◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 5階層まで、得意先の組織階層に応じて卸価格を切り替えられます。同じ画面や添付で交わす「見積書」と「注文書」は、そのまま電子取引データとして保存の対象になります4
- 5,000万円以下、基準期間の売上高がこの範囲なら、電子取引データの保存に猶予措置の基準が置かれています1
- 95%が対応済みと答える一方、59%は対応のあとに経理業務の手間が増えたと答えています2
- 49.6%がシステムで電子帳簿保存法に対応しており、そのうち65.9%が業務の効率化を実感しています3
- 10万円(税抜)から始めるEC-Rider Primoか、作り込みまで見込む形か、価格の切替と保存の置き場所を同じ工程に通せるかで選び分けます6
目次

得意先ごとの卸価格切替と電子取引データの発生
得意先ごとの卸価格切替とは、得意先の条件に応じて卸価格を変える仕組みを指します。得意先ごとに卸価格を切り替える仕組みを入れると、「見積書」や「注文書」のやり取りが電子取引データとして残ります。保存の要件を満たす置き場所を先に決め、自社が猶予措置の範囲に入るかを売上高で確かめてから、価格の切替と同じ工程で保存まで通す形が実務的です。
朝九時前の経理部。法人向けの販売サイトで多くの品種を扱う卸では、得意先ごとに掛け率の違う価格表が机に並びます。コピー機が紙を送り出す音の合間に、担当者が価格表をめくって単価を指でたどります。「この得意先だけ掛け率がひとつ違う」と声が上がり、注文書の控えを探す手が止まります。卸価格の切替は、値付けの話であると同時に、書類の置き場所の話でもあります。
自社の取扱品目と並べてみてください。3,800品種、法人向け販売サイトで扱う品種がこの規模になると、単価の確認は一件ずつの照合になります(2018年時点7)。掛け率が得意先ごとに違えば、「見積書」を出すたびに価格の根拠を残すことになります。紙で回していた頃は控えを綴じれば済みましたが、メールに添付して送った時点から、そのやり取りは電子取引データとして扱われます。卸価格を電子で切り替えることは、保存すべきものを増やすことでもあります。
「見積書」の控えを探し直し、掛け率を電話で確かめる時間は、経理と情報システムの担当者の人件費として毎月積み上がります。
電子帳簿保存法が求める保存要件と猶予の基準
卸価格の切替そのものは、値付けの仕組みです。自社の得意先の組織図を思い浮かべてください。5階層まで、得意先の組織階層に応じて卸価格を切り替えられます4。切替が動けば、その画面や添付で交わした「見積書」「注文書」「請求書」が電子取引データとして残ります。値付けだけを電子にして、書類は紙のまま戻すという分け方は成り立ちません。
完全義務化の時期
電子取引データは、紙に出力して保管する方法では要件を満たしません1。受け取ったデータをデータのまま残し、取引日と金額と取引先で探せる状態にしておくことが求められます。「原本はメールの添付ファイル」という前提に立つと、探す入口はメールの検索窓ではなく、保存した場所の索引になります。卸価格の切替を入れる前に、この入口を決められるかを確かめてください。
時期を押さえておきます。2024年から、電子取引データの保存が完全に義務化されています1。猶予の扱いが続いていた頃と違い、いまは、どの形で保存するかを決める段になりました。卸価格の切替を導入する時期と、保存の形を決める時期をそろえられるかを見てください。
猶予措置の対象となる基準
すべての事業者に同じ体制が求められるわけではありません。規模に応じて、保存の要件を緩める猶予措置が用意されています1。要件の全部を自前で満たすか、猶予措置の範囲で運用するか、自社がどちらに当たるかをまず確かめてください。「うちは小さいから」と感覚で決めず、決算の数字で当てはめる場面です。
自社の基準期間の売上高と見比べてください。5,000万円、猶予措置が適用される基準期間の売上高の上限はこの額です1。上限を超える規模なら、検索の要件まで満たせる保存先が要ります。得意先が増えて売上高が動けば当てはまる側も変わりますので、卸価格の切替を入れる年と合わせて見ておきたいところです。
20万円、EC-RiderのStandard・Proプランの初期費用はこの額ですから、いまの受け渡しを続けた場合に毎月かかる探し直しの人件費と並べて見比べてください5。
対応の実態と経理現場の負担
