◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 旧システムから新システムへ卸価格を移す際は、取引先ごとの価格の対応関係を突き合わせて検証する期間が必要になるため、並行運用を挟む
- 並行運用の間は旧システムを正、新システムを検証用と決め、価格を決める場所を一つに固定して二重管理を避ける
- 照合は取引先単位で行い、どの階層で価格が決まるかを合わせて確認する
- 並行運用の長さは日数ではなく、取引先の数と価格を決める階層の深さで見積もる
- 切り替えの最終日を先に決め、全取引先の照合が終わったことを確かめてから旧システムを止める
目次

なぜ乗り換えに並行運用の期間が要るのですか
卸価格の仕組みを乗り換えるときに並行運用が要るのは、旧システムに積み上がった取引先ごとの価格の設定が、新システムで同じ結果を返すかどうかを実際の受発注で確かめる期間が必要になるためです。並行運用の間は、卸価格を決める場所を旧システムに固定し、新システムは同じ条件で同じ価格が出るかを照らし合わせるための場として扱います。こうしておけば、二つの仕組みに別々の価格が入って食い違う事態を避けられます。照合は取引先単位で行い、どの階層で価格が決まっているかまで合わせて確認します。得意先の組織階層は5階層まで構成でき、どの階層で価格を決めるかが設計の要になる1ため、親会社で決めた価格なのか、支店ごとに決めた価格なのかを取り違えると、金額そのものは合っていても適用先がずれます。並行運用に見込む期間は、暦の上の日数で先に決めるのではなく、取引先の数と、価格を決めている階層の深さから逆算します。そのうえで切り替えの最終日を先に置き、その日までに全取引先の照合が終わっているかを確かめてから旧システムを止める、という順で進めれば、移行の途中で卸価格が崩れる事態を避けられます。
旧システムの卸価格は「設定」ではなく「積み重ね」になっている
旧システムや表計算で管理してきた卸価格は、取引開始のときに決めた標準の価格に、その後の値上げ交渉や期間限定の特別価格、特定の商品だけの例外といった取り決めが重なってできています。台帳の上では一つの数字に見えても、その数字がどういう経緯で決まったかは、担当者の記憶や別のファイルの但し書きに残っていることが少なくありません。
新システムへ移すときに写し取れるのは、最終的な数字と、それを決めている条件だけです。経緯までは移りません。そのため、移した後の新システムが旧システムと同じ価格を返すかどうかは、設定を入れ終えた時点では確かめきれず、実際の受注で照らし合わせてはじめて分かります。この照らし合わせのために要る期間が、並行運用の期間です。
移行の失敗は「金額の誤り」より「適用先の取り違え」で起きる
移行の作業でつまずくのは、価格の数字を打ち間違えたときよりも、正しい数字を誤った相手に結び付けたときです。得意先の組織階層は5階層まで構成でき、どの階層で価格を決めるかが設計の要になる1ため、同じ卸価格でも、それを本社に付けるか、事業部に付けるか、個々の店舗に付けるかで、実際に適用される範囲が変わります。
旧システムでは階層を持たずに取引先コード単位でまとめて管理していた場合、新システムに移した途端に「どの階層に置くか」という判断が新しく発生します。この判断がずれると、金額は正しいのに一部の店舗にだけ別の価格が出る、といった食い違いが起こります。並行運用は、この種のずれを本番の受注で洗い出すための期間でもあります。
ここまでで並行運用の進め方の骨格を見てきました。実際に着手すると、同じところでつまずく例が繰り返し出てきます。
並行運用の間、卸価格はどちらのシステムで管理しますか
価格を決める場所は旧システムに固定する
並行運用の間、卸価格を新しく決めたり変更したりする作業は旧システムだけで行い、新システムはそこから写した内容を保持する側に回します。どちらでも変更できる状態にしておくと、変更が片方にしか入らない取引先が生まれ、照合したときに「どちらが正しいのか」を毎回さかのぼって調べることになります。
新システムを検証用と位置付けても、受注そのものは従来どおり旧システムで処理します。新システムでは、同じ取引先・同じ商品・同じ数量で価格を引いてみて、旧システムの結果と一致するかを見るところまでにとどめます。
並行運用中の価格変更をどう扱うか
並行運用の期間中にも、取引先との交渉で卸価格が変わることはあります。このとき、旧システムに入れた変更をいつ新システムへ反映するかを決めておかないと、照合したときのずれが「移行の誤り」なのか「反映待ち」なのか区別できなくなります。
