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卸価格の値上げ転嫁|得意先別の切替対応

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 53.5%が価格転嫁率の全体の値で、上がった費用のうち得意先へ通っているのは半分あまりにとどまります1
  • 55.0%の原材料費に対しエネルギーコストは48.9%と低く、同じ改定でも費目ごとに通り方が割れます1
  • 5階層までなら得意先の組織階層に沿って卸価格を切り替えられる形があり、本社と店舗で単価が分かれる取引でも1件ずつの書き換えは要りません2
  • 1,500万円からが大規模なカスタマイズを伴うモデルケースの初期費用で、EC-Rider B2B Ⅱ のベースエンジン利用料は月額170,000円から別に重なります4

Professionals engaged in a collaborative business meeting wi
▽ 写真の出典元

卸価格の値上げ、転嫁率53.5%という現在地

卸価格の改定とは、決まった値上げを得意先の単価表へ反映し終えるまでの一連の作業です。得意先ごとの価格表を「1件ずつ書き換える」形から、得意先の組織階層に沿って単価を割り当てる形へ移すと一度で済みます。値上げの可否を交渉する前に、決まった改定を反映する速さを整えるのが先です。

朝九時の営業企画の島。刷り上がったばかりの卸価格表が、まだ温かいまま積まれています。担当者が「この得意先は本社と支店で単価が違う」と言いながら、付箋の束へ手を伸ばします。原材料の値上げが決まってから、価格表の差し替えだけで数日が過ぎていきます。交渉の席で合意した話と、卸価格表へ反映し終えた状態とは、別の仕事です。

ここで数字を一つ置きます。53.5%が、2025年に公表された価格転嫁率の全体の値です1。上がった費用のうち得意先へ通っているのは半分あまりで、残りは自社の利益から出ていきます。交渉の巧拙だけを責める前に、「値上げが決まった」から「卸価格表が新しくなった」までの日数を見てください。この区間は自社の手元だけで詰められます。

「1件ずつの書き換え」に溶ける数日は、改定が遅れた日数分の粗利として出ていきます。

原材料費・労務費・エネルギーコストで割れる転嫁の差

原材料費

値上げの理由を一本にまとめると、交渉の場で戻る場所がなくなります。原材料の高騰なのか、人手の確保に要る費用なのか、燃料や電気の上昇なのかで、得意先の受け止め方は変わります。同じ「コスト増」でも、通りやすい費目とそうでない費目があるという前提から始めます。

費目ごとに並べます。55.0%が原材料費の転嫁率で、三つの費目のなかでは最も高い水準にあります1。2025年の公表値です。原材料の相場は仕入価格の変動として得意先の側にも現れ、「何がいくら上がったか」を示しやすい費目にあたります。

労務費

労務費は、上げた分が商品の形をとらず、説明に手間のかかる費目です。得意先の担当者へ「人件費が上がりました」とだけ伝えると、自社の事情として受け取られます。賃上げの原資という形で示す場合と、作業工数の増加という形で示す場合とでは、話の進み方が変わります。

続けて置きます。50.0%が労務費の転嫁率で、原材料費の水準より低い位置にあります1。2025年の公表値で、「ちょうど半分」という数字です。裏を返せば、賃上げに充てた分の半分は自社に残ったままという読み方になります。労務費を理由とした改定がいつ通り、いつ見送られたかを得意先ごとに並べてみてください。

エネルギーコスト

燃料費や電気料金は、卸価格へ乗せる筋道が最も立てにくい費目にあたります。商品そのものの原価というより、倉庫や配送の運営へ紐づく費用として扱われます。得意先からは「御社の効率化で吸収できないのか」と問われやすい場所でもあります。

最後に一つ置きます。48.9%がエネルギーコストの転嫁率で、原材料費の水準を下回り、三つの費目では最も下にあります1。2025年の公表値です。費目を分けて示した改定と、一本の値上げ率でまとめた改定とでは、得意先の受け止めが変わります。「どの費目で押し切れたか」を、自社の改定履歴で確かめてください。

