◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 卸価格の切替は、機能の話に入る前に「どの単位で価格を変えるか」を決めるところから始まります
- 価格に関する作業は要件定義・価格マスタ登録・テストの三つの工程に分かれ、最初の要件定義の遅れがそのまま全体に響きます
- 全体の期間は導入事例で約4か月、発売日に合わせて2か月で立ち上げた例もあり、単位の決め方で前半の重さが変わります
目次

卸価格の切替は誰の単位で決めればよいか
取引先ごとに卸価格が違うことは、BtoB向けECサイトでは例外ではなく前提です。問題は「価格を出し分けられるか」ではなく、「誰の単位で、いつまでに、何を決めるか」がはっきりしていないことにあります。
進め方は四つです。まず卸価格を切り替える単位を、得意先1件ごとにするか、得意先の組織階層でまとめるかで決めます。次に、その単位を形にする作業がシステム導入のどの工程で発生するのかを、要件定義・価格マスタ登録・テストという並びで確かめます。さらに、その工程が全体の期間のどこに乗るのかをスケジュールへ落とします。最後に、遅れが出やすい価格の階層設計と既存の値引きルールの整理に余裕を持たせて日程を組みます。
この記事では、営業の勘と手作業の値引きで回している状態から、EC上の価格の出し分けへ橋を架けるまでの工程とスケジュールの目安を、順に見ていきます。
単位を決めないまま機能の話へ進まない
最初に決めるのは、価格を切り替える単位です。得意先1件ごとに価格を持つのか、得意先をいくつかのまとまりに束ねて、そのまとまりごとに価格を持つのか。ここが決まらないまま画面や機能の相談へ進むと、後の工程で必ず戻ることになります。
営業の現場では、価格は「この会社はこの掛け率」「この支店は特別」といった形で頭の中にあります。EC上では、その頭の中の分け方を、誰が見ても同じ結果になる規則へ置き換える必要があります。単位を決めるとは、その置き換えの粒度を決めることです。
得意先の組織階層に沿って束ねる
得意先が本社・支店・営業所のように分かれている場合、それぞれに個別の価格を持たせると管理する行数が一気に増えます。組織の階層に沿って価格を持たせ、下の階層は上の階層の価格を引き継ぐ形にすると、例外のある先だけを個別に設定すれば済みます。
EC-Rider B2Bでは、得意先の組織階層を5階層まで構成でき、要件にあわせた構成を提案しています1。自社の取引先が何階層で説明できるかを、先に紙の上で書き出しておくと、要件定義の場での会話が速くなります。
例外をどこまで個別に持つかを線引きする
階層でまとめると決めても、必ず「この先だけは別」という例外が残ります。この例外を最初から全部拾おうとすると、単位の設計が終わらなくなります。
現実的なのは、金額の大きい先や取引の多い先から順に並べ、上位のどこまでを個別に持つかで線を引くやり方です。線から下の先は階層の価格で運用し、運用が始まってから必要に応じて個別へ移します。
工程の分かれ方が見えたところで、次はその工程が全体の期間のどこに、どれくらいの重さで乗るのかを見ます。
価格設定はどの工程で行われるか
価格の作業は三つの工程に分かれる
価格に関する作業は、一つの箱ではありません。要件定義で「どの単位で切り替えるか」を決め、価格マスタ登録で「実際の数字を入れる」、テストで「得意先のIDでログインしたときに正しい価格が出るか」を確かめます。
この三つは担当する人も違います。要件定義は営業と情報システムと構築側が同じ机に着く工程、価格マスタ登録は主に自社側の作業、テストは両者が分担する工程です。誰の手が何日ふさがるのかは、この分かれ方で見ると読めるようになります。
要件定義で決めるのは数字ではなく規則
要件定義の場で個々の金額を決める必要はありません。決めるのは、価格がどの規則で導かれるかです。階層の段数、上の階層からの引き継ぎ方、例外の扱い、値引きを価格そのものに織り込むのか別に持つのか。この四つが決まっていれば、数字は後から入ります。
逆に、規則が曖昧なまま数字の話を始めると、登録の途中で「この先はどの規則に当たるのか」が何度も止まります。要件定義は短く見えて、後工程の速さを決める工程です。
価格マスタ登録とテストは往復する
登録が終わってからテストを始める、という一本道にはなりません。代表的な得意先をいくつか先に登録し、想定どおりの価格が出るかを確かめてから残りを流し込むほうが、手戻りが小さくなります。
テストで見るのは金額の正しさだけではありません。階層の下の先でログインしたときに上の階層の価格が引き継がれているか、例外に指定した先が例外の価格になっているか。単位の設計が意図どおり動いているかを確かめる場でもあります。
期間の見当がついたら、最後に確かめておきたいのは、どこで日程が崩れやすいかです。
卸価格の切替は、単位を決め、工程に載せ、遅れやすい箇所に余裕を置く。この三つが揃えば、いつまでに何を決めれば間に合うのかは、上司にも説明できる形になります。
卸価格の切替単位は、自社の取引先の構成を見ながらでないと決まりません。階層で束ねられるのか、個別に持つべきなのかは、実際に同じ構成の案件を扱ってきた相手と話すのがいちばん早い道です。
