく必要があります。
相場の金額については、確かな資料で示せるものがありません。
費用はサービスや基幹システムの構成によって大きく変わります。
取引先が指定するサービスの料金表と、自社の基幹システムを扱う会社の見積もりで、上の4つを一つずつ埋めていくのが現実的です。
誰が負担するかを交渉の論点にする
費用の負担は、取引が取適法の対象かどうかで考え方が分かれます。
対象の取引であれば、システム開発費など発注側が負担すべき費用を受注側に負担させることは、違反のおそれがあるとされています4。
前の節で触れたとおり、これは下請法時代の留意事項に基づくものです。
現行の扱いは、公正取引委員会の案内で確かめます。
対象外の通常の売買では、費用の負担は契約と交渉で決まります。
このとき、費用を「取引先の都合で発生するもの」と「自社の業務効率にもつながるもの」に分けて考えると、交渉の筋道を立てやすくなります。
たとえば、ある取引先専用のWeb画面の利用料は、その取引先との取引のためだけに発生する費用です。
一方、基幹に取込機能を加える改修は、ほかの取引先のデータを受けるときにも使える可能性があります。
こちらは自社の投資として判断する余地があります。
中小企業共通EDIのように、受注側の費用は大きくないと説明されている仕組みもあります2。
ただし、取引先がその仕組みを使うとは限りません。
取引先の指定するサービスが受注側に料金を求めるものなら、その根拠と、ほかの受け方を選べるかどうかを聞いてみてください。
それが負担を下げる最初の手がかりになります。
取引先数・受注量・既存システム別の選び方(全面・一部・条件交渉)
4つの軸で自社の位置を確かめる
ここまでの材料を、自社の状況に当てはめてみます。
判断の軸は、EDIを求めている取引先の数、その取引先からの受注量、基幹システムが受注データを取り込めるか、取引先の要求がどれほど強いか、の4つです。
取引先の数が効いてくるのは、切替の調整が1社ごとに必要だからです。
取引先が500弱ある発注側の事例では、EDIの切り替えを小売店1社ずつ、スケジュールを合わせて進める必要があったと報じられています1。
これは2016年時点の発注側1社の事例で、通信回線の切替に伴う移行という事情もありました。
それでも、相手の数だけ調整が積み上がるという構造は、受注側が複数の取引先のEDIに個別に対応する場合にも当てはまります。
受注側では、取引先ごとに方式や規格が異なれば、接続設定と試験、コードの対応づけをその数だけ行うことになります。
受注量は、手作業が残る方式で回せるかどうかの目安になります。
1日に数件の注文なら、Web画面を見て基幹に入力する作業は大きな負担になりません。
しかし、件数や明細の行数が多いと、転記の時間と入力ミスの確認が日々の作業を圧迫します。
基幹の取込対応は、データで受けたときに転記をなくせるかを決めます。
要求の強さは、どこまで時期や範囲を交渉できるかを決めます。
全面対応・一部対応・条件交渉の分かれ目
これらを組み合わせると、次のような分かれ目が見えてきます。
確かな基準値があるわけではなく、判断の考え方として示します。
- 全面対応を検討する状況:複数の取引先が標準形式のデータでのやり取りを求めていて、受注量も多い。
基幹が取り込めるか、プロバイダー経由で取込までつなげられる見通しがある - 一部対応から始める状況:求めているのは1社だけで受注量も限られ、基幹の取込には改修が必要。
まず取引先指定の画面で受け、基幹への入力は当面手作業とし、EDIを求める取引先が増えた時点で方式を見直す - 条件交渉を優先する状況:期限が短い、受注側の費用負担が大きい、基幹の改修が間に合わないなど、そのまま受けると準備が追いつかない。
開始時期、併用期間、費用負担、範囲を交渉する
一部対応から始める場合に気をつけたいのは、取引先ごとに別の画面で受ける状態が、いつのまにか増えていくことです。
1社目を画面で受けても困ることは少ないでしょう。
しかし、2社目、3社目が別々の画面を指定してくると、確認と転記の作業が分散します。
どの時点でデータ受信やプロバイダー経由に切り替えるのかを、取引先の数や受注量の目安として社内で決めておくと、場当たり的な追加を避けられます。