100,000円が、2026年時点で公表されている EC-Rider Primo の初期費用(税抜)で、「価格表を1件ずつ書き換える」作業に費やす人件費と同じ表へ並べられる額です3

原材料費・労務費・エネルギーコストで、示せる根拠と価格表への反映の単位が異なることを示す表。
値上げの費目ごとに、得意先へ示せる根拠と卸価格表への反映のしかたを並べた図です。
Two blue yarn skeins stacked on a white background, perfect
▽ 写真の出典元

得意先ごとの卸価格切替と組織階層の壁

卸価格表を1件ずつ書き換える作業が減らない背景には、得意先の並び方があります。本社、支社、営業所、店舗と続く得意先では、同じ商品でも受け取る単価が納入先ごとに分かれます。「A社」という1行ではなく、A社の中に何行も抱えている状態です。改定のたびにその行数だけ書き換えが発生し、付箋の枚数だけが律義に増えていきます。

対応の上限を一つ置きます。5階層までなら得意先の組織階層に沿って卸価格を切り替えられる形があり、本社と店舗で別の単価を持つ取引でも1件ずつの書き換えは要りません2。2026年時点で公表されている範囲です。自社の主要な得意先が「何段あるか」を、組織図で数えてください。

階層で単価を持つと、改定の作業量は「価格表の枚数」ではなく「階層の段数」で決まります。上位の段へ改定を当て、例外のある下位の行だけを個別に直す形へ変わります。得意先が増えても手間がそのまま比例せず、合意から反映までの日数が縮みます。

費目の確定、階層の整理、単価の割り当て、切替日の設定という四段階で改定が進むことを示す図。
値上げが決まってから卸価格表へ反映し終えるまでの段階を示した図です。

初期費用と月額から切替の範囲を決める

仕組みを入れるかどうかは、機能の多さではなく改定にかかる日数で決めます。得意先が数社なら表計算のままでも回りますが、階層を持つ得意先が増えると手作業の側が先に限界を迎えます。「いまの件数で何日かかっているか」を出してから、費用と並べてください。

費用の幅を置きます。1,500万円からが、大規模なカスタマイズを伴うモデルケースでの初期費用です4。先に挙げた EC-Rider Primo の100,000円(税抜)と並べると、同じ「BtoB向けEC」の看板でも桁が変わります3。いずれも2026年時点の公表額で、どこまで自社の商習慣へ合わせるかによって立つ位置が決まります。

月額も同じ表へ置きます。170,000円が EC-Rider B2B Ⅱ のベースエンジン利用料の月額の下限で、初期費用とは別に毎月かかります4。2026年時点の公表額です。改定1回あたりに費やしている作業日数を人件費へ置き換え、「何か月分に当たるか」を出すところが判断の入口になります。

ここから先は、手順と、得意先の条件ごとの進め方です。

値上げが決まってから卸価格表へ反映し終えるまでの日数は、自社の得意先の並び方を見ないと縮められません。

自社の得意先の階層と例外単価を持ち込めば、どこまで一度の改定で片づくかを見積もれます。無料相談で要件を整理する

値上げが決まってから卸価格表へ反映し終えるまでの手順

  • 得意先の組織階層へ単価を割り当て、価格表の書き換えを1件ずつから一度へ変える
  • 値上げの理由を原材料費・労務費・エネルギーコストへ分け、費目ごとに根拠を用意する
  • 改定の適用開始日を決め、その日をまたぐ受注をどちらの単価で扱うかを先に取り決める
  • 例外単価を持つ得意先を洗い出し、上位の段からの一括改定から外す行を明示する
  • 改定後の初回請求で、得意先ごとの単価と受注内容の照合を行う