変更の反映は日をまとめて行い、その日を境に照合の対象とする、という取り決めにしておくと切り分けが楽になります。反映がまだの変更は一覧にしておき、照合の際に照らし合わせの対象から外します。この一覧が空になっていることが、後で旧システムを止める判断の材料にもなります。
二重管理の手間をどこまで受け入れるか
並行運用は、定義のうえで二重に持つ期間です。手間をまったく生まない進め方はありませんが、増える作業を「価格を決める作業」ではなく「写して照らし合わせる作業」に寄せることで、判断を伴う負担は抑えられます。
写す作業は、取引先ごとに手で入れ直すのではなく、旧システムから出した一覧をもとにまとめて取り込む形にしておくと、写す段階で新たな誤りが混ざりにくくなります。
つまずきやすい点を踏まえたうえで、乗り換えの進め方そのものにいくつかの型があります。自社の取引先の数や体制に近い型から選ぶと、並行運用で決めるべきことが絞れます。
取引先ごとの卸価格がずれていないかどう確かめますか
照合は取引先単位で、同じ条件を両方に通して行う
照合の基本は、実際に出た受注、あるいはそれを模した条件を、旧システムと新システムの両方に通して、返ってきた価格を突き合わせることです。設定画面どうしを見比べる方法では、設定は同じに見えるのに適用のされ方が違う、という場合を見落とします。
取引先の一覧を作り、一件ずつ「照合済み」「ずれあり」「未着手」の状態を記録していきます。取引の量が多い取引先から着手すると、ずれが出たときの影響の大きい順に潰せます。
階層のどこで価格が決まっているかまで確認する
価格が一致していても、それがどの階層で決まった価格なのかが違っていると、後から支店が増えたときや、階層の一部だけ価格を変えたときに食い違いが表面化します。照合のときは、返ってきた金額だけでなく、その金額を決めた設定がどの階層に置かれているかも記録します。
得意先の組織階層は5階層まで構成でき、どの階層で価格を決めるかが設計の要になる1ため、旧システムで平らに持っていた設定を新システムのどの階層へ置くかは、移行の設計そのものです。照合の記録に階層の欄を設けておくと、ずれの原因が金額なのか階層なのかをその場で切り分けられます。
ずれが見つかったときの直し方
ずれが見つかったら、まず新システムの設定を直すのか、旧システム側の設定が実態と合っていないのかを切り分けます。移行をきっかけに、旧システムに残っていた古い特別価格や、取引の終わった相手の設定が見つかることがあります。この場合は新システムに写さないという判断になりますが、営業の担当者に確認せずに落とすと、実際には生きている取り決めを消すおそれがあります。
直した後は、同じ条件でもう一度両方に通して一致することを確かめ、照合の記録を更新します。一度ずれた取引先は、その後の変更でも同じ原因でずれる可能性があるため、切り替えの直前にもう一度確認する対象として印を付けておきます。

並行運用はどれくらいの期間を見ておけばよいですか
日数ではなく、照合し終える量から逆算する
並行運用の長さを先に暦で決めてしまうと、照合が終わっていないのに期限が来る、という状態になりがちです。見積もるべきは、照合しなければならない取引先の数と、一件あたりにかかる手間です。一件あたりの手間は、価格を決めている階層が深く、商品ごとの例外が多いほど増えます。
まず取引の多い数社で実際に照合してみて、一件にどれくらいかかるかを測ります。その実測に取引先の総数を掛けたものが、照合に要する作業量の目安になります。並行運用の期間は、この作業量を日々割ける人手で割って求めます。
受注の波を一巡させることを条件に入れる
作業量から求めた期間に加えて、その期間の中に取引の波が一巡して含まれるかを確認します。月末にまとまる受注、季節ごとの特別価格、決まった時期にしか出ない商品などは、その時期が来ないと照合の機会そのものが生まれません。
机上で条件を作って照合することもできますが、実際の受注で確かめたものと、条件を作って確かめたものは、記録の上で区別しておきます。切り替えの判断のときに、どこまでが実地で裏付けられているかが分かります。
期間が延びる前提で余裕を置く
照合を進めると、旧システムの設定に不明な点が見つかり、取引先や営業の担当者への確認が発生します。この確認は相手のある作業なので、こちらの都合だけでは進みません。見積もった期間に、この確認のための余裕を上乗せしておきます。
