◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- EDIの切り替えは取引先1社ずつ日程を合わせる必要があり、事前調整から利用開始まで1カ月ほどかかるとされる。段階移行は妥協ではなく標準的な進み方だと考えたほうが社内の期待値がずれない
- 電子文書での商取引や受発注情報管理の導入率は18.5%、電子受発注システムの導入率も約2割という水準が報じられており、未対応の取引先が多いことは業界全体の状況である
- 着手の順序は、発注件数だけでなく、確認の電話や明細行数まで含めて受注処理に時間を食っている相手から考えると、軽くなった分を早く受け取りやすい
- 対応体制の整わない取引先は後回しにするだけでなく、従来のFAX・電話を受け続ける並行運用と、相手の作業がどう減るかの説明を組み合わせる。費用が理由なら、取引先自身が申請できる補助制度を案内できる
- 自社側は直近1〜2年分の月次集計を移し、受注・売上管理から稼働させ、6〜8週間の並行稼働で日次照合する段取りを先に決める。並行稼働と取引先の切り替えは時期を重ねない
目次

なぜ取引先ごとの段階移行にならざるを得ないのか
取引先ごとに、手書きの注文書がFAXで届き、営業所からは電話で品番と数量が伝えられ、別の相手からは注文データが送られてくる。
この状態からオンライン受発注へ移したいと考えても、全社に一斉に号令をかけられる相手ではないため、どこから手を付けるかで止まってしまいます。
実際、EDIの切り替えは取引先1社ずつスケジュールを合わせる必要があり、事前調整から利用開始までは1カ月ほどかかるとされています1。
順序を決める公的な共通基準は今回の調査では見当たりませんでした。
出発点になるのは、自社の受注処理でどれだけ時間を食っている相手か、という見方です。
そのうえで、体制の整わない取引先は後ろに回すだけでなく、従来手段を受け続ける並行運用と個別の説明を挟みます。
全社一斉移行が難しい理由
受発注の方法は、自社の都合だけで決まっているわけではありません。
ある取引先では購買担当者が手書きの注文書を作ってFAXで流し、別の取引先では営業所の担当者が電話で品番と数量を読み上げ、また別の取引先では基幹システムから出力した注文データが送られてくる。
この違いは、相手の社内で誰が発注し、誰が承認し、どの帳票が手元に残るかという手順に結び付いています。
オンライン受発注への切り替えは、自社の受注画面を入れ替えるだけの話ではなく、相手の社内手順にも手を入れてもらうことを意味します。
実務の記録を見ても、EDIの切り替えは取引先1社ずつスケジュールを合わせて進める必要があるとされています1。
これは流通BMSやWeb-EDIへ移していく2016年時点の事例をもとにした説明ですが、相手の予定に合わせなければ動かないという性質は、オンライン受発注でも変わりません。
期日を切って一斉に切り替えれば、準備の間に合わなかった取引先の注文はどこにも入らなくなります。
注文が届かなければ相手の在庫が切れ、その連絡と謝罪の電話が受注担当に集中することになりかねません。
一斉切替を成り立たせようとすると、全取引先が同じ日までに操作できる人を決め、コードの対応を確認し、テスト発注を終えている必要があります。
取引先が数十社でも難しい条件ですが、対象の数が増えるほど総量は膨らみます。
たとえば工業用粘着テープやテープ貼り機器を中心に製品の提案・販売を手掛ける企業では、全国約3,000社の販売店が製品を取り扱っていると紹介されています6。
この事例から確認できるのは取引先数と事業の内容までで、どんな順序で移行したかまでは書かれていませんが、数千社を一つの締切に揃えることが現実的でないことは見当がつきます。
個別調整にかかる期間の目安
同じ事例では、事前調整から利用開始までは1カ月ほどかかるとされています1。
この1カ月は、自社側の設定作業だけで埋まっているわけではありません。
相手の社内で誰が発注操作をするのかを決めてもらい、商品コードや取引先コードの対応を確認し、試しの発注を流して伝票の中身が合うかを見る、といった往復が入れば、日数は相手の都合にも左右されます。
こちらが急いでも、相手の担当者が現場に出ていれば返事は翌週になります。
この数字が効いてくるのは、全体の期間を社内へ説明するときです。