この並びに優劣の順序はありません。

手順のどこに時間がかかるかは、得意先の数と、単価が分岐する段の深さによって変わります。

40代前半の日本人女性が手順の指導をしている場面
▽ 写真の出典元

得意先の条件ごとの進め方

得意先の条件 卸価格表の持ち方 改定のたびに増える作業 向く進め方
取引先が数社で窓口も一つ 商品ごとの単価表を得意先別に持つ 連絡と請求書の照合 いまの価格表のまま切替日を揃える
本社と支店で単価が分かれる 単価が分岐する段へ割り当てる 例外のある行の個別修正 階層ごとの割り当てへ移す

少数取引先向け|卸価格表を持ったまま切替日を揃える

得意先が数社で、いずれも一つの窓口で完結する場合は、事情が変わります。価格表の枚数が少なく、改定の連絡も担当者へ直接届きます。この条件では、仕組みを入れる費用より「切替日の取り決め」の方が効いてきます。

先に置いた基準は改定にかかる日数でしたが、ここでは基準が移ります。見るのは作業量ではなく、改定日をまたぐ受注をどちらの単価で処理するかの取り決めです。旧単価で入った注文が新単価の出荷日に届いたとき、照合がつまずくのはこの一点です。

行動は、日付の確定から入ります。適用開始日を得意先ごとに文書で確認し、その日をまたぐ受注の扱いを先に決め、初回の請求で単価の照合を行います。「口頭で合意した」だけの改定は、請求の段で差し戻ってきます。

難易度は低く、工数は「得意先への連絡」と「初回請求の照合」に収まります。

決めること 少数取引先での扱い
改定の適用開始日 得意先ごとに文書で確認する
切替日をまたぐ受注 旧単価で受け、出荷後の請求で照合する
例外単価 価格表へ注記として残す
Two professionals in a business meeting in a modern office,
▽ 写真の出典元

得意先が数社であっても、改定日をまたぐ受注の扱いが決まっていなければ、初回の請求で照合が止まります。

いまの価格表のまま切替日を揃える手順で足りるかどうかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む

多階層取引先向け|段へ単価を割り当てて一度で改める

本社が価格を決め、支店や店舗が発注する得意先では、条件がまるごと変わります。同じ商品でも納入先ごとに単価が分かれ、価格表の行数は得意先の数を超えて増えます。「A社で一本」という前提が崩れた時点から、手作業の改定は追いつかなくなります。

ここでの基準は、得意先の数ではなく階層の深さです。本社・支社・営業所・店舗と段が増えるほど、書き換える行は積み上がります。先に挙げた階層の上限までを一つの得意先として扱える形があるかどうかで、改定の手順そのものが変わります。「うちは本社一本です」という得意先と、納入先ごとに単価が分かれる得意先とでは、同じ改定でも作業が別物です。

行動は、階層の整理から入ります。得意先の組織図を取り寄せ、単価を決める段と発注する段を分け、上位の段へ改定を当てて例外のある行だけ個別に直します。先に挙げたベースエンジン利用料の月額は、「改定1回あたりに発生している残業代」と同じ表へ置いて比べられます4

難易度は高めで、工数は「組織図の整理」と「例外単価の洗い出し」へ集中します。

単価の決め方 改定時の作業
本社 基準となる卸価格を決める 改定を当てる
支社・営業所 本社の単価を引き継ぐ 引き継ぎの確認のみ
店舗・納入先 例外のある行だけ別単価 個別に直す
本社へ当てた改定が支社と店舗へ引き継がれ、例外のある行だけ個別に直ることを示す図。
本社から納入先までの段へ単価を割り当て、改定を上位の段から流す道筋を示した図です。