余裕を置いたうえで最終日を先に決め、残りの未照合件数を定期的に数えて、予定どおりに減っているかを見ます。減り方が鈍いときは、最終日を動かすか、人手を増やすかを早い段階で判断できます。
いつ旧システムを止めればよいと分かりますか
止める条件を数える形で決めておく
旧システムを止める判断は、「だいたい問題なさそうだ」という印象ではなく、あらかじめ決めた条件を満たしたかどうかで行います。条件は、後から数えて確かめられる形にします。たとえば、全取引先が照合済みになっていること、ずれありのまま残っている取引先が無いこと、反映待ちの価格変更の一覧が空であること、といった形です。
条件を決めるのは並行運用を始める前です。終盤になってから決めると、そのときの進み具合に合わせて条件のほうが緩みます。
止めた後に戻れる余地を残す
条件を満たして旧システムを止めた後も、しばらくは旧システムのデータを参照できる状態にしておきます。過去の取引について取引先から問い合わせがあったときや、移行後に価格の食い違いが見つかったときに、当時の設定を確かめる必要が出てくるためです。
参照できる状態と、価格を決められる状態は別物です。止めるというのは、価格を決める役割を新システムへ完全に移すことであり、記録を消すことではありません。この区別を関係者で共有しておくと、切り替えの日に混乱しません。
卸価格の乗り換えで並行運用が要るのは、旧システムの設定が新システムで同じ結果を返すかを、実際の受注で確かめる期間が必要になるからです。その間は価格を決める場所を旧システムに固定し、新システムは照らし合わせる側に置きます。照合は取引先単位で、金額だけでなくどの階層で価格が決まっているかまで記録します。期間は暦で先に決めるのではなく、照合の作業量と受注の波から逆算し、余裕を上乗せしたうえで最終日を置きます。そして、全取引先の照合が済み、ずれも反映待ちも残っていないことを数えて確かめてから、旧システムを止めます。この順を守れば、移行の途中で取引先ごとの卸価格が崩れる事態は避けられます。
並行運用で何をどこまで照合すれば足りるかは、旧システムに積み上がった設定の癖に左右されるため、同じ移行を何度も通してきた側の目で現状を見てもらうと、進め方の骨格が早く固まります。
現在の卸価格の管理の仕方を持ち込めば、並行運用にどれだけの照合が必要になるか、どの階層で価格を決める形が合うかを、着手の前に確かめられます。無料相談で要件を整理する
並行運用でつまずきやすい点
- 両方のシステムで価格を変更できる状態のまま始めてしまい、どちらが正しいか分からなくなる
- 金額の一致だけを確認し、価格を決めている階層の違いを見落とす
- 並行運用の期間を暦で先に決め、照合が終わらないまま期限を迎える
- 旧システムに残っていた古い特別価格を、確認せずに写さない判断をしてしまう
- 月末や季節に偏る受注が並行運用の期間に含まれず、その分の照合ができていない
- 旧システムを止める条件を終盤になってから決め、そのときの進み具合に合わせて緩めてしまう
- 止めることと記録を消すことを混同し、過去の取引を確かめる手段を失う
この並びに優劣の順序はありません。
いずれも、始める前に取り決めを一つ置いておけば避けられるものです。
移行の型ごとの並行運用の進め方
| 型 | 向く場面 | 並行運用で先に決めること |
|---|---|---|
| 全取引先いっせい型 | 取引先の数が限られ、価格の階層が浅い | 最終日と、その日までの照合の割り当て |
| 取引先の区分ごと型 | 取引先ごとに価格の決め方が大きく違う | どの区分から移すかの順番と、区分ごとの完了の条件 |
| 階層を下ろす型 | 旧システムでは平らに管理していた設定を階層へ置き直す | どの階層で価格を決めるかの方針と、例外の扱い |

全取引先いっせい型:最終日を先に置いて全件を並べて照合する
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 並行運用の始め | 新システムへ全取引先の設定を写し終えた日から |
| 照合の進め方 | 取引の多い順に並べ、上から照合して状態を記録する |
| 止める条件 | 全件が照合済みで、ずれありと反映待ちが残っていないこと |
いっせいに移す進め方は、最終日までに照合が終わるかどうかが成否を分けるため、作業量の見積もりを外さないことが要になります。
取引先の数と価格の決め方を伝えれば、最終日までに照合が収まる規模かどうかを事前に見立てられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
