◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 43.7%が稟議承認のポイントとして費用対効果を挙げており、卸価格変更の決裁も試算から組み立てます。
- 57.2%が承認までに差し戻しを経験しており、一度で通る稟議のほうが少数です。
- 19.3%しかROI試算を事前に用意しておらず、先に備える側へ回る余地が残っています。
- 5階層までの割当に対応する仕組みなら、得意先ごとの卸価格の根拠をそのまま稟議書へ写せます。
- 57.8%が却下による導入の断念を経験しており、規模ごとに決裁ルートを確かめてから起案します。
目次

稟議の差し戻しと却下の実態
卸価格変更の稟議で先に整えるのは、機能の一覧ではなく費用対効果の試算です。承認のポイントに費用対効果を挙げた人は43.7%で、ROI試算を事前に用意した人は19.3%にとどまります。「いくら得か」を自社の取引先数で書き切った稟議書が、決裁者の問いに答える土台になります。
得意先ごとの卸価格を決める現場を、一つ思い浮かべます。3,000社の販売加盟店を抱え、3,800品種を扱う日東電工CSシステム株式会社(2020年の事例)ほどの規模になると、掛け率の組み合わせは一覧表の一枚に収まりません3。夕方の会議室に残るのは、改定案を印刷した紙をめくる音だけです。担当者は掛け率を手元の一覧へ転記していきます。「この価格でよいのか」と問われた時に開く資料は、まだそろっていません。
稟議の差し戻しは、珍しい出来事ではありません。数字を一つ置きます。57.2%が、承認までに差し戻しを経験したと答えています5。二人に一人を超える割合です。57.8%は、稟議の却下で導入を断念した経験を持つ人の割合で、差し戻しよりさらに多くなります5。いずれも2026年の調査で、対象はBtoB商材の導入全般であり、卸価格の改定に絞った数字ではありません。先に挙げた加盟店と品種の数は2020年の事例の値です。「差し戻しは運が悪かっただけ」と片づけられる頻度ではありません。
差し戻しのたびに見積を取り直し、得意先ごとの掛け率を転記し直す時間は、そのまま「改定の遅れ」という費用に変わります。
得意先ごとに卸価格を切り替える仕組み
得意先の階層へ卸価格表を結び付ける
得意先ごとの卸価格は、担当者の記憶ではなく登録した価格表で切り替えます。親会社、事業部、支店、購買部門、現場という具合に、取引先の組織は縦に伸びます。段の深さを確かめます。5階層までの割当に対応していれば、本社の掛け率を支店へ引き継ぐか、支店だけ別の掛け率にするかを画面の上で決められます1。「担当者しか知らない価格」が減れば、稟議書へ書く根拠も短くまとまります。
階層の割当における上限は2026年時点で案内されている値です。深さが足りるかどうかは、取引先ごとに、価格の決め方が何段で決まっているかを数えてください。一段で足りる相手と、上限まで使っても足りない相手が混ざることがあります。その場合は「例外」の扱いを先に決めておく必要があります。例外を残したまま稟議へ出すか、例外ごと設計に載せるかで、決裁者からの質問の数が変わります。
見積と受注を同じ価格で照合する
卸価格を切り替える仕組みの値打ちは、見積の画面だけでは終わりません。受注の登録、出荷、請求までを同じ価格表で照合できるかが、月末の手間を左右します。先に挙げた加盟店と品種の規模を持つ会社では、価格の転記が一箇所ずれるだけで、請求の照合に時間がかかります3。「見積は合っていたのに請求で揉める」という手戻りは、稟議書では費用として書き出せます。
背景として、BtoBの取引がどれだけ画面の上へ移ったかも添えられます。数字を一つ置きます。514.4兆円が、2024年のBtoB-EC市場規模です4。43.1%が同じ年のEC化率で、取引の半分近くが電子の上で動いている勘定になります4。これは全体の傾向であり、個別の業種の卸価格の慣行を直接示すものではありません。それでも「紙の注文書のほうが早い」とは言い切りにくい環境になってきましたね。
43.1%まで進んだBtoBのEC化率の裏側で、卸価格だけを紙と転記で回し続けるなら、改定のたびに「いつもの往復」が戻ってきます。
決裁者が重視する根拠
決裁者が見ているのは、機能の数ではなく、その費用を払うと何が戻るのかという一点です。数字を置きます。43.7%が、稟議承認のポイントとして費用対効果を挙げています5。四割を超える人が同じ場所を見ている勘定になります。機能の比較表だけを添えた稟議書は、ここに答えていません。「他社も使っています」という一文は、費用対効果の代わりにはなりません。
では、費用対効果を数字で用意している人はどれだけいるでしょうか。19.3%にとどまるのが、ROI試算を事前に準備した割合です5。求める側が四割を超え、備える側は二割に届きません。いずれも2026年の調査による値です。この開きは、卸価格変更の稟議で先に手を付けられる場所です。「試算は経理の仕事」と切り分けず、営業企画の側で粗い数字から始めてください。
試算に載せる項目は、自社の取引先の数と、卸価格を直す回数から組み立てます。取引先ごとに、直近1年で掛け率を変更した回数を数えてください。一件あたりの見積の作り直しに何分かかるかを合わせれば、削れる時間が出ます。ここへ導入の費用を並べれば、決裁者の問いに数字で答えられます。「効果は導入してみないと判りません」という説明で止めないことが、質問への備えになりますね。
もう一つ、誰の承認が要るのかを先に確かめます。情報システム、経理、法務のどこで止まるかは、会社ごとに違います。稟議を回す前に、各部門が過去に差し戻した理由を一つずつ聞いておくと、書き足す項目が決まります。「後で聞かれてから直す」か「先に潰しておく」かで、承認までの往復の数が変わります。
ここから先は、「何を重視されるか」と「どの規模でどこまで決裁が上がるか」を、順に詳しく見ていきます。
決裁者から問われる費用対効果は、自社の取引先数と掛け率の変更回数を実際の設定へ当てはめないと金額になりませんので、切り替えの範囲を把握している相手と一度突き合わせておく必要があります。
どの数字を稟議書へ載せれば決裁者の問いに答えられるのかを、自社の取引の条件に沿って確かめられます。無料相談で要件を整理する
決裁で重視されるポイントの順位
- 費用対効果を、自社の取引先数と掛け率の変更回数から試算する
- 初期費用と月額に関わる費用を分け、支払いの時期まで書く
- 得意先ごとの卸価格の決め方を、階層への割当で説明する
- 過去に差し戻した理由を、部門ごとに聞き取って先に書き足す
- 効果が想定を下回った場合の打ち手を併記する
この並びに優劣の順序はありません。
押さえる場所は同じでも、「どこまで決裁が上がるか」は導入の規模で変わるため、次に規模ごとの費用と決裁ルートを並べます。
規模で分かれる卸価格変更の決裁ルート
| 導入の規模 | 初期費用の目安 | 月額に関わる費用 | 稟議で先に用意する数字 |
|---|---|---|---|
| 標準プラン導入 | 20万円(EC-Rider の Standard・Pro プラン) | プランの月額料金 | 得意先数と掛け率の変更回数 |
| 小規模カスタマイズ | 400万円から | 7万円から | 追加開発の範囲と保守の分担 |
| 大規模カスタマイズ | 1500万円から | ベースエンジン利用料 17万円から(EC-Rider B2B Ⅱ) | 連携する基幹システムと工期 |

標準プランで卸価格を切り替える場合の決裁
得意先の数がそれほど多くなく、卸価格の決め方も掛け率の掛け違いだけで収まるなら、標準のプランで足ります。金額を置きます。20万円が、EC-Rider の Standard・Pro プランの初期費用です2。小規模なカスタマイズの初期費用の下限と比べると、二十分の一の水準です。ここで問われるのは、「いまの業務のどこを変えずに済むか」という点です。
標準プランの初期費用は2026年時点で案内されている値で、月額の料金はプランごとに別に決まります。標準プランで進める稟議書は、費用の説明よりも、切り替えの当日に何が止まるのかの説明で詰まります。受注の受け口を切り替える日、旧価格の見積の扱い、得意先への通知の順を書き出してください。難易度は低く、工数は社内の数字を集める分で収まります。
| 稟議書の項目 | 標準プラン導入での書き方 |
|---|---|
| 費用 | 初期費用と月額の料金を分けて並べる |
| 切替の日 | 受注の受け口を切り替える日と旧価格の見積の扱い |
| 承認者 | 部門長までで収まるかを起案の前に確かめる |
標準プランの範囲で卸価格の切替が収まるかどうかは、得意先の掛け率の例外をいくつ抱えているかで変わるため、料金の一覧を眺めるだけでは稟議書に書く費用の範囲が定まりません。
初期費用と月額をどう書き分ければ部門長の決裁で収まるのかが見えてきます。無料相談で自社の条件を持ち込む
小規模カスタマイズを含む場合の決裁
標準のままでは得意先の掛け率の例外を吸収できない場合、小規模なカスタマイズが入ります。金額を置きます。400万円からが、EC-Rider の小規模カスタマイズの初期費用です2。7万円からが同じ小規模カスタマイズの月額の下限で、標準プランとは支払いの重さが変わります2。ここで決めるのは「どこまで作るか」ではなく「どこから先は作らないか」です。
どこから先は作らないかを決めても、小規模カスタマイズの初期費用と月額の下限は2026年時点で案内されている値で、要件が増えれば上振れします。稟議では、追加開発の範囲を一覧にして、保守を誰が持つかまで書きます。作らない部分を先に決めておくと、決裁者の「それは標準で足りないのか」という問いに短く答えられます。難易度は中くらいで、工数は要件の切り分けへ集まります。
| 確かめる事柄 | 小規模カスタマイズでの確かめ方 |
|---|---|
| 作る範囲 | 標準のまま使う機能と追加開発する機能を分ける |
| 保守 | 追加した部分の保守を誰が持つかを決める |
| 費用 | 初期費用の下限と月額の下限を分けて書く |

追加で作る部分と標準のまま使う部分の切り分けは稟議の差し戻しが起きやすい場所であり、自社だけで決めると見積の前提が後から動きます。
どこから先を作らずに済ませられるのかという判断の材料を、稟議書へ載せられる形で持ち帰れます。無料相談で自社の条件を持ち込む
大規模カスタマイズを伴う場合の決裁
基幹システムとの連携や、複数の販売会社をまたぐ卸価格の統合が絡むと、規模は一段上がります。金額を置きます。1500万円からが、EC-Rider の大規模カスタマイズの初期費用です2。小規模カスタマイズの下限と比べて三倍を超える開きがあります。稟議を起案する前に、「うちの決裁はどこまで上がるのか」を、部門長から経理、役員までたどれる規程で確かめてください。
17万円からが、EC-Rider B2B Ⅱ のベースエンジン利用料の月額の下限で、2026年時点で案内されている値です2。大規模な連携では、稟議書に工期と関わる部門を書き込みます。「いつ止まるのか」を情報システムの側と先に合わせておくと、回付の途中で資料を作り直す手間が減らせます。難易度は高く、工数は連携先の部門との調整に集まります。
| 確かめる事柄 | 大規模カスタマイズでの確かめ方 |
|---|---|
| 連携 | 基幹システムとの受け渡し方法と担当する部門 |
| 工期 | 切り替えの時期と業務が止まる時間 |
| 費用 | 初期費用とベースエンジン利用料を分けて書く |
基幹システムとの連携を含む卸価格の統合では、工期と関わる部門の数が決裁の長さを左右するため、早い段階で実装の前提を確かめておく必要があります。
役員の決裁まで上がる稟議書に何を添えるべきかを、工期と連携の条件から詰められます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 確かめる事柄 | 通し方の基準 |
|---|---|
| 費用対効果 | 自社の取引先数と掛け率の変更回数から試算して金額で示す |
| 費用の書き分け | 初期費用と月額に関わる費用を分け、支払いの時期まで書く |
| 卸価格の根拠 | 得意先の階層へ価格表を結び付け、例外の数を数えて添える |
| 決裁の上がり先 | 導入の規模ごとに、どの部門まで承認が要るかを起案の前に確かめる |
| 差し戻しへの備え | 過去に差し戻した理由を部門ごとに聞き取り、書き足してから回付する |
卸価格の改定は一度決裁が下りれば終わりではなく、得意先が増えるたびに同じ稟議を繰り返すことになるため、続けられる形で組んでおく必要があります。 自社の得意先の構成に合う切り替え方と費用の見通しが、次の稟議を起こす前に整います。
よくある質問
稟議書は誰に先に見せればよいですか
起案の前に、過去に差し戻しを出した部門へ一度当ててください。情報システムと経理では、見る場所が違います。「連携できるのか」と「いつ払うのか」の二つに先に答えておくと、回付の途中で止まる回数を減らせます。順番は、現場の部門長、関係部門、決裁者の順で当てると扱いやすくなります。
効果が数字にしにくい場合はどう書きますか
効果を金額だけで書こうとすると手が止まります。取引先ごとの掛け率の変更回数と、一件あたりの見積の作り直しにかかる時間を数え、削れる時間を先に出してください。「時間がいくら分か」は後から掛け算で足せます。金額へ直せない項目は、数えられる単位のまま並べておくと、決裁者も比べやすくなります。
品種や取引先が多いと標準プランでは足りませんか
品種の数だけで決めつけない方が安全です。3,800品種を扱う事例でも、価格の決め方が整理されていれば、切り替えの設定そのものは同じ手順で進みます3。問題になるのは、「この得意先だけ特別」という例外がいくつあるかです。例外の数を数えてから、標準で収まるかカスタマイズが要るかを判断してください。
決裁が下りた後に卸価格を追加で変える時も稟議が要りますか
価格表の中身を差し替えるだけなら、社内の規程で決裁の要否が分かれます。仕組みの導入そのものと、個別の掛け率の変更を、同じ稟議で扱わないでください。「導入の決裁」と「価格の決裁」を分けて書いておくと、次の改定のたびに同じ資料を作り直さずに済みます。該当する条文を稟議書へ引いておくと確実です。
他社の導入事例は稟議書に添えた方がよいですか
添えて構いませんが、主役にはしないでください。決裁者が見ているのは自社の費用対効果であり、他社の規模が自社とそろうことはまれです。事例は「同じ業務の流れがあるか」を示す材料として、一枚に絞ります。残りの頁は、自社の取引先数と変更回数から起こした試算に充ててください。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Riderお役立ちコラム『BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える』」(2026年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider(BtoB EC受発注システム)料金プラン・費用ページ」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(2020年) 経路
- 4 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2024年度) 経路
- 5 出典:株式会社ネオマーケティング「BtoB企業の社内稟議・承認プロセス実態調査2026」(2026年) 経路
画像の出典元
- A monochrome close-up of a pen drawing a heart on paper, sym/Photo by ROCCO STOPPOLONI on Pexels
- Close-up of a hand sketching on white paper with a pencil, e/Photo by Lum3n on Pexels
- Close-up of hands signing adoption papers in an office envir/Photo by Kindel Media on Pexels