全面対応を選ぶ場合も、すべての取引先を同時に切り替える必要はありません。
方式を一本化したうえで、取引先ごとの切替時期は分けて進めます。
これが、次に見る進め方の前提になります。
EDI導入を決めたあとの進め方:調整・テスト・現場切替の順序
取引先の優先順位づけ
導入を決めたら、取引先との調整、試験、現場の切替の順に進めます。
最初に、EDIで受ける予定の取引先を並べ、期限の早さ、受注量、要求の強さで優先順位を付けます。
一つの考え方として、期限が決まっている取引先を先に、受注量が多く転記の負担が大きい取引先をその次に置きます。
1社あたりの期間の目安として、先の発注側の事例では、事前調整から利用開始まで1カ月ほどかかるとされています1。
これは2016年時点の1社の事例で、すべての取引先に当てはまる期間ではありません。
それでも、1社ずつ時間がかかる以上、複数の取引先の切替を同じ月に重ねると、試験や問い合わせが重なって手が回らなくなります。
同じ事例でも、切替が直前に集中すると間に合わない取引先が出るという懸念が示されていました1。
受注側でも、切替時期を取引先ごとにずらして並べることが、現場の負担を一時期に集中させない方法になります。
試験データでの取込確認
取引先との接続ができたら、本番の前に試験用の発注データを受け取り、自社の基幹に取り込んでみます。
確かめるのは、商品、数量、単価、納品先、納期が、取引先の意図どおりに基幹へ入るかどうかです。
取引先の商品コードと自社のコードの対応が抜けている商品があれば、ここで見つかります。
取込の確認は受注の画面で終わらせず、出荷指示と請求まで流してみると安心です。
受注の段階では正しく見えても、納品先コードのずれで出荷先が変わったり、単価の扱いの違いで請求額がずれたりすることがあるためです。
従来のFAXの注文書が並行して届く期間があれば、同じ注文の内容を突き合わせることで、取込の誤りを本番前に洗い出せます。
試験で見つかったずれは、自社のマスタの修正で済むものと、取引先側の設定の確認が必要なものに分けて、窓口に連絡します。
最初に決めた窓口と担当が、ここで役に立ちます。
現場の切替
本番に切り替える日までに、受注担当が何を見て、どこで確認し、誰に引き継ぐかを紙一枚にまとめておきます。
たとえば、朝いちばんに受信状況を確認する、取込エラーが出たら受注担当が内容を見て取引先の窓口に連絡する、欠品や数量の訂正はどの手段で返すか、といった内容です。
導入を進めた担当者と、毎日操作する受注担当が別の人であることは珍しくありません。
切替直後は、導入担当が受注担当のそばで、最初の数日の受信と取込を一緒に確かめると、手順書にない迷いをその場で解消できます。
併用期間を取れるなら、その間はFAXの注文書と取り込んだ注文を見比べます。
ずれが出なくなったところで、従来の方法を止めます。
1社目の切替で見つかった手順の抜けやマスタの不備は、2社目以降の準備にそのまま生かせます。
期限に余裕がある取引先の中から、受注量が多すぎず、窓口と連絡を取りやすい相手を最初の1社に選ぶと、学んだことを次へ持ち越しやすくなります。
方式ごとの違いが分かっても、取引先の要求を自社の受注から請求までの流れや基幹システムの構成に当てはめる段階では、判断に迷いやすくなります。
取引先から届いた依頼の内容と現在の受注の流れをもとに、どの方式なら転記がどこで減り、何の確認が残るかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 返答の前 | 方式・範囲と期限・費用負担・窓口の4点を取引先に確認する |
| 断れるか | 取適法の対象取引かで分かれる。卸の通常の売買は対象外の可能性が高く、交渉事項になる |
| 方式 | 取引先の数と、基幹が受注データを取り込めるかで選ぶ |
| 費用 | 初期・月額・取引先ごと・基幹改修に分けて見積もり、負担を交渉する |
| 進め方 | 取引先ごとに時期をずらし、試験データを請求まで流して確かめる |
