◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 卸売業の商品改廃・定番カットと、メーカーの生産終了は別の事象で、終売までのリードタイムの長さと揃い方が異なります。
- 加工食品と日用雑貨では、卸売業からメーカーへの返品理由の主因が入れ替わります。
- 発注停止・EC公開状態・在庫の出口・取引先への予告という運用の型を、一次情報に基づいて整理します。
目次
定番カットと商品改廃 — 生産終了とは異なる運用
卸売業の商品改廃とは、取り扱う品目を計画的に入れ替える運用で、そのうち小売業の定番棚から品目が外れることを定番カットといいます。加工食品では、卸売業からメーカーへの返品理由の最多が定番カット35.2%です*1。
改廃対応の設計とは、いつメーカーへの発注を止め、残ったセンター在庫を誰が引き受けるかを事前に決めることにほかなりません。日用雑貨では年2回の棚替え・季節品が81.1%を占め、業種によって改廃の型が入れ替わります*1。メーカーの生産終了とは別の話です。生産終了には告知から終了までのまとまった猶予があります。一方の定番カットは、終売案内から発注停止までの期間が短く、取引先ごとのばらつきも大きい点が異なります*7。
随時の定番カット・年2回の棚替え・総称としての商品改廃
「商品改廃」「定番カット」「棚替え」は、初出時に区別が必要な語です。軸になるのは「誰の意思で、どの周期で起きるか」という点です。
随時・小売業の棚割変更で起きるものを定番カットと呼び、年2回・季節単位で起きるものを棚替えと呼びます。両者を含む自社の品目入替の総称が商品改廃です。一次情報の分類でも、「随時の商品改廃(定番カット)」と「年2回の棚替え・季節品」は別項目として集計されています*1*2。
生産終了は猶予つき、定番カットは短く不揃いなリードタイム
メーカーの生産終了は、供給側の事情で商品そのものがなくなる事象です。告知から終了まで、まとまった猶予があります。
一方、定番カットは売り先の棚割変更であり、商品は存続するのに自社の販路が消えます。在庫はメーカーへ返品するか、自社で捌くしかありません。製・配・販連携協議会の返品削減ワーキンググループは、協議会加盟小売業13社に終売プロセスの実態を調査しました。対象13社の調査であり、傾向の参考値として扱う数値です。加工食品では、取引先への終売案内が中央値で21日前、センター(取引先)の発注止め(又は欠品許容)が中央値で7日前でした*7。最小値は終売案内が7日前、センターの発注止めが0日前で、各社間でプロセスがかなり異なると報告されています*7。この2つは打ち手が別であるため、本記事では生産終了への対応には踏み込まず、定番カットに話を限定します。
センター在庫・返品・マスタ不整合など5つの影響
定番カットが起きた場合に卸売業へ及ぶ影響は、次の5つです。
- センター在庫が滞留します。
- メーカーへの返品と、それに伴う返品処理経費が発生します。
- 商品マスタとECの公開状態に不整合が生じます。
- 取引先の発注導線(お気に入り・定番リスト・カタログ)が壊れます。
- 過去の受注・請求データの参照が切れます。
本記事では、この5つを順番に閉じる方法を整理します。
加工食品の返品理由の最多は定番カット35.2%
本節の数値は、製・配・販連携協議会に加盟する卸売業・小売業へのアンケートに基づきます*1。加工食品・日用品を対象とした調査であり、全業種の平均ではありません。この限定を前提に読み進めてください。
卸売業→メーカー返品は定番カット35.2%が最多
2024年度、加工食品の「卸売業→メーカー」の返品の発生理由は、定番カットが35.2%で最多でした*1。以下、「その他(メーカー起因等)」が20.7%、「納品期限切れ」が16.4%、「年2回の棚替え・季節品」が13.9%と続きます*1。
同じ調査の「小売業→卸売業」では、「特売残」27.8%が最多で、次いで「年2回の棚替え・季節品」21.3%、「定番カット」19.2%です*1。川上へ行くほど定番カットの比重が上がっており、卸売業が改廃の在庫リスクを集めていると言えます。
返品率1%未満でも返品額は494億円規模
加工食品の2024年度の返品率は、「卸売業→メーカー」0.29%(前年度よりやや増加)、「小売業→卸売業」0.11%(前年度から変動なし)です*1。業界全体の「卸売業→メーカー」返品額は494億円と推計され、前年度より増加しています*1。