仮に受注担当が同時に面倒を見られるのが3社までだとすれば、30社を移すには10回分の調整期間が積み上がる計算になります。
これは一社あたりの目安を単純に並べただけの試算で、相手の規模や繁忙期によって前後します。
それでも、「今年度中に全部」と経営層へ答えてしまう前に、この掛け算を一度してみる価値はあります。
移行が思うように進まないこと自体は、珍しい話ではありません。
先の事例でも、ある企業グループの取引先のうち、IP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行済みだったのは10%強にとどまっていました1。
つまり、紙とオンラインが混在した途中の状態が長く続くことを前提に、受注側の体制を組むほうが現実に合います。
段階移行は妥協ではなく、この種の切り替えの標準的な進み方だと考えたほうが、社内の期待値もずれません。
出典:日経クロステック「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年、流通BMS/Web-EDIへの移行事例)
受発注のデジタル化は全国的にどこまで進んでいるのか
中小企業の導入率の現状
取引先に切り替えを持ちかけると、「うちはそういうのは無理で」と返ってくることがあります。
その相手が特別に遅れているのか、それとも今のところ普通なのかで、こちらの構え方は変わります。
強く押すべき場面なのか、時間をかける前提で並行運用を用意すべき場面なのかの分かれ目になるからです。
中小商業・サービス業を対象とした調査では、「電子文書での商取引や受発注情報管理」の導入率は18.5%で、2割を下回る結果だったと紹介されています2。
これは2018年時点の数字で、対象は中小商業・サービス業全体です。
卸売業だけを取り出した割合ではないため、自社の取引先構成にそのまま当てはめることはできません。
時期の新しい記事でも、電子受発注システムの導入率は当時の水準で約2割とされていました3(2021年9月時点)。
調査の対象も定義も同じではないので、二つの数字を並べて増えた減ったと読むことはできません。
それでも、どちらも「大半がまだ電子化していない」という位置にあることは共通しています。
この前提に立つと、取引先への話し方が変わります。
紙とFAXで発注してくる相手が多いのは、自社の働きかけが足りないというより、業界全体が移行の途中にあることの表れだと受け止められます。
「対応していないのは御社だけです」とは言いにくい一方で、「これから順番に移していく中で、御社の番をいつにするか」という相談の持ちかけ方はできます。
順序の話にしてしまえば、相手も断るか受けるかの二択から降りられます。
国が掲げる普及目標
国の側も、この水準を引き上げようとしてきました。
中小企業庁は企業間のデータ連携基盤を構築することで、電子受発注システムの導入率を2023年めどに当時の約2割から約5割へ引き上げる目標を掲げていたと報じられています3。
受発注の電子化が、個社の思いつきではなく政策として後押しされている領域だということです。
ここで区別しておきたいのは、これが目標値であって達成の実測ではない点です。
その後どこまで届いたのかを示す数字は、今回確認した資料の中にはありません。
「国が5割と言っているのだから、もう半分は移行済みのはずだ」という前提で取引先の反応を見積もると、実際の返答との差に驚くことになります。
それでも、この目標は社内と取引先の両方で使えます。
社内では、いま着手する理由を説明する材料になります。
取引先には、費用や手間の話の前に、電子化が単発の要請ではなく続いていく流れだと伝える背景になります。
相手が費用の当てを気にしている場合は、後の節で触れる補助制度と合わせて示すと話が具体的になります。

取引先の優先順位をどう組み立てるか
発注量・処理負担で絞り込む考え方
中小企業共通EDIの実証事業では、12のプロジェクトで導入効果が測られ、受発注業務の時間が平均して51.4%削減されたと報告されています2(2018年度)。
大企業より中小企業のほうが削減率は高かったとされています2。
これはEDI導入の実証事業で測られた結果で、どの企業でも同じ幅で時間が減ると約束するものではありません。
それでも、この結果からは一つの考え方が導けます。