対応を終えたことと、現場が楽になったことは別の話です。制度に合わせて保存を始めても、「どこに保存したか」が担当者ごとに違えば、探す手間は残ります。価格表と保存先が別々の引き出しにあるうちは、探し物の腕前だけが上がっていきます。まずは自社のやり取りを得意先ごとに数え、どの書類がどこに溜まっているかを見てください。
ここでアンケートの回答の内訳を見てください。95%が改正された電子帳簿保存法に対応済みと答える一方、59%は対応のあとに経理業務の手間が増えたと答えています(いずれも2024年時点2)。「対応の有無」と「手間の増減」は、別々に確かめる必要があります。制度に合う保存ができているかと、毎月の作業が回っているかを、分けて点検してください。
手段の違いも見ておきます。49.6%がシステムで電子帳簿保存法に対応しており、そのうち65.9%が業務の効率化を実感しています(2024年時点3)。手作業で「ファイル名を付け直す」運用か、保存と検索を仕組みに任せる運用か、ここで分かれます。卸価格の切替を入れるなら、同じ仕組みの中で保存まで通せるかを見てください。
手順に落とすなら、対象の洗い出し、保存先の決定、検索の取り決め、担当の割り振りの四つに分けて進めます。「見積書」「注文書」「請求書」のどれが電子で動くかを得意先ごとに数え、保存先を一つに決めたうえで、取引日と金額と取引先で探せる形を作ります。最後に、保存先の管理を経理と情報システムのどちらが持つかを決めます。ここまで通せば、価格の切替と保存が同じ流れに乗りますね。
得意先数と品数から見る導入の決め方
選び分けの入口は、得意先の数と扱う品数です。標準のプランのままで使えるかどうかで、初期費用の桁が変わります。「うちは掛け率が特殊だから」と最初から作り込みに寄せると、保存の体制を整える予算が後回しになりがちです。まず標準で足りる範囲を確かめ、足りない部分だけを積み上げてください。
初期費用の幅を押さえておきます。400万円、EC-Riderで小規模な作り込みを行う場合の初期費用はここからで、大規模な作り込みでは1,500万円からになります(2026年時点5)。標準のプランの初期費用と比べると、桁がひとつ変わります。「どこまでを標準に寄せられるか」を、見積もりを取る前に決めておいてください。
扱う品数も先に数えます。30,000SKU、EC-Rider Primoの有料プランで扱える商品数の上限はこの数で、自社の登録点数がこの範囲に収まるかを確かめてください(2026年時点6)。上限に近いなら、「商品の統廃合」を先に進める判断もあります。確かめる順序は、品数と得意先数の棚卸しから。
次に、卸価格の切替を入れる前に確かめておくことを一覧にします。
卸価格の切替と電子取引データの保存は、値付けの担当と経理の担当が別々に決めると噛み合わなくなるため、両方を一度に見られる相手へ当たる場面です。
得意先ごとの掛け率の段数と、月にどれだけの見積書と注文書が電子で動くかを持ち込めば、標準のプランで足りるかどうかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
卸価格の切替を入れる前に確かめること
- 「見積書」と「注文書」の保存先を、価格の切替を動かす前に一つに決める
- 得意先の組織階層を何段まで分けるかを、担当者の権限と合わせて棚卸しする
- 先に挙げた売上高の上限に自社が収まるかを、基準期間の数字で確かめる
- 取引日と金額と取引先で探せる状態を、どの仕組みで作るか決める
- 保存先の管理を経理と情報システムのどちらが持つかを決める
- 扱う品数と得意先数を数え、標準のプランの範囲に収まるかを見る
この並びに優劣の順序はありません。
ここから先は、得意先の数と扱う品数、受け渡しの形ごとに、確かめる順序と費用の目安が変わります。
卸の条件ごとに変わる進め方
| 卸の条件 | 重くなるところ | 先に決めること |
|---|---|---|
| 得意先が数十社で品数の多い卸 | 商品の登録と保存先の整理 | 登録する商品の点数 |
| 得意先の組織階層をまたいで取引する卸 | 階層ごとの掛け率と承認の経路 | 作り込みの範囲 |
| 紙の注文書とメールが混在している卸 | 電子と書面の受け分け | 電子で届く分の保存先 |

得意先が数十社で品数の多い卸の進め方
得意先の数は数十社にとどまるのに、扱う品数が多い卸では、価格の切替よりも商品の登録が重くなります。「掛け率は三段階で足りるが、商品が多くて手が回らない」という声が出やすい形です。階層の深さを作り込むより、商品の登録と保存の置き場所を先に整える順序が向きます。
