◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 卸価格の二重入力は担当者の手際ではなく、同じ単価を請求を作る仕組みと受注の画面の二か所で持つ業務構造から生まれます。
- 5階層まで得意先の組織階層に応じて卸価格を切り替えられる設計では、改定1回あたりの入力先が階層の数だけ枝分かれします2。
- 3,800品種と3,000社の販売加盟店が並ぶ規模になると、卸価格の更新は1件の作業ではなく網の目をたどる作業へ変わります4。
- 43.1%が企業間取引に占める電子的な受発注の割合で、卸価格を載せておく画面が増えた背景として押さえておきたい数字です1。
- まず自社の卸価格が何画面に登録されているかを数え、次に改定1回の入力時間を担当者の時給へ換算してください。
目次

卸価格の二重入力が起こる仕組み
卸価格の二重入力とは、得意先ごとに単価を変えられる自由度と、その単価を持つ画面が複数ある状態が重なった処で起きることです。階層ごとに卸価格を切り替える設計では、改定のたびに入力先が枝分かれします。まず入力先の数を数え、1回あたりの時間を費用へ置き換えることから始めます。
月初の朝八時半の事務所。複合機が温まる低い音の続くなか、担当者は改定後の卸価格表を刷り、付箋の貼られた行を指でたどります。販売管理システムへ得意先コードごとに新しい単価を打ち込み、打ち終えた同じ数字を受注サイトの商品画面でもう一度入力します。紙には「入力済」と鉛筆で印が付き、印の数だけ同じ作業が重なっていきます。
この往復は、担当者の段取りが悪いから起きているわけではありません。卸価格を持っている場所が請求を作る仕組みと注文を受ける画面に分かれていて、両方が同じ単価を必要とする形になっています。現場で「二度打ち」と呼ばれるこの作業は、片方を直し忘れると請求と注文画面の数字が食い違い、月末の照合で差として表に出ます。
この二度打ちに月何時間かかっているかを担当者の時給へ掛ければ、手戻りは「仕方のない手間」ではなく毎月の人件費として並びます。
得意先の階層が入力を増やす要因
得意先ごとの卸価格は、一社につき一つの単価で終わるとは限りません。本社と支店で条件が違い、系列の販売店まで含めると、価格表は枝に分かれた束になります。「A社向け」と書かれた一行が、開けてみると本社向けと支店向けの二段重ねだった、という場面も珍しくありません。改定の作業量は、価格が分かれている段の数を数えると見当が付きます。
切り替えられる深さを数えてみます。5階層まで得意先の組織階層に応じて卸価格を切り替えられる設計が公表されており、本社・支社・営業所・店舗・担当部署と並べてちょうど埋まる深さです2。2026年時点で案内されている上限で、深く分けられるほど「どこまで分けるか」の判断がそのまま入力量に効いてきます。
改定の決裁が下りてから注文画面へ反映されるまでには、いくつもの持ち場を通ります。改定後の卸価格表を作り、販売管理システムへ登録し、受注サイトへ登録し、得意先へ改定日を知らせます。ここまでのどこかで一つ飛ばすと、注文は古い単価のまま流れていきます。「反映漏れ」という言い方で片づけられがちですが、実際には転記の経路が二本ある処で起きています。
もう一つ、入力の回数を増やす処があります。得意先から「今回はうちの支店ぶんだけ据え置いてほしい」と頼まれると、階層のうち一段だけを例外として持つことになります。例外は覚えている人の頭の中にだけ残りやすく、次の改定でまた同じ確認からやり直しになります。例外を紙の一覧へ書き出しておくか、階層の設定として持たせるかで、翌年の手間が変わります。
200,000円という一度きりの初期費用(EC-Rider の Standard・Pro プラン3)と、二度打ちに費やす1年分の時間を並べると、「いまのままで回っている」という選び方にも費用が付いていると分かります。
二重入力の負担が及ぶ範囲
二重入力の重さは、入力する人の数だけでは測れません。誰に売るかと何を売るかが広がると、一度の改定で触る行も一緒に増えていきます。卸価格の更新は1件の作業ではなく、網の目をたどる作業へ変わります。手元で測るなら、「得意先の階層」「販売加盟店の数」「登録商品点数」の三つを並べて数えてみてください。