減るのは処理にかけている時間ですから、もともと時間をかけている相手ほど、切り替えたときに戻ってくる時間は大きくなります。
一社あたりの調整に1カ月ほどかかるのであれば1、その1カ月を誰のために使うかという選び方になります。
裏返せば、月に数件しか注文のない相手を先頭に置くと、同じ1カ月を使って戻ってくるものは小さいということです。
ただし、処理負担は月の発注件数だけでは測りきれません。
電話で受けた内容を復唱して伝票に起こしている相手、FAXの手書きを読み違えて確認の電話を折り返している相手、注文書1枚あたりの明細行数が多い相手は、件数の割に時間を食っています。
逆に、件数は多くても定型の品番が並ぶだけで、そのまま入力できる相手もあります。
一週間でよいので、受注担当が取引先ごとに何分使っているかを記録してみると、件数の順位と手間の順位がずれていることがあります。
記録するのは、受け取ってから受注データが確定するまでの時間、そのうち相手へ確認の連絡をした回数、締め後に修正が入った件数くらいで足ります。
手間の集中している相手を先に移せば、受注担当の残業や締め後の手直しが早い段階で軽くなります。
最初の数社で出た変化は、次の予算や人手を社内で確保するときの説明材料にもなります。
公的な統一基準がない中での判断の位置づけ
どの取引先から移すべきかを業種横断で示した公的な基準は、今回の調査では確認できませんでした。
裏を返せば、順序は各社が自分で決めてよく、その代わり決めた理由を自分で説明できる必要があるということです。
前の項で挙げた処理負担の考え方も、正解の基準ではなく、確認できた事実から組み立てた出発点として扱うのが妥当です。
一つ言えるのは、対応の読みにくい相手を先頭に置くと、全体の見通しが崩れやすいことです。
一社ごとに日程を合わせる進め方では1、先頭の一社が止まると後ろの予定もまとめてずれます。
返答が早く、社内で操作を担当できる人がはっきりしている取引先から始めると、説明の資料やテストのやり方が固まり、二社目以降の手間を短く済ませやすくなります。
最初の一社は、効果よりも段取りを作るための一社だと位置づけても構いません。
この並べ方は固定ではありません。
契約更新や年度切り替えの時期、相手の繁忙期、相手側の基幹システム入れ替えの予定といった事情が重なれば、手間の大きい相手でも後ろに回すことがあります。
逆に、相手がちょうどシステムを入れ替える時期であれば、こちらの発注方法の変更も一緒に載せてもらえる場合があります。
順序は一度決めたら終わりにせず、四半期ごとに組み替える前提で持っておくほうが扱いやすくなります。
取引先のIT対応力が低い場合、進め方をどう変えるべきか
並行運用や個別説明が必要になる場面
取引先の中には、事務所のパソコンが共用の1台だけで、発注は担当者が紙の在庫表を見ながら行っている、というところもあります。
こうした相手に切替日だけを通知すると、当日になって発注できず、朝一番に電話が鳴ります。
そこで受けた注文を結局こちらが手入力することになれば、切り替えたはずの業務が元に戻ります。
一社ずつ日程を合わせる必要があるということは1、対応が遅れる相手には個別の調整期間が生まれるということでもあります。
その期間をどう扱うかが、後回しにするかどうかよりも実務に効いてきます。
順番を最後にしても、その日が来れば同じ問題に向き合うからです。
現実的なのは、従来のFAXや電話を受け続けながら、オンラインの発注画面も使ってもらう期間を設ける形です。
この間、受注担当は二つの入り口を見ることになります。
FAXが届けば受注画面へ手入力し、オンラインで入った分はそのまま処理する、という二本立てです。
手間は一時的に増えます。
その代わり、相手が切り替えられなかったときに注文そのものが届かなくなる、という事態は避けやすくなります。
説明に行くときは、機能の一覧を配るより先に、相手の担当者がどの作業をやめられるかを話すほうが通じます。
注文書を書いてFAXを送り、送信できたか電話で確かめ、こちらからの読み合わせに付き合う。
この往復のうちどれが減り、どれは残るのかを、相手の業務の言葉で示します。
あわせて、従来の手段をいつまで受け付けるのかを先に伝えておくと、相手も社内の段取りを組めます。
期限を曖昧にしたまま並行運用を始めると、二つの入り口が常態になり、こちらの負担だけが残ります。