判断の入口になるのは、得意先の数よりも登録する商品の点数です。標準のプランで扱える上限に自社の点数が収まるかを数え、収まるなら標準のまま始めて、「見積書」と「注文書」の保存先を同時に決めます。点数が上限に近い場合は、商品の統廃合を先に進めるかを検討してください。
商品一覧を書き出して点数を数え、上限と照らしてから見積もりを取ってください。難易度は低めで、商品データの整理と保存先の取り決めには、月次の業務と並行して進められる程度の工数を見込んでおくと安全です。
| 確かめること | この条件での目安 |
|---|---|
| 登録する商品の点数 | EC-Rider Primoの有料プランは30,000SKUまで(2026年時点) |
| 初期費用 | 個別の見積もりで確認(税抜・2026年時点) |
| 保存の対象 | 電子で受け渡した見積書・注文書・請求書 |
| 決める順序 | 保存先を一つに決めてから商品の登録 |
登録する商品の点数が上限に近い卸では、価格の切替よりも商品の登録と保存の置き場所が先に詰まるため、点数を示したうえで相談する形が向きます。
手元の商品一覧と得意先の数を渡せば、標準のプランの範囲に収まるか上位の仕組みが要るかの目安を持ち帰れます。無料相談で自社の条件を持ち込む
本社と支店で掛け率が分かれる卸の進め方
本社と支店、さらに営業所まで掛け率が分かれる卸では、価格の切替が承認の流れと絡みます。「支店の担当者が注文し、請求は本社に回る」という取引では、見積書の宛先と請求先が別になります。保存の対象になる書類も、そのぶん増えます。
この条件で先に決めるのは、階層のどこまでを標準の設定で賄うかです。承認の経路を図に起こし、標準の設定で吸収できる範囲を切り分けてから、残りだけを作り込みに回します。「全部の階層を用意しておく」と設定と保守の対象が広がりますので、実際に掛け率が分かれる段だけを数えてください。
作り込みの規模が大きくなるほど、初期費用の下限も上がります5。難易度は高めで、承認の経路の整理と要件の切り分けには、営業と経理の双方が関わる打ち合わせを重ねる工数を見込んでください。
| 確かめること | この条件での目安 |
|---|---|
| 階層の段数 | 実際に掛け率が分かれる段だけを設定する |
| 小規模な作り込みの初期費用 | EC-Riderでは400万円から(2026年時点) |
| 大規模な作り込みの初期費用 | EC-Riderでは1,500万円から(2026年時点) |
| 保存の対象 | 宛先と請求先が分かれる見積書・請求書 |
本社と支店で掛け率が分かれる卸では、階層と承認の経路をどこまで作り込むかで初期費用の桁が変わるため、要件を絞る段階での相談が効きます。
現在の承認の流れを図に起こして見てもらうと、標準の設定で賄える範囲と作り込みに回す範囲を切り分けられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
紙とメールが混在している卸の進め方
電話とFAXの注文が残り、メールの注文も増えている卸では、同じ得意先から二つの経路で注文書が届きます。「今日の分は紙とメールのどちらで来たか」を確かめるところから作業が始まる形です。保存の義務がかかるのは、このうち電子で届いた分です。自社の受注は、どちらの経路が多いでしょうか。
判断の目安は、月あたりに電子で届く注文書の件数です。件数が少ないうちは保存先を決めて集めるだけで足り、増えてくると受注の記録と保存を同じ仕組みで扱う必要が出てきます。紙の注文書はこれまでどおり書面で保管し、「電子の分」だけ先に形を整えてください。
難易度は中くらいで、得意先ごとの受け取り経路の棚卸しに手間がかかりますが、保存先を一つ決めるところまでは短い工程で進められますので、ここまでの要点を整理します。
| 確かめること | この条件での目安 |
|---|---|
| 電子で届く注文書の件数 | 得意先ごとに月あたりで数える |
| 標準のプランの初期費用 | EC-RiderのStandard・Proプランは20万円(2026年時点) |
| 紙で届いた注文書 | これまでどおり書面で保管 |
| 決める順序 | 電子の分から保存先を一つに |

紙とメールが混ざる卸では、電子で届く分だけを先に保存の形へ移す進め方が現実的で、その順序を決めるところから相談したい場面です。