日用雑貨は「卸売業→メーカー」1.86%、「小売業→卸売業」1.26%で、いずれも前年度より低下しています*1。日用品全体の「卸売業→メーカー」返品額推計は777億円(日用雑貨616億円・OTC医薬品161億円)です*1。返品率が1%前後であっても、返品額では数百億円規模になることが分かります。
卸売業調査と小売業調査は母集団が異なる
数字を読む際は、母集団の違いに注意が必要です。卸売業調査には、協議会非加盟の多数の小売業との取引が含まれており、小売業調査(対象は協議会加盟小売業)とは一致しません*1。また、年度によって集計対象企業が異なります*1。この注記を欠いたまま数値だけを引用すると、実態と異なる印象を与えるおそれがあります。
ここまでの返品コストを自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。
加工食品型の随時改廃と日用雑貨型の年2回棚替え
主因が入れ替わる加工食品型と日用雑貨型
加工食品と日用雑貨では、返品理由の主因が入れ替わります。以下の表で、両者の違いをECの運用設計に落とし込みます。
| 型 | 主因(卸売業→メーカーの返品理由) | 発生の周期 | ECでの運用設計 |
|---|---|---|---|
| 加工食品型 | 定番カット35.2%。 納品期限切れ16.4%*1。 |
随時(いつでも起きる) | 個別品目を都度止める運用です。 判断の権限委譲と、止めるまでのリードタイムの短縮が要点になります。 |
| 日用雑貨型 | 年2回の棚替え・季節品81.1%。 定番カット12.6%*1。 |
年2回に集中 | 一括改廃のイベント運用です。 事前の計画と、期日を決めた発注停止・在庫処分が要点になります。 |
この2つは併存します。加工食品にも棚替えはあり、日用雑貨にも定番カットはあるため、主従が入れ替わるという読み方が適切です。
終売までのリードタイムも型によって異なります。前掲の小売業13社の調査では、日用雑貨は取引先への終売案内が中央値30日前、センターの発注止め(又は欠品許容)が中央値20日前でした*7。加工食品の21日前・7日前より長く取られています*7。年2回に集中する型のほうが、事前に計画を置ける余地が大きいと読めます。
自社の型を見分ける2つの問い
自社がどちらの型かは、次の2つの問いで見分けられます。第一に、返品・在庫償却が年2回の山として出ているか、平準的に出ているかです。第二に、改廃の起点が小売の棚割変更通知か、自社の年間の品揃え計画かです。型が決まれば、次の章のどこに力を入れるべきかが見えてきます。
OTC医薬品は規制品目という第三の型
OTC医薬品の2024年度の返品率は、「卸売業→メーカー」1.99%(前年度より0.59%低下)、「小売業→卸売業」1.76%(0.44%低下)です*1。OTC医薬品(一般用医薬品。医師の処方箋なしで薬局・薬店で購入できる医薬品)は規制品目であり、改廃に別の制約が加わります。本記事の範囲外として、深追いはしません。
発注停止から後継品案内までの改廃対応5ステップ
改廃対応は、次の5ステップで進めます。上位の一般記事にはない「判断の時点」を各ステップに含めた構成です。
ステップ1:終了日を期日つきの様式で受ける
誰から(小売の棚割変更通知か、自社の商品部の決定か)、いつ販売が終わるのかを、期日つきで受けます。口頭・個別メールで流さず、対象品番・終了日・理由・在庫方針を1つの様式に載せます。この様式がないと、以降のすべてが後追いになります。
経済産業省は、商品情報の登録・管理が各社専用フォームへの個別入力等「手作業によるバケツリレー」に依存していると指摘しています*3。改廃情報も、同じバケツリレーに乗っているという現状認識を共有しておく必要があります。
ステップ2:センター在庫のみで対応し発注を止める
仕入の発注を止める段階です。2011年の返品削減ワーキング報告書は、返品削減の方策として「定番商品の商品入れ替えプロセスの見直し」を提言しました*2。これを受けた2012年度の同ワーキンググループ報告書は、終売プロセスのベタープラクティスを整理した資料です*7。そこでは、店舗への終売告知の1週間後以降はセンター発注を行わず、在庫が無くなり次第販売終了とする事例(サントリー食品、ローソン)が挙げられています*7。同報告書の実態調査には「センター(取引先)の発注止め日(又は欠品許容日)」という項目が置かれています*7。発注を止める日と欠品を許容する日は、実務上ひと続きに扱われているわけです。
これは、欠品を出すことを事前に合意する判断にほかなりません。ECの設計としては、在庫が尽きた時点で自動的に発注不可になる状態(在庫連動の発注制御)を用意し、欠品を計画として扱えるようにすることを意味します。