取引先の一覧と現在の値引きの決まり方を持ち寄れば、自社の場合に何階層で組むのが無理のない構成かを、その場で確かめられます。無料相談で要件を整理する
価格の準備で先に手を付けておきたいこと
- 取引先の一覧を、本社・支店・営業所の親子関係がわかる形で書き出す
- 現在の値引きが、掛け率なのか金額なのか、期間限定なのか恒常なのかを分ける
- 口頭や担当者の判断で決まっている価格が、どの先に何件あるかを数える
- 階層から外れる例外の先を、取引額の大きい順に並べる
- テストで確かめる代表の得意先を、階層の上・下・例外から一つずつ選んでおく
この並びに優劣の順序はありません。
これらは構築側の着手を待たずに、自社だけで進められる作業です。ここまでを踏まえて、価格の切替単位の型ごとに、工程とスケジュールへの影響を見ていきます。

卸価格の切替単位の型と、工程・スケジュールへの影響
| 型 | 価格の持ち方 | 向く場面 | 前半の工程の重さ |
|---|---|---|---|
| 得意先1件ごと型 | 取引先ごとに個別の価格を持つ | 取引先の数が限られ、価格が一社ずつ交渉で決まる | 登録の件数が多く、要件定義は軽い |
| 階層まとめ型 | 組織階層に価格を持たせ下の階層へ引き継ぐ | 本社と支店で構成される取引先が多い | 要件定義が重く、登録は軽い |
| 併用型 | 階層で束ねたうえで例外の先だけ個別に持つ | 大半は階層で説明でき、一部に特別な先がある | 要件定義と例外の洗い出しに時間がかかる |
得意先1件ごとに価格を持つ型
決めることは少なく、入れることは多い
この型では、価格の規則を設計する手間がほとんどありません。取引先の数だけ価格の組を用意し、そのまま登録します。要件定義の場で議論が長引きにくいのが利点です。
代わりに、価格マスタ登録の作業量が取引先の数に比例します。取引先が増えたときや、全社的に掛け率を見直すときの作業も、同じだけ増えます。
他の作業と並行しやすい
登録作業は、画面や機能の構築とは別の手で進められます。構築側が画面を作っている間に、自社側で価格の一覧を整えておけば、順番待ちにはなりません。
ただし登録の形式は要件定義で決まります。形式が決まる前に表計算ソフトで作り込むと、並べ替えのやり直しが発生します。先に形式だけ確認しておくのが安全です。
| 工程 | 主な担当 | 並行の可否 |
|---|---|---|
| 要件定義 | 営業・情報システム・構築側 | 他工程の前に置く |
| 価格マスタ登録 | 自社(営業事務) | 画面構築と並行できる |
| テスト | 自社・構築側 | 構築の完了を待つ |
取引先ごとに価格を持つ場合、作業量は登録の件数で決まります。件数に対してどれくらいの期間を見ておけばよいかは、同じ規模の登録を経験している相手に聞くのが確実です。
現在の取引先数と価格の持ち方を伝えれば、登録工程にどれだけの時間と人手を見込むべきかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
得意先の組織階層でまとめる型
階層の段数を先に決める
この型の山場は要件定義です。取引先の組織を何段で表すか、どの段に価格を持たせるか、下の段はどう引き継ぐかを決めます。段数の取り方を誤ると、運用が始まってから組み直しになります。
EC-Rider B2Bでは組織階層を5階層まで構成でき、要件にあわせた構成を提案しています1。自社が何段必要かは、取引先の中で最も複雑な一社を基準に考えると決めやすくなります。
登録は軽く、確認は丁寧に
階層でまとめた分、登録する価格の行数は減ります。その代わり、テストでは引き継ぎが意図どおりに働いているかを確かめる必要があります。上の段の価格を変えたときに下の段がどう変わるかまで見ておきます。
この確認は、営業が「この先ならこの価格のはず」と言える人の手で行うのが確実です。テスト工程には営業部門の時間を見込んでおきます。
| 工程 | 主な担当 | 並行の可否 |
|---|---|---|
| 要件定義(階層設計) | 営業・情報システム・構築側 | ここが終わるまで登録へ進めない |
| 価格マスタ登録 | 自社(営業事務) | 画面構築と並行できる |
| 引き継ぎのテスト | 自社(営業)・構築側 | 構築の完了を待つ |

階層の段数と引き継ぎの設計は、後から組み直すのが最も高くつく箇所です。公開前に設計の妥当性を見てもらう価値があります。
取引先の組織図を持ち寄れば、何段で構成するのが適切か、引き継ぎの規則に無理がないかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
階層で束ねたうえで例外を個別に持つ型
例外の洗い出しが日程を左右する
実務でいちばん多いのがこの型です。大半の取引先は階層で説明でき、一部だけが特別な条件を持ちます。設計としては素直ですが、例外を洗い出す作業が想定より長引きます。
口頭の約束や担当者の裁量で決まっていた条件が、この段階で表に出てくるためです。誰に確認すれば決着するのかを先に決めておくと、洗い出しが止まりません。
例外の件数に上限を置いて進める