本社と店舗で単価が分かれる得意先を抱えるほど、段へ単価を持たせる移し方が改定の速さを決めます。

自社の組織図のどの段まで単価を分ける必要があるかを、費用と併せて整理できます。無料相談で自社の条件を持ち込む

要点の整理

決める場面 見る数字 判断の分かれ目
費目の立て方 費目別の転嫁率 主となる費目を一つ立てるか、一本の率でまとめるか
価格表の持ち方 単価が分岐する段の数 得意先ごとに持つか、階層へ割り当てるか
仕組みの規模 初期費用と月額の合計 入口を低く始めるか、カスタマイズまで踏み込むか
切替の運用 改定日をまたぐ受注の件数 受注日で切るか、出荷日で切るか

原材料の高騰のたびに値上げ交渉と価格改定の両方を抱える体制では、反映の遅れがそのまま利益の目減りになります。 改定1回にかかっている作業日数を持ち寄れば、仕組みへ移した場合との差を数字で比べられます。

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よくある質問

値上げの交渉が終わっていない得意先にも、先に卸価格表を用意しておくべきですか。

合意前の単価を確定させる必要はありませんが、改定後の価格表を作る手順だけは先に整えられます。交渉が長引いた得意先ほど、合意から反映までの日数が利益へ効いてきます。改定案を段へ当てる形にしておけば、「合意した得意先から順に切り替える」という進め方がとれます。

費目ごとに値上げの理由を分けて伝えると、かえって説明が長くなりませんか。

一本の値上げ率で伝える方が短く済みますが、根拠を尋ねられたときに戻る場所がなくなります。原材料費と労務費とエネルギーコストでは転嫁率に差があり、通りやすい費目とそうでない費目が分かれます。まず主となる費目を一つ立て、残りを「補足」として添える形が現実的です。

得意先の組織階層は、どこまで細かく登録すればよいですか。

単価が分岐する段までで十分です。発注が店舗ごとでも単価が本社一本なら、店舗の段を作る必要はありません。逆に、同じ支社の下で納入先ごとに単価が違うなら、その段まで持たせます。組織図をそのまま写すのではなく、「単価が分かれる場所」だけを段にしてください。

改定日をまたぐ受注は、旧単価と新単価のどちらで処理するのが無難ですか。

受注日を基準とする場合と出荷日を基準とする場合で扱いが変わり、どちらを採るかは取引の約定によります。重要なのは、得意先ごとにどちらかを文書で確定させておくことです。「基準が曖昧なまま」の改定は初回の請求で照合が止まり、入金の遅れにつながります。

小さく始めて、後から階層ごとの切替へ移ることはできますか。

初期費用には、EC-Rider Primo のように入口を低く抑えた形から、大規模なカスタマイズまで幅があります。ただし後から移す場合、得意先の登録情報と価格表を作り直す作業が発生します。「将来どの段まで単価を分けるか」を、最初の選定のときに紙へ書き出しておいてください。

公表されている転嫁率は、自社の値上げ交渉にどう使えますか。

公表値は全国を集計した平均であり、自社の取引へ直接当てはまるものではありません。使えるのは、自社の改定実績を並べるときの物差しとしてです。直近1年で申し入れた金額と、実際に卸価格へ反映できた金額を費目別に集計し、「自社はどちら側か」を確かめてください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. 1 出典:中小企業庁「価格交渉促進月間(2025年9月)フォローアップ調査結果」(2025) 経路
  2. 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える(EC-Riderお役立ちコラム)」(2026) 経路
  3. 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider Primo サービス紹介ページ・料金プラン条件」(2026) 経路
  4. 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider(BtoB EC受発注システム)料金プラン・費用ページ」(2026) 経路

画像の出典元

  1. Professionals engaged in a collaborative business meeting wi/Photo by MART PRODUCTION on Pexels
  2. Two blue yarn skeins stacked on a white background, perfect/Photo by Valentin Ivantsov on Pexels
  3. 40代前半の日本人女性が手順の指導をしている場面/画像:生成AI(自社)
  4. Two professionals in a business meeting in a modern office,/Photo by MART PRODUCTION on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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