取引先が使える公的補助制度
費用を理由に渋られたときのために、相手の側が使える制度を知っておくと、会話をそこで終わらせずに済みます。
こちらが費用を肩代わりできなくても、当てを示すことはできます。
デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(インボイス対応類型)では、対象事業者は中小企業・小規模事業者等とされています4。
対象となるソフトウェアには機能の要件があり、補助額が50万円以下の場合は「会計」「受発注」「決済」のうち1機能以上、50万円超〜350万円以下の場合は2機能以上を備えることが求められます4。
補助率は、50万円を超える部分について2/3以内とされています4。
受発注が対象機能の一つとして挙げられている点が、取引先の社内で予算を通すときの手掛かりになります。
注意したいのは、これが2026年度の公募内容であり、申請するのは取引先自身だという点です4。
自社が取引先の分をまとめて申請できる制度ではありませんし、枠組みや要件は年度によって変わります。
ですから案内するときは、金額の見込みまで代わりに計算するのではなく、こうした制度があるので最新の公募要領を確認してほしい、という伝え方にとどめるのが安全です。

補助制度があるからといって、相手が前向きになるとは限りません。
費用より、操作する人がいないことや、慣れた手順を変えたくないことが理由である場合も多くあります。
そのときは制度の話を続けるより、並行運用の期間をどれだけ取れるかという話に切り替えたほうが前に進みます。
移行の各段階で自社が整えるべき体制
過去データ移行の範囲の目安
取引先の順序が決まっても、受け皿になる自社側が固まっていないと、最初の一社で足を取られます。
相手にテスト発注をしてもらった段階で、売上が旧システムと合わない、掛け率が反映されないといった問題が出れば、説明も謝罪もこちらの仕事になります。
販売管理システムの入れ替えについての実務解説では、新システムへ移す過去データは直近1〜2年分の月次集計データ(取引先別売上、商品別売上)を目安にするとされています5。
これは卸売業に限った話ではなく、販売管理システムの入れ替え一般についての説明です。
自社の締め方や商習慣によって必要な範囲は変わりますが、どこまで持ち込むかを決めずに着手すると、項目の突き合わせが延々と続きます。
過去の明細まで新システムへ持ち込むかどうかは、参照できる手段が他に残るかで決まります。
旧システムを照会用に残せる、あるいは出力したファイルで足りるのであれば、新システム側は当面の判断に使う集計に絞れます。
取引先別の売上が1〜2年分あれば、次にどの取引先を移すかを考えるときの材料にもなります。
機能についても同じ考え方が示されています。
まず受注・売上管理のコア機能だけを新システムで稼働させ、請求・入金管理や在庫連携は後から追加する段階移行が有効だとされています5。
取引先の段階移行と機能の段階移行が同時に走ると、不具合が出たときに原因の切り分けが難しくなります。
最初の取引先を移す時期には、動かす機能を絞っておくほうが、問題の所在を追いやすくなります。
並行稼働期間中に確認すべきこと
新旧のシステムを同時に動かす並行稼働は、6〜8週間設けることが多いとされています5。
この間は日次の受注・出荷データを新旧の両方に入力し、売上集計や売掛金残高が一致しているかを毎日チェックする、月次締め処理を2回跨ぐことを安全の基準とする、と説明されています5。
これも販売管理システムの入れ替え一般についての目安で、取引先数や締め日の数によって必要な長さは変わります。
締めを2回跨ぐのは、月末にしか動かない処理があるからです。
締め日の異なる取引先の集計、値引きや返品の反映、請求書の出力といった処理は、日々の受注入力が合っていても月末に食い違うことがあります。
1回しか通していないと、その月に特有の事情だったのか、毎月起きることなのかが判断できません。
毎日の照合で差が出たときに気をつけたいのは、金額の大小で原因を決めつけないことです。
数円の差だから端数処理だろう、大きな差だから入力漏れだろう、という当たりの付け方は外れることがあります。
差の出た日の伝票を新旧それぞれで開き、取引先、商品、数量、単価、適用された掛け率のどこが違うのかを突き合わせます。