加盟店網による品目管理の枝分かれ
産業用の粘着テープなどを扱う日東電工CSシステム株式会社は、全国の販売加盟店を通して商品を届ける形をとってきました。加盟店ごとに扱う品目も取引の条件も違うため、卸価格の更新は「本部で直して終わり」になりません。加盟店から見れば、自分の店で扱う品目の新しい単価がいつから有効かだけが要ります。
規模を数えてみます。3,800品種の取り扱いと3,000社の販売加盟店が並ぶ会社で、一つの品目を直すたびに知らせる相手が四桁になる規模です4。いずれも公表されている値です。品目の数と加盟店の数を掛けた分だけ組み合わせが在るとは限りませんので、自社では「価格が違う加盟店の区分」を実際に数えて比べてみてください。
登録商品点数がもたらす入力量
株式会社ポディウムは、ECサイトへ載せる商品を絞り込む前、登録点数がふくらんだ状態から手を付けています。売れ筋も終売間近の品も同じ一覧に並んでいれば、価格改定のたびに目を通す行は増えます。「とりあえず載せておく」を続けた分が、そのまま入力量として戻ってきます。
点数を数え直すところから始まります。20,000点が精査前にECサイトへ登録されていた商品点数で、厚みのある総合カタログを何冊も抱えている量にあたります5。2025年に公表された事例の値で、改定のたびにこの一覧から「今回直す行」を探すことになります。載せる商品を絞る作業は、入力の宛先そのものを減らす作業です。
卸価格の自由度が二重入力を招く逆説
得意先ごとに「うちだけの値段」を出せることは、卸売の商いの強みです。しかし、変えられる幅が広いほど、改定のたびに直す行も増えていきます。安くできるかどうかではなく、変えた後に何画面直すかが効いてくる、という逆さまの関係がここに在ると見ています。
「うちの業界はまだ紙です」という手元の感覚が、この逆さまの関係を見えにくくしている分、市場の数字を並べておきます。43.1%が企業間取引に占める電子的な受発注の割合で、注文の四割強が画面を通る水準です1。2024年度の調査値で、同じ年度の卸売業では128.8684兆円が電子的な取引の規模として示されています1。画面を通る注文が増えた分だけ卸価格を載せておく場所も増えているかを、自社の受注経路ごとに数えてみてください。
二重入力に払っている金額の確かめ方は二段で足ります。直近1年に卸価格を改定した回数を数え、1回あたりに入力した画面の数を掛けてください。そこへ担当者の時給を掛ければ、二重入力に払っている金額が出ます。「今年は何回直しましたか」と聞かれて即答できないなら、数え直しがそのまま第一歩になります。出た金額が一度きりの導入費用を上回るなら、入力先を束ねる相談を始める時期に来ています。始まりは、画面を数える紙一枚。
ここから先は、代理店網を通して卸す場合と自社で直接卸す場合に分けて、更新の手順を詳しく見ていきます。
卸価格の二重入力は自社の画面の数と価格の段の組み合わせで形が変わるため、同じ構図を何社も見てきた相手に自社の並びを見てもらうと、数え落としが減ります。
改定1回あたりの入力先がいくつ在るのか、どこまでを一か所へ束ねられるのかを、手元の価格表を見ながら確かめられます。無料相談で要件を整理する
二重入力を減らす時に手を付ける順
- 卸価格が登録されている画面と帳票をすべて書き出し、同じ単価が何か所に在るかを数えます。
- 直近1年の改定回数と1回あたりの入力時間を記録し、二重入力に払っている年額を出します。
- 得意先の階層のうち実際に単価が違う段だけを残し、例外の扱いを紙の一覧へ書き出します。
- 受注サイトの登録商品点数を精査し、改定のたびに目を通す行そのものを減らします。
- 販売管理システムと受注画面を結んで、入力を一か所へ寄せた場合の費用を見積もります。
この並びに優劣の順序はありません。
同じ順で進めても、代理店網を通す会社と自社で直接卸す会社では、先に効いてくる処が変わります。

事業の形ごとに変わる卸価格更新の進め方
| 事業の形 | 更新の宛先が増えやすい処 | 最初に手を付ける作業 |
|---|---|---|
| 代理店網を通す卸価格更新 | 加盟店ごとに取り扱い品目と条件が分かれる | 加盟店の区分と価格の段を突き合わせる |
| 直接卸としての商品点数管理 | 登録商品の行数がそのまま入力量になる | 登録点数を精査して改定で触る行を減らす |