月あたりの電子の受注件数と紙の件数を並べて示すと、どこから着手すれば無理がないかの見通しが立ちます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 決めること | 確かめる目安 |
|---|---|
| 保存の対象 | 電子で受け渡した見積書・注文書・請求書 |
| 保存の形 | データのまま残し、取引日と金額と取引先で探せる状態 |
| 猶予の判断 | 自社の基準期間の売上高を上限と照らす |
| 切替の範囲 | 得意先の組織階層を何段まで分けるか |
| 費用の見当 | 標準のプランの範囲に収まるかどうか |
| 担当の割り振り | 保存先の管理を経理と情報システムのどちらが持つか |
制度の要件と卸価格の切替を同じ工程で決めれば後戻りが少なく、費用の見積もりと保存の体制を一度に話せる相手が要る場面です。 自社の取引先数と扱う品数、電子でやり取りする書類の種類を伝えれば、初期費用と運用の手順を具体的な数字で示してもらえます。
よくある質問
見積書をPDFにしてメールで送った場合も、保存の対象になりますか
電子でやり取りした取引情報は、電子取引データとして保存の対象になります1。紙に出力して綴じる方法では要件を満たしません。送った側にも受け取った側にも控えが要りますので、「送信済みフォルダに残っているはず」という状態のままにせず、保存先を一つ決めて集めてください。
猶予措置の対象になれば、保存しなくてよいのですか
保存そのものが免除されるわけではありません1。猶予措置は要件の一部を緩める扱いで、データを残しておくことは変わらず求められます。先に挙げた売上高の上限に自社が収まるかを基準期間の数字で確かめ、収まる場合でも「求めに応じて取り出せる」形で保管してください。
掲載されている初期費用は税抜と税込のどちらですか
EC-Rider Primoの初期費用は税抜の表記です6。他のプランの金額は表記の扱いが資料によって異なる場合がありますので、契約の前に公式の料金ページで確かめてください。初期費用のほかに、月額と超過分の扱いまで含めて並べると、「見積もりの差」がどこから出ているかが分かります。
対応を終えた会社が多いのに、手間が増えたという声が続くのはどうしてですか
先に挙げた手間が増えたという回答は、対応の形が一様でないことを示しています2。制度に合わせて保存を始めても、転記と照合の手順が前のままなら作業は重なります。自社の直近一年の受注のうち電子で届いた分が何割かを数え、「保存の手順」と「照合の手順」が別々に動いていないか点検してください。
卸価格の切替は、何段まで用意すればよいですか
先に挙げた階層の上限までは切り替えられますが、必要な段数は得意先の組織の形で決まります4。本社と支店で掛け率が分かれるのか、支店までは同じ扱いなのかを取引先ごとに数えてください。使う予定のない段まで作らず、「実際に掛け率が変わる段」だけを設定するところから始めます。
作り込みの見積もりは、どの段階で取ればよいですか
標準のプランで足りない部分が見えた段階です。小規模な作り込みと大規模な作り込みでは初期費用の下限が大きく違いますので5、要件を絞る前に見積もりを求めると、幅の広い数字が返ってきます。得意先の階層の段数と扱う品数を確定させてから、「残った要件」だけを相談してください。
- 1 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(2023年) 経路
- 2 出典:株式会社NTTデータビジネスブレインズ「改正電帳法対応状況アンケート(ClimberCloud導入116社)」(2024年) 経路
- 3 出典:経理プラス(調査:株式会社ラクス)「電帳法対応システム利用状況調査(経理担当者248人)」(2024年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える」(2026年) 経路
- 5 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider 料金プラン・費用」(2026年) 経路
- 6 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider Primo サービス紹介・料金プラン条件」(2026年) 経路
- 7 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社)」(2026年) 経路
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