全部を拾い切ってから次へ進もうとすると、要件定義が終わりません。公開時点で個別に持つ先を取引額の上位から何件までと決め、残りは階層の価格で始める割り切りが要ります。
運用が始まってからでも、階層から個別へ移すことはできます。公開の日程を守るために、最初の線引きは営業部門の責任で引いておきます。
| 工程 | 主な担当 | 並行の可否 |
|---|---|---|
| 要件定義(階層設計) | 営業・情報システム・構築側 | 最も前に置く |
| 例外の洗い出し | 自社(営業) | 要件定義と並行して進める |
| 価格マスタ登録 | 自社(営業事務) | 画面構築と並行できる |
| テスト | 自社(営業)・構築側 | 構築の完了を待つ |

例外をどこまで個別に持つかの線引きは、システムの制約と運用の手間の両方を知らないと引けません。第三者の目で線の位置を見てもらうと、日程が守れる形に収まります。
例外として挙がっている先の一覧を見せれば、公開時点で持つべき件数と、公開後に移してよい件数の分け方を確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 切替の単位 | 取引先の大半が本社・支店で説明できるなら階層、一社ずつ交渉で決まるなら個別 |
| 階層の段数 | 最も複雑な取引先一社を基準に決める(5階層まで構成可能)1 |
| 要件定義で決めること | 段数・引き継ぎ方・例外の扱い・値引きの持ち方の四つ |
| 並行できる作業 | 価格マスタ登録は画面構築と並行、要件定義とテストは順番待ち |
| 遅れやすい箇所 | 価格の階層設計と、口頭で決まっていた値引きルールの洗い出し |
| 全体の期間の目安 | 導入事例で実質約4か月2、発売日に合わせて2か月で立ち上げた例もある3 |
| 期限が動かせない場合 | 個別に持つ例外の件数に上限を置き、残りは公開後に移す |
工程とスケジュールの目安は、取引先の数と例外の多さで大きく動きます。一般論の日程表ではなく、自社の条件に当てはめた工程表を引くところから始めるのが、遠回りに見えて最も確実です。 取引先の構成と、動かせない公開日が決まっていればその日付を伝えることで、価格の工程をどこに置けば間に合うのか、全体の工程表の形で確かめられます。
よくある質問
卸価格の切替単位は、公開した後から変えられますか
階層でまとめていた先を個別に持つ、といった移し替えは運用の中で行えます。難しいのは階層の段数そのものを増やす向きの変更で、これは設計の組み直しになります。段数は公開前に、取引先の中で最も複雑な一社を基準に決めておくことをおすすめします。
価格の階層は何段まで持てますか
EC-Rider B2Bでは、得意先の組織階層を5階層まで構成できます1。必要な段数は取引先の構成によって変わりますので、要件にあわせた構成を提案しています。自社の取引先が本社・支店・営業所の何段で説明できるかを先に書き出しておくと、要件定義が進めやすくなります。
全体の期間はどれくらい見ておけばよいですか
業務用食材の通販直販サイトを運営するフーヅフリッジ株式会社の導入では、実質的な開発期間が約4か月でした2。この中に価格の要件定義から登録、テストまでが含まれます。自社の取引先の数と例外の多さによって、価格の工程が占める割合は変わります。
発売日や期首など、動かせない日付に間に合わせられますか
プリントシール事業などを手がけるフリュー株式会社では、共同開発した商品が2か月後に発売することが決まり、その販売開始までにBtoB向けECサイトを構築する必要がありました3。期限が先に決まっている場合は、価格の切替単位をどこまで作り込むかを絞り、例外の一部は公開後に回す判断が必要になります。
価格の準備は、画面や機能の構築と同時に進められますか
価格マスタ登録は画面構築と並行して進められます。一方で、要件定義で切替単位と登録の形式が決まるまでは着手できず、テストは構築の完了を待ちます。並行できるのは中盤の登録作業で、前後の工程は順番待ちになると見ておくのが安全です。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Riderお役立ちコラム「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える」」(2026年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(フーヅフリッジ株式会社様)」(2017年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(フリュー株式会社様)」(2016年) 経路
画像の出典元
- 30代前半の日本人男性が展示会のブースでの説明をしている場面/画像:生成AI(自社)
- Close-up view of a contemporary office building exterior wit/Photo by SevenStorm JUHASZIMRUS on Pexels
- 20代前半の日本人女性が来客の案内をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 50代前半の日本人男性が朝礼での連絡をしている場面/画像:生成AI(自社)