複数の取引先から異なる方式を求められていたり、基幹の取込対応がはっきりしなかったりすると、全面対応・一部対応・条件交渉のどれを選ぶかを自社だけで固めるのは難しくなります。 取引先ごとの要求と受注量を並べ、切替の順序と、見積もりで確かめるべき費用の項目を確認できます。
よくある質問
EDIに対応しないと取引を打ち切られることはありますか
取引を続けるかどうかは取引先の判断で、一般論として起きる・起きないを言うことはできません。
取適法の対象となる取引については、下請法時代の公正取引委員会の留意事項で、電磁的記録への切替を承諾しないことを理由に不利益な扱いをすることは違反のおそれがあるとされていました4。
現行の扱いは、公正取引委員会の案内で確かめる必要があります。
卸の通常の売買のように対象外の取引では、法律で守られる関係ではありません。
対応しないと伝えるより、開始時期や範囲、費用負担を条件として示し、対応する意思と準備の都合を両方伝えるほうが、話を進めやすくなります。
流通BMSとWeb-EDIは何が違いますか
流通BMSは、消費財流通業界の標準を目標に、電子文書の形式と通信の手順・セキュリティを定めたEDIの標準仕様です3。
標準に沿ったデータを受け取り、自社のシステムに取り込む使い方が前提になります。
Web-EDIは、取引先などが用意したWebの画面にログインして注文を確認する形のことで、画面の構成や出力できるデータは提供する側によって異なります。
受注側から見た違いは、基幹への転記をなくせる見込みがあるか、取引先が増えたときに同じ仕組みで受けられるか、という点に表れます。
取引先が複数の異なるEDIを求めてきた場合はどうすればよいですか
まず各取引先の要求を、標準形式か独自の画面かに分けて並べます。
標準形式を求める取引先が複数あれば同じ受け方でまとめられる可能性があり、プロバイダー経由で変換や中継を任せる方法も候補になります。
独自の画面を指定する取引先が多い場合は、画面ごとの確認と転記が積み重なります。
受注量の多い取引先から、データでの受け渡しが可能かを相談する価値があります。
切替は1社ずつ調整が必要なので、時期を取引先ごとにずらして計画します1。
基幹システムが受注データの取込に対応していない場合はどうすればよいですか
選択肢は3つです。
取引先指定の画面で受けて当面は手入力を続ける、標準に対応したプロバイダーや業務アプリで受けて変換する、基幹に取込機能を加える改修をする、のいずれかです。
中小企業共通EDIについては、受注側は対応するプロバイダーや業務アプリを利用するだけで済み、大きな費用はかからないと中小企業庁が説明しています2。
ただし、取引先の規格に対応しているかや、受けたデータを基幹にどう渡すかはサービスごとに異なるため、改修の見積もりと並べて比べます。
受注量が少ないうちは手入力で受け、件数が増えた段階で切り替えるという判断もあり得ます。
取適法の対象かどうかはどこで確認できますか
公正取引委員会のよくある質問で、対象となる取引の類型(製造委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託)と、資本金や従業員数の基準を確認できます5。
卸が仕入れた商品を販売する通常の売買はこれらに当たらない可能性が高い一方、得意先の仕様で製造や加工を請け負う取引は扱いが変わり得ます。
同じ得意先でも取引ごとに中身が違うことがあるので、判断が付かない場合は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口で個別に確かめてください。
- 1 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 2 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 3 出典:流通システム開発センター(GS1 Japan)/流通BMS協議会「流通BMS」(2025年)
- 4 出典:公正取引委員会「下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項」
- 5 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」