取引先の区分ごと型:区分を区切って順に移し、区分ごとに止める
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 区分の切り方 | 価格の決め方が似ている取引先でまとめる |
| 移す順番 | 価格の決め方が単純な区分から着手する |
| 止める条件 | 区分ごとに照合が済んだ時点で、その区分だけ新システムへ寄せる |
区分の切り方を誤ると、後の区分にしわ寄せが集まるため、切り方そのものを相談しておく価値があります。
取引先ごとの価格の決め方の違いを持ち込めば、どの単位で区切って移すのが無理のない順になるかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
階層を下ろす型:どの階層で価格を決めるかを先に定める
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 階層の方針 | 標準の価格をどの階層に置き、例外をどの階層で上書きするか |
| 写し方 | 旧システムの取引先コードを、定めた階層のどこに対応させるか |
| 止める条件 | 階層の欄まで含めて照合の記録が埋まっていること |

平らに管理してきた設定を階層へ置き直す作業は、移行後の運用の楽さを長く左右するため、設計の段階で経験のある側と詰めておくのが有効です。
現在の取引先の構成と交渉の実態を伝えれば、どの階層で価格を決める形にすれば例外を抱え込まずに済むかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 価格を決める場所 | 並行運用の間は旧システムに固定し、新システムは照らし合わせる側に置く |
| 照合の単位 | 取引先単位。金額と、価格を決めている階層の両方を記録する |
| 期間の決め方 | 暦で先に決めず、照合の作業量と受注の波から逆算して余裕を上乗せする |
| 最終日 | 先に決めて共有し、未照合の残り件数を定期的に数える |
| 止める条件 | 全件が照合済み、ずれありが残っていない、反映待ちの変更が空 |
| 止めた後 | 価格を決める役割は新システムへ移し、過去の記録は参照できる状態を残す |
並行運用は、始めてから取り決めを足そうとすると条件が緩みやすく、始める前にどこまで決めておくかで手間の総量が変わります。 移行の時期と現在の管理の仕方を共有すれば、止める条件をどう置くか、並行運用にどれだけの期間を見込むかを、着手の前に具体的に確かめられます。
よくある質問
並行運用の間、受注はどちらのシステムで受ければよいですか
受注そのものは旧システムで処理し、新システムでは同じ条件で価格を引いて結果を照らし合わせるところまでにとどめます。両方で受注を受けると、在庫や売上の突き合わせという別の作業が増えます。
並行運用の間に卸価格を変更してもよいですか
変更はできますが、変更を入れる場所は旧システムだけに固定します。そのうえで新システムへ反映する日をまとめて決め、反映がまだの変更は一覧にしておき、照合の対象から外します。
取引先には並行運用のことを伝える必要がありますか
受注の窓口や価格の見え方が変わらないうちは、必ずしも事前の周知は要りません。ただし、切り替えの日に発注の画面や手順が変わる取引先には、その日までに案内が届くよう段取りしておきます。
旧システムのデータはいつまで残しておけばよいですか
価格を決める役割を新システムへ移した後も、過去の取引を確かめられる状態は残しておきます。止めるというのは価格を決める役割を移すことで、記録を消すことではありません。
照合はすべての商品について行う必要がありますか
取引の量が多い商品と、例外の価格が設定されている商品を優先します。標準の価格の計算だけで決まる商品は、計算の仕組みが一致していることを確かめれば、一件ずつ照らし合わせる必要は下がります。
階層のどこで価格を決めるべきか迷ったときはどう判断しますか
価格の交渉を誰と行っているかで判断します。本社と交渉して全店に同じ価格を出しているなら上位の階層、店舗ごとに条件が違うなら下位の階層に置きます。得意先の組織階層は5階層まで構成でき、どの階層で価格を決めるかが設計の要になる1ため、この判断は移行の初期に済ませておきます。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える」」(2026年) 経路
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