2012年度の報告書は、新商品の導入側についても、店舗発注を1週間程度前に行い、確定数値でセンターへ入荷することでセンターの過剰在庫を防ぐ事例を挙げています*7。入替では「落とす」と「入れる」の両側で在庫が残ることが分かります。
ステップ3:販売中・在庫限り・販売終了の3段階で切り替える
ECの公開状態は、「販売中」→「在庫限り(新規発注は可・数量制限)」→「販売終了(発注不可・情報は残す)」の3段階を持たせます。いきなり非公開にしないのが要点です。
理由は2つあります。第一に、取引先は廃止された品番で検索することがあります。第二に、過去の受注・請求・お気に入りリストが、その品番を参照し続けています。販売終了だが検索でき、後継品へ導ける状態を作ることが、問い合わせ工数を最も減らします。
ステップ4:返品・売り切り・処分・転用から在庫の出口を決める
残った在庫の出口は、返品・売り切り・値引き処分・他販路転用のいずれかを、期日つきで決めます。返品には返品処理経費が別途かかります*1ため、返品が常に最良とは限りません。返品条件はメーカーとの取引条件で決まるため、本記事では選択肢の整理までとし、返品の可否そのものは断定しません。
ステップ5:終了を予告し後継品への導線を張る
終了の予告と、後継品の案内を出します。EC上では、旧品番のページから後継品への導線を残しておきます。ステップ3の「販売終了」状態と対で設計することが前提です。
GTIN再利用不可を前提にした商品マスタの持ち方
行を消さず取扱区分で状態を持つ
GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)の「GTIN設定ガイドライン」は、GTIN(世界共通の商品識別コード。日本ではJANコードとして運用される)の再利用を認めていません*6。2019年1月以降、一度使用したGTINの再利用は不可です*6。移行措置として、2018年12月末までに終売(廃番)となったGTINのみ、1回限りの再利用が認められています*6。
廃止した品番を別商品に付け替える運用は、標準上できません。したがって、商品マスタは行を消さず、取扱区分で状態を持つのが素直な設計になります。
取扱区分・終了日・後継品コード・改廃理由を持つ
マスタが状態として持つべき項目は、取扱区分(販売中・在庫限り・販売終了)、販売終了日、後継品コード、改廃理由です。在庫数・価格はマスタに持たせず、在庫連携・取引先別価格の側で管理する設計が整理しやすくなります。
商品情報の標準化が43社の協議会で進行中
経済産業省は、JANコード(GTIN)にもルールの不徹底があると指摘しています*3。新商品や販売期間の短い商品企画が頻繁に行われる商慣習が背景にあります*3。メーカー・卸・小売・商品情報データベース提供事業者ら36者が参加する検討会は、商品情報プラットフォームの実現に向けた方針を取りまとめました*3。検討会は2024年11月28日・2025年2月14日・2025年3月14日の3回開催され、「商品情報の連携に関する宣言」が公表されています*4。
2026年5月27日には、製配販43社(メーカー20社・卸売業9社・小売業14社)で「消費財サプライチェーン協議会」が設立されました*5。重点6テーマの2つ目には、「商品情報の一括登録・共同利用」が置かれています*5。稼働時期や仕様は確認できていないため、断定はしません。自社の改廃運用は、項目を持ち履歴を残す形で作っておくと、後から標準へ寄せやすくなります。
改廃対応を閉じる社内体制とデータの整合
起案・発注停止・EC公開・在庫処分の4つの役割
改廃の起案(商品部)、発注停止の判断(仕入)、EC公開状態の変更(EC運用)、在庫処分の承認(管理)という4つの役割を、品目単位ではなく手順単位で割り当てます。加工食品型(随時)は権限を現場に下げないと間に合いません。日用雑貨型(年2回)はイベントとして計画に載せる進め方になります。
カタログ・画像・帳票の正本を決める
紙・PDFカタログはECより更新が遅れるため、改廃期には不整合が生じます。どちらを正本とするかを、あらかじめ決めておく必要があります。カタログ・画像・帳票の整合を後回しにすると、取引先からの問い合わせが増える点に注意が必要です。
改廃対応の完了を判定する5つの確認項目
「改廃対応が終わった」状態を、次の5点で判定します。
改廃対応の完了を判定する5つの確認項目/順位根拠:作業完了の依存順
- 発注停止の判断が下され、メーカーへの新規発注が止まっていること。
- ECの公開状態が「販売終了」まで進み、検索可能な状態で残っていること。