代理店網を通す卸価格更新
加盟店や代理店を通して届ける形では、卸価格の宛先が社外まで広がります。本部で一括に直すか、加盟店ごとに分けて持つかで、改定当日の連絡の量が変わります。「うちの店では扱っていない品目の値上げ連絡が来た」という声が出るのは、品目の取り扱いと価格の段が別々に管理されている時です。
ここで先に見るのは、画面の数よりも加盟店の区分です。入力先を一か所へ寄せても、加盟店ごとに扱う品目が違えば、通知と反映の作業は残ります。「条件が同じ加盟店を一つの段へまとめられるか」という問いを先に置き、価格が違う区分の数を数えてください。区分が減れば、改定のたびに書く連絡文も減ります。
作り込みが要る場合の費用も見ておきます。15,000,000円が EC-Rider の大規模カスタマイズの初期費用の下限で、2026年時点の案内に出ている金額です3。170,000円からという月額で「入れ物だけ借りる」形も、EC-Rider B2B Ⅱ のベースエンジン利用料として用意されています3。加盟店の区分をどこまで仕組みへ持たせるかで、この幅のどちらへ寄るかが決まってきます。
作業そのものは難しくありませんが、取り扱い品目と価格の段を突き合わせる手間はまとまって出ますので、「月末の締め」と重ならない時期に日を取って進める形が向いています。
| 確かめる事柄 | 代理店網を通す場合の見方 |
|---|---|
| 価格が違う区分の数 | 加盟店をまとめられる単位で数える |
| 取り扱い品目の持ち方 | 加盟店ごとの取り扱いと価格の段を突き合わせる |
| 改定日の知らせ方 | 反映日を先に決めて加盟店へまとめて連絡する |
| 仕組みへ持たせる範囲 | 例外の加盟店を紙の一覧に残すか設定として持つか |
加盟店ごとに取り扱い品目と条件が分かれる更新では、価格の段をどこでまとめるかの判断が仕組みの設定と絡むため、設定の上限を知る相手と話すと決めが早まります。
加盟店の区分を何段に収められるのか、例外の加盟店を紙で持つか設定として持つかの分かれ目が見えてきます。無料相談で自社の条件を持ち込む
直接卸としての商品点数管理
得意先へ直接卸す形では、宛先の数よりも扱う商品の行数が効いてきます。受注サイトに載せた商品の一覧がそのまま改定の作業台になり、行が増えるほど目を通す時間も伸びます。「載せたまま動いていない商品」がどれだけ在るかを、まず一覧の並べ替えで確かめてください。
確かめる数は、画面の数ではなく行の数です。得意先の階層が浅くても、商品点数が多ければ改定1回の作業量はふくらみます。直近の改定で実際に単価を触った行が全体の何割だったかを出せば、絞り込みの当たりが付きます。「全部載せる」をやめた分だけ、入力の回数は静かに減っていきます。
費用の見当も置いておきます。4,000,000円が EC-Rider の小規模カスタマイズの初期費用の下限で、月額は70,000円からとされています3。いずれも2026年時点の案内に出ている金額で、商品情報の取り込みをどこまで自動にするかで幅が出ます。手で打つ時間を減らす代わりに、取り込む元の一覧を整える手間が先に来ます。
点数の精査そのものは判断の易しい作業ですが、「終売」の確認で仕入先へ問い合わせる往復が入りますので、改定と改定の谷間に少しずつ進める形が収まります。
| 確かめる事柄 | 直接卸で見る中身 |
|---|---|
| 登録商品点数 | 直近の改定で単価を触った行の割合を出す |
| 動いていない商品 | 一定の期間注文の無い行を一覧から外す |
| 価格の持ち方 | 得意先ごとの単価を一覧のどこに置くか決める |
| 取り込みの手順 | 商品情報の元の一覧を整えてから自動にする |

登録商品の行数がそのまま入力量になる形では、商品情報の取り込みをどこまで自動にできるかで作業量が変わるため、取り込みの実例を持つ相手に聞くと絞り込みの順番を決めやすくなります。
自社の商品一覧のまま取り込めるのか、整え直しがどこまで要るのかを、実際の項目名を突き合わせて持ち帰れます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 確かめる場面 | 見る数値と手順 |
|---|---|