この照合を続けていれば、切り替え後に取引先から「請求額が違う」と言われたときにも、どこで数字が分かれたのかを示せます。
そして、並行稼働の6〜8週間5と、取引先一社あたり1カ月ほどの調整期間1は、放っておくと同じ時期に重なります。
社内の二重入力と、取引先への説明やテストの立ち会いを同じ担当者が抱えれば、どちらも遅れます。
並行稼働の間は取引先の切り替えを止める、あるいは段取りを作るための一社だけにとどめる、といった形で山を分けておくと、片方の遅れがもう片方を巻き込まずに済みます。
どちらを先に置くかは、いま止まっている業務がどちらに近いかで決めれば十分です。
受注入力が回らないなら社内の入れ替えを先に、特定の取引先との電話とFAXに時間を取られているなら、その一社の切り替えを先に置く形です。
取引先ごとの発注手段と、そこにかかっている受注処理の時間は自社の中にしか記録がなく、どこから着手すれば負担が軽くなるかは、一般的な基準では決まらないためです。
現在の受注の受け方と取引先ごとの件数を持ち寄れば、先に移す候補の絞り込み方と、対応の難しい相手に並行運用をどれだけ見込むかを一緒に確認できます。無料相談で要件を整理する
取引先を絞り込む視点の整理
自社の受注処理でかかっている手間の大きさと、取引先側が調整に応じられる体制という二つの条件で整理しています。
- 受注処理にかかっている時間が長い相手か(件数だけでなく、電話の復唱、FAXの判読、明細行数、締め後の修正まで含めて見る)
- 相手の社内に、発注操作を担当できる人が決まっているか
- 問い合わせへの返答が早く、テスト発注の日程を組めるか
- 契約更新や年度切り替え、相手の繁忙期が調整の時期と重ならないか
- 相手の側で基幹システムやソフトの入れ替え予定があり、こちらの変更を一緒に載せてもらえるか
- 従来のFAX・電話を受け続ける並行運用の期間を、自社がどれだけ確保できるか
手間の大きさで選んだ相手が対応体制を欠いている場合は、外すのではなく、並行運用と個別説明を挟む前提で時期を後ろへ動かします。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に着手する相手 | 自社の受注処理で時間が集中している取引先から。件数だけでなく、確認の電話や明細行数まで含めて測る |
| 1社あたりの調整期間 | 事前調整から利用開始まで1カ月ほどを見込む(2016年のEDI移行事例) |
| 先頭に置かない相手 | 返答や対応の読みにくい取引先。先頭が止まると後ろの予定もずれる |
| 体制の整わない取引先 | 従来手段を受け続ける並行運用と、作業がどう減るかの個別説明を挟む。期限は先に伝える |
| 取引先の費用負担 | 補助制度の対象は中小企業・小規模事業者等。機能要件と補助率は年度の公募要領で確認してもらう |
| 自社側の準備 | 直近1〜2年分の月次集計を移し、受注・売上管理から稼働。6〜8週間の並行稼働で日次照合 |
| 日程の組み方 | 並行稼働と取引先の切り替えを同じ時期に重ねない |

新旧システムの並行稼働と取引先の切り替えが重なる時期は、社内の入力手順まで含めて組まないと、どちらも予定どおりに進まないためです。 移行の順序案と、切り替え中に残る確認作業の量を照らし合わせることで、自社で抱える範囲と外に任せられる範囲を切り分けられます。
よくある質問
全取引先の移行が完了するまでの期間はどのくらいを見込めばよいか
全体の期間を示した統一的な数字はありません。
手掛かりになるのは、EDIの切り替えで事前調整から利用開始まで1社あたり1カ月ほどかかるとされている点です1。
同時に進められる社数で割って積み上げれば、おおよその長さは見当がつきます。
ただしこれは目安を並べた試算で、相手の繁忙期や返答の速さで前後します。
同じ事例では、ある企業グループでIP網対応のEDIへ移行済みだった取引先が10%強にとどまっていたことも報告されており1、途中の状態が長く続く前提で社内の期待値を揃えておくほうが安全です。
移行に消極的な取引先にはどのように説明すればよいか
まず、対応していないことを責める話し方は避けたほうが通じます。
中小商業・サービス業での電子文書による商取引や受発注情報管理の導入率は18.5%2、電子受発注システムの導入率も約2割という水準が報じられており3、未対応は例外ではありません。