- 残った在庫の出口(返品・売り切り・処分・転用のいずれか)が期日つきで決まっていること。
- 取引先への終了予告と後継品の案内が済んでいること。
- 商品マスタの取扱区分・終了日・後継品コード・改廃理由が更新されていること。
この5点をチェックリストにし、月次または年2回の点検項目として運用に組み込むことで、改廃対応の抜け漏れを防げます。
まとめ:改廃対応を設計する3つの判断軸
本稿では、卸売業の商品改廃と定番カットを、在庫と返品の設計課題として整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、定番カットとメーカーの生産終了は別物で、終売までのリードタイムの長さと揃い方が異なります*7。第二に、加工食品は随時の定番カットが主因、日用雑貨は年2回の棚替えが主因という違いがあります*1。第三に、発注停止・EC公開状態の3段階・在庫の出口・後継品への導線という一連の仕組みで受けるほかありません。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
卸売の商品改廃に関するよくある質問
定番カットとメーカーの生産終了は同じ対応でよいですか。
同じ対応にはできません。生産終了は供給側の事情で商品自体がなくなる事象で、告知から終了まで猶予があります。定番カットは小売の棚割変更で販路が消える事象で、加工食品では終売案内が中央値21日前、センターの発注止めが中央値7日前と短く、在庫が自社に残ります*7。
卸売業にとって、改廃はどの程度のコストになっていますか。
加工食品では、卸売業からメーカーへの返品理由の最多が定番カット35.2%で、返品率は0.29%、業界全体の返品額推計は494億円です*1。返品率は低くても、返品額では数百億円規模になります。
定番カットが決まったら、メーカーへの発注はいつ止めるべきですか。
2012年度の返品削減ワーキンググループ報告書は、店舗への終売告知の1週間後以降はセンター発注を行わず、在庫が無くなり次第販売終了とする事例を挙げています*7。同報告書では、加工食品のセンターの発注止め(又は欠品許容)は中央値で終売の7日前と報告されています*7。
販売終了した商品は、ECから削除してよいですか。
削除ではなく、状態として残す設計が適切です。GTINは2019年1月以降再利用できず、旧コードは戻りません*6。取扱区分を「販売終了」にして検索できる状態を残すことをおすすめします。
業種によって改廃の運用は変わりますか。
変わります。加工食品は随時の定番カットが主因(35.2%)、日用雑貨は年2回の棚替え・季節品が主因(81.1%)です*1。自社がどちらの型かで、運用設計の重点が変わります。
- *1 出典:製・配・販連携協議会(作成:公益財団法人流通経済研究所)「2024年度返品実態報告」(2025年7月4日)
- *2 出典:製・配・販連携協議会 返品削減ワーキンググループ「返品削減ワーキング報告書「加工食品・日用雑貨における返品実態と返品削減の方策について」」(2011年)
- *3 出典:経済産業省 商務・サービスグループ「共通の商品マスタでサプライチェーンを効率化します(商品情報プラットフォームの実現に向けた方針を取りまとめました)」(2025年3月14日)
- *4 出典:経済産業省 商務・サービスグループ 流通政策課「商品情報連携標準に関する検討会」(開催状況・最終更新2025年3月18日)
- *5 出典:公益財団法人流通経済研究所(消費財サプライチェーン協議会 事務局)「「消費財サプライチェーン協議会」設立のお知らせ」(2026年5月27日)
- *6 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「GTIN設定ガイドライン」(Release 2.2, September 2025)
- *7 出典:製・配・販連携協議会 返品削減ワーキンググループ(作成:公益財団法人流通経済研究所)「返品削減ワーキンググループ報告書」(2012年)※商品入れ替えプロセスの実態調査は協議会加盟小売業13社を対象
画像の出典元
- 卸売 定番 カット 商品改廃 ECのイメージ/Photo by Max van den Oetelaar on Unsplash
- 卸売 定番 カット 商品改廃 ECのイメージ/Photo by Giorgio Trovato on Unsplash
- 卸売 定番 カット 商品改廃 ECのイメージ/Photo by Luke Heibert on Unsplash