| 卸価格の置き場 | 同じ単価が登録されている画面と帳票の数 |
| 得意先の分け方 | 実際に単価が違う階層の段の数 |
| 加盟店を通す更新 | 価格が違う加盟店の区分の数と連絡の宛先 |
| 受注サイトの一覧 | 登録商品点数と直近の改定で触った行の割合 |
| 費用の比べ方 | 二重入力に払っている年額と一度きりの初期費用 |
二重入力に払っている年額と、入力先を束ねるためにかかる費用の両方を並べないと、いまの形を続ける判断も変える判断も根拠を欠きます。 自社の改定回数と入力画面の数をもとに、どこまでなら費用が見合うのかの目安が分かります。
よくある質問
販売管理システムと受注サイトの両方に卸価格を持つのは避けられませんか。
請求を作る仕組みと注文を受ける画面は役目が違うため、どちらかを消す形にはなりにくいところです。持たせないのではなく、片方を「元の値」と決めて、もう一方へは人の手を介さず渡せるかを確かめてください。まずは同じ単価が何か所に登録されているかを書き出す作業からです。
得意先の階層は何段まで分けるべきですか。
段の数は仕組みの上限ではなく、実際に単価が違う数で決めてください。先に挙げた階層の上限まで使い切る必要はなく、支店ごとに単価が同じなら段を分ける意味はありません。分けた段は改定のたびに触る先になりますので、「使っていない段」は畳んでおくほうが後で楽になります。
反映漏れはどこで見つかることが多いですか。
多くは請求書を作る段で見つかります。注文時の単価と請求の単価が食い違い、得意先からの「単価が合いません」という問い合わせで初めて気づく形です。改定日を挟んだ注文を月末に一度抜き出し、単価の違う明細だけを照合する手順を決めておくと、気づく場所を前へ動かせます。
費用はどこから見積もればよいですか。
一度きりの支出と毎月の支出を分けて置くのが先です。月額の下限は70,000円からという案内が EC-Rider の小規模カスタマイズに出ており3、これに自社の二重入力の年額を並べれば、続ける費用と変える費用を同じ表で比べられます。「安いかどうか」より「どちらが積み上がるか」で見てください。
商品点数を減らすと売上が落ちませんか。
一覧から外すことと、取り扱いをやめることは別の作業です。注文の入らない行を受注サイトの一覧から外しても、問い合わせからの受注は残せます。先に挙げた精査前の点数のような規模なら、まず「直近1年で注文の無い行」を抜き出し、得意先に確認したうえで段階的に外す進め方が無難です。
取引先の少ない卸でも取り組む意味はありますか。
改定のたびに同じ数字を二度打っているなら、規模に関わらず同じ構図です。取引先が少ないうちは手で回りますが、価格の段と商品の行が増えた時に一気に重くなります。いま「何画面に入力しているか」を数えて記録に残しておくと、増えた時の判断が早くなりますね。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2024年度) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Riderお役立ちコラム BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider(BtoB EC受発注システム)料金プラン・費用ページ」(2026年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(2020年) 経路
- 5 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider 導入事例(株式会社ポディウム様)」(2025年) 経路
画像の出典元
- A contemporary office building featuring a striking glass fa/Photo by Dr. Mohammad Hoque on Pexels
- 50代前半の日本人女性が名刺交換をしている場面/画像:生成AI(自社)
- From below of high metal Kobe Port Tower landmark of Japan u/Photo by Ryutaro Tsukata on Pexels