そのうえで、国が導入率を約5割へ引き上げる目標を掲げていたこと3を背景として伝え、EDI導入の実証事業では受発注業務の時間が平均51.4%削減されたという結果2を、こちら側で何が減るかの説明に添えます。
相手にとって効くのは全体の数字よりも、注文書の作成や送信確認の電話といった具体的な作業がどう変わるかです。
従来のFAX・電話をいつまで受け付けるかも、同じ場で示してください。
並行運用中に新旧のデータが一致しないトラブルが起きた場合はどうすればよいか
日次の受注・出荷データを新旧両方に入力し、売上集計や売掛金残高の一致を毎日チェックする進め方が示されています5。
差が出たときは、金額の大小から原因を決めつけないことが大切です。
小さい差だから端数処理、大きい差だから入力漏れ、という見立ては外れることがあります。
差の出た日の伝票を新旧それぞれで開き、取引先、商品、数量、単価、適用した掛け率を照合して、どの項目で分かれたかを特定します。
月次締めを2回跨ぐことが安全の基準とされているのは5、月末にしか動かない処理の食い違いを1回では判断できないためです。
取引先側のシステム導入費用を補助する公的制度はあるか
デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(インボイス対応類型)は、中小企業・小規模事業者等を対象としています4。
対象ソフトウェアには機能の要件があり、補助額50万円以下は「会計」「受発注」「決済」のうち1機能以上、50万円超〜350万円以下は2機能以上を備えることとされています4。
補助率は50万円を超える部分について2/3以内です4。
これは2026年度の公募内容で、申請するのは取引先自身です。
自社がまとめて申請する制度ではなく、要件も年度で変わるため、案内は制度の存在と公募要領の確認を促すところまでにとどめるのが無難です。
受注・売上管理以外の機能(請求・在庫連携)はいつ移行すればよいか
まず受注・売上管理のコア機能だけを新システムで稼働させ、請求・入金管理や在庫連携は後から追加する段階移行が有効だとされています5。
取引先の切り替えと機能追加を同じ時期に重ねると、不具合が出たときに、相手の操作の問題なのか新しく足した機能の問題なのかを切り分けにくくなります。
目安としては、6〜8週間の並行稼働5で日次の照合が安定し、月次締めを通せたあとに次の機能へ進む形です。
請求や在庫は取引先にも影響が及ぶ範囲なので、切り替えの山が重ならない時期を選んでください。
- 1 出典:日経クロステック(xTECH)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 2 出典:中小企業庁「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!(ミラサポplus)」(2018年)
- 3 出典:日刊工業新聞社「中小企業庁が中小企業の電子受発注実現へ開発する『データ連携基盤』の全容」(2021年)
- 4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026年度)
- 5 出典:株式会社ripla「販売管理システムのデータ移行を成功させる5ステップ」(2026年)
- 6 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(事例掲載時点)
画像の出典元
- Group of business colleagues shaking hands during an office meeting./Photo by Thirdman on Pexels
- Close-up of stacked wooden pallets with barcodes in a warehouse environment./Photo by Nikita Grishin on Pexels
- High angle view of warehouse workers organizing inventory with pallets and shelves./Photo by Tiger